俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第147話 うたかたの理想

 本来、テイルドライバー右側面のスイッチを押すと、勇気のツインテールことテイルアーマーRが召喚され、それを纏う事でブレイブチェイン及びエクストリームブレイブへと強化変身する事ができる。

 ブレイブチェインは総二さん(テイルレッド)のデータをもとに生み出させれた物であり、力が増すと同時に炎を操る事も可能となる。

 それさえあれば、今こうやって俺たちの動きを制限するアモンギルディのラバーも焼き溶かす事ができるだろう。そうなりゃ元々そう大した相手でもねぇアモンギルディの野郎をブッ倒すなんざ訳ねぇ。

 だって言うのに……

 

「テイルドライバーが……反応しねぇ……!?」

 

 何度も何度もスイッチを押すが、テイルアーマーが召喚されるどころか、うんともすんとも言っちゃくれない。

 焦る俺はより強く念じながらスイッチを少し乱暴に叩くがまるで効果がない。

 

(ちょっと、どうしたのよ!? どうして反応しないの!?)

 

「知るか!! 俺だってわかるかよ!!」

 

 一体化しているティアナが急かしながら訳を聞いてくるが、俺だって何故こうなっているかわからない。

 

「くっ……キ、キツい……!!」

 

「ふはは!! いいぞぉ!! その反応が見たかったぁ!!」

 

 向こうでは身体を緑のラバーで覆われたテイルブルームが、アモンギルディの攻撃の前に苦戦している。

 俺たちに目がいっていない今こそ、奴の術を解くチャンスだって言うのに、肝心のテイルドライバーが動かないんじゃこラバーは俺たちの身体をギチギチと締め上げ続けやがる。

 

(交代しましょ!! 私ならできるかも!!)

 

「ッ……!! すまねぇ……!!」

 

 このまま俺が出続けても埒があかない以上、ティアナに交代するのが得策だろう。

 俺としては悔しさと申し訳なさが残るが、テイルブルームを助けるためにもそんな場合じゃあねぇ。

 ティアナに身体の主導権を渡し、俺は心の中へと引っ込む。

 そして、テイルバイオレットの人格がティアナへと切り替わる。

 

「お願い来て!! 勇気のツインテール!!」

 

 そう想いを口に出しながらテイルバイオレットがスイッチを押す。

 しかし、結果は俺の時と何ら変わらない物だった。

 

「嘘……!! どうして……!!」

 

(クソッ!! ティアナでもダメなのかよ!!)

 

 何がいけないんだ!? 何がダメなんだ!?

 心の中へと引っ込んだ俺は自問自答しその答えを探る。

 そんな中、思い出したのは先ほど一瞬思い出したあるビジョン。

 まさかそんな筈は……!! 

 それはエレメリアン出現直前に見ていた悪夢の中での出来事だ。

 

"じゃあね和輝。私、あなたなんかといるよりこっちの方が幸せなの"

 

 ある日、ティアナが俺を捨て、別のどこか遠い場所へと行ってしまう。そんなある訳がない光景。

 俺が出撃前に見ていた悪夢を要約するとそうなる。

 ただの悪夢だと忘れようにもその悪夢は気味が悪いほどリアルだった。まるでこれから起こる事を予言する予知夢であり、正夢かのようだったんだ。

 

『総愛、和輝君!! お二人のシンクロ状態が限りなく低下していっています!! このままでは変身を維持できません!!』

 

 トゥアールさんからの通信が入り、この状態では変身解除してしまうとの警告があった。

 確かに、何となくだが力がいつもよりも入らねぇ感じがする。俺とティアナ、二人の意識や想いが一定以上シンクロする事で融合を維持できているエクストリームチャインの性質上、これは即ち二人の心が離れている事に他ならない。

 原因は恐らく、俺があんな悪夢に囚われているからだろう。

 俺はさっきの悪夢を忘れるべく集中する。

 がしかし、

 

(クソッ!! どうしてだよ!! あんなのただの夢だろうが!!)

 

 悪夢の光景は頭から離れられない。

 むしろ原因が俺にあり、俺の責任であると自覚した事で余計に忘れる事ができなくなっているような気がする。

 このままじゃ変身解除までそう長くない。

 

(ごめんティアナ……!! 俺のせいだ……!!)

 

「ちょっと何を言い出してるのよ!! しっかりしなさい!!)

