俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
私事ですが、この作品とは別に違う題材での二次創作も書いてみようかなと検討しています。
次回以降、更新が遅くなるかもしれませんが、一ヶ月に2回ほどは更新していきたいなと思っていますし、絶対に完結させるつもりなので安心してください。
無数に存在する平行世界の一つに生物一つ存在しない世界がある。
それはとある邪悪な女科学者によって改造されてしまった我々の住まう世界のもう一つの可能性。
名付けられたその名はビエルプラネット。
かつてその邪悪な女科学者の野望の為に改造されたその地は星全体が一つの巨大なテクノロジーの塊である秘密基地とも言えるようになっており、主人失い滅びてしまった現在でもシステムの大半は未だ生きている。
そんな世界にレイジは降り立った。
「ここがやっこさんの待つ場所か……。座標に間違いはねぇな」
テイルブレスに内蔵された簡易的な異世界渡航装置はトゥアールですら未だ完全に実用化に至っていないレイジ専用の装備である。
座標を入力して起動すれば今いる世界から別の世界に飛ぶことができる。かつて、和輝たちがティアナと共に異世界渡った際も、テイルドライバーを仕込む細工された際に搭載されていたこの機能を使ったからであり、レイジが幾つもの世界を短期間で回れてのもこれあっての事。
辺り一面を見渡すレイジ。
この地がどこなのかはすぐにピンときた。
「こいつは……なるほど。これまた随分と懐かしいねぇ。あん時の事が蘇ってくるってかぁ」
平行次元での出来事とは言え、レイジはここでの戦いを経験している。
当時はまだ、アナザーテイルレッドとしてではなく、ツインテイルズの一員になるべく彼ら彼女らをサポートしようとしていた時代である。
『到着早々に何をぶつぶつ言っている。約束の時間から随分と遅いんじゃあないのか?』
どこからともなく声が響く。
機械を介して聞こえてくるその声の主はレイジをこの地に誘った張本人であるベリアルギルディ。
彼こそ、今のこの地の主だ。
「なぁにこっちの話だ。それよりこんな場所よく見つけたもんだ」
『おっとそれは違うな。ここは我が愛しきマイエンジェルの遺してくれたオレ様への愛の結晶だ。ビエルプラネット、
いや、絶対違うだろ。
心の中で思わずツッコミを入れるレイジ。
声に出さないのはベリアルギルディの性格を加味しての事。
目的の為に今は無駄に争う必要はない。
「ま、んな事は今はどうでもいい。オレを呼んだんだ。お前さんが研究する無属性の力、見せてもらうぜ」
『無論だ。来るがいい』
星全体が動き出し、一つの巨大な研究施設兼要塞となる。
世間が正月を祝う中、ベリアルギルディと一時的に手を組む事にしたレイジは突き進む。
自らの野望の為に……
◇
「さぁさぁ皆の衆!! どんどん食べるがよい!!」
新年始まって3日目となる三が日最後の日にエレメリアンは現れた。
場所は俺たちが初詣に行った場所とは違う都心の大きな神社。
境内の中、初詣で未だ賑わう参道客たちの前に現れたそいつは自分で持ち込んだと思われるイベントテントを張っており、一人その中で携帯コンロでぐつぐつと鍋を回したり七輪で餅を焼いたり何重にも重なった重箱をせっせと展開していやがった。
「う、美味い!!」
「なにこれ!? ちょ~美味しい!!」
「まま~おいちい~」
「体が温まるのぉ……」
「でも、お金が……」
「ハハハ、お代はいらぬ。遠慮なく食べるがよい!! 我がハルファスギルディはこの日の為に精を出しているのだからな!!」」
鳥の頭を持ちブクブクと太った体型をした鳥人型エレメリアン、ハルファスギルディが気になり近づいてくる人々へと自身の用意したおせちなどの料理を振る舞っている。
最初は皆が警戒して近寄らなかったようだが、その空腹を刺激する匂いには勝てなかった一人が雑煮をいただき美味そうに口にいれたのを見てあれよあれよと人が集まった様子だ。
おせちや雑煮、それらを口にした人たちは皆、とても晴れやかで幸せそう。
お参りの際の参道での待ち時間をいただいた雑煮片手で過ごす者も現れている始末。
「な、何やってんだアイツ……」
(アレ、おせちとお餅とお雑煮……よね?)
