俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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サブタイの元ネタわかるかなぁ……



第155話 テイルレッドに逢いたい

 夜は終わりを告げ、日が昇り朝がやってくる。

 12月25日、クリスマスの朝。

 昨晩、サンタからのプレゼントに胸を躍らせていた子供たちは心を弾ませながら起床しては真っ先にプレゼントを確認し始める。

 欲しかった物を貰え喜ぶ子と微妙にずれている物に首をかしげる子と反応は様々。

 同じなのはどんな物であれプレゼントを貰えた子の大半が笑顔だという事だろう。

 クリスマスの朝ほど子供にとっての待ちに待った日はない。

 子供たちは朝ごはんを掻き込み流し込み、親の注意も聞かずにプレゼントを手に外へ出る。

 目指すはそれぞれが遊び場としている場だ。

 みんな、自らがもらえたプレゼントを友達に自慢したいのだ。

 今日は待ちに待ったクリスマス、終業式を終えて冬休みへと入った子供たちが笑顔弾ませる年に一度の聖なる日。

 

「わーはっはっはっ!! ワイは少年属性(ボーイ)のバルバトスギルディ!!」

 

 そんな聖なる日にも悪魔(エレメリアン)は現れる。

 午前10時を過ぎ、子供を含めた人々が増え始めた公園で響く声の主は緑の服を纏い緑の帽子を被った狩人の如し。童話にでも出てきそうな装いに身を包むエレメリアン、それがこのバルバトスギルディである。

 バルバトスギルディは十数人程度の戦闘員(アルティロイド)を召喚。

 戦闘員たちと共に、悲鳴上げて逃げようとする男の子を捕まえ始める。

 

「やめろー!! はなせー!!」

 

「威勢よくてええやんけ。ワイはお前さんみたいなショタが大好きでしゃーないねん」

 

 嫌がる子供の反応を見ては舌なめずりをするバルバトスギルディ。

 見ての通り、バルバトスギルディはショタコンであり……そして何より……

 

「さぁ、こんなかから好きな姉ちゃんえらびぃ。お前さんらも一皮むいてもらうでぇ」

 

 そう、このエレメリアンが最も好きなシチュエーションはズバリ、おねショタである。

 どこからか攫ってきたであろう拘束した女性たちを捕まえた男の子のたちの前に見せつけたバルバトスギルディは自身の属性という名の欲求を満たすべく迫り続ける。

 一人、また一人とバルバトスギルディと戦闘員は子供たちを捕えていく。

 

「助けてママー!!」

「うわーん!!」

「やだー!! 誰かー!!」

 

 泣き叫ぶ子供たち。

 ここから助かりたければ同じく捕えられた何処の誰とも知らぬ女性とエッチな事するしか方法はない。

 がしかし、それはまだ10歳にも満たない男の子が理解するにはあまりに酷である。

 恐怖のあまりに泣き出す子供たち。

 そんな中、ある一人の少年は涙目になりながらも強くバルバトスギルディをにらみ続けていた。

 

「ほーん、ワイにメンチ切るとはなかなかの度胸やのう」

 

「うるさい……!! お、お前なんか!! テ、テイルレッ――」

 

「テイルバイオレットが助けに来る? そう言いたいんかぁ?」

 

 その少年の震える声を遮り、そう尋ねるバルバトスギルディ。

 テイルバイオレットの名を聞いて先程の少年を除いた子供たちの目に光が宿る。

 

「そうだ!! テイルバイオレットが来てくれるんだ!!」

「助けてテイルバイオレット!!」

「早く来てテイルバイオレット!!」

 

 テイルバイオレットに助けを求める声が重なり、大きなSOSとなる。

 捕らえられた女性も同じように祈り、何人かの子供たちは今朝サンタにプレゼントされたのであろうテイルバイオレットの人形を握り締める。

 その時だ。

 ヒーローはやってきた。

 

「お前ら!! 待たせたな!!」

 

 公園にマシントゥアールの爆音が轟き、希望の戦士がやってくる。

 テイルバイオレットが只今参上したのだ。

 子供と大人、みんなが笑顔となり、バルバトスギルディは顔を引きつらせる。

 

