俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
丁度、現実の時期が被ってましたので。
クリスマスも終わり、今年も後残り僅かとなった。
今年一年間は思い出すだけでも色々な事がありすぎる。
激動の一年ってのはこういう年を言うんだろうなって思っちまうぜ。
「なーに、やる事やらずにうんうん頷いてるのよ」
こたつでぬくぬくくつろぐ俺の背後から聞こえてくる声。
振り返るとそこに立つのはエプロン姿のティアナだ。
「るっせぇなぁ。年末ぐらいいいだろうがよ」
「年末くらいってよく言うわよ。クリスマス明けてからずっとじゃない」
「寒みぃし、こたつあったらこうもなるっつーの」
いやマジでほんと、外は寒すぎる。
こたつなんて物がある以上は外に出るのが馬鹿らしくなってくるくらいだぜ。
いやま、ティアナが呆れる気持ちもわかるけどよ。
「もう……今日何する日か知ってる?」
「……いや、知ってるけどさぁ」
「大掃除よ。大掃除!!」
そう声を張り上げる。
今のでわかると思うが、ティアナのエプロンは料理をする為のエプロンじゃない。
年末にやるべきイベントの一つである大掃除。
今日はそれをやる日であり、ティアナのエプロンは掃除をする為の物だ。
実にやる気満々なティアナが少し面倒くさい。
ちなみに婆ちゃんは年末の買い出しに行ってくるとか言っておやっさん引き連れてどっかに出かけちまっている。
「ほら、和輝の分も持ってきたから。はい」
そう言って渡された掃除用具一式。
掃除用エプロンと三角巾、新品の雑巾と埃用のハタキ。
「やらなくちゃダメか?」
「当たり前でしょ。今日は年に一度の大掃除なんだから」
大掃除ってそんなに大事なイベントだったかな? とは思う。
ティアナってどうも変なテンションの時があるよな。
ぎゃんぎゃん騒ぐのでは無くぷりぷりと怒るティアナ。
三角巾を被る都合上、ツインテールは干渉しづらいように下結びだ。
「ま、今回はしゃーねぇしやってるやるかぁ」
「はいはい、なんでもいいけどさっさとやるわよ」
じゃあまずはとばかりにティアナがベランダの窓を含めた全ての窓を開いていく。
入ってくる空気が冷たく突き刺さる。
こたつに逃げようとするもティアナは一足先にコンセントを抜いて電源をOFFに。
コイツ……鬼か……!!
「じゃあ先ずは片付けるわよ」
「へいへい」
観念し着替えた俺はティアナ指導の下、家具や荷物、いらない雑貨やらゴミやらを整理したり捨てたり磨いたり。
やっていく内に今年の出来事が色々と蘇ってくる。
「覚えてるか? 俺たちが出会った時のこと」
「唐突にどうしたのよ? 忘れる訳ないじゃない」
思い出すのは今年4月、ティアナと初めて会ったあの運命の日。
あの当時、ティアナは元居た世界もとい次元から時間も場所も何もかも違うこの世界へ記憶喪失でやってきており、俺はそんなティアナとひょんなことから出会った。
「最初変身した時はどうなっちまうんだよって思ったぜ。気が付いたら女になってんだもんよ」
「今じゃすっかり慣れたもんね」
「そう言われると男のプライドが……」
まぁでも、ティアナの言う通りだな。
今じゃ別にテイルバイオレットに変身する際に女になっても何も困惑しない。慣れたもんだぜ。
「喧嘩もいっぱいしたよな」
「変身できなくて焦ったのよね……」
喧嘩による変身失敗で思い出すのは失恋属性を愛する女エレメリアンとの戦いだ。
あれは俺とティアナが初めて大喧嘩をしちまったせいで心を合わせることができずに変身をすることが出来なくなった時の事だ。
