俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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現在放送中の仮面ライダーゼッツもちょうど現在の話も夢の中が舞台なのでサブタイをパロディしました。


第151話 寝取る

 俺とティアナがこの夢世界に囚われてもう随分と経ったような気がする。

 一週間? 二週間? それとも一か月?

 正確な経過日数はわからないし覚えていない。今あげたのだって何となくというか、体感でそうなんじゃねぇのと感じたからに過ぎない。

 俺としては一か月は流石に経ちすぎだろと思ってしまう部分もある故、少なく見積もって十日を少し過ぎて二週間目に差し掛かっているか、もしくは過ぎたくらいではと予想しておこう。

 果たして現実世界ではどうなっているのか。

 もし現実でも同じ時間が流れているのなら問題も問題、大問題だ。

 人生に一度きりの青春を夢の中で過ごしきるだなんてまっぴらごめんだぜ。

 願わくば、この夢世界と現実世界では時間の流れる速度が違っていて欲しい。

 

「ねー和輝?」

 

「ん、ごめん。どうした?」

 

 ティアナに何かを尋ねられ、俺は考え事を終えて意識も元に戻す。

 今は丁度この夢世界の朝が来たタイミングであり、俺とティアナはいつも通り二人だけの朝のひと時って奴の真っ最中だ。

 先の通り、この生活ももう結構経っている。

 だからもう慣れたもんだぜ。

 それよりも何の用だ?

 

「いや、別に……。それより和輝はどうしたの?」

 

「ん? いや、ここに囚われてどれだけ経ったのかなってさ」

 

「確かにそうね……」

 

 一瞬だけ顔を暗くするもティアナは明るさを取り戻し話題を転換。

 俺がさっきまで考えていたこの夢世界でどれだけ時が経ったのかについて共に頭を悩ませる。

 

「もうかなり経ったのよね……」

 

「二週間くらいか?」

 

「目覚めた時、私たちおばあさんやおじいさんになっていたらどうしよう……」

 

「それは……やだな……」

 

 ティアナの例えは少し飛躍しすぎではあるが、同じようなことは起きてほしくない。

 何度も言うが、せっかくの高校時代の青春をこんな夢世界で過ごすなんて最悪だ。

 

「でも、和輝と一緒なら……」

 

「馬鹿、俺はごめんだぜ。いくらお前がいても、二人きりだけだなんて参っちまうぜ」

 

 恥ずかしさからそう俺は答えた。

 少し不満げになるティアナ。

 冗談でも言っていい物と悪いものがある……と俺は思う……

 

「ママたちはどうしてるんだろ」

 

「俺たちの救出に手間取っている……って考えたくはないな」

 

 俺たちの目的はこの世界からの自力脱出もその一つではあるのだが、それとはもう一つ、現実世界から俺たちの救出に動いているであろうトゥアールさんたちを信じて無事で待つというのもある。

 だが、ここに囚われて早や数日間、一向に助けが来る気配がない。

 

「これだけ長いと、私たち忘れられている……はないわよね」

 

 あまりにも助けが来ないからか、ティアナはそう言葉を漏らした。

 俺は慌てて否定する。

 

「馬鹿おめぇ!! そんな訳ねぇだろ!! 絶対に!!」

 

「わかってるわよ……!!」

 

 そう答えるティアナも同じ考えか。

 だけど俺としては何か一言でも言いたくなってしまう。

 

「でも、お前な……!!」

 

「だから、わかってるって!! 」

 

 俺自身も少し不安を感じていたせいかつい声を荒げてしまい、ティアナ自身もそんな筈ないと思っているからか、語気を強めて言い返してきた。

 このやり取りから俺もティアナもかなり疲弊しているのだと感じ取る。

 数日前までは俺と一緒に二人でこんな世界すぐに脱出してみせると自信満々だったってのにな……

 なんだか最近、前よりも声を荒げる機会が増えてる気がする。

 

