俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第139話 堕ちたテイルブルーム ~並び立つ紫と赤~

 六限目の授業を終えた放課後、部活のない者たちから続々と学校を後にする。

 その帰路では、来週に迫る期末テストにボヤキを入れながら歩く少女とそれを慰め喝を入れる少女が二人。彼女たちは和輝ら二年生より一学年の上級生であり、クラスで言うと悠香と青葉の二人と同じである。

 

「うぅ~来週にはテストぉ~」

 

「もう、しっかりしてよ~。期末テストもそうだけど、受験本番までもう時間ないんだしさ~」

 

 いよいよ大学受験とされる高校三年生の彼女らにとって、再来週の期末テストは勢いづく為の予行とも言えるある意味で重要なテストだ。

 とはいえ、テストと言ってそう簡単にやる気が出る物ではない。

 彼女たちはここ半年間の殆どを勉強に費やしている以上、うんざりしてくるのはある意味必然と言える。

 

「はぁ、片霧さんが羨ましい~」

 

「あれは……確かにね」

 

 同じクラスの悠香と青葉を羨む二人。

 彼女らにとって悠香と青葉の二人は受験勉強に追われずに毎日好きな事をしている連中だ。特に最近は後輩たちや二人目の顧問となったトゥアールと秘密で何かをやっているのではと言う噂を耳にする為に余計にそう思えてくる。

 

「あたしらも遊びたいな~」

 

「あともうちょっと。だから……ね?」

 

「うぅ……わかってるよ~」

 

 年明けてから間もなくの大学受験本番こそが彼女たちのゴールだ。

 そこを越え春となれば晴れて華の大学生活が幕を開けるという物である。

 良い大学を出たいし、遊びにも行きたい。おしゃれもしたいし、カッコいい彼氏も見つけたい。あと何なら少し働いてお金も稼ぎたい。

 その夢を叶えるべく彼女たちは今を頑張るのだ。

 

「じゃあ今日も私ん家で夜まで勉強。夢の為に頑張ろうね」

 

 都内有数の有名大学目指して彼女たちは気合を入れる。

 その為に今日も一緒に勉強会だと歩くペースを上げようとしたその時、

 

「あれ? あれって山村先生……?」

 

 二人の内の一人が、目の前に佇む人影を捉えた。

 女性にしては長身且つ、大きめの胸とその他スラっとした体格、髪をツインテールにまとめ結んでいるのは彼女たちの身近で知る人物では山村先生こと山村華ただ一人。

 華は少し真面目過ぎると有名である教師であるが、別に嫌っているわけではない。

 だけど、何故だろう? どうしてこうも足が竦むのか……

 自分たち以外誰もいない住宅街路にて、一人待ち構えていたかのように佇む華の姿がその言葉にできない不安を駆っている。

 

「あ、あの……? 先生……?」

 

 二ヤリと口元を歪ませる華を見て片方の少女がそう口にする。

 いつもの厳しくも優しい柔らかな目つきとはまるで違う他者を威圧するかのような吊り上がった目が彼女たち二人の警戒心を引き上げ動きを止めさせる。

 すると瞬間、華はスーツの胸ポケットから白い箱を取り出してはその中に入った煙草を咥え火を点けた。

 

「ふーッ……」

 

「先生……!?」

 

 真面目で有名の華とはまるで無縁の煙草という嗜向品に驚く二人。

 実に美味そう且つ妖艶に煙草を吸っている華の姿は思い浮かべる真面目なイメージとは程遠く、彼女たちの不安や恐れを決定的な物へと変える。

 あれは先生じゃない。

 そうとわかれば動きは早い。

 今すぐに逃げ出そうと今来た道を振り返る。

 しかし……

 

「何!? この煙!?」

 

「で、出れない!?」

 

 暗く濁った灰色の煙がまるで生きているかのように二人の逃げ道を覆い、そのまま周囲を結界の如く包み込む。

 その煙が華の吸っている煙草から出ている物だと気づくのに時間はかからなかった。

 住宅街と言う背景が煙に覆われ見えなくなり、少女たちは様子のおかしい華に追い詰められる。

 

