俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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先週、丁度11月22日だったのに……
一週間遅れてごめんよ和輝……
それはそうと、前回のラストに大人アナザーテイルレッドのキャラ紹介を追加してます。


第126話 涼原和輝17歳

「「「誕生日おめでとう~!!!」」」

 

 華やかに飾り付けられた自宅のリビング、及びダイニング。

 祝いの言葉を送られると同時に無数のクラッカーがパン!! と音を響かせる。

 俺はそこから一呼吸置いた後、めい一杯の息を目の前で燃える蝋燭の火へと吹きかけ消して見せる。

 本日11月22日。

 この俺、涼原和輝が生まれて17年目となる誕生日だ。

 

「おめでと和輝」

 

「おめでとさ~ん」

 

「和くんおめでと~」

 

「おめでとう……」

 

 ダイニングの長テーブルでは主役である俺の両隣りを右はティアナと匠、左は悠香さんと青葉さんといつもの面々が並ぶ。

 華先生、トゥアールさん、婆ちゃんと言った保護者及び年長組はリビングのソファに座り、おやっさんはキッチンから続々と料理を運び出している。

 時刻にして18時となる現在。

 予定されていた誕生日パーティーは予定通り進行中だ。

 おめでとうの唱和を終えた皆は運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながらそれぞれが談笑を交えつつ楽しんでいる。

 かく言う俺もその一人だ。

 

「おやっさん!! エビフライおかわり!!」

 

「ちょっと和輝!! 少しは落ち着いて食べなさいよ!!」

 

「あー!! 和輝てめー!! 俺のから揚げ返せ!!」

 

「いいわ~その表情!! 今よ青ちゃん!! シャッターチャンス!!」

 

「了解……」

 

「ちょっと皆さん!! そんなにはしゃいだら近隣の方々に迷惑が……!!」

 

「ま~ま~華先生、今日くらいいいじゃないですか。それよりもお前ら!! おかわり欲しいならジャンジャン言えよ!! わかったら返事!!」

 

「「「は~い!!!!」」」

 

 いつになく騒がしく、いつになく楽し気な雰囲気が家の中を包み込む。

 普段は婆ちゃんと俺とティアナの三人だけしかおらず、基本的にここまで大騒ぎになることはない筈だったってのにすげぇ変わりようだ。

 元々予定していた三人での誕生日パーティーとは随分とかけ離れている。

 無論、『いい意味で』ではあるがな。

 

「挨拶が遅れました。初めまして、私、観束トゥアールと申します。娘の総愛がいつもお世話になっています」

 

「こちらこそ初めまして、トゥアールさん。わたくし、和輝の祖母でございます」

 

 騒がしいダイニング周りと打って変わって静かで落ち着いているリビングでは婆ちゃんとトゥアールさんの二人が大人の挨拶を交わしていた。

 凛とした佇まいのままソファで正座する婆ちゃんを前にして流石のトゥアールさんもキチンとしなければならないのだろうと推測できる。

 

「ねぇトゥアールさん、こんな老いぼれの願いで悪いんだけど、是非とも和輝の馬鹿を男にしてやってくださいな。あたしゃ未だ煮え切らない孫を思うと爺さんの下に行けないんだよ。どうか助けてやってくださいな」

 

「それなら任せてくださいおばあ様。心配ご無用です。私の命に代えても和輝君は総愛と結ばせる所存です」

 

「それは頼もしいねぇ。遠慮はいらないからやりたい放題やって頂戴さ」

 

「わかりました。遠慮なくやらせていただきます。つきましてはこの家、特にあの二人の寝室など重点的にリフォームしたいのですが……」

 

「そいつは妙案だねぇ。カメラとか設置してくれるだけでもあたしゃ楽しみだよ。でも、決してバレちゃいけないよ。邪魔するのは言語道断って言うじゃないか」

 

「そこはご心配なく。こう見えても私、盗撮には結構自信あるんです」

 

 頷き合い、そして微笑みあう両者。

 婆ちゃんのあくどい笑顔とトゥアールさんの無駄に晴れやかな笑顔を見て、俺の背筋に寒気が走る。

 会話の内容はこちら側が騒がし過ぎて聞こえていないが、ろくでもない内容なのは確かだぜ。

 頼む婆ちゃん、トゥアールさんをあまり信用しないでくれ頼む……!!

