俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
数分前――
「とりあえず黙って聞いてろ」
シャイターンギルディに苦戦する二人の下へ助太刀に現れたレイジ。
攻撃に晒される中、テイルギアを通して話しかけていた。
「いいか? そもそも奴の身体は煙で出来ている。強力なツインテール属性のエネルギー波をぶつけて消滅させる以外で奴を物理的に抹殺する事は出来やしねぇ」
「じゃあどうすんだよ!! どうしようもねぇじゃねぇか!!」
瞬間、矢が放たれた際の風切り音が響き、飛び退くと同時に彼らの背後が爆発する。
レイジは変身はまだしておらず生身だと言うのにその攻撃をまるで意に介していない様子だった。
「だから黙って聞け。奴が不死身なのはあくまで誰にも憑依していない時だけだ。他者に憑依し、それを核として肉体を形成すればその分だけ強くもなる。だが、そうすれば奴は全身を煙状に出来なくなる。核として取り込んだ肉体があるからな」
「そ、そうか……って!? お前まさか華先生ごとシャイターンギルディをやろうってのかよ!!」
(助太刀とか何とか言って、華先生を見殺しにするつもり!?)
再び炸裂するシャイターンギルディの攻撃。
乱射される矢の雨を避けながらテイルバイオレットはレイジと共に駆ける。
「確かに今オレが奴を倒すのは簡単だろうなぁ。あの緑の姉ちゃんも殺っちまえば余計な邪魔者も消えて一石二鳥って訳だぁ」
「て、てめぇ!!」
再び首根っこを引っ掴もうとするテイルバイオレット。
だが、それを咎めるかのように矢が放たれ、避ける両者は倉庫街の物陰へと避難する。
「だから、ここから先に話す内容を信じるか信じないかは坊主たちてめぇら次第って訳だ。信じるってなら教えてやるぜぇ、あの姉ちゃんを救う術をなぁ」
「何!?」
(本当なの!?)
驚くテイルバイオレットを見てレイジは二ヤリと笑い、そして続ける。
「さっき言ったが、奴が不死身なのはあの身体に憑依して取り込んでいる間だけだ。勿論それは奴も把握している。だからこそ、そこを利用する」
「利用……?」
(するですって……?)
「ああ、奴だって強い肉体を手に入れたからと言って、その身体と共に死ぬと言うのなら直ぐにでも手放すだろうよ」
「つまり、お前は華先生まとめてアイツを半殺しにでもするって言うのかよ!?」
「バカ、奴は身体はあの姉ちゃんの肉体を得て並みの力じゃ歯が立たねぇ程に強化されてんだぜ? 殺す気でいかきゃこちら側がやられちまうだろぉ? それに奴にそんな程度の脅しは通用しねぇと見た方がいいぜ」
鼻で笑うかのような態度にまたも怒りを覚えるテイルバイオレット。
これは現在の主人格である和輝の怒りである。
「てめぇ――ちょっと待って和輝」
食って掛かろうとした瞬間、融合しているティアナが和輝を引っ込めて意識を表に出す。
心の中で騒ぐ和輝を無視しながらティアナもとい彼女人格のテイルバイオレットがレイジと向きなおる。
「何か策があるんでしょ?」
「ひゅ~流石は総愛様だ。物わかりがいいねぇ」
軽口を叩くレイジであるが、テイルバイオレットの威圧感が先程よりも高まっている事を感じて目つきが変わる。
「言っておくけど、私は和輝よりもずっと荒っぽいわよ。わかってるでしょ?」
「知ってるぜ。てめぇのお母さまの暴れっぷりは直で見てるからな」
そう言われながらも真っすぐ真剣な表情で見つめるテイルバイオレット。
レイジは改めてその策とやらを答え始める。