「兎に角、俺たちはトゥアールさんたちの救助を待つ。敵の狙いは俺たちの仲そのものだ。喧嘩なんて思うつぼだぜ」

 

「わ、わかってる……。ごめん和輝」

 

「お、おう。俺もごめん……」

 

 俺たちはそれぞれ互いに頭を下げる。

 敵であるマモンギルディは俺たちの仲を引き裂き、ティアナを俺から寝取るという事が目的だ。

 今この状況においてさっきのような些細な喧嘩ですら危険すぎる。

 

「そうだティアナ。今日は昼間休んで夜に探索してみねぇか? 俺たちさ、今日までずっと昼間にしか脱出の手かがりを探していなかったしよ」

 

 ちょっとした気分転換にどうだろうとそう提案してみる。

 するとティアナは申し訳なさそうな顔を見せる。

 

「ごめん和輝。私、夜はあまり探索するべきじゃないと思うの。ほ、ほら? 夜更かしは健康にもツインテールにも良くないしさ」

 

 そう断られてしまった。

 まぁでもしかし、いくら夢の中と言えどティアナの言い分はもっともだ。

 

「そうだな。そりゃそうだ」

 

 結果、夜の探索は中止。夜はいつも通り体力回復に努める事にしよう。

 俺はそう頷きトーストを口へ運ぶ。

 

「マモンギルディの野郎……!! 現実に戻ったら覚悟しやがれってんだ。てめぇみたいなクソ野郎なんかにブッ飛ばしてやる」

 

 元凶へと怒りを募らせる俺は牛乳を飲み干してはそう宣言。

 ティアナはツインテールの穂先をいじりながらどこか上の空。

 一瞬、ティアナの表情に違和感を感じたような気がしたが、恐らく気のせいだろう。

 変に指摘してまた喧嘩するほうが危ねぇしな。

 そう心にしまい込んだ俺は朝食を終えるのだった。

 

 

 

 

「まだか……奴にしては中々に時間がかかっている。まだ堕とせんのか」

 

 夢世界とは違うここは現実世界。

 アルティデビル基地内にある自室である研究室にてベリアルギルディは研究物の調整の傍ら、時がどれだけ経ったのかを確認しては少しばかりの苛立ちを見せている。

 勿論、その原因はマモンギルディの作戦についてだ。

 作戦開始から現実世界ではもうすぐで24時間。

 これは予想していたよりもかなり遅れていることを示していた。

 

「まだ一日……向こうでは約二週間程度か? 奴め、予定では向こうの時間で数日程度だったはずだろう。何をそう時間をかけるつもりだ」

 

 マモンギルディのテリトリーである夢の中で流れる時間は現実とは異なる。

 だから現実ではそう時間が経たずに目的が達せられる。

 下準備にこそ時間はかかれど、いざ実行すれば半日もたたずに本人が言う最高のショーとやらをドキュメンタリービデオとして送られてくる。

 ……はずなのに今回はそうではない。

 これは何かアクシデントが起きたとみて間違いない。

 

「何を遊んでいる……いや、まさか手こずっているのか?」

 

 マモンギルディは数ある七つの性癖の中でもベリアルギルディからかなり好かれているエレメリアンである。

 馬が合うのもあるが、それ以上に実行に移してからの仕事が早いのも理由だ。

 それ故か、柄にもなく少し心配してみせるベリアルギルディ。

 直後、彼の持つ連絡端末に一件のメールが届く。

 

『ハーイ、ベリアルギルディ』

 

 そこに入っていたのは一本の動画。

 タイトルは作戦の経過報告について。

 やっと来たかとニヤつくベリアルギルディはファイルを開き再生する。

 

『まずはソーリー。リポートするのが遅くなりまーシタ』

 

「フン、そんなことはどうでもいい。さっさと経過報告とやらを見せろ」

 

