俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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もう一月も終わりですが、明けましておめでとうございます。
今年も本作品をよろしくお願いします。



第157話 新年はツインテールな始まり

 誰もが残り数十分となった今年をどう過ごそうかとしている大晦日の夜。

 トゥアールは一人、そんな事とはまるで関係がないと思えてしまう程にとあることについて真剣であった。

 

「やはりこれは……」

 

 自分以外誰もいないここは地下基地のコンソールルーム。

 和輝とティアナ、二人のテイルブレスを装置に繋げ、ディスプレイを叩いてはモニターに表示されるデータを見てはどこか不味そうに顔をしかめる。

 今の彼女は決していつものおふざけをする彼女ではなく、一切のおふざけを抜きとした科学者の姿であった。

 

「総愛……和輝君……」

 

 トゥアールからすればこの世界にやってきてまだそう経っていない。故に似た境遇である総愛もといティアナと比べてもここでの思い出は数えられる程度である。

 しかし、ここで見て体験した事はある種の懐かしさを覚える物であった。

 特に娘であるティアナを想う少年、涼原和輝の言動や起こしてきた奇跡はかつての観束総二を思い出させる。実の親でないが、トゥアールとしても彼ならば娘を任せる事が出来ると思える程の好印象である。

 だがしかし、トゥアールはその二人の行く末にとある危機感を覚えていた。

 

「エクストリームチェインバースト」

 

 表示されるモニターに映るそれはテイルバイオレットの最強形態エクストリームチェインの先にある真の極限進化形態エクストリームチェインバースト。

 二人の身体や感覚だけでなく、人格や意識、内包される互いの属性力の全てを完全融合したその形態はどんな悪をも打倒す正に最強のテイルバイオレットであり、二人の絆であるツインテールそのものだ。

 だが、それはある意味で諸刃の剣となり得る。

 エクストリームチェインバーストの使用は二人の人格を完全に融合させてしまう恐れがあり、トゥアールが懸念しているのはそこであった。

 

「前回が二回目。たったそれだけだというのに、このままいけばいずれ二人は……戻れなくなる」

 

 ただの杞憂で終わってほしいと思うトゥアールであるが、表示されるデータはそうは言ってくれない。

 マモンギルディとの夢世界の戦いで使用して以降、二人の力は以前よりも急激な速度で上がっている。

 恐らく、寝取られ属性との戦いで負った二人の傷がより深く互いを繋ぎ結ぼうとしているのだろう。

 力が増すことは悪い事ではない。

 がしかし、それは変身中の二人の融合度合いが増している事でもあるのだ。

 

「やはりこれらの開発を急ぐしかありませんか」

 

 画面を切り替え映し出されるのは開発中と思われるいくつかのデータ。

 設計図のように表示されたそれらは新たなテイルギアを思わせる。

 

 

 

 

「ちょっとママー!! いつまでも何してるのよー!!」

 

「そ、総愛!?」

 

 トゥアールが作業に取り掛からんとしたその時、コンソールルームの扉が開き外からティアナがやってきた。

 慌ててモニターをブラックアウトさせ、ディスプレイを閉じるトゥアール。

 幸いなことにティアナはまるで気づいていない。

 

「ママったらいつになったら来るのよ。年越し蕎麦伸びちゃうじゃない!!」

 

 そうプンプン怒るティアナ。

 実のところ、先程からずっとティアナはトゥアールの分の蕎麦を用意しては待っていたのだ。

 ティアナとしても大晦日は和輝だけでなく、なんだかんだで愛してるトゥアールとも楽しみたいのである。

 

「そうですね。今行きますから」

 

「せめてカウントダウンまでには来てよね。蕎麦も私が作ったんだから」

 

 ややきつめにそう言いながらもどこか楽しそうな娘を見てトゥアールは微笑む。

 母として、二人の想いは絶対に守ってみせる。

 微笑みの裏でそうトゥアールは誓うのであった。

 

