俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第121話 VS超乳 前編

 ティアナを狙い、この世界へと侵攻するアルティデビル。

 その基地の中は、数日前、強力な洗脳能力を有するレヴィアタンギルディによって『超乳こそ全て、巨乳はおろか貧乳などもってのほか』といった偏った考えに染められてしまっていた。

 誰もが自慢の造形物の胸を過剰に盛ってはそれを見て頷き合い、褒め合う。

 一見すると平和その物だが、それら全ては故意に歪められた物だ。

 幼い外見が特徴のテイルレッドのフィギュア、その胸が過剰なパテによって盛りに盛られては、乳房の先端が台座部分に触れんとしており、それを誰もが肯定して褒めたたえているのがその証拠だろう。

 

「素晴らしい……。身体は幼く、しかし胸は超巨大。これこそ理想とするレッドたんの姿だ……」

「なんの!! 俺のレッドたんはもっと大きいぞ!! 見よ!! このはちきれんばかりの乳房を!!」

「なーに、大丈夫ですよ~レッドた~ん。もっともっと、も~っと、パパが盛ってあげますからねぇ」

 

 これを本人が見たらどう思うのか。

 きっと彼は、もっとツインテールにも目を向けてくれと言うだろう。

 それほどに狂わされてしまった今の彼らには胸しか見ていない。

 

「ふん、愉快愉快。絶景かな絶景かな」

 

 基地内の各種ホールや部屋、それらに繋がる通路、その全てにおいて皆が超乳を信仰しているその狂った光景を見て笑う者が一人。

 それはこれらの光景を作り出した張本人、レヴィアタンギルディだ。

 

「大は小を兼ねる? ならば特大や超特大は何を兼ねる? 答えは簡単、この世の全て、ありとあらゆる全ての属性を兼ねるのだ」

 

 レヴィアタンギルディは超乳属性こそが最強であるツインテール属性をも凌駕する属性であると考えている。

 この世の中は胸の大きさこそ全て。

 胸が貧しき者では例えツインテールがいかに素晴らしかろうともレヴィアタンギルディの心を動かせない。

 その対象が巨乳や超乳とは無縁の子共であろうとだ。

 

「ここにいたのかレヴィアタンギルディ」

 

「ん?」

 

 十字に組んだ通路を抜け、そのまま真っすぐ歩くその後ろ姿に声がかけられは振り返るレヴィアタンギルディ。

 十字路の右手、先程曲がらなかった方の角から姿を現したのはベリアルギルディだった。

 

「おお、誰かと思えばベリアルギルディ、お前だったか」

 

 親し気に話しかけに行くレヴィアタンギルディ。

 だが、そんな彼とは違い、ベリアルギルディは腕を組んで壁にもたれかかるとそのまま睨みつける。

 

「貴様、まだこんな所でグズグズしていたのか?」

 

「何……?」

 

 レヴィアタンギルディはピリピリしたその空気を感じ取り、眉をひそめる。

 一触即発とはまさにこの事だ。

 レヴィアタンギルディはその股間の触手を構え、ベリアルギルディはどす黒いオーラを放っては牽制してみせた。

 

「グズグズしているだと? どういう事だ?」

 

「どういう事ではない。オレ様としては貴様が延々とこの基地内で遊んでいるその姿が少しばかり目に余って仕方ないだけだ」

 

「遊んでいる……か」

 

 ベリアルギルディとレヴィアタンギルディ。

 二人の関係性は少々特殊だ。

 ベリアルにとって、彼ら七つの性癖(セブンス・シン)は自らが選びスカウトした協力なエレメリアンの集団であるが、彼らはベリアルギルディに忠誠を誓ってはおらず、いうなれば彼らの関係性はちょっとしたビジネスパートナーのような関係と言えるだろう。

 ベリアルギルディは報酬を用意し、レヴィアタンギルディたちはそれに見合った仕事をこなすと言った物であり、上下関係が明白なアルティメギルのような組織ではないタイプだ。