「いいか? 作戦はこうだ。まずはオレがオーラピラーで奴の身体を拘束し憑依解除以外の全ての自由を奪う。そうしたらてめぇらが奴に向かって最大威力の技を叩きこめ。さっき言ったが、奴はあの身体と心中するつもりはない。恐らく、奴は命中する寸前に憑依を解除して姉ちゃんの身体を身代わりにするだろう」
「でもそれじゃ――やっぱり華先生を見殺しになっちまうじゃねぇか!!」
和輝の人格が表に出てきて抗議するがレイジはフッと笑う。
「オレの操るブレイザーセイバーを使えば奴が憑依解除して命中するまでに割り込んで相殺する事が可能だ。そうすればあの姉ちゃんの身体に傷はつかねぇだろ?」
レイジが変身するアナザーテイルレッドの操る
それを生かしたレイジの提案は詰まる所、シャイターンギルディとの肉体を手放すか否かのチキンレースと言った所であった。
「でも待て、俺たちの攻撃をお前が相殺し切る事出来んのかよ。問題はそこだろ」
作戦を聞いてテイルバイオレットは真っ先にそう口にする。
先程レイジ自身も言っていたが、シャイターンギルディに甘い脅しは通用しない。
少しでも手を抜けばそもそも憑依解除せずに受け止められてしまう。
必要なのはシャイターンギルディにこのままではヤバいと思わせる威力とそれをブレイザーセイバーで受け止められるバランスだ。
「そこはてめぇらに任せるぜぇ。極限の進化を果たした総愛たちてめぇらならその程度の調整なんて出来なくちゃ困るってもんだ」
そう言った直後、追って来たシャイターンギルディの攻撃が盾となっている物陰を破壊する。
テイルバイオレットとレイジは再び先程の波止場付近へと移動した。
「どうするティアナ!? やれるか!?」
(不安だけど……やってみるしかない!!)
「トゥアールさん!!」
『不服ではありますが、今は総愛と和輝君に委ねます』
トゥアールからの許可を貰い覚悟を決める。
和輝もティアナも内心では疑念と不安が重なってはいるが、このままでは何も出来ないが故の決断である。
「本当にそれで大丈夫なんだな!?」
「ああ、オレの計算に狂いはない。あとは坊主と総愛次第だ」
そして――
紫と赤、ツインテールを守る者と狩る者、相反する者同士が並び立った。
◇
爆裂する赤い二つの光。
俺が纏うのは勇気のツインテールことテイルアーマーR、ツインテールの穂先と装甲が赤く染まった赤き姿はテイルレッドの力を受け継ぐエクストリームブレイブ。
隣に立つのは、同じ赤であっても、印象の異なる黒ずんだ血の如き色をしたツインテールと装甲が特徴のアナザーテイルレッド。
驚くことに以前俺たちが倒した時とは違って、見た目が大人の物になっていやがる。
元々の姿が目つきや雰囲気、細かな差を除けばオリジナルと瓜二つであったのに年齢がまるで違うようになっているそれは、言うなればヒーロー物のよくある悪の女幹部っぽいテイルレッドと言うべきだろうか。
「お前ッ!? んだよその姿!?」
「そうか、そういや前回会った時は坊主は泣き虫なガキンチョになっちまっていたっけかぁ」
前回って言うのは恐らくスペルビアギルディって奴との戦いの事だろう。
ティアナにその事を尋ねると俺が幼児化してピンチだった際もこの姿で助けてくれたらしい。
大人なテイルレッドは新鮮だけど、中身がコイツだし、雰囲気もツインテールも本物とは全然違うぜ。
「でたねニセテイルレッド……!! 今更何をしようってんのさ!!」
アナザーテイルレッドを見てシャイターンギルディが顔をしかめつつオラついた態度を取る。