「大丈夫さ。あんたたちも、時期にいい気分になる」

 

「や、やめて……!!」

 

「先生……!!」

 

 数分後、この住宅街路を覆っていた煙が晴れる。

 だが、そこには華はおろか少女たち二人の姿もどこにもなく、まるで初めから何もなかったかのような平和な静けさが感じれる。

 

 

 

「随分と厄介な奴が出てきたようだなぁ……」

 

 唯一、一連の様子を陰で見ていたのはこの男。

 アナザーテイルレッド、レイジただ一人。

 

 

 

 

 シャイターンギルディ撃破(?)からもう5日以上も過ぎた。

 もう既に期末テストが来週に迫り、多くの生徒たちがテスト勉強に追われるような時期だ。

 本来、悠香さんと青葉さんという特殊ケースを除けば俺たちも例外ではなく、夏場と同様に地獄のテスト勉強に明け暮れていたであろうと想像できる。

 だが、俺やティアナを始めとしたいつもの面々は現在それどころではなかった。

 

「昨晩消えたのは14人。それも全部、未成年の若い子たちね」

 

「先輩、これで何人目っすか?」

 

「100超えそう……」

 

「いずれにせよ、これはただの誘拐事件ではないとみて間違いないですね」

 

 悠香さんの報告を受け、コンソールルームにいる皆の顔が険しくなる。

 今、俺たちが追っているのはここら近辺で急増している未成年の連続失踪事件。

 一見すると、俺たちではなく警察が対処するような内容なんだが、身代金の請求を含めた犯人の狙いがまるでわからずただ被害者だけが日に日に増えていくと言う、あまりにも不可解且つ特殊な事件だ。

 もしかしたらの可能性を考え、トゥアールさんの支援の下、最初は悠香さんら達だけが調査を続けていたのだが、失踪する被害者の数は一向に止まらずに謎が深まり続けるばかり。

 結果、俺たちはこれをエレメリアン、もしくはアナザーテイルレッドのような敵の仕業と断定し今に至る。

 

「ママ、これってやっぱりシャイターンギルディが生きているって事じゃないの?」

 

 ティアナは先週同様にシャイターンギルディが生きているのではないかと疑っている様子だ。

 まぁでも、言いたいことはわかる。

 シャイターンギルディの奴は前回発見した時も隣クラスの女子生徒を仲間に引き込んでいやがったし、この誘拐の目的自体が喫煙仲間を増やしているとも考えられる。

 トゥアールさんも同様の考えなのかティアナの言葉に頷いている。

 

「どうやらその可能性は高そうですね。ですが不可解なのは前回と違って一切の反応が感知されない事です」

 

 トゥアールさんの言う通りだ。

 今回のこの事件、犯人は生き残っていたシャイターンギルディと仮定するにしても、出現した際の反応などが全く出てこないのは何か起きていると言わざる得ない。

 以前にも言ったかも知れないが、エレメリアンは属性力の塊である以上、少しでも気力があればどうあがいても属性力の活発化を抑えるのは難しく、探知できないのは本人にやる気がなかったりするケースが殆どだと言う。

 けれど今回の事件はティアナを直接狙う訳でもなく無関係な未成年女子を狙っている。つまり、これはエレメリアン自身が自身の欲求もとい属性力に従って行動していると見て間違いねぇんだ。

 

「敵も馬鹿じゃねーんだし、反応を消す道具でも持ってんじゃないんすか?」

 

「ねぇたっくん、もしそうならそれはそれで厄介な事になるわよ」

 

「そ、そうっすね……」

 

 匠の考えは正しいが、悠香さんの言う通りそれならば厄介極まりない。

 ただでさえ後手後手に回らざる得ないってのにもしそうだとするなら面倒くさいにも程があるってもんだぜ。

 

「可能性としては無くはないと思うけど、ちょっと違う気もする。ママはどう思う?」

 

「一応、その可能性はある程度考慮はしているんですが……総愛こそちょっと違うとは?」

 

