俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第146話 不安の第一楽章

 人気(ひとけ)の少ないこの地にて、向かい合うのはレイジとベリアルギルディ。

 悪と悪、異なる二つの悪は決して交わらず、出会ったが最後、どちらかが果てるまで戦うのが道理であり、この両者もそれに準じる関係である。

 だからこそ、レイジはアナザーテイルレッドへと変身せんと構えたのだが、ベリアルギルディの様子は違った。

 

「一つ、貴様に提案がある」

 

「提案……?」

 

 現れた当初こそ、いつもの傲慢な態度を崩さなかったベリアルギルディであったが、今の彼は少し雰囲気が違う。

 他者を見下す態度こそ隠しきれていないが、全体的に敵意はなく、むしろその逆とも言える。

 その事に瞬時に気が付いたレイジは構えを解いた。

 

「そうだ。それでいい。オレ様と貴様が戦っては話すに話せんからな」

 

「御託はいらねぇなぁ。さっさとその提案とやらを言いやがれ」

 

「フン、癪に障る男だ」

 

 険悪な雰囲気漂う両者。

 構えこそ両者解いているものの、いつ何時争いが再開してもおかしくはない。 

 そんな状況下の中、ベリアルギルディが満を持して口を開く。

 

「率直に言おう。貴様……いや、アナザーテイルレッド、オレ様と手を組まないか?」

 

 提案、それはベリアルギルディとアナザーテイルレッドの両者が共に手を組まないかの誘いであった。

 ベリアルギルディの声が静かに木霊する。

 数秒後、レイジは笑い出した。

 

「ククク、ハッハッハッハ!!」

 

「なんだ? 何がおかしい?」

 

 少し苛立ちを覚えるベリアルギルディに対して、レイジはツボにはまったのかと錯覚するほどに実に面白可笑しく笑っている。

 ひとしきり笑い終えたレイジはベリアルギルディへと向きなおる。

 

「こいつは失礼したぜ。いやいや、まさかこうも予想通りの提案をしてくると思っていなかったもんでなぁ。テンプレってのはこういう物かとつい笑っちまったぜ」

 

 軽い態度で謝る素振りを見せるレイジ。

 尤も、普段のあの様子から今日のこの雰囲気を見れば、こうなるだろうとある程度予想がつくのはレイジ以外でもそうだろう。

 

「バカにしているのか?」

 

「おいおい、少しはプライドを抑える事を学んだ方がいいと思うぜ? 提案もとい交渉ってのはある程度下手にでるのが筋ってもんだろう?」

 

「調子に乗るなよ。オレ様はあくまで貴様を同志として迎え入れたいと言っているのだ。貴様が上であると言った覚えはない」

 

 ベリアルギルディ曰く、両者の間に上下関係はないとの事だ。

 確かにそれならばそこまで下手にでる必要はない。

 

「同志……ねぇ?」

 

 同志という言葉に引っかかりを覚えたレイジは訝しむ。

 レイジから見てベリアルギルディへの現在の印象はズバリ信用ならない厄介な相手であるに尽きる。

 

「どうする? 天才たるオレ様の頭脳と匹敵しうる貴様の実力。その二つが合わさればテイルバイオレットなど取るに足らない凡才以下でしかない。手を組まない理由があるのか? 共に手を組もうではないか」

 

 態度を再び切り替えたベリアルギルディが再度そう提案してみせる。

 少し間を置いた後、レイジはベリアルギルディへと背を向けた。

 

「悪ぃが、やっぱオレは誰とも手を組むつもりはねぇな。生憎、一匹狼の質でねぇ」

 

 レイジの答えはズバリNO。

 彼自身の言う通り、レイジが一匹狼の質であるのもそうだが、理由はもう二つ存在する。

 

「そもそもだ。オレとてめぇは目標こそ同じだが、目的が違う。それじゃあ食い合うだけだろ」

 

「何……? どういう事だ?」

 

「勘違いしているかもしれねぇが、オレの目的はテイルバイオレットに勝つことじゃねぇ。奴の属性力を奪ってオレのツインテールへさらなる力を与え、そしていずれは全平行世界のツインテール属性を奪い、オレのツインテールこそが最強で最高の孤高の物とし、オレだけがツインテールを愛する事が出来るようにする。ただそれだけさ」