対するアナザーテイルレッドはやれやれと言った感じだ。
「いつまでも偽物、偽物って……なら改めて名乗っておくか。いいかぁ? オレはツインテールを狩り全てのツインテールの頂点に立つ者アナザーテイルレッド。この姿はさしずめオリジナルチェインと言った所だ。よろしくなぁ」
うんざりしながらも前に立つアナザーテイルレッドがそう自己紹介。
相変わらず、コイツの目的はツインテール含めた属性力を守るのではなく、それを狩って自分自身の糧にすると言うゲスな内容のようだ。
ティアナが言うにはスペルビアギルディの時に俺たちに負けた借りを返す為にもアルティデビルとは敵対するような構えを見せているようだけど、どうも釈然としない。
ツンデレライバルと言えば聞こえはいいが、コイツのこの感じをそう認めちまえばバアルギルディに怒られるような気がする。
てか、オリジナルチェインってなんだよ。そういうとこが駄目なんだろボケ。
『相変わらず癪に障る男ですね……!!』
通信越しで聞こえるトゥアールさんの反応は予想通り。
まぁ、それはそうと俺は目の前の敵に集中することにする。
「兎も角、今はとりあえず信用してやる」
「へ~、このオレを信用ねぇ……」
「おい、んだよその言い方は。華先生を救うためにも協力してくれんだろ?」
念を押す為にもそう聞いてみるが、アナザーテイルレッドはわざとらしく返事をせずに口元を歪ませ不敵に笑う。
ムカつくので抗議してやろうかと思ったが、シャイターンギルディが動き出す。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと……!! 二人だからってウチに勝てると思ってんのかい!! あ゛あ゛ん゛!?」
シャイターンギルディがグランアローから矢を放ち、二回戦の第二試合の幕が開ける。
俺とアナザーテイルレッドはそれぞれ別方向に跳んで離脱しつつ俺から先に向かっていく。
目的は一先ず奴を拘束する隙を作る事だ。
「ティアナ、レイジ!! 行くぞ!!」
(ええ!! 行くわよ!!)
「けッ、坊主風情が仕切んのかい!!」
悪態突くアナザーテイルレッドを置き去りにした俺はウインドセイバーを二本精製して突貫。
振り下ろす二刀のウインドセイバー。
シャイターンギルディはグランアローのブレード部分を使って受け止めにかかった。
「赤くなったからどうしたんだい!! ウチをなめてんじゃねーぞッ!!!」
「つ、強ぇ……!!」
火花散るウインドセイバーとグランアロー。
二刀と一張では数で上回るウインドセイバーの方が分がありそうなものだが、シャイターンギルディの力はそんなアドバンテージを凌駕してきやがる。
流石はティアナが苦戦する相手だ……!! 華先生を取り込んだ事でこんなにも力を増すだなんてな……!!
攻撃特化のエクストリームエモーショナル程でないが、バランス重視のエクストリームブレイブだって通常時よりも力はかなり強くなるってのに、華先生を取り込んだシャイターンギルディはそれを上回っていやがる。
そして、鍔迫り合いを強引に制したシャイターンギルディは俺を弾き飛ばす。
「オラオラァッ!!! そんなもんかい!!」
「野郎……!!」
言動こそ乱暴であるが、その攻撃は的確だ。
グランアローを用いた攻撃の数々が装甲を着々と削りダメージを負わせてくる。
このままではティアナが戦っていた時同様に防戦一方で敗北してしまうだろうな。
だが、今は俺たちだけじゃねぇ。
(和輝!! 後ろ!!)
