俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「ここは……」
私は今さっきまで意識を失っていた。
気が付くと同時にベットから半身起こして周囲を見渡す。
飾り気のない家具や壁紙。まさに必要最低限の物しかないこの部屋は、私が元の世界にいた頃に過ごしていた自室。
恐らくここは、基地内にあるかつての私の自室を再現した部屋だろう。
姿見にはベットの上で体を起こす私と揺れるツインテールが写っている。
「気が付いたかよ」
入口の自動ドアが開き、外から制服姿の和輝がやってきた。
「和輝……ッ!!」
私はそれにつられるように身体全体を起こそうとしたけど、身体のあちこちが悲鳴を上げる。
ビリビリと痺れるような感覚と走る激痛が私が何故さっきまで気絶していたのかを嫌という程思い出せてくれる。
私はレヴィアタンギルディに負けたんだ……
「おい、大丈夫かよ!!」
「ごめん、ちょっとまだ……」
「たっく……心配かけさせやがって……」
ぶっきらぼうにそう言いながらも和輝は私をベットで横になるように促してくれた。
私はそれに応じるように再びベットの上で横になる。
「トゥアールさん言ってたぜ。いくらお前の身体が常人よりも頑丈っつっても限度があるってな。あれだけ怒り狂って身体の負担考えずに暴れりゃこうもなるってな」
「そんな事わかってるわよ……」
徐々にではあるけど、何故負けてしまったのかが鮮明に蘇って来る。
私はレヴィアタンギルディとの戦い中、レヴィアタンギルディが
「わかってる奴の取る態度かっつーの。俺の制止も聞かずに暴れやがって……」
それはそうだ。
私は心の中で和輝が必死に制止しようとしていたというのに、全くといって怒る気持ちを落ち着かせることが出来なかった。
昨日の学校での出来事といい、今の私は和輝に文句を言えるような立場じゃない。
私が勝手に暴れては和輝にフォローされているのにこんな態度を取るだなんて最低もいい所だ。
「ごめん……」
「わかりゃいいんだよ。まぁ、トゥアールさんが言うにはレヴィアタンギルディの野郎は胸に感するコンプレックスを刺激する特殊な念波を出しているらしいから仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだけどな」
「何それ!?」
どういう事? つまり私は操られていたって事なの?
確かに振り返ってみても私自身あんなにも暴走するなんて信じられないと言えば信じられない。
「さぁ? 詳しい事はわからねぇけど、お前の思考を乱していたのは確からしい」
「そう……なんだ……。何だか別の意味で腹が立つわね。女の気持ちを何だと思ってるのよ……!!」
いくら相手の思考を乱すのが有効な戦法と言えど、女の胸に対する気持ちを操るだなんて許せない。
私の中で落ち着きかけてきた怒りが再び燃え上がる。
無意識のうちに私は壁をドンと叩き、壁にひびを入れる。
「だから落ち着け。それじゃ敵の思う壺だろ。いいかティアナ? 確かにトゥアールさんはレヴィアタンギルディの野郎が思考を乱す念波を操る能力を持っているとは言ったけど、お前くらいのツインテールに対する愛がありゃ無効化するのもわけないとも言っていたぜ」
つまりそれは私のツインテールに対する愛よりも巨乳に対する怒りや憎しみの方が強かったって事よね……
それは和輝が死んでしまった時とはまた違うベクトルのショッキングな事実。
私の抱いていたツインテールへの愛はその程度の物だったかと思うと、お父さんやお母さんに顔向けできない。
私は自分自身のツインテールの穂先を摘まんで見つめる。
「私の愛が足りなかった……」
「……さぁな。こればっかりは遺伝的な物もあるだろうし何とも言えねぇよ。でも、俺はお前のツインテールへの情熱がコンプレックスなんざに負けているとは思わないぜ」
「和輝……」
「まぁ兎に角、今は身体を休ませておけよ。エクストリームチェインの新たな強化プランが決まったしな」
新たな強化プラン?