境内にやってきた俺たちが見たのは大量の料理を持ち込んではそれを参道客に振る舞うエレメリアンの姿だった。
パッと見ではまるで敵意を感じないその行動に目が点になる。
『気を付けてください。属性力の反応も少ないですし、害はなさそうに見えても、くれぐれもあの料理には手を付けないように』
通信にてトゥアールさんがそう釘を刺す。
確かに、あの料理は一見美味そうだが、何が仕込まれているかわかったもんじゃねぇ。
食っちまった人たちを見るに即効性の毒は入っていないようだが、遅効性の毒である可能性は否定できない。
口に入れたら最後、属性力を奪われるだなんてまっぴらごめんだ。
(もしかして……暴食の性癖?)
「おいティアナ、それって……まさか!?」
(食に関する性癖ならもしかしたらって……)
七つの性癖は七つの大罪に当てはまる敵で、残るは怠惰と色欲と暴食。
皆に食事を振る舞うあの様子を見た以上、暴食の可能性は捨てきれない。
「どうするよトゥアールさん」
『確かに、暴食の性癖である可能性はありますね。直にテイルブルームも到着しますので協力して対処しましょう』
トゥアールさんの言う通り、テイルブルームが少ししたらやってきた。
目標であるハルファスギルディは未だ俺たちの存在に気づかず料理を振る舞うのに忙しい様子だ。
まずは姿をさらして周囲の人たちを遠ざけさせよう。
「おいテメェ!! こんなところで何してやがる!!」
「お!? やっと来たかテイルバイオレット!!」
遂に気が付いたハルファスギルディが配るのやめて俺たちがいる方へと振り向いた。
感じられる属性力はそう高くないのに凄い自信を感じる物言いだ。
俺をの登場を知った事で、さっきまで料理を貰おうと並んでいた人たちはざわつきながらも空気を読んで一斉に下がる。
ちなみに隣でテイルブルームが決め台詞的ないつもの奴を言っていたが、人々の声にかき消されたのはおいておこう。
「まずはあけましておめでとうだな!!」
「おめぇらにもその文化あるのね……」
実に律儀というか……俗っぽいというか……
俺もティアナもみんながコイツは七つの性癖ではないと確信する。
新年の挨拶もエレメリアンらしいと言えばらしいが、七つの性癖の奴らならこんな事はしないからだ。
「こちらこそ……!! あけましておめでとうございます」
(先生、相手はエレメリアンですって……)
「まぁいいじゃねぇか。とっととぶっ倒すだけだろ?」
反射的に挨拶をしてしまうテイルブルームにツッコミを入れるティアナたちは置いておいて、今はこのハルファスギルディとかいうデブエレメリアンを倒すに限る。
臨戦態勢となって構える俺たち。
しかし、当の相手であるハルファスギルディは戦う素振りを見せず、調理器具片手に鍋の温度を調整したりおせちを皿に盛り付けたりしてやがる。
「おい、お前何してんだ?」
「何をしているかだと? 見てわからぬか? 正月料理を振る舞おうとしているだけだよ」
いや……そういう事じゃねぇよ。
心の中で思わずそうツッコミを入れざる得ない程、堂々とハルファスギルディはそう答えた。
これにはティアナも困惑し、漂ってくる匂いが空腹を刺激しては緊張感を殺してくる。
腹が減ってくるぜ。
「嘘をつくのはやめなさい!! きっとその中には属性力を奪う為の毒か何かが入っているのはわかってます!!」
流石テイルブルームだ。
空腹を刺激する匂いにも負けず、キリッとした表情のままテイルブルームがそう指摘した。
次の瞬間、ハルファスギルディの表情が変わる。
「失礼な奴だテイルブルーム!! アルティデビルを抜け、料理人を目指すこのハルファスギルディを愚弄する気か!?」
え? 何? じゃあコイツ、戦いに来たわけじゃないのか?