「え、あ、うん。いやね……何となくと言うか変な胸騒ぎがするの……」

 

 そう語るティアナを見て、理由はわからないが俺も変な胸騒ぎがしてきたぜ。

 心なしかティアナのツインテールがぞわぞわしているように見える。

 

「華先生も……」

 

 青葉さんがポツリと一言呟いた。

 それ聞いたみんなはより一層表情を険しくさせる。

 華先生はこの失踪事件が発生したと思われる日の前日、つまり無断欠勤したあの日より自宅にもおらず、連絡が付かない行方不明となっている。

 普通に考えて、華先生もこの失踪事件に関わっているのは間違いない。連絡も何も寄越さない以上は単独で調査した際に何らかの形で捕まってしまったのは明白だろう。

 希望的観測を上げるならば、華先生は現在捕まった人々と共に脱走する為に頑張っているとも思える事が出来るが、それはあくまで希望的観測に過ぎない。

 みんなそれをわかっているから心配しているんだ。

 

「兎に角、今は無事を祈るしかありません」

 

「うん、あの華先生だし、きっと何とかやってるよね」

 

 少しわざとらしいが、ティアナの奴がそう言って場を和ませる。

 でも、この嫌な胸騒ぎは収まっちゃくれねぇ……

 そう思った次の瞬間、基地内のブザーが鳴り響く。

 これはエレメリアンが出現した際の物とは異なる奴だ。

 

「ッ……!? エレメリアンとは別の強力な属性力反応!?」

 

「華先生か!?」

 

 エレメリアンではないのならもしかしてと思いそう口にする。

 しかし、トゥアールさんの顔は何やら神妙な面持ちだ。

 

「いや、これは……恐らく……」

 

 言葉を濁すトゥアールさん。

 何か訳ありな様子だが、とりあえず今は出撃するっきゃねぇ。

 いつまでもここでジッとしているのは性に合わねぇからな。

 

「いくぜティアナ」

 

「ええ、いきましょう」

 

 コンソールルームから出た俺たちは、転送ゲート繋がる出撃口へ。

 そしてそのままマシントゥアールを駆り、反応があったポイントへと勢いよく飛び出していった。

 

 

 

 

 和輝たちが住まう都市部から相当離れたとある港の倉庫街。

 こんな所、間違っても専門の作業員以外はうろつかないであろう場所であり、現に人の気配はまるでない。

 唯一と言っていいのはスーツ姿のツインテールをした女性。テイルブルームこと山村華ただ一人だ。

 しかし、その威圧的且つ苛ついているような雰囲気は華の普段のソレとはまるで異なる。目つきも悪く、濃いアイシャドウやリップを中心としたややケバめの化粧が、華であって華ではないと視覚的にも訴えかけてくる。

 それもその筈だ。今の華は本来の華ではない。

 今の華は先日倒したと思われていたシャイターンギルディに身体を乗っ取らている状態だ。

 故に姿こそ華であるが、その人格はシャイターンギルディその物である。

 

「ふーっ、ウチをこんな所に呼び出すなんて随分と舐められたもんだよ」

 

 妖艶に煙草を吹かす華もといシャイターンギルディ。

 彼女は現在、とある人物から呼び出しを受けてこの場に現れている。

 とある人物というのは勿論……

 

「フン、その程度の身体を得て調子づくつもりかい。シャイターンギルディ」

 

「遅いんだよ。ベリアルギルディ!!」

 

 空より降り立つのは黒い悪魔のエレメリアン、ベリアルギルディ。

 シャイターンギルディたち七つの性癖の雇い主でありここへと呼び出した張本人。

 吹かしていた煙草を投げ捨てたシャイターンギルディはそのまま声を荒げて食って掛かる。

 

「何度も言わせるなよ。それはこっちの台詞だろう?」

 

 溢れ出るオーラからベリアルギルディの苛立ちが伝わって来る。

 ベリアルギルディとしてはこれまでレヴィアタンギルディ、スペルビアギルディと既に二人の刺客をやられている事もあり、いつも以上に少しピリピリしているのであろう。

 故に、華の肉体を奪って以降、碌に連絡もよこさず独自で行動を取り続けていたシャイターンギルディへとこのような形で催促しに来るのはある意味当然と言える。

 