 

「どしたの和輝? ママとおばあちゃんが気になる?」

 

「ま、ちょっとな……」

 

 いつもならここでティアナがトゥアールさんの企みに感づいて派手な折檻をかけにいく物だが、幸いなことに今回は気づいていない。俺としても婆ちゃんの前や自宅のリビングで大暴れされるのは勘弁してほしいのでここは適当にはぐらかすに限る。

 

「てかさ、んな事よりもお前はどうだ? 祝われている俺が言うのもなんだが、楽しんでるかよ?」

 

「そりゃあ楽しいわよ。凄く久しぶりって感じ」

 

 久しぶりねぇ……

 ティアナの元いた世界での家庭内風景を想像すると、確かにこの騒ぎ方は久しぶりと感じてもおかしくない。なんせティアナの家族はあの総二さんと愛香さん、さらに言えばトゥアールさんたち他のツインテイルズの面々も同じだし、日々何かが起きて退屈しなさそうな感じしかしない。

 そんな風に想像しているそんな時、さっきまで青葉さんとカメラ回してはしゃいでた悠香さんがこの話題に食いついた。

 

「ねぇねぇ、ティアちゃんの世界でもこんな風な誕生日パーティーしていたりするの? ちょっと取材いいかしら~?」

 

「ちょっと悠香……。自重して……」

 

 テンション上がって所かまわず取材と称して根掘り葉掘り聞こうとする悠香さんとそれを止めようとする青葉さん。

 だけど、そんな事で悠香さんは止まらないし止められない。

 

「何言ってんの青ちゃ~ん。あたしたちの住んでいる世界とは違う世界での文化なんてワクワクするじゃない? 取材しなきゃ損よ損」

 

「別に取材されるような事ないですよ。こっちと向こうの違いなんて殆どないですもん」

 

「な~んだざんね~ん。それじゃ意味ないのかな」

 

 悠香さんは少しばかりガッカリするような素振りをみせる。

 そんな悠香さんを見てすかさずティアナがフォローを入れる。

 

「そんな事ないですよ……!! 去年の誕生日パーティーなんてお父さんの友達からお城借りて開いたりしましたし、何ならそれ以外の年も神堂家のお屋敷で開いたりしてますし……」

 

 城にお屋敷だぁ?

 神堂家ってのがテイルイエローこと慧理那さん関係だってのはわかるけど、一体何がどういうコネクションがあればそんな豪勢なパーティーが毎年開けんだよと声を大にしていいたい。

 ティアナって一応、一般家庭に生まれた女の子だよな!?

 まぁ、テイルレッドとブルーがいる家庭を一般家庭と言うかはこの際無視する。

 

「へぇ~、ティアちゃん家ってそんなにお金持ちだったんだ~」

 

「別にお金なんてそんなに無いですよ。必要な物を周りから貰ったり借りたりしてるだけだったですし」

 

「ねぇねぇティアちゃん? この際だからその辺り含めたアレコレ教えてくれないかしら? 題して『ティアちゃんの秘密、アマチュア記者は聞いた』よ!!」

 

 それに対していいですよと快く返事するティアナ。

 始まるのは悠香さんの独壇場。

 いつの間にか止めるべきポジションであるはずの青葉さんはすっかり悠香さん側になっており、ノリノリでティアナの発言一つ一つをパソコンでメモしている。

 出ている食事を摘まみながら冗談を交えたりしながら盛り上がる三人。

 遂には婆ちゃんやおやっさんも興味津々で話を聞きに来る始末。

 俺は完全に場違いなので少し席を外す。

 本来の主役を無視して盛り上がる皆を見て、俺としては色々と複雑だ。

 

「なぁ匠」

 

「ん? どした和輝? エビフライおかわり来てるぞ」

 

「おっサンキュー……じゃねぇよバカ!!」

 

「あイたァッ!?」

 

 いつも通りのとぼけた反応を見せた匠に拳骨一発。

 殴っておいてすまんがちょっとスッキリしたぜ。

 無論、まだちょっと複雑ではある。

 

「すいません和輝君」

 

 背後から優しくそう声をかけてくれたのはトゥアールさんだった。

 ふざけた雰囲気を微塵も感じさせないトゥアールさんの態度を見て俺も少し改める。

 

「今日ばかりは我慢していただけませんでしょうか。あの子がお友達とあんなにも楽しそうに笑うなんて私からすれば夢みたいな光景なので……」

 

「いやま、別にいいけどよ。ん? てか、その言い分だとアイツに友達いなかったみたいじゃん。豪勢な誕生日パーティーをしてたのにか?」

 