 無論、それ故に七つの性癖(セブンス・シン)内部も決して仲が良くない。

 いや、それどころか、仲間意識という感情すら持っていないのが正しい。

 

「オレ様は最初に提示したはずだ。この世界にてテイルバイオレットの片割れであるあの少女を捕らえてオレ様に差し出せば、この世界と俺が目を付けた他大量の世界を丸々好きに侵略してもいいとな。なのに貴様は何だ? 初陣こそ良かったものの、それ以降はこの基地に籠り、他の実験動物以下のカス共を洗脳して回る毎日じゃあないか」

 

 一応、ベリアルギルディは彼にしてはかなり待ってあげてはいた。

 実際、レヴィアタンギルディが出撃もせずにこの基地内を超乳で染め上げる行為については何も文句は言ってはいない。

 ただ、いつまで経っても出撃しないその様子に少し腹を立てたのだ。

 

「そいつは悪かったなベリアルギルディ」

 

「それに言っておくが貴様の行いによってこの基地から約十数程度の脱走者が発生している。オレ様としては奴らがどうなろうと知った事ではないが、これ以上の計画の遅れと減ってしまったカス共の数はつり合いとれんぞ」

 

 レヴィアタンギルディの内部侵略によって生じた不都合の一つにアルティデビルを離脱する者が増えたという事もある。

 先日のフォルネウスギルディはその一人に過ぎず、ベリアルギルディの記録している限りではもっと多くの者が恐れを抱き脱走したのだ。

 

「そいつはすまんベリアルギルディ」

 

「ふん。わかれば良し。ならさっさと行け、あの少女を狙うのは我々だけでなく、テイルレッドの贋作もいるのだからな」

 

 ベリアルギルディはアナザーテイルレッドを警戒していた。

 エクストリームチェインに倒された所を見たとは言え、まだ奴が生きてチャンスを伺っているのをベリアルギルディは理解しているからだ。

 

「それにあの憎きテイルホワイト……単身この世界で姿を現したかと思えば今は何処に……」

 

 ベリアルギルディの目的、それは愛しき者を奪ったツインテイルズへの復讐だ。

 とりわけその中でも、ベリアルギルディはテイルホワイトへの憎悪で溢れている。

 先日のアナザーテイルレッド事件の際に姿を現したテイルホワイトを見た時、自室にて激しく動揺し暴れたものだ。

 

「テイルホワイトか……」

 

 テイルホワイト。

 その名を聞いて何かが引っかかった様子を見せるレヴィアタンギルディ。

 テイルホワイトについてはどんな情報でも欲しいと思っているベリアルギルディは気になり、問いかける。

 

「どうしたレヴィアタンギルディ?」

 

「いや、少しは話は逸れるし、言い訳みたいな物なんだが、俺はこの世界に初出撃した際、とある女に邪魔をされてな」

 

「ほう?」

 

「その女は我々の求める少女の母を名乗っていたんだが、それはそれはデカイ乳を持っていてな。いや、無論、俺の求める超乳からは程遠かったのだが……」

 

「そこはどうでもいい。それよりもなんだ? その女がテイルホワイトとでもいいたいのか?」

 

 話を大きく脱線しかけたレヴィアタンギルディを咎めてその女とやらについて詳しく聞こうとするベリアルギルディ。

 ベリアルギルディはテイルホワイトがトゥアールである事を知らないのだ。

 

「いや、その女からはツインテール属性を欠片も感じなかったぞ。だが、超乳の素質と持っている科学力は中々の物だ」

 

 超乳の素質というどうでもいいワードをスルーした上でベリアルギルディはその女とテイルホワイトの関係性を考える。

 一体その女は何なのだ? レヴィアタンギルディは違うと言っているが因果関係からしてその女がテイルホワイトなのは明白な筈……だが、なら何故単身この世界でテイルバイオレットを支援するような真似をしているのか?