今思い返すとすげぇしょうもねぇ内容で喧嘩してたなとは思う。
「入れ替わった事もあったもんね」
「あったなそういや……」
夏頃だっけか? ティアナと俺の身体が入れ替わっちまった事件があったのは。
確かあん時はブレイブチェインを使いこなせずに悩んでいた気がする。
後から振り返るとあの時の出来事はツインテールの女神様がテイルギアを介して干渉していたらしいけど、中々に荒療治だなと思う。
ま、おかげで俺は女の子の生活ってのがどんな物かある程度分かってツインテールについても色々知れたから結果はオーライってか。
「あの時の和輝、ツインテール結べなくて四苦八苦してたわよね」
「今でも下手くそだけどな」
「髪の毛はもっと優しく扱う事。これ鉄則なんだから」
「わーってるよ!!」
仕組まれていたとは言え、ここ最近起きたマモンギルディの事件を思い出す。
もしあの時の俺がもっと完璧なツインテールを結んでやれていたら少し結果は変わっていたのかもしれねぇんだよな……
ティアナに少し言い返しながら物思いにふけていた時、家の玄関が開き騒がしい声の持ち主がやってくる。
「うーっす。今年最後も夫婦仲良くやってるねー」
「匠、お前に何しに来たんだよオイ」
やってきたのは匠だ。
匠が答えるよりも先にティアナが訳を話す。
「助っ人として呼んだの。私たちじゃこの家全部掃除するの難しいじゃない?」
「そういう事~。悪いがお前らの間に入らせてもらうぜ~」
「〇すぞ」
言い方に悪意を感じたのでド直球に一言。
思い返せばコイツとも長い付き合いだ。
ティアナから掃除道具一式を貰い作業を始める匠。
それぞれ掃除に手を動かしながら思い出す。
「匠は覚えてる? 和輝と喧嘩した時の事」
「あ~あったね~」
「なんだその反応……」
「あれでしょ? お前たちが戦い始めてすぐのころでしょ?」
匠との喧嘩、それは俺とティアナがエレメリアンと戦い始めた当初の頃にあった出来事だ。
戦いの結果に苛立つ俺が何の事情も知らずに絡んできやがった匠に八つ当たりに近い形で怒りをぶつけたんだっけか?
なんにせよ、今振り返ると実にくだらない原因だ。
「いや~懐かしいね~。あれからもうこんなに経っちまったのか~」
年寄りかよ。
無駄にオーバーリアクションなのが匠らしい。
「なのに俺は未だ彼女なし……」
「来年はお前だって春が来るさ」
「勝者の余裕みせんじゃねー! チクショー!!」
バカバカしいノリを楽しむ俺たち。
なんつうかこういうのはティアナとでは味わえない感覚だ。
彼女を作るのも大事だが、男友達はもっと大事なんだな。
「ねぇ和輝? このCDは?」
「どしたティアナ?」
向こうで棚を整理していたティアナが見覚えのないCDケースを持ってきた。
特にこれといったデザインが施された物でなく、明らかに試作品のような品物だ。
はて? 俺こんなの持ってたっけな?
「おい、これもしかして……!!」
何かに気が付いた匠の行動は速かった。
先ほど押し入れ整理の際に発掘されたラジオ付きCDプレーヤーをもってきて即再生。
流れる音楽は聞き覚えのある物であり歌声も同様だった。
「これあれよね?」
「夢宮ヒカリの――」
「今年出たヒカリちゃんの新曲!? それも実際の物とはBメロの歌詞が少し違うし、音の響きも若干違う!! まさかこれは俗にいう試作中のデモか!? デモテープの一種って事か!? 関係者しかもってるはずがないってのにどうしてー!?」
アイドル、夢宮ヒカリの大ファンを公言する匠のうるさい事うるさい事。
ドルオタここに極まれりみたいなテンションで騒ぎ立てている。
てか、俺どうしてこんなの持ってんだ?