アルティデビルを抜けたとか言ってるし、最近ちょこちょこみかけるはぐれエレメリアンの一体って訳か。
「りょ、料理人なの……?」
「そうだ!!」
「じゃあ、あなたの目的は……?」
「腕によりをかけたこの正月料理を食べてもらいたい!! ただそれだけだ!!」
堂々とそう宣言するハルファスギルディ。
何とも言えない空気が境内に流れていく。
「なぁ、コイツらって本当に悪の怪物なのか?」
エレメリアンって時々、こうだから調子が狂う。
悪役ならもっとこう……さぁ。
『う~ん、個体にもよると言えばそうなのでコメントに困りますね……』
エレメリアンに慣れているトゥアールさんもそう言ってしまうあたり、エレメリアンという種の奇天烈さが訳を分からなくさせる。
要するにコイツは改心したって事でいいのか?
ただ何つうか、ザガンギルディとかとは違ってどこか邪な感じがする。
「ささ、お近づきの印も兼ねて我が料理を召し上がってくれ。おせちに雑煮、いくらでもあるぞ。テイルバイオレットはお餅いくつ欲しい?」
「じゃあ……二つ」
「よしきた」
「私は一つで」
「かしこまった」
敵意はない事を確認したこともあってか、俺たちはそれぞれ雑煮の入ったお椀を受け取り、ハルファスギルディは餅を焼き始める。
下がってギャラリーとなっていた周囲の人々もいつの間にか戻ってきており、皆が先ほどまでと同様にご馳走に舌鼓を打っている。
さながらここがボランティア的な配給所か何かを思わせる。
「お、美味しいですね……」
「ちょい味濃いめだけど、まぁ確かに……」
(そ、そうね……)
味覚を共有しているティアナや隣で頂いているテイルブルームも同じ感想だ。
確かに美味い。
雑煮は寒いこの時期の体を温めさせてくれるし、おせちは各種ありとあらゆる縁起物が大量にあって一度手をつけたら思わず止まらなくなってしまうような魅力で溢れている。
肉や魚は兎も角、おせちにはしてはちと脂っこくて味が濃いのが気になるがな。
美味そうにいただいたそんな俺たちをみて機嫌をよくしたハルファスギルディは、用意していたであろう大きな荷台から脂の乗った肉や魚といった食材を出しては瞬く間に調理をしては紙皿に乗せて配っていく。
次から次へと絶え間なく料理が出てくるこの様はまるで親戚の家にご馳走されいった時のようだ。
「ははは!! いいぞ、もっと食え!! これこそが俺の夢の一歩!! アルティデビルを抜けてよかった!!」
ハルファスギルディが滅茶苦茶感激していやがる。
どこか引っかかるが、出し続けられるご馳走をつつく箸が止まらない。
これじゃあ、太っちまうな……
そうふと思った瞬間、俺はようやく今まで引っかかっていた何かに気が付いた。
「おいハルファスギルディ」
「なんだ? テイルバイオレット」
「お前の愛する属性は何だ?」
「無論、
そう口を滑らせた時、俺と、俺と一体化しているティアナ含めたこの場にいる女性たち全員の視線がハルファスギルディに敵意を見せたのは言うまでもない。
「肥満とはこの世に存在する美の中で最も健康的な美だ。ムチムチに膨れた太ももにでっぷりとした乳、ぶるんとはみ出た贅肉。ああ……いいぞぉ……!! ついつい食べ過ぎてしまうこの正月を終えた時こそが俺の理想郷の第一歩となり――あ……!!」
「「
「おそまつさまでした~!!!!」
直撃ではないにしろ、必殺技をうけたハルファスギルディは空の彼方まで吹っ飛んでいく。
少し可哀想な気も若干あるが、女にとっての地雷を踏んだ以上は仕方がない。
悪事のレベルがしょぼく直接的に属性力を奪おうとしていない+目的はどうあれ無料で美味い料理を配っていただけって事を加味して空の彼方までブッ飛ばす程度で済ませてやったのがせめてもの情けって奴さ。
かくして、新年初戦闘は幕を閉じる。
……俺、太ってないよな?