それを尋ねた和輝は嬉しそうにニヤリと笑う。
何でもバースト状態ほどの出力はないけど、それよりも安定したパワーアップを可能にするとの事らしい。
「気になるんだったらさっさと身体を治すんだな。んじゃあ俺は行くぜ」
そのまま部屋を出て行こうとする和輝。
去り際に私の腕にはまっていたお揃いのテイルブレスⅡを受け取った際、こう言い残す。
「寝るときくらいツインテール解けよな。髪だって少しは休めないとダメっつったのはお前なんだぜ?」
出て行く和輝。
私はその言葉を聞いてツインテールも悲鳴を上げていた事実に気が付くと同時に、まだツインテールへの愛がちゃんとあることを再認識する。
ツインテールを解く時のこの喪失感。
これを感じている内はまだ私は戦える。
「ごめんねツインテール」
謝罪の言葉を口にした私はツインテールを解き、ただのロングに戻してそのまま横になる。
胸が何よ。そんな物よりツインテールへの愛が勝つって所を証明してやるんだから。
ティアナは深く心に刻む。
だが、その心の奥に潜む感情は、まだしっかりと蠢いており、ティアナはそれに気づいていなかった……
◇
『エクストリームチェイン対応テイルアーマー完成しました。放課後、基地に集まってください』
レヴィアタンギルディとの戦いから二日後、トゥアールさんからテイルアーマーの再調整が終了したとの連絡が届いた。
流石トゥアールさんだぜと思う反面、トゥアールさんにしてはいささか仕事が遅いような気も若干するが多分偶然だろう。
何故かはわからないがレヴィアタンギルディはあの日以降、現れる様子もないので別に問題にもなっていない。
ま、俺としてはそんな事よりも早く新しくなったテイルアーマーとやらを試してみたくて仕方ないぜ。
そして放課後、そんなワクワクする気持ちのまま、俺はティアナと共に基地を訪れる。
そこにはいつもはいないおやっさんもおり、初の全員集合となっていた。
「ではまず、お預かりしていたテイルブレスをお返ししますね」
着いて早々、トゥアールさんから調整の終えたテイルブレスを返してもらう俺とティアナ。
青紫と赤紫。それぞれのパーソナルカラーで彩られたブレスは俺たちの絆と想いの結晶だ。
外していた事で少しさみしく感じていた左腕も帰って来たことで喜んでいるような気がする。
「早速、変身を……と言いたいところですが、今回は実戦テストも兼ねるので場所を変えますね」
そう言うや否や、トゥアールさんはコンソールルーム内の機械を操作する。
するとどうだ、俺たちの周囲が極彩色の空間に切り替わったと思うと、次の瞬間には誰にも使われていないような採石場に立っていた。
「ここは……!?」
「都市部から離れた採石場跡地です。ここなら思う存分力を発揮できると思いワープしました」
コンソールルーム内にいた全員を一瞬の内にワープさせるだなんてわかっていても驚かざる得ない。
これにはあのおやっさんも興奮を隠して切れていない。
しきりに「おぉ~」と声を上げている。
「では今度こそ総愛たちはエクストリームチェインへの変身を、華先生も同じくテイルブルームへと変身してください」
念のための安全確認を終えた後、トゥアールさんにそう促される。
俺とティアナ、そして華先生の三人はギャラリーである他メンバーから距離を取るべく岩壁のある方へと移動した。
性能確認のテストとは言え、みんなの前で変身する事はあまりないのでかなり緊張すると言ってもいい。
「和輝~!! お前たちのカッコいい変身、バッチリ撮ってやるからな~!!」
いつの間に用意したのか知らねぇが、おやっさんの奴、三脚とデジタルカメラを用意してスタンバっていやがった。
全く……お前は体育祭ではしゃぐ保護者かよ……!!