 

 瞼の裏に焼き付いたテイルレッドゴールドチェインの輝き。

 レイジの目的であり目標は今も変わらずそれ一つであり、その為にはティアナの持つ究極に匹敵する極限のツインテールは絶対に奪わねばならぬ事なのだ。アルティデビルもといベリアルギルディ側の目的がティアナの奪取である事を踏まえると結局は争い合う関係である事に違いない。

 それを聞いて納得するベリアルギルディ。

 だがしかし、ベリアルギルディはそんなレイジに対してある事を言い放つ。

 

「成程、確かに一理ある。だが、仲良しごっこをしている癖によく言うな」

 

「何?」

 

 振り向き、睨みつけるレイジ。

 その様子は先程までのどこか余裕を感じられたそれとは違う。

 ベリアルギルディはほくそ笑む。

 

「貴様はここの所、我々の邪魔をするばかりでテイルバイオレットを襲うなどとは毛頭考えていないではないか。テイルバイオレットを属性力を奪う? フッ、笑わせる」

 

「それはてめぇらの方が目障りだからと――」

 

「いいや違うな。貴様はこの関係性に満足している。テイルバイオレット、テイルブルームに次ぐ第三の戦士としての立場をな」

 

 そう鋭く指摘された事で、レイジは思わず口ごもる。

 レイジとして認めたくない事ではあるが、事実、図星であったと認めざる得ない。

 脳裏に蘇るのは先日の華救出戦後のティアナの言葉。

 

(こんなバカな事やめて、これからも私たちと共に戦う気は――)

 

 あの時はその提案を鼻で笑い、差し出された手を払いのけた。

 だが、今思えばその行動はアナザーテイルレッドと言う自己を守る為にとった咄嗟の行動だったのかもしれない。

 

「オレが……だと!? そんな筈は……!!」

 

 レイジの心の中でかつてない程の迷いが生まれようとしていた。

 いや、知らぬ間に見て見ぬふりをしていた迷いを自覚したと言うべきか。

 なんにせよ、レイジの動揺はベリアルギルディにとっても想像以上だったと言える。

 

「今の貴様は牙を抜かれた獣でしかない。いや? 獣ですらないと言える」

 

「んだとぉ!? テイル――」

 

 これ以上言いたいようにさせては不味い。最悪、自分と言う名の存在を見失ってしまうかもしれない。

 そう判断したレイジはいつも以上に焦った様子でテイルブレスを再度構え直そうとする。変身機構起動略語(スタートアップワード)を口にし変身しようとするが、ベリアルギルディが止めておけとばかりに手をかざす。

 

「貴様とてわかっているだろう? 貴様らが纏うそのテイルギアと呼ばれしその武装は精神エネルギー糧とし戦う物、今のその乱れた心ではいくらツインテールを想おうが力は出まい」

 

 図星だ。

 レイジは動きを止める。

 

「何度も言わせるんじゃあない。オレ様は貴様と戦うつもりなどないと言っているじゃあないか。オレ様はあくまで貴様と対等な関係を結びたいのだ」

 

 両者の間に流れていた一触即発の危険な空気はもう存在しない。

 と言うより、舌戦の末にベリアルギルディが勝利したととれる。

 レイジの威勢は完全に消失していた。

 

「それにだ。言っておくが、貴様もまた、オレ様の目的を勘違いしている」

 

「何……?」

 

「特別に教えてやるが、オレ様の目的は我が愛しきマイエンジェルを殺した者たちへ絶望を与える事、即ち復讐だ」

 

 愛しきマイエンジェル。

 それをを聞いたレイジの脳裏にとある科学者のエレメリアンが浮かび上がる。

 

「それが一体何故、この世界を襲う理由になる?」

 

「無論、強大なツインテール属性の持ち主こそが我が復讐のカギになるからに決まっていよう」

 

 ベリアルギルディは語る。

 この世界に侵攻し、究極にも匹敵しうるティアナを狙った理由。

 それは、全属性を滅ぼす無属性の属性玉と、愛しきマイエンジェルが残したテイルギアのデータを組み合わせた対ツインテール戦士専用の究極兵器の第二の核として使うと言う事であった。