 

 そう発破をかけてくれるティアナ。

 だけど、俺は何もできやしなかった。

 

 

 

 

 和輝には悪いけれど、今は無理なことを一々悔んだり悩んだりしている暇なんて全くない。早く、状況を打開するすべを見つけないとテイルブルームがやられてしまう。

 だったら、こうなった以上は私が何とかするしかない。

 そう心に誓った私は、意識を切り替えアモンギルディへと目を向ける。

 

「ふっふっふっ、どうやら勝利の女神は我に微笑んだようだなぁ!!」

 

「そ、そんなことはさせやしま……キ、ツイ……」

 

「我が愛するラバーはどんどんその締め付けを強くする!! 貴様らの体型がますます強調されているなぁ~!!」

 

 勝利宣言をするかのように高笑いを決めるアモンギルディ。

 救援に駆け付けようとするも、アモンギルディの言葉通り、首から下を覆うこのラバースーツはさらにギチギチと体を締め付けて身動きを鈍くさせる。

 

「ママ!! ほかに方法はないの!?」

 

『それがどうやら、そのラバースーツ自体の強度自体はテイルギアの出力を上回っているようです!! いくら総愛の馬鹿力をもってしても破れないのはそれが原因と思われますし、弱点を攻めるしか方法はありません!!』

 

 やっぱり、それしかないって事なのね。

 ラバースーツを溶かす強力な熱、それさえあれば……

 力任せの方法ではダメだとわかり、ならどうすればと悩む。

 ブレイブ、エモーショナル、いずれの強化形態も使えず、かと言ってそれ以外に打つ手がない。さらに言えば変身を維持できるのもあと残り僅か。

 思わぬアクシデントが重なったとはいえ、七つの性癖(セブンス・シン)ではないからって油断しすぎたのはある意味一番の誤算ね。

 

(ごめん……俺が……)

 

「大丈夫よ和輝、私が何とかするんだから!!」

 

 和輝に頼れない今、悩んでいても埒が明かない。

 一か八か真っ正面から向かっていく事を決意した私は、拳を握り締めてアモンギルディへと向かっていく。

 首から下の紫のラバースーツがギチギチと音を鳴らしてしめつけてくる。

 

「はああああああああっ!!」

 

「むッ、テイルバイオレット!!」

 

 不意を突かれて動けないアモンギルディ。

 私はそんなアモンギルディの顔めがけて拳を叩き込む。

 だけど、動きを制限するラバースーツの力は思っていた以上であり、いつも通りの拳速が出ない。

 結果、アモンギルディは容易く私の拳を受け止めた。

 

「くッ……!!」

 

「ふっ、少し肝を冷やしたが、やはり我が愛のラバーの前にはその程度よ。テイルバイオレット、破れたり!!」

 

 振り払ったアモンギルディはターゲットをこちらに切り替え攻撃を開始する。

 テイルブルームに見舞ったあのペタペタ触るような気持ちの悪い手がラバースーツで覆われた私の体へと伸びる。

 すんでの所で回避しようにもやっぱりというか、このラバースーツがそれを許してくれない。

 

「貧相な体つきよテイルバイオレット!!」

 

「触らないでよ気持ち悪い!!」

 

「強気なその態度もまたよし!! 興奮させてくれるではないか!!」

 

 なんなのよコイツ……!!

 さっきからただ触ってくるだけなのに滅茶苦茶気持ち悪い!!

 身体だからまだ少し我慢できるけど、これがもし(ツインテール)だったらどうにかなってるわよ!! 

 

「バイオレット!! ここは私が!!」

 

「来るかテイルブルーム!! やはり貴様のそのムチムチボディこそがラバースーツと好相性と決まっている! 堪能させてもらうぞ!!」

 

 嫌がる私を助けるかのように割り込むテイルブルームをアモンギルディは嬉々として襲いかかる。

 やっぱりコイツの好みは私なんかじゃなくて華先生のような大人の女性。

 一安心する反面、やっぱりどこかイラッとくる。

 だけど今はそんな状況じゃない。

 

「嫌っ!! やめなさい!!」

 

「やめぬ、やめぬぞ。グヘヘ、いいではないかテイルブルームよ!!」

 

『いけません!! このままでは色々と教育上に悪い絵面になってしまいます!! 総愛!! 今すぐ強引にでもやめさせなさい!!』

 

「無茶言わないでよ!!」

 