「あのなぁ……」
「和くん~!! ティアちゃん~!! リラックスよ~!!」
「そうだぜお二人さ~ん!!」
おやっさんに便乗するかのようにはやし立てるのは悠香さんと匠だ。
保護者が増えた事に俺は思わずズッコケる。
「勘弁してくれよ……ただでさハズいのによぉ……」
「仕方ないでしょ。みんなの前で変身するのは初めてなんだし」
そういや、トゥアールさん以外はエクストリームチェインの変身を生で見た事はなかったんだっけか。
普段の変身とはまるで違う融合変身であるエクストリームチェインなら仕方ないような気がしない事もないと俺は納得することにする。
にしてもティアナの奴、随分と落ち着いているな。
吹っ切れてくれたのならありがたい。
「私への注目はないのね……」
誰も声をかけてくれない事にいじける華先生の声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
俺とティアナは気を取り直してテイルブレスⅡを構えてテイルドライバーをそれぞれ装着。左右反転となる変身ポーズを決めながらいつもの
「「デュアルテイルオン!!!」」
俺とティアナ、二人の身体が光包まれながら一つの繭となり、紫の光が旋風と共に爆裂する。
俺はティアナとの極限進化形態であるテイルバイオレットエクストリームチェインへと変身を遂げた。
再調整こそしたが見た目も感覚も何も違わない。
『おぉ~!! ほんとに一人になった……!!』
『属性力、脳波共に安定、バイタル異常なし。一先ず変身の方は問題ないですね』
感嘆の声を上げるおやっさんとデバイスを見ながら冷静に分析を行うトゥアールさん。
同じ大人組だってのに空気感がまるで違う事はもうツッコんでも意味がない。
その後、華先生が俺たちの後を追うようにテイルブルームへの変身を行うが、誰一人としてそちらへと興味を向けていなかったのは秘密だ。
『では次にテイルアーマーの装着をお願いします』
ここまではあくまで前座、ここからが本番だ。
俺は頭の中に浮かんでくるテイルアーマー装着方法を実施するべく動く。
えっと……、確かテイルアーマーRを使うには右側面のスイッチを念じながら押せばいいんだな?
テイルドライバーの側面にあるスイッチ。俺はその右側にある赤く光っている部分を念じながら押し込んだ。
するとテイルドライバーのバックル部分で輝くツインテール属性のマークが描かれたエンブレムから赤い光が飛び出しては周囲を炎が吹き上がる。
「こい!! 勇気のツインテール!!」
赤い光は炎と化しながらエクストリームチェインの装甲に吸い込まれていき、それら全てを吸い込み終えた時、エクストリームチェインの分厚い紫の装甲は変化を開始。燃え上がる炎を表すかのような真っ赤な装甲へと姿を変えた。
そして、それに呼応するかのように煌めく紫のツインテール穂先が徐々に赤く変化して変身を完了する。
「よし!! 成功だぜ!!」
ブレイブチェインを使った時と同様の湧き上がるツインテールへの想いが変身を成功させたのだと確信をくれる。
バースト状態ほどではないのだろうけど、属性力の高まりをすげぇ感じる。
これならどんな奴が相手でもかかってこいだ。
(凄い……!! これがお父さんのツインテール……!!)
一体化した事で初めて感じるブレイブチェインの力に感動するティアナ。
ブレイブチェインはティアナの親父である総二さんのデータを元に作られているのでその感動は別格なのだろう。
『こちらも属性力、脳波共に安定、バイタル異常なし。エクストリームブレイブへの変身も問題なしですね』
トゥアールさんが分析結果を述べる。
どうやら数値上でも変身は成功したようだ。
にしてもエクストリームブレイブか……
今更だけどちょっとばかし恥ずかしいな。
『では次にそのまま少し動いてみてください』
トゥアールさんの指示に従うように俺は跳んで走るを繰り返す。
そしてそれらのデータ収集があらかた終わると今度はテイルブルームとのちょっとした組手を行い、戦闘時のデータや不具合をないかをテストした。
テイルブルームとの組手は互いに全力でないとは言え、中々のパワーを感じる程だ。
テイルブルーム側が戦闘経験の豊富さで食らいつくも、その差は凄まじい。
「先生も中々やるじゃねぇか」
「まだまだ生徒には負けられませんから……!!」
『お二人ともお疲れ様です。もう大丈夫ですよ。あ、和輝くんの方はエクストリームブレイブのデータはある程度取れたので、一度通常のエクストリームチェインへ戻ってくださいね』
そう促されたこともあり、エクストリームブレイブを解除して通常のエクストリームへ。
解除と同時に大きな疲労感が襲い掛かる。
トゥアールさん曰く、その疲労感は想定されている反動らしく、運用方法としては使用後は人格を交代して休憩を挟むのがいいらしい。
俺は次のテストをティアナに託して奥に引っ込む事にする。
「じゃ、あとは任せたぜ……。了解、和輝。ゆっくり休んで頂戴」
疲れ果てた和輝と交代した私が表に出る。
次のテストは私のお母さんであるテイルブルーの力とデータを内包したテイルアーマー。
エクストリームブレイブの力は心の中に引っ込んでいた私でも感じる程に凄かった為にもう一つのテイルアーマーにも期待できるわね。
『では総愛、エクストリームエモーショナルへの変身をお願いします』
「わかったわママ。えーっと、ここをこうして……っと」
私はテイルドライバー左側面のスイッチを押し込んだ。
すると今度はエンブレムから青い光が飛び出し水が飛び散り始める。
これがお母さんのツインテール……!!