「げぇッ!! テイルバイオレット!?」

 

「こんな朝っぱらから何してんだてめぇコラぁッ!!」

 

(もう和輝ったら、いくら何でもガラ悪すぎ……)

 

 一体化しているティアナが思わずそうこぼしてしまうくらいガラの悪い不良のような態度で相対するテイルバイオレット。

 

「や、やれ戦闘員!! テイルバイオレットも捕まえてワイに最高のおねショタを見せるんや!!」

 

 対するバルバトスギルディは逃げ腰になりながらも戦闘員たちをテイルバイオレットにけしかける。

 昨晩の諸事情でテイルブルームがいない今、数の有利は圧倒的にバルバトスギルディ側にある。

 だが、今のテイルバイオレットはティアナと融合した極限形態であるエクストリームチェイン。

 勝負の行方など簡単に予想が付く。

 

「何がおねショタじゃボケぇッ!!!」

 

「「「モゲーッ!?」」」

 

「なんやて!? んなアホな!?」

 

 秒殺も秒殺。

 十数人いた戦闘員たちは一瞬のうちにやられて消滅してしまった。

 捕えられていた子供は同じく捕えられていた女性たちに引き連れられ離脱。

 二人残された公園にて、テイルバイオレットはウインドセイバーの切っ先をバルバトスギルディへと向ける。

 

「てめぇ、七つの性癖(セブンス・シン)か?」

 

「ち、違う!! ワイはアルティデビルを抜けたはぐれエレメリアンや!! 七つの性癖ともベリアルギルディとも関係あらへん!!」 

 

 バルバトスギルディは以前のレヴィアタンギルディとの一件の際に逃げ出したエレメリアンである。

 人間の世界でひっそり暮らしていながら今日こうやって騒ぎを起こしたのもクリスマスにはしゃぐ子供を見て自らを抑えられなくなったからである。

 

「ワイは……こんなとこでやられとうない!!」

 

 話を聞いた事で通りで反応が弱いわけだとテイルバイオレットが納得した刹那、バルバトスギルディはマントを広げては中から煙幕をまき散らす。

 少し油断していたという事もあり、反応が遅れてしまうテイルバイオレット。

 

「あ、ちょっ!? 待てコラ!!」

 

 慌てて風の力で煙幕を散らすテイルバイオレットであったが、バルバトスギルディの姿はもうどこにもおらず逃げられてしまった。

 

『反応ロストしました。とりあえず和輝君も総愛も今は帰還してください』

 

「わーってるよ。クッソ……!!」

 

(悔しいけどママの言う通りね。早くしないとみんな戻ってきちゃうしさ)

 

 ティアナの言う通り、戦いが終わったとわかったからか、先ほどまでこの場から離れていた子供たち含めた皆が続々と戻ってくる。

 もしここで帰還するのが遅れれば戻ってきた人たちに群がられて余計に帰還が遅れてしまうだろう。

 テイルバイオレットはマシントゥアールに跨り、そのまま公園を後にする。

 

「「「ありがと~!! テイルバイオレット~!!」」」

 

 子供たちの感謝を背に受けテイルバイオレットは去る。

 大人も子供もその顔は実に晴れやかで輝かしい。

 

 

 

「やっぱり、テイルレッドは来てくれなかった……」

 

 約一人の少年を除いて……

 

 

 

 

「あいつら、また強くなってやがるな」

 

 テイルバイオレットの活躍によって平和を取り戻した公園。

 そこに集まっていた人々の中に紛れ込むレイジがそう呟いた。

 レイジはアナザーテイルレッドである以前に、模倣込みとは言えテイルギアを作り出すことが出来る優秀な科学者としての側面もある。

 だからこそわかるのだ。

 和輝とティアナ、二人が融合したテイルバイオレットの力が前回の一件の時よりもはるかに増しているという事を。

 

「恋し、愛する……ねぇ」

 