 

無属性(ゼロ)? 属性のない属性だと?」

 

「存在してはいけない虚無を形にした物だ。オレ様はそれを使い、憎き奴へと復讐を果たす。その為にも究極にも匹敵しうる強大なツインテール属性の持ち主が最後のピースとして必要なのだ」

 

 ベリアルギルディが提示するデータに映るのは無属性をコアとして稼働するテイルギア。

 使用者の属性力とその対極にある無の属性の反発。それこそがこの兵器を最も活用できる方法であるとベリアルギルディは語った。

 

「何も使用者は究極のツインテールである必要はない。あくまで最高のパフォーマンスを出せると仮定しているのがそれなだけだ。強大なツインテール属性の持ち主であれば問題はない」

 

「それをオレに言ってどうするつもりだ?」

 

「貴様とてわかっているだろう? 貴様にはそのテイルギア、『アンチテイルギア・TYPE-ZERO』の使用者として共に戦ってもらいたいのだよ」

 

 ベリアルギルディが何故レイジを勧誘したのかの理由はこれであった。

 レイジはその新たな力を手に入れ、ベリアルギルディはそのまま復讐を果たす。

 一見すると、両者にメリットがある関係であるが、レイジ側にかかる危険性は並みのソレではない。

 言ってしまえば実験動物となれと言っているも同義だ。

 普段であれば確実に首を縦に振る事はないであろうと断言できる。

 しかし、今のレイジは迷っていた。

 

「ま、すぐには答えは出ぬだろう。決心がついたのであればオレ様に連絡するがいい」

 

 瞬間、レイジの持つタブレットへベリアルギルディへの連絡先が追加される。

 用が済んだベリアルギルディは黒い翼を羽ばたかせ空へと舞いあがる。

 

「言っておくが貴様は所詮贋作。どうあがいても本物にはなれぬとしれ」

 

 そう言い残しベリアルギルディは姿を消した。

 残ったレイジは腕にはまっているテイルブレスを取り外す。

 

(私にとってはあなたもテイルレッドさん……なんだと思います)

 

 蘇るのは復活したあの日出会ったアイドル、夢宮ヒカリの言葉。

 ある意味おかしくなったきっかけとも言えるその言葉を思い出したレイジはテイルブレスを地面に力一杯叩きつける。

 

「違う……オレは……テイルレッドなんかじゃねぇ……!!」

 

 人気(ひとけ)のないこの地で一人虚しく声が響く。

 地面に叩きつけられたテイルブレスは傷一つ付いておらず、そのツインテールのエンブレムは深紅の輝きを放っていた。

 

 

 

 

「はぁ……またやっちまった……」

 

 ついつい照れ隠しの為に乱暴で無愛想な態度を取ってしまうのは俺の悪い癖だ。

 アラームクロックから飛び出し、家へと戻ってきた俺は自室のベッドに身を投げ出した。

 

「どうして俺ってこうなんだよ~」

 

 ヘタレなのは自覚している。昨晩見た夢もそのヘタレさが原因なんじゃねぇかって事も俺だって何となくわかる。でも、だからってどうしようもない。

 枕に顔をうずめて一人叫ぶ。

 もし誰かに見られたら恥ずかしすぎる光景ではあるが、幸いな事に婆ちゃんは出かけたようなので今家にいるのは俺一人だけ。

 だから俺は思う存分、自分自身の情けない醜態に嘆いているんだ。

 

(このままヘタレのまま終わるつもりですか?)