 トゥアールママがそんな事言っているけど、私だって好きで手を出せていない訳じゃない。

 アモンギルディに弄ばれるかのように攻撃を喰らい続けるテイルブルームに異変が起きる。

 

「させ……ゔッ……!!」

 

 顔を青ざめ明らかに何かヤバい様子をみせるテイルブルーム。

 まさかアモンギルディに何かやられたんじゃと心配するも束の間、その表情と雰囲気に見覚えがある事を思い出す。

 

「待て待て貴様……!! またなのか!?」

 

「ごめなさい、ちょっと締め付け強すぎて……オェッ……」

 

 戦いの際中だってのに、テイルブルームはちょっと待ってとばかりに攻撃を中断させては道端の排水溝へとかけこみ吐き始める。

 どうやらこのラバースーツの締め付けな強くなりすぎた事で二日酔いの気持ち悪さが復活してしまったみたい。

 変に律儀なアモンギルディはげんなりしつつも大人しく攻撃せず見守ってくれている。

 

「飲み過ぎはダメって悠香さんも言ってたけど、こういう事なんだ……」

 

 何事もほどほどが肝心だとよくわかる。

 お酒を飲むのは確かに楽しそうだけど、加減しないと良くないってわかる良い例ね。

 ツインテールの結び目同様、やり過ぎずにそれに見合った程々くらいがちょうど良い。

 

「ん? ちょっと待って……?」

 

『どうしました総愛?』

 

「ねぇママ? お酒を飲むと身体ってどうなるの?」

 

『そうですね、代表的なの物で言えば、アルコールが回ると血管が拡張して身体が熱くなったり、飲み過ぎると中枢神経が抑制されて性的興奮が鈍く——」

 

「それよママ!! その手があった!!」

 

 ママの言葉を聞いて閃いた。

 アモンギルディを撃破する秘策はアレしかない。

 

『こんな時にどうしました? まさか総愛も和輝君を酔わせようと——』

 

「何言ってるのよ!! テイルブルームをまた酔わせるに決まってるでしょ!!」

 

 テイルブルームの強化形態、テイルフルブルームは酒に酔う事で変身できる形態。ならつまり、もしかしたら酔った際の身体の熱でこのラバースーツを何とかする事も可能かもしれない。

 シャイターンギルディとの初変身の際、近くにいた私たちでもわかるくらいの熱気も放っていた事だし、可能性は十分にある。

 維持できる変身も残り僅か。かけるしかない。

 

「先生!! ちょっといい?」

 

「バ、バイオレット……? ちょっと今はそれどころじゃ……ゔッ……」

 

「いいから聞いて!! 吐きながらでもいいから!!」

 

 吐き続けるテイルブルームへと私は簡潔に要件を伝える。

 この状況を打破するにはテイルフルブルームへと強化変身するしかない事と私はもう残り数分も変身を維持できない事のその二つだ。

 

「ま、待ってちょうだい……!! これ以上飲んだら私……」

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!! 兎に角、開花の酒瓶(ブルムボトル)出して!!」

 

 急かす私は、開花の酒瓶(ブルムボトル)が出されると同時にふんだくりその蓋を開ける。

 

「お、おい……気持ち悪そうなのだし、今はそっとしてやる方が……」

 

「うっさいわね!! アンタのラバースーツ(コレ)のせいでこうなってるんでしょ!! 黙ってみてなさい!!」

 

「は、はい」

 

 心配するアモンギルディを黙らせた私は蓋の開いた開花の酒瓶(ブルムボトル)の口をテイルブルームの口へと押し付ける。

 なりふり構ってられない事もあってか、一見するとテイルバイオレットがテイルブルームへと強引にお酒を飲ませているようにしか見えないのはこの際考えない事にする。

 

『良い子のみんなは絶対に真似しちゃいけませんからね。トゥアールママとの約束ですよ』

 

 トゥアールママが誰かに語りかけている。

 一方、強引にではあるけど、お酒全てを飲み終えたテイルブルームは目とツインテールに輝きを取り戻す。

 そして、顔が赤くなると同時に誰もがわかるほどの熱を発しだした。

 

「この火照りが私を強くする。こんなゴムの服なんて……!! はァァァァァァッ……!!」

 

「何!? 我がラバーが!?」

 

 爆発する酒気と酔いによってもたらされる熱がテイルブルームを締め付けていたラバースーツを溶かしていく。

 アモンギルディが驚愕する中、遂には吹き飛ばし、そのまま強化変身。テイルブルームのギアが変化し、テイルフルブルームへと強化変身を完了させる。

 