「わーってる!!」
ティアナの警告が聞こえると同時に姿勢を低くして屈む。
突然の行動にシャイターンギルディが驚く中、あの男の声が響く。
「オレもいるぜぇッ!!」
俺の背後から飛んできたのは勿論アナザーテイルレッドだ。
屈んだ俺を馬乗りでもするかのように飛び越えたアナザーテイルレッドは懐に潜り込んではブレイザーブレイドを横一文字に振るった。
「クッソが……!!」
腹部を斬りつけられ、傷跡から煙が漏れた。
そのままの勢いに乗るべく俺も即座に体勢を整えてはウインドセイバーを振るう。
「うらぁ!!」
「ハッハー!!!」
俺が刀を振るえば、その隙を埋めるかのようにアナザーテイルレッドが追撃を入れる。
流れる連撃はまるで今までずっと共に戦ってきたかのようなコンビネーションだ。
いくら華先生を取り込んでいようがこればかりは対応できない。
寧ろ、カウンター戦法を駆使する華先生の戦い方はタイマンでこそ強い戦法であるが故にこの戦い方はどうやら正解みてぇだな。
「クッソ……!! あんたらなんなんだよ!! 敵同士じゃなかったのかい!?」
「敵同士さ。これまでもこれからもなぁ!!」
うろたえるシャイターンギルディへとアナザーテイルレッドが一閃。
ヤケクソで反撃するシャイターンギルディの攻撃は俺が受け止め、その際に出来た隙をアナザーテイルレッドがブレイザーブレイドで一突き。
防御出来ずに体勢が崩れたシャイターンギルディ目掛けて俺とアナザーテイルレッドはそれぞれ左脚と右脚で中段蹴りを同時に見舞っては蹴り飛ばす。
「「そらぁッ!!!」」
「ぐあぁッ!!!」
完璧なタイミングで放たれる同時攻撃ほど痛い物はない。
現に蹴り飛ばされたシャイターンギルディは直ぐに立ち上がる事が出来ていない。
俺もアナザーテイルレッドも互いに合わせるつもりで攻撃してた訳じゃないのだが、コンビネーションは完璧だ。
「やるじゃねぇか坊主」
「てめぇに言われても何も嬉しくねぇつーの」
一度自分を殺した相手と共闘するだけでも嫌なのに、相性抜群って何の嫌がらせだよ。
まぁ、コンビネーション抜群なのはティアナがツインテールを通じて動きを読んでくれているおかげではあるんだけどな。
(二人ともつべこべ言わず、さっさとやるわよ)
「レイジ!!」
「言われるまでもねぇさ!! オーラピラー!!」
ブレイザーブレイドの剣先に赤黒い炎を収束し集まって来る。
よろめきながら何とか立ち上がったシャイターンギルディへとアナザーテイルレッドは容赦なくその炎を投げ放つ。
「なッ!?」
投げ放たれた炎はシャイターンギルディの目の前で破裂し、螺旋状の炎へと変わる。
「あ、足が動け……ない……!?」
螺旋の炎はシャイターンギルディの下半身を地面に縫い付けるかのように拘束した。
全身を拘束するのではなく、下半身のみなのは奴に憑依解除のチャンスを与える為。
もがくシャイターンギルディは自由となっている上半身をくねらせたり、腕を使って乱暴に拘束を破ろうとするが、弱った今の状態ではそう簡単にいかない。
「今だ坊主!!」
「うっせえ!! 行くぜティアナ!!」
(ええ、任せて!!)
天に手にかざす事で召喚された大小二つのツインテールが、空中にて連結合体し専用武器テイルバスターが完成。
テイルバスターをバスターキャノンモードへと変形させた俺は目標目掛けて照準をロックする。
「ま、待ちな!! この身体がどうなってもいいのかい!? ウチを殺ればこのセンコーの身体も逝っちまうんだよ!?」
本気の俺たちを見て慌て始めるシャイターンギルディ。
見苦しい事に取り込んだ華先生を人質として脅しにかかってくる。
だがそれこそがこちらの狙いだ。
「行けよッ!! セイバー!!」
アナザーテイルレッドがブレイザーセイバーを全基射出。
それぞれがシャイターンギルディを狙うかのように取り囲む。
こちらの狙いとしてはこのセイバーは華先生を守る為の物なのだが、一見すると逃がさずに攻撃する為のように見えるのでシャイターンギルディは俺たちの狙いに気が付かない。
「完全開放《ブレイクレリーズ》!!」
舞い上がる旋風の中、迸るエネルギーの渦が銃口部に収束していく。
シャイターンギルディが受け止めれないと判断するであろう威力且つ、ブレイザーセイバーで相殺できる絶妙なバランスで威力を調整する技術はティアナがいるからこその物。
必殺のエクストームブラストの準備は整った。
アナザーテイルレッドもブレイザーセイバーを全基完全開放《ブレイクレリーズ》して準備完了の合図を送りやがる。
「エクストーム――」
トリガーに指をかけ、タイミングを見計らって放とうとする。
――その時だった。
「おいおいおいおい……!! これは何の冗談だ?」
空から聞こえてくる尊大なムカつく声。
その声に一瞬気を取られたその時、停滞させていたブレイザーセイバーへと光弾が降り注がれる。
「なッ!?」
「んだとぉッ!? セイバーが!?」
全基爆散するブレイザーセイバー。
俺もアナザーテイルレッドも突然の事に理解が追いつかない。
そして次の瞬間、空高くから黒い翼の悪魔がアナザーテイルレッド目掛けて強襲する。
「ぐぁッ!!」
「レイジ!!」
踵落としを貰い地に伏せるアナザーテイルレッド。
その黒い翼の持ち主は先程帰った筈のアイツだった。
(ベリアル……)
「ギルディ……!!」
「フン、気になって戻ってきてみればこれかい。贋作が嗅ぎまわっていると思ったがどうやら当たりのようだな。尤も、贋作は所詮贋作、この天才ベリアルギルディ様の足元にも及ばん」
ベリアルギルディがアナザーテイルレッドを足蹴にしながらそう吐き捨てる。
なんてこった……!! まさか帰って来るのかよ……!!