「まさか、一度の敗北で怖気づいてしまったのではなかろうな? 憤怒の性癖の名が聞いて呆れる」

 

 ベリアルギルディはいつも通りの態度で相手を見下し嘲笑する。

 対するシャイターンギルディはキレて言い返すのでなく、煽るように鼻で笑う。

 

「こっちこそ天才の名が聞いて呆れるってもんだ。あんたはわかってないねぇ」

 

「貴様……なにが言いたい?」

 

 煽り耐性ゼロのベリアルギルディは額に青筋を浮かべながら静かに言い返した。

 シャイターンギルディはニヤリと笑う。

 

「いいかい? 何事も必要なのは数だよ。仲間がいなくちゃ何も成せやしないのさ」

 

 シャイターンギルディの脳裏に浮かぶのは自身の愛する属性が淘汰されていく様だ。

 彼女の愛する喫煙属性は煙草を吸う姿からなるカッコよさや大人らしさが魅力なのであるが、対象となる物が煙草という健康面で規制されやすい物である以上、多くの世界で発展と同時に規制され属性力が育たないようになっている。

 だからこそ、シャイターンギルディは煙草の素晴らしさを広めるべく仲間を集める。

 和輝たちが追っているここ最近の失踪事件の原因も一つはそれである。

 まだ煙草を吸えない未成年を対象とし、誘拐しては煙草を与えてその虜にするを繰り返す。そうしてシャイターンギルディは自身が目指す喫煙者からなる仲間の集団とやらを作り上げようとしているのだ。

 

「わからん。どうしてそこまで群れたがるのだ。至高とする属性など選ばれし者同士で共有すれば良かろう」

 

 シャイターンギルディの考えは選民思想に近い考えを持つベリアルギルディには通じない。

 彼にとって必要なのは仲間でなく、あくまで自身に従う都合のいい駒と彼自身が心より愛する者ただ一人だけなのだから。

 

「ま、貴様の言い分とやらも少しは理解できる。実験動物(モルモット)は多い方がいいからな」

 

「てめぇ!! ウチの仲間をモルモットだぁ!? なめてんじゃねーぞッ!!!」

 

 仲間を大事にするシャイターンギルディにとって看過できる発言ではなかったのか、口調を荒げながらベリアルギルディの首元を引っ掴む。

 

「フン、嫌がろうが無理やり吸わせて仲間に引きずり込む。そのような真似をしていながら良く言った所だ。仲間などと綺麗事を抜かすんじゃあないよ」

 

「ぐぬぬ……!!」

 

 先程の意趣返しかのように鼻で笑うベリアルギルディ。

 シャイターンギルディにとっても先程の言葉は耳が痛いのか、強く言い返せずに口元を噛みしめるだけだ。

 

「所詮、貴様の属性は淘汰されるべき罪深き物という事だ」

 

 七つの性癖、それは数ある属性の中でも一際特異であったり、他者や社会から嫌われ、そのまま淘汰されゆく、言わば罪なる属性を抱えたエレメリアンたちの集まりでもある。

 尤も、それ故に能力は一般をも遥かに凌駕する。

 負けたくない、認められたい、見返したいと言うある種ネガティブな負の感情からなる反骨心が精神生命体(エレメリアン)である彼ら彼女らの能力を本来の進化とは違う歪んだ形で進化させているのだ。

 

「さて、どうやら向こうからやって来たようだぞ」

 

「あ゛あ゛ん゛!?」

 

 直後、波止場に響くバイクの走行音。

 和輝とティアナがマシントゥアールに乗ってやって来た。

 

 

 

 

 謎の属性力反応を追ってやって来た俺たちが見たのは黒いエレメリアンと何かを話している様子の華先生だった。

 

「華先生!!」

 

「待って和輝!!」

 

 到着するなりヘルメットを脱ぎ捨てて真っ先に駆け寄らんとしたのだが、ティアナが待ったをかけた。

 どうしてだよと反論しそうになるが、俺もその時、目の前で佇む華先生から異様な雰囲気を感じ取る。

 アレは荒々しく、暴力的で情緒不安定なドギツイ何かだ。

 華先生であって華先生じゃねぇ!!