「満開せし緑の戦士、テイルフルブルーム!! 二日酔い乗り越え今蘇ったわ!!」

 

「何だとぉ!?」

 

 狙いは成功した。もう先生を苦しめていたラバースーツは存在しない。これならば、後は必殺技で倒すだけ。

 タイムリミットはもう残り数十秒。

 テイルフルブルームへとそうアイコンタクトならぬツインテールコンタクトでそう伝えると、頷いたテイルフルブルームが必殺の構えを取る。

 

完全解放(ブレイクレリーズ)!!」

 

「ま、マズイ……!?」

 

 ようやく状況を理解し、逃走を図ろうと背を向けるアモンギルディだけど、もう遅いわ。

 グランアローを完全解放し終えたテイルフルブルームはその弧についた刃を振り下ろさんと急接近。

 背を向けた為に対応が遅れたアモンギルディへと必殺の一撃が放たれる。

 

「タイタイック!! フルクラッシャー!!」

 

「ぐおぉぉぉッ!?」

 

 背中を思い切り叩き切られたアモンギルディは全身にスパークを走らせながら倒れ込む。

 

「流石だテイルブルーム。背中のファスナーをなぞるかのような一撃……!! ラバースーツを弱点をつくとは実に天晴れであった……!!」

 

 そう言い残してアモンギルディは大爆発。

 私たちの身体を覆っていたラバースーツも同時に溶解し消えていく。

 その数秒後、私と和輝の融合と共に変身が解除された。

 変身解除前に撃破できた事でようやく一安心って所かな。

 もしラバースーツに締め付けられたまま変身解除されてたら一体どうなっていたか見当つかないけど、まずかったのは確かね。

 

「ふーっ、間一髪だったわね」

 

「あ、ああ……」

 

 私と違い、暗い表情のままの和輝。

 それから一日中、ただうわ言のように和輝はごめんと口にし続けていた。

 

 

 

 

 アモンギルディとの戦いはテイルブルームの活躍もあり、テイルバイオレットたちの勝利に終わった。

 だが、ティアナたちはおろかトゥアールたちですらも気が付かなかった事があった。

 それは戦いを遠くから見つめていた謎のエレメリアンの事である。

 

「計画はベリースムーズリー。面白くなってきたネ~」

 

 双頭の鷲の鳥人姿のエレメリアン、寝取られ属性のマモンギルディ。

 彼は強欲の性癖を司る七つの性癖(セブンス・シン)の一角だ。

 彼は他者の愛を奪わないと気が済まない性を背負っている。

 二つの頭がそれぞれ薄っすらと笑みを浮かべている。

 

「そろそろ、ネクストプランにトランジションするタイミングですネ~」

 

 マモンギルディが見つめるのは足を引っ張った事を悔む和輝であった。

 悔しさと申し訳なさで溢れている和輝をマモンギルディはせせら笑うかのように見つめている。

 

「ユーにはこれからもっとアメイジングな光景を見せてやりマ~ス。強欲の性癖の名に懸けてネ」

 

 そう言いながら視線を隣で気づかっているティアナへと移す。

 マモンギルディの口から涎が垂れた。

 

「君が堕ちるのを楽しみにしてマ~ス」

 

 その言葉が表すことは果たして何なのか?

 一つ言えるのは、彼が寝取られ属性のエレメリアンである以上ろくな事ではないという事だ。

 多くの同胞からも唾棄される属性の持ち主であるマモンギルディ。

 その隠された本性は誰も知らないのである。

 

「随分と楽しそうじゃあないか」

 

 一人気持ち悪くニヤつくマモンギルディの背に声がかけられる。

 振り向くとそこには、黒き悪魔が降り立っていた。

 

「オ~、ベリアルギルディで~すネ」

 

「相変わらずオレ様をムカつかせる奴だ。碌なことを考えていないと見える」

 

「オ~、それはベリーソーリー。ゴメンね~」

 

 なおも人を食ったような態度をとるマモンギルディにベリアルギルディは口ではそういった態度を示しているが、実際の所は意外にも心の底から怒ってはいない。

 むしろその逆だ。

 ベリアルギルディはマモンギルディに対して実に上機嫌である。

 

「まぁ貴様の事だ。今回も最高のショーとやらを見せてくれるのだろう?」

 

