俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第119話 繰り返される惨劇

「はぁ……」

 

「たっく、キレ散らかしていたと思えば今度はため息祭りかよ。忙しい奴だなお前って奴は」

 

「うるさいわね!! 別にいいでしょ!!」

 

「まぁまぁ落ち着けってお二人さん……」

 

 ティアナがテイルアーマーの使用に失敗した次の日。学校でいつも通りの日々を過ごしていたそんな中だった。

 正午過ぎ、昼休みを告げるチャイムがなったと同時刻にネットニュースでエレメリアンが出現したとの報道があった。

 

「レヴィアタンギルディの野郎、遂に来やがったか……」

 

 丁度、直近の担当教員が華先生だった事もあり、俺とティアナは華先生と共に変身して出撃。

 マシントゥアールの後部座席にテイルブルームを乗せた二人乗り(一体化しているティアナを含めると実質三人乗り)で出現ポイントまで急行した。

 

『目的地まで残り距離200メートル』

 

 報道の通りなら出現した場所は都市部最大サイズのデパート。

 昼のタイムセールの影響で多くの人で賑わってるのは容易の予想できる。

 レヴィアタンギルディめ……、今度は人が大勢いる場所を狙いやがったって訳か……

 でも、どうしてエレメリアンの反応が検知されていないのだろう?

 

『強い反応がない事から推測するに、これはもしかするとレヴィアタンギルディじゃない可能性がありますね』

 

 トゥアールさんからの通信を聞いた事で俺の頭に?が浮かぶ。

 レヴィアタンギルディじゃないってどういう事だ?

 

「どういう事だよおい。どうしてレヴィアタンギルディの野郎が出て来ねぇんだよ」

 

『いや、私に言われましても……。可能性としてはレヴィアタンギルディの配下が独断で出現したなど色々考えれますが……』

 

 レヴィアタンギルディの実力はかなりの物であり、直ぐにでも再襲撃をすれば俺たちは勝てるかどうかわからない程だ。

 なのに奴は今日に至るまで直ぐに再襲撃をしなかっただけでなく、その今日ですら出てこないのはどういう事だ?

 こちらからすれば準備期間が長ければありがたいので問題はないのだが、舐められているようで癪な気分だぜ。すぐにでもあの野郎をエクストリームブレイブも餌食にしてやりたいんだがな。

 

「ま、どんな小細工仕掛けようが俺たちの敵じゃないって所を見せてやるぜ」

 

(それなんだけど……ごめん和輝。こんな時に悪いんだけどちょっと休んでていいかしら? 今戦えるような感じじゃないの)

 

 はぁ? お前はお前でどうなってんだよおい。

 まさかお前……!! 昨日の失敗をこんな時もまだ気にしているんじゃ……

 その原因に気が付いた俺は少し不満を感じながらも今回は任せろとティアナに休んでおくように声をかける。

 心なしかエクストリームにしてはあまり力が入らない気がするが、それでも一体化していないノーマルチェインに比べれば大したことない。

 てかレヴィアタンギルディじゃねぇのならエクストームブレイブの試運転にはもってこいの可能性もある。

 

「ねぇ? あの人だかりは何かしら?」

 

 バイクから降りたテイルブルームが指をさしたその方向、丁度デパートの入り口前付近には大勢の人だかりが出来ていた。

 あまりに多くの人がいる為にその人だかりを形成しているのが何かすらつかめない。

 ただ一つ言えるのはエレメリアンの反応はあの人だかりの中心から出ているって事だ。

 

「すいませーん、どいてくださーい」

 

「ったく、邪魔だからさっさとどけっつーの」

 

 テイルブルームが率先して群衆に頭を下げてどかしていく。

 皆は口々に「テイルバイオレットだ……!!」と驚きながらも道を開けてくれた。

 そして露わになるエレメリアン。

 それはタコのような身体をしたテカテカと気持ちの悪い奴であり、野郎は地面の上で胡坐を組んで俺たちを待っていたかのようだ。

 

「ゲッ、また触手かよ……」

 

「よ、ようやく来たかテイルバイオレット!!」

 

 どっこいしょとでも言いだしそうなくらいのおっさん臭い仕草をしながら立ち上がるエレメリアン。

 背中から生えた4本の触手が生理的嫌悪感を強めてくれる。

 俺たち二人は構えながらも周囲に群がるギャラリーに避難するように告げる。

 