 二人の強さの根源はツインテールで結ばれた絆だと分析する。

 属性力という大好きを力として強くなれるテイルギアは精神の状態に左右されるからだ。

 レイジはふと、今の自分と比べてしまう。

 

「勝ち目はなし……だなぁ」

 

 自分の在り方をどうすればいいか迷うレイジではどうあがいてもテイルバイオレットには勝てない。

 以前はあれ程執着していたティアナのツインテール属性にも今では僅かな迷いが阻害してくるのだ。

 

「オレもどうやらここまでなのかねぇ……」

 

 半端者の自分には何の意味もないとばかりにレイジは自らのテイルブレスを取り外そうとする。

 そんな時だった。

 

「ん? あのガキ……」

 

 ふと目に映ったのは助けられた子供の集団にいる10歳程度の少年だった。

 確かあのガキはさっきエレメリアン相手にビビりながらも啖呵切ってやがったなと思い出す。

 レイジはその子供の集団へと目を向ける。

 

 

 

 

「すごかったよなテイルバイオレット!!」

「ほんとそれ、すっげぇかっこよかった!!」

 

 子供たちは皆、先程の事を振り返りながらもテイルバイオレットの活躍に興奮している。

 

「きっとおれが助け呼んだから来たんだぜ!!」

「違うよ、僕が呼んだから来たんだ!!」

「みんなが呼んだからじゃないの?」

 

 誰が助けを呼んだのかを主張し合い、

 

「おれ、テイルバイオレットに恋しちゃったかも……」

「え~!? ほんとう~!?」

「じ、じぶんも……」

 

 活躍に心をときめかせ、

 

「俺、いつかテイルバイオレットになる!!」

「無理だよ~、だって君男だもん」

「男でもなるんだよ!!」

 

 夢を語らう。

 怪物に襲われた自分たちをヒーローが助けてくれたという現実は少年たちの心に深く刻み込まれるのだ。

 そんな中に一人、うかない顔をしている少年。

 

「……」

 

「どーしたんだよ?」

 

 子供が一人、その少年へと声をかける。

 それがきっかけとなり周囲の子たちもぞろぞろ集まっては声をかけ始める。

 

「何かされたのか?」

「大丈夫?」

「おい、だいじょーぶかよ!?」

 

 皆が心配するも少年は浮かない表情のままだ。

 そんな中、別の少年がわかったように声を上げる。

 

「お前、どうせまたテイルレッドだろ」

 

 テイルレッドの名を聞き、少年の表情に変化が生まれる。

 同時に周囲の子供たちはざわつき始める。

 

「テイルレッド? バイオレットじゃなくて?」

「そんなのいたっけ……」

「僕知ってる!! 確かあれじゃない? テイルバイオレットに似た悪い奴」

 

 誰かがそう言った事で皆一斉に思い出したのか、知らなかった全員がハッとする。

 テイルレッド……それは一か月ほど前に現れたテイルバイオレットに似た赤いツインテールの戦士で怪物たちと同様に人々を襲う悪の化身。

 実際は本物ではなくアナザーテイルレッドと呼ばれる偽者なのだが、この世界ではそもそも本物のテイルレッドが知られていない為にこのような印象しか残っていない。

 別世界にいる本物のテイルレッドからしてみれば風評被害以外の何物でもないがこの反応は仕方なかった。

 

「違うよ!! あれは偽物だよ!!」

 

 テイルレッドへの悪印象を見たことで少年はそう反論する。

 まるで事実を知っているかのようなリアクションであるが、実際の所はこの少年もアナザーテイルレッドが何者なのかわかっていない。

 だが、事実は少年の言う通りである。

 咄嗟になって思わず言ってしまった事であるが、奇しくも正解と言えるだろう。

 だが、ここにいる子たちはその事を知らない。

 

「何言ってるんだよ!!」

「お前、悪い奴の応援するつもりか!!」

「ママ言ってたぞ!! 悪者ばっかりおーえんする奴は将来わるいことする奴だって!!」

 

 子供は純粋にして残酷。

 中々に酷い言い分であるが、子供たちからすればこれらの非難こそ正義である。

 自分たちこそが正しいと思い込むあまり、皆が皆、テイルレッドを庇う少年を責める。

 

