俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第122話 VS超乳 後編

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!!

 ティアナの中を支配するのはただその一つ、業火の如く燃え上がる怒りの炎。

 もう何も考えられない猪突猛進攻めの姿勢。

 ティアナの怒りに飲まれたテイルバイオレットはただ無茶苦茶に怒りのまま拳を振るい、レヴィアタンギルディの顔や腹などの急所なり得る場所だけを狙い続けた。

 

「があああああッ!!!」

 

 野獣の如き咆哮あげて殴る殴る殴る。

 だけどそれは直線的で読みやすい物であり、並みのエレメリアンなら瞬殺だが、実力者であるレヴィアタンギルディはそれを難なく受け止め弾き返しカウンターを仕掛けてくる。

 かれこれ暴走を開始してから何度も繰り返されるやり取りであり、テイルバイオレットは延々とカウンター攻撃を受け続けた且つ身体への負荷も考慮しない攻撃の結果、装甲は傷だらけである。

 

「う‶らぁぁぁッ!!!」

 

「まるで野獣だな……」

 

 ビーチの砂を舞い上がらせる怒りの拳が外れ、レヴィアタンギルディの触手がテイルバイオレットを捉え砂上に叩きつける。

 怒りの眼差しを向けるテイルバイオレットを見下ろしながらレヴィアタンギルディは何度も何度も言い放つ。

 

「哀れなり、受け継いだ呪いに縛られる貧しき者よ!! 怨むなら俺ではなく親を怨め!! 誰もが嘆く超貧乳に生んだ親をな!!!」

 

 罵声と侮辱。

 ティアナ自身、自分の胸を馬鹿にするのはこの際どうでもいい。

 そんな小さな事は昨日の和輝との対話のおかげで乗り越えることが出来たと思うからである。

 でも、父や母、他の大切な人を馬鹿にされるのは我慢ならないのだ。

 

「黙れぇぇぇッ!!!」

 

 振り払い起き上がるテイルバイオレット。

 エクストリームエモーショナルとなり、さらに強化された拳が飛ぶ。

 ティアナの怒りを具現化したかのような刺々しいその装甲から放たれるその拳の威力は並みのエレメリアンの身体を木っ端微塵に消し飛ばす威力と言ってもいい。

 でも、いくら強くても当たらなければ何の意味もない。

 それを理解しているレヴィアタンギルディは素早く回避してみせた。

 ティアナ自身もこんな怒りに任せた単調な攻撃では何度やっても無駄だとは心の底ではわかっているけど、燃え上がる怒りとそれを助長させるレヴィアタンギルディの邪念がその判断を狂わせる。

 一発、また一発と攻撃は空を切り、逆にレヴィアタンギルディの触手は的確にテイルバイオレットの体へとダメージを叩きこみ続ける。

 

「くぅぅぅッ!!」

 

「ハッハッハ、諦めろ。貴様ももうわかっているのだろう? このまま続けても無駄、所詮どれだけ貧乳があがこうとも超乳はおろか巨乳にすら勝てないのだ。貧乳属性は淘汰され、巨乳属性は進化して超乳属性へと変わっていく事こそが!! この世の真理であるのだからな!!」

 

「そんな事ぉッ!!!」

 

「ならばこれを見ろ。これが現実だ!!」

 

 暴れ狂うテイルバイオレットに対してレヴィアタンギルディが手をかざすと、ピタリと動きが止まる。

 そして、テイルバイオレットもといティアナの頭の中に流れ込んでくるイメージの嵐。

 それはレヴィアタンギルディが今まで見て来たであろう、ツインテイルズをはじめとした皆を守るツインテール戦士が人々やエレメリアンから貧乳だと馬鹿にされ陰で嘲笑われ続ける風景。華やかな扱いを受けるのはどれもこれも巨乳及び超乳のヒロインであり、例外はツインテイルズの一部のみ、テイルブルーはその例外に当てはまらずにいつもいつもぞんざい且つ酷い扱い。

 敵であるエレメリアンからはまだしも守るべき対象からの嘲笑は心にくるものがる。

 この頭に流れる映像が印象操作をする為だけの偏った物であるのだが、それを理解しようとしてもティアナのトラウマは強く刺激され揺さぶれてしまう。

 

 

 

 無駄なの? 