あ、そういや……
「思い出した。確かなぁ、ヒカリと知り合ってすぐの頃に助けてくれたお礼だとか何とかで送られてきたんだよ」
「何ーッ!?」
夢宮ヒカリを助けた事件。それは今年5月頃の話だ。
当時の夢宮ヒカリはアイドルという職業を好きすぎるがあまりに悩んでおり、エレメリアンはそんな彼女の属性力を狙ってきやがった。
俺はそんな彼女を励まし、エレメリアンから守った事があった。
「密着した事もあったわよね」
「あったあった。あん時はお前がやたらイライラしてたの覚えてるぜ」
「ふふっ、そうね」
「オイオイ待てーい!! お前らな~!!!」
俺はそんなの知らないと匠は嘆く。
悪いがそういうことがあったのは事実だ。
「でもこんなテープ貰ってたんだ……」
「いやな、なんか初めて作詞したから感想聞かせて欲しいとか何とか……」
「んだとぉ!! じゃあここの『あなたに救われたあの日』とか『あなたの為に私は歌う』とかお前の事かーーーッ!!」
「テイルバイオレットへの歌詞だろ!?」
「やっぱお前じゃねぇかよーーッ!!」
匠の勢いは中々にとんでもない。
いつもなら鬱陶しいわボケいとばかりに殴り飛ばすノリだが、あまりの剣幕に何もできない。
でも、事実なんだよな……
「あらあら~いい感じに男同士の友情してるじゃない」
「……ホモぉ」
俺が匠に詰められる中、増員として悠香さんと青葉さんがやってきた。
悠香さんは俺たちのじゃれ合いを取材用カメラに収め、青葉さんはボソッと小さい声で一言。
色々誤解されてる気がしない事もない。
「せんぱ~い!! リア充共がイジメてくるんすよ~!!」
「ふ~ん、たっくんは和くんに全部盗られちゃったと」
「女も尊厳も全部……」
「「言い方ぁッ!!」」
青葉さんがさっきから誤解招く事ばっかし言ってやがる。
ツッコむ俺と匠の声が重なる。
なんだか賑やかになってきたな。
「もう、いつまで手を止めてるのよ。大掃除だって事忘れないの」
流石にティアナから注意が入った。
俺も匠も小さくすいませんでしたと謝りを入れて作業再開。
そんな時にふと気が付いた。
「あれ? そういや悠香さんたちって掃除できなかったくねぇか?」
「うん? そうよ?」
気が付いた俺に対してあっけらかんと言い放つ悠香さん。
じゃあ何しに来たんだよとツッコまざる得ない。
「あたしらは現場取材に来ただけ。ね、青ちゃん?」
「掃除苦手……」
苦手なんてもんじゃねぇのはみんな知ってるよ。
てか現場取材てオイ。
「まぁいいじゃない。悠香さんたちも呼ばないとしっくりこないし」
「そうそう、ティアちゃんいい事言うじゃない。あたしたちとももう長い付き合いでしょ?」
悠香さんたちとの出会い、それは俺たちが戦い始め、匠がテイルバイオレットやエレメリアンについてを知ってすぐ後の事だった。
新聞部である悠香さんたちは当時テイルバイオレットの正体などを追っており、それまでのあまり多くない戦いの場所やその他データを元に俺たちの正体に勘づき接触。取材を受けてからいつの間にか俺たちは協力する間柄になっていた。
確かあの日、ティアナが学校にやってきた日だっけか?
