俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今年一年ありがとうございました。
出来れば来年もこの作品をよろしくお願いします。


第129話 小さな戦い、大きな不安

「――という訳なんです……」

 

「なるほどねぇ……」

 

 ダイニングテーブルを挟んで話し合うトゥアールママと和輝のおばあちゃん。

 幼い和輝はソファの上、私の隣でスヤスヤと心地良い寝息をたてている。

 現在、私とママの二人は幼くなってしまった和輝を連れて和輝の家に訪れており、おばあちゃんに事の経緯や現在の状況及び状態を説明している際中。正樹さんとは違って、おばあちゃんは私と和輝がテイルバイオレットだという事は知らないし、それに関わっている事も知らない。

 前から出来る限り秘密にしておきたいといっていた和輝自身の意向もあった事もあり、今回説明する内容としては和輝が一人きりの場面で怪物に襲われ子供にされてしまったの一点のみって事になっている。

 

「私がいながら和輝君をこのような目に合わせてしまって……本当に申し訳ございません。何とお詫びすればいいか……」

 

「ママ……」

 

 深く頭を下げるママは自分を責めているような気がする。

 私も私で、助けに間に合えなかった事に責任を感じて胸が痛くなる。

 

「何言ってんだい。別にトゥアールさんが謝るような事じゃないじゃないか」

 

「いえ、今回はそもそも私の注意不足が原因で――」

 

「いんや違うね。悪いのは全部和輝さ。聞くとこによると、あの馬鹿は怪物が襲ってくるかもしれないってのに一人でぶらぶらうろついて襲われたって訳だろ?」

 

「ですからそれを許可したのは私で――」

 

「そんなの関係ないよ。行動した以上は全部自分の責任である以上、今回は和輝の責任さ。そもそもいい歳になって彼女や友達や先生方に迷惑かけるなんて男としてどうなんだいって話さね。大体、あの馬鹿は状況ってのがよくわかっていないんだよ。あたしの心配して逐一小煩いメールとばす余裕があるのなら自分をもっと大事にしろって事だよ。他にもねぇ……」

 

 ママの言葉を遮りそうやって早口でまくし立てたおばあちゃんは止まらない。

 私とママがドン引きしていてもお構いなしに和輝への文句を容赦なくボロクソに口にし続ける。

 これには思わず、私もママも苦笑い。

 だけど、どこか元気が湧いてくる。

 

「ま、何だい、この際もう一度一から教えるのにある意味丁度いいって事でもあるじゃないか。色々と心配してくれてこちらこそだよトゥアールさん」

 

「い、いえ、そんなそんな……!!」

 

 微笑み返すおばあちゃんを見て、ママも少し笑顔になる。

 何となくだけど、おばあちゃんはこの状況を楽しんでいるようにも見える。

 

「それで何だい? そのエレメなんとかって怪物をブッ倒すまで和輝の面倒を見ればいいって事かい?」

 

「端的に言えばそう言う事になります。一応、私も元に戻せないかどうかを尽力してみせるつもりではありますが、難しい可能性の方が高いです」

 

 いつまたスペルビアギルディが襲ってくるかわからない以上、テイルバイオレットの力は必要不可欠なのは間違いない。

 それもあり、ママは幼くなってしまったしまった和輝を元に戻せないかどうかを研究する事については同意してくれた。

 けど、今言った通り、それはかなり難しい可能性が高いらしいの。

 よくはわからないけど、細胞とかを変にいじると逆に命の危機になるかもしれないらしいし、既存の属性玉から得られる属性力の力ではスペルビアギルディの呪縛は強すぎて効果がないみたい。

 さらに付け加えるとこの呪縛は一種のタイムスリップに近い時間逆行らしくて、今の和輝は5歳児相当の知能や考え方しか出来ずそれ以降の記憶も失っている。ツインテールへの愛も忘れ、戦う勇気を失った和輝は泣き虫な男の子でしかない。

 

「なぁに大丈夫だよ。万が一元に戻らなくてもまたやり直せばいいだけさ。死んだわけでもないし、ましてやあの子があんたたちを好きになる気持ちを失った訳じゃない。何度だってやり直せばいいんだよ」

 

 おばあちゃんの言葉を聞いて私は勇気を貰う。

 そうよ……!! 別に和輝は属性力を奪われた訳でも死んだわけでもない。

 ただちょっと幼くなって忘れてしまっただけ。

 前ほどのツインテール属性がないとは言え、今の和輝にだってツインテールが好きな気持ちは確かにある。

 

「それにトゥアールさん、これはチャンスじゃないか」

 

「チャンス……と言いますと?」

 

「逆に考えるんだよ。いいかい? 和輝が元に戻す為に大きくするんじゃなくて、逆に周りをそれに合わせて若返らせちまえばいいのさ」

 

 え!? ちょっと待って!?