 本当にそうなの?

 どう頑張ってもアイツに……超乳に勝てないの?

 どれだけ私自身が貧乳なんて気にせずにツインテールを磨き続けても意味がないの?

 所詮、誰も心の底では貧乳を好んだりしてなんかいないの?

 

 

 

「わかったか? これが現実」

 

「現実……」

 

「だが喜べ貧しき者よ。お前はまだ変われる。投降し俺と共に来るのであれば貴様の胸を大きくするなど超がつくほど容易い。貴様が望むならOカップだろうがPカップだろうが何でもしてやろう。超安心しろ、超乳を極めし俺の能力はかのゼウスギルディなぞ足元に及ばない。貴様にかかったその呪いも超簡単に解いてやれるのだ」

 

 いつの間にか怒りは巨乳への妬みに、そして憧れや羨ましいと言った別の感情へと変化していく。

 その精神汚染こそがレヴィアタンギルディの能力の一部だとわかっていても、暴走の果てに荒んで心が折れかけているティアナは全く抵抗できない。

 手を差し伸べるかのように目の前に出される太い触手。

 これを手に取って大人しく投降すればティアナは本当の意味でコンプレックスを無くすことが出来るのかもしれない。

 虚ろな目をしたテイルバイオレットはその触手を手に取ろうと動く……

 

 

 

 

「私は……」

 

 もうわからない。

 どうすればいいの?

 結局、私は何も出来ないの?

 私は胸という縛りから逃れられないの?

 

 克服したと思っていたけど、出来ていなかった。

 結局、私は暴走してやられてしまった。

 結局、私のせいで和輝にも迷惑かけちゃった……。

 駄目だとわかっていても心は音を上げ折れたいと叫ぶ。

 私を支えるツインテールという最後の支えでさえもう限界を迎えようとしていて、変身を維持するのが無茶なくらい解けかけるような気さえもしてくる。

 

「ごめん……ね……」

 

(ティアナ!!! 俺はなぁ!!)

 

 差し出された触手を思わず手を取ろうとした瞬間、私の頭の中で声が響く。

 それは一体化している想い人である和輝の声。

 私の手は止まり、ふと我に帰る

 

「和輝……?」

 

(お前の全てが大好きだ!!)

 

「え……!?」

 

 え……? 何……!?

 わからない。急に和輝が心の中で告白紛いの叫び声を上げだした。

 恥ずかしさと唐突過ぎる意味不明さから私は困惑し声を上げ、何もわからないであろうレヴィアタンギルディも首を傾げる。

 

(そのツインテールも!!)

 

「何を言ってるの……!?」

 

(その生意気な態度も!!)

 

「だから何言ってるの!?」

 

(膨れっ面や笑顔含めて全部大好きだ!!!!)

 

「もう意味わかんないって!?」

 

 全くもう、和輝は何を思って急にこんな事言ってきたのかまるでわからない。

 意味わかんないし、訳わかんないし、何ならいつもは言わないような事言うもんだから私まで恥ずかしいしでハッキリ言って最悪。

 でも、今まで不安定に荒れ狂っていた空が晴れやかになるような気分がする。

 安らかに……静かに……心が落ち着き始めると同時に全身という全身、それこそ髪の毛一つ一つ全てに力が籠り、今ならツインテールをもう一対の腕のように自由自在に動かせるような自信さえも湧いてくる。

 本当、和輝の馬鹿……!! 

 

(そして何より……!!!)

 

「まさか……貴様……!!」

 

 瞬間、何かを察したレヴィアタンギルディが動く。

 差し伸べるかのように伸ばしていた触手を一度引っ込めた後、今度はその触手を引っ込めた際の反動を生かしてそのまま私向かって叩きつけようと振るわんとする。

 だけど、私は動かない。

 私は黙って和輝の紡ぐ言葉を待つ。

 そして……

 

(お前のその平坦な胸も全部!!! 大好きなんだぁぁぁぁッ!!!!)

