俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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途中、ちょっとメタ発言します。
ギャグの一環なのであまり気にしないでください。


第159話 怠惰のベルフェゴと色欲のアスモデウス

 エレメリアン出現の報を受けてやってきた場所は都市部から離れた郊外の野原。

 人気がないこの場所でなら全力で暴れたとしても大した被害を出すことないのは俺たちからしても好都合だが、それ即ち相手側も周りを気にせず全力で暴れるという宣言のようなものだ。

 今の所、姿は見えねぇがビリビリとした威圧感だけは物凄い。

 

(すごく……嫌な気分ね……)

 

「ああ、同感だぜ。なんつうかすげぇ気持ち悪ぃ」

 

 威圧感と同時に漂う気持ちの悪い空気。

 薄っすらとであるが、周囲を紫の瘴気が覆っているように見える。

 既に変身を終えている俺たちはマシントゥアールを降りて敵がどこかを探る。

 同じく探すテイルブルームが何かに気がついた。

 

「バイオレット!! 後ろ!!」

 

 そう言われてハッと振り返る。

 どこか淀んだ空気の先、いつの間にかそこにいたのは二体のエレメリアン。

 一体は昔の英国映画に出てくるような紳士服やモノクルを身につけた大柄で壮年の雰囲気をした悪魔で、もう一体は首から下を大きなコートのような衣服で身を包むどこか気だるげな印象を与える女悪魔。

 共に頭に角を生やし、人のように見えても明らか人でない顔つきはエレメリアンのそれ。

 迸る威圧感はここ最近相手していたはぐれエレメリアンとはまるで違う。

 

「まずは初めましてと言うべきかな? テイルバイオレットにテイルブルーム」

 

「お前らが……七つの性癖!!」

 

「如何にも。吾輩たちは七つの性癖の二柱。色欲と怠惰をそれぞれ任されている」

 

 老紳士風のエレメリアンはその見た目に違わずどこか気品と上品さを感じさせる言い方でそう答えた。

 もう片方のダウナー系エレメリアンの面倒くさそうな様子を見るに、老紳士風の奴が色欲担当でもう片方が怠惰担当なのだろうとわかる。

 

『お二人とも注意を怠らないように。計測される属性力は今までの性癖と比べてもかなりの物のようです』

 

 だろうな。こう実際に対面してみた感じ、二体いるせいなのかもしれねぇが今までの奴らよりも明らかに何かが違う。

 今まで以上の絶対に負けないという嫌な自信を持っていやがるぜコレは。

 

「どうするバイオレット? あなたはどちらと戦う?」

 

「どっちかって聞かれりゃ女の方が楽そうだが……」

 

(でも和輝、あの様子からして何か策があるわよ絶対)

 

 向こう側に気づかれぬように小声でそう話し合う。

 正直言えば、どう見てもやる気なさそうな女エレメリアンの方を放置して二人がかりでもう一方をタコ殴りにするのが理想だが、テイルブルームもとい華先生の正々堂々とした性格上それは出来ないな。

 そもそも、いくら女の方がやる気なくても、わざわざ出向いている以上はティアナの言う通り何かあるに違いない。

 

「いやでもやっぱし、ここは卑怯とか関係なく二人がかりで……」

 

 このまま続けてもと思ってそう進言しようとした時、老紳士風のエレメリアンが動く。

 

「まぁ待て、そう殺気立たなくてよい。吾輩たちはあくまで下見に来ただけなのだ」

 

「下見だと?」

 

 戦うつもりはない。そう取れる発言を前に俺たちはより警戒を強める。

 こんな明らか戦うためだけのような場所にやってきておいて何言ってやがる。

 そう睨みつける中、エレメリアンは言葉を続ける。

 

「そもそもだ。吾輩たちは何も人間を襲おうというつもりはない。吾輩はあくまでベリアルギルディとのビジネスでこの地にやってきたまでだ。故に争うつもりはない」

 

「何が言いてぇんだ?」

 

「貴様の身に宿すその少女を引き渡せば何も起きないのだ」

 

 その瞬間、俺の身体は自分でも驚くほど速く動いていた。

 俺がお前らにティアナを引き渡すだと? 

 ふざけんな、冗談じゃねぇ!!