 スパコン並みの頭脳を持つと自負するベリアルギルディと言えどこの謎を解明するのは中々に酷と言える。

 

「で? その女はどうした? 始末したのか?」

 

「始末するなんてもったいない。俺は奴の胸の肥大化する毒を注入してやったまでよ。今頃、地面に乳房の先端がつく程には大きくなっている筈だろう」

 

「成程、つまり貴様はその女の胸がお前好みの大きさになるまで待っていたという訳か」

 

 そう、それこそがレヴィアタンギルディがこの基地内に籠っていた理由だ。

 レヴィアタンギルディはトゥアールの胸が自分好みの超特大サイズへと成長するのを待っていたおり、その暇つぶしがてらにこの基地内を超乳で埋め尽くしただけに過ぎない。

 

「いいだろう。ならば任務追加だ。レヴィアタンギルディ、貴様には引き続きあの少女の身柄確保と同時にその謎の女を始末しろ。無論、方法は問わん。全身のありとあらゆる栄養を胸に集中させるように改造するくらいは訳ないだろう?」

 

「おお、流石は天才。その手があったか。全身を巡るエネルギー全てを胸へと集中させて超乳すらも超えるさらなるサイズの胸へと改造……それこそ俺の求める全てなのかもしれん……」

 

「あともう一つ。受け取れ、これは少しばかり興味深いデータだ」

 

 ベリアルギルディが投げ渡したタブレットに記載されていたデータ。そこにはティアナとテイルレッド、テイルブルーが映っていた。

 

「これは……いやバカな……!!」

 

「確証はない。が、可能性の一つとしては考えられる。事実、数年前、ツインテイルズのいる世界で似たような事例は確認済みだ。これが本当ならばあの少女があそこまで強大なツインテール属性を持っているのも納得できる」

 

「確かに……あの惨めな貧乳も血は争えないと聞けば納得できる……!! だがこれではあの女の発言と矛盾するぞ」

 

「それは知らん。知りたければさっさと行って確かめろ。オレ様は待つのが嫌いな質だ。はやくあの少女を捕らえ、白衣の女を消せ」

 

 ああわかったと頷くレヴィアタンギルディ。

 かくして、レヴィアタンギルディの狙いにティアナだけでなく、トゥアールも追加された。

 そして、レヴィアタンギルディは己の属性力に突き動かされるままに出撃口へと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 トゥアールさんの身に起きていた事を知った次の日。

 自宅にて朝の支度をしていた俺とティアナのもとにエレメリアン出現の報が入った。

 場所は前々回と同じビーチ。

 強大な反応からしてそれがレヴィアタンギルディの物である事は明白だ。

 俺とティアナは今度こそ倒すと心に決めて現場へと向かった。

 

『ごめんなさい二人とも、先生はまだ行けそうにないわ』

 

『和輝君、私はまだ大丈夫ですので気にせずにやっちゃってください』

 

『そうだぞ和輝。トゥアールちゃんは俺や先生に任せておけ』

 

 基地で見守る華先生とトゥアールさんとおやっさんの大人組三人。

 昨晩、トゥアールさんは自身の身に起きている異常事態を華先生には打ち明けた様子らしく、おやっさん含めた大人組で万が一に備えているって訳だ。

 勿論、ティアナにはまだ詳細を伏せてある。

 だからこそ今回、レヴィアタンギルディをブッ倒せば万事解決だぜ。

 

 

 そして辿り着いた目的地。

 波打ち際の砂浜にてレヴィアタンギルディは腕を組み待ち構えていた。

 

「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ貧しき者ども」

 

 溢れ出る殺気を放ちながら、レヴィアタンギルディはビーチに到着した俺たちへと挑発。

 俺とティアナは停車したマシントゥアールから降りて向かい合う。

 