 

 叫びきられると同時に触手が振るわれ、轟音と共に砂が大きく舞い散った。

 

 

 

 

「何があったか知らんが、俺の術を破るとは中々だな。だが所詮はこの程度……」

 

 あと一歩の所で正気を取り戻されて焦りはしたが、勝てば問題ない。

 舞い散る砂煙を見て勝利の笑みを浮かべるレヴィアタンギルディ。

 先程の一撃はレヴィアタンギルディにとって最大限の力をこめた一撃なのだから。

 

「さて、後は回収するだけ――!?」

 

 気絶しているであろうティアナを回収する為にもまずは触手を引っ込めんとするレヴィアタンギルディであったが、触手はピクリとも動かない。

 何か引っかかった? いや、そんな物はこのビーチに存在しない。

 そう結論付けるレヴィアタンギルディではあるが、現に触手の先端、厳密に言えば砂煙で覆われた向こう側から引っ込めようとも全く動かない。

 首をかしげるそんな中、砂煙が晴れて何が起きているのかが明らかになる。

 そこには――

 

「なに……!? テイルバイオレット!?」

 

 そこに立っていた今の一撃で倒したと思われていたテイルバイオレットだ。

 テイルバイオレットは片腕一本で触手を掴んでおり、触手を引っ込めれなかったのはこの為なのだとレヴィアタンギルディは理解する。

 心なしか解けかけていたようなツインテールが力強く結び直されているような気がする。

 

「超驚いたな。まさか今一撃を避けたのか」

 

「当たり前でしょ? あんたの攻撃はもう喰らってなんかあげないんだから」

 

 真っすぐに睨みつけながらさらりと言い返すテイルバイオレット。

 レヴィアタンギルディはその言い方に少し苛立ちを覚えながらも余裕の表情を崩さない。

 ならば今度こそ完膚なきまで叩き潰すまでだと触手を振るわんとする。

 先程は動かせなかったが、片腕一本で自慢の触手をずっと掴んでいられる筈などない。

 そう思ったのだが……。

 

「う、動かん……だと!?」

 

「やぁッ!!!」

 

「ぬぅッ!?」

 

 レヴィアタンギルディが力一杯振るわんとしても先程同様に全く動かず、逆にテイルバイオレットは片腕一本のままレヴィアタンギルディ本体を反対側の地面に叩きつけんと触手を引っ張ったのだ。

 即座に狙いを理解して力をこめて引っ張られんとするレヴィアタンギルディだが、その体は一切の拮抗もなく宙へ浮く。

 そしてレヴィアタンギルディはフレイルのように扱われるかの如くテイルバイオレットによって地面に叩きつけられた。

 

「がぁ!?」

 

「はぁぁぁッ!!!」

 

「ま、まて……ぶぎゃ!?」

 

 テイルバイオレットは止まらない。

 叩きつけてはおかわりとばかりに叩きつけるを繰り返す。

 ビーチ上で触手を掴まれ振り回されるレヴィアタンギルディの姿は最早武器ではなく玩具のような扱いと言ってもいい。

 

「や、やめろ……ち、ちぎれる……」

 

 レヴィアタンギルディの嫌な予感はブチンと千切れる鈍い音と共に的中した。

 何度も何度も玩具のように振るわれ続けて限界を迎えていたのか、触手はレヴィアタンギルディの股間部から綺麗に引きちぎられたのだ。

 反動で吹っ飛んだレヴィアタンギルディはあまりの激痛故に声にならない悲鳴を上げる。

 

「こ、このぉ……貧乳程度の分際で……」

 

 涙を浮かべながらも立ち上がり、何とか睨みつけるレヴィアタンギルディ。

 そして一呼吸おいた後、レヴィアタンギルディは股間部に力をこめて触手を再生させた。

 

「見たか。俺の槍は何度でも再生する。そして再生する度により太く固く、逞しく成長するのだ!!!」

 

 より強くなった触手がテイルバイオレット目掛けて襲い掛かる。

 その勢いはとてもじゃないが先程のように片腕一本で受け止める事など出来ないであろう凄まじい物だ。

 だが、テイルバイオレットは全く焦らず前を見つめ続ける。

 