青い光がエクストリームブレイブの時と同様に装甲へと吸収されていき、その姿を変えていく。それはまるで鋭利な刃物かのように刺々しく、それでいてスタイリッシュ。
どんなツインテールになるんだろうと昂る気持ちのままに変身は進んでいくそんな時だった。
「ッ……!! む、胸が……!! に、憎い……!!」
流れ込む憎悪と怒り。
それらが私の心に潜む貧乳へのコンプレックスと混ざり合い、全てを押しつぶし始める。
私の中でレヴィアタンギルディと相対していた時と同様の事が起き始めた。
『様子が変だぞ。もしかして何かあったんじゃないっすか!?』
『トゥアール先生!!』
『脳波異常発生!? このままでは危険です!!』
耳に辛うじて聞こえてくるのはママと他のみんなが慌てる声。
私は湧き上がる怒りと憎しみを制御しようと踏ん張るものの、どうしようもなくただただ破壊衝動がこみ上げてくる。
もう駄目……何も考えられない……
そう思ったその時、私の体から力が抜ける感触が起こり、和輝との融合変身が解除された。
「ッ……!! 戻ったのか……?」
「どうやら……そうみたいね……」
変身が解除され、元の二人に戻った俺たち。
華先生がまず先に変身を解除しながらやってきて、その後にトゥアールさんら離れて見ていた組も駆け寄って来る。
「大丈夫、二人とも?」
「ああ、俺は疲れちまっただけで大丈夫だ」
「私はその……」
何となく嫌な予感がしていたが、やはりエモーショナルチェインの方は中々のじゃじゃ馬だぜ。
敬愛する父と母の力を使えると少しウキウキしていた様子のティアナは見事にしょぼくれている。
「どうやらテイルアーマーBの方はもう少し調整が必要のようですね」
そうは言っているが、トゥアールさんの表情から察するにあまり納得いってない様子だ。
調整としてはほぼ完璧だったのだろうと推測できる。
「ごめんねママ。私が不甲斐ないばっかりに……」
「何を言っているんですか総愛。そんな事はありません。誰だって失敗くらいありま――」
しょぼくれるティアナをトゥアールさんが励まそうとした時、今度はトゥアールさんの身に異変が起きた。
「う゛っ……!!」
「ママ!?」
レヴィアタンギルディの襲撃があったあの日同様、トゥアールさんはまたも胸を押さえるように苦しみだしたんだ。
皆が心配になり、トゥアールさんを気遣うもトゥアールさんは直ぐに元の調子を取り戻す。
「トゥアール先生、本当に大丈夫ですか?」
「そうだぜトゥアールちゃん。何かあるんじゃないのか?」
「大丈夫ですよ皆さん!! トゥアールちゃんはこの通り元気一杯です。ちょっと徹夜の疲れが出ただけですから!!」
そんな事より今は直ぐにでもテイルアーマーBの再調整をせねばとわかりやすく何かを隠す様子のトゥアールさんへツッコミを入れれる者はいない。
身内であるティアナですら何も言い出すことが出来ない程だ。
「トゥアールさん、あんたどうしちまったんだよ……」
「なぁ、和輝?」
「あん? んだよ匠」
「トゥアールさんの胸って前見た時よりちょっと大きくなってねぇか?」
こんな時に何アホな事を言っているんだと匠を殴り飛ばす。
全く、トゥアールさんの身に何か異変が起きているかもしれないってのにこのバカタレは……
そう思いながらも俺はさりげなくトゥアールさんの胸のサイズを確認する。
心なしか、前見た時よりも少しばかり大きくなっている気がしない事もない。
「いや……まさかな……」
俺の呟きは夕日の中に消えていった。
◇
アルティデビル基地の大ホール。
ここは集会や会議、次の出撃者のクジ引きなどで使われる場所であり、ベリアルギルディによる出撃禁止令が発令されてからは誰一人として訪れる事はない場所だ。