帰還する際、無性にそれが気になった。
◇
時が過ぎるのは早い。
休みの日とか楽しい日というのはなおさら終わるのが早く感じてしまう。
今日は1月の10日、ダラダラしたりして楽しかった冬休みが終わって3学期目の始業式であり、今はそれが終わって下校の時間だ。
高校二年最後の学期ではあるが、休み明けってのは帰り道であっても気が滅入る。
真面目な学生ならこの通学路も少しは感慨深く感じちまうのだろうか?
全然、真面目でも何でもない不良学生一歩手前な俺には到底感じない感覚であるし、バイクで登下校をしている以上はそんな気分になる訳もない。
「どしたの? 疲れちゃってさ」
「どうしたもこうしたもあるかっての。休み明け程憂鬱な日はねぇぜ」
「ふ~ん、事故だけはしないでよね」
マシントゥアール後部座席に跨るティアナは憂鬱な俺とは違ってこの休み明けってのを何とも思っていないみてぇだ。
何ともそっけない返事ではあるが、真面目寄りなティアナにはある意味仕方ない。
「まぁでも、疲れたと言えばそうかもな。ここ最近、はぐれエレメリアンどもの活動が活発だしよ」
詳しい理由や原因は不明だが、アルティデビルを抜けて人の街に潜伏しながら自由気ままに暮らすエレメリアンが存在しており、俺たちはそれをはぐれエレメリアンと呼んでいる。三が日最後の日に現れたハルファスギルディや去年アナザーテイルレッドが倒したバルバトスギルディ、暴走したティアナが惨殺したフォルネウスギルディとかがそれに該当する。
そいつらは全員対して強くない。てか弱い。
でも、ここ最近はそんな奴らがかなりの頻度で騒ぎを起こしやがるんだ。
ハルファスギルディ以降、今日に至るまで既に6体。
どいつもこいつも強くないし、追い払ったり倒すのも楽っちゃ楽だけど、流石に「多いわボケ」とでも言いたくなってくる。
「そっか、私は……ちょっと嬉しいかなぁ」
「はぁ? 戦うのがか?」
「いや、ごめん。そうじゃなくてね」
少し不謹慎だったかなとばかりに慌てて訂正するティアナ。
交差点に差し掛かり信号が赤になのでマシントゥアールを一度停車。
停まると同時にティアナが口を開く。
「最近ね、変身してると和輝の事がすっごく近くに感じられるような気がするの。まるで私と和輝が本当に一つのツインテールになったみたいな気がしてさ」
「まぁ……確かに……」
信号が赤から青へ。
マシントゥアールを発進させた俺はふと考える。
確かにここ最近は変身しているとティアナの事をより近く、より深く、より強く感じられるようになっている気がする。
原因も理由も不明だが、そのおかげもあってか最近のテイルバイオレットは絶好調というしかない。
今なら七つの性癖の一人や二人、どんな奴が襲い掛かってこようが負ける気なんざ全くない。
かかってきやがれこの野郎だぜ。
「今ならあん時とは違うツインテールが結べるのかもな」
「そうね。あ……!! じゃあ家に帰ったらまた私のツインテール結んでみない? あの時からどう成長したか見てあげるわ!」
「マジか……緊張するぜ……って、うん?」
その直後、俺とティアナ二人のトゥアルフォンが鳴りメッセージが入る。
同時に来たという事は送り主は恐らくトゥアールさんだろう。
一度マシントゥアールを道路脇へと移動させ停車し確認。
要件はズバリ、新装備が開発できたので来て見て欲しいとの事。
いかない理由もないのでこのまま向かうとしよう。
学校地下に建設された基地へ繋がる転送ゲートがある秘密のルート丁度その先に一つある。
俺はティアナと共に向かうべくマシントゥアールを走らせた。
◇
地下基地の中、トゥアールさんの待つコンソールルームへと到着。
待っていたのは呼び出し主であるトゥアールさんの他、いつも通りの悠香さんらと華先生。
いつものメンツの中じゃ俺たちが最後か。
なんだかこうしていつも通り集まってるのを見ると今年も始まったなって気分になってくる。
ま、んなことより今は新装備ってやらがどんな物なのかって話だぜ。
「最初に言っておきますが、新装備と言ってもそんな大したものではないと断っておきます」
「保険をかけるなんて珍しいですね〜。でも、トゥアール先生の事だし結構凄いんじゃないの?」
「まぁそうですね……お年玉程度と思って貰えれば大丈夫です」
お年玉程度って事は劇的な変化というより痒い所に手が届くなる程度のアップデートって認識で合ってる……のか?