 

 

 

「――てよ!! お――なさいよ……!!」

 

 朝、ベッドの中で眠る俺を起こす声が聞こえてくる。

 昨日はいつもよりもかなり夜更かししてしまったせいか、いつも以上に布団が恋しくて仕方ない。

 外の空気も冷たく寒いし、せめて後数十分……いや、数時間は布団の中でゆっくりと寝かせてもらいた……

 

「いい加減起きなさいよ!! 和輝!!」

 

「うぉーい!!! 布団がぁッ!?」

 

 俺の願いは今投げ捨てられた布団のようにあっさりと放り捨てられた。

 掛け布団を失い身体を震わせる俺とは違い、起こした張本人であるティアナはパジャマ姿だってのに実に堂々と気力に満ちている。

 

「やっと起きたわね。もう……新年早々寝坊しないでよ」

 

「夜更かししたんだししゃーねぇだろ。てか布団返せよオイ」

 

 起きたというより起こされたんだよ。

 そういった愚痴も飛び出しそうなる今日は一月の一日。元旦だ。

 昨晩は年越しのカウントダウンの後、トゥアールさんが早々に帰ってからは婆ちゃん含めた三人でトランプなどで盛り上がってしまった。

 だから寝るのが遅く、余計に眠いってもんだぜ。

 尤も、ティアナには関係ない様子だ。

 

「寝正月なんてさせる訳ないでしょ。正月ぐらい早起きしなさい」

 

「って、おま!? まだ8時じゃねぇか!?」

 

 トゥアルフォンを開き時刻を確認した俺が叫ぶ。

 昨日、床に就いたのが確か深夜2時半過ぎ……

 つまり合計して5時間とちょっとしか寝てねぇ事になるじゃねぇか!!

 通りでいつも以上に眠いわけだぜ!!

 

「せめて後少しだけでも――」

 

「ねぇ和輝?」

 

「うん?」

 

 無理にでも布団を回収して横になろうとする俺へとティアナが声をかける。

 唐突で首をかしげる俺へとティアナは頭を下げた。

 

「あけましておめでとう。和輝」

 

「お、おう」

 

「今年もよろしくね」

 

 顔を上げ、ティアナはニコリと笑う。

 瞬間、俺の頭に眠るという選択肢が吹き飛んだ。

 可愛らしい笑みと揺れるツインテール。

 見慣れた姿だってのにどこか新鮮さを覚えるその様は何と言うか、新年だからこそ味わえる期間限定の特別な良さがある。

 やっぱし、美少女の笑み×ツインテールの破壊力はとんでもない。

 

「お、おう!!」

 

「ふふっ、やっと目が覚めたみたいね」

 

「まぁ、お陰様でだ。てか、今思ったが新年のあいさつって昨日やってなかったっけオイ」

 

 カウントダウンを終えて0時になった瞬間に言ってたはずだが、当のティアナは何回やってもいいでしょと上機嫌に寝室から出ていく。

 

「ま、それもそうだ」

 

 堅苦しいのは苦手だ。

 正月なんだし緩くやりたいようにやるに限るってもんだぜ。

 俺は着替えた後、ティアナを追いかけるように寝室を後にしリビングへと向かう。

 するとそこには、いつもならまだ寝ている筈の婆ちゃんが正月らしく雑煮を用意しており、トゥアールさんも婆ちゃんの手伝いをしているのか姿があった。

 

「うっす。あけましておめでとうございます」

 

「おめでとうございます和輝君」

 

 さっきは堅苦しいのはごめんといったがこれは例外。

 特に世話になっているトゥアールさんには改めて挨拶をしなければいけねぇ。

 婆ちゃんの手伝いもしてくれているようなのでなおさらだ。

 トゥアールさんはいつも通りの白衣姿でいつも通りの雰囲気で挨拶を返してくれた。

 

「我が孫とは言え、全くいつまで寝てんだい」

 