 高速で放たれるエクストリームの拳はエレメリアンの顔面を捉える。

 

「ふぐおっ!?」

 

 間抜けな声を上げ、エレメリアンが吹き飛ぶ。

 

「先生!! コイツは俺がぶちのめす!!」

 

「わかったわ。もう片方は私に任せて頂戴」

 

 ちと不意打ち気味ではあるが、戦いの火蓋は切って落とされた。

 もう片方の女エレメリアンをテイルブルームに任せて俺は吹っ飛ばしたエレメリアンを睨む。

 

「あなたの相手はこのテイルブルームが請け負います!!」

 

「ダルっ……ま、想定通りだけど……」

 

 仲間の下にはいかせないとばかりに立ちふさがるテイルブルームに対して、女エレメリアンはもとよりそんなつもりはないが面倒くさいとばかりに応じる。

 見た目から想像しやすい典型的なダウナー系な台詞と共に女エレメリアンはテイルブルームと共に場所を移すべくこの地を去る。

 この野原に残されたのは俺とこのクソジジイなエレメリアンだけだ。

 

(和輝……)

 

「大丈夫だ。俺がこんな奴らなんかにお前を渡すかよ。お前の事は俺が絶対に守ってみせる」

 

(うん、ありがと和輝。でも、無茶はしないでね。私だって戦えるんだから)

 

 ああ、わかってるさ。

 そう心の中で頷いた俺は視線を今吹っ飛ばしたエレメリアンへと再度向ける。

 急な不意打ちを食らわせたが、奴はまだまだ全然ピンピンしてやがるのがわかる。

 

「立てよ。この程度でやられるほど雑魚じゃねぇだろ?」

 

 かかってこいと挑発。

 するとエレメリアンは動き出す。

 

「フフフ……中々に格好良いではないか。これはいい芸術(アート)になりそうだ」

 

 気味悪くほくそ笑みながらエレメリアンは立ち上がった。

 近くで見れば見るほどそのガタイは服装に似合わずゴツイ。

 でも、今の俺はそんな程度でビビりはしねぇぜ。

 

「改めて自己紹介といこうか。吾輩はアスモデウスギルディ、さきの奴はベルフェゴギルディである。そして、吾輩は色欲を担当する七つの性癖の一柱である」

 

 アスモデウスギルディにベルフェゴギルディ。

 それが色欲と怠惰の性癖を持つエレメリアンの名か。

 

「吾輩の愛する属性は……と、その前にまずは非礼を詫びるとしようか」

 

「はぁ? てめぇどういう意味だ」

 

「そのままの意味だよ。先ほどの提案は君へのテストだ。我らの狙いたる少女と融合し、テイルバイオレットへと変身し戦う少年よ、先程はすまなかった」

 

「はぁ?」

 

(どういう事?)

 

 どういう意味でどういう風の吹き回しかまるでわからず困惑する。

 それと、わかってはいるがこうもはっきりと正体は知っていると言い放たれると少し不気味だ。

 テストとはなんだ? 俺を試す?

 

「だから何が言いてぇんだ? ああ?」

 

「君はその少女を愛しているのだろう? 吾輩はその度合いを知りたかったのだ。どれほど愛し、どれほど想ってるのかこそ吾輩が求める芸術には必要不可欠。それこそが吾輩が持って生まれた属性であり、色欲の性癖である」

 

「だ・か・ら!! 何が言いたいんだっつってんだよ!! 話聞けボケが!! 答え言えっての!!」

 

(ちょっと和輝、抑えて抑えて)

 

 まどろっこしいたらありゃしねぇ。

 俺はこういうやたらともったいぶるのはあまり好きじゃねぇ。

 特に親しくもない敵でならなおさらだ。

 抽象的な事言ってんじゃねぇよ。

 心の中でティアナが宥めるも俺は怒気を強めていく。

 

「ならば答えよう。吾輩が愛する属性は……」

 

 怒れる俺に手で待ったをかけたアスモデウスギルディ。

 遂にコイツが何を言いたいのかがわかるのか……

 俺が拳を下ろすと一瞬の静寂が訪れる。

 そして……

 

 

 

 

性行為属性(セックス)だ」

 

 アスモデウスギルディはそう口にした。

 

 

 

 