 

(男は度胸。いざって時はビシッと決めちまえ)

 

 トゥアールさんとおやっさん、二人とも俺の事を思って励ましてくれているのはすげぇわかる。

 このままティアナとなぁなぁの関係で続けていたら、いずれ来るかもしれない別れの時に後悔がより残るってのも滅茶苦茶わかる。

 でも、肝心な所で動けない。

 あと一歩、あと一歩だけでもいいから前に踏み出せさえすれば、俺とティアナはもっと深い関係にまで至れるってのによ……

 一年前、匠の奴と来年こそ可愛い女の子と付き合って童貞卒業しようぜなんて馬鹿みたいな事を言っていた自分を殴ってやりたい。

 

「って、んな事うじうじ考えても意味ねぇだろ馬鹿!! しっかりしろ!! クリスマスはティアナとデート、デートだ!!」

 

 いつまでもこんな調子じゃ折角行くと決まったデートが台無しになっちまう。

 それを思い出し、俺は自分自身へと喝を入れる。

 独り言激しいが、こうでもしなきゃいてられない気分だ。

 

「デートか……」

 

 前回の夏に行ったデートは遊園地へのチケットを貰ったからそこになったけど、今回は突然の思いつきに近い唐突な事もあって何も決めていない。

 夏と違って今は冬って事もあるし、それに何度も同じところに行くのも面白くないので、前回のラストのように星空を見に行くのもバツだ。

 今回は俺が最初から最後まで全てのデートプランを考えてやるつまりだが、まぁ難しいのなんのってな。

 あと、今回はちょっとしたプレゼントも渡さなきゃならねぇ。

 デートスポットやプランも大事だが、プレゼントは思い出が形になる物である以上、それら以上に重要になってきやがる。

 俺は今までティアナにプレゼントらしいプレゼントを送ってきたことがない。

 強いて言えば、夏に水着を選んだ程度だけど、あれはあれで色々問題発生したっぽいからノーカンだろう。

 なんにせよ、あいつが喜ぶプレゼントをしっかり選ばなきゃならねぇ。

 

「ティアナに似合うプレゼント……」

 

 王道はちょっとしたアクセサリーや服とかか?

 いやでも、あのティアナだし、王道的な物は感謝こそしてくれるとは思うが本当に喜ぶかどうかは疑問だ。

 指輪とかは高すぎてNG。

 やっぱし、髪をくくるリボンやバレッタとかなのか……?

 

 

 色々考えていくたびに段々と眠くなってくる。

 ティアナ……デート……プレゼント……

 

 

 

 

『総愛、エレメリアンが出現しました』

 

 ランチタイムが終わるお昼の3時を過ぎた頃、ほっと一息つこうとした私のトゥアルファンからトゥアールママの声が鳴る。 

 エレメリアン出現のようね。

 昨日から引き続き、そう強くない反応。恐らく、今回もデカラビアギルディ同様に七つの性癖(セブンス・シン)ではないみたいね。

 でも、だからって見過ごしていい筈がない。

 

「いってらっしゃい。気をつけるんだぞ」

 

「うん、わかってる」

 

 元気よくそう頷く私は和輝と合流する為に連絡を試みつつ転送装置へ。

 だけども、和輝からは全く返事が来ない。

 

「ママ!! もしかしてまた……!!」

 

『いえ、和輝君は自宅の自室いるようです。エレメリアンに襲われた訳じゃありませんね」

 

 トゥアールママの返事を聞いて安心する傍ら、ならどうして返事をよこさないのかが気になってしまう。

 もしかして、昼寝でもしちゃったとか……!!

 こんな時に何やってるのよと少しばかり怒りが沸いてくる。

 

「ごめんママ!! ちょっと和輝を迎えにいってくる!!」

 

『わかりました。では華先生に連絡します』

 

 そう言葉を交わした私はアラームクロック厨房裏に備え付けられた転送装置を使用。

 和輝の自室もとい私たち二人の寝室へと瞬時に移動した。

 

「和輝!! エレメリアンが出たわよ!!」

 

 転送先であるクローゼットの中から私は飛び出し、声を張り上げる。

 しかし、またしても返事が来ない。

 ベッドへと目をやると、そこには、和輝が険しい表情をしたまま眠っていた。

 

「ちょっと和輝!! 何寝てんのよ!! エレメリアンよ、エレメリアン!!」

 

「うぅ……ティ、アナ……?」

 

 寝ぼけ眼をこするよう起きた和輝が私の事を呟く。

 私としては何寝ぼけているのよって感じだけど、和輝は意識がハッキリすると同時に目を見開いて抱きついてきた。

 

「ちょ…ちょっと和輝……!! 何してんのよ……!!」

 