「るっせーな。いつもなら一番よく寝てる癖に」

 

「でも、今日は私よりも早かったわよ?」

 

「言うな言うな。婆ちゃん調子乗るだろ」

 

「まぁまぁ、和輝君もおばあ様もお雑煮が冷えますので」

 

 トゥアールさんの言葉にそれもそうだと皆全員でテーブルを囲む。

 改めての新年の挨拶を交わした後、朝ごはんがてらに雑煮をいただく俺たち。

 婆ちゃん特製の雑煮は出汁が決め手らしいが、詳しい事はわからねぇ。

 でも、美味いことに変わりはない。

 何年も親しんだ味ではあるが、やっぱし家庭の味ってのは何者にも超える事が出来ないってもんよ。こればかりはおやっさんの作った飯よりも美味しく感じるだろうぜ。

 

「美味しいかい?」

 

「うん、おばあちゃん美味しい」

 

「じゃあ今度教えてやんよ。我が涼原家の味をね」

 

 婆ちゃんにそう言われ喜ぶティアナ。

 家庭の味というのはこういう風に受け継がれていくんだなとしみじみと感じるぜ。

 いつかティアナもこの味を覚え、俺の為に……

 

「……」

 

「ん? トゥアールさん、どうしたんだ?」

 

「え……!? いや、あの……その……」

 

 ふと何か思うような面持ちでティアナを見ているトゥアールさんを見てしまった俺が声かけると、返ってきた反応は実に何かあると言わざる得ないものだった。

 怪しい……という程じゃないが少し引っかかる。

 

「そ、それより、和輝君こそニヤニヤしてどんな気分ですか~? もしかして総愛が……」

 

「ち、ちげぇよトゥアールさん!! な訳ねぇだろ馬鹿!!」

 

 茶化すトゥアールさんへと慌ててそう言い返し、婆ちゃんがその様子を見て面白そうに笑う。

 新年早々、恥ずかしくも楽しい朝だ。

 そうこうしながらもあっという間に食べ終えた俺たちは次の用事に向けて支度を開始する。

 

「じゃあ和輝、用意してくるから」

 

「あいよ了解」

 

「では、私は用事がありますのでここで。おばあ様、後はお願いします」

 

 用事があるらしいトゥアールさんが退出し、ティアナと婆ちゃんをリビング隣の和室へと送り出す。

 この後の予定というのはズバリ初詣。

 例年通りであれば神社など混み合っていて面倒だし行かないのだが、今年はティアナがいきましょうよと言ってきた以上は行かざる得ない。

 婆ちゃんも婆ちゃんで、俺の彼女の着付けが出来るなんて夢のようだよと喜んでいやがる。

 

「和輝、覗くんじゃないよ」

 

「やる訳ねぇだろ!! アホ!!」

 

 和室の襖を閉める際にが婆ちゃんがそう一言。

 さっきの件もあってか俺は声を上げて拒否をする。

 全く、やる訳ねぇだろうが……

 そう言いつつも、俺は襖の向こうへと興味津々であった。

 

 

 

 

 私、観束総愛は、昔からお正月になるとその年に合わせた専用の晴れ着を着用していた。

 初めて着物を着たのは恐らく私がまだ物心がついていない時期。

 アルバムに残っている幼い私は晴れ着に加え、お正月らしく簪などのアクセサリーで彩られたツインテールが余程嬉しかったのかどの年も満面の笑みだった。

 それら全てを用意してくれるのはお父さんの昔からの友人であり仲間であるテイルイエローこと神堂慧理那さん。

 最初はお父さんもお母さんも毎年毎年別の物を用意してくれる事はありがたいと思う反面流石に申し訳ないという気持ちもあったみたいだけど、私の毎年の成長をよりわかりやすく残すという名目もあってか、私が物心ついた頃にはすでに恒例行事になっていた。

 私としては毎年の事だし今更申し訳ないという感情はあまりない。

 むしろ慧理那さんには感謝している。

 私の成長に合わせたその年流行るであろうデザインやコーディネートに外れはない。

 