 それは何!? 和輝に合わせてみんなを幼くすれば丸く収まるって言っている訳!?

 逆転の発想と言えば聞こえはいいけど、それって無茶苦茶も無茶苦茶で何ならエレメリアン以上の悪事だとは思うんだけど……

 

「ま、ちょっとした冗談だよ。どうせ困難な事をするのならあたしとしてはそっちの方が夢があって嬉しいって事さ」

 

「確かにそれは盲点でした……!! 流石はおばあ様!!」

 

「ふふ、それはよかったよ」

 

 絶妙にかみ合っていない気がする二人が笑顔のままに手を握りしめ合っている。

 ママの事だし、本当に和輝を戻す事よりも私を幼くする方法を模索するんじゃないかって不安になる。

 でも……幼い和輝と幼い私か……。

 幼稚園から小学校、中学校と進学する間も常に一緒。成長し少しずつ磨かれ変化していくツインテールも和輝にとっては毎日の記憶(思い出)。大きくなったら二人で小さい頃の事を思い出して笑ったり、あの時のツインテールはこうだったなとか語り合ったりする。私と和輝は小さい頃から将来のツインテールを結び合う幼馴染……。

 

「えへへ……」

 

 幼い頃は友達と呼べる相手がいなかった私にとって、その捏造した記憶は理想的な物だった。あの頃の私はそんな事を求めていなかったけど、今の私はお父さんとお母さんの馴れ初め含めて羨ましさしかない。

 思わず笑い声が漏れる。

 

「総愛? どうしました? にやけた顔してますけど」

 

「あ!? べ、べつに!? それよりもどうなったの……!?」

 

「和輝君の事ですか? それなら問題ありませんよ。おばあ様も理解してくれましたし、私も色々とやる気が出てきましたから」

 

「そうさ、任せておきなよ」

 

 私が妄想に耽っている間に話は終わったみたい。

 おばあちゃんはにこやかな笑顔で頷いてくれた。

 話が纏まった事もあり、ママが帰ろうとする中、私は大事な事を思い出す。

 

「そ、そうだ……!! おばあちゃん、私も――」

 

「わかっているよ。和輝と一緒にいてやりたいんだろ? この子の面倒一緒に見ようじゃないか。あたしとしてもそっちの方が楽で助かるってもんだ」

 

「お、おばあちゃん……!!」

 

 おばあちゃんから許可を貰って私は舞い上がる。

 後はどうやって和輝と仲良くなっていくかどうかね。

 そう決意した直後、隣から可愛らしい寝起き声が聞こえてくる。

 

「ふぁ~、ばあちゃん……?」

 

「おはよう和輝。相変わらず寝坊助だねぇ」

 

「ばあちゃん!!!」

 

 おばあちゃんを見て飛びつく和輝。

 その顔は今日一番の晴れやかさだったけど、それは直ぐに陰りが見える。

 

「ばあちゃん……、あれ……」

 

「『あれ』だなんて言い方するんじゃないよ。あのお姉ちゃんも家族さ」

 

 おばあちゃんの後ろに隠れて露骨に私に警戒してみせる和輝をおばあちゃんは優しく諭す。

 だけど、一度根付いてしまった悪印象はそう簡単に拭えないのか和輝の恐怖心はいまだ健在だった。

 それどころか、おばあちゃんという大切な人がいるせいか、どことなく私に対する警戒心や敵対心のような何かすらも感じる始末。

 やっぱり難しいのかなと不安が募る。

 

「大丈夫ですよ。いざという時はこのトゥアールママが何とかしてみせますよ」

 

 私を励まし、自信満々に胸を張るママ。

 何とかするって言っているけど、ママだって基地内で大敗しているのに何するつもりなのよ……

 和輝との生活、倒すべきスペルビアギルディ、あとは何か企むママ。

 どうしようもない不安だけが増えていく……

 

 

 

 

 その夜、涼原家。

 

「和輝君~? お姉ちゃんと一緒にお風呂はいろっか?」

 

「やだ……!! ばあちゃんとはいる!!」

 

 

「和輝君? 何か食べたい物はあるかな? お姉ちゃんが作ってあげる」

 

「いや!! ばあちゃんのじゃないといや!!」

 

 

「和輝君……? 今日はお姉ちゃんと一緒に寝たりだとかは……」

 

「ばあちゃんといっしょ!!!」

 

「そっ……か……」

 

 

 

 夜の23時、アプローチするも失敗に失敗を重ね、心身共に疲労した私はパジャマ姿でベットにダイブする。

 普段なら二人用の大きなベットも、一人だけの私には大きすぎて余ったスペースを感じると共に寂しさだけが増えていく。

 

「和輝……」

 

 幼いとは言え、和輝にここまで嫌がられ続けるだなんて……

 そりゃあ、簡単に上手くいくわけないとは思っていたけど、こうも難しいとなると話は別よ。

 というか何よ、おばあちゃんおばあちゃんって……

 おばあちゃんっ子なのは知っていたけど、ここまでだったなんて聞いていないって……

 私たちが今まで結んできたこれまでの軌跡(ツインテール)ってこうも簡単にほどけてしまう物なのかと絶望してしまう。

 

「和輝の馬鹿……!! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿バーカ!!」

 

 悪いのは全部スペルビアギルディだってわかっているけど、口ではそう出てしまう。

 もしかしたら一向に言う事を聞いてくれない和輝にストレスが溜まっているのかもしれない。

 今まで出会ってきた子供が利口過ぎたのか、それとも和輝が特別こうなのかが全然わからない。

 振り返ってみると私は生まれてから今に至るまで幼い子供と交流を深めるようなあまりしていない。なんだかんだ言って子供と真に仲良くなっているのは和輝の方だと思うし……

 ひとしきり吐き出した後、自分自身がどうだったのかが気になって来る。

 

「お父さん、お母さん……私もこんなだったのかな……?

 

 自分で言うのも何だとは思うけど、私はあそこまで嫌だ嫌だ言うような子じゃなかったと思う。

 そりゃあ、ツインテール関連では我儘の一つや二つくらい言った覚えはあるけど……

 

「……って、いっけない。ツインテール解かなくちゃ」

 

 もう寝る直前だってのにツインテールを解いていない事に気が付いた。

 ごくたまにしてしまうとは言え、日々の積み重ねがツインテールを傷つける事を理解している私はツインテールを解く為、結んでいるリボンに手をかける。

 そこで手が止まった。

 

「……」

 

 動かない。

 動いてくれない。

 何となく理由はわかっている。

 ここで解いてしまうと本当に一人ぼっちになってしまう気がするから。

 お風呂に入る時とはまるで違う長い就寝時間を一人で過ごすにはきつすぎる。

 

「ダメね、これじゃ依存してるだけじゃない」

 

 そうぽつりと呟いた私はおもむろに立ち上がる。

 いつの間にか日付は変わっている。

 このままベットでゴロゴロしていても眠れそうにないので暇をつぶす為にもリビングへ向かう。

 幸い、明日からの学校は公欠できるようにママが手配すると言っていたので夜ふかしは気にしなくていい。

 

「あら? ティアナちゃんじゃないか。こんな夜遅くにどうしたんだい?」

 

「おばあちゃんこそ……」

 

 もう24時を過ぎているのに、リビングには明かりがついていて、おばあちゃんが一人でソファにもたれかかりながら深夜番組を見ていた。

 

「昼間やってるのはどうも退屈でねぇ、あたしみたいな昭和生まれからすると過激な方が面白いのさ」

 

「それでこんな時間に……」

 

 おばあちゃんが見てるのは深夜のバラエティー番組。

 ゴールデンタイムでは到底流せないような過激でマニアックな番組内容だった。

 録画でもすればいいんじゃ……

 そう思ってしまう中、おばあちゃんは私を見て何かに気が付いた。

 

「って……どうしたんだい? 涙なんか流して……」

 

「え……!?」

 

 ハッとして目を拭い、涙が頬へと伝う。

 どうしてと思うよりも先に安心感から来る喜びが沸き上がって来る。

 

「おいで、一緒に見ようじゃないか」

 

「うぅ……おばあちゃん……!!」

 

 せき止めていた感情が溢れだし、ダムを決壊させるかのように涙が止まらなくなる。

 たった数時間だけだって言うのに一人になるのが凄く怖かった。

 たった数回、和輝から嫌だと言われただけなのに辛かった。

 今までの全てが台無しになると思って嫌だった。

 私は泣いた。泣いて泣いて泣き続けた。

 それこそ昼間基地で泣き騒いだ和輝のように泣いた。

 

「辛かったろうね、よく頑張ったよ。好きな人に忘れられるのなんて女だったら誰でも辛いさ。泣いていいんだよ」

 

「おばあちゃん……!!」

 

 泣き続けてから数分後、ようやく楽になって涙が止まる。

 すっきりと晴れやかで気持ちいい。

 

「ま、子供ってのは難しいものさ。好きだ好きだって言ってた物がちょっと時間が経っちまえば忘れちまう。逆もそうさ、嫌いだった物がいつの間にか好きになっちまっている」

 

「そうなんだ……」

 

「あんただってそうだろ? みんなそうやって大きくなっていくもんさ」

 

 私はずっと小さい頃からツインテールにときめき続けていたから何とも言えないけど、確かに合っているような気もする。

 属性力も忘れていく好きって気持ちの中の忘れなかった気持ちだし、誰しもが強い属性力を幾つも育む事が出来ないのもそう言う事なのよね。

 それにしても子育てか……

 考えてみれば私は何にもわかっていない。子供の世話の仕方から何から何まで全部。

 

「やっぱり、子育てって難しいのかな?」

 

「簡単じゃないねぇ。大変な事ばっかりで苦労するもんさ。とりわけ和輝みたいな泣き虫で我儘言うような子供は手がかかって仕方ないってね」

 

「嫌にならないの?」

 

 つい口に出してしまった。

 おばあちゃんはにこやかな表情のまま問いかける。

 

「逆に聞くけど、あんたはその髪を手入れするのが苦行かい?」

 

 私は即座に首を横に振る。

 

「ううん!! 苦労はするけど、ちゃんとツインテール結べたら全部許せる!!」

 

「そう、ちょっと違うけど似たようなもんだよ。苦労するし大変だけど、元気よく育っている所を見ると嬉しいもんさ。尤も、子供は髪と違って別の命だから、思い通りにいかないのが当たり前で怒っちゃダメだけどね」

 

 そう言われて納得する。

 子育てもある意味ではツインテールを結ぶことと変わらないのかもしれない。

 でも、おばあちゃん。髪の毛(ツインテール)だって別の命なんだけどね。

 

「ま、自分の子が生まれれば自ずとわかるさ。今はチビ和輝と楽しくしな」

 

「楽しくかぁ……」

 

「気の持ちようだよ。あたしなんて自分も若返ったんじゃないかって思って今日は楽しかったよ」

 

「おばあちゃんは今でも十分若いと思うけどなぁ」

 

「あら、言ってくれるじゃないか。お世辞でも嬉しいよ」

 

 お世辞じゃなくて本当にそう思ったらから何だけど、喜んでいるならいっか。

 プッと笑いあう私たち。

 そんな時、リビングへのドアが開く音が下。

 

「ばあちゃん……!! こわいよぉ……」

 

 振り返るとそこにいたのは半べそかいている和輝だった。

 だぼだぼのパジャマの裾を引きずりやってきた姿は幼児属性や萌え袖属性を持っていない私も思わず可愛いと思ってしまう。

 

「全く、世話のかかる子だよ……」

 

 テレビの電源を消し、よっこらせと立ち上がったおばあちゃんが和輝を抱きかかえる。

 泣きだした和輝を抱きながらやれやれと表情を浮かばせるおばあちゃんだけど、そこには別の楽しさを感じる。

 明日からまた頼むよと言い残しておばあちゃんはそのまま寝室へと和輝を連れて行ってしまった。

 その後、私も私でツインテールを解いて寝床につくのだった。

 

 

 

 

「もー、はなちがちがうですのー!!」

 

 アルティデビル基地にあるベリアルギルディの自室に、スペルビアギルディがぷりぷりと頬を膨らませながら帰還した。

 スペルビアギルディとしては作戦の障害になるのはテイルバイオレットだけだとしか教わっていなかったからであり、はなち(話し)が違うというのはそういう事である。

 尤も、ベリアルギルディはまるで気にしていない。

 カタカタと音を鳴らしながらパソコンと睨めっこを続けている。

 

「もー、きくですのー!!」

 

「あーもう五月蠅い!! 聞いている!! いつまでもわめくんじゃあない!!」

 

 親に構ってほしがる子供のように駄々をこねたスペルビアギルディを見て、ベリアルギルディは遂には怒号を浴びせる。

 普通の子供であれば泣き出してしまうような剣幕ではあるが、相手は七つの性癖(セブンス・シン)のスペルビアギルディだ。

 その程度ではむしろ構ってくれた事に喜ぶ程だ。

 

「わーいわーい、おじちゃんがはんのーしてくれてるですのー」

 

「チッ、オレ様の負けと言う事か。鬱陶しい……!!」

 

 舌打ち飛ばすベリアルギルディ。

 ベリアルギルディは観念しながらもパソコンを閉じてスペルビアギルディへと向きなおった。

 

「で、何が用だ。まさかとは思うが、無様に逃げ帰って来たんじゃあないだろうな?」

 

「あれー? さっききいているっていいませんでちたっけ?」

 

 ピキピキと青筋を浮かべるベリアルギルディ。

 だが、これに関しては聞きながらもまるで興味なしとばかりに受け流したベリアルギルディに責任があるので何も言い返せない。

 

「もー、ちかたないですのー。いいですか? スペルははなちがちがうといってるですのー」

 

「話し? ああ、テイルバイオレット以外の奴らか」

 

 思い出した様子のベリアルギルディは腕をポンと叩く。

 スペルビアギルディはそれに対して改めて頬を膨らませて怒ってみせた。

 

「ほかにもおなかまがいるのならおちえておくですのー!! じょうほうきょーゆーはだいじですのー」

 

 何と耳が痛い言葉であろうか。

 事実、アルティデビルは出撃こそ管理されていたが、それ以外は個人個人が自分勝手に動く事が殆どであった。

 情報共有に関してはベリアルギルディやバアルギルディといった歴代のリーダーたちがある程度行って来てはいるが、十分とは言い難い。

 特に七つの性癖(セブンス・シン)に関してはベリアルギルディ自身がコイツらなら大丈夫だろうと心の何処かで甘く考えていたのもあって殆どなかった。

 

「フッ、よく言う。そもそも碌な情報収集を怠ったのは貴様だろう? オレ様のせいにするんじゃあない。七つの性癖(セブンス・シン)、傲慢の性癖の名が泣くぞ?」

 

 真に優れた者であれば、改善の為に頭を下げるような事であるが、ベリアルギルディは別である。

 見事なまでの責任転嫁を決め込み、スペルビアギルディもこれには思わず絶句である。

 これではどちらが傲慢の称号を得た者かわからないと言える。

 言い返さなかったスペルビアギルディを見て少しばかり気分を良くしたベリアルギルディは仕方ないとばかりに映像を映し出す。

 そこにはテイルブルームだけでなく、アナザーテイルレッドやそれと戦っていた時のテイルホワイト、さらには悠香や青葉や匠なども映っていた。

 

「あのときのおねぇさんに、これはテイルレッドちゃんとそっくりで、こっちはちろいおばさん、あとはふつうのおねえちゃんたちですのー!?」

 

 テイルブルームやテイルホワイト、アナザーテイルレッドはまだしも、悠香や青葉といった変身しないような一般人も出てきたことに驚くスペルビアギルディ。

 そんな彼女に向かってベリアルギルディは口を開く。

 

「調べによるとコイツらはテイルバイオレットの友であるらしい。無論、わかっているのはそれだけだ」

 

 トゥアールが来る以前のデータしか持っていないベリアルギルディが知っているのは本当にそこまでである。

 トゥアールが来て以降、調べようにも特に何も出てこない。

 ベリアルギルディの知らぬ所ではあるが、それも全てトゥアールがある程度の対策を施しているからである。

 無論、ベリアルギルディもそれに怪しんでこそいるが、相手にならないし問題ないだろうという慢心からか特に気にしてはいない。

 

「ただのおともだちなんですのー? どうしてスペルにみせたですのー?」

 

「貴様の趣味を助けてやるだけの事だ。オレ様としてはこのような雑魚である凡才以下の凡人など手を下すまでもない。オレ様のような天才はな」

 

 意味ありげなその言葉を聞いてスペルビアギルディは口元を歪ませる。

 遠回しであるが、その提案は卑劣かつ残酷だ。

 テイルブルームを含めた全ターゲットを調べ終えたスペルビアギルディは部屋を後にしようとする。

 ベリアルギルディはそんな彼女へと声をかける。

 

「忠告しておくが、テイルホワイトだけは子供に戻すなどという甘い事はするなよ。奴はオレ様から愛しきマイエンジェルを奪った仇だ。どんな方法でも構わんから消せ」

 

 テイルホワイトへの憎しみを溢れだすベリアルギルディの忠告もとい脅迫。

 これだけは絶対に破るなという強過ぎる狂気がそこにはある。

 

「そうでちたーベリアルおじちゃんのかのじょさんのためにもがんばりますよー」

 

「フッ、よせよせ。彼女とオレ様はカップルなどという凡な関係じゃあない。オレ様とあの娘は属性力やツインテールをも超えた凡人には理解できぬ天から祝福と言えるだろう。そもそもオレ様が我が愛しきマイエンジェルと出会ったのはだな……」

 

 聞かなくてもわかる。

 これは話が長いパターンだ。

 うんざりしたスペルビアギルディは早足でその場を後にした。

 ベリアルギルディがそれに気がついたのはそれから約半日後であった。

 

 

 

 

「よしっ、今日こそは私だって……!!」

 

 和輝が幼くなって一夜明けた。

 朝目覚めた私は洗面所にて顔を洗い、頬をパンッと叩く。

 ツインテールも結び終えて準備完了。

 気合いも入れ直したし今日こそは和輝と心を通わせてみせる。

 私は和輝が寝ているであろうおばあちゃんの寝室へと向かう。

 

「和輝く〜ん? 起きてますか〜?」

 

 ドアを開けてベットの上を見ると、そこには小さな身体をさらに小さく縮こませてスヤスヤ寝息を立てて眠る和輝の姿があった。

 幼くなっても和輝は和輝。

 気持ちよく眠る姿からは大きい時の面影がしっかり見える。

 

「ふふっ、もう和輝ったら」

 

 時刻は朝8時。

 いつもなら遅刻するわよと大声で怒鳴って叩き起こす私だけど、今日は違う。

 学校が行かなくてもいいってのもあるけど、やっぱり子供に懐かれる為には優しく接してあげるのが一番だからだと思うのもある。

 昨日は基地で散々、ママ相手に暴力振るって怖がらせちゃったし、今日はもしもの事があっても自重するように気をつけてみせるつもり。

 ……にしても、和輝ってこう見ると結構可愛いなぁ。

 

「ってあれ? おばあちゃんは?」

 

 和輝の寝顔に気を取られて気が付かなかったけど、どこを見渡してもおばあちゃんが見当たらない。

 おばあちゃんも朝にはあまり強くない筈だし、どこ行ったんだろ?

 その後、家の中をくまなく探しても見つからない。

 こんな朝なのにどこか買い物でも行ったのかななんて思っていたそんな時、リビングのテーブルに手紙が置いてある事に気がついたら。

 

「えーっと、夜遅くには帰ります。おばあちゃんより……って、ええ!?」

 

 呆然とする中、私と和輝、二人だけの一日が幕を開けたのだった。




あらためて今年もありがとうございました。
来年の抱負は週一投稿を徹底するですかね(多分無理)
次回こそはショタ和輝とティアナのイチャイチャシーン書いてやる!!
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