「舐めるな!! どれだけ貴様が馬鹿力を持っていようと、そのような超貧相な胸では我が槍は受け止められん!! 身の程を知るがいい!!」

 

「ウインドセイバー!!」

 

 十八番の挑発を交えつつ振るった一撃ではあるが、テイルバイオレットはそのまま真正面から突撃。

 再び精製したウインドセイバーをナギナタモードで構えて真っ向勝負。

 振り下ろされ叩きつけられる触手とそれを受け止めるウインドセイバー。

 勝ちを確信して二ヤリ笑うレヴィアタンギルディ。

 

「馬鹿め!! ただ硬さで弾くだけの貧乳属性(スモールバスト)では無駄なのだ!! 防御の神髄は超柔らかく受け止める事!! 即ちそれこそが超乳属性(スーパーラージバスト)!! 貴様では辿り着けん頂だ!!!」

 

「あーもう、さっきからごちゃごちゃと……!!」

 

 ウインドセイバーを握る手に力が籠る。

 だけどそれは怒りからくるものではない。

 ティアナはもう貧乳やら巨乳やらで激昂などしないのだ。

 何故なら……

 

「いい? 私にはね……!! こんな胸でも好きだと言ってくれた人がいるのよ!!」

 

 そう。ティアナにはこの胸を好きだと言ってくれる人がいる。

 それがいる限りもう暴れ狂う必要などないのだ。

 

「今なら言える!! 私だって、この胸が大好き!! お父さんとお母さんがくれたこの身体とこのツインテールが大好きなんだからぁぁぁッ!!!」

 

 裂帛の叫びと共にレヴィアタンギルディの触手は完全に受け止められた。

 驚き目を見開くレヴィアタンギルディ。

 受け止められた事もそうだが、それ以上に先程の叫びが衝撃的過ぎたのだ。

 

「馬鹿な……!? そんな貧相な胸を好きだという奴がいるだと!? それに貧相な身体が大好きだと!? なぜそこまで胸を張って言えるのだ!? 超意味わからんぞ!?」

 

「何言ってんのよ!! 好きを語るのにオドオドする必要なんてないのと同じよ!! 私は生まれ持った自分の身体を誇りに思っているただそれだけの事!!」

 

 今までのティアナなら絶対にやらないような胸を張ってそう語るテイルバイオレット。

 和輝との融合のおかげで多少は膨らんではいるがその胸のサイズは貧乳と言って差し支えないレベルのものであるはずなのに、今のテイルバイオレットの胸は大きく見える。

 

「それにいい? 他人は他人、自分は自分。皆それぞれ違うツインテールの形があるようにみんな違ってみんないい。それがどれだけ小さくて、それがどれだけ貧しくても、それはこの世に一つだけのかけがえのない一つ!! オンリーワンである限り、誰かを妬んだり僻んだりする必要なんてないんだから!!!」

 

「なッ……!?」

 

 その時、レヴィアタンギルディの目にはテイルレッドの姿を映る。

 噂と写真でしか見たり聞いたりしていない筈なのにも関わらず、その女神の如き神々しさは思わず我を忘れてしまう程だ。

 目を擦り、今目の前で対峙して戦っているのが、テイルレッドではなくテイルバイオレットであると再認識しつつも驚愕を隠せない。

 

「貴様、まさか本当にテイルレッドの……!?」

 

「言っておくけど、私のツインテールは蛮族よ」

 

 テイルバイオレットは力強くそう宣言するのであった。

 

 

 

 

「総愛……」

 

 地下基地にて見守るトゥアールの目に涙が浮かぶ。

 それは娘の成長を喜ぶ母という他ない。

 

「トゥアール先生?」

 

 そんなトゥアールを見て不思議がった華が声をかけようとするが、正樹がそれを黙って制止する。

 しばらくの間、トゥアールは画面に映るテイルバイオレットを見つめ続けた。

 

「おっと、いつまでも感傷に浸っていてはいけませんね」

 