だが、今日この時に限っては基地内にいる全エレメリアンが招集された為に先日までのがらんどうとなっていた大ホールとはまるで違う。
余程の事がない限り部屋に籠りっぱなしの一部エレメリアンを除いた大半が勢ぞろいしていた。
「おい、今回はなんだ? またベリアルギルディの野郎か?」
「さぁ? 誰かは知らんが急に集まれと言われただけで……」
「おまけに各々所有する美少女グッズまで持ってこさせるとか何事だよ」
愚痴りあいながら席に座り合う各エレメリアンたち。
皆それぞれがここに来る場合はフィギュアやタペストリー、同人誌と言ったそれぞれの性癖にあった少女が描かれたグッズを持ってくるように言われている為、グッズを完全装備して座るその絵面はさながらオタクのオフ会のようである。
「ようやく集まったか。待ちくたびれたぞ!!」
大ホール内の席があらかた埋まった時、大ホール中央に現れたのは先日テイルバイオレットを撤退に追い込んだエレメリアン。
初めて見るその姿に多くのエレメリアンは誰なのだ?と首を傾げるが、それと同時にその溢れ出る別格の属性力に気圧される。
「俺の名はレヴィアタンギルディ!! 貴様たちも知っているだろうが俺はベリアルギルディの要請を受けて参上した
普段は基地にいない者がその基地の戦士たちに授業を行う事はアルティメギルであればさほど珍しい事ではない。かつてツインテイルズの世界を侵攻したドラグギルディの部隊は、連敗の度に補充され続ける外部の上級戦士から多くの事を学んでいった事もあるのだ。
だが、それはあくまでアルティメギルでの話。
この組織はアルティデビル。
プライド高い彼らにとって外部の者に教えを乞うなどもってのほかだ。
「何言ってんだ!! 俺らにそんな事必要あるか!!」
「そーだそーだ!! それよりも俺たちに出撃権をよこせ!!」
「俺たちに行かせろー!! テイルバイオレットは俺が必ず!!」
飛び交う怒号、そして野次。
短期且つ誰よりも高慢なベリアルギルディなら実力行使で黙らせにかかる場面だ。
だが、レヴィアタンギルディは腕を組みながらうんうんと頷いていた。
「成程、威勢良し。バアルギルディめ、中々の奴らを集めたではないか」
レヴィアタンギルディはそう簡単に怒り狂う事をしない。
それは彼のポリシーである
「落ち着けお前たち!! いいか!! 誰もお前たちに出撃させんと言っている訳ではない!! 俺はお前たちにもっと豊かなおおらかな心を育んで欲しいだけなのだ!!」
レヴィアタンギルディは語る。
強さとは即ち大きさであり、その大きさを得る為には先ずは心から。
どんな悪感にも流されぬ豊かな心を育めば貧相な者に負ける道理などない。
「いいか!! テストの点数で0や10などちっぽけな点では生き残れぬと同様に 必要なのは100すらも超え、限界を超えた
一見いい事言っているような気がするが、実際はエレメリアン特有の頓珍漢な妄言でしかない。
その証拠にレヴィアタンギルディの話す内容は段々と貧乳や微乳など不要、巨乳ですら物足りないから超乳こそが真理であると、
だが、それらの中身のない言葉は、誰かから熱く何かを教えられるといった事をされてこなかったこの場の大半の者の胸を打つ。
いつの間にか多くのエレメリアンたちがレヴィアタンギルディの言葉を刻み込んでいた。
「いいかお前たち!! 胸の無い者など恐るるに足らず!! それが例えかの有名な猛獣テイルブルーだとしても貧しき敗北者だと笑い飛ばせ!! 豊かな乳は我らの心の中にある!!」
「「「「うぉぉぉぉぉッ!!!!」」」」
超乳こそ至高。巨乳などでは物足りず貧乳などもってのほか。
まるで一つのカルト宗教かのように精神的に支配されていくエレメリアンたち。
