俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「弟子にしてください!!!」
最近元気がないのではと華先生を心配した直後、突如やってきた本人による言葉。
それは耳を疑うという言葉があまりにも似合い過ぎる。
一瞬の聞き間違えなのだろうと俺やティアナたちも状況を整理しようとするが、目の前で床に突き刺さっているトゥアールさん相手に土下座し続ける華先生という現実がそれを拒み、思考回路をショートさせてくれやがる。
「せ、先生!? 何言ってんだよおい!!」
「ちょっと意味わかんねーっすよ!!」
慌てながら真っ先に駆け寄る俺と匠。
ただ、近くで見れば見る程、華先生が本気なのだと感じられる。
「ないないない!! ママの弟子なんて絶対にありえないから!! ねぇ華先生? ママの弟子なんかになったらおかしくなっちゃいますよ!?」
俺と匠を押しのけ、一際大声で否定しに来たのはティアナだった。
一応、トゥアールさんと一番関係が深い筈なのにこの荒れっぷりは思わず苦笑い。
まぁ、ここ最近はトゥアールさんに色々迷惑かけられていたので仕方ないと言えばそうだけどな。
「まぁまぁ、ティアちゃんはちょっと落ち着いて」
俺たちと違い、一呼吸置き落ち着いてから話を進めようとする悠香さんらがティアナを下げつつ前に出た。
「和くんたちの言う通りですよ。いきなり弟子って……一体どういう流れがあったんですか?」
「そう、訳が知りたい……」
そう聞く悠香さんら先輩方。
だけど、華先生は一向に土下座をやめようとせずに不動のままだ。
黒焦げで床に突き刺さるトゥアールさんに土下座する華先生……
どこからどうツッコんでいいかわからねぇくらいにはシュールだぜ……
「もしかしてアレっすか? 華先生もトゥアール先生みたいに博士になりたいって奴?」
匠の奴が沈黙に耐え切れずそう聞いてみせたが、果たしてどうだろうか?
確かに華先生は真面目だ。もし出来ない事があれば努力して物にしようともするくらいどんな事でもやって見せるだろう。
だけど、だからと言って華先生がトゥアールさんのような博士になりたいかと言うとそうじゃねぇと思う。だって、以前のレヴィアタンギルディ戦の際、テイルギアが壊れた時もトゥアールさんを信じて修理を託していたし、仲間の大切さを誰よりも知っているが故に適材適所を大事にするタイプだ。
弟子って言うのは決して科学分野の事ではない。
「もしかして強くなりたい……とかです?」
今度は悠香さんがそう聞いてみせた。
俺もこれには納得できる。
何てったってトゥアールさんは今でこそ変身能力を失っているが、変身すればテイルホワイトとなり、あのアナザーテイルレッドとも互角以上にやり合えるくらい強いからな。
普段はお茶らけてティアナにやられているけれど、逆に言えばティアナにあれだけやられても全く懲りないのは強い証拠でもある。
「先生!! だったら私と修行しましょう!! 私もまだ未熟だし……お母さんみたいに教えるのは出来ないかもだけど……でもきっと先生の素質ならできますよ!! 先生の動きに私の流派が合わさればそれこそ鬼に金棒……ううん、テイルレッドにツインテールですって!!」
「おいおい、これ以上、人外増やしてどうすんだよ。てかなんだその諺……」
余程トゥアールさんの事が信じれないのかティアナの説得にも熱が入る。
あ、ちなみに後で聞いた話だけど、鬼に金棒ならぬテイルレッドにツインテールって諺はティアナのいる次元での未来では一般的に使われる諺なんだってさ。
「だから先生!! ママに弟子入りだけは――」
「大丈夫よ橘さん。気持ちだけはありがたく受け取るわ」
ティアナが熱を込めて説得する中、遂に顔を上げた華先生は静かにティアナを制止する。
その顔はいつになく真剣だ。
ツッコミを入れる余地など全くない。
「先生ずっと悩んでいて、そして決めたの。今のままの私を続けていてもこれからさらに激化する戦いについていけないし、このままじゃ私の目指すお師匠様のような教師にもなれやしないって……」
「「「「先生……」」」」
華先生の悔しさと辛さの入り混じるその表情と声に俺たちはそれ以上何も言えない。
華先生の決意は予想以上に固いと見えるぜ。
「だから私決めたの。観束先生のような教師……いや、観束先生のような誰からも愛される変態になって見せるって!!」
「「いや、どうしてそうなった(のよ)!?」」
自信満々に決意し言い放った華先生のぶっ飛んだ発言。
俺とティアナがすかさずツッコミを飛ばし、匠と悠香さんはズッコケ、青葉さんは眼鏡を光らせたままフリーズ。
なお、当の本人はそんな俺たちの反応を見てもあれ? とばかりに首を傾げている。
「先生!! それは流石に考え直せ!!」
「そうよ!! 先生がママみたいになったらまともな大人がいなくなる!!」
「いや、でもね、先生は真面目過ぎるって……」
「「だからって極端すぎるだろ(でしょ)!!」」
ヒートアップしながら説得をする俺とティアナを前にし、しどろもどろになる華先生の目に涙が浮かぶ。
まさか華先生はみんなから応援されるとでも思っていたのだろうか?