 いきなりとは言え、好きな人から抱きつかれて照れない人はそういない。

 状況を忘れ、少し照れてしまう私だったけど、次第に何か様子がおかしい事に気がついた。

 

「ティアナ!! 俺の事、覚えてるよな!! 俺の事、見放したりしないよな!! な!! なぁ!?」

 

「はぁ? ちょっと……何?」

 

 和輝の様子がおかしい。

 まるで私が和輝の事を忘れるか、あるいは見捨ててしまったかのような、絶対に起こり得ないありえない反応を見せている。

 恐らく、何か悪夢でも見たのでしょうけど、一体それが具体的にどんな内容で何故そこまでおかしくなっているのかまではわからない。

 さっきデートに誘われた時に感じた違和感がそのままより強くなってるようにも思える。

 

「落ち着いて!! 何か変な夢でも見たのかもしれないけど大丈夫、今のは夢よ!! 忘れなさい!!」

 

「ゆ、夢……!?」

 

 私がそう言い聞かせた事もあり、和輝はようやくこれが現実であると理解してくれた様子。

 今さっきまで見ていたのが夢であると自覚し落ち着く和輝は私を見た事で顔を赤く染める。

 

「ティ、ティアナ……!! お前何しにここに……!!」

 

「何しに……って、あなたが起きないから起こしてあげたんでしょ!? というかそもそもこの部屋は私たちの部屋だし、別にいてもいいでしょ……!!」

 

 いつもの和輝に戻った事で私も調子を取り戻す。

 そのままの流れでエレメリアンが出現した事を伝えた。

 

「そうか……。すまん、ちょっと眠っちまっていたぜ」

 

「もう、いつもいつも起こしにくる私の身にもなってよね。子供じゃないんだから〜」

 

「うるっせぇ……!! お前は俺のお袋かっつーの!! てか、んな事より早く行くぞ!!」

 

 いつものやり取り、いつもの私たち。

 例えどんなエレメリアンが来ても負けやしない。

 そんな自信すらも沸いてくる。

 

「ねぇ? それはそうと、どんな夢を見ていたの?」

 

 その質問の答えだけは頑なに答えてくれなかった。

 

 

 

 

 マシントゥアールを駆り、現場へと急行。

 テイルバイオレットへと融合変身した私たちが辿り着いたのは飲み屋やクラブがひしめく昼過ぎの繁華街。

 

「フハハハハ!! 人間どもよ、我が愛で包み込んでやろう!!」

 

 逃げ惑う女性たちを高笑いを上げながら追いかけているのは、狼の身体に梟の頭、蛇の尾も持つエレメリアン。

 狙っているのは全体的にスタイルのいい人ばかりであり、本能的に少しムッとした気分になる。

 

(何よアイツ、ムカつくわね……)

 

「てか、華先生はどうしたんだよ?」

 

 そう言えば先に行っている筈の華先生ことテイルブルームの姿が見えない。

 別に敵を甘く見ているつもりはないけど、あんな奴に華先生が負ける筈がないとは思うし、どこかでダウンしているって事はない筈。

 

『あー、すいません。華先生は直に到着します……』

 

 トゥアールママから通信が入る。

 そしてその直後、私たちの後方よりテイルブルームがやってきた。

 ツインテールはいつも通り凛々しく綺麗だけど、顔色が少し青い。

 

「ごめんなさい。ちょっと……ゔっ……!!」

 

「まさか……また飲んでたのかよ……」

 

「いや、そうじゃないの……二日酔いがちょっと……」

 

 そう苦しそうに答えたテイルブルームは口を押えて背を向ける。

 お酒は程々にって身をもって教えてくれるテイルブルームは教師の鏡とフォローしておく事にするわ。

 

「むむっ!! 出たなテイルバイオレットにテイルブルーム……って、どうしたんだ貴様!?」

 

 私たちに気が付いた様子のエレメリアンが威勢よく反応しようとしたみたいだけど、テイルブルームがアレな事になっている事に気が付き驚いている。

 敵でありながら心配する素振りを見せるその姿からは、やっぱりというかあまり危険性を感じない。

 

「わりぃ、ちょっとタンマ。もう少しでスッキリするだろうからよ」

 

「うおぇぇぇッ……!!」

 