その後の出来事が印象的過ぎてこっちのイベントの印象が全然ないな。
「なんだかんだで世話なりっぱなしか」
「助かった部分多いもんね」
「でしょでしょ~」
ティアナと悠香さんの言う通りだ。
悠香さんたちが俺たちの活躍を一早くまとめて校内及び町内やネットに記事として拡散したおかげでテイルバイオレットの世間からの印象は程よくいい感じだし、悠香さんたちが不穏な事件を見つけてくれたおかげでエレメリアンの悪事に気が付いた事もある。
なんだかんだ悠香さんのリーダーシップに救われた事も数多くある。
「そういや先輩。進路とかどうすんすか?」
「あぁそれならね。やっぱりあたしたち二人で起業しようと思うんだ~」
「起業ってあれすか? 前言ってた奴……」
そうそうとばかりに頷く悠香さん。
前言ってた奴ってのは夏休み明けにあった藤倉だとか言う悪徳記者との事件の際に言っていた二人だけの会社もとい情報発信サイトの運営の事だろう。
なんでも今年のアレコレで注目度が上がってスポンサーも出てきてくれたみたいだ。
あとは来年3月に卒業するまでにいくつかの手続きと準備を済ませるだけの様子だ。
「色々困難はあると思うけど、まぁやってみないとわからないもんよ」
「そうだけど、凄ぇなマジで」
「たっくんも和くんも、卒業したら面倒見てあげるわよ~」
だからってこき使われるのはごめんだぜとちょっと悪態をつきながらも前向きに考えてみる。
これからの進路が果たしてどうなるのかわからない。
というかティアナといつまでこうしていられるのかの方が心配だ。
「せんぱーい!! 俺はいつでもお供するっすー!!」
「さっすがたっくん~!! 存分に――」
「兄さん!!! 何軽い気持ちでそんな事言っているんですか!!」
突如聞こえてくる幼いながらも凛とした声。
玄関から聞こえてくるにあの子もやってきたのだろう。
匠の顔が真っ青に染まった。
そして……
「兄さん!! あなたって人は!!」
リビングのドアが開かれ現れる本日4人目の来客。
中学3年生とは思えない低身長としっかりとした言動が特徴である、匠の妹の美希ちゃんだ。
美希ちゃんを目にした匠が大声を上げる。
「ぎゃ~美希!! 何しに来たんだお前~!!!」
「兄さんが迷惑かけてないか見に来ただけで何ですかその言い方!! 実の妹がきたんですしもっと他の反応をするのです!! まさか本当に何か迷惑な事をしたんですか!! 年の最後だってのに信じられないです!! 大体、兄さんはこんな時もいっつもいっつも――」
「長い長い!! 勘弁してくれ~!!」
相変わらず匠は美希ちゃんに頭が上がらない。
身長差40cm以上もある小さい妹にガミガミ言われてしまう匠の情けなさはどうコメントすればいいか悩む。
「まぁまぁ美希ちゃん。たっくんもこうは言ってるんだし、今日は許してあげてちょ~だい。ね?」
「部長さんがそう言うなら……」
「安心して。あなたのお兄さんはあたしが責任もって面倒見るし、こき使うつもりだから」
「よろしくお願いしますです!!」
サラッと悠香さんに手懐けさせられる美希ちゃん。
美希ちゃんはああやって他人のいう事には意外と素直だ。
勢いがあるのは
「美希ちゃん久しぶり。今日もいいツインテールしてるじゃない」
「褒めてくれてありがとうです!! ティアナさん!!」
ティアナがツインテールを褒め、美希ちゃんも笑顔になる。
今の会話で思い出したが、そういや美希ちゃんと会うのも久しぶりだな。
「あれか。人形屋敷の事件以来か」
「あの節はどうもありがとうです。和輝さん……いや、テイルバイオレットさん……!!」
美希ちゃんは俺がテイルバイオレットであることを知る数少ない人の一人だ。
それを知る事になった人形屋敷の事件というは美希ちゃんが狙われた事件であり、時期としては秋の体育祭頃。