 そう理解した俺は足を止め、警戒しながら睨みつける。

 

「ほう、どうやらもうバレたようだぞ。あの程度の凡才以下にも見抜かれるとはな」

 

「うっさいよ。そもそもウチははなから騙す気なんてないのさ」

 

 煽る黒エレメリアンと軽く言い返す華先生だが、険悪と言うよりどこか親し気な感じだ。

 口調もそうだが、華先生ならエレメリアン相手にあのような態度は取る筈もないので一発で偽物だとわかるぜ。

 

「華先生の偽物にしちゃ随分とクオリティが良いみたいだが……」

 

「ううん、違う。あの華先生は偽物じゃない。あのツインテールは華先生の!!」

 

「何ぃ!?」

 

 ティアナのその言葉に俺は驚きを隠せない。

 あれが偽物じゃないなら一体何だって言うんだよ。

 まさか華先生がエレメリアン共の仲間になったとでも言いたいのかよ!?

 華先生がいなくなってから起きた連続失踪事件と、今目の前にいる華先生の姿が悪い意味で点と線が繋がり始める。

 ティアナが言うんだし、あの華先生が本物であるのは間違いない。

 

「悪に堕ちたって訳かよ……!!」

 

「正気に戻さなくちゃ……!!」

 

 もし敵に洗脳されてしまったのであるなら正気に戻してやるのが仲間ってもんだぜ。

 頷き合う俺たちはテイルブレスを構えてテイルドライバーを召喚し装着。

 その時、基地から通信が入った。

 

『待ってください。華先生は洗脳された訳ではなく、敵に憑依されて身体を乗っ取られているようです。華先生の体内にエレメリアンの物と思われる煙状の属性力反応を発見しました』

 

 洗脳ではなく、憑依されている。それも犯人は煙状のエレメリアン。

 トゥアールさんの分析を聞いて俺たちが思い浮かべるのは先日倒した喫煙属性(スモーカー)のシャイターンギルディ。

 やっぱり生きていたのねと隣のティアナの顔が一層険しく変化する。

 

「はぁん、二度もカチコミにこられるたぁウチも舐められたもんだよ」

 

「丁度いいと言った所だろう。この偶然に感謝するのだな」

 

 一方で敵側の方は随分と余裕な雰囲気だ。

 やれやれとばかりに肩をすくめる華先生もといシャイターンギルディとほくそ笑む隣の黒いエレメリアン。

 

「てかあの野郎……!! どっかで見た顔だと思ったら……!!」

 

 俺はその時、その黒いエレメリアンの事を思い出した。

 アイツは確かベリアルギルディとかいう野郎でアルティデビルの真のリーダーだとか言うムカつく奴だ。

 

「ほう、このオレ様を覚えているのか。確か貴様とは夏コミ以来だな。バアルギルディの元花嫁の凡才よ」

 

「んだとぉ!!」

 

 思い出すのはコミケでのあの惨劇だ。

 それにコイツ、バアルギルディの事まで……

 怒りが沸々と沸いてくる。

 

「てめぇ、何を企んでいやがる!! バアルギルディを消したのもてめぇか!!」

 

「フン、一々質問の多い奴だ。1を知って10を知る事も出来ぬ凡才に教える価値などありはしない。強いて言えばオレ様の計画に必要なのは貴様ではなく、そこの女、ただ一人なのだよ!!」

 

 その言葉を聞いて確信に変わる。

 七つの性癖を送り込み、ティアナを狙う黒幕はこの野郎だ。

 言い方からしてバアルギルディを消したのもコイツに違いない。

 俺はティアナを庇うように前に立ち、ベリアルギルディへと牽制する。

 