「おぉ……なんてはしたない……」

 

 敵にそんな風に言われるだなんて……

 トゥアールママから受け取ったであろう四次元エチケット袋に吐き続けるテイルブルーム。

 何でも、具合悪い状態なのに無理して急ごうとしたのが逆に遅れる原因になったみたい。

 数分吐き続けた末、テイルブルームはようやくある程度の調子を取り戻す。

 

「さ、さぁかかってきなさい……!! 母なる大地のツインテール戦士、テイルブルームが相手よ……!!」

 

「無理すんなって……」

 

(でも和輝、おかげで避難は済んだみたい)

 

 エレメリアンまでも心配して動きを止めてくれたのはある意味運が良かった。

 おかげ様で逃げ惑っていた人は安全圏まで下がっている。

 これなら私たち全員、思う存分に戦うことが出来るわね。

 テイルブルームが万全かどうか置いておいて……

 

「全く、折角スタイルが良いと言うのに、そんな潰れていては台無しではないか……」

 

 やれやれとばかりに手を上げるエレメリアン。

 そう言えばコイツはスタイルの良い女性ばかりを狙っていたわねと思い出す。

 

「酒を飲むにしても、せめてほろ酔い状態で来て欲しいものだ……」

 

「てめぇ、さっきから何言ってやがる。まさか巨乳とか巨尻とかの属性じゃねぇだろうな?」

 

 テイルバイオレットが乱暴な口調で問いただす。

 すると、エレメリアンは待ってましたとばかりに声を張り上げる。

 

「巨乳に巨尻だと? 否!! 我が愛するのは護謨服属性(ラバースーツ)!! 女性の身体をなまめかしく引き締めるラバースーツを愛するアモンギルディだ!!」

 

 ラ、ラバースーツ?

 語感的にゴムでできた服の事かしら?

 私やテイルブルームはあまりピンと来ず、唯一和輝もといテイルバイオレットだけが嫌そうな反応を見せている。

 

『ラバースーツというはラバーもしくはラテックスなどで製作されたキャットスーツの一種ですね。ぴっちり張り付く材質故に身体のラインが強調されやすく、そこにフェティシズムを感じる人も多いですね』

 

 トゥアールママの解説を聞き、心の中で頷く私。

 要するにゴムでできたタイツみたい物でしょ。

 

「てめぇ……!! スタイルのいい女性ばかり狙ったのもそれが原因って訳か!!」

 

「無論だ、豊満な身体こそ引き締めるラバーのテカリがより映えるというもの!! 対して、貧相な身体などを引き締めた所で浮かび上がるのは残酷な現実のみよ。俺は慈悲深いのだ!!」

 

 何が慈悲深いよ。

 貧相な身体だって魅力ない事ないんだから!!

 てか今、私たちの事みて笑ったでしょ!! 頭くるんだから!!

 

(和輝!! あんな奴さっさとブッ倒しましょ!! 久しぶりにムカついてきたわ!!)

 

「バカ、落ち着け。また暴走するつもりかよ……」

 

 心配する和輝だけど、そんな事はないようにはするつもり。

 いやま、滅茶苦茶ムカつく奴ではあるけれど、私のこの貧相な身体だって和輝が好きだと言ってくれた以上は暴走なんてしない。

 ラバースーツが何よ。締めたり縛ったりしていいのは結ぶときの髪だけなんだから。

 

「ふむ、にしても貴様らのその恰好……」

 

「待て……!! テイルギアは違うぞ……!! これはラバースーツなんかじゃねぇからな!!」

 

『バイオレットの言う通りです。テイルギアはインナースーツ含めて極軟性金属のフォトンヴェイルで構成されています!! 特殊プレイ用のラバースーツは別に存在しているだけでテイルギアとは違います!!』

 

 テイルギアを見てラバースーツなのではと疑うアモンギルディと慌てて否定するテイルバイオレット及び通信で補足するトゥアールママ。

 まぁでも、確か言われてみれば全身を覆うテイルギアもラバースーツ? ってのに近いのかもしれないわね。ニュアンス的に全身に張り付く服が好きみたいだし。

 それはそうと、特殊プレイって何?