球体関節を好み、ターゲットにした女性の属性力を奪った上で人形と変化させて収集するエレメリアンとの戦い。
今思うと、中々にヤバイ相手だったな。
「気にすんな。てかあん時のMVPは匠だろ?」
「そうだぜ美希。俺もあん時は頑張ったんだしさ……」
「それはそうでも……だからってもうちょっと常日頃からしっかりしてください!!」
美希ちゃんはそう怒鳴っているが、あの時の事件は匠が兄としての頑張りを見せたからこそ俺たちの助けが間に合ったようなものだ。
妹の為に体張った
「やってるってば〜!!」
「そんなの当たり前です!! なんのために家の事全部こっちがやってると思っているですか!! 兄さんは兄さんで和輝さんたちのお手伝いをしっかりするのです!!」
「あー、だから最近見なかったのね」
どうやらあの事件以来、美希ちゃんは匠に対して家の事よりも俺たちの事を手伝うようにと言っていたらしい。
通りで最近見なかったし、匠の奴は新聞部のアルバイト関係なく部室やら基地やらにいるわけだ。
「まぁそれはそうと、美希ちゃんも手伝ってくれるのよね?」
「勿論です!! 日々、皆さんを守ってくれている分、こういう所でしっかりお礼するです!!」
ほんと、良くできた妹だな。
兄妹ってのにはあんまし興味もないし、欲しいとも思わなかったけど、もしいたらどうだったんだろうとは思えてくる。
ま、妹にガミガミ言われるのは俺もごめんだぜ。
「さて、大掃除再開よみんな!!」
ティアナが手を叩いてそう宣言。
役に立たない先輩が混じってるとは言え、美希ちゃんも増えて6人になったんだ。
こうなったら分担込みでさっさと終わらせるに限るぜ。
俺は匠と共に物置の整理を、美希ちゃんと先輩達はリビングの残りを、ティアナは俺たちみんなを統括しつつ自室を担当している。
「お? 何だこれ?」
「どうした匠?」
ガレージにある物置を整理していた時、匠が奥から何かを発見した。
こういう事してるから掃除が一向に進まねぇんだよなと思いつつも、俺も手を止める。
匠が持ってきたのはかなり年季の入った古い人形であり、俺がガキの頃遊んでいた物であるとわかる。
ただ、この人形のモデルはどこのアニメでも見たことない。
緑を基調とした魔法少女っぽいんだが、如何せん古いせいか塗装も剥げてるし汚れていてわからねぇ。
「懐かしい~!! それ、昔の先生の人形よね!?」
「「華先生!?」」
いつの間にか現れていた華先生が発掘した人形を手に取り懐かしがる。
あー成程、あれはつまり、昔の華先生こと魔法少女シャイニーブルームの人形って訳か。
華先生は今でこそ俺たちと共に戦うツインテール戦士の一人であるテイルブルームだが、かつてこの世界にもアルティメギルが攻め込んできていた際に魔法少女シャイニーブルームとして戦っていた過去がある。
「まだ残ってる物もあったんだ。てっきり全部処分されてると思ってた!!」
「嬉しそうっすね……」
「華先生も色々あったみてぇだしな」
華先生はさっき言った通り、かつては曲がりなりにも戦士として戦っていた人だった。が、それら全部がアルティメギル側の仕掛けた罠であると気付き、最終的に自らの活躍や存在した痕跡及び記憶を皆から封印して世界を守った経歴がある。
俺たちが出会ったのはそんな出来事を経験し、すでに戦う気持ちも何もかも無くしては過去に悔いていた華先生だった。
だけど、華先生は復活した。
今度こそちゃんと守ってみせるとテイルブルームへと変身を果たした先生は頼りになる仲間の一人だ。
「兄さん!! またサボって……あー!!」
「こんにちは。あなたは川本君の妹さんね?」
「兄がいつもお世話になってるです!!」