 

 

 しかし、今年は違う。

 今年はそもそも、さっき言ったいつものお正月じゃない。

 今年、私は自分が元居た世界ではなく、和輝が暮らす別の世界でお正月を祝っている。

 そこで和輝のおばあちゃんが用意してくれた晴れ着は、いつかの為にと昔自分が使っていた物を大事に保存してれくれていた物であり、あまり良くない言い方をすれば全体的に少し古い感じがする。

 でも、何だろうこの感じ。

 

「ほら、どうだい?」

 

「……綺麗」

 

 思わずそう声が漏れてしまう程、姿見に映る私の姿は綺麗だった。

 淡い紫の着物はいくつかの花模様があり、気品さと上品さがあって美しい。髪留めに使っているのはこれまたやや古めかしさこそあるけれど、昔ながらの良さを感じる花飾りが付いている。

 去年までの私の赤く可愛らしい晴れ着姿も十分良かったと記憶しているけど、これはこれで良い。

 例えるなら昔の映画やドラマに出てくる女優さんみたいな感じかな? 

 自分自身だからってちょっと言いすぎ?

 

「そうだろうそうだろう。あたしゃの目に間違いはなかったのさ」

 

 ご満悦なおばあちゃんはさっき以上に嬉しそう。

 

「若い頃思い出すねぇ。おじいさんが生きてた頃が懐かしいよ。正月はよくその服着たもんさ」

 

「という事は、やっぱりこれっておばあちゃんが着ていた物……」

 

「ごめんね、こんなのしかなくて」

 

「ううん、違うよおばあちゃん。私ね、すっごく嬉しい!! ありがと!!」

 

 そう言うとおばあちゃんは凄く喜んでくれた。

 薄っすらとだけど、目元に涙まで見える。

 

「じゃあそろそろ見せるとしますかい。ま、あの馬鹿にはもったいないけどね」

 

「ははは……」

 

 おばあちゃんのこの和輝に対するちょっとツンツンした態度は凄く血の繋がりを感じるなと思って苦笑い。

 私としては和輝に見て欲しい気持ちでいっぱいなんだけどね。

 こういった心境の変化も去年までじゃ絶対になかったことだし、もしかしてこういった所も晴れ着姿に喜ぶ気持ちに出ているのかな?

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

 襖を開けようと近づこうとしたおばあちゃんが足を止める。

 何があったのかと尋ねる私に対しておばあちゃんは指に手を当て静かにするようにとジェスチャーをした後、そのまま何も言わず襖を勢いよく開く。

 

「おわっ!?」

 

 するとどうだ。

 ドンと大きな音と、すっとんきょうな声と共に和輝が前のめりに倒れこんで来た。

 最初は「どうしたの!?」といった感想しか出てこなかったけど、これってアレよね……

 

「いや、その……痛って……」

 

 気まずさからか和輝は言葉を濁す。

 もう自分から答えを言っているようなものだし、おばあちゃんはため息を吐いている。

 

「まったく、除くんじゃないよって言っただろう。お前という馬鹿孫は」

 

「いや、ほんと……すいません……」

 

 おばあちゃんはああ言っているけど、こういう時、私はどうすればいいのかわからない。

 少し恥ずかしい気持ちもあるにはある。

 でも、それ以上に見られて嬉しいという感情もある。

 

「ねぇ和輝?」

 

「お、おう……」

 

 倒れこんだ体勢のまま顔を上げる和輝と、それに合わせて体をかがめる私。

 和輝も私も顔が赤くなっているのがわかる。

 少し気まずい空気だけど、意を決して私は尋ねる。

 

「ど、どうかな?」

 

 和輝はどう思ってくれるのか。

 言いながらも少し不安に駆られた私はツインテールの穂先をいじってしまう。

 それに対し和輝は、体を起こして私の手を取ると、顔を赤くし目をそらしながらも告げる。

 