「お前なぁ!!」

「やーい、悪者!!」

「何泣いてんだよ!!」

「テイルレッドいないんだよ!!」

 

 和輝やティアナがこの光景をみたらどう思うかなんて想像に難くない。

 きっと怒り半分悲しみ半分の複雑な心境でこの子達を止めるであろう。

 しかし、ここにいるのは子供たちばかりである。

 平和が戻ったことで周囲の大人たちはこんな子供の小競り合いなど詳しく見ようとせず、平和が故の微笑ましい光景として流すのが日常だ。

 

「違うもん、テイルレッドはいるもん……!!」

 

 助けを求める少年。

 しかし、誰も彼に助け舟を出すことはない。

 

 

 

 

 

「何ともまぁ、胸熱な光景だ事で」

 

 些細な事から始まる子供のイジメを見て、レイジはそう皮肉を飛ばす。

 普段であれば多少の興味こそあれどスルーするのがこの男だ。

 だが、今日のレイジは違った。

 

「おいガキ共、弱い者イジメはよくねぇなぁ」

 

 エスカレートしていく子供たちはそんな少年を追い詰め、遂には手を上げようとするその時だ。

 今までの流れを見ているだけであったレイジが動いたのだ。

 子供たちはレイジの姿を見て今さっきまでの勢いがなくなり凍りつく。

 

「な、なんだよおっさん!!」

 

「あん? どうしたクソガキ?」

 

 率先してイジメを行っていた子供が我を取り戻してレイジにそう噛みつくも、レイジの冷たい殺し屋のような瞳を前に覇気を失う。

 コイツはヤバイ。何だかわからないけどヤバイ。

 生物が持って当然の危険信号に従うかのように子供たちは一斉に逃げ出した。

 

「に、逃げろ!!」

「うあーー!!」

「ママーーーー!!」

 

 実に無様で滑稽。

 大人げないと言えばそうだが、ある種のカタルシスを感じる光景である。

 尤も、レイジとイジメられていた少年にそういった感情はない。

 何が起きたのかわからずポカンとする少年とそれを見下ろすレイジ。

 二人の間に何とも言えない奇妙な空気が流れて数秒、レイジが手を差し出す。

 

「立てるか?」

 

「う、うん……」

 

「なら上出来だ」

 

 レイジの手を取った少年は立ち上がり土を払う。

 そんな少年へとレイジはついてこいと言わんばかりの態度を見せるのであった。

 

 

 

 

 少年を連れたレイジは人気の廃れた公園へとやってきた。

 高架下にあるせいか常にやや薄暗く、遊具はどれもこれもが手入れされているのか怪しいほどに汚れている。

 他にあるのはベンチと自販機、それだけだ。

 

「お、おじさん……」

 

「おじさんってガラじゃねぇよ。おっさんか、もしくはレイジって呼びな」

 

 随分と粗暴な言い方である。

 対する少年はそれを聞き、わかったと言った後、レイジをレイジおじさんと呼んだ。

 レイジは内心少しイラっとするもこれ以上は面倒なのでスルーを決める。

 レイジとしてはそれ以上に聞きたいことが山ほどあった。

 

「まず聞くが、お前、オレみたいな奴によく着いてきたな」

 

「え?」

 

「どう見てもオレは不審者だぜ? オレがもし、ガキ好きの誘拐犯だったらどうする」

 

「え、そう……なの……!?」

 

 急に怯え始める少年を見て、レイジは冗談も通じないのかと呆れつつも笑って誤魔化した。

 ガキの扱いは簡単なようで難しい。

 自我を抑えて誰かに取り入るのとは訳が違う。

 子供は意外と本質を突いてくる物だ。

 レイジは脅かした詫びも兼ねて自販機から柑橘系ホットドリンクを購入。少年へと投げ渡す。

 

「飲めよ。冷えるだろ?」

 

「う、うん……!! ありがと……レイジおじさん……!!」

 

「どういたしましてだ」

 