「それはこっちの台詞だぜ。ずっと引き籠りやがってこのデカ野郎」

 

「心を豊かにとか何とか言ってた癖に、この程度も待てないだなんてどっちが貧しき者なのか言っているようなもんじゃないの?」

 

 負けじと挑発し返す俺とティアナ。

 特に貧乳であるティアナの煽り返しには余程頭にくるのか、レヴィアタンギルディはの目がつり上がり、額に青筋が浮かぶ。

 

「言ってくれるな貧乳風情が……。この俺を超怒らせるとどうなるか……もう一度味わうがいい!!」

 

「くるぞ!!」

 

 刹那、レヴィアタンギルディ自慢の触手が振るわれ開戦のゴングが鳴る。

 素早く振るわれたその一撃の衝撃は砂浜を割り、深い谷底を作りながら俺たちへと迫ったが、俺たちはテイルブレスを掲げてテイルドライバーを召喚し変身する。

 

「「デュアルテイルオン!!!」」

 

 変身の際に巻き起こる旋風が障壁となり、衝撃波をかき消す。

 融合変身を終え、テイルバイオレットエクストリームチェインへと変わった俺はそのまま急速接近。

 間を置かずにそのままレヴィアタンギルディの顔面を大きく横薙ぎに蹴り飛ばす。

 

「……ッ!!」

 

「まだまだぁッ!!」

 

 砂浜を抉り倒れたレヴィアタンギルディへと間髪入れず俺は踏みつけるかのように蹴り、怯んだところに拳を叩きこむ。

 野郎の戦法が特殊な念波や挑発をもってこちらのペースを崩して隙を狙うのがわかっているが故の先手必勝の連続攻撃。

 反撃できるような隙を全く与えずに連撃を繰り返し、フィニッシュに野郎の触手を掴んでそのまま一本背負いの要領で砂浜へと投げつける。

 凄まじい音と共に砂が舞い、大きなクレーターが形成された。

 

「ちったぁ効いたかこの野郎!!」

 

(駄目よ和輝。アイツ全然効いてない)

 

 警戒心を緩めぬように余韻に浸る間もなくティアナから警告が飛ぶ。

 事実、俺としてもこの程度の連撃でやられてくれる相手ではないのでこれはあくまで準備運動に近い物であると理解した上での攻撃だ。

 

『気を付けてください。まだ相手は健在です』

 

 トゥアールさんからの警告も来たその瞬間、砂浜全体が大きく揺れ響く。

 

(下よ和輝!! 代わって!!)

 

 それを理解したと同時に、俺は瞬時に人格を交代しティアナに主導権を渡す。

 私はバックステップを取りその場から即座に離脱してみせた。

 さっきまで立っていた場所へ地下から突き上げる奴の触手攻撃が炸裂。

 轟音が辺り一面に響き渡る。

 

『総愛!? 大丈夫ですか!?』

 

「大丈夫よママ。かすり傷一つ付いちゃいないから」

 

 心配するママへと通信を送りつつ、私は砂舞う戦場で警戒を怠らない。

 ここに来てから感じるレヴィアタンギルディの属性力の高ぶりは以前戦った時の倍以上だと私にはわかる。

 アイツはまだ、全力ですらない……

 

(おい、ティアナ。大丈夫か?)

 

「和輝も大丈夫だってば。お願い、コイツの相手は私に任せて……!!」

 

 あまり相性が良くないのはわかっている。

 でも、コイツを超えれないんじゃ、私は何も成長出来やしない。

 

「ウインドセイバー!!」

 

 フォースリヴォンを触れる事でウインドセイバーを手にする。

 切っ先を突き付けた後、私は飛び掛かりその刃を振るう。

 和輝の乱暴で無茶苦茶な太刀筋とは違う、洗練された剣舞がレヴィアタンギルディを傷つける。

 

「随分と荒々しい攻撃だな貧しき者よ。それが全力か?」

 