 歳をとると涙腺が緩くなってしょうがないですねと小声を漏らした後、トゥアールは肥大化した胸を物ともせず解析用の別画面を操作する。

 そこに表示されているのはテイルバイオレットの現在の状態をデータ化した物。

 先程までの暴走状態時では変身者や周囲の危険を表すDangerとしか表示されていなかったが、現在は力のバランスや精神状態といった全ての数値が安定しており、力の源たる属性力の数値のみがぐんぐん上昇を続けている。

 これはトゥアールが元々想定していたエクストリームエモーショナル以上だ。

 

「聞こえてますか総愛!! 和輝君!! エクストリームエモーショナルを維持できる制限時間は残り僅かしかありません!! 迅速な決着をお願いします!!」

 

 トゥアールの腕で鈍く光るテイルブレスレボリューション。

 その光が一瞬だけではあるが眩き光を取り戻す。

 それが何を表すのかはトゥアールのみぞ知るのだ。

 

 

 

 

「ふっ、何を訳わからん事を……」

 

 対峙するレヴィアタンギルディの目が燃える。

 私はウインドセイバーの切っ先を突きつけつつ、全身から溢れ出るこの力を高め続ける。

 そんな中、基地から通信を送るトゥアールママの声が聞こえて来た。

 

(迅速な決着を頼むってよ。どうする? いけるか?)

 

「大丈夫。それにもし、私に何が起きても和輝がいてくれるんでしょ? 忘れたとは言わせないんだから」

 

 和輝がいるから……和輝とツインテールを結べるから……私は私でいられる。

 例えもしまた暴走したとしても、貰った言葉がある限り理性を失う事はない。

 

「何がオンリーワンだ!! この世に必要なのはナンバーワンただ一つ!! 誰よりも大きく豊かであると言う頂点だけなのだ!!! だから俺が教えてやる!! 誰もが超大きく育てる事がこの世の全てだと!!」

 

 再び襲い掛かってくる触手の乱舞。

 高速で振るわれるその一発一発がビーチを抉りながら迫りくる。

 私はその乱舞を躱すのではなく一発一発を受け止めはね返しながら突き進む。

 

「ッ!?」

 

「確かにナンバーワンを目指す気持ちは何も間違っていない!! だけど、だからと言って皆が同じ方向へ進む必要はないって言っているのよ!! それぞれ身の丈にあった胸の大きさがあり、それを愛してくれる人が絶対に何処かいるって!!」

 

「何が……わかる!! 超乳なんて大きすぎて気持ち悪いと貧乳派巨乳派どちらにも混ざれずに蔑まれ続けた俺の気持ちが!! 愛してくれる者も、共感してくれる者も出会えなかった俺の気持ちが!!!」

 

 より一層激しさを増す触手の乱舞。

 はね返してはさらに強く返って来るをそのループだけど、私は恐れずに受け止めては返すを繰り返す。

 

「バッカじゃないの!! あなたはただ諦めてしまっていただけでしょ!! この世界は広い、私たちが思っているよりも広い。でも、だからこそ出会えた時が嬉しいし、誰もがそれを探し続けるの!!」

 

「そんな正論は出会えたから言えるのであって……!!」

 

「違うわ!! 諦めていたら出会える者にも出会えないって言っているのよ!! 奇跡は最後まで諦めなかった者だけが手に入れる。仲間だって……!! 愛してくれる人だって……!! みんなそうでしょ!!!」

 

 動揺と共に放たれた触手を受け止める。

 今度は返しはしない。

 私は力をこめてその触手を再度引きちぎらんと引っ張った。

 

「いいわ!! だったらその腑抜けた心、叩き直してあげる!!」

 

「ぎゃああああああああッ!!!」

 

 ブチンと鈍い音と共に引きちぎれる触手。

 レヴィアタンギルディは悲鳴を上げつつも、再び触手を再生させる。

 

「無駄だ!! 諦めろ!! 我が槍は何度だって――」

 

 触手が新しく生え変わったと同時に私は一気に間合いを詰める。

 そして、より強く太く逞しくなった触手を掴み取る。

 

「だったら何度だって引きちぎってやるわよ!!」

 

「ぎゃああああああああッ!!!」

 

 千切っては生え、その度に即座に引きちぎるを繰り返す。

 何度生え変わり、その度に強くなろうが関係ない。

 私は何度だろが引きちぎる。

 

「や、やめろ……!! そんな無茶苦茶なやり方などでは……うぎゃああ!?」

 

「言ったでしょ。私のツインテールは蛮族だって」

 

 そのやり方が万人受けせず皆に恐れられようが、私にはそんな私を愛してくれる人がいる。

 なら私は喜んで本当の自分をさらけ出す。

 それが例え怪物であろうとも!!