「そう言えば和輝君には言ってませんでしたね。あの子には元々……」

 

「な~る程、察したぜ」

 

 ティアナは元居た世界では友達や親友と言った類が出来なかったのだろうと理解する。

 確かに世界を救ったヒーローの娘となると誰だって遠慮しちまうし、あの性格にあのツインテール愛だから無理はない。

 そういや、レイジの野郎もティアナのツインテール属性を育ませる為に裏から色々と手を引いていたとか何とか言ってやがったな……。

 

「なぁトゥアールさん? アイツの誕生日っていつなんだ?」

 

「総愛のですか? あの子なら私や総二様と同じ2月2日生まれですよ」

 

「オーケー、なら来年の2月2日には今日よりも派手なパーティーで祝ってやらねぇとな。そりゃあ、城とか屋敷とか借りる事は出来ねぇけど、クラスメイトの何人か呼べば今よりかはマシになんだろ」

 

「和輝君……、ありがとうございます……!!」

 

 深く頭を下げるトゥアールさん。

 俺は変に思われるからやめてくれと懇願する。

 ま、それはそうとアイツの誕生日だけは盛大に祝ってやらねぇと駄目だなとは思うぜ。

 アイツ、言葉にこそしないが、本来生まれなかったであろう自分の存在意義を悩んでいる節が若干あるからな。

 にしても2月2日ツインテールの日生まれか……。つくづくツインテールに祝福された命だよ全く。

 

「さて、それはそうと和輝君。私から少し誕生日プレゼントをご用意させていただいたのですがいかがですか?」

 

「誕プレ? マジ?」

 

 少しばかり胡散臭い雰囲気を取り戻したトゥアールさん。

 俺の言葉に一言「はい」と答えるや否や白衣のポケットからにゅるんと箱を取り出し、その中身を晒す。

 それは何らかの飲み物が入った小さな瓶の10個セットであり、サイズやラベルからしてさながらオロ○ミンCのような栄養ドリンクでもある。

 

「何これ?」

 

「和輝君用に調合し直した特製のトゥアールジュースです!! 飲めばたちまちヘタレな和輝君でも性欲……もといやる気と元気に満ち溢れて日々のストレスが吹っ飛びます!!」

 

「おい待て、誰がヘタレだコラ……!!」

 

 色々ツッコミ足りないけど、とりあえず一言。

 個人的には途中不自然に言いなおした部分が滅茶苦茶引っかかるが、もう追及するのもめんどくさい。

 変に騒いでティアナに気づかれたら暴れ出す可能性大だからな。

 

「ささっ、男らしくグビッと飲んでください。そしたら後は総愛を連れてベットにインして和輝君の和輝君をテイルオンするだけです。後始末や夜明けのコーヒーの準備は任せてください」

 

 そう言って俺にそのトゥアールジュースを飲ませようとするトゥアールさん。

 頭を下げ、トゥアールジュースが入った瓶を一本献上するかのようにうやうやしく接する姿は違和感しかない。

 さっきは面倒で追及こそしなかったが、俺としては怪しすぎるこんな物を飲むわけにはいかない。

 

「華先生、ちょっと来て」

 

「涼原君? どうしたの?」

 

 一人黙々と空いた皿を片付けたり洗い物に勤しむ華先生を捕まえる。

 何も知らずにのこのこやってきた華先生にトゥアールジュースの瓶を一本渡した。

 

「疲れただろ? これでも飲んで休憩してくれよ」

 

「大丈夫よと言いたいけど、貰わないのも悪いし頂くわね。ちょうど喉乾いていたし丁度よかったわ」

 

 蓋を開けてぐびぐび飲む華先生。

 

「どうです? 飲んでいただけましたか……ってああ!? 華先生!! それは……!?」

 

 ようやく俺が華先生に毒見させた事実に気づいたようだがもう遅い。

 華先生はトゥアールジュースを一気に飲み干してしまった。

 そして、その効果は一瞬にて現れる。

 

「うぃ~……なんだかとっへも……いいひゃんじ……」

 

 顔を真っ赤に染めフラフラと千鳥足でよろめく華先生。

 誰がどう見てもわかる。

 これは酷い酔っ払いだ。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

 狂った笑い声を上げる華先生。

 普段の真面目な雰囲気からは想像もつかないその異様な風景に俺は言葉を失い、トゥアールさんはあちゃ~そうなりましたかとばかりに頭を押さえている。

 この騒ぎには他の面々も流石に気づいた。

 