 レイジはレイジで缶コーヒーを購入。

 二人は自販機近くのベンチに腰を下ろした。

 

「ね、ねぇ?」

 

「あん? どうした?」

 

 一息つく中、話を再び切り出したのは少年の方であった。

 レイジは少し驚きつつも尋ね返した。

 

「さっきは……助けてくれてありがとう……」

 

「なんだよ、そんなの別に気にするなよ。感謝するならオレの気まぐれとお前自身に感謝するんだな」

 

「……?」

 

 お前自身に感謝の意味が分からず首をかしげた少年はホットドリンクを再び口につける。

 12月ももうすぐ終わりとなるこの季節、寒さは中々に応える物だ。温かい飲み物が体に染み渡る。

 今度はレイジが話しかける番だ。

 

「なぁお前、お前さっき、テイルレッドがどうとか言ってたよな?」

 

「え……!? う、うん……」

 

 少年は驚きを隠せない。

 まさか自分を助けてくれたこのおじさんがその名を口にするとは思っていなかったからだ。

 今まで少年は友達や家族に何度もその名を口にしては、そんな奴いないだの、それはテイルバイオレットを襲う悪い奴だの言われ続けた。

 少年は思う。

 もしかしてこの人も本物のテイルレッドを知っているのではないのかと。

 

「どこで知ったんだ? 確かこの世界ではテイルレッドの活躍は伝わっていないだろ?」

 

 レイジの言う通り、この世界は数ある平行世界の中で、アルティメギルに侵略にあいなながらもテイルレッドの活躍が伝わっていない唯一の世界だ。

 かつて、テイルレッドがアルティメギル首領を打倒する際、テイルレッドは全平行世界のツインテールを束ねて金色の姿へと変身しており、その姿及び戦いは、テイルレッドの存在を直で見たことがない別世界の人々も観測できたようである。がしかし、この世界は12年程前に一度アルティメギルを退けさせる際に起きたちょっとしたイレギュラーの影響で特異点のような存在となっていたようであり、テイルレッドの戦いを同時期に観測できた者はいない。

 

「おじさん……それってどういう……」

 

「悪い、変な事聞いたな。まぁ、要するにお前はどこでテイルレッドの存在、それも本物のテイルレッドを知ったのかを聞いているんだよ。お前、テイルレッドが好きなんだろ?」

 

 そう問われ少年は赤面する。

 いくらヒーローヒロインに憧れる10歳程度の少年と言えど、アナザーではなく本物のテイルレッドの見た目は幼い少女のようであるから当たり前だ。

 レイジはその反応を見たことで口元に笑みが漏れる。

 

「じ、実はね……夢を見たんだ」

 

「ほう」

 

「テイルレッドと呼ばれる女の子のヒーローがね、光るツインテールみたいな怪人と戦っていたんだ。すっごく熱くて……すっごくかっこよくて……すっごくかわいくて……えーっと、それからその……。とにかく!! 僕、ただの夢とは思えなかったんだ……!!」

 

 興奮気味に少年はそう話す。

 それを聞いていたレイジはその夢がテイルレッドとアルティメギル首領との最終決戦であると推測する。

 

(夢という形ではあるが、コイツはかつての戦いを観測したってのかぁ? いや、まてよ。この世界に起きたイレギュラーの影響がもし、総愛という強力すぎるツインテール属性の登場で崩れたとしたら、それが可能である可能性は0じゃないか)

 

 レイジの予想は当たっていた。

 総愛もといティアナがこの世界に降り立った事でこの世界でかつて起きたイレギュラーによる影響は薄れている。

 レイジは知らぬが、実際、和輝などの一部の者が夢で見るという変則的な形で遅れて観測しているのだ。

 

「僕、思ったんだ。あれはただの夢じゃない。きっとどこかで……テイルレッドと呼ばれるヒーローは怪物たちと戦ってる。みんなが知っているテイルバイオレットもそんな人たちの仲間なんじゃないかって」

 

 当たっている確証など持っていない筈だというのに少年は自信をもってそう答えた。

 しかし、そこまで言い切った後で少年の表情は曇る。

 