「冗談。そんな訳ないでしょ。まだ準備運動も終わっていないんだから」

 

「その口調、その仕草。ほほう……少年ではなく少女の人格へと変わったか」

 

 人格を交代したことを悟られるけど、だからと言ってどうだって事はない。

 それよりも今はどうやって倒すかが問題ね。

 エクストームブレイブとエクストリームエモーショナル。その二つを使わないと勝てないけど、だからと言って負担のかかる両形態を考えも無しに即使用は自殺行為に過ぎない。

 私はなおもウインドセイバーを振るい、レヴィアタンギルディは触手で応戦する。

 

「ふっ、手間が省けるとはこの事か。貴様のような胸にコンプレックスを抱えている者程やりやすい物はない」

 

「言っておくけど、もうあんたの能力は効かないわよ。私には誰にも負けないツインテールがついているんだから!!」

 

(そうだぜティアナ!! 奴の戯言に耳貸してんじゃねぇぞ!! お前にはツインテールがある!!)

 

『そうです!! 総愛には総二様と愛香さんから受け継ぎし育てたツインテールがあります!! そんな胸デカけりゃいいと思っている奴なんかブッ倒してください!!』

 

 そう、和輝とトゥアールママの言う通り。

 私の愛し、今まで育んだツインテールは貧乳だからとかそんなの関係ない。

 ツインテールを心に感じ、心と体、双方で結び続ける限り精神攻撃の一つや二つ効きやしないのよ。

 

「ほう、成程それは手強い。ならベリアルギルディの奴から得た恩恵を存分と活かすとしよう」

 

 ニヤリと笑みを浮かべるレヴィアタンギルディ。

 私は嫌な気配を感じ取ったので何かをする余裕も与えないようにウインドセイバーを高速で振るうけど、レヴィアタンギルディはまるで意に介さずに触手で受け止め弾き返し口を開く。

 

「貴様、テイルブルーと呼ばれる貧乳を知っているか?」

 

「テイルブルー……?」

 

 そう呟いたレヴィアタンギルディの言葉が頭に残る。

 そして、心の中で何かが沸き上がる。

 

「知らんのか? 殺戮の化身と謳われる青き獣、テイルブルー。俺も噂でしか知らんが、奴の胸の無さはかのゼウスギルディですら匙を投げる物だったと聞くぞ。奴もまた、貴様と同等かあるいはそれ以上の貧しき胸を持つ哀れな女……いや獣以下の心の持ち主だ」

 

 貧乳に対してからなのか、嬉々として馬鹿にするレヴィアタンギルディ。

 私としてはその対象がお母さん(テイルブルー)であるとわかり、どうしようもない怒りが燃え上がる。

 

「黙れ……」

 

「噂ではテイルレッドに変身する男児に恋焦がれているようだが、あのような将来性のかけらもない胸を持つ者に言い寄られるとはテイルレッドも可哀想な者よ。俺からすればまだテイルイエローやテイルホワイトの方が幾分マシに見えるくらいだ」

 

「黙れ黙れ……」

 

「そう言えば、実際によく見てみれば貴様のその胸からテイルブルーの面影を感じるな。未来から来た母娘か姉妹か、はたまた別世界に生きる平行同位体か。無論、共通するのは言い寄られる男が超可哀想な所ではあるがな。いや? そんな物を隣に置いている以上、そやつらも随分と貧しい価値観を持っていると見える。何にせよ哀れで嘆かわしい!! それでは折角のツインテールも泣いているわ!! ガッハッハッハ!!!」

 

「黙れぇぇぇ!!!!」

 

 もう我慢ならない。

 私やお母さんだけじゃなく、お父さんや和輝まで馬鹿にするなんて……!!

 抑え込めていた筈の怒りの衝動を解き放ち、私は駆ける。

 テイルアーマーの青い光はそんな私に呼応して身を包み、青き姿エクストリームエモーショナルへと変化させた。

 

(馬鹿!! 落ち着け!! 奴の思う壺だろうが!!!)