予想だにしていない妨害を受けた事で俺とティアナ、双方どうすればいいかわからなくなる。
対してシャイターンギルディはベリアルギルディが来てくれた事に少し不機嫌な素振りを見せつつも嬉しそうに声を弾ませる。
「な、何だよベリアルギルディ!! ウチに任せるっていったじゃあないか!!」
「任せた結果がこれだろう? 拘束されながら良く言う。オレ様としては感謝して欲しい物だよ」
「感謝だァ!?」
「まだ気づかないのか、こいつら凡才共の企みを」
ヤベェ、バレてる……!?
天才とか何とか自称しているからただの偉そうな自称天才かと思ったら……この野郎、マジで天才だってのかよ。
想定外が重なった結果、状況は最悪だ。
(どうしよう……!? このままじゃ華先生が!!)
「わーってる!! わーってるけど……!!」
「どうした? その大砲で撃つんじゃあないのか? それとも何か? オレ様が何か不味い事でもしたというのか?」
ニタニタ嫌味な笑みを浮かべるベリアルギルディがじりじりと詰めてくる。
テイルバスターには未だエネルギーは充填したままなのでトリガーさえ引けばいつだってぶっ放す事は可能ではある。
だけど、脅す目的で貯めたこの威力じゃ恐らくベリアルギルディは倒せない。
だからといって拘束されているシャイターンギルディに放っても、アナザーテイルレッドが倒れたこの状況じゃ華先生が身代わりになった場合ただでは無事ですまない。
シャイターンギルディを拘束するオーラピラーも、アナザーテイルレッドが倒れた今、いつ何時破られるかわからないし完全に八方塞がりだぜ。
「大人しく、貴様の半身たるその小娘を寄越せ。今なら命だけでも助けてやるよ」
『撤退してください!! 早く!!』
トゥアールさんの通信が聞こえるが撤退できるわけがねぇ。
クッソ、もう駄目だ。わっかんねぇ……!!
こうなったら一か八かベリアルギルディが倒れる事を期待して放つしかない。
ヤケクソ気味に再度トリガーに指をかけようとするその時、
「てめぇ如きが天才ねぇ……だったらオレは超天才ってかぁ?」
地に伏せ、倒れた筈のアナザーテイルレッドがクククと笑いだした。
ベリアルギルディが動きを止める。
「何? どういう意味だ。この贋作風情が……!!」
青筋を浮かべながら倒れているアナザーテイルレッドへと目を向けるベリアルギルディ。
アナザーテイルレッドは余裕の笑みを崩さない。
俺とティアナはどうしてその態度がとれるのかわからず混乱中だ。
「どういう意味かって? いいか? 切り札ってのは常に隠しておくもんだぜ」
「フン、何をたわごとを……!! 今の貴様に何が出来る」
「なぁに、ちょいと時を戻すだけさ」
そう呟いたアナザーテイルレッドは左腕の手甲を操作し、薄緑に光る石、もとい属性玉を取り出す。
取り出された属性玉はスライド展開された窪みへとマウントされ、その秘めたる力を解き放つ。
あれは
「起動しろ!!