 

「はぁぁぁッ!!!」

 

「うげぇぇぇッ!!?」

 

 何度目かの繰り返しの果て、遂に心が折れたのかレヴィアタンギルディの触手は生え変わる事がなくなった。

 最大の武器を無くした今の姿はただちょっと大きいだけのエレメリアンでしかない。

 

「決めるわよ和輝!!」

 

(ああ!! ブチかましてやろうぜ!!)

 

 私は空に手をかざしてテイルバスターを召喚。

 テイルバスターをバスターソードモードへと変形させ、さらにナギナタモードのウインドセイバーをテイルバスターのグリップ上部のジョイントへと差し込んでナギナタの片方がバスターソードとなるように合体させる。

 

完全開放(ブレイクレリーズ)!!」

 

 紫の旋風と青き激流が巻き起こり私の周囲で最大級の嵐へと姿を変える。

 そして合体させたテイルバスターを振り回してその嵐を全て刀身へと吸収、巨大なエネルギーを纏ったテイルバスターをレヴィアタンギルディ目掛けて投擲する。

 

「エクストーーームウェーーーブ!!!!」

 

 大海穿つ巨大なる槍。

 それが自慢の槍とやらを失ったレヴィアタンギルディの胸を貫く。

 風穴が開いたレヴィアタンギルディは放電を起こす。

 

「俺も諦めなければ変われたというのか……。お前のような者にもう少し早く会えれば……。ふっ、貧乳も巨乳もまた……悪くない……」

 

 よろめきながら後退り海へと浸かったと同時のタイミングでレヴィアタンギルディの身体は限界を迎える。

 レヴィアタンギルディは最期に満足げな笑顔を浮かばせては倒れた。

 そして、巻き起こる大爆発。

 その水しぶきは煌めく太陽に届かんとするくらいの勢いで舞い上がった。

 

「そうね。巨乳も超乳もみんな、悪くない」

 

 私はそう呟きながら海を眺めた。

 

 

 

 

『和輝へ。見せたい物があるので放課後、家庭科室近くのあの教室で待ってます』

 

 レヴィアタンギルディを倒し終えてから3日後。

 トゥアールさんの身体が元に戻っているのを確認して一安心し、まるで身に入らない授業をボーっと受けているそんな中、ティアナからのメッセージがトゥアルフォンに届く。

 俺としては見せたい物が何かまるでわからない。

 だけど、言われた以上は行かねばならねぇってもんだぜ。

 

「うし、じゃあ行くとすっか」

 

 授業を全て終え、部室にて悠香さんらと少し話した俺は約束通りティアナの下へと向かう。

 家庭科室近くのあの教室ってのは先日のあそこだろう。

 道中、多くの生徒たちが文化祭の準備に精を出していた。

 アナザーテイルレッドの襲来で延期した文化祭まで残りの日はあと残り僅かだ。

 

「おーい、来てやったぞ~」

 

 夕日差し込む教室内。

 相変わらず机や椅子は綺麗に整頓されている。

 だけど、ティアナの姿はパッと見ただけでは見当たらない。

 入る教室間違えたかなと思ったが、その直後に教卓の裏から音がした。

 

「か、和輝……?」

 

「たりめぇだろ。で、何のようで見せたい物って何? 隠れてんじゃねぇよ全く」

 

 教卓の裏に隠れているであろうティアナに声をかける。

 ティアナの声は恥ずかしいのか全体的に少しオドオドしている気がする。

 そういや、授業終わりに一時別れる時もどこかいつもよりソワソワしていたっけか。

 

「いやね……その……笑わないでね……」

 

「はぁ?」

 

 それ以上の声を上げる間もなく、ティアナは教卓の裏から姿を現した。

 それは俺の想像を遥かに凌駕する物だった。

 