「危ないので逃げてください!! ここからは先は危険です!!」

 

「そうだぜお前ら。今回はちっとばかし鬱憤晴らしさせてもらうからよぉ……!!」

 

 拳をバキボキ鳴らして今まさに殴りかかろうとしたその時、唐突にエレメリアンの野郎が両手を前に出して待ったの構えをとる。

 

「お、落ち着けテイルバイオレット!! 俺は戦いに来たのではない!!」

 

「「は……はぁ!?」」

 

 まさかの宣言に思わず声を上げる俺とテイルブルーム。

 これは俺たちを油断させる罠でそんな筈ないだろと思ってみるものの、その余りにも必死な様子に殴りかかる気になれなくなる。

 何つうか敵意すらも感じない。

 

『今、先程までのエレメリアンの様子を映した動画を拝見しましたけど、どうやらその言葉は本当のようですね。怯えるギャラリーに敵ではないと訴えかけていたようですよ』

 

「マジかよおい」

 

「ほ、本当なの……?」

 

 テイルブルームが念のために周囲で見守るギャラリーにどうなのかを尋ねてみるが、誰一人としてこのエレメリアンを悪く言う奴がいなかった。

 むしろ励まされ元気を貰ったといった奴までいるくらいであり、怖いけど倒さないでくれと訴える者までいるくらいだ。

 

「わ、わかってくれたか……」

 

 俺たちはトゥアールさんの通信を聞いた事により、このエレメリアンがガチで戦いに来たのではないという事がわかり、それを察したエレメリアンはホッと胸を撫で下ろす。

 尤も、なら一体全体、この野郎がどういう了見でこんな場所に現れたのか問いただす必要があるのは事実。

 俺はウインドセイバーを精製するとそのまま切っ先を突き付けながら問いただす。

 

「てめぇ、戦う気はないのはわかったが、何しにこんな場所に来やがった? 事と次第によっちゃ覚悟してもらうぜ」

 

 威圧感のある問いかけにエレメリアンは再度慌てだす。

 

「違う!! 何も企んでなどいない!! 本当だ!! 信じてくれ!! 俺はただ逃げて来ただけなのだ!!」

 

「逃げてきただぁ? どういう事だおい!!」

 

「俺はフォルネウスギルディ……実はだな……。俺はとある事情からアルティデビルを抜けて来たのだ……」

 

 逃げて来ただの抜けてきただの、わけのわからない奴だ。

 アルティデビルってのはアルティメギル程の大きな組織じゃない筈だから抜けるだけでわざわざ逃げるだなんて言い方をするとは思えないし、もし、アルティデビル全体が別の強い何者かに襲撃されてそこから逃げて来たのなら今度は抜けて来たなんて表現を使わない。

 とある事情って奴が気になる所だぜ。

 

「おい、そのとある事情ってなんだよ。言ってみな」

 

 そう聞いてみるとフォルネウスギルディは恐る恐る口を開く。

 

「お前たちも知っているだろう。原因はレヴィアタンギルディだ」

 

「「レヴィアタンギルディ!?」」

 

 思わず大きな声を上げる俺とテイルブルーム。

 まさかここに来てレヴィアタンギルディの名前が出てくると思っていなかったからだ。

 フォルネウスギルディは驚く俺たちをそのままに詳細な訳を話す。

 

「レヴィアタンギルディによって我らアルティデビルは侵略されてしまったのだ……。ありとあらゆる少女の胸が下品で君の悪い大きさに変えられ、尚且つそれを好むようにな……」

 

 レヴィアタンギルディは俺たちとの初戦を終えて基地に帰還するなり、基地内のエレメリアンを全招集したらしく、招集に応じた全エレメリアンをその巧みな話術と自身の特殊能力を活用することで洗脳して超乳属性(スーパーラージバスト)も愛するようにしてしまったらしい。

 要するに一種の侵略のような物って訳か。

 

「おぞましい光景だった……。皆が描く絵や自作したフィギュアがどんどん盛られていく……。テイルレッドを題材にした物だけじゃなく愛するテイルブルーまでその毒牙にかかり誰もが笑っていたのは何か間違いだと思いたい……。少しでも基地を脱出するのが遅れていれば俺もああなっていたのだと思うと……」