「き、綺麗……すげぇ綺麗だよ……ってうお!?」

 

 瞬間、私は和輝に抱き着いていた。

 マモンギルディとの戦い以降、感情が高まった時にこうするのが癖になっているような気がしないでもない。

 でも、凄く落ち着くし嬉しい。

 

「じゃあ和輝。ちゃんとエスコートするんだよ」

 

「はいはいはい。わーってますよってな」

 

 おばあちゃんに送り出された私たちは学校の近所にある神社へと向かう。

 恥ずかしいのか面倒なのかわからないけど、和輝はバイクで行こうぜとごねてはおばあちゃんが黙らせた。

 ほんと、いいおばあちゃんね。

 以前にも言ったし、本人もそう言っていたけど、若い頃はすっごくツインテールの似合う美人さんだったんだろうなぁ。

 和輝と肩を寄せ合い歩く中、ふと私はそう思うのだった。

 

 

 

 

「ねぇ? 和輝は晴れ着とか着ないの?」

 

 神社まで歩く道すがら、ティアナが俺にそう尋ねてきた。

 

「なに? 俺も変身して女になれってか?」

 

「いや、そうじゃなくて……男だって着物くらい着るでしょ」

 

 あ、そういう事か。

 つまり、ティアナは俺に袴とか紋服とかを着ないのかって言ってるのね。

 確かにそれならちと古風すぎるきがしない事もねぇが、あり得なくはないな。

 正月の晴れ着=女が着る物と思っていた俺にはすぐには思い浮かばなかった光景だ。

 

「探せば爺ちゃんが着てたのがあるかもしれねぇな。でも、パス」

 

「えー」

 

「何だよ見たかったのか?」

 

 少し不満気になりながらティアナは残念がっている。

 俺からしたらこんな俺なんかの着物姿にどこ需要があるのかわからねぇ。

 ティアナはまごう事なき美少女だが、俺はそこまで大層な面してないぜ。

 

「似合うと思うけどなぁ」

 

「まーそう言われてもな。正直、かったるいんだよ。着物とか昔の服ってのはどうもしっくりこねぇってか……普通の方がいいっていうか……」

 

「じゃあこれも――」

 

「ち、ちげぇよ!! 俺の話だ!! 俺の話!!」

 

 俺は堅苦しいのはあんまし好きじゃない。

 着物とかスーツとかでバシッと決めるよりかはいつも通りのラフな格好が好きだし、女の子の服装で好きなのもどちらかと言えばそうなる。

 でも、ティアナは別だ。

 こいつが着る物なら正直なんでも好きだし、何でも似合うと思う。

 今の晴れ着姿だって元々が婆ちゃんの服だったなんて信じられねぇくらい着こなしてる。

 

「冗談よ。ありがと和輝」

 

「意地悪だなオイ」

 

 傍から見れば今さっきの俺って勝手に焦って騒いでいたのか?

 フフっと悪戯に笑うティアナを見て、俺は周りの目を気にしてしまう。

 歩いて話しているうちにいつの間にか近場の神社はすぐそことなっている。

 元日って事もあってか初詣目当ての奴らが多い事多い事……

 

「うげぇ、こんな多いのか……」

 

 道中でうんざりしていた俺はまだまだだなと言わざる得ない光景がそこにあった。

 多数の人だかりは神社入口となる鳥居付近からさらに数を増しており、拝殿への参道には思わずギョッとしてしまう程の長蛇の列が出来ちまっている。

 これじゃさながら遊園地で人気のアトラクションか何かだぜ。

 敷地面積的に1時間待ちではないにしろ結構うんざりしちまう人の列だ。

 これまで毎年寝正月だった俺には中々に絶望的な光景すぎる。

 ティアナには悪いが、さっさと帰りたいって気持ちで一杯だぜ。

 

「普通の神社ってこんなに多いんだ……」

 