数分前の俺なら理由はどうあれ応援しようと思っていたけど、あんな宣言を聞いてしまった以上は止めるしかねぇんだ。
悠香さんたちも同意見なのか助け舟は出さずに苦笑いを浮かべながら静観している。
「で、でも……先生は……」
「「でもじゃな――」」
なおも何か言いたそうにする華先生を止めるべくより一層声を荒げようとしたその時、
「総愛!! 和輝君!! それ以上はやめなさい!! 例え娘と未来の息子であっても容赦はしませんよ!!」
いつも以上にハリのいい声が響き、俺たちは振り向く。
するとそこには、テーブルの上で腕を組み仁王立ちするトゥアールさんがいた。
遂さっきまで黒焦げのまま床に突き刺さっていた姿から全然想像できない変わりようには思わず二度見三度見の怪奇現象だ。
尤も、当の華先生はそんな事もお構いなくトゥアールさんの下へスライディング土下座をしていやがる。
「話は聞きました。華先生は私のような……変態痴女になりたいのですね?」
「はい!!」
意味不明の問いかけに寸分の迷いもなく放たれる返事はわかっていてもズッコケたくなるものだぜ。
俺やティアナがちょっと待てと言わんとしてもトゥアールさんは真剣な表情のまま手で待ったをかける。
「どうしてそうなりたいのですか?」
「え……っと、実は私はこれまでの戦いで力不足を痛感してきたんです……。だから……」
言葉が詰まる華先生。
トゥアールさんは見逃さずに問い詰める。
「だからとはどういう意味ですか? 私のようになってどう変わるのですか?」
「え、えっと……」
トゥアールさんから至極真っ当なド正論を言われて困惑する華先生。
俺や俺以外も、トゥアールさんの事だし、直ぐに弟子にしましょうとか何とか言って頓珍漢な修行が始まると思っていたのにこれは意外な展開だ。
「ねぇ和輝? もしかしてママって……」
「ああ、もしかしたら意外と何とかなるかもしれねぇな」
どうやら俺たちはトゥアールさんを誤解していたようだ。
トゥアールさんはトゥアールさんでちゃんと考えているし、何なら俺たちのようにただ感情に訴えかけるような説得をしていない。
ちゃんと本心に問いかけ、それでいてちゃんとこんな頓珍漢な事をしても意味がないと諭して断るつもりのようだ。
「あなたは私のようになって何をなすと言うのですか? それが答えられないのであれば弟子にする事はできません」
「そ、それは……」
先程同様に華先生の言葉が詰まる。
これはいけるぞ……!!
頼む華先生、考え直してくれ……!!