 

『成程、姿を見せないのはそういう訳があったようですね。それにても愛香さんの胸が絵やフィギュアとは言え盛られているだなんて考えるだけでも恐ろしい……』

 

「ほぉん、つまりレヴィアタンギルディの野郎は超乳属性(スーパーラージバスト)を仲間内に広める事にお熱だったって訳か」

 

 ただの巨乳ならまだしもレヴィアタンギルディの愛するのは超乳と呼ばれる弩級のサイズだったな。そんな一歩間違えれば気持ち悪さしか感じない属性を皆が一斉に信仰し出す様は確かに恐ろしいぜ。

 俺は正直、胸は大きいのが好みだが、あの野郎が好むサイズは流石にちょっと遠慮したいくらいなのでフォルネウスギルディの気持ちはよくわかる。

 

「にしてもよトゥアールさん。いくら同志を増やしたいとは言え洗脳なんてしたら属性力的な観点から見ればいいのか?」

 

『洗脳で無理矢理芽吹かせた属性力は純正な物と比べると劣るのは明らかです。ですが、超乳属性(スーパーラージバスト)などの余りにも純正な属性力を芽生えさせるのに苦労する属性でなら、そのような選択をしても仲間を増やそうとするのは可能性としてはゼロではないでしょう』

 

 ま、確かに超乳なんて普通に三次元の世界を生きていたら目に入れる事なんてないもんな……。

 あったとしてもそれは二次元の世界であり、現実を生きる女性が超乳になる事はまずない。

 巨乳属性(ラージバスト)が自然に育った胸を愛するのなら、超乳属性(スーパーラージバスト)は人工的でも構わないから兎に角大きな胸を愛するって所か。

 

「でもちょっと待って、レヴィアタンギルディって元からの仲間だったんでしょ? なのにどうして急にそんなことしたのかしら?」

 

 さっきまで黙って聞いていたテイルブルームがそう指摘。

 確かにそれはごもっともだ。

 コイツの話を真に受けるならレヴィアタンギルディは今まで基地内にいなかったか、もしくは自室にでも引き籠っていたかのどちらかしかない。

 

「そうか……。お前たちは知らないのか……。実はなレヴィアタンギルディは元から我らの基地にいた者ではないのだ。奴は七つの性癖(セブンス・シン)と呼ばれるエリート集団の一人でな、お前たちの強化に焦ったベリアルギルディが呼び寄せた奴の一人なんだ」

 

 七つの性癖(セブンス・シン)だと……!?

 まだ見ぬ強敵が来るような気がしてはいたが、まさかそれが集団だった且つレヴィアタンギルディがその先鋒だったとは思ってなかった。

 文字に表したらまぁアレな集団名だが、実際の戦力の一人を知っているが故に全く以てふざけているだけの集団ではないのはわかるし、そんな奴が他に6人もいると思うと恐怖しか感じないくらいだぜ。

 

「頼むレヴィアタンギルディを倒してくれ!! このままではこの世界までも下品な乳で埋め尽くされてしまう!! 俺はそれが怖くて逃げだしてきたんだ!!」

 

 懇願するフォルネウスギルディ。

 周囲で見守るギャラリーたちは事情はよくわからないながらもその余りにも悲壮感溢れるフォルネウスギルディを庇うように声を上げる。

 

「テイルバイオレット~!! そのタコさんを助けてあげて~!!」

「何だかわからないけど助けてやってあげてくれ~!!」

「お願ーい!!」

 

「皆の者……!! 感謝するぞ……!! このフォルネウスギルディ、必ずやテイルバイオレットたちのお役に立ち世界を救って見せる……!!」

 

 フォルネウスギルディの宣言を受けて盛り上がるギャラリーたち。

 中にはたった今到着したテレビのリポーターが怪物と人類の歴史的な和解ですとカメラの前で声を弾ませている。

 

「たっく、どうするよこれ。このままブッ倒したら悪いのは俺らだぜ?」

 

「敵意はないんだしいいんじゃない?」

 

『華先生、いくら敵意がないとは言え完全に信用するのは危険ですよ。ですが、今回の場合は有益な情報を持っている以上、丁重に扱うのがいいのかもしれませんね』

 