「そりゃまぁ一月一日だしな……って、ん?」

 

 今まで過ごしてきた世界が違うと言えど、毎年ちゃんと初詣に行っていたはずのティアナから聞こえてくる普通の神社という謎のワード。

 参道で並ぶ時間も長そうだし、そのあたりについて聞いていることにする。

 

「なぁ、もしかしてお前って毎年変な所に初詣に行ったりしてるのか?」

 

「ちょっと、その言い方はやめなさいよ」

 

 ムッと口を尖らせるティアナ。

 俺としてはさっき言った事を推理しただけだが、なんかすまん。

 ティアナはそんな俺を見て察したのか、機嫌を直して自分がいた世界での初詣及び行っていた神社について話し出す。

 

「まぁ一般的な神社じゃないってのはその通りね。私が行っていたのは神堂家に代々伝わる神堂神社って所なの」

 

「神堂? 慧理那さんか?」

 

「そう。またの名をツインテール神社。ツインテールを祀り、神聖なツインテールを崇める神社よ」

 

「ツインテール神社……ねぇ」

 

「そこはね、鳥居がツインテールを表してたり、ツインテールを極める手水舎があったり、ツインテールの女神様の祠があったり、他にもすっごくツインテールでね!! 兎に角ツインテールがツインテールで……!!」

 

 嬉々として語るティアナ。

 ツインテールという言葉が会話に入るだけでこれだ。

 いつも通りとはいえ、他の神社の参道でこんなこと話していたら罰が当たってもおかしくないとは思う。

 

 まぁ、にしてもツインテール神社か……。

 神堂家云々って所を聞くに、テイルイエローこと慧理那さんの私有地に当たるのはわかるが、そんな施設まであるのか。

 金持ちの所有する物とか場所ってのはよくわからないのが多いが、その典型例にあたるって感じがする。

 予想だが、その他にもツインテールって名が付いた施設もいっぱいあるんだろう。

 例えばツインテール温泉とか……

 

「いつか、和輝と行けたら……」

 

 手や口を清め、やっとこさ拝殿まで列が進んだ時、ふとティアナがそう口にする。

 俺はその発言に何とも言えない寂しさを覚えるが、直後にティアナが鈴を鳴らして礼。

 後に続くべく俺も慌てて拍手と礼。

 慌てていたこともあって願いを深く考える暇もなく、ただ思った事を願ってしまった。

 

「さ、後はおみくじでも引いて帰りましょうか」

 

「賛成……って、あれは……」

 

 御守りやおみくじを売る場にて見覚えのある人影を発見。

 あちら側も俺たちに気が付いたのか手を振ってくる。

 

「おっす、和輝!! あけおめい!!」

 

「ティアちゃんもあけおめ~。着物姿似合ってるわよ~」

 

 そこにいたのは匠と悠香さんの二人。

 どうやら悠香さんは匠と華先生と共に初詣に来た客の取材するつもりで来たらしく、今ちょうど華先生が神社の方々に確認しにいった所のようだ。

 何でも新年の願いとか運勢とかその他色々を聞いて回るつもりらしい。

 

「二人は何? 初詣?」

 

「あんたたちだけだよ、それ目当てじゃねぇの」

 

「それもそうね。確かにそうだわ」

 

 アハハと笑う悠香さん。

 この人にとってそれしかないのかとツッコミたいぜ。

 

「悠香さん、私たちはこれからおみくじでも引こうかなって思ってたんです」

 

「ふーん、じゃあ丁度いいタイミングだし、あたしたちと一緒に引かない? ここはいっちょ運試しといきましょ。誰が今年一番の運勢か勝負よ」

 

 どうしてそうなる。

 おみくじってそういう物じゃねぇだろと声を大にして言いたい。

 がしかし、当のティアナたちは案外やる気であり、嫌がる俺に対して匠と一緒に「逃げるの~?」とか言って煽ってきやがった。

 その瞬間、俺の闘志に火が付いた。

 