数分後、華先生は静かに語りだす。
「私……観束先生が羨ましいんです。観束先生はこの学校に赴任してまだ一か月なのに、いつの間にか生徒みんなに受け入れられ……人気も高い……。私なんかつい最近、生徒たちに真面目過ぎてつまらないと言われるくらいです」
心に抱え込む悩みを吐露する華先生。
皆一斉に押し黙る。
「戦いだってそうです。観束先生はテイルホワイトとして強いだけじゃなく、例え戦えなくなった今でも涼原君や橘さんたちを支えているじゃないですか。私なんて……戦えなくなったらただ足手まといなだけで何もありません。強さだけがすべてじゃないなんてわかっていますけど、それでも……」
華先生……。
そこまで悩んでいたとは思ってなかった。
確かに振り返ればここ最近の戦いでテイルブルームはあまりいい所がない。
それ所か、俺たちはブレイブやエモーショナル、エクストリームチェインという新しい力を今まで順々に手に入れたのに、華先生はテイルブルームへと覚醒して以降は何もない。
俺自身も華先生がテイルブルームとして戦いだした数日間は力のなさを悩んでいたからよくわかる。
「私だって、この悩みの答えが私自身で変えていかないとダメだなんてわかっています。でも、私はまだまだ未熟で答えを出す事なんてできません。だから……観束先生を師事して自分を変えたいんです!! 真面目な今までとは変われるなら……この山村華、変態でも痴女でもなんだってなってみせます!!」
力強くそう言い放った華先生。
思わず納得してしまいそうになる発言ではあるが、だからと言ってどうしてそうなったとツッコまざる得ないのは何も変わらない。
「お師匠様!! このわたくしめに!! お師匠様の全てを――」
華先生は三度土下座する。
しかし、トゥアールさんの表情は固い。
流石のトゥアールさんもいくら先程あんなに熱心に言われようが関係ないのだろう。
このままキッパリ断ってくれるだろうと思ったその時、トゥアールさんの口元が僅かに緩む。
「わかりました。華先生の覚悟を知った以上、私の教える事が出来る全てをお教えしましょう」
ええええ!?
予想だにしていない展開に驚く俺や匠、悠香さんと青葉さん。
トゥアールさんは華先生の手をがっちりと強く握り、華先生は嬉しさのあまり号泣がとまらないでいやがる。
俺はさっきとは打って変わって黙ってその様子をみているティアナの肩をつつく。
「お、おい、どうすんだよ? このままじゃ華先生が……トゥアールさんみたいになっちまうぞ!?」
「大丈夫よ和輝。華先生のツインテールを見て」
そう言われて華先生のツインテールを見るが何一つ変わらないいつも通りの髪しか映らない。
ん? あれがどうした――
ってあれ? ティアナ……?
「わかる? 華先生のツインテールも変わりたいって言っているわ」
「は?」
「それに考えみれば華先生の言う事にも一理あると思うの。いつも同じツインテールの結び方じゃ安心するし安定しているけれど、それだけじゃ何も変わらないしそれ以上の進化もない。怖いし不安化もしれないけど、時には大胆に変えていくのも大事で今回も同じよ。華先生はより高みへと進化するために自分自身を変えようとしているんだわ」
「はい?」
ツインテールの言葉とやらを聞き取り、さらにはツインテールを例えに出して納得しているティアナだけど、俺には言葉も意図もサッパリわかりません。
さっきまで大反対していた奴とは思えない心変わりに俺はどうすればいいんだ?
「大丈夫よ。今回の件で華先生がママを師事して真似しようとしても、華先生の根本は変わらないし、ママのようにはならないと思う」
よくわからねぇが、どうやらティアナは華先生の覚悟を見て考えを改めた様子だ。
極限のツインテールへと至った者として何か感じる物があるんだろう多分。
「それにもし、ママが変な事をしようとするならその時はこうするまでよ……!!」
「お、おう……」
拳を握ってはポキポキと音を鳴らすティアナ。
俺としてはそれはそれで嫌な予感がしてくるぜ。
視線を再度トゥアールさんと華先生へと移し、握手し合い涙を流しては背景に炎を出すかの勢いで盛り上がる二人を見つめる。
「修行は明日から行います。言っておきますが厳しいですので覚悟してください」
「はい!!!」
元気過ぎるその返事。
それを聞いても、ティアナを除いた俺たちの不安が和らぐ事はなかった。
◇
(分析の結果を纏めますと、やはりと言いますか……華先生は少し堅物すぎます。ここはいっその事イメージチェンジをしてみましょう)
(イメージチェンジ? ですか?)
(はい、プランはいくつか用意しました。少々古いですが、明日はまず、このプランでいきましょう)
(わ、わかりました……)
(これを授けます。総二様と初めてを過ごした思い出の下着です)
(あ、ありがとうございます!!)