ガレージの騒ぎに気付いた美希ちゃんがやってくるも、華先生が来たことを見て頭を下げる。
華先生がやってきたことに気づいた面々が続々とやってくる。
「何々? 華先生もきちゃってたの?」
「にちわー……」
「もう、やっと来てくれたんですね」
「ごめんなさいね。教師の年末って忙しくて……」
ティアナにそう頭を下げる華先生。
相変わらず真面目な人だ。
「お聞きするですが、華先生はテイルブルームなのですか!?」
「ふふっ、そうよ」
「感激です~!!」
美希ちゃんのリアクションのせいか華先生はいつになく上機嫌だ。
余裕ある大人を装っているが、内心すげぇ嬉しいんだろうな。
「ま、飲まなきゃ問題ないんだがな」
「和くんの言う通り。昨日だって本当もう……」
思わず俺がそう零しては悠香さんが頷く。
「え? それはどういう……」
「ちょ、ちょっと……!! 二人ともバラさないで~!!」
途端に涙目になる華先生のメッキは剝がれた。
華先生はシャイターンギルディっていう強敵との戦いの際に自分の殻を破るべく飲酒を覚えて新形態を獲得したはいいが、以降は完全に酔っ払い属性が追加されてしまっている。
飲酒属性のエレメリアンとか出てきたら華先生を狙うんだろうな……
「もう、和輝も悠香さんも変な事言わないでよ。ほら先生、元気出してください。掃除に関しては先生が一番の頼りなんですから」
「う、うん……」
ティアナにそう励まされ華先生は立ち直る。
現時点最年長なのに扱いのアレさはある意味一番だな。
華先生らしいっちゃらしい。
「てかティアナ、華先生で思い出したんだが、トゥアールさんはどうしたんだ?」
いつもの面々プラスαが揃いだした事でトゥアールさんがまだいない事に気が付いた。
あの人ならすぐにでも来てくれそうなのにどうしたのだろう。
「あ~ママなら今基地のメンテナンスしてるわ。戦闘データのまとめとか色々やることあるから来てもかなり遅れるでしょうだって」
「そっか。ならしゃーねぇ」
トゥアールさんは俺たちの頭脳とも言える最大の支援者だ。
テイルギアの生みの親にして、伝説のツインテイルズの最強戦士テイルホワイト、そしてティアナのもう一人の母でもある彼女は、ティアナが生まれる世界もとい次元から時も世界も何もかも超えてやってきた本来の歴史の彼女とは似て非なる存在。
トゥアールさんがこの世界にやってきたのは比較的新しい。
絶体絶命のピンチに陥った俺たちを救いに現れ、最初こそティアナを元の次元へと帰そうと言ってきたが、今では俺たちに協力して様々な装備や設備を開発してくれている。
そこにあるマシントゥアールもトゥアールさんがいたからこその賜物だ。
「トゥアールさんってほんっとすげぇよな。こんなバイクも作っちまうしよ」
「ちょっと、ふざけすぎるのが玉に瑕だけどね」
そう苦言を呈するティアナ。
実際、トゥアールさんに俺たちはここ最近も多少の迷惑をかけらちまっているから何とも言えない。
学祭ではティアナと二人きりで閉じ込められかけ、俺が敵の能力でガキになった時は変身の為の名目あれどティアナを幼女化させて襲い、ここ最近ではクリスマスまでにティアナの処女を奪うように催促された事があったし、何ならラブホに入った俺たちの様子を監視していたりもしやがっていたな。
幼女化のあれは兎も角、それ以外は俺たちの仲をより深くさせようとしているってのはわかるんだが、こっちとしては勘弁してほしい時が多いってもんだ。
「お父さんやお母さんが見たらどう言うか……」
ティアナのお父さんとお母さん。
それはテイルレッドこと観束総二とテイルブルーこと観束愛香(旧姓 津辺愛香)の二人だ。
厳密に言うと、その二人ではないんだが、俺たちは以前二人にもあったことがある。
「思い出すわね。リーンたちも元気かしら?」