「イエ~ス、ミーに任せてほしいネ~」

 

 ベリアルギルディがここまでマモンギルディに好意的なのは性格上馬が合っているからであろう。

 無論、実際はそれぞれ互いに利用しあっているだけの関係ではあるのだが。

 

「さて、そろそろ第二幕(アクト2)へと移行しマース。手筈通りに頼みマースよ」

 

「わかっている。こそこそ動いていたあの馬鹿どももそろそろ目障りだと思っていたところだ。既に手は打ってある。今頃、出撃口が破壊されていて驚いているところだろうよ」

 

 こそこそ動いていた馬鹿どもとはズバリ、昨日と今日それぞれ出撃したエレメリアンたちの事である。

 彼らはベリアルギルディにばれぬように隠れて集まり出撃していたのだが、それら全てはベリアルギルディたちの計画の一部に過ぎなかった。

 用が済んだ以上、これ以上出撃させて邪魔させる訳にいかないので、基地内の出撃口はベリアルギルディの手によって既に破壊された。

 即ち、当分の間は基地からエレメリアンがやってくることはベリアルギルディの手を借りぬ以外あり得ない。

 

「センキューで~す。これで思う存分エンジョイできマ~ス」

 

「相変わらず悪趣味な奴だ。ま、頼もしくあるとは認めてやってもいいがな」

 

「どうもどうもデ~ス」

 

 うやうやしく頭を下げてみせるマモンギルディであるが、その本心は至って無礼のままである。

 尤も、先述の通りベリアルギルディは怒ってなどいない。

 

「おっと、それよりももう一人の邪魔者(オブスタクル)はどうデースか?」

 

 ベリアルギルディが去ろうとした際、マモンギルディがそう声をかける。

 邪魔者とはつまり、アナザーテイルレッドの事である。

 

「あの贋作は当分の間動けないだろうよ。所詮、奴は人間。上位者たる我らと比べれば、思考がまだまだ軟弱な小物にすぎん」

 

「それもそうデース。でも、奴が勧誘(ソリシテイション)をオーケーしたらどうしマースか? あのガールも用済みですカ~?」

 

 マモンギルディが抱いた疑問を受け、ベリアルギルディは一層あくどい顔つきへと変わる。

 

「なに、所詮奴は紛い物の贋作。実験動物程度の利用価値しかないに過ぎん。オレ様の狙いは今でもあの少女ただ一人だ」

 

 ベリアルギルディの目はティアナの姿を捉え続けていた。

 

 

 

 

 自室のベッドで一人、俺は横になる。

 アモンギルディとの戦いから何日か経った。あの日以降も毎日エレメリアンは出現しては襲い掛かってくる。

 だっていうのに俺って奴は……

 暗い気持ちのまま、トゥアルフォンの画面を開き、ネットニュースを見る。

 

『テイルブルーム大活躍!! 一方、テイルバイオレットは!?』

 

 そこに映っていた見出しはそれであった。

 内容もズバリ、テイルバイオレットではなくテイルブルームだけが単独でエレメリアンを倒したという内容。

 以前、テイルブルームが復活した直後も似たような事が起こって世間やマスコミに騒がれたりしたが、今回はあの時とは全然違う。

 というのも、今回の場合はそもそも俺とティアナは出撃すらせずに基地で巧らと残り、トゥアールさんがアシストしているのをただ見ているだけになっているんだ。

 なぜ、出撃すらしないのか?

 その答えは簡単。

 実は、今の俺は変身を維持することが出来なくなっていた。

 

「……」

 

 アモンギルディとの戦いの際、俺はとある原因からティアナと心を合わせる事が難しくなってしまった。

 それ以来、日に日に力は弱くなって変身を維持できる時間も短くなり、出撃しても華先生の足を引っ張り続けるばかり。

 そして遂には変身を行う事そのものが出来なくなってしまったんだ。

 

「クソっ……!!」

 

 原因はわかっている。

 それはひとえに俺の心が弱いからだ。

 俺とティアナ、二人で変身するテイルバイオレットは俺が単独で変身していた時からずっと変身を行う事と維持するためにはティアナと心をある程度合わせる必要がある。

 だから、どちらかの心が乱れていては力も出せないし維持もできないのは当然だ。

 今回の場合はティアナではなく、俺だけが心を乱している。

 俺は未だにあの悪夢を引きずっている。

 