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、休み時間が終わっては二限目の授業が始まる。
次の授業は華先生が担当する数学。
俺はふと、昨日の帰り際に何やら不吉な会話を行っていたトゥアールさんと華先生の姿を思い出した。
少しおぼろげではあるが、確かトゥアールさんは華先生に衣装らしき服装一式と台本のような冊子を渡していたような気もする。
「頼むから、騒ぎだけは起こすんじゃねぇぞ……」
もう何となく何が起きるのかは想像がつく。
どうせトゥアールさんの事だ。華先生にコスプレだがなんだかさせて授業させるのだろう。
そうに違いねぇぜ、ったく……
「いいかティアナ? いつもみてぇに暴れんじゃねぇぞ?」
「ちょっと和輝……!! いっつもいっつも暴れてるみたいに言わないでよ……!!」
いや、トゥアールさんが絡んだ時はほぼ毎回暴れてるだろうが……!!
そうツッコミを入れたい所だが、自覚がない以上は何言っても面倒なので今回はスルー。
今はティアナに構っている場合じゃねぇ。
教室の外を薄っすら映す出入り口のすりガラスには華先生と思しき人物のシルエットが浮かんでいるのが見えた。
「観束先生……本当に大丈夫ですか? この服……流石にちょっと……」
『大丈夫です。それに普段変身している時のに比べればこの程度恥ずかしくない筈ですよ?』
「うぅ……確かに……」
集中する俺の地獄耳は不吉な会話を捉えた。
隣の席のティアナはツインテールをアンテナのようにピクピク動かして会話を聞いている様子だ。
身構える俺とティアナ、あと匠。
深呼吸する影が見えた後、教室のドアがガラッと大きな音と共に開いた。
「みなさ〜ん。席に着きましたか〜?」
聞こえてくるのは華先生の声……の筈なのだが、いつもの真面目さを感じさせるキリっとした声色とは少し高い、わざとらしく作ったかのような媚びた声だ。
そして、目に入る服装はこれまた色々と際どい。
普段はゆったりとした黒スーツだが、今は白とピンクの二色が明るく目立ち、スカートが歳不相応のミニスカート。胸元はガッツリと開かれ、トゥアールさん程でないにしろ大きめの華先生の胸が谷間をしっかり見せている。
尤も、それだけならまだいい。
問題なのはそのサイズだ。トゥアールさんが用意したであろうその服のサイズは明らかに小さく、肌に張り付いているかのようにピチピチでテカテカしているように見える。
匠と一緒に隠れて視聴したAVの安物衣装が脳裏に浮かんだぜ。
「それでは、今日は教科書の――」
瞬間、入口の外から風が差し込んでくる。
それは実に器用に華先生のミニスカートだけを巻き上げる。
見えるのはこれまたやたらセクシーなレースの紐パン。
普段の華先生から想像もつかない下着であり、見てしまった男子生徒は思わず「おぉ~!!」と声を出す――筈なのだが、あまりにもいつもと違う非日常に凍りつく。
勿論、事情を知る俺やティアナや匠、及び何も知らない女子生徒も同様だ。
「いや〜ん!!!」
迫真の演技でそう恥じらいで見せる華先生。
一晩だけとはいえ、よほど練習したのだとわかる。
だけど、何だろう……。わざとらしいつうか……迫真すぎるつうか……何つうか……
具体的に表現しづらいが、言うなればコレジャナイって奴だ。
以前戦ったグシオンギルディやプルソンギルディらなら上手く言語化できるかもしれない。
「あ、あの先生……」
「あら? どうしたの相原くぅん? そんな顔赤くしちゃって、先生の胸に何かついてるぅ?」
恐る恐る何があったのかと口にした先頭の男子生徒へと、華先生はその開かれた胸を大胆に近づかさせながら食いついた。
16、17の高校生にはいささか刺激が強すぎる絵面だが、先程同様にコレジャナイ感がハンパじゃあねぇのか相原と言われた奴も困惑の方が勝っていやがる。
ここからじゃ顔は見えねぇが恐らく赤面もしていないだろうな。
そして、華先生の奇行はエスカレートを開始する。
「暑いし、ちょっとだけ脱いじゃおっと!!」
「あ〜ん!! また風が〜!!」