 かつての相棒の事があり、敵意がないのなら直ぐにでもエレメリアンを信じようとするテイルブルームと、それを咎めつつも保護する事に賛同するトゥアールさん。

 俺としては周囲で見守るギャラリーを味方につけたコイツがもし敵だったのなら恐ろしすぎるので、敵ではないと信じたいところではある。

 

「なぁ? 休んでる所悪いけど、ティアナはどう思うよ?」

 

(なによ……。和輝)

 

「いやそれがな――」

 

 俺一人で判断するのもアレなのでティアナにも意見を伺おうと心の奥底で休んでいたティアナを起こして尋ねる。

 どうしてこうなったのかを伝えようとしたその時、フォルネウスギルディがぴくりと何かを感じ取ったかのように俺の方を向いた。

 

「むむっ!! 今確かに感じたぞ!!」

 

 何かに食いついた様子のフォルネウスギルディが急接近。

 目を輝かせながら手を握り始めた。

 

「な、なんだよ……急に……」

 

「俺の目は……いや、俺の魂は誤魔化せん!! お前のその身に宿す少女の姿……!! や、やはり素晴らしい……!!」

 

 どうやらフォルネウスギルディの奴、一体化しているティアナに気が付いたようだ。

 大方、ティアナの持つ極限のツインテールに惹かれたのだろう。

 俺は事情を理解するのに早いと思い、ティアナと人格を交代する。

 

「ちょ、ちょっと和輝……!! 何よ急に……!!」

 

(一々、説明するのも面倒だしな。そいつがどんな奴か直接知ってくれってな)

 

 そう言われて困惑しているティアナだが、フォルネウスギルディの熱い握手にまんざらでもなさそうではある。

 ティアナはエレメリアンに対してそこそこの敵意はあれど、ツインテールを褒められるのは悪い気はしない。

 

「素晴らしい……!! 是非とも生身のそれに触れたいものだ……!! この分厚い装甲さえなければ……!!」

 

「もう、いくらエレメリアンでもそんなに褒めないでよ。私のツインテールは……って、装甲?」

 

「そうだ!! 是非あなた様の基地に着いたらその美しい胸を俺にさらけ出してくれ!!」

 

 あれ? これに似た展開、前にも見た気がするぞ?

 もしかして……コイツの属性って……

 心の中で嫌な予感を感じ取ると同時に大地を照らす太陽が雲に覆われ始める。

 一体化している事で感じるティアナの沸々とした怒りが燃え上がる。

 

「ちょっとあんた……あんたの属性って……」

 

「無論、誇り高き貧乳属性(スモールバスト)であります!!」

 

 そう自信満々に言い切ったその瞬間、ティアナことテイルバイオレットの拳がフォルネウスギルディの顔面を無残な形へと変形させる。

 ヤバい、恐れていた事が起きちまった……!!

 

「な、何をなさるのだ!! 俺に敵意はありませぬ!! 貧乳のプリンセスよ拳をおろしてください!!」

 

「誰が貧乳のプリンセスですってぇ!?」

 

 こうなってはもう止まらない。

 俺が心の中で止めようとしても何の意味もない。

 テイルバイオレットは必死に敵意はないとアピールするフォルネウスギルディの言い分に聞き耳を持たずに乱暴な拳を叩きつけ始める。

 

「うわああああ!!! テイルバイオレットがおかしくなった!!!」

「やめてー!!! そのタコさんは何も悪い事してないんだよー!!」

「ダメだ逃げろー!! 巻き込まれるぞー!!!」

 

 地獄絵図とはこの事か。

 目を血走らせながらボコボコに殴り始めるテイルバイオレットの乱心に戸惑い叫び逃げる人々の声が聞こえる。

 

「落ち着いてバイオレット!! そのエレメリアンは敵の情報を持つ貴重な――」

 

「うるさい!! 邪魔しないで!!」

 

 すかさず止めにかかるテイルブルームであったが、ティアナの暴走はそんな物で止まる程やわな物じゃない。

 羽交い絞めにされながらも全く止まる気配がない。

 俺も心の中で必死に止めようとするが、まるで聞き耳を持ってくれない。

 

(やめろティアナ!!)