 動画相手に一人でそうやり取りしているベリアルギルディ。

 はたから見ればちょっと痛い奴のように見えるが、他に誰もいないのでセーフだ。

 そんなことよりもベリアルギルディは早く目当ての少女を手に入れることが出来たのかを知りたい様子である。

 

『まずはこれをルックしてくだサーイ』

 

 ベリアルギルディの要望に応えるように画面が切り替わる。

 そこに映るのは夢世界の時間においての数日前、マモンギルディとティアナが初めて二人きりで対峙した時の様子だ。

 チャンスを見計らい現れたマモンギルディは、その能力を使って夢世界におけるティアナを改変しては手早く寝取ってしまおうと動くがしかし、和輝の渡したプレゼントであるリボンがそれを阻み、ティアナは自身のツインテールへの愛と和輝との絆をもって退ける。

 それはベリアルギルディにとっても驚くべき光景であった。

 

「成程、流石は究極にも匹敵しうるツインテール。マモンギルディの力をもってしても苦戦するわけだ」

 

 夢の中だけという制約こそあれど、マモンギルディはその中では全能とも言える事を知っているが故の驚きだ。

 ならばどうしたものかと悩みそうになる中、再び画面は切り替わり、マモンギルディが姿を見せる。

 

『以上、どうやらあのガール。相当のパワーを持っていマース』

 

「のようだな」

 

『ですが安心してくだサーイ。プランはまだありマース』

 

「ほう?」

 

 またもや画面は切り替わる。

 今度流れるのは先程の一件からツインテールをきっかけに少しずつ心を通わせ始める二人の様子だ。いつの間にか、先程とはまるで違う雰囲気の中でティアナとマモンギルディは特に争うこともなく二人きりで談笑している。

 

『所詮、ラブなどこの程度デース。いくら愛し合おうがミーの能力の前にはパワーレスも同然ネ』

 

 好きを力とする心の力である属性力。それはある種の生命体でなら本能的に育む友情や恋愛などの感情エネルギーよりも力を発揮する。

 つまり、和輝とティアナの絆がどれだけ深かろうが穴はある。

 一見すると断ち切る事など不可能とも思しき強固な絆もきっかけを辿ってそこを狙えば確実に攻略できる。

 和輝とティアナを結ぶ物、それこそツインテールだ。

 

「成程、目に目を、ツインテールにはツインテールを、というわけか」

 

 マモンギルディはあの時、力づくでやっても無意味である事を見抜いた。

 だから、ベリアルギルディの言う通りツインテールにはツインテール、つまりマモンギルディはツインテールをきっかけとしてティアナと交流し、少しずつ思考を改変してしまうというやり方にシフトしている。

 そうすれば確実に心を奪う事が出来る。

 時間がかかるのもやむなしであろう。

 

『そろそろプランはセカンドフェーズに移行しマース。ファーストプランより少し遅れてますが楽しみに待っていてくだサーイ』

 

 一通りの経過を見せた後、映像上のマモンギルディはそう言い残し動画は終了した。

 それを見終えたベリアルギルディは一人、邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 いつも通り、何一つの進展のない一日が終わり、夜がやってくる。

 私はいつも通り洗面所にてその時が来るのを待ち、和輝は早々に寝室へと向かう。

 マモンギルディによってそのように設定が改変されているのかはわからないけれど、私としては都合がよかった。

 ここからの夜は和輝には秘密にしておかないといけない。

 そんな気がする。

 

「今宵もいいツインテールですね」

 

 刹那、背後から声が聞こえては整えていたツインテールが撫でられる。

 

「ひゃ、あんっ……!!」

 

 甘い声が漏れる。

 ツインテールを撫でられただけなのに顔が熱くなり、頭がクラクラしてくる。

 私は振り向き、そこに立っていたマモンギルディと目を合わせた。

 

「マモンギルディ……」

 

「では始めましょうか」

 