まぁ、ここ最近は定期的にトゥアールさんにテイルブレスを預けたりしていたわけだし、戦闘データからある程度の能力の拡張とかはしてくれるのならありがたい。
にしてもお年玉か……。
婆ちゃんって意外とケチで中学生以降はくれやしないからなぁ……。
いやまぁ、高校生以上で貰っているのもそれはそれでダサい気もするけどよぉ。
「ではまずはテイルブルームの装備からいきましょうか」
「あ、私ですか?」
まさか自分にあると思っていなかった様子の華先生。
振り返ってみればテイルブルームはシャイターンギルディ戦で得たフルブルームの力以外は特にこれといったものは今まで存在していなかった。
そもそもテイルブルームの力自体の出所がいまいちよくわかっていなかったりする。
華先生を想いにティアナの強力すぎるツインテール属性が力を与えたんだっけか?
属性力って想いの力ってだけあって色々不思議な事ばかりだ。
「テイルバイオレットのブレイブチェインやエモーショナルチェインを元に制作してみました」
トゥアールさんがディスプレイを操作しモニターに表示。
映されたのはテイルアーマーY(仮)と記載されたテイルギアの追加装甲。
「これって……」
「慧理那さんのよね……」
真っ先に俺とティアナの二人がそう反応。
悠香さんたちはあまりピンと来ていない一方、実際に会って共闘した間柄でもある華先生はその名を聞きしみじみとしている。
「懐かしいわね。異世界で戦ってから結構経つし」
「あれ? お会いになられていたんですね」
「私がまだ記憶喪失だったころにちょっとね」
トゥアールさんは俺たちが異世界でツインテイルズと共闘した時の事を知らない。
てっきり知らないのかと思っていたようだが、知っているのならば話は早いとトゥアールさんはディスプレイを操作する。
「見ての通り、こちらはテイルイエローこと慧理那さんの戦闘データなどを元に開発した新型のテイルアーマーです。テイルイエローは近接戦闘に特化したレッドやブルーの物よりも中遠距での戦闘に特化した装備で、その火力はノーマルチェインでしたのなら最強と豪語できます。これらもオリジナルにちなんで火力と砲撃支援の強化を重点的に制作しました」
「へー、だからこんなすっげー重装備なんすね」
匠がそう声に出してしまう程、改めて表示されたテイルアーマーY(仮)の推定火力と装備の数々は目を見張るものがある。
主砲となる背中の陽電子砲に肩のバルカン、その他レールガンやニードルガンやスタンガン、大量のミサイルと実弾兵器からビーム兵器と近接自衛武器とより取り見取りの正に歩く武器庫。
テイルイエローの装備を再現し、その力の一端を使用できるようにするための追加装甲としては百点満点と言える。
一つこれはどうかなぁと思うのはホーミングミサイルが胸の装甲に仕込まれている事くらいだろう。
「でも、これだけの追加装甲じゃ機動力に難が生まれるんじゃないの?」
武装一覧をみて悠香さんがそうツッコむ。
確かにこれだけの重装備ではいくら火力が上がろうとも動きが鈍くなるのは必至だ。
テイルブルーム自体、通常時はそこまでスピードに物を言わせた戦い方ではなく、どちらかと言えば防御を主体にカウンターを入れていく戦い方ではあるが、基本的に徒手空拳中心で戦っている以上は無視できない。
「それならご心配なく。オリジナル同様に装備は順次パージできるように設計しています。
不安がる俺たちに向かってトゥアールさんがそう説明。
流石はトゥアールさんだぜ。