「あーそうかい。だったらやってやらぁ!!」

 

「「簡単ね(だなー)」」

 

 巫女さんへお金を渡しておむくじを受け取る俺たち。

 果たして誰が一番運がいいのか。

 悠香さんのせーのを合図にみな一斉に内容を見せあった。

 

「ラッキー、あたし大吉~」

 

「私も!!」

 

 真っ先に喜び合うのは悠香さんとティアナ。

 最上位の大吉を引き当てた以上は二人の勝ちはほぼ約束されたようなもんだ。

 俺と匠は互いに最下位になってたまるかの精神でお互いを確認し合う。

 

「何々? 和輝は……中吉ね」

 

「たっくんは……吉」

 

 俺が中吉で匠が吉。

 これって俺の方が上だよな?

 

「これってどっちが上っすか?」

 

「そりゃあ中吉の俺の方が……」

 

「いや、どうも二通りの解釈があるみたいよ。大吉の次に吉が来るものと大吉の次に中吉がくるものの二つが」

 

 ティアナがネットでそう調べたらそうでたらしく、俺も悠香さんもそれぞれ調べてみたらどうやらそのようだ。

 じゃあこれはつまり引き分けって事か?

 どうもしっくりこねぇなオイ。

 

「ま、肝心なのは内容っすよ。そうだろ和輝?」

 

「そ、そうだな」

 

 匠に言われた事もあり、改めてくじの内容を確認する。

 全体的に当たり障りのない中吉ってこんなもんだよな程度の内容の数々。

 その中で一つ、気になる項目があった。

 それは恋愛についての内容で、争い来たる注意せよと書いてある。

 何故だろうか。ただの喧嘩なら今まで何度もしてきたのに何故か引っかかる。

 

「どうしたの? 何か変な事でも書いてたり?」

 

「いや、そうじゃねぇんだがな……!!」

 

 ティアナに指摘され慌てた俺は、くじの内容を見せずに結び所で結ぶ。

 果たして中吉なんかで結んでいいのかは定かではないが、何となく嫌な予感を感じ取った以上はこれがベストであったと信じたい。

 

「おまたせー許可取れたわよ」

 

 俺たちがおみくじで一喜一憂していた時、神社の本殿がある方から華先生がやってきた。

 そういや、華先生は神社内で取材していいかの許可を取りに行っていたんだよな。

 悠香さん曰く、事前許可はとったらしいけど、顧問として確認も兼ねて改めて行ってきていたようだ。

 

「あけおめ、華先生」

 

「あけましておめでとうございます。華先生」

 

「涼原さんたちもあけましておめでとう。それよりおみくじ引いたの?」

 

「私たち、誰が一番の運勢か勝負していたんです」

 

 俺に代わってティアナがそう説明。

 すると、華先生もまだ引いていないしやってみようかなと意外と乗り気な様子を見せる。

 果たして華先生の運はどうなのか?

 皆が期待する中、ウキウキでくじを受け取った華先生がくじを開く。

 するとそこには……

 

 

「「「「だ、大凶……」」」」

 

 華先生の初泣きがそれになったのは言うまでもない。

 なんつうか、色々ドンマイだぜ先生……

 

 

 

 

 

「私……今年もこの世界でツインテールで満たされてますようにって願っちゃった」

 

 悠香さんたちと別れて神社を後にする際、ティアナが参拝での願いを口にした。

 彼女らしいツインテールに関する願いであり、恐らく毎年本心からこう願っているのだとわかる。

 だけど、今年は本当にそうなのか?

 何となくだが、俺と同じ願いをしたんじゃねぇのか?

 

『このままずっと一緒に入れますように』

 

 それが俺の願いだ。




新年初っ端から不穏な伏線まみれですが、ストーリー的もそろそろ佳境なので。
原作はどうだったかなと14巻の序盤を読み直してみましたが、原作の方もトゥアール周りが結構不穏な感じにはなっていましたね。
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