 俺がその言葉を初めて聞いたのは確か小学生高学年の頃だっけか。

 きっかけまでは覚えていないが、何となく匠の奴が口にしたのが最初だったと思う。

 思春期と言うにはまだ少し早く、まだまだ幼さが残っている俺にはその言葉の意味は理解していなかった。でも、その語感や面白ふざける匠の様子からして何となくアレな言葉なのは理解できたし、それを大勢の前で声高々に言う物でもないのはわかった。

 その言葉の詳しい意味を知ったのは中学に入って程なくしてからだ。

 周りを含めて俺自身も段々と大人の階段を上り始める中でそれを知るのは当然だったし、なんつうかちょっとした背徳感と同時に少し大人になったんだっていう中坊特有の背伸びしたい感覚がそれに対する興味を後押ししていた。

 結果、俺は匠と一緒にその手のいかがわしいビデオを何度か見た経験がある。

 彼女が欲しい……童貞(同時期に意味を知った)を卒業してみたい……って思ったのも丁度そのころからだっけか?

 そう思うと中学時代から高校入学当時の俺はまぁそりゃ大層なエロガキだったんだなってわかる。

 今でこそ自他認めるヘタレ男の俺。

 その言葉が持つ意味を知り、それをなす直前までいったというのになせなかった俺。

 故にアスモデウスギルディの言葉を理解するのは時間がかかった。

 

「セ、セセセセセ……」

 

 壊れた機械のような言葉しか出てこない。

 さっきまであんなにもムカついていたってのに急に恥ずかしさが勝る。

 

「何を乙女のように恥じらうのだ。変身後こそ女子であるが、君は男だろ?」

 

 煽るような口ぶりではなく、純粋な疑問を口にしているかのようなアスモデウスギルディ。

 

(ちょっと和輝……確かアレよね……セッk)

 

「うるさい……ちょっと黙ってくれ……」

 

 いやいやいや、流石にそれはないよな?

 そもそもこれって性癖なのか? 属性なのか?

 

『いや~随分とドストレートに来ましたね~。まさかセッk』

 

「トゥアールさん、あんたも黙れ……!!」

 

 いやま、今までもそれってどうなんだって物もあったし、シチュエーションと言えばそうだが、それは萌える要素か?

 いや、流石にそんな訳……

 

『バイオレット!? 今そっちから凄くふしだら言葉が――』

 

「先生はそっちの戦いに集中!!」

 

 うん、そうだよな。

 流石に性行為属性(セックス)のエレメリアンなんている訳ないよな。

 第一、エレメリアンってのは例外除いて基本オタク気質の陰キャみたいな奴らだ。

 そんな奴らが性行為属性(セックス)を愛するとか言うわけないぜ。

 大体、そんな奴だしたらR18タグを付けていないこの作品がBANされちまう。

 性行為属性(セックス)が好きなエレメリアンなんている訳が……

 

「もう一度言おう。吾輩は性行為属性(セックス)のアスモデウスギルディ」

 

「いるじゃねぇかよぉぉぉーーッ!!!!」

 

 認めたくない現実を前に俺は血反吐を吐きながら叫ぶ。

 いや、俺だっていつか来るんじゃねぇのって思ってたよ!?

 でもだからってこんな強敵枠で来るとは思わねぇじゃん!?

 

『和輝君落ち着いてください!! いやま、確かにその……プププ……ヘタレの和輝君には強烈な言葉かもしれませんが……!!』

 

 今、笑ったよね。笑ったよな?

 いやま確かに俺がヘタレなのが悪いんだけどよ、あとで覚えとけよ。

 ティアナ程じゃねぇが、俺だって結構乱暴なんだぜ。

 

「何がセッk――ねぇ? セックスが好きってどういう事?」

 

「ん? 君は少女の人格だね。セックスを詳しく知らないのかね?」

 

「何となく……としか。やったこともないし」

 

 俺がなおも狼狽し続ける中、急に身体の主導権がティアナに移り、アスモデウスギルディはそれを察知する。

 俺としては、んな事一々聞かなくてよろしいって感じだが、アスモデウスギルディは紳士だった。

 

「そもそもだセックスというのはオスの“ピーー”をメスの“ピーー”に挿入して“ピーー”することを指すわけであってでだね。年頃の少女にわかりやすく言うなればそれはだね……つまりオスの“ピーー”とメスの“ピーー”を合体してだね……」