『これが総愛を狙う不届き者ですか……。昔の嫌な思い出が蘇りますね』

 

 トゥアールさんが言う嫌な思い出ってのはわからないが、俺と同じように相当に不快な様子だ。

 

「おいおいベリアルギルディ、夏コミってなんだ? てかウチの出番が――」

 

「まぁ待て、それよりもだ」

 

 完全に蚊帳の外となりつつあるシャイターンギルディが苛立ちを見せるが、ベリアルギルディはそれすらも遮ってはこちらへと指をさす。

 

「貴様、見ているのだろう? テイルバイオレットの母……いや、テイルホワイト!!」

 

『ッ!?』

 

 瞬間発せられたオーラは憎しみに溢れて禍々しい物だった。

 トゥアールさんもこれには少したじろいでいるのが通信からわかる。

 

「貴様にもいずれしかるべき罰を与えてやるぞ。我が愛しきマイエンジェル……!! その裁きをだなぁ!!」

 

 そう一方的に宣言したベリアルギルディ。

 俺もティアナもコイツの言う裁きと言う物がどんなものでどういう理由なのかはサッパリわからない。

 そう言い切って満足したのか、ベリアルギルディは翼を広げ後ろに下がる。

 

「後は任せるぞ。何分、オレ様は忙しいのでな」

 

「煽るだけ煽っておいて忙しいとは良く言うよ。ま、後はウチに任せておきな」

 

 シャイターンギルディにこの場を任せて立ち去ったベリアルギルディ。

 任されたシャイターンギルディは指をパキポキ鳴らしながらこちらへと近づいてくる。

 姿こそ華先生だが、雰囲気はまるで違うし、何よりすげぇ煙草臭い。

 

「華先生のツインテールをそんな臭いで染めるだなんて……!!」

 

「そんな臭いだぁ!? ヤニ臭くてサイコーだろうがぁッ!!」

 

 華先生の身体が煙で覆われ、煙が晴れると同時に異形の姿へと変貌していた。

 その装いは以前戦ったシャイターンギルディと同様。

 僅かな差を上げるなら体付きが華先生を基にした影響か以前よりややグラマラス且つ筋肉質であり、髪型がポニーテールからツインテールへと変化しているくらいだ。

 

「ざけてんじゃねぇよ!! 行くぜ!!」

 

「うん、行くわよ!!」

 

 シャイターンギルディが戦闘形態へと移行すると同じく、俺たちもテイルドライバーを構えて変身を行う。

 

「「デュアルテイルオン!!!」」

 

 俺とティアナ、二人の身体が融合し変身するテイルバイオレット。

 今回は前回の戦いも踏まえてティアナが主人格で戦う事にする。

 変身完了と同時に俺はティアナへと主導権を渡す。

 

(今回も任せるぜ)

 

「大丈夫、いくら華先生を取り込もうと負けやしないわよ」

 

 和輝と入れ替わった私はシャイターンギルディと向かい合う。

 華先生のツインテールを煙草で染め上げるだなんて絶対に許さない。

 互いのツインテールが海風で揺れるのが合図となり、それぞれ拳を繰り出した。

 

「くッ……!!」

 

「ハッ!! どうしたんだい!?」

 

 ぶつかり合う拳。

 さっきは和輝へ自信満々と答えた私だったけど、その威力を実感すると同時にさっきの言葉を訂正せざる得なくなる。

 このシャイターンギルディ……以前よりも強くなっている!?

 

『気を付けてください!! どうやら華先生を取り込んだことで力が上昇しているようです!!』

 

「うっそでしょ……!!」

 

 ママからの通信を受けて思わず文句言いたくなるそんな中、シャイターンギルディは攻撃の手を緩めない。

 

「ハハハ!! どうだい!? ウチのツインテールの実力は!!」

 