 それを合図に私たちは洗面所からリビングへ。

 これから始まるのはツインテールを守る者と奪う者といった敵対する者同士ではなく、ツインテールを愛する者同士である私たち二人きりの交流会。

 和輝には秘密のこの場では毎夜、一時休戦と称して私たちはツインテールなどについて様々な事を談じている。

 最初こそ敵であるエレメリアンと話すだなんて何か裏でもあるんじゃないかと思っていたけれど、今となってはあまりそうは思わない。

 むしろ、同じツインテールを愛する者同士が夢の中であるとはいえこうやって分かり合える事に喜びすらも感じている。

 

「おや? 今日は少し結び目が高いですね」

 

 互いにソファに腰下した時、マモンギルディがツインテールの変化に気が付いた。

 それを指摘された事もあり私の声が弾む。

 

「あ、気づいた?」

 

「勿論でございますとも。いつもよりも快活で可愛らしい。似合っていますよ」

 

「そ、そう?」

 

 普段ならエレメリアン相手にそう言われても何も嬉しくないっていうのに、不思議と心がドキドキしてくる。

 もしかしたら、ツインテールの変化に初めて気づいてくれた相手だからかな?

 だって和輝ったら、私が結び目の位置や結び方をちょっと変えてもいつも同じ反応だし……

 大きくアレンジをいれても前の方がいいんじゃねぇかなんて言ってくるし……

 

「おや? もしかしてですが、君の大事な彼はこんな事にも気が付かなかったのですかな?」

 

 私の心を見透かしたかのようにマモンギルディがそう囁く。

 いやま、確かに不満はあったけれどこればかりは少し仕方ない気もする……

 和輝はお父さんほどツインテールの変化に敏感じゃないんだし……

 

「べ、別にいいの……。だって細かさ違いなんだし……」

 

「いやいや、どこが細かな違いですか。髪型というのは女の子にとって命も同じ、最強たるツインテールとなれば少しの変化でも大きく影響します。それに気づかないなど半人前も半人前ですよ」

 

 そう力説されるとそうなのかなと思えてくる。

 和輝って私のツインテールの事はどう見ているのかな?

 毎日少しずつ変えたりしているけれど、その全部を覚えていてくれているのかな?

 お父さんならお母さんのツインテールは細かな違い含めて全部覚えている筈だけれど、和輝は……

 

「テイルバイオレットとはその程度ですか。あなたという最高クラスのツインテールの持ち主とパートナーを名乗っていた割には拍子抜けですね」

 

「ちょ、ちょっと!! いくら何でもそれは――」

 

 それは違うと反論しようとした時、マモンギルディは指をパチンと鳴らす。

 あれ? 私は和輝のどういう部分を褒めようとしたんだっけ……?

 頭に靄がかかる……というより元々そんな事なかったような気がしてくる。

 

「あなたたちの思い出というのは随分と薄っぺらいのですね」

 

 またもやマモンギルディが指を鳴らす。

 すると今度は和輝と過ごしてきた今までの思い出がおぼろげになっていく。

 

「あれ? 私……」

 

「一つ聞きます。あなたは彼にツインテールを結ばれたことがありますか?」

 

「え?」

 

 困惑する中、唐突にマモンギルディがそう問いかけてきた。

 私はそれを聞き、必死なって今までの出来事を思い出すけど、先程同様に全然出てこない。

 似たようなケースで言えば、確か私と和輝の身体が入れ替わってしまった時に和輝が私の身体でツインテールを結んではいたけど、私自身が結ばれた訳じゃない。

 あれ、なんだか恥ずかしくなってきた。

 まだ私、和輝にツインテールを結んでもらってない……

 

「そうだ、いい機会です。試しに私が結んで差し上げましょう」

 

 悲観する私にマモンギルディがそう提案してくる。

 一瞬、確かにマモンギルディなら私も絶賛するくらいの見事なツインテールを結んでくれるんじゃないかと思ってしまう。

 だけど、それだけは絶対にいけない。

 心が、ツインテールがそう言っている。

 