「元気にやってんだろ」
「何々? 何の話?」
俺たち二人の会話を聞いて口をはさんでくる悠香さん。
俺はそんな悠香さんに夏休み明けに起きた異世界での戦いの事だと話す。
俺たちテイルバイオレットとテイルブルーム、そしてツインテイルズ三人が共闘して人々の属性を管理するメフィストギルディとの戦い。
現地人に裏切られたりもしたが、最後はそこにいる人々皆と協力し、真の親玉であるサタンギルディを倒したあの日の事は忘れない。
あの時の俺たちは総二さんらが別の世界線の事とはいえ、ティアナの関係者とはまるで気づいておらず、今振り返ると結構なニアミスをしてしまっている。
「あー、華先生も巻き込まれたアレね」
「てかそれより、今思い出したけど悠香さん、唯乃さんの事覚えてるか?」
「覚えてる覚えてる!! テイルフェニックスでしょ!?」
「そう!! テイルフェニックス!!」
テイルフェニックスこと結翼唯乃と出会ったのはもう随分前になる。
あれは確かゴールデンウィーク中の出来事で、エレメリアンが関わる事件としてはかなり珍しく明確に人の命を狙った物だった。
事件の犯人である不死のフェネクスギルディとそれを追ってやってきたテイルフェニックス。
初めて出会う別世界の戦士だったが、無事に仲良くなって共闘した記憶だ。
中でも、ポニーテール属性を愛する彼女にとって同じくポニーテールをしている悠香さんとは短いながらも結構親密な間柄になっていたな。
「また会えるかな」
「会えると思うぜ。本人もそう言ってたしよ」
それもそうねと頷く悠香さんは家の中へと戻っていく。
寒さのせいか、いつの間にかガレージには俺とティアナの二人だけになっていた。
掃除が得意な華先生の活躍もあってか、物置の整理はいつの間にか終わっていたらしい。
「ねぇ和輝?」
「ん? どうした?」
寒いし俺も家に戻ろう。
そう思った俺を引き留めるかのようにティアナが声をかけてきた。
振り返るとどこか物悲しそうなティアナ。
「唯乃さんも昔はお父さんたちの敵だったのよね……」
「まぁ……てか、お前が一番わかってんだろ?」
「うん……」
「あれか、レイジの野郎の事か……」
頷くティアナ。
思い出したのはアナザーテイルレッドの事のようだ。
アナザーテイルレッド……いや、レイジ。あの野郎は今どこで何をしてやがるんだ。
先日、奴は俺たちに言った。
奪うも守るも気分次第。オレはオレの好きなようにやると。
「もとは同じはずなのにね」
「つっても、分かり合えない奴だっているだろ。アイツがどれだけ俺たちを助けようが、結局アイツは自分自身の為に誰かを傷つけ犠牲にする」
思い返せば奴との因縁はティアナがこの世界に来た時から始まっている。
レイジは本来の歴史には存在しなかった存在であり、遥か未来からテイルレッドに憧れて時を超え介入してきた奴だ。奴が介入した影響で過去は分岐し、もう一つの可能性であるティアナが生まれた世界もとい次元が生まれた。そしてレイジは自らこそがテイルレッドへと成り代わる為に姿を真似し、ティアナ含めた多くのツインテール属性を狙って悪事を繰り返してきた。
もともと俺が変身に使用していたテイルドライバーも元はティアナが自分以外の誰かに属性力を奪われぬように用意した護衛の為の装備だった。俺がティアナと初めて心合わせて変身した時に聞こえた『心を合わせよ』と言った内容の声もあの野郎が元々そうなるように仕掛けていた作られた物であり、俺とティアナの心を合わせさせてさらなる力を引き出していたのも、すべては後で自らが奪う時の為の布石だった。
俺は一度、奴に負けて命を奪われた事もある。
その後に奇跡の復活とリベンジを果たしたとはいえ、鬱憤は残る。