「ど、どうしたの華先生?」

 

「あ、ゆうかひゃん……ってナニいわしてくれとんじゃアあ!!! ゴルァ!!!」

 

 今度は狂ったように怒り狂う華先生。

 変貌はまだまだ止まらない。

 

「うわーん!! ティルー!!! どこいったのー!!」

 

 時に泣いて幼児退行。

 

「あれ? ここはどこ? わたしはだぁれ?」

 

 時に記憶喪失。

 

「いえーい!!! みんなげんきー? あたしちょうハッピー!!!」

 

 時に陽気に踊りだす。

 その豹変は数十秒ごとにランダムで変化して繰り返す。

 最初は困惑していたみんなであるが、段々と面白くなってきたのか誰も止めずにその変化を見て楽しみ笑う。

 ただし、一人だけ違っていた。

 

「ママ……、何したかハッキリ言いなさい……!!」

 

「こ、これは違うんです。これはただの事故で……ここまで面白くなるとは……」

 

「全然面白くないの!!!」

 

「ぎゃああああッ!!!! 身体が人間じゃなくなるぅぅぅ!!!」

 

 締めに見せるのはトゥアールさんへの残虐ショーならぬいつものアレ。

 俺は婆ちゃんがこれを見てびっくりしないか心配であったが、本人は楽しそうに笑っており、俺の心配は杞憂であったのだとわかった。

 

「ハッピーバースデー……俺」

 

 フフッと笑みをこぼした後、小さくそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 夜22時。

 和輝の誕生日パーティーは無事に終わりを迎え、匠や悠香さんたち学生組は華先生が付き添う形で皆続々と帰っていった。

 残っているのはこの家の家主である和輝とおばあちゃん、あと私とトゥアールママと正樹さん。

 今じゃ一緒に住んでいる私や洗い物と調理道具などを片付けをしている正樹さんは兎も角、トゥアールママもこんな時間まで一緒にいるのはこの後の深夜にこの家をもしもの為に少し改造するかららしいの。

 私としてはママが何か変な事をするんじゃないかと思うと気が気でない。

 もし万が一、和輝のおばあちゃんに迷惑かけるような真似をするようなら家族であるこの私が何としても止めてみせるわ。

 

「だ、大丈夫ですよ総愛……!! 何も変な事しませんから……!!」

 

「怪しい……」

 

 目をそらしわかりやすく動揺するママを見て確信する。

 これは間違いなく何か良からぬ事を企んでいる時のママだ。

 ツインテールもママの企みを警戒しているのかいつになく髪がソワソワしている。

 

「まぁまぁ、そうピリピリしても身体に毒だよ。あたしが言うのもなんだけど、長生きのコツは怒らない事だよ」

 

「そうそう、何事もふんわかしてた方がいいよ。ね? 文子さん?」

 

 洗い物を終えたおばあちゃんと正樹さんの二人がキッチンから4人分のお茶を入れてやって来た。

 おばあちゃんと正樹さんにそう諭された事もあり、私は一先ず、ママへの警戒を解く事にする。

 実際、怒ってばかりだとツインテールにも悪影響が出ないとは言い難いので言っている事は正しい。それにツインテールはどんな表情でも似合うとは思うけど、やっぱり笑顔に勝る表情はない。

 私は心を静める為にもツインテールの穂先を指でくるくる巻いたり撫でたりしてみる。

 あ~やっぱりいい感じ、ツインテールって。

 

「あれ? そういや和輝は?」

 

「和輝君なら先程、お風呂に入ると言って行っちゃいましたよ」

 

 ママの言う通り、今、和輝は一足先にお風呂に入るべく浴室にいる。

 ちなみに私も一緒に入ろうとしたけど、和輝は今日だけは断固として一緒に入るもんかとか何とか言って私の事を締め出していたりする。

 

「ほう……。なら丁度いいかもな」

 

 和輝がお風呂に入っていると知った正樹さんの目つきが変わる。

 さっきのママ程じゃないけど何かを企んでいる目って感じ。

 

「文子さん、今日はアイツの誕生日(こんな日)ですし、久しぶりにアレでも見ませんか?」

 

「アレかい? そうだねぇ、丁度いいかもしれないし許可するよ」

 

 アレ持ってきなと命令するおばあちゃんとラジャーと言いながらリビングを出て家の中の何処かに行く正樹さん。

 そして数分後、正樹さんは一つの大きなアルバムを持って戻って来た。

 