「流石にそれは……」

 

「ならばこうしましょう。私が結んだツインテール、それを彼が指摘できれば私の負け。この夢世界からあなたたちを解放してあげましょう」

 

 迷う私へとマモンギルディは間髪いれずそう提案。

 私は思わず動きを止める。

 

「いいですか? そもそもあなたたちと私は敵同士、こうやって夜に語らいでいるのもあくまでただの一時休戦にすぎません」

 

「それは……うん」

 

「だから私はここで一つ直接対決に機会を与えようとしているのです。あなただってわかっているでしょう? このままこの世界から脱出しようにも出来ず、救出を待つのも無駄だとはね」

 

 この夢世界に囚われてからこれまで何日も過ぎて未だ成果がないのは事実。

 最初のころはあんなにも自信満々に息巻いていたのにすっかり諦めかけている自分に気が付いた。

 だから私、今朝あんな事を言っちゃったのね……

 マモンギルディが優しい声色でそう言ってくるのを聞いて私は遂に決心を固める。

 

「わかったわ。いくらあんたがどんなツインテールを結ぼうとも、和輝は絶対に気づいてくれる。私は和輝を信じているんだから!!」

 

 そう啖呵を切った後、髪を結ぶリボンを解いてはツインテールを解く。

 和輝から貰ったリボンを握り締めながら背を向ける。

 

「わかりました。では結ばせてもらいましょう」

 

 そう言うや否や、マモンギルディはどこからともなく黒のリボンを取り出しては私の髪を優しくすくう。

 そして、息をする間もなくツインテールを結んでいく。

 

「はい、出来上がり」

 

 マモンギルディに声をかけられハッとする。

 気が付いたら私はリビングではなく洗面所に立っており、目の前には鏡が。

 そこに映るマモンギルディの結んだツインテールは私が今まで生きて見てきた中でも上位に位置する物だった。

 はっきり言ってどう表現していいかわからない。左右のバランス、全体との調和、それらだけではなくツインテールを構成するその全てが完璧の芸術作品。一体どれだけの年月を生きて結んでいけばこの領域にたどり着けるのだろうかだなんて思えてくる。

 このツインテール……本当に私の髪で結んだとでも言うの?

 

「こ、これ……」

 

「お気に召しましたかな?」

 

 そう尋ねるマモンギルディはそのままツインテールを撫でる。

 すると今度は今までよりもハッキリとした高い甘い声がでた。

 

(和輝……)

 

 ふとずっと握り締めていたリボンへと目を移す。

 和輝から貰ったリボン。

 付き合い始めて初のプレゼント。

 和輝を表すような鮮やかな青紫が輝くそれは、私を守り、髪が解けないようにしてくれている絆の象徴。

 だというのに、いつの間にか私にはその色がくすんで見えてくる。

 

「フフ、チャンスデース」

 

 マモンギルディが指を鳴らす。

 あれ? どうして私はこんな安いリボンなんて握っていたんだろう?

 いつしか私の興味は結んでもらったこのツインテールへと向いていた。

 

 

 

 

 もう何度目かわからない朝がやってくる。

 夢の中で眠るという感覚にも慣れた俺は目覚めるとそのままベッドから体を起こして背筋を伸ばす。

 不思議なことに今日はいつもよりかなり目覚めが良く、本来ならティアナに起こしてもらっている筈だったのに自力で起床することが出来た。

 何か良いことでもあるんじゃないかと思わずにはいられない。

 もしかしたらこの夢世界から脱出するための手掛かりが掴めるんじゃないのかと少し期待してしまう。

 

「いやー気持ちが良い……!! ってティアナお前……」

 

 気持ちよく体を伸ばし終えた俺がふと隣で眠るティアナに目をやると、ティアナの奴がツインテールを結んだまま眠っていやがることに気がついた。

 

「ったく、昨日は俺の提案断っておいてコレかよ」

 