ユナイトなんちゃらってのが使えないのは惜しいが問題はない。
むしろ唯一の懸念点はなくなったも同然だ。
「じゃあ、撃ち切ったり、邪魔になったらすぐにパージして戦えるのね……」
「まぁ、オリジナルの使用者はポンポン脱いでましたけどね」
トゥアールさんがそう漏らし、隣のティアナが目を逸らしている。
そういや、確か慧理那さんってああ見えて結構なドMで露出狂なんだよな……
実際にその場面を見たわけではないのでこれ以上の言及は避けるが、ティアナの反応からしてそうだったのだろう。
「兎に角、これを華先生に託します。試作品ではありますが、強化形態であるテイルフルブルームは酔わないと使えない都合上、継戦能力に欠けていましたし、こちらを使い分けて火力を高めていってください」
華先生の変身アイテムであるテイルペンダントにテイルアーマーYを使用できるように施すトゥアールさん。
試作品ではあるが、限りなく100パーセントに近い完成度である以上、これは中々の強化だ。
「恐らく、使用した際に慧理那さんの露出癖などが精神に影響すると思います。ですが、今の華先生なら問題ないと願います」
「わかりました。やってみます!!」
テイルアーマーRとBともに使用すると精神に影響が出てしまったし、そればかりは仕方ないのだろう。
露出癖は嫌な予感しかしないが、華先生ならやってくれると信じるっきゃねぇ。
さて、お次はいよいよ俺たちテイルバイオレットの番だぜ。
「さて、では次にテイルバイオレットの――」
トゥアールさんがモニターを切り替えんとディスプレイを操作しようとしたその時だった。
エレメリアン出現の警報が基地内に鳴り響く。
また今日もはぐれエレメリアンかと思いやれやれとなるが、反応を見たトゥアールさんの表情が険しいものとなる。
「この反応……!!」
「まさか……!! 七つの性癖か!?」
「はい。それも……二体……!!」
まさかの二体同時出現。
今さっきまでのどこかゆるい空気が一変する。
敵側もいよいよ本気だして来やがって訳かよ……!!
◇
エレメリアン出現の報より少し時は遡る。
時期で言えば大体、新年が明けて少ししたあたり。
まだまだ新年の始まりを祝う正月真っ盛りの間であろうこの時期、平和を過ごす者たちは基本的に誰もが幸せと言って差し支えない。
そしてそれは、エレメリアンとて同じことである。
いくつもの平行世界を渡り他者の属性力を奪う彼らに正月を祝う文化は基本的にないとはいえ、種族柄オタク気質な者になりやすいエレメリアンにとって正月は、いくつものソシャゲで新年初ガチャと称してセールやピックアップが開催される都合上無視できない。
とある世界で人気のソシャゲ『いつでもテイルレッドたん』の正月限定ガチャの盛り上がりは中々な物だったと聞く。
しかし、ここアルティデビル基地においてはそんな新年を楽しむ空気は全くと言っていいほど存在していなかった。
「俺ら、このまま忘れらちまうんだろうなぁ……」
「同感だ。こうなるんだったらハルファスギルディたちと一緒に抜けるべきだった」
居住スペースの通路で数名のエレメリアンがそう言っては沈んでいる。
彼らはベリアルギルディが支配するようになったアルティデビルに残った者たちであり、つい数か月前までは打倒テイルバイオレットに燃えていたが、今ではその士気は欠片もない。
それも全て、ベリアルギルディが原因だ。
彼は七つの性癖を動かす以上、他の有象無象のエレメリアンに価値はないと切り捨て、出撃を禁じただけでなく、集会をすることさえ奪ってしまった。