「正樹さん、何よそれ」

 

 アレと言うのが何のかわからずに不思議がる私。

 対してトゥアールママはそれが何なのかをすぐに理解していた。

 

「和輝君の幼い頃の記録……ですね?」

 

「そそ、さっすがトゥアールちゃん。正解正解」

 

 子を想う保護者としてわかるのは当然なのねと感心する中、アルバムが開かれる。

 1ページ目に収められている写真は生まれたての赤ん坊時代の和輝だった。

 

「これ和輝? 初めて見た……」

 

「今と同じように元気そうな赤ちゃんですね。総愛もこんな時代があった事を思い出して懐かしくなっちゃいます」

 

「だよね~。わかるよその気持ち」

 

「ほんっと、懐かしいもんだよ。あの日の事が昨日のように思い出せるってもんさ」

 

 私とは違い、懐かしさを感じるママたちみんな。

 赤ちゃんを写真含めてあまり見た事がない私は凄く新鮮な気分。

 可愛い……と言うよりちょっとブサ可愛いって奴かしら?

 失礼かもしれないけど少しそう思ってしまった。

 

「ねぇ、ちょっと待って。これって和輝のお父さんとお母さんよね? 正樹さんにしてはかっこよすぎるし細すぎるし……」

 

「おいおい、随分と辛辣だな~。でも、それは大正解。こっちは涼原結希(すずはら ゆき)、こっちは涼原蓮(すずはら れん)。それぞれお母さんとお父さんだな」

 

 髪をロングに下ろした優し気なお母さんと眼鏡をかけた知的なお父さん。

 どちらも今の荒っぽくぶっきらぼうな和輝とはまるで異なる雰囲気を出している。

 正樹さんとおばあちゃんが言うには二人は和輝が生まれてから少しした時に事故で亡くなってしまったらしく、今の和輝と全然違うのはそのせいでもあるらしい。

 ちなみに正樹さんは和輝のお父さんの幼馴染兼親友らしいの。

 

「成程、今の和輝君はおばあ様やおじい様の影響が強いという事ですね」

 

「あの馬鹿が結果的にああなったのは確かにそうだけど、チビだった頃はそうじゃなかったんだよ」

 

 ママの推測を少し違うと答えるおばあちゃん。

 ページがいくつかめくられ、写真に写っている和輝の姿が3~5歳くらいの時の物へと変わる。

 面影がほんの少しばかりだった赤ん坊時代とは違い、ハッキリと今の面影を感じる程に成長した和輝。

 だけど、写真に収められているのは今知っているあの和輝とはまるで違っていた。

 

「ほら見な。これなんて喧嘩でやられて無様に帰って来た時のやつだよ」

 

 号泣する幼い和輝とそれを慰めているように見えるのは幼い匠かしら。

 あの和輝が喧嘩で負けていたという事も衝撃だけど、それ以上にこんなにも弱々しく泣いている姿が私としては信じられなかった。

 虐めれっ子のようにも見えるその幼き姿から今の不良扱いされているあの姿を想像する事なんて絶対に出来ないと断言できると思う。

 

「懐かしいですね。確かあの時でしたっけ? みんなでボコした相手の家にカチコミかけたのって」

 

「そうさ、あん時は爺さんがブチギレて大変だったよ。あの人ったらチビの喧嘩に本気になってねぇ……」

 

 面白そうに語るおばあちゃんとそうだったと懐かしむ正樹さん。

 ママはわかりますわかりますとしきりに頷いている。

 私はそんなエピソードよりも未だにこの写真の衝撃が強すぎる。

 わかるのは和輝はこの写真を見たら凄く嫌がりそうって事くらい。

 正樹さんが和輝がいなくて丁度いいと言った理由がわかるわね。

 

「ねぇおばあちゃん? 他にもあるの?」

 

「そうさね。確か次のページにねぇ……」

 

 私のそれを聞いたおばあちゃんが嬉々としてページをめくろうとする。

 そんな時、お風呂から上がり、パジャマ姿に着替えた和輝が戻って来た。

 

「風呂出たぞ……っておい!! 何見てんだよ!!」

 

 案の定、和輝はそのアルバムを見て凄く嫌がっており、声を荒げだす。

 

「ババア!! 人の黒歴史見せてんじゃねぇよ!! やめてくれって言ったろうが!!」

 

「フンだ。昔を懐かしむのはババアの特権だよ。それに見せたくない物ならちゃんと隠すか処分するんだね」

 

「それがしたくても出来ねぇんだろ!! わかってて言いやがったなこの意地悪ババア!!」

 

「歳をとると人は意地悪になっていくもんなんだよ。残念だったね」

 

 おばあちゃんと言い争う和輝。

 そんないつも通りの和輝の姿にちょっとした安心感を私は覚えつつ、自分自身を振りかえってみる。

 幼い頃の私のツインテールは今と比べてどう映るんだろう?