「でも……」

 

「テイルレッドはこの世界で悪者として現れた。そうだろ?」

 

「う、うん……」

 

 レイジの言葉に少年は頷くしかない。

 自らをテイルレッドだと名乗り破壊の限りを尽くす悪の戦士。

 それがこの世界に現れたテイルレッド。

 初めてニュースでその姿を見た時、出会えた興奮以上に困惑が勝ったのを思い出す。

 あの日以来、少年の語る夢で見た憧れのヒーローテイルレッドは、事情を知らぬ周囲の皆にとって恐怖の象徴であり忌むべき悪魔となってしまった。

 

「僕、悔しいんだ。あんなの……あんなの本物のテイルレッドじゃない。本物はもっと輝いていて……もっとこう……かっこよくて……」

 

 涙交じりにそう語る少年。

 果たしてレイジはそれを見て何を思うのか。

 自らがしてきた悪行を詫びて後悔するのか? それとも聞いたうえで開き直るのか? はたまた何ともないとばかりに無視をするのか?

 ただ無言で聞き続けるレイジを見てもその答えはわからない。

 

「お前、偽物のテイルレッドと会ったら何がしたい? 何をしてほしい?」

 

「え……それは……」

 

 少し怖気づいてしまうも少年は力強く答える。

 

「ちゃんとしたヒーローになってほしい」

 

「……そうか」

 

 懲らしめたいといった類ではなく、求めるのは改心してヒーローになってほしいというのが少年の願い。

 いつもなら鼻で笑うはずのレイジも今日ばかりはただ静かにそう頷く。

 そして、改めて問いただす。

 

「お前、テイルレッドが好きなんだろ?」

 

「うん」

 

 さっきはあんなにも弱い奴だなと思えたというのに、今は随分と強く見える。

 それがレイジの抱く感想であった。

 まるで幼き頃、テイルレッドの存在を知り心ときめかせていた自分自身のようだ。

 

「おじさんも好きなの……?」

 

「まぁな。なんならオレは、本物と会ったこともあるんだぜぇ?」

 

「本当!?」

 

 少年の興味津々な様子は見ているこちらまでも面白くなってくる。

 レイジは少年を少し茶化しながらもテイルレッドについてを話していく。

 どんな奴でどんな事をしてきたのか。

 おとぎ話よりも不思議で面白いその英雄譚に少年の目は輝き、幼き頃を思い出すレイジはフッと笑う。

 

「僕もなりたいなぁ」

 

「オレもだ……」

 

「なれるよ。レイジおじさんならきっと……!!」

 

 少年の言葉がレイジの奥底に眠る想いを思い出させる。

 そして何より、こう穏やかであり続けるのも悪くない。

 そう思ったそんな時であった。

 

 

 

「見つけたで!! よくもさっきはワイの事をコケにしてくれたなぁ!!」

 

 背後から聞こえてくる荒々しい声。

 振り向くと、汚らしい遊具の上で腕を組み仁王立ちする異形、バルバトスギルディが声を上げていた。

 先ほどの件を根に持っている様子であり、少年は恐怖で顔が引きつる。

 レイジは名残惜しくも立ち上がる。

 

「おいガキ、今お前なら何を願う? こんな時、誰に逢いたい?」

 

「え……そ、それは……」

 

「それは?」

 

「テ、テイルレッド……テイルレッドに逢いたい!!」

 

 それを聞いてレイジは前に出る。

 一度は外そうと思ってしまったテイルブレスを輝かせる。

 

「上出来だ」

 

 次の瞬間、レイジはお決まりの変身機構起動略語(スタートアップワード)と共にその姿を深紅の光に包ませる。

 

「テイルオン」

 

「お、お前は……!?」

 

 テイルレッドを大人化させたような姿をした鮮血のような赤いツインテールの戦士、アナザーテイルレッド・オリジナルチェイン。

 バルバトスギルディの前に立ちふさがった。

 

 

 

 

「総愛!! 和輝君!! エレメリアン出現です!!」

 