 

「やめてバイオレット!!」

 

「そうですぞやめてください!! 私はただ皆に愛される貧乳を守ろうと……!!」

 

「どいつもこいつも……!!」

 

 ティアナの怒りが最高潮に達した時、それに呼応するかのように青い光がテイルドライバーのエンブレムから飛び出し、そして……

 

『総愛!! それはいけません!!』

 

「うるさいうるさいうるさいうるさい!!」

 

 トゥアールさんの制止すらも聞かずティアナはその力を解放させる。

 全身を攻撃性に特化させた青き追加装甲(テイルアーマーB)が身を包み、ツインテールの穂先が青く染まった事でその変身が完了。

 同時に俺の意志も怒りの感情に飲まれていった。

 

「うっがああああああああああああああああああああああ」

 

 俺が最後に聞くことが出来たのはティアナの放つ獣の如き咆哮だけだった。

 

 

 

 

『スタジオの皆さんご覧ください。先程、突如狂暴化して暴れ出したテイルバイオレットによって現場はこのように酷い有様で――』

 

 ブチッとテレビの電源が落とされ、俺たちみんなの大きなため息が部室内に木霊する。

 先程、テレビから流れていたのは暴走したティアナが暴れ散らかした惨状を伝える中継映像だ。

 一体化していた影響で俺も一緒に暴走に飲まれていたから、具体的にどれ程酷い事になっていたかわからなかったがあれは酷い。

 当時の状況を撮影したVTR映像では、エクストリームエモーショナルへ変身したテイルバイオレットが非暴力を訴えるフォルネウスギルディ相手に一切の容赦も加えずに拳一つでボコボコしており、もう力尽きて動かなくなっても手を緩めずにマウントポジションで殴り続ける様子は最早R15に相当するような映像と言ってもいい。

 しかもだ、ただエレメリアンをボコボコにするならまだいい、なのにティアナの奴は完全に理性を失っていたからなのか、周囲の被害も何も考えず暴れ散らかしそれを止めようとしたテイルブルームをもその鉄拳の餌食にしたんだ。

 結果、世間からのイメージはかなりヤバい事になっている。

 

「ありゃ~、これ見てくださいよ先輩。『青いテイルバイオレットは危険!?』とか『テイルバイオレット、無抵抗の怪人を撲殺』だってよ」

 

「悠香……。さっきの映像、もう全世界に拡散されてるよ……」

 

 ネットニュースとSNSをチェックする匠と青葉さんの報告を受けて悠香さんは苦笑いを浮かべた。

 

「こりゃあ、イメージ回復は難しいわね~」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 一方、当の本人であるティアナは部屋の隅で壊れたおもちゃのように謝罪の言葉を連呼し続けていた。

 ただでさえ昨日の失敗で精神的にきていたのにこれは確かに辛い。

 いやまぁ、暴走したのも全部ティアナのせいと言えばそれまでなんだけどよぉ……

 

「大丈夫よ橘さん。先生は何も気にしていないから……ね?」

 

 優しく声をかけながら励ましにいくのは華先生だ。

 華先生は先程の暴走騒ぎの際にティアナを止めるべく動いたある意味で今回の件に関する救いのような存在だ。暴れるティアナを止める為に負傷したって言うのにこの対応は教師の鏡と言える。

 だが、正直言って事態は華先生が何も気にしていないからといって解決するものでもない。

 何故なら……

 

「そんな事ない!! だって華先生のテイルギア……私のせいで壊れちゃったんでしょ……?」

 

「そ、それは……」

 

 そう。なんと華先生のテイルギアは先程のティアナを攻撃を受けて破損状態に陥ったらしく、現状、変身をしようとしても出来なくなってしまったんだ。

 これは華先生自身が一切の反撃を行わずに無力化しようとして結果として失敗したのも原因ではあるのだが、こればかりは責めることができない。

 レヴィアタンギルディとの戦いが今後控えているってのになんてこっただぜ全く。

 

「ティアちゃん大丈夫よ、華先生のギアはトゥアール先生が何とかしてくれる。そうでしょ?」

 

「でも……」

 

 悠香さんもフォローに回るがティアナは何も変わらない。

 ずっと自責の念に囚われてる。

 

「おい和輝、お前彼氏なんだし励ましてやれよ」

 