 

 アスモデウスギルディが解説するたびに自主規制音がどこからともなく聞こえてくる。

 以前のマモンギルディの一件の影響でそういった事をようやく知ったティアナではあるが、まだまだそう詳しくないのでこれを聞くのはおかしくないがそれにしてもさぁ……

 無駄に丁寧なのが癪に障る。

 

「ようするに君たちの好きなツインテールと同じだよ。一つの束が男を表し、もう片方が女を表す。その二つを均等に結び調和させることこそがある種のセックスのような物であるのだ」

 

「そ、そうなんだ……――じゃねぇよ!! もういいわこのド変態!!!」

 

 我慢できなくなった俺はティアナから身体の主導権を強制的に奪って終わらせる。

 アスモデウスギルディは少し残念がっていやがるがんなもん知るか。

 てかティアナもそんな戯言信じるな!!

 

(ごめん和輝。ちょっと気になっちゃって……)

 

「いや、まぁ仕方ねぇっちゃ仕方ねぇしよ……」

 

『大丈夫ですよ総愛。あとでトゥアールママが実践込みで教えてあげますから』

 

 コラそこ、どさくさに紛れてうちのティアナに変な事教えようとするんじゃない。

 てか、実践込みってどういう意味だよオイ。

 

 

「はぁはぁ……すっげぇ疲れるぜ……」

 

(大丈夫? やっぱり私が前に出た方が……)

 

「大丈夫だ……いやマジで……」

 

 ティアナには心配してくれてありがとうって気持ちでいっぱいだが、このままティアナに戦わせた方が多分ツッコミが追い付かなくなる自信しかない。

 あと、それはそれとしてこんな奴と戦わせやしない。

 この野郎、紳士は紳士でも今までで飛びっきりの変態紳士だぜ。

 何がセックスだよこの野郎。

 

「へばるのが早いな君は。そんな事では彼女を満足させることは出来んぞ」

 

「だから言い方ってもんがあんだろ!!」

 

 多分わざとってか素なんだろうけど、一々そっちの方を連想させる言葉を吐かないでくれ。

 流石にもう疲れたぜ。

 

「もういい、茶番は終わりだ。行くぜティアナ」

 

(ええ、わかったわ)

 

 フォースリヴォンを触れてウインドセイバーを生成し構える。

 これ以上、付き合っていても疲れるだけだ。

 ツッコミのし過ぎで酸欠になる前にぶった斬るに限る。

 

「待て待て、さっきも言ったが吾輩は来たのはあくまで下見だ。今日は本格的に争うつもりはない」

 

「そっちにはなくてもこっちにはあるんだよ!!」

 

「なんと乱暴な……。やはり君はもっとセックスというの物を知った方がいいのではないか? よいか? セックスというのは男女が互いの愛を形にするために行う極めて原始的な求愛行動であってだね……」

 

「だからセックスセックスうるせぇんだよ!! はッ倒すぞグラァ!!」

 

 ほんとの本当に付き合ってられない。

 そう叫ぶ俺は間合いを一気に詰めるとそのままウインドセイバーを縦一文字に振り下ろす。

 アスモデウスギルディの胴体を切り裂いた。

 

「ぐおおおッ!?」

 

 真っ二つにすることは出来なかったが、その大きな体に深々と切り傷を与える事には成功。

 アスモデウスギルディは悲鳴にも似た叫びを上げるも、後退する事無く踏みとどまる。

 これはチャンスだ。当たり前だが容赦はしない。

 俺はそのままの勢いで何度も何度もウインドセイバーを振るう。

 いつにも増して乱暴で無茶苦茶な太刀筋かもしれねぇが、俺の羞恥心からくる怒りがさらなる力を呼び込み、深く深くアスモデウスギルディの体を切り裂いていく。

 

「うらぁッ!!!」

 

「うおおっ!?」

 

 何度も何度も切り裂いた後に蹴り飛ばす。

 しかし、アスモデウスギルディは倒れず後退しない。

 回避も防御もしないその行動に疑問が浮かぶ。

 

(何コイツ……まるでわざと攻撃されているみたい)

 

「気味が悪ぃ……!!」

 

 何かあるな。

 そう感じ取った矢先、アスモデウスギルディの口元がニヤリと笑ったのが見えた。

 

『属性力が急上昇!? 今すぐ退避を!!』

 

 トゥアールさんからの通信もあり俺は慌てて距離をとる。

 するとその瞬間、アスモデウスギルディの体が一層大きくなり……そして、

 

「ふうん!!!」

 

 アスモデウスギルディは爆発した。

 今まで受けたダメージを放出するかのようにエネルギーを全身から炸裂させる。

 攻撃方法がウインドセイバーであったからか、爆風には斬撃のような物が含まれていた。

 

「危ねっ……危うく巻き込まれるところだったぜ……」

 

 退避が間に合ったおかげか殆どダメージは受けていない。

 多少かすった程度なら戦いに支障はないってな。

 まぁでも、これは厄介だなオイ。

 

「どうだね? 吾輩の攻めは? 吾輩は受けた痛みや快感を解き放つ事が出来るのだ」

 

「どうもこうもあるかよ。まさかてめぇがこんなドM野郎だったとはな」

 

「ドM? 違うな。吾輩は受け攻め両方が好きなのだ。セックスとは互いの受けと攻めのバランスからなる物。吾輩は受けも攻めも手を抜かない。相手がどんな攻めをしようが全てを受け止めそれを返しては同じ痛みと快感を味わうのだ。片方だけが快感を得るだけなどそれはただの野蛮な“ピーー”でしかない」

 

 べらべらと持論を述べるアスモデウスギルディ。

 最後の自主規制音の下にある言葉はレから始まる言葉だってのはわかる。

 

「言っておくが吾輩は紳士だ。求めるセックスは愛のある物しか有り得ない。それを履き違えないで頂きたいね」

 

「あーそうかよ」

 

「好きなスポーツは夜のベッドを舞台としたプロレス。好きな動物は朝にさえずる小鳥。好きな飲み物は夜明けに飲むコーヒーである」

 

 そう聞いてもいない事をべらべらぬかしながらアスモデウスギルディは羽織っていた紳士服を脱ぎ捨てる。

 その下にあったのは大柄な体格に似合うとてつもなく引き締まったムキムキボディ。

 不自然なくらいにテカテカと光を反射するそれは紳士とはかけ離れたいやらしさが感じれる。

 

「さぁ、もっと見せてみよ。君たち二人の連携(セックス)を君たち二人の愛と絆とツインテール(セックス)を!!」

 

「その言い方やめねぇか!!!」

 

 ツッコミを入れると同時に俺は再び斬りかかるであった。

 

 

 

 

 ここまで来れば戦闘に支障はないだろうとテイルブルームと女エレメリアンは足を止める。

 一見すると先程の野原とまるで違いのない場所であるが、距離にして2キロ程度は離れており、ここならば一騎討ちをするのに問題はない。

 

「さぁ始めましょう。あなたは私が倒します」

 

「ダルッ……ま、いいけど」

 

 実に対照的な二人が対峙する。

 相手は怠惰を司る女エレメリアン。

 何事にも真面目で面倒くさがるといった事を一切しないテイルブルームとは何もかもが違う。

 

『先生、気を付けてください。和くん達からによるとそいつはベルフェゴギルディ』

 

『わかってるとは思うっすけど、怠惰の性癖を司ってるらしいっす』

 

 基地から通信で聞こえてくるのは悠香と匠の声。

 現在、トゥアールは和輝たちテイルバイオレットのサポートに回っており、テイルブルームの通信でのサポートは悠香たちに任されている。

 

「大丈夫よ、先生は負けない」

 

 強い決意と覚悟をもってベルフェゴギルディを見据える。

 一対一であるなら負けるつもりはない。

 万が一の事があったとしてもその時は新しいこの力を試すまでの事。

 

「神堂さん……」

 

 出撃前にトゥアールに託された追加装備(テイルアーマーY)はかつて異世界で共に肩を並べたテイルイエローの力を元にしている。

 出会ってから過ごした期間は短くても絆は結ばれた。

 彼女の名誉と誇りの為にも負けられない。

 

「じゃ、やるか……」

 

 ベルフェゴギルディが動く。

 気だるげな態度