「ティアナ、お前がどう思おうとも俺はアイツを許せねぇ。そりゃま、助けてくれたことがあるのは事実だけどよ」
レイジの参戦以降、アルティデビルが送り込んでくる刺客
奴らとの戦いは現在も熾烈を極めている。
中にはレイジの助けがなければ危なかった時もあった。
「わかってる。私だってレイジのやろうとしてる事は許せない。でも……」
「わーってるよ。分かり合おうって気持ちは大事だからな。俺だって……」
俺が思い出すのはエレメリアンのバアルギルディについてだ。
アイツはアイツでちょっとウザいし面倒なところはあったが、戦ううちにいつの間にかライバルと呼べる関係に至っていた。
つい最近のマモンギルディの事件の際も奴の残留思念のようなナニカが俺を助けてくれたし、もう一度ちゃんとした決着をつけたいとも思う。
でも、奴はアルティデビル側の黒幕と思しきベリアルギルディに消されてしまった。
あの後も何度か交流を続ければ唯乃さんみたいな仲間になった可能性は0じゃなかった。
「バアルギルディにザガンギルディ。エレメリアンも色々いるのよね」
「滝の奴、今頃は冬コミで忙しいだろうな……」
エレメリアンと友情を結んだ俺の中学時代の親友、滝龍一。
ひょんな事から再会し、夏コミを共にした俺たちだが、俺は滝の友となったザガンギルディを救うことが出来なかった。
「もう、あんなことは起こさせやしねぇ。レイジの野郎も、ベリアルギルディの野郎も……!!」
「無茶しない無茶しない。私だって、今は一緒に戦ってるのよ。二人で一つ、それが私たちが結ぶツインテールなんだから」
ティアナの言う通りだ。
今の俺たちは一つとなり、共にツインテールを結ぶ。
究極とは違う、俺たちだけの極限形態エクストリームチェイン。
二人で一つのツインテールを体現したあの姿とそのさらに上であるエクストリームチェインバーストでどんな敵でも絶対に退けてやる。
「ああ、わかってるぜティアナ」
互いにそう決意を固める俺たちは共に家の中に戻っていく。
大掃除もあと少しで終わるだろう。
ラストスパートをかけ、自室含めた家全体の大掃除を終えていく。
程なくして婆ちゃんとおやっさんが帰宅し、トゥアールさんもやってきた。
「今日は大掃除手伝ってくれてあんがとね。折角だし、今から忘年会としゃれこまないかい?」
「寒いし鍋パーティーといきましょうか。丁度買いすぎで余ってますし」
「あの~おばあ様? 私、掃除してませんけど……参加しても……」
「勿論だよ。トゥアールさんも家族みたいなもんさ、いつでも大歓迎さ」
かくして始まる年末の忘年会となる鍋パーティー。
「ほらみんな!! じゃんじゃん食え!!」
「遠慮するんじゃないよ」
「肉……肉……」
「おしゃけ〜!!」
「青ちゃん、お肉ばかり食べないの。華先生も飲み過ぎ……!!」
「離してくださいです〜!!」
「グヘヘ……!! 少し胸が大きすぎやしますが、中々に幼女ポイントが高いですね〜!! 可愛らしいですよ〜!!」
「いけいけやっちまえトゥアール先生!!」
「ちょっとママ!!」
おやっさんと婆ちゃんが鍋奉行となって場を仕切り、悠香さんは母親のように青葉さんと華先生を叱る。幼女好きのトゥアールさんが美希ちゃんを撫で回しては匠がそれを囃し立てて、ティアナが鉄拳を以て制裁を加える。
いつも通りの騒がしく楽しいお祭りだ。
掃除した後だってのにもうかなり散らかってしまっている。
まぁでも、後の事は後で考えるに限る。
今は今を楽しもう。
「来年もよろしくな」
騒がしくなる中ただ一言、みなにそう告げるのであった。
こういう劇中キャラが今までの事を振り返る感じの総集編を一度やってみたかったなと思ったので書きました。
来年からはそろそろラストに向けて頑張りたいと思います。
来年もよろしくお願いいたします!!