レヴィアタンギルディの恐るべき力の一端がこれだ。
他者の思考を乱しては大きければ大きい程いいと洗脳するこの力。
虐げられし性癖を抱えたエレメリアンが辿り着く一つの最終闘体と言える。
「ではお前たち。先ずは簡単なテストをしようではないか。それぞれ自前のグッズを出すがいい」
ある程度の精神支配を終えた事を確信したレヴィアタンギルディがそう号令を出し、それに応えるように皆がそれぞれの席でグッズを広げだす。
ゴスロリやチャイナドレス、様々な恰好をしたアニメや漫画のキャラクターのポスターやタペストリー、フィギュアや同人誌、エロゲーが並ぶ中で最も多かったのはテイルレッドを題材にした物であった。
テイルレッドの人気は直接戦った相手でなくとも全エレメリアンにとって不変であり、その究極と謳われるツインテールに皆が心を奪われるのだ。
「ほう、テイルレッドか……」
それぞれのグッズを拝見するレヴィアタンギルディの目に精巧に作られたテイルレッドフィギュアが映った。
エレメリアン驚異の科学をド贅沢に使ったその代物は今にも動き出そうとしている程に精巧であり、テイルレッド本人である観束総二も恐らく唸るであろう。
「は、はい!! これはその……わたくしめの宝物でございまして……。家宝として飾っている物でございます……!!」
近くでそれを見た全エレメリアンが羨ましそうに指をくわえる。
だが、レヴィアタンギルディは全く以てそうは思わなかった。
「確かに……テイルレッドは素晴らしいツインテールをしている。この俺の感情を揺さぶるだなんて久しぶりだ。だがしかし!! この程度で満足しているなど失格だバカモン!!!」
癇癪を起してテイルレッドフィギュアを無理やり取り上げたレヴィアタンギルディ。
持ち主であるエレメリアンが返してくださいと懇願する中、レヴィアタンギルディは自慢の触手を構える。
「いいか!! エレメリアンたる者このような貧相な胸で満足するな!! こんな駄作はこうしてやる!!」
レヴィアタンギルディは触手の先端を針のように尖らせると、手に持ったテイルレッドフィギュアの胸部分に突き刺した。
するとどうだ。テイルレッドの愛くるしい幼女体系がみるみるうちに変化、身長こそそのままだが、巨乳なんて目じゃない程の爆乳超えし超乳ボディに生まれ変わる。
まるでそれは、フィギュアを魔改造する際に胸辺りにパテを盛り過ぎて失敗してしまったいびつな作品。
あまりにも不釣り合い且つ気持ち悪いテイルレッドらしき何かが出来上がった。
「わ、私のテイルレッドたんが!?」
「何慌てるな、よーく目を凝らせば素晴らしく生まれ変わったのだと気づくはずだ。いいか? 大きいこそ至高。貧しきは悪だ」
嘆き悲しむエレメリアンの耳にレヴィアタンギルディの囁きが優しく入り込む。
そして次の瞬間、そのエレメリアンの目が鈍色に染まる。
「た、確かにこの方が大きくて素晴らしい……!! レッドたんも大きくしてくれてありがとうと言っているみたいだ……!!」
そんな訳がない。
どう見ても似合わない魔改造に嘆いて悲しんでいるようにしか見えないのだが、レヴィアタンギルディに狂わされた者はそれに気づかない。
あまりにも恐ろしいその光景に一部エレメリアンは洗脳が解け、自室に逃げ帰ろうと動き出す。
がしかし、レヴィアタンギルディの触手がそれを阻んだ。
「安心しろ。次はお前たちだ。お前たちのそのグッズ、全て胸を大きくしてやろう……!!」
「全く……実に恐ろしい奴だよレヴィアタンギルディ……」
その様子を隠れて見ていたベリアルギルディがそう呟く。
その後、半日も経たずにアルティデビル基地内が超乳によって制圧されたのは言うまでもない。
エクストリームエモーショナルは所謂暴走形態ですね(今更)。