 

「そうか……ならばよし!! ならば思う存分、我が愛で包んでやろう!!」

 

 唐突に何かを納得した様子のアモンギルディが指をパチンと鳴らす。

 すると、どこからともなく黒い光が弾となって振って来る。

 不意を突かれた私たちは、テイルブルームを含め、その光弾を回避する事が出来ない。

 咄嗟に防御の構えを取って受け止めるテイルバイオレットとテイルブルーム。

 しかし、光弾は着弾と同時に性質を変化。首から下を覆い尽くすように纏わりついて来る。

 

「ッ……!? なんだこの感触!?」

 

(何これ……!?)

 

「き、キツイ……!!」

 

 私と和輝、テイルバイオレットを締め付けるラバーは紫、テイルブルームは緑。

 光弾をくらった事で、それぞれがそれぞれのラバースーツに首から下が覆い尽くされてしまった。

 テイルバイオレットへとなったおかげで多少胸があるけれど、貧相な身体を強調されているようで恥ずかしい。

 テイルブルームなんて、ちょっと羨ましくなるくらい胸もお尻も強調されてしまっている。

 

「フハハハハ、どうだ我が愛のラバーは!! 中々に似合っているぞ!! 特にテイルブルーム、貴様だ!!」

 

 高笑いを上げるアモンギルディがテイルブルームへと急接近。

 手を平手にし、ラバーで覆われたその身体を殴打しようとしている。

 

「くッ……!! 思うように体が動かない……!!」

 

「どうだ!! 慣れないその恰好では満足に動けまい!! 我が手さばきの前に沈むがいい!!」

 

 ペタペタと擬音が出ているんじゃないかって具合にテイルブルームを優しく殴打……否、触りたくるアモンギルディ。

 どう見ても触りたいから触っているようにしか見えず、ちょっとというかかなり気持ち悪い。

 このラバースーツのせいで反撃がし辛いのも余計に気持ち悪くさせる。

 

(どうしよう和輝!? このままじゃ私たちまで、あんな風に……ツインテールが触られちゃったら……!?)

 

「バカ、奴の狙いは身体だ身体。ラバーで覆われてねぇツインテールは対象外だろ!!」

 

 そっか、そう言えばそうね。

 和輝にそう言われて落ち着きを取り戻す。

 いやでも、だからって何とかしなくちゃ。

 そのためにはまずこの身体を覆うラバーをどうすれば……

 

『二人とも落ち着いてください。解析の結果、どうやらそのラバースーツは熱に弱いようです。エクストリームブレイブで燃やし尽くしてください』

 

 トゥアールママが状況打破の方法を提案してくれた。

 心の中で頷く私たち。

 幸い、ラバースーツはベルト型のテイルドライバーを覆ってはおらず、その下から張り付いている。

 これならいけると確信する私たちはエクストリームブレイブへと変身すべくテイルドライバーを操作しようとする。

 しかし、

 

「ッ……!?」

 

 動きが止まった。

 ラバーに動きを阻害されたとかではなく、まるで何かを思い出したかのような感覚。

 共に変身しているからこそ、何となくそれを理解できるけど、詳しい内容まではわからない。

 

(和輝!! どうしたの!?)

 

「ご、ごめん……!! ちょっと変な事思い出しちまって……!!」

 

 変な事? それってもしかして出撃前に見ていた夢の事だったり……?

 私がその事を不安がる中、和輝もといテイルバイオレットは動き出す。

 

「来い!! 勇気のツインテール……!!」

 

 テイルドライバー右側面の赤いスイッチを叩く。

 これにより、赤い勇気のツインテール、テイルアーマーRが召喚し、装着される。

 筈だった……

 

(ちょっと和輝!! どうしたの!?)

 

「テイルドライバーが……反応しねぇ……!?」

 

 これら全てが、ここから始まる悪夢の序章に過ぎなかったなどとは、この時の私たちは知る由もなかった。




原作でトゥアールや会長が全身タイツ姿になってたし別にいいよねの精神で書きました。
ちなみに無属性の呼び方がなぜ虚無(ヴォイド)ではなく(ゼロ)なのかと言うと、言葉にした時にそっちの方がカッコいいかなと思ったからだったりします。
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