"じゃあね和輝。私、あなたなんかといるよりこっちの方が幸せなの"

 

「あれは夢だ!! ただの夢なんだよ!!」

 

 一人そう叫ぶが心の奥に残るこの恐怖心だけは素直だった。

 俺は怖いんだ。

 ティアナが俺を捨て、別の所に行ってしまうのが……

 俺以外の奴だけに笑顔を見せ、俺の事を軽蔑するかのように見るあの光景が……

 あの時味わった悪夢だけはどうやっても拭い去ることが出来ない。

 

「だけど全部、俺のせいなんだよな……」

 

 そもそもあんな悪夢を見たのも、そもそもあんな悪夢を真に受けるのも、全部が全部、俺がヘタレすぎるのが原因だとわかっている。

 俺がもし、ティアナともっと深い関係にでもなれていたらこんな事にはならなかっただろうと断言できる。これも全部、ティアナとの関係性を現状に甘んじた俺の責任だ。あんな悪夢がトラウマになるのも、ティアナがいなくなる恐怖心からなる不安がそもそもの発端だろう。

 

「ごめん……俺、やっぱダメみてぇだ……」

 

 口では乱暴に言ってはいるが、その実、俺は臆病で卑屈な奴なんだ。

 いつもこんな態度をとるのも一種の自衛的行動なんじゃねぇのかって事も何となくわかる。

 でも、どうしようもない。

 

「なぁ、俺はどうすればいいんだ?」

 

 待機状態であるテイルブレスを見つめて問いかけるがうんともすんとも言っちゃくれない。

 この際、誰でもいいから話を聞いてほしい。

 でも、自分から言い出すような事はできそうにもない。

 察したうえで俺の悩みをわかってほしい。

 自分で言っててなんだが、面倒奴だな俺って男はよ……

 

 

 

「そう、そういう事だったのね……」

 

 突然、外からそう声が聞こえてきた。

 びっくりした俺は体を起こし部屋の入口へと視線を移す。

 すると、外からドアが開き、ツインテールをなびかせながらティアナが現れた。

 

「テ、ティアナ……!! お、お前……!!」

 

「やっぱり和輝、怖かったんだ」

 

「そ、それは……!!」

 

 焦る俺に対して、ティアナは動揺一つせず落ち着いている様子だ。

 さっきの発言を含めてつまり、全部、聞かれていたって事だよな。

 何つうか滅茶苦茶恥ずかしい。

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

「でも……俺、ヘタレで役立たずで……お前がいないと何もできてねぇ……ただの馬鹿で……」

 

「もう、大丈夫だって言ってるでしょ」

 

 俺はいつの間にか涙を流していた。

 そんな俺に対してティアナは優しくそう微笑むと、俺の隣へと座り、肩を寄せてくる。

 

「私はどこにも行きはしないわよ。これからもずっと、和輝と一緒。ずーっと一緒なんだから」

 

「お前……」

 

 その言葉が何よりほしかったのだと俺は悟った。

 ティアナは俺を捨てやしない。

 俺のもとから離れるなんて絶対にありはしないんだって断言できる。

 なんせ、俺たちは二人で一つ、これかもずっとツインテールな関係なんだからな。

 俺の心に巣食っていた不安はもういない。

 

「私ね、和輝の事がこの世で一番好き。和輝のためならこんなツインテールなんか捨ててしまってもいい。あなたさえいれば私は幸せだから」

 

「お、おう」

 

 一瞬、その言葉に違和感を覚えつつも俺はティアナを抱きしめた。

 服を着ていても、触れ合うこの温もりが俺の心を立ち直らさせる。

 お前さえいれば俺だって何もいらない。

 お前のためなら何でもするし、お前だけを守るために俺はこれからも戦い続けてやる。

 俺はもう、大丈夫だ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――以上が、現在まで和輝君が見ていた夢の内容となります」

 

 モニターに映る映像を見終えたティアナたちへ、トゥアールがそう静かに語る。

 ティアナたちが視線を移した先、特殊なベッドの上で眠っているのは他ならぬ和輝自身であった。




マモンギルディの喋る英語は翻訳した単語をそのままにする事でエセ外国人っぽさを表現してるつもりです。
小説って、漫画や実写以上に喋り方などでキャラの差別化をしないといけないので、その部分で苦戦する事が多かったりしてプロの方々って凄いんだなと実感できます。
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