 やっぱりまだまだ未熟だった?

 それともあの時の方が輝いていたのかな?

 

 

 

 

 七つの性癖(セブンス・シン)、その最初の刺客であるレヴィアタンギルディとの戦いは暴走を乗り越えたテイルバイオレットとの再戦を経て終結した。

 その戦いの結果、レヴィアタンギルディの呪縛から解放されたのは他でもないアルティデビルの面々である。

 レヴィアタンギルディのかけていた暗示や催眠のような洗脳から解除された皆は今日も今日とてせっせとその後始末に追われている。

 テイルレッドやテイルバイオレットなどのお気に入りフィギュアを前にやすりを手にし、盛りに盛られた胸回りのパテを慎重に落として元の体形へと戻す作業だ。

 

「ダメだ……!! どうやっても盛ってしまう!!」

「許してくれレッドたん……!! バイオレットちゃん……!! わかっているのに手が勝手に動くのだ……!!」

「あの時の我は何やっているのだ!! 折角描いたのに!!」

 

 深刻なのはフィギュアなどの立体物ではない。

 最も深刻なのはズバリ絵である。

 レヴィアタンギルディのもたらした超乳ブームは絵描きのエレメリアンにも勿論の如く影響を与えており、その影響はフィギュアなどのそれとは比べ物にならない。

 一度描いてしまった絵に関してはツールを使った物でなら修正は容易ではあるが、実際の紙に描いてしまった物ではそう簡単にはいかないのも原因の一つであり、他にも一度癖づいた絵描きとしての癖を早々簡単に抜けてくれないのもある。

 

「うおぉっ!? なんだこれは!? 本当に俺が描いた物なのか!?」

 

「どれどれ……ってグハァッ!! テ、テイルブルーの胸が盛られている……だと!?」

 

「何と言うグロ画像だ……SAN値が削られていくのがわかる……!!」

 

「下手なR18よりも過激で規制すべきだ!! 早く削除しろ!!」

 

 レッドやバイオレットを元に描かれた絵は修正されていくが、ブルーを描いた物は容赦なく即座にゴミ箱送りとなっていく。

 アルティデビルの面々である彼らは、ツインテイルズとの交戦経験はないのでテイルブルーが実際にどんな者なのかは知らない。しかし、その恐ろしさは、今やアルティメギルに所属していなかった者でも知っているのだ。

 

「おのれレヴィアタンギルディ!! この恨み、我魂魄百万回生まれ変わっても晴らしてやるからなぁぁぁッ!!!」

 

 何にせよ、撃破されてからかれこれもう10日間も経った現在もその傷跡は未だ深い。

 そんな中である。

 二人目の刺客が基地に降り立った。

 

「へー、こんなばちょですのー。みなちゃんなんだかたのちそうですのー!!」

 

 大ホールで作業中の何人かのエレメリアンがその幼くあどけない声に振り向いた。

 そこに立つのは声のイメージ通りの幼女のエレメリアン。

 山羊の頭蓋骨を思わせる被り物を被って目元を隠し、頭に生えた角はまだ小さく可愛らしい。体格は巨乳とは程遠い幼児体形であり、幼稚園児が着るようなスモックに似たドレスを纏っている。

 彼女こそ七つの性癖(セブンス・シン)における傲慢の性癖を担うエレメリアン、名をスペルビアギルディだ。




以上、和輝の誕生日でした。
次回は新たな刺客、スペルビアギルディの暗躍がメインになるかな……?
ちなみにちょっと裏話ですけど、元々ベリアルギルディ自身を傲慢の性癖担当にしようかなと予定していたんですけど、彼には大ボスの一人として活躍してもらう都合上ボツになってスペルビアギルディが生まれました。
え? スペルビアは悪魔の名前じゃない?
考え無しに大罪関係の悪魔を使い過ぎた私の責任です。だが私はあやm
(注、今後もこういったエレメリアンが数体でます)
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