俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第12話 ツインテール・インタビュー

「あなたテイルバイオレットでしょ」

 

 その一言は俺たちから言葉を失わさせるには十分すぎた。

 沈黙するということはすなわち肯定していると同義だ。何か誤魔化そうにもいいアイデアが浮かんでこない。

 口元に薄っすらと笑みを浮かべ、飄々とした態度をしながらそれでいて、どこか堂々ともしている独特の雰囲気の上級生に俺とティアナと匠の三人はただただ圧倒されていた。

 

「聞こえなかったかしら? ならもう一度言うわね、あなたテイルバイオレットでしょ」

 

 正にしてやったりという表情。

 上級生は口元を二ヤリと歪ませながら再び尋ねてきた。

 何なんだ、この人からあふれ出ている確固たる自信は? 何か確固たる証拠でも持っているのか? 

 

「な、なに言ってんだよ!? コ、コイツがテイルバイオレットな訳ないだろ!?」

 

「そ、そうよ!! 大体和輝は男よ! テイルバイオレットの訳が……」

 

 少し遅いが、匠とティアナが誤魔化しにかかった。だが、雰囲気に飲まれてしまっているのか全体的にはきはき喋ることができていない。

 

「ふーん、じゃあこれは?」

 

 そう言うと上級生は制服のポケットからタブレット端末を取り出した。

 まさかとは思いながらも俺たち三人はそれぞれタブレット端末の画面をまじまじと見つめる。

 

「「「!?」」」

 

 結果を言うと、ある程度予想していた通りだった。

 画面に映っていたのは一つの動画。変身する直前の俺の姿が青紫の光に包まれテイルバイオレットに変身する様子だった。

 特撮でよくある合成やCGといった類の物ではないことは誰がどう見ても明らかなほど鮮明に映っていた。

 固まる俺たちに上級生は笑顔で告げる。

 

「テイルバイオレットがあなただと言うことに認めてくれるかしら?」

 

 ヤバい、この状況は今までエレメリアンと戦ってきた中で遭遇したどんな状況よりもヤバい。

 こんな動かぬ証拠を突き付けられてしまっては匠とティアナの両方とも何も言い返すことができない。

 

「……あんた、一体何者だ? この動画はどこで撮った? ……答えろ!!」

 

 少しの沈黙の末に俺の口から出た第一声はそれだった。

 質問を質問で返す形にはなってしまったが、テイルバイオレットの正体が俺だということを認めてしまう訳にはいかなかった。

 認めてしまえばこの人は写真をネットにばら撒くぞと脅すかもしれない。いや、もうばら撒いてしまった後かもしれない。

 その焦りがいつも以上に俺の口調を荒くさせていた。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったわね、あたしはこういう者よ」

 

 流石といったところか。口調を強くしたというのに全くと言っていいほど、動じていない。

 飄々とした雰囲気を崩さずにポケットから紙切れを取り出しては俺、ティアナ、匠と三人分キッチリ渡してきた。

 

『双神高等学校新聞部 部長 片霧悠香』

 

 紙切れは名刺であった。それも社会人が使うような綺麗な代物。

 俺たちの通う双神高等学校の新聞部が発行しているネット新聞は、アマチュアながらその内容やスクープの正確さから高い人気を誇っている。

 その人気は校内だけではない、ネット新聞なので学校のホームページや新聞部の公式Twitterからも読むことができることもあってその人気は全国レベルだ。

 内容としては学生目線から見た政治関連のような硬派なものから超常現象を調査してみたなどのバラエティー溢れるものまである。

 

「誰?」

 

 ティアナのみ名刺を見てもピンときていない様子で首を傾げていた。

 当たり前だろう。なにせティアナは今日、学校に通いだしたんだ。

 俺も愛読者の一人なので名前だけは知っているのもあるが、読んでいない人達もしその名は知っている者が多い。

 なんせ現在の新聞部は部長である片霧悠香一人で運営しているという噓か真かわからぬ噂が存在するくらいだ。

 

「この人は校内でも指折りの有名人だよ」

 

 失礼にならないように首を傾げるティアナに耳打ちする。

 

「そんな人が俺たちに何のようすか……?」

 

 その名を見てから匠はすっかり萎縮してしまっている。さっきまでの勢いがまるでない。

 

「色々勘違いしているみたいだし、とりあえず場所変えない? 立ち話も疲れるでしょ?」

 

 ウインクしながら提案する悠香さんを見て俺は言い表せない嫌な予感がした。

 