 

『総愛!! まだ使用してはいけません!! 今は耐える――』

 

「うるさい!! うるさい!! 私は……!! 私は!!!」

 

 心の中で和輝が、通信越しでトゥアールママが、それぞれの制止を振り切り何も聞こえなくなった私を支配するのは燃え上がる怒りの感情。

 レヴィアタンギルディの放つ禍々しいオーラがその心の中に入り込み、私の心に封じた筈の劣等感を刺激し始めていく。

 もう止められない。もう止まらない。

 コイツだけは……!! ブッ殺す……!!

 

「いいぞぉ。貴様の内に秘めるその劣等感、その嫉妬心。荒れ狂う貴様のその惨めな姿をみて皆が思うだろう!! こんなふうになりたくない、もっと豊かで誰よりも大きくなりたいと!! その気持ちこそが超乳属性を育む!! その劣等感こそが!! 貧乳や巨乳を滅ぼし超乳という真の乳を広めさせる礎となるのだ!!」

 

 レヴィアタンギルディの触手が太く肥大化し襲い掛かった。

 

 

 

 

「落ち着いてください!! そんな状態でその力は……!!」

 

 地下基地のコンソールルームにてトゥアールの悲痛な声が木霊する。

 モニターに映し出されたテイルバイオレットは完全に我を忘れて暴れ狂う真っ最中であり、トゥアールの声は届いちゃいない。

 

『ハッハッハ!! だから言っているだろう!! そんな胸だから皆に恐れられるのだ!! 所詮、エレメリアン含めた我々男は異性を胸でしか見れぬ存在だ!! 貴様のようにいくらツインテール属性を高めた所で同じことよ!! 負け犬の遠吠え程、惨めな物はない!!』

 

『まだ言うかァァァァッ!!!』

 

 エクストリームエモーショナルとなり、ウインドセイバーを二つ連結させてナギナタモードで振るうがしかし、冷静さを欠き荒れ狂う今のテイルバイオレットでは傷一つ付けれない。

 レヴィアタンギルディは触手を巧みに操り弾き飛ばす。

 

『ハッハッハ!! 貴様のその平らな胸では我が聖なる槍を挟み込む事すらできぬようだな!! もっと深い谷を持つ者はいないのかぁ!!』

 

 ナチュラルなセクハラな発言をするレヴィアタンギルディ。

 普段ならツッコミを入れる場面ではあるが、状況が状況故に基地にいる大人組全員がそんな余裕などまるでない。

 画面に映し出されるのは暴走し疲弊するテイルバイオレットといたぶるかのように立ち回るレヴィアタンギルディだ。

 それを見たトゥアールは再びの決心の下に立ち上がろうとする。

 

「くッ……!!」

 

 だが、そんなトゥアールを肥大化した胸が邪魔をする。

 大きさにしてもうNカップなど遥かに超えた胸は今なお肥大化を続けており、もうすでに誰かの助けを貰わぬ限り流石のトゥアールも動きまわるのは至難の業。

 一見するとなんて馬鹿馬鹿しく、どんなシチュエーションだよと思うだろう。

 だけど、その効果は確かに表れているのだ。

 

「大丈夫かトゥアールちゃん!!」

 

「ダメですよ観束先生!! そんな身体で動くのは無茶です!!」

 

 正樹と華がそれぞれ駆け寄る。

 トゥアールは二人に支えられる自分の悔しさに思わず腕にあるテイルブレスレボリューションを見つめるが、その光はアナザーテイルレッドとの戦い以降くすんだままだ。

 

「悔しいのはわかる。でも今の君じゃ無理だ。今はあの二人を信じるしかない」

 