つい最近はいくつかの面々が隠れて出撃をしていたりもしていたが、今では出撃するための出口が塞がれてしまい、完全に動けないのである。
もし、彼らが今世間で活発に活動しているはぐれエレメリアンを見たらどう思うのか。
暴動を起こすのか、それともより腐っていくのか。
この様子では恐らく後者であろう。
「このままではアルティデビルはお終いじゃ……」
アルティデビル内一の老兵であるアガレスギルディはこの現状を憂いている。
だが、だからとて何かできる訳ではない。
まだチャンスはあると励まそうとしても逆効果だ。
やることを失い自室に引きこもってしまった同胞は数多い。
「こんな時、バアルギルディ殿がいてくれればのう……」
ツンデレの貴公子バアルギルディ。
人知れずベリアルギルディに消された事を知らぬ彼らはバアルギルディが名誉の戦死を遂げたものだと思っており、真実は違えど叶わない幻想だと理解している。
かつて活気にあふれていた大ホールの現在を見てはトボトボと後にするアガレスギルディ。
そんな彼の前に見知らぬエレメリアンが二人現れた。
「随分と辛気臭い所ではないか。こんなところにベリアルギルディがいるのか?」
「さぁ……? だる……」
一人は体つきこそマッシブであるが、モノクルをかけた壮年の老紳士と言った風貌をした悪魔のエレメリアン。
もう一人は如何にも面倒くさがりなダウナー系鬼娘のエレメリアン。
彼らの体から発せられる威圧感はこの基地に残るどのエレメリアンよりも強大。
アガレスギルディは直感した。
この二人は七つの性癖であると。
「あ、あなた様方は……」
「ん? 吾輩か? 吾輩はアスモデウスギルディでこちらはベルフェゴギルディ。我らは七つの性癖、色欲と怠惰を司る者である」
「だる……勝手に紹介すんなし……」
やはりこの方々は七つの性癖。
それも色欲と怠惰を司る二人。
一人でも桁違いな力を持つ七つの性癖が二人も現れた事にアガレスギルディは驚きを隠せない。
「して老兵、ベリアルギルディを見なかったか? 吾輩たちは奴の要請があって参上したのだが、姿が見えなくてな」
「そ、それについてはわしらも存じ上げておりませんのじゃ……」
数日前からベリアルギルディは基地から姿を消している。
今現在、彼はビエルプラネットにてアナザーテイルレッドを招いているのだが、それらは誰もが知らぬ事であった。
「ふむ、ならば仕方あるまい。確か目的はこの写真の少女を捕まえる事。であったな?」
「そーなんじゃないの……だるいけど……」
ティアナの姿を写真で確認したアスモデウスギルディとベルフェゴギルディ。
雇い主であるベリアルギルディの姿は見えないが、受け取った指令は遂行するのが彼らの役目。
一先ず、この基地の様子を確認し、その後に様子見がてら出撃してみようとそう結論付けた。
「老兵よ案内せよ。あと、吾輩たちが出撃したら帰るまでにこのホールに今いる奴らを招集しておけ」
「そ、それは構わないのじゃが、出撃口は……」
「なに、吾輩たちは特別だ。専用の転送装置を使うまでよ」
そう言ってはこの基地内を見て回り始めるアスモデウスギルディたち。
そして現在。
基地内を見回り終えたアスモデウスギルディとベルフェゴギルディは揃って出撃し、テイルバイオレットたちに襲い掛かるのであった。
色欲と怠惰もそれぞれどんな属性かは決めているんですけど、正直言って色々な規制にひっかりそうな気がしてなりません(特に色欲)。