 

 

 

 俺たちはさっきまでいた屋上の丁度真下に位置する場所、旧校舎一階の最奥、誰も近づこうとしないような辺境に存在している物置のような部屋の入口にやってきた。

 部屋の入口に妙に達筆な文字で書かれた歴史を感じる看板が立てかけられていた。

『双神高等学校 新聞部』それが今、俺たちの目の前にあった。

 

「お邪魔しま~す……ってなんじゃこりゃ!?」

 

 先に悠香さんと部屋に入った匠の驚愕の声が聞こえてくる。

 恐る恐るティアナと共に覗いてみると驚愕の正体がわかった。

 部屋の中は散らかっておりとてもじゃないが綺麗な部屋とは言えなかった。

 あちこちによくわからない道具や資料、さらには悠香さんの私服と思われるお洒落な服などが散乱していて足の踏み場なんてあったものではない。

 悠香さんが整理整頓が苦手なタイプなのは丸わかりだ。

 

「汚いけど、適当にくつろいで」

 

 悠香さんはくつろいでと言っているがこの惨状でどうやってくつろげばいいのか俺にはさっぱりわからない。

 ティアナと匠もこれには呆れを通り越して渇いた笑いを浮かべている。

 当の本人は足の踏み場のない部屋の中をひょいひょいと軽やかに移動し、部屋の奥に数台置かれているパソコンの椅子に腰掛ける。

 俺たち三人は慎重に慎重に足場を確保しながらなんとか部屋の中央に置かれたソファに腰掛ける。目の前のテーブルも上に物が散乱し、全くといっていいほどテーブルの表面が見えない。

 てか裸の女の子が映ったゲームらしき物があったような……

 

「よし、じゃあ改めてちゃんとした自己紹介と行きましょうか!!」

 

 悠香さんは両手をパチンと叩いて自己紹介をし始める。

 

「もう知ってるかもしれないけど、あたしの名前は片霧悠香。悠香でいいわ。この新聞部の部長をやっているの。ちなみにあなたたちより一つ年上のピッチピチの18歳よ」

 

 前半は凛とした雰囲気で、後半は指でピースを作り、少し前屈みになりながらふざけた雰囲気で悠香さんは自己紹介を行った。

 揺れるポニーテールも優等生のような雰囲気からギャルのような雰囲気に一瞬の内に変える。一瞬の内に雰囲気を変えるその様は実に見事だ。

 

「……」

 

 胸を強調するポーズで言ったこともあり、隣のティアナが青筋を浮かべいた。ティアナは青筋を浮かべながらも必死に怒りを抑え込んでいるのが見て取れる。

 まぁ、胸にコンプレックスを持っているティアナが怒りを覚えるのは無理ないかぁ……

 

「ツインテールがポニーテールに負けたように見えて腹立つのよ」

 

「そっちかよ!!」

 

 てか心を読むなよ……

 まぁ、確かにあのポニーテールは見事だ。ツインテール一筋の俺を唸らせるほどにはな。それにしてもいくら胸にコンプレックスを持っているティアナといえど胸<ツインテールなんだな……

 

「あなたたち随分と仲良いわね、もしかして二人付き合ってる?」

 

 俺とティアナの様子を見て悠香さんが食いついた。

 正直、この質問は今日一日中、男連中から聞かれた質問だ。もう答えるのも飽きてきた。

 

「「違います!!」」

 

 寸分違わない見事なハモリっぷりで俺とティアナは答えた。

 

「ふ~ん、そうなんだ~」

 

 相も変わらずニヤニヤとしながら悠香さんは俺たちを見つめてきた。

 言っておくがこれは本当だ。ティアナは共にエレメリアンと戦う大事な相棒であり、それ以上でもそれ以下でもない。

 ……でも何故だが引っかかる。

 

「じゃあ、もう一人紹介するわね。私の相棒」

 

「「相棒?」」

 

 噂通り新聞部は現在悠香さん一人しかいないと思っていたがどうやら違うようだった。

 冷静に考えれば一人であのレベルの記事を作成するなんて可笑しいとわかるのだが……

 悠香さんは部屋の中で最奥に位置するパソコンの陰からもう一人の人物を引っ張りだしてきた。

 

「ほら、お客さんが来ているんだから挨拶挨拶!」

 

「……いま、いい所なのに……」

 