 正樹にそう諭されるも、画面には現在進行形でボロボロになっていくテイルバイオレットの無残な姿しか映らない。

 血のつながっていない義理の存在であろうと、もう一人の母を名乗るトゥアールにとって辛すぎるのだ。

 

『もう終わりか貧しき者よ。こうもあっさり堕ちるとは何とも気が抜けてしまうではないか!! やはり血は争えぬと言う事かぁッ!!』

 

 吹き飛ばされるテイルバイオレット。

 なおもその表情は怒りに飲まれ獣の如き唸り声を上げているが、もう勝負はついているも同然の有様だ。

 レヴィアタンギルディは気をよくしたのか、これら一連の流れを見ているこの基地内に向かって語りかけ始める。

 

『母を名乗る女よ!! 貴様が見ているのはわかっているぞ!! いいのか? また出て来なければこの娘は頂いていくぞ!! 嫌ならこの俺の前に姿を現し、その成長した胸をさらけ出せ!! 貴様こそ俺の求める超乳のシンボルとなるに相応しいのだ!!!』

 

「エレメリアンの告白程、嫌な物はありませんね……!!」

 

 トゥアールの脳裏に浮かぶのはテイルブルーに告白したイカの如きエレメリアンと自身を仲間に勧誘した悪質極まりないBL好きの天使の如きエレメリアン。

 特に後者はトゥアールのかつての戦いの中で一二を争う印象を残した憎き仇敵とも言える。

 

「ですがやはり、私がいかないと総愛が……」

 

 レヴィアタンギルディの狙いにトゥアールが追加されている事を知った以上、この挑発は罠であるのは誰の目にも明らかだ。

 故に正樹や華が止めようとするが、トゥアールは無理をしてでも、その肥大化し続ける胸を抱えて動こうとする。

 そんな時だった。

 

『バッカ野郎がぁ……!! 俺たちはまだ……終わっちゃいねぇんだよ……!!』

 

 それは途切れ途切れの小さな声。

 音源はテイルギア装着者の声を拾うスピーカー。

 その声からまさかとは思いながらもトゥアールは通信機へと声をかける。

 

「和輝君!? 無事ですか!?」

 

『あ、ああ……何とか……。つってもこのバカの怒りを抑え込むのは無理そうだ……』

 

 トゥアールは和輝が怒りに飲まれるティアナを心の中で救おうとしている事に気が付いた。

 そうとわかれば話は早い。

 トゥアールは声を張り上げる。

 

「いいですか和輝君!! あの娘を救うにはあなたの気持ちをぶつけしかありません!! 心の中で総愛に対する気持ちをぶつけてください!!」

 

 

 

 

 

 

 ぶつけろだってぇ?

 言ってくれるぜ全くよ……

 

 

 暗い暗い心の奥底。

 俺がティアナと一体化した際に出来るその空間にて俺は彷徨っていた。

 わかるのはただ一つ。

 アイツが怒りに飲まれて暴れまわり、その果てにそのままやられそうになっている事だけだ。

 俺はアイツが暴走する直前から声をかけて制止するように努めていたが、まるで効果なしだ。

 昨日の対話で何とかなったと思っていたが、甘かったと言うしかない。

 

 

 だけど、トゥアールさんは俺に託してみせた。 

 まだまだ未熟で一人じゃ変身も出来ない俺にだ。

 いじけたり、うじうじ言ってばかりなのは性に合わない。

 

 

 なら言ってやるよ。

 昨日言えなかった事を……!!

 

 

 

「ティアナ!!! 俺はなぁ!! お前の全てが大好きだ!! そのツインテールも!! その生意気な態度も!! 膨れっ面や笑顔含めて全部大好きだ!!!! そして何より……!!!」

 

 俺は心の中で息を大きく吸い込み、そして……

 

「お前のその平坦な胸も全部!!! 大好きなんだぁぁぁぁッ!!!!」

 

俺はただひたすらに、力一杯叫んだ。




大きい胸は大好きですか?
私は大好きです。
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