そう言葉し起動する
空間が歪む。
すると、アナザーテイルレッドの傷が瞬時に癒え、先程爆散したはずのブレイザーセイバーが全基がビデオを逆再生するかのように修復され何事もなかったかのように現れる。
『あれは
こればかりはベリアルギルディの予測を越えている。
動揺するベリアルギルディとシャイターンギルディ。
二転三転するこの状況に俺もどうにかなりそうだが、このチャンスを逃す程バカじゃねぇ。
「今度こそ……行くぜティアナ!!」
(行くわよ和輝!!)
テイルバスターの銃口を再びシャイターンギルディへ。
ギョッと驚くシャイターンギルディと、一方でしまったとばかりベリアルギルディが慌てだす。
こちらの狙いに気づいているベリアルギルディは妨害に動こうとするがもう遅い。
「エクストーム! ブラストォォォーーッ!!!」
足を地面に拘束され動けないシャイターンギルディへと迫る光の奔流。
このまま命中すればシャイターンギルディでは耐えられない。
「チィ……!! こうなったら……!!」
「待てシャイターンギルディ!!」
身の危険を感じたシャイターンギルディは即座に憑依を解く事を選択。ベリアルギルディが待てと叫ぶが止まらない。
シャイターンギルディは姿を元の華先生へと戻ると同時に、その身体から煙状の状態で抜け出て離脱した。
「残念だったね!! そのセンコーだけあの世行きさ!!」
案の定、奴は華先生の身体を身代わりにしやがった。
がしかし、それは想定内。
「ハッ! そうはいかねぇってなぁッ!!」
アナザーテイルレッドがブレイザーセイバーを操作し叫ぶ。
高速で動く刃が華先生との間に割り込んでは障壁となる。
そして、そのままエクストームブラストを受け止め――否、角度を変えて受け流した。
「何!? ウチを狙って……!?」
「逃がすと思ったかぁ!? このマヌケ!!」
アイツ……本来なら相殺するだけだったはずなのに、受け流して軌道を変え、逃げるシャイターンギルディを狙いやがった。先の一連のどんでん返しも含め、味方にするとこんなにも頼もしいのかよと複雑な気持ちになってしまうぜ。
そんな感想の一方で、逃げるシャイターンギルディを追うエクストームブラスト。
いくら物理的に不死身のシャイターンギルディと言えど、属性力をエネルギーに変えて放つこの攻撃ならば耐えられない。
「チクショウがァァァ!!」
「全く……慌てるんじゃあない!!」
今まさに命中しようとしたその時、いつの間にか動いていたベリアルギルディが割り込みに入る。
そしてそのまま翼で覆い防御するベリアルギルディは調整したエクストームブラストなど簡単にかき消してしまった。
「チっ……!!」
舌打ちするアナザーテイルレッド。
対するベリアルギルディは怒りを抑えつつ口元を噛みしめている。
「ベリアルギルディ……、ウチ……」
「一先ず撤退だ!! 異論は認めん!!」
悔しそうにそう言い放つベリアルギルディは申し訳なさそうに意気消沈するシャイターンギルディを引っ掴むと極彩色のゲートを作り出す。
俺たちが反応する暇なくベリアルギルディたちはその姿を消した。
「逃がしたか……」
アナザーテイルレッドは別の意味で悔しがる。
俺とティアナはそんなアナザーテイルレッドとは違い、変身解除しながら倒れている華先生へと駆け寄るのだった。
◇
明るかった空は激闘の果てにすっかり暗くなり、潮風がここにいる者たちの鼻先を刺激する。
和輝、ティアナに続く形でレイジも変身を解除。
そして、程なくしてトゥアールを始めとした基地にいた面々がやって来る。
「和輝~!! ティアナちゃ~ん!!」
「二人とも大丈夫~!?」
匠と悠香の明るい声が響く。
二人は倉庫の壁にもたれる華に気づき駆け寄った。
見た所、特に怪我をしている訳でもなく気を失っているだけのようである。