 陰から現れたのは悠香さんとは打って変わって暗い雰囲気漂う女性。女の子と思えぬボサボサ髪に瓶底眼鏡、典型的なオタクといった感じだ。

 ネクタイの色からして彼女も上級生だろう。

 

「青ちゃん、ファイト!!」

 

「………………僕は神外青葉、よろしく……」

 

 随分と小さい声だ。危うく聞き逃すところであった。

 青葉さんは短い挨拶を終えると再び、奥のパソコンの前にそそくさと戻っていた。

 

「ごめんね、青ちゃんちょっと人見知りが激しいの」

 

 青葉さんが人と関わることが苦手なのはこの短時間でひしひしと伝わってきた。

 

「で、何が目的なんすか? あんな動画なんか撮って」

 

 青葉さんのせいもあって完全に当初の目的を忘れていたが、匠は忘れておらず話をもとに戻してくれた。

 ナイス!!と心の中で匠に感謝する。

 

「あれはただ和輝君にテイルバイオレットだと認めさせるためよ。まだ誰にも見せてないから安心して。一応言うけど苦労したのよ、あの動画とるまでどれだけ走り回ったことか……」

 

 随分と軽い感じではあったものの、嘘を言っているようには見えなかった。

 

「……僕も苦労したよ……アルティメギルの出現場所の予測……何日間、パソコンと睨めっこしたか……」

 

 遠くから小さい声で青葉さんが補足説明いれる。

 幾らエレメリアンがここ最近、近場にしか現れないからといって出現場所を予測するなんて……

 青葉さんの情報収集能力は凄い。

 ちなみにアルティデビルはアルティメギルと違って全世界に向けて宣言をしていないこともあり、世間一般にはアルティメギルが再び攻めてきたと思われている。

 何はともあれ悠香さんと青葉さんの二人しか正体がバレていないとわかり少しホッとした。

 

「で結局、何でコンタクトを取ってきたんすか?」

 

「そんなの決まってるでしょ、テイルバイオレットを取材するためよ」

 

 新聞部がテイルバイオレットを追う理由なんて考えてみればこれしかない。

 だけどそのために変身している現場を動画にとって本人に見せつけてくるとは……

 片霧悠香、その行動力末恐ろしい。

 

「さっきの動画を削除して記事内で正体をバラさないのなら取材でも何でも構わないですけど……」

 

「和輝!?」

 

 ティアナは反対しているみたいだが、俺は条件付きで許可することにした。

 正直言うと取材とかインタビューとかは経験したこともないからこういうのはかなり苦手だけど、さっきの動画を消してもらうには受けるしかない。

 悠香さんは取材を受けないなら動画を公開すると脅すような器の小さい人ではないのは、話していてわかるのだが懸念材料になる物は少しでも消していきたい。

 

「ほんと!? 取材できるなら動画なんて消す消す、なんなら今消すわ。青ちゃんお願い!!」

 

「……相変わらず使い方が荒い……」

 

 青葉さんの愚痴が聞こえるがやり取りからして長年付き合ってきたコンビといった感じが伝わってくる。

 付き合いだけなら匠との関係も相当の物だと自負しているが、とてもじゃないがこの二人には勝てない、そんな気がする。

 

「それじゃいくわね……まず必殺技は何? そして何のために戦っているの? やっぱり世界平和かしら? 後、どうして女の子になるの? 変身ベルトに秘密があるから?」 

 

「ストップ!! ストップ!! 落ち着いてくれないとこっちも喋れないっての!!」

 

 悠香さんは興奮しているのか質問が矢継ぎ早に飛んでくる。

 この人、本当に伝説の新聞部部長か? 興奮する気持ちはわからなくもないけどこれでは答えるのが難しい。

 

「あ、ごめんごめん。ついつい興奮しすぎたわ。それじゃあまずは――」

 

 

 

 

 その後、落ち着きを取り戻した悠香さんは今度はゆっくりと取材を再開してきた。

 落ち着いている悠香さんと喋っているとこの人が本物の新聞部部長だと改めて再認識させられた。

 悠香さんは喋るのが上手い。取材を受けたことがないこともあり少し緊張していた俺だが、悠香さんと喋っているうちに緊張がほぐれていきスラスラと答えることが出来るようになっていった。

 

「先日、戦った奴なんて俺の汗を舐めようとしたんだぜ、気持ち悪ったらありゃしねぇよ」

 

「フフッ、それは災難だったわね」

 

 つい数分前では決して思えぬほど俺は悠香さんと打ち解けていた。

 遠くでは匠が青葉さんとパソコンでゲームをしている様子も見える。

 一方、ティアナは……

 