 バルバトスギルディに逃げられ、基地に帰還してからしばらくした時、トゥアールさんと基地のブザーがエレメリアンの再出現を告げる。

 午前中同様の反応からして相手は先程逃がしたバルバトスギルディで間違いない。

 場所を確認した俺はティアナと共にマシントゥアールに乗って現場へ急行。

 午前の時のような騒ぎになっていない様子だが油断はできない。

 テイルバイオレット・エクストリームチェインへと変身した俺たちが現場である公園に着いた時、予想外の出来事が起きていた。

 

「かんにんや!! かんにんしてくれーーー!!」

 

「そうはいくかってなぁ!!!」

 

 赤い刃が飛び回り、逃げるバルバトスギルディを切り刻み串刺しに。

 そして、続けざまに振るわれた赤い大剣の一撃が真っ二つに引き裂く。

 

「ぎゃああああああッ!!!!」

 

 爆散するバルバトスギルディ。

 

「一丁上がりってな」

 

 埃を払う赤い影。

 武器と言い、戦い方と言い、見間違うはずがない。

 そう、戦っていたのはアナザーテイルレッドだった。

 

「お前……!!」

 

(見て!! あそこに子供が!!)

 

 ティアナが心の中で指し示す方向には10歳程度の男の子がいた。

 少年属性(ボーイ)を好むバルバトスギルディの事だ。恐らく、奴はあの子を狙って現れたのだろう。

 俺は慌ててその子に駆け寄り無事を確認。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「うん!!」

 

 元気よくそう答えたのを聞いた俺はその子を背に隠す。

 そして、バルバトスギルディの属性玉を回収したであろうアナザーテイルレッドと対峙し構える。

 

(ねぇ和輝? もしかしてアナザーテイルレッドは……)

 

「わーってるよ。でも、念のためだ」

 

 ティアナの言いたいことはわかる。

 アナザーテイルレッドがこの子を助けてくれたんじゃないかって事だろ?

 俺だって馬鹿じゃねぇし、この状況とこの子の様子から見てそうなのだろうってのは何となく察するぜ。

 でも、こいつに以前やられた事とか含めた色々が思わず俺を警戒させちまうんだ。

 いやま、前回も前々回も助けられておいてどの口がって思うかもしれねぇけどよ……

 

「大丈夫だよテイルバイオレット!! レイジおじさんは……悪い人じゃないよ!!」

 

 警戒する俺を見てか、男の子がそう訴えかけてきた。

 俺としてはその子のアナザーテイルレッドに対する好印象以上にレイジおじさんという呼び方に驚愕だ。

 二人の間に何かあったと思わざる得ない。

 男の子は制止する俺を振り切りアナザーテイルレッドの下へと駆け寄った。

 

「ね? そうだよね。レイジおじさん!!」

 

「……」

 

 男の子はそうアナザーテイルレッドに声をかける。

 しかし、アナザーテイルレッドは何も答えない。

 

「お、おじさん? これからはちゃんとしたヒーローになってくれるんだよね?」

 

 もしかしてアナザーテイルレッドを改心させようとしているのか?

 この子の様子からしてそうなのではと思った直後、アナザーテイルレッドが鼻で笑うかのような仕草と共に口元が邪悪に歪む。

 まさか……野郎!! 

 嫌な予感を感じ取った直後、アナザーテイルレッドは告げる。

 

「じゃあなクソガキ」

 

「え?」

 

 男の子がそう反応するや否や、アナザーテイルレッドはその子を思いっきり蹴り飛ばす暴挙に出やがった。

 ドンと大きな音と共に蹴り飛ばされる男の子。

 俺は咄嗟に蹴り飛ばされた方向へと跳躍し、空中でキャッチし抱きかかえる。

 そしてそのままクッション代わりとなって地面に着地。

 子供は気を失ってこそいるが命に別状はない。

 

「てめぇ!!」

 

(どうしてこんなことを!!)