 昨日、ティアナは夜はしっかり休まないとツインテールに良くないとか何とか言っていたってのによ……

 いくらここが夢の中で現実の肉体に影響はしないとはいえ、ツインテールを結んだまま寝るのが良くないのは俺でもわかる。

 いやま、これまで何度かそのままにして眠るケースはあったと言えばあったけどよ、それらは全部非常時だった訳で今とはまるで違う。

 苛立ちって程じゃねえが、これには少しうんざりしちまうぜ。

 

「おい、ティアナ。起きろよ」

 

「……うん? 和輝……?」

 

 寝ぼけ眼を擦りつつも起床するティアナ。

 ボケてやがるのかツインテールにしたまま寝てる事にまるて気づいていない様子だ。

 こればっかしはちゃんと指摘してやった方がいいだろう。

 そう判断した。

 

「おい、ツインテール、結んだままだぞ」

 

「あ、うん。そーなの」

 

 ティアナの奴、俺が指摘してやったってのにまるでそれが当たり前かのようにそう返事をしやがった。

 どことなく変な雰囲気を感じるが、それ以上に呆れの気持ちが勝つ。

 

「お前な……ツインテールの乱れは心の乱れとか何とか言ってなかったかぁ? 俺が言うのも何だけどよ、弛みすぎだぜ?」

 

 そう心を込めて注意をする。

 がしかし、ティアナはそんな事などまるで聞いてはいないのか、手鏡を手に取ってはツインテールを映し、もう片方の手でツインテールを撫でている。

 

「お前さぁ……」

 

 いくらお前がツインテールを好んでいるからってその反応はないだろ。

 今のティアナの反応を見るに、まるでこれじゃ初めてツインテールを結んでもらった奴みたいじゃねぇか。

 ツインテールなんか今までずっと結んできただろうってのによ。

 

「ねぇ和輝!!」

 

 それは当然の事だった。

 俺が呆れ果てる中、ティアナは急に俺へと振り向くとツインテールの双房をそれぞれ片手で摘んでは俺へと見せてくる。

 余りにも唐突すぎて俺は何が何だかわからない。

 

「は、はい?」

 

「このツインテール、どう思う?」

 

「は?」

 

 困惑する俺を無視してはティアナはそう尋ねてくる。

 俺としては何一つ変わらないツインテール……

 としか言いようがない。

 いやま、結び方とか位置とか多少は変えていやがるのかもしれねぇが、生憎だが俺は総二さん程ツインテールに敏感じゃねぇからかいまいちピンとこない。

 

「いつも通り、綺麗なツインテールだ……」

 

 困惑しつつもありのままの感想を述べる。

 するとティアナは俺から顔を背けては小声で漏らす。

 

「そう……なんだ……」

 

 声が小さく、一瞬だった事もあってか聞き取れない。

 でも、何となくティアナが落ち込んでいる事はわかる。

 俺、もしかして何か不味い事でもしたのか?

 

「な、なぁティアナ……、もしよ、俺が悪かったのなら……」

 

「ううん。いいの」

 

 俺は慌てて謝ろうとするもティアナはバッサリと断った、

 俺としては正直納得が出来ない。

 なおを食い下がろうとするも、ティアナは突然、自身のツインテールを解いては髪を下ろす。

 

「お、おい!! お前……!!」

 

 余りにも突然起きた予想外の行動。

 あのティアナがいきなりツインテールを解くだと!?

 訳がわからずに混乱する中、ティアナはさっきまで結んでいた黒のリボンをそれぞれ俺へと渡してくる。

 

「ねぇ和輝、ツインテール結んでちょうだい」

 

 ティアナの目は今までとは打って変わって本気の目だった。

 これには流石の俺も「おう」と返事をするしか出来ない。

 あれ? そういやティアナが使っていたリボンって俺があげた青紫の奴だったよな?