「きゃっ!! いた〜い!!」
わざとらしいとか最早そう言う次元じゃない、迫真すぎる華先生の何度目かわからぬサービスシーンの数々。
時にわざとらしく意味もなく脱ぎ、時にはわざとらしく下着を露出させたり、時にはわざとらしくダイナミックにすっ転ぶ。
さっきも言ったが、昨晩しっかりと勉強をしてきたのがよくわかる程にそのどれもが動き自体は少々大袈裟だけどしっかりとしている。がしかし、やはりと言うかどれもが違和感の塊でしかなく、何度も言うがコレジャナイ感が凄まじい。
一応の授業はしているが、もう誰の耳にも入らないしどうしようもない。
「何を見せられているんだろ……」
「山村先生が壊れた……」
「ちょ、ちょっと男子――じゃあないよね……」
「ヤバい……吐きそう……」
事情を知らない他のクラスメイトたちの感想は以上の通りだ。
華先生も空気を察してか、いつの間にか涙を浮かべている。
そして、釣られる形でさっきまでの迫真の演技の数々も段々とキレが悪くなり、残るのは恥じらいながらも必死にエロくあろうとする華先生と凍りつく生徒たちって言うこの世の生き地獄だけだ。
一体、誰が得するのだろう? トゥアールさんに問い詰めたい。
「ツインテールが泣いてる……」
「みりゃわかるけど……」
昨日は最終的に華先生の考えに賛同していたティアナもこれだぜ。
もう何も言うまい。
「うぅ……お゛し゛し゛ょ う゛さま~~」
『うーん、中々良かったんですけど、やっぱり少しまだ早かったというべきでしょうか。やはり……アレの準備をしておくべきでしたね――』
遂にギブアップしたのか華先生は隠し持っていた通信機を出してはその先のトゥアールさんにすがりつく。
華先生の反応からしてトゥアールさんとの空気感の差が酷いのが何となくわかる。
「山村先生!!! ど、どうしました!? この堀井龍之介、あなたのためなら何処へでも……っておおおおおお!?」
状況をさらにカオスにせんと乱入者が現れた。
それは自称熱血教師の堀井龍之介(28)独身。
鬼気迫るかのような表情で教室内へと入って来た堀井だったが、そのエロすぎる華先生の服装と仕草を見た結果、のぼせ上がるかのように興奮しブッ倒れる始末。
ある意味では待ち望んだリアクションを取ってくれる馬鹿ではあるが、少し天然且つ鈍感な華先生は気づかない。
「堀井先生!? だ、大丈夫ですか!?」
「おおおおおおおお!?!?!?!?」
駆け寄り介抱せんとする華先生だが、興奮止まらない堀井にとっては明らかに逆効果なのがわかる。
壊れたラジオみてぇな奇声を上げながら痙攣し鼻血をドクドクと垂らすというより流す堀井龍之介(28)独身。
こりゃ駄目だわ……イッタな……
「先生!! 離れてください!!」
「救急車!! 救急車ーーー!!」
「堀井ー!!! 死ぬなーー!!」
「きゃああああああああああ!!」
華先生を引きはがそうとする奴、騒ぎ出す奴、ドラマチックに叫ぶ奴ともう教室内は大パニックもいい所だ。
俺もこうしちゃいられねぇ。
流石に身内の起こした馬鹿な出来事で死人が出たらたまったもんじゃねぇ。
堀井を救うべく匠と共に立ち上がる。
そして、隣ではティアナがツインテールを逆立てさせていた。
「ママ……!! 責任取ってもらうから……!!」
一人、教室を抜け出すティアナ。
数分後、堀井を外へ連れ出そうとする俺や匠が、華先生を引きはがす時に聞こえた小さな悲鳴は通信機の先にいるトゥアールさんの物だった。
◇
昼休みとなり、俺たちはいつも通りの感覚で新聞部を訪れ昼食をとる。
と言っても、今日の雰囲気は正直言って最悪の部類と言ってもいい。
原因は言わなくてもわかるだろう。
部室の隅で負のオーラを放ちながら縮こまっている華先生は色々と見るに堪えない。
「先生? その……みんな忘れますよ。ねぇ? 青ちゃん?」
「先生の生き恥……みんな忘れたがってるから大丈夫……」
「はうぅっ!!」
青葉さんの励ましとは言い難い追い打ちを貰った事で華先生はより一層沈み込む。
ちなみに今の華先生の服装はさっきのトゥアールさんが用意したであろう衣装ではなく、いつもの黒スーツだ。
でも、今の華先生からは普段のスーツですら似合っていないようにも見える。
「まぁ初めはそんな物ですよ。痴女の道も一歩から。私だって、総二様に女にされるまでは同じような感じでしたから」
「サラッと嘘つくなよおい」
そう俺にツッコまれるも至って平常運転なのはトゥアールさんただ一人だ。
トゥアールさんのみこうなる事を想定していたかのような余裕がある。
「ママ!! ちょっとは真面目にやってよ!! 変な事ばっかりじゃない!!」
当然、ティアナからは抗議される。
だけど、トゥアールさんはいつもの調子をあまり崩さず少し真剣に語る。
「こう見えて真面目にやってます。いいですか総愛? どんな事でも、初めてという物は何だって最初は笑いものになるのが普通なんです。ですが、それを乗り越え、誰からもその異常がいつもの日常へと昇華した場合、その変な事というのは周りにとってのいつもの事へと変わり受け入れられるんですよ。私たちだってそうでしょう?」
確かに、トゥアールさんが来た当初はみんなティアナの過激な折檻にドン引きしていたけど、今はもうほとんど気にする奴が減ったしな。
教師となって初めての日に直にみな慣れますよと言っていたのは恐らく昔の経験談に基づく物だったのだろう。
ジャンルは少し違えど、トゥアールさんが言うと説得力があるぜ。
「そ、そっか……。うん、そうよね……。ツインテールだって最初は変な髪型って言われてたのなら……それと同じ……」
トゥアールさんに押し負けたティアナはツインテールを用いて勝手に納得してやがる。
意外とチョロい奴ってのはティアナの事を指しているんじゃないかって思っちまうぜ。
「ですが、このまま続けても華先生がもたないのは先程の結果からわかりました。個人的にはもう少し素面で続けて欲しかったですが、止むを得ませんね。秘密兵器を投入しましょう」
秘密兵器?
華先生を除いたみんなが首を傾げる中、トゥアールさんは白衣のポケットを漁りだし、にゅるんと何かを取り出した。
それはどこかで見た覚えのあるデザインが施された大きな一升瓶であり、中には何やら異彩な雰囲気を放つ飲料が入っている。
「じゃじゃーん!! 今回は華先生専用に調合した――」
『エレメリアン出現です』
その時、部室内に取り付けられたブザー音が鳴り響き、デフォルメの効いたトゥアールさんっぽい電子妖精のとぅあるん? とやらがエレメリアン出現を告げる。
場所を調べるべくパソコンの画面を切り替えた青葉さんの顔つきが変わる。
「場所近い……すぐそこ……」
「何!?」
青葉さんがパソコンを操作し、人工衛星が撮影しているエレメリアンの姿が映し出される。
相手は露出度の高いアラビアチックな女エレメリアン。
場所は見たところ、学校近辺の路地裏であり、隣クラスの女子生徒が連れ込まれ話しかけられている様子だ。
「雪乃さん!?」
さっきまで隅で縮こまっていた華先生が映像に映る女子生徒を見て立ち上がる。
だけどその表情は何処か複雑だ。
どうやら華先生にとってその生徒は訳ありな様子だぜ。
「これって、また七つの性癖なんすかね?」
「さぁな、でも見過ごす訳にはいかねぇだろ」
「兎に角、早く行くわよ!! ママ!!」
「わかっていますよ。青葉さんは私と一緒にサポートを、悠香さんたちは避難誘導及び救助活動をお願いします」
トゥアールさんが司令塔となり、皆に指示を飛ばして動き始める。
俺とティアナは華先生と共に戦うのが役割で匠と悠香さんは連れ込まれている奴らを保護するのが役割だ。
俺とティアナ、匠と悠香さん、それぞれが互いに頷き合い、部室から飛び出していく。
距離が距離なのでマシントゥアールは必要ない。
「先生も早く!! 行くぞ!!」
「う、うん……!!」
少しで送れる形で後を追う華先生。
何だかすげぇ嫌な予感がする。
不吉な予感を感じつつも、俺たちは現場へと急行するのだった。
華先生って書いているといつの間にか空気になりがちなんですよね。
原作が濃すぎるのである意味仕方ない気もしますが、今後の創作活動をする上での課題だったりします。