 

 男の子の好意を無碍にするかのようなこの行動に怒る俺たち。

 対するアナザーテイルレッドはまるで悪いと思っていないような笑みを見せる。

 

「別にオレが何しようと勝手だろ? むしろ、属性力を奪わなかっただけ感謝してほしいくらいだなぁ」

 

「んだとぉ!?」

 

「ま、そんなガキのちっぽけなツインテール属性じゃ何の足しにもなりゃしねぇけどなぁ」

 

「お前この野郎!!」

 

 ウインドセイバーを生成し斬りかかるも、アナザーテイルレッドはブレイザーブレイドで受け止めた。

 

「いくぞティアナ!!」

 

(ええそうね!! こればかりは許さない!!)

 

 俺たちは心を合わせ互いの気持ちを爆発させる。

 エクストリームバースト程ではないが俺たちの力は急激に高まりアナザーテイルレッドを押していく。

 

「チッ……!! 流石に強いな……!!」

 

「おらぁぁッ!!」

 

 より一層力を籠める。

 するとブレイザーブレイドにひびが入り始め、俺はそのまま力一杯ウインドセイバーで叩き折った。

 武器を折られたアナザーテイルレッドは素早く距離をとる。

 

「ま、今日はこのくらいにしておこうぜ。オレとしても今のお前らは面倒この上ないんでなぁ」

 

 どういう意味だこの野郎!!

 俺がそう問い詰めるよりも先にアナザーテイルレッドはさらに距離をとって逃走の構えをとる。

 

「最後に言っておく。オレはこれからもオレの好きにやらせてもらう。ツインテールを奪うも守るもその時の気分次第だってなぁ!!」

 

 ツインテールを羽ばたかせ空へと消えるアナザーテイルレッド。

 一体、何が起きたのか俺もティアナも見当つかない。

 でも、一つわかる。

 

「あいつ、より強くなりやがった……」

 

(というより、迷いが消えたみたい)

 

 何か吹っ切れたように見えた。

 

 

 

 

 夜、摩天楼の上から街を眺める男が一人。

 彼の名はレイジ。またの名をアナザーテイルレッド。

 レイジはニヤリと笑う。

 

「オレとしたことがこんな事を忘れちまっていたとはなぁ」

 

 少年との出会いを経て、レイジは幼き頃から持っていた大好きな物を手に入れるために何でもやってやるという気持ちを思い出した。

 結論、レイジという男は至って純粋なのである。

 己が欲しいと思った物は何が何でも手に入れ、同様に守りたい物も守る。

 極めて自分勝手な最低最悪のダークヒーロー、アナザーテイルレッド。

 属性力からなる想いを極限まで利己的に扱うその姿はテイルレッドのアンチテーゼと呼ぶにふさわしい。

 

「ま、これからもオレはオレだ。ありがとうなぁ……クソガキ」

 

 その感謝が果たしてどういう意味での感謝なのかは想像に任せるとしよう。

 兎に角、レイジもといアナザーテイルレッドはこれからもテイルバイオレットたちとは違うダークヒーローとして戦い続ける。

 自らが最強のツインテール属性の持ち主となり、自らの理想とするテイルレッドへなる為に。

 

「さて、それはそうとだ」

 

 レイジは数日前のベリアルギルディからの誘いを思い出す。

 言葉で揺さぶり、仲間にならないかと誘ってきたあの提案。

 どう見ても罠であるし、ベリアルギルディが信用に値しないのは誰でも理解できる。

 だが、それ以上に気になる物が一つある。

 

無属性(ゼロ)……か」

 

 属性がない属性。

 ある意味、この世に存在する全属性よりも原初に存在している属性だ。

 ただの無個性とも違うこれについてはレイジも興味を隠し切れない。

 罠であるとわかっていても飛び込む価値はある。

 

「はッ、いいぜぇ。乗ってやるよ」

 

 今後、アナザーテイルレッドがどういう道をたどるのか。

 それはレイジ本人にしかわからないのだ。




アナザーテイルレッドのスタンスはこうなりました。
まぁ、敵対するも共闘するも全部本人次第なので今後どうなるのかはまだ不明ですけどね。
今年中にあと一本書けたらいいなと思いながら頑張りますので、今年もあともう少し付き合って頂けると嬉しいです。
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