 そんな疑問を覚えながらも俺はティアナの後ろをついていくように洗面所へとやってくる。

 

「じゃ、じゃあやるぜ……」

 

 洗面台の前、鏡を前にし椅子に腰掛けるティアナとその背後でリボン両手にゴクリと喉を鳴らす俺。

 今に至るまで何度もツインテールを結んできた結果、ある程度のツインテールなら結べるとは思ってはいるが、ティアナで試すとは思ってもみなかった。

 いや、落ち着け俺。

 確か、ティアナと身体が入れ替わっちまった時にアイツの身体で俺はもう既にツインテールを結んでいるじゃねぇか。

 顔だけでなく体全身が熱くなる中、俺はティアナの髪を掬い、リボンを取る。

 

「痛っ……」

 

「す、すまん……ちと力入りすぎた」

 

 髪を纏める際に引っ張りすぎたのかティアナが痛いと漏らす。

 俺は直ぐに謝罪しつつも、ツインテールを結ぶべく集中する。

 しかし、これが中々にうまくいかない。

 

「あっ……!? ちょ……!?」

 

 手が滑りリボンを落とす。

 自分自身に何やってんだよと怒りたくなるくらい不器用だ。

 普段ならこうはならない筈なのに、やはりティアナを相手にするとなるとどうしても緊張してしまう。

 

「よし、あともうちょい……うし!! 完成だ!!」

 

 苦戦の果て、俺は何とかツインテールを結び終えた。

 緊張こそして何どかミスこそしちまったが、個人的には悪くはない出来だろう。

 以前ティアナに言われた通り、誰かの真似ではなく心の中で思い描くツインテールを自分なりに形にしたこのツインテール。

 多少バランスは悪いかもしれねぇけど、ティアナなら少しダメ出しをいれつつも喜んでくれる。

 そう思った。

 しかし……

 

「そっか……和輝の結ぶツインテールってこんなのなんだ……」

 

 失望したかのようにそう口にするティアナ。

 予想だにしていない反応を前に俺は理解が追いつかない。

 ティアナは立ち上がるや否や、俺の結んだツインテールを解いてその場からいなくなる。

 玄関のドアがガチャリと開き、どこかへと行ってしまう。

 

「おい!! ティアナ!!」

 

 慌てて追いかけるも、ティアナは何処にもいない。

 俺の結んだツインテールが酷すぎてどっかに行っちまったのか?

 そんな事ある筈がねぇと否定するかのように夢世界の中で俺はティアナを追って走り回る。

 まさかマモンギルディの野郎が何かしやがったのか?

 今更になってその事に気がついたのは時計の針がいつの間にか正午を過ぎた段階の時だった。

 朝感じていた良い予感は一転して最悪の予感へと変わる。

 そういえば最近のティアナはどこかおかしな雰囲気があった。まるで常に何か別の事を考えているような、謂わば心ここにあらずといった感じがあった。

 警戒していたつもりだったのに全く気付かなかった自分に腹が立つ。

 同時にトゥアルフォンからメールの受信音が鳴った。

 

「ま、まさか……な」

 

 最悪の予感は頭から離れない。

 恐る恐るメールフォルダを確認。

 差出人のアドレスは登録した覚えのない物であり、これがマモンギルディのものであると直感する。

 添付された一つの動画。

 嫌な予感をしつつもそれを開く。

 

『ハロー!! 見てますカー? テイルバイオレットのボーイ?』

 

 それは思いつく限り最悪の内容だった。

 

 

 

 

 一方、現実世界では……

 

「はぁ!? オレになんのようだってぇ? トゥアール……!!」

 

「改めて言います。あの子たちを助ける為、あなたの力が必要なんです」

 

 ネオン彩る繁華街見下ろすビルの屋上にてトゥアールとレイジの二人が向かい合っていた。




総二なら回避できたであろう事を失敗するのが和輝です。
まぁ、少し酷な気もしますが。

次回はあのキャラが復活……するかも(未定)
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