(どうして、どうしてこんなにもイライラするのよ、ただインタビュー受けてるだけじゃない)

 

 壁にもたれかかりながらイライラした表情でずっとこっち側ばかり睨んでいた。

 その様子に気づいた悠香さんが不適な笑みを浮かべていたのが見えた。

 嫌な予感がする。

 

「それじゃあ、最後の質問ね。あなた、付き合っている女の子とかいるのかしら?」

 

 その嫌な予感は直ぐに的中することになった。

 最後の質問、悠香さんは胸を押し付けながら質問してきた。

 

「「……!?」」

 

 制服越しでもその弾力は十分伝わってくる。

 その感触例えるならマシュマロ、ティアナは決して得ることができぬ代物だ。

 女性に胸を押し付けられるなんて初めての経験なのもあって少し興奮してしまう。

 遠くから匠と青葉さんが悔しそうな顔と怒った顔をしているのが見えた。

 

「もう我慢できないわ!! ちょっとあなた!! 離れなさいよ!!」 

 

 今まで黙っていたティアナが俺と悠香さんを強い口調で引き離しにかかってきた。

 力任せに引き離したのもあって少し痛い。

 

「和輝に彼女なんていないわよ!! 大体、その質問の意図がわからないわ!!」

 

 確かに俺は彼女いない歴=年齢の童貞君だが、ティアナに言われるのは傷つくし腹が立つ。

 

「お前な――」

 

「あなたには聞いてないわよ? 私は和輝君に聞いているの。それにあなたは付き合ってないんでしょ?」

 

 久々にティアナに言い返そうとしたが、悠香さんが俺の言葉を遮ってきた。

 ティアナは悔しそうに歯軋りをしているが悠香さんは相変わらずニヤニヤと不適な笑みを浮かべていて余裕がある。

 

「……私たちは遊びで戦っているんじゃないのよ!! さっきから聞いていれば楽しそうに話しちゃって、こんな質問が一体何の役に立つのよ!!」

 

 ティアナの奴、興奮しているのか全く関係ないことまで言い出した。

 俺はふと匠との一件を思い出した。

 あの時の俺は今のティアナのように興奮しており、匠を殴ってしまった。

 ティアナのことだし、暴力を振るうことはないと思うが、万が一のことがある。もしティアナが暴力を振るったら悠香さんの命が危ない。それほどまでにティアナは力が強い。

 

「ティアナ、落ち着け!!」

 

「和輝は黙ってて!!」

 

 とりあえず宥めようと声をかけるが聞く耳を持ってくれなかった。

 まるで初めて出会ったあの日のようだ。

 

「ティアナちゃん、彼女がいるかどうかは意外と重要よ? それに」

 

「何よ!!」

 

「戦いを見ていてもあなたが戦闘において役に立っているようには見えなかったけど?」

 

 悠香さんの一言はティアナに深く突き刺さったようだった。

 言い返すこともなくティアナは黙って部屋を出て行ってしまい、俺は立ち尽くすことしかできなかった。

 

(ちょっと言い過ぎちゃったわね……)

 

 悠香さんは少し申し訳なさそうに部屋の外を見つめていた。

 そして俺はハッと我に帰る。そうだ行かなくては……

 

「待てよ!! ティアナ!!」

 

 俺は一目散に部屋を飛び出し、ティアナの後を追った。




このような未熟な文章ですいません。ラブコメって難しいですね。

 キャラクター紹介5

 片霧悠香(かたきりゆうか)

 性別:女
 年齢:18歳
 誕生日:4月10日
 身長:158cm
 体重:46kg
 B84・W55・H82

 ポニーテールが特徴の新聞部部長。
 行動力が高く、スクープは足で集めるタイプ。
 記事の為なら時に大胆な行動を起こすなど大人しい青葉とは正反対。
 彼女の先輩にあたる新聞部の部員たちは彼女の能力を目の当たりにして辞めていったらしい。

 神外青葉(しんがいあおば)
 
 性別:女
 年齢:17歳
 誕生日:10月4日
 身長:154㎝
 体重:39㎏
 B72・W52・H74

 手入れしていないようなボサボサ髪と瓶底眼鏡が特徴の新聞部副部長。
 人と接するのが苦手で悠香のような一部の人としか滅多に喋らない。
 表にでないこともあり一般的には認知されていない。
 パソコンを使っての記事作成や情報収集を担当。
 
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