一方、トゥアールは険しい表情でレイジを睨んでいた。
「おいおい、その態度はないだろ。その姉ちゃんを助けれたのはオレのおかげだぜ」
「そうですね。今回は礼を言います」
口ではそうは言っているが、トゥアールの表情は相変わらず険しい。
一応これでも最大限友好に接しているつもりではある。
それでもこうなのはこれまでの積み重ねからなる物だろう。
尤も、レイジもそれをわかっているからか醜悪な笑みを口元に浮かばせている。
「この場所がわかったのも全てあなたの仕業……いや、おかげとでも言えば満足ですか?」
「トゥアールさん!?」
「ママ、それってつまり……!?」
トゥアールの言い方からすると、まるでレイジは偶然助けにやってきたのでなく、元からここでシャイターンギルディを見つけていたかのような言い方である。
和輝とティアナは当然その事に驚きを隠せない。
「私たちはここから発せられた属性力反応を追って来ました。レイジ、それはあなたが意図的に流した物ですよね」
前に出るトゥアールが言葉を投げかけ追及する。
対して、レイジは華で笑うかのような素振りと共に背を向けた。
「前にも言ったろ? オレが求めるのは俺以外全てのツインテール属性。あんな奴らに獲物を奪われるならてめぇらだって利用するだけさ」
そう口にしているが本当にそうなのだろうか?
二度も助けられた事もあり、ティアナはもしかしたら実は悪い人ではないんじゃないかと思えてくる。
「
レイジはそう言い放つなり高笑いを上げて立ち去ろうとする。
その後ろ姿から何かを感じたティアナは警戒心を緩めない和輝とトゥアールを押しのけ前に出た。
「レイジさん!!」
「おいバカ!!」
「総愛!?」
突然の事に驚く二人を尻目に立ち去ろうとするレイジへと駆け寄るティアナ。
一方のレイジもこの行動には予想外といった様子である。
「ねぇ、こんなバカな事やめて、これからも私たちと共に戦う気は――」
レイジへとティアナは手を差し出す。
もしかしたら和解する可能性があるのではないか?
ティアナは自分自身が抱いたふとした希望を信じ、衝動のままに手を差し出したのだ。
しかし、レイジはフッと鼻で笑うと同時にその手を払いのけ、そのままティアナの頬をはたいてみせた。
「きゃあっ!?」
力強くはたかれ頬を腫らしたティアナが倒れ込む。
「総愛!!」
「レイジてめぇ!!」
勿論、そんな事をすればこの二人が黙っている筈もない。
和輝とトゥアールは揃ってレイジへと飛び掛かろうとするが、レイジはそれよりも先に変身して空へと逃げる。
「勘違いすんなって事さ。オレとお前らはこれまでもこれからも敵同士。仲良しこよしは出来ねぇ相談だ」
「てめぇ!!」
「レイジ!!」
怒る二人をあざ笑うかのようにレイジもといアナザーテイルレッドはそのツインテールを羽ばたかせる。
「悪いが、オレも少し力を使いすぎたんでな。当分は来ねぇし、今日はここでお暇とさせてもらうぜぇ」
去り際に言い残した言葉。
言っておくがこれは本当の事である。
先程使用した
いくらオリジナルチェインへと進化し強くなろうとも常用は出来ぬ切り札なのだ。
尤も、トゥアールは兎も角として和輝はそんな事は知らないのでいつもの茶化した嘘だと認識した。
「クッソ……!! 今度会ったら倍返しにしてやらぁッ!!」
ティアナへと駆け寄りながらも悔しそうに拳を合わせ指を鳴らす和輝。
水平線の彼方へとアナザーテイルレッドが消えた現在、港の倉庫街は実に静かで平和その物だ。
そして、気を失っていた華が遂に目を覚ます。
今さらですけどアナザーテイルレッド大人verの形態名はオリジナルチェインです。
アダルティとか色々他の候補もありましたけど、性格とか響きのカッコよさからこっちで。
あと、シャイターン編はもう少し続きます。