「いや、そうは言ってもよぉ……こればかりはなぁ……」

 

 こうなる事を予想しなかった上に暴走を止めれなかった俺も悪いと言えば悪い。責任は俺にもあると理解はしている。

 だけど、ここまでなっちまうのはもう、ティアナ側にかなり問題があると言ってもいいのもまた事実だ。

 ティアナがここまで自分の胸にコンプレックスを抱くようになった理由。

 それはきっと、愛香さんの娘だからただ遺伝しただけとは考えられない。

 何か、もう一つ、大事な何かがある筈だ。

 

「くっそ……レヴィアタンギルディクラスの強敵がまだ控えているかもって言うのによ……」

 

「確か七つの性癖(セブンス・シン)だったかしら? 名前から推測するにあと他にも6体のエレメリアンが控えていると見てもいいわね」

 

「せめてもの収穫としてはそれプラス、アルティデビル内部で何かが起きているって事を知れたくらいっすかね?」

 

「そうね。アルティデビルってのはアルティメギル程の統率力はないって所は大きな収穫よ」

 

 一体、アルティデビルに何が起きているのか。

 もし、フォルネウスギルディを問題なく仲間に引き込んでここに招く事が出来ていたのならそれら全ての謎がわかったかもしれないと思うともどかしい。

 俺個人としてはライバルとしてしのぎを削ったバアルギルディの事が気がかりだ。

 バアルギルディは夏の決戦の後、誰も姿を見ていないらしく、中には俺が倒したとぬかしやがるエレメリアンまでいた始末。怪しいのはコミケで現れたベリアルギルディと名乗るムカつく黒いエレメリアンなんだけどよ……

 

「ああもう……!! 何がどうなってんだよ!! てかこんな時にトゥアールさんは何処行ったんだよ!!」

 

 頭がパンクしようとしている中、俺はふとこの場にトゥアールさんがいない事に気が付いた。

 いつもならこういう会議をする時はトゥアールさんも参加して年長者として色々な意見をくれたり説明をしてくれるってのに、今日に限っては一体何処にいったってんだよ。

 

「いや、それがね……。あたしたちも今日まだ見ていないの」

 

「は? どういうこったそれ?」

 

「いやさ、俺たちさっきまで基地で様子を見ていたんだけど、そこでもトゥアールさんは見てねーんだよ。何つーか昨日からずっと自室に引き籠っているようみてーなんだ」

 

 悠香さんと匠の説明を交互に受けて状況を把握する。

 どうやらトゥアールさんは昨日部屋に行って以降は誰とも会っておらず、さっきの通信も自室から送っていた事になる。

 

「やっぱり、何かあったんだな……」

 

 レヴィアタンギルディとの初戦でトゥアールさんは俺たちを逃がすべく体を張り、結果として何かをされている。

 姿を見せないのはそれが原因とみて間違いない。

 幸い、さっきの通信中の声色からして命の危機が起きる何かではない様子だが、危険な事に変わりない。

 

「ダメ……。私もうツインテールに顔向けできない……」

 

 部屋の隅で沈んでいるティアナを一目見る。

 パートナーとして今は一緒にいてやるのが普通かもしれないが、今の俺がいても何も変わらないし意味がない。

 状況を変える為にも今はトゥアールさんに直接会ってティアナの事とか俺が知らない事を問いただすべきだ。

 

「華先生、すまねぇがティアナを頼む。俺はトゥアールさんに会って来る!!」

 

「わ、わかったわ。あ、これもお願い」

 

 華先生は首にかけている変身アイテムテイルペンダントを俺に投げ渡す。

 俺はそれをしっかりキャッチすると今度は悠香さんたちへと向き直る。

 

「悠香さん、頼むけど――」

 

「わかってるわ。テイルバイオレットのイメージ回復でしょ? 偏向報道はあたしのポリシーに反するけど、やるだけやってみるわ」

 

「すまねぇ、恩に着る」

 

 頭を下げる俺に対して、悠香さん、青葉さん、匠の三人がサムズアップ。

 俺は仲間たちに感謝しながら地下基地に向かうエレベーターに乗り込んだ。




愛香さん誕生日おめでとうございます。
まぁ、そんな日に書く話がこんなのでいいのかとは思いますけど、愛香さんだし仕方ないね。
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