 シャイターンギルディ本来の荒々しい攻撃に華先生の可憐且つ優雅な武術の動きが合わさり、私ではまるで手が付けられない程に勢いを増していく。

 それだけならまだ良かった。

 シャイターンギルディはまるで私の動きを完全に読んでいるかのように二手三手先を読むかのように立ち回って来る。

 恐らく、これも華先生の身体を取り込んだ影響なんでしょうね。

 余裕なんてまるでなく、ただひたすらに防御に徹してはその都度反撃を仕掛けていく。

 だけど、華先生(テイルブルーム)特有のカウンター戦法がその度に炸裂し、手痛いダメージをこちら側が受けているばかりだった。

 

「そらッ!!!」

 

「ああッ!!」

 

 シャイターンギルディの放つ掌底が私の腹部を捉え、吹き飛ばす。

 起き上がり辺りを見渡すとそこは近くにあった廃倉庫の中だった。

 外からゆっくりと近づいてくるシャイターンギルディはツインテールの結び目に手を当て、そこから吹き出る煙を弓の形へと変化させる。

 

『まさか!! テイルギアの力さえもコピーしたと言うのですか!?』

 

『逃げて二人とも!!』

 

(ヤベェぞおい!!)

 

 通信で聞こえてくるママと悠香さんの声。

 心の中の和輝も言っているけど、間違いなく不味い。

 シャイターンギルディが灰色のグランアローを構え狙いを定め始める。

 

「ほらよ!!」

 

「ッ……!!」

 

 グランアローから放たれる矢を何とか回避する。

 外れた矢は倉庫の壁に当たると同時に破裂しドギツイ煙を臭いと共にまき散らす。

 本来であれば、あの武器は緑息吹く大地の弓。

 だけど、今は汚れた煙に染められし魔弓。

 ツインテールもそうだけど、華先生の全てが煙草で染めらている今の姿は本人にとって尊厳破壊もいい所だし、何よりツインテールから得られる力を道具のように扱ってるのが許せない。

 

「はぁん、そうやって逃げ続けるだけかい? あ゛あ゛ん゛!?」

 

 シャイターンギルディの攻撃の手を一向に緩めない。

 辺り一面を煙で汚染するかのように無茶苦茶に矢を乱射しては倉庫内を煙で充満させてくる。

 

「もう、臭すぎるのよ……!!」

 

(一度離れるぞ!! 頭がクラクラしてしょうがねぇ……!!)

 

「そ、そうね……!!」

 

 このまま倉庫内で耐え忍んでいてはダメだとツインテールが訴え、和輝もそう答えた事もあって倉庫内から離脱する。

 シャイターンギルディは高笑いを上げながら追って来る。

 

「ハハハ!! どうやら手も足も出ないようだねぇ!! さっきの威勢はどうしたぁッ!?」

 

 何よアイツ……!!

 華先生の身体を使って……!! あんな煙までまき散らしておいて……!! 一度倒されている癖に……!!

 そう悪態つきたくなるけど、どうしようもないのは事実。

 だけど反撃しなければ助ける事も出来ない。

 私は意を決して向かい立つ。

 

「エクストリームエモーショナル、行くよ和輝」

 

(ああ、どうやらそれしかねぇみてぇだな)

 

 今のシャイターンギルディを倒すにはエクストリームエモーショナルの力で強引にねじ伏せるしかない。

 シャイターンギルディを倒せば華先生の身体も解放できるだろうし、それしかない。

 私はテイルアーマーBを装着すべくテイルドライバー左側面の青いスイッチに手を伸ばす。

 

「来て!! 愛情のツイン――」

 

「おっと、言い忘れたけど、ウチを倒した所でこのセンコーは無事じゃすまないよ」

 

 今まさに変身しようとしたその時、シャイターンギルディがそう言い放った。

 私の手がピタリと止まる。

 

「どういう事よ!? 無事じゃすまないですって!?」

 

「なに簡単な事さ。今のウチはね、このセンコーを核として身体を作っているだけじゃなくて、あんたたちみてぇに融合しているようなもんなのさ。つまり、以前のように必殺技をぶつければこのセンコーも無事じゃない。ウチは倒せても最悪、センコーも道連れだよ」

 

 何ですって!? それじゃあ華先生は人質じゃないの!!