「ど、どうかな……」

 

 フリフリの白と黒のエプロン。

 王道を意識しながらも細部のデザインはデザイナーの個性を程よく出している。

 調和されたバランスは元々のコンセプトであるツインテールと見事に共存しており、元々可愛いティアナのツインテールがより一層輝いて見える。

 そんな中、俺にとって色んな意味で目を惹くのは胸元辺り。

 大胆にも谷間を見せつけるかのように大きく開いたその箇所は本来巨乳が着るであろうと想定されたデザインであり、本来ならばティアナのような貧乳では惨めさを感じるような箇所。

 詰まる所、これは以前、ティアナがビリビリに破り捨ててボツになった筈のメイド服のデザインその物だ。

 

「お前……どうしたんだ?」

 

「いや、その……鈴木君たちが諦めきれず自腹で作っていたみたいで……どうせなら一回着てみようかなって……」

 

 成程、そういう経緯で試着したって訳か。

 少し恥じらいながらも着てみようと決心したティアナに驚きつつも俺は改めてその姿をまじまじと見つめる。

 正直言って、似合っているか否かで言えば似合っていない。

 いくらツインテールが良くても開かれた胸元から見える小さすぎる胸はその印象を悪い意味でかっさらっていくのだから当たり前と言えば当たり前。総二さんくらいのツインテール馬鹿でない限りその感想が出てしまうは仕方ない。

 の筈なのにどうしてだろう……

 少し恥じらってこそいるが、以前のような卑屈さを今のティアナの胸から微塵も感じず、むしろ誇らしさすらも感じる程に堂々だ。

 

「どう?」

 

「いや、そりゃあ……世間的には似合ってないとは思う。でも、俺は好き……かな……」

 

 やべぇ。俺とした事がこんな時に何言ってんだよ……!?

 恥ずかしすぎて俺は思わず目をそらそうとするが、今度はティアナのツインテールが視線の端に映り、それを追おうと自然にツインテールに目が向かいそのままティアナの目を見てしまう。

 

「あ、いや……その……」

 

「ありがと和輝」

 

「……!!」

 

 ヤバい、マジでヤバい。

 にっこりとほほ笑むティアナ満面の笑みの破壊力はエクストリームチェインの最大火力をも凌駕すると言ってもいいレベルだ。

 全身のぼせ上がるんじゃないかと錯覚してしまい俺はこの状況をどう打破しようと頭を抱えるが良い案なんぞ出てくる筈が無い。

 そんな時だった。

 

「じゃじゃじゃじゃ~ん!!! さっき渡されたんで着ちゃいましたよ~!! どうですか復活したトゥアールちゃんのナイスバディは!!!」

 

 教室のドアが開き、外からティアナと同じデザインのメイド服を着たトゥアールさんが現れた。

 どうやら、デザインした鈴木たちがトゥアールさんに着てもらうべく渡したらしく、トゥアールさんは俺とティアナに似合っているか見てもらおうと何も知らずやって来た様子。

 俺はティアナと共に唐突の事に驚きながらも、ティアナ以上に似合っているその姿に目を奪われる。

 開けた胸元から見える三桁越えの谷間の破壊力は高校生男子にとって凶器その物だぜ。

 

「ちょっと和輝……あなたもしかして……!!」

 

「へ? いや、これは……」

 

 ゆっくりと隣に顔を向けるとそこには冷たく睨みつけるティアナ。

 俺はさっきとはうって変わって寒気が走るのを感じ取る。

 

「あれ? 総愛も同じ服……」

 

「逃げるぞトゥアールさん!!」

 

「こらぁッ!!! 待ちなさい和輝!! トゥアールママ!!!」

 

 トゥアールさんと共に鬼神(ティアナ)から逃げるべく校内を駆けまわる。

 途中、トゥアールさんが追いつかれ犠牲になりつつも俺は逃げ続け、ティアナはそれを追う。

 校舎内での追いかけっこ。俺とティアナの表情はどこか晴れやかで楽し気な笑顔だった。




だいぶ長くなりましたが、レヴィアタンギルディ撃破です。
次以降の敵はもっとテンポよく倒せたらいいなぁ……
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