俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
陽が上り時計の針が8時をまわった朝、私はリビングで呆然となっていた。
目の前のテーブルに置かれているのは一通の置き手紙。
達筆な字で書かれたメッセージは、頼みの綱であるおばあちゃんが家を空ける事が記されていて、私一人で幼くなってしまった和輝の面倒を見ないといけなくなってしまった事を表している。
「嘘でしょ……私一人ぃ!?」
正直な話、無理。こればかりは絶対に無理。
別にこれは変な意味じゃないし、懐いてくれない幼い和輝が嫌いだからとかじゃなくて、シンプルに自信がないの一点に尽きる。
誤解されてるかもだけど、私だって結構子供は好きな方ではあるし、その世話だって苦手と言える程じゃない。
でも、今の和輝はそんな私では太刀打ちできない。
昨日から続く数々の拒絶の果てに、私の
「どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ……!!」
落ち着くのよ総愛!! 落ち着きなさいティアナ!!
無理だ不可能だなんて言っても何にも解決しないでしょ!!
おろおろする自分自身を落ち着かせるべく心の中でそう喝を飛ばすけど、中々に上手くいかない。
パニックの果て、私の手は自然と結ばれている自身の髪へと伸び、ツインテールの穂先をくるくる弄っては落ち着きを取り戻す。
(大丈夫、大丈夫よ。私ならやれる……!! この状況を楽しむの……!!)
昨晩聞いたおばあちゃんの言葉を思い出す。
今はこの状況を少しでも楽しむことが大事だって言ってたじゃない。
年齢こそ変わってしまったけど、今この状況って和輝と二人きりになっている事に変わりない。
むしろ、和輝が幼くなっているからこそやれることだっていっぱいあるじゃないの。
例えば……幼い和輝にツインテールの結び方を教えて教えて教えまくる……。
将来大きくなって好きな子ができた時は髪の毛はこうやって結んであげればいいのよって教えたら、もし和輝が元に戻った時に変化が起きるかもしれない。
(そうなれば、私のツインテールも和輝が……)
元に戻った時、ふとしたきっかけで解けた私の髪を和輝がツインテールに結んでくれる。
その光景を目に浮かばせながら私はツインテールの穂先をくるりと弄るのを繰り返す。
左右の房がさらりと揺れ、束が指先に絡まってはひらり解ける。
ツインテールを弄った際の幸せと、最高の未来を想像した際の幸せが私の脳を溶かしていく。
そんな私がふと我に返った時、リビングのドアを開ける和輝と目が合った。
「なにしてるの……おねえ……ちゃん……」
「あ……、お、おはよう……」
私を見る和輝の目は、明らかに何をしているんだとドン引きし、不審者を警戒するかのような冷たい眼差しだった。
幼くなっているとは言え、長い間共に戦い想いを寄せる程の和輝相手からそんなエレメリアンを見るかのような目は私じゃなくてもああやってしまったと後悔すると思う。
妄想とツインテールに夢中になりすぎちゃった……
さらに間が悪い事に、当の和輝は心許しているおばあちゃんが家にいない事に気が付いた様子でもある。
「あれ……ばあちゃん……!! いない……!!」
「あ、おばあちゃんなら……その……」
「ばあちゃん……!! ばあちゃん……!!」
昨日の出来事がフラッシュバックする。
私ははぐらかすのを止め、慌てて落ち着かせようとする。
「大丈夫!! おばあちゃんなら夜には帰って来るから!! それまでは私と――」
「うぅ……、おばあちゃん……!! やっぱり……やっぱり……!!」
完全に裏目に出た。
和輝は私の言葉を聞いた事でおばあちゃんがいない事を確信して嫌でも理解してしまった。
和輝の目に涙が溜まる。
不味いと思う間もなく次の瞬間、幼い和輝の不安と悲しみは爆発した。
「うわあああああああああん!!!」
「だから大丈夫だって!! 私が!!
「うえええぇぇぇぇん!!! やだやだやだ!! おばあちゃぁぁぁぁん!!!」
朝早くからの大きな泣き声は様々な意味でダメージが凄い。
耳を押さえながら何とか泣き止ませないとと頑張ってみているけれど、一度スイッチが入った和輝は私では止めようがない。
おばあちゃん程ではないにしろ、せめて匠くらいの対子供の経験がないとダメよね。
開始早々の大ピンチにこっちまで泣きそうになる。
そんな時、私はふと、置手紙の下に小さなノートがある事に気が付いた。
◇
『誰だお前は!!』
『天から使者!! 魔法少女ツインテ☆エクスシア!!』
私の目の前、リビングのテレビで流れているのは10年近く前に放送されていたらしい魔法少女アニメ。
実在していた魔法少女シャイニーブルーム(現テイルブルームの華先生)の影響で製作されたと思しきこの作品は、幼少期の和輝にとってお気に入りであったらしく、当時放送していた内容をDVDに焼いた物を再生している。
『貴様の歪んだ心全部、私が断ち斬ってあげる!!』
「がんばえー!! エクスシアー!!!」
テレビ画面にかじりつきながら応援する和輝。
その目はさっきまでの涙に溢れていた時とは比べ物にならないくらい輝いていて、まるで素晴らしいツインテールを目にした時の私みたい。
コーヒーでホッと一息をつく私はそんな和輝を見て癒されていた。
「はぁ……、ありがと、おばあちゃん……」
和輝が夢中になって見ている『魔法少女ツインテ☆エクスシア』のDVD。
どうしてそんな物が残されていたのか? どうして私がその存在に気が付いたのか?
答えは先程見つけた一冊のこのノート。
ここにあるこのノートには、和輝の面倒を見る際の各種トラブルに対する対応方法が事細かに記載されている。これは恐らく、事前にこうなる事を見越したおばあちゃんが家を出る前に準備してくれた物だと思っている。
今見せているDVDも和輝が泣き止まない時に見せてあげなさいと用意されていた物って訳。
『いっけぇぇぇッ!!! ライジング!! ソーーーード!!!』
画面一杯に描かれるエクスシアの必殺技。武器である刀にエネルギーを集約して刀身を巨大化させ、敵を真っ二つにするどころか消し炭に変える何処が魔法少女なのか首を傾げたくなる物騒な技。
だけど、男の子である和輝には大好物みたいであり、今日一番の興奮を見せている。
「カッコいい……!!」
「そ、そうかな……?」
小さな声で思わずそうツッコんでしまう私。
まぁ確かに、全体的な内容は10年近くも前に放送されていた割には最近のアニメと遜色ない素晴らしい出来だと評価できる。
アクションシーンではぬるぬる動くし、主人公のエクスシアのデザインも可愛らしくカッコイイ。ストーリーは大きい私が見ても引き込まれるような大人向けな内容で名作と呼ぶに相応しいと思う。
でも、私としては少し納得がいかない点がある。
それはタイトル名が『魔法少女ツインテ☆エクスシア』だってのに肝心のツインテールがあまり目立っていない事よ。何というか実在していたシャイニーブルームから無理矢理ツインテール要素を持ってきただけに見えるし、私としてはもうちょっとツインテールを魅せて欲しい。折角、作画もストーリーも良いのに……
『また来週も見てね~!!』
「あ、もう終わった」
EDが流れて次回予告、そしてお決まりのまた見てねのコール。
程なくしてテレビ画面が暗転する。
次の内容を今か今かと待ち望む和輝を泣かせないためにも、私は次のDVDを再生すべく立ち上がり、DVDの山と睨めっこを開始する。
「いくら何でも多すぎでしょ……」
大量に焼かれたDVDの内容はどれもこれもが今のような魔法少女及び変身ヒロイン系アニメだと思う。
当時、確かシャイニーブルームはアルティメギルの侵略を防ぐために皆の記憶から自身とそれにまつわる記憶を封印したはずなのに、これだけの影響を知らずに残しているのは当時の人気が凄かった証拠でもある。
ま、それはそうと種類多すぎだし、おばあちゃんもいい加減なのか、何が何のアニメで何話の内容なのかの記載が全くされていない。これじゃさっきの続きがどれか全くわからないじゃん。
困り切った私は何となくの勘で一枚のDVDを取って戻る。
「おねえちゃん、はやくー!!」
「はいはい、ちょっと待ちなさいよ」
アニメの影響もあってか、和輝の私に対する警戒心は和らいでいる。
尤も、少しでも油断したらいつまた大騒ぎを開始するかわからないので迅速に行動するのを忘れない。
私は取って来たDVDを再生した。
「あれ? さっきとちがう……」
「あちゃー、やっぱりかぁ……」
始まったのはさっきの魔法少女アニメとは違う別のアニメ。
内容はツインテール少女に憧れる男子高校生が白銀の妖精と出会ってツインテールヒロインへと変身し、迫りくる癖の強い悪と戦うといった物。
所謂、性転換というジャンルらしく、
私が一番ツインテールが惹かれる物を選んだだけあって、ツインテールの魅力は一番表現出来ているし、ストーリーは基本ドタバタギャグで決めるときはカッコよくシリアスに決めるメリハリの利いた物になっているのは高評価って所。
でも……
「いや、流石に……何……この……絵……」
バンクシーンは凄く気合を感じる。それこそさっき見たアニメよりも綺麗な感じ。
だけど、それ以外の場面の作画がその……かなり残念な感じになっているの。
全体的にのっぺりしているし、素人の私が見ても色々おかしいこれは俗に言う作画崩壊と言う奴みたい。
ツインテールは上手く描けているけど、それに力入れ過ぎたのか話が進むにつれ酷くなっていく作画崩壊の嵐にはコメントに困る。
「か、和輝くん? その……ごめんね……?」
これを選んで申し訳なくなり謝る私。
これじゃないと言って泣き出すんだろうと覚悟しながら様子を伺う。
だけど、その心配は杞憂に終わる。
「おねえちゃん!! これおもしろい!!」
「え!? 嘘でしょ!?」
驚く事に和輝はそのアニメを楽しんでみていた。
作画崩壊の嵐もなんのその。カッコよく動くバンクシーンとやたら気合の入っているツインテールの輝きに目を奪われている。
子供にとって大事なのは作画の綺麗さではなく、カッコよく面白く見せようとする気持ちや内容なのかもしれないと思い知らされた。
「そういえば、おねえちゃんのかみ……」
「ん? え!? 私!?」
私のツインテールを見て幼い和輝が輝いている。
もしかして今見た一連のアニメの影響が出ているって言うの?
「う、ううん……」
恐れが勝ったのか、やっぱり何でもないとばかりに和輝は目を逸らす。
もっと見ててもいいし、何なら触れてもいいんだよと声をかけてあげたいけど、焦らずじっくり触れ合う事にしたのでここは我慢する。
多少なりとも興味を持って私に対する警戒心を解いてくれた事が一番の進歩だしね。
喜ぶと同時に和輝のお腹からぐぅ~と鳴る音が聞こえる。
時刻もいつの間にか12時を過ぎてるし、そろそろ昼ご飯といきましょうか。
◇
「それじゃ青ちゃん、あとお願いね」
「うん……」
午後の授業が始まっているであろう双神高等学校。
一部生徒のみが許される授業出席免除を使い、学校から飛び出していくのは、新聞部部長であり直接の情報収集を担当する悠香だ。
ネットを使った捜査及び収集は相棒である青葉に任せている。
今回手に入れたい情報はずばり昨日の事件の犯人であるスペルビアギルディの事についてである。
トゥアールが仲間になって以降、こういったエレメリアン関連の事件調査は長らくやっていなかった事もあり、悠香個人としてはいつになく張り切っていた。
(トゥアール先生は今手が離せないみたいだし、ここはあたしの出番って訳よ)
現在、トゥアールは教師として請け負っている担当授業を全て諸事情による自習とした上で基地内の研究用ラボに引き籠って作業をしている真っ最中である。
トゥアールは人体の限界と科学者として誰もが願う禁忌であり奇跡に挑戦している。
悠香たちはそれらの研究が和輝を元の姿に戻す為の物だと認識している為、こうやってトゥアールに任せるべき情報収集を請け負っているのだ。
(先ずはこのエレメリアンの目的と属性力の推理からしなくちゃね)
あてもなく聞き込みを続けても、無意味なのは悠香自身長年の経験からわかっている。
目的の情報を手に入れる為にも、ある程度の推測と推理を交えた上で最も確率の高い場所や知っていそうな人物を重点的に調査するのは、基本中の基本である。
勿論、これはゲームではない。調査したところで得たい情報が全く手に入らないのはざらにある。
だが、基本無くして成功無し。
故に悠香は考える。
(目的はトゥアール先生の言う通り、恐らくはテイルバイオレットの無力化。華先生が救援に来た際に直ぐ逃げたらしいし直接戦闘は弱いと考えるのが妥当ね。見た目も子供みたいだったし、子供のエレメリアンって事でいいのかしら?)
スペルビアギルディの容姿はまさしく子供の女の子と呼べる物であった。
トゥアールに見せてもらった映像でも言動の節々から幼さを感じる事が出来た。
(だけど、どこか引っかかるのよね。子供、というには余りにもイメージ通りすぎる気がするし、エレメリアンだから人間と違うと言えばそうなんだけど……)
この違和感、言うなれば子供過ぎると言うべきか。
言葉にいい表しようのないこの違和感が悠香の思考を妨害する。
(駄目、埒が明かないわ。とりあえずは昨日の和くんの足取りを追ってみましょう。何か掴めるかもだし……)
答えのない違和感を気にしても意味がない事を悟った悠香は方針を少し変更。
昨日、和輝が学校をサボった際に何をしていたのかを追う事にする。
幸い、マシントゥアールが辿った道を記録していた事もあり、道筋を辿る自体は難なく出来た。
その途中、和輝と思われる学生がラーメン屋台の梅屋に寄っていた事も知った悠香は、その屋台へと訪れた。
「うーん、女の子の怪物か……」
「何か知っている事とかありませんか? 何でもいいんです。例えばその怪物が興味を持っていた物とかでも……」
「ごめんよ、あの日はあれ以降誰も来なかったし誰も見てねぇんだ」
結局、悠香はラーメンを一杯ご馳走になっただけで有力な情報は何も得れなかった。
悠香自身、この結果は仕方ないと割り切っている。
なんせスペルビアギルディは今までのエレメリアンと違って何の痕跡も残していない。
自身の属性力に少しでも引っ張られる他エレメリアンと違って目的のみに終始しているのには最早恐怖すらもわいてくる。
(自制が効くの含めて格が違う……という事なのね。上等じゃない……!!)
悠香は諦めない。
困難であればある程燃えてくるのが彼女なのだ。
尤も、だからといってこれ以上無駄足を踏み続ける趣味はない。
現状の報告と意見交換を行うべく、トゥアルフォンを手に取り青葉へと通話をかける。
「もしもし? 青ちゃん? そっちはどう?」
『どうもこうもないよ……。流石にデータ不足……。出現情報もないも出てないしお手上げだよ……。そっちは?』
「あたしも一緒。折角、出番来たってのにこれじゃ役立たずよね~」
言い方こそ軽いが、悠香自身は悔しさを感じている。
ここ最近はトゥアールに役割を取られがちだったので尚更である。
「ねぇ? 青ちゃんはスペルビアギルディの属性って何だと思う?」
『うん? どうしたの……?』
「いや、属性力の内容を知れば少し役に立てるかな~って思っただけ」
『それもそうだね……悠香の言う通り……』
「でしょ? でもわからないのよね~さっぱりよもう~」
それを聞いた青葉も電話越しで考える。
しかし、特にこれと言った物が閃かない。
『無難に幼女属性とか幼児属性とか……じゃないよね……』
「そうなの。無難に考えるとそれであっているんだけど、何処かズレている感じがするのよね~」
頭を悩ませる悠香と青葉。
彼女らもこれまで数々のエレメリアンを見てきたが、スペルビアギルディは何処か異質な何かを持っている。
「もしかしたら、根本から間違っているのかも」
『どういう事……それ……?』
「いや、だからね。スペルビアギルディって――」
核心をつこうとしたその瞬間、悠香は周囲の雰囲気が変わった事に気が付いた。
キッズスペースを想起させる子供の落書きが天を描き、無限に広がるファンシーで子供っぽい空間が形成されていく。
そして、トゥアルフォンから聞こえてくる青葉の声がノイズでかき消された。
「青ちゃん!? 青ちゃん!? ッ……!! これは……」
悠香の直感が働く。
これは間違いなく助からない。
スペルビアギルディの狙いは間違いなく自分自身だ。
「おねえちゃんおねえちゃんー!! スペルとあそぶですのー!!」
「やっぱり……!!」
姿を現すスペルビアギルディ。
その異質なオーラは今まで見て来たそれとは歪んでいる。
「ごめんねみんな。ちょっと迷惑かけちゃうかも……」
逃げ場は無し、今からじゃ助けも間に合わない。
恐らく、命は奪わないだろうけど、和輝同様に子供にされるのは察しが付く。
そうなれば迷惑をかけるのは確定だろう。
だが、悠香は転んでもただで起きるつもりはなかった。
「なにブツブツいってるですのー? おねえちゃんもあそぶですのー」
じりじり詰め寄るスペルビアギルディ。
恐怖が身体全体を襲う中、悠香は意を決して声をかける。
「あなた、自分の属性を憎んでるんじゃないの?」
瞬間、悠香の意識は途切れた。
そして、数分後。
「待ってて悠香……!! 今行くよ……!!」
悠香が襲われた事で冷静でいられなくなった青葉は部室を飛び出し、悠香が襲われたであろう場所を目指して走っていた。
トゥアール、及び華と言った大人たちの助けを求める事すら忘れたこの行為は自殺行為その物であり、元々これと言った自衛手段を持っていない青葉ではなおのことである。
事実、程なくして青葉もまた、その姿を消すのであった。
◇
「はぁ……やっちゃった……」
もう何度目かわからないため息を吐く。
アニメを通して、和輝から私やツインテールへの興味を持ってくれた所までは良かった。
問題はその後の昼食の時。私は観束家秘伝の特製カレーを作ってあげる事を決め、その調理に取り掛かったんだけど……
丁度その時、家の中にジャガイモがなかったことに気が付いたの。
ママからこの状況下、強力な認識攪乱を施したこの家の外に出た場合、スペルビアギルディに襲われる可能性が高いから外に出ない方がいいと、そう言っていた。それもあって、私は買い出しに行かずに家にある物で代用することに決め、その時に見つけたサツマイモが裏目にでた。
そう……。和輝ってサツマイモが苦手だったの……
「美味しいのに……」
自分で言うのもなんだけど、私は別に料理が下手じゃない。
サツマイモを入れた場合のカレーだってちゃんと味付けの調整だって出来る。
甘くなり過ぎず、かと言ってサツマイモの個性を損なわないようにするのは難しいかもだけど、頑張った甲斐あって結構上手に出来た。
だけど、和輝はサツマイモが入っていると知った瞬間に食べるのを嫌がり逃げてしまった。
結果、キッチンには残ってしまったカレーがいっぱいある。
「わかる訳ないじゃない……」
そうぼやきながらおばあちゃんのメモをチラリ。
そこには和輝の苦手な物も隅の方に書かれていて、ピーマンなどのお約束な物に混じってサツマイモも入っていた。
何でもおばあちゃんが焼き芋好きで和輝も4歳頃までは大好きだったみたいだけど、ある時食べ過ぎでお腹を壊してしまい、以来それ以降嫌いになっちゃったとか何とか……
「はぁ……また振り出し……」
一応、何も食べないのは不味いのでとりあえずお菓子を与えたけど、私への好感度は完全に消えてしまった。
今現在、和輝は午前中と同様にテレビを見ているけど、それもいつまで持つか……
もう外も暗くなってきたし、そろそろおばあちゃんも帰って来るような気がする。
私としてはこの地獄みたいな空間に耐えれそうにないので早く帰ってきてほしい。
「ママに相談しようかな……」
何か企んでいるかもと思ってトゥアールママには今日一日中何も報告も相談もしてこなかったけど、流石にもう限界なので頼ってみようと思う。
トゥアルフォンを手に取って画面を開く。
通知などは一件も入っていない。
アドレス帳からママの番号をダイヤルしようとした時、逆にママから着信が入った。
「もしもし? ママ? ねぇ、どうしたら――」
『大変です総愛!! 悠香さんと青葉さんが襲われました!!』
ええ!? どういう事!?
余りにも予想外の報告を聞き、理解不能の事態に陥る。
スペルビアギルディの狙いって私じゃなかったの!?
「どういう事よママ!! 悠香さんと青葉さんが襲われたって!! 説明してよ!!」
少し乱暴な口調でママを問い詰める。
ママは冷静でありながらも怒りを滲ませつつ答える。
『敵の狙いは和輝君だけじゃなかったって事です。恐らく、敵の狙いはあなた以外の協力者、最終ターゲットである総愛以外の私たち全員だと言う事です』
つまり、スペルビアギルディは私を捕らえる為にまず邪魔な他のみんなを襲っているって事!?
ある意味、合理的。だけど、卑怯極まりないその戦法に怒りを覚える。
私のツインテール属性を狙う為だけに他のみんなを襲うなんて……!!
アナザーテイルレッドの行いは飽くまでもエレメリアンではない人間の起こした事だからだと思って油断していたけど、エレメリアンもこんな手段に出るだなんて……!!
「ってそれよりもママ!? 悠香さんと青葉さんはどうなったの!?」
襲われたと言われた悠香さんと青葉さんの事をふと思い出し、今度はその事について尋ねる。
何となく予想はついているけど、まさかとは思う。
そして聞かされた容態はそれを超えて来る。
『総愛……あなたもわかっている通り、二人は和輝君と同じように肉体年齢と精神年齢を著しく下げられています。ですが、二人の場合は和輝君以上に深刻です。見た所、年齢は1歳児程だと言ってもいいでしょう』
「1歳児!? 幼児化とかそういう次元じゃないじゃん!!」
1歳児と言ったら、やっとこそ歩く事が出来るレベルの年齢だったはず。
今の和輝が恐らく5歳程だと言うのに、1歳となるともう無茶苦茶よ。
もはや赤ちゃんと言ってもそこまで大差ないのが危険すぎる。
『幸い、華先生が保護することに成功しましたし、今は基地内のメディカルルームで匠君が世話をしています。ですが、ここまで年齢を戻されると元に戻った時が危険です。万が一でも影響が残ったら……』
確か一歳児ってまだまだ自己を確立する年齢じゃない筈。
でも、いくら幼くたって影響は受ける事には変わりないし、ましてやそこまで幼くされてしまった場合にどうなるのかわからないのは確かにその通りと言える。
ママの言葉を聞き、私自身も背筋が凍る。
『兎に角、現在は華先生と私が対処に当たります!! くれぐれも総愛は外に出ないでください!! いいですね!!』
ママの必死な言葉を最後に通話は終了。
私は何も出来ない無力さを感じながらママと華先生の無事を祈る。
「お願い……ママのツインテール!! もう一度ママを……テイルホワイトに……」
テイルブルームとテイルホワイトの二人がいればスペルビアギルディなんて余裕で倒すことが出来ると思う。
華先生一人を信じていない訳じゃないけど、こうなってしまった以上は不安が募る。
「和輝……私、どうしたら……ッ!?」
無意識に和輝を頼ろうと、幼い和輝がいるリビングへと視線を移した私だったけど、その瞬間にとんでもない事に気が付いた。
さっきまで黙ってテレビを見ていた筈の和輝がいなくなっている……!!
「和輝!? 何処行ったの!? まさか敵!?」
そんな筈ない。この家はママ徹夜の改造でエレメリアンでは絶対に認識する事が出来なくなっている。
私だって、この家及び基地の安全性はテイルブレスやトゥアルフォンを身に着けるのとは比べ物にならないのを知っている。
だったら何?
何が起きたの?
目を離したこの数分の内に何が起きたって言うの!?
「まさか……!?」
視界の中でリビングのドアが少し開いている事に気が付いた。
慌ててドアを開き、廊下へと出る。
トイレにはおらず、全開になっているのは玄関のドア。
和輝が履いていた靴も消えている。
これってもしかしなくても……
「嘘でしょ……」
おばあちゃんがいない事に耐え切れなくなったのか、幼い和輝は家を飛び出してしまっていた。
俺ツイの二次としてはちょっとデリケートなネタを扱いましたけどどうでしょうか。
僕個人としては俺ツイのアニメは原作を知るきっかけにもなったので思い出深い大好きなアニメです。
次回こそ……!! ショタ和輝とティアナのイチャイチャを書く!!(n回目)