 衝撃の真実に私は動けなくなる。

 

『人質とは卑怯な手を使いますね……!!』

 

(クッソ、あん女野郎!!)

 

『どうすんすか!? 華先生が!!』

 

『落ち着いて、何か方法がある筈よ……!!』

 

 華先生が危ないとわかりどうすればいいかわからなくなる。

 これは前回テイルブルームが戦っていた雪乃さんや神橋さんの件とは訳が違う。

 相手は手加減出来ないくらい強く、それこそ相手の命を奪う覚悟を以て相手をしなければならないレベル。

 気絶させて無力化なんて絶対にできないし、このままでは被害が広がる所か、私まで危ない。

 

「どうするのよ……!!」

 

 スペルビアギルディの時とはまた違う絶望的な状況に追い込まれ、どうすればいいかわからなくなる。

 ヒーローというのは大勢を守る為に一人を犠牲にする覚悟を持たなくてはならないってよく聞くけど、私にはできない。

 華先生の命とツインテールを含めたみんなを守りたいもん。

 

 

 

「まだまだ甘ぇなぁ。反吐が出るぜぇ」

 

 その時、邪悪なあの声が聞こえてくる。

 アイツがまた来たって言うの!?

 

「何だ!? あ゛あ゛ん゛!?」

 

 シャイターンギルディが何事かと吠える。

 そして、あの男が姿を現した。

 

「よぉ、助太刀してやるよ」

 

『レイジ……!!』

 

(てめぇ!!)

 

 ママと和輝の声が怒りで震える。

 現れたのはアナザーテイルレッドの変身者レイジ。

 スペルビアギルディの時と同様に私たちの来た事に驚きを隠せない。

 瞬間、怒りに燃える和輝の意識が私の意識を引っ込めさせては前に出てくる。

 

「おいてめぇ!! 何しに来やがった!!」

 

「おぉ坊主。てめぇとは久しぶりだな。元気してたかぁ?」

 

「んだとボケ!!」

 

 ここであったが百年目だ。

 前回は見逃したが次会ったら容赦しないと決めてた以上、絶対にブッ飛ばしてやる。

 そう思いながら首根っこ引っ掴むもレイジの野郎は余裕を崩さない。

 

「んな事よりもいいのか? あのエレメリアンに苦戦してんだろ?」

 

(そうよ和輝!! 危ない!!)

 

 ティアナの警告もあり、途轍もない殺気が放たれている事に気が付いた。

 振り向くとそこにいるのはグランアローを連射するシャイターンギルディ。

 そうだったぜ。つい忘れていたが、今はこんな奴に構ってる暇なんかねぇんだよ。今は華先生をどう助けるかが大事なんだ。

 俺とレイジはそれぞれ同じ方向へと飛び、攻撃を回避する。

 

「とりあえず黙って聞いてろ。いいか――」

 

 シャイターンギルディに聞こえぬようにレイジの言葉がテイルギアを通して聞こえてくる。

 その内容はズバリ華先生とシャイターンギルディを分離させる方法。

 少し荒っぽいやり方ではあったが故に一度は躊躇しかけるが、今はそれ所じゃない。

 

「本当にそれで大丈夫なんだな!?」

 

「ああ、オレの計算に狂いはない。あとは坊主と総愛次第だ」

 

 ならやるっきゃねぇ。

 死ぬほど嫌だが、華先生を救うにはコイツの言う通りやってやる。

 ティアナと心の中で頷き合い、俺たちは一先ずレイジを信じる事を決める。

 トゥアールさんも状況が状況な事もあって俺たちに委ねると黙ってくれている。

 

「来い!! 勇気のツインテール!!」

 

「さぁ行くかぁ、テイルオン!!!」

 

 二つの赤い光が爆裂する。

 並び立つのはテイルバイオレットエクストリームブレイブとアナザーテイルレッド。

 光と闇、異なるツインテール戦士が手を組んだ。




という訳でアナザーテイルレッドと初共闘です。
スペルビアギルディ戦のアレは共闘とは言いづらいですし。
華先生を救う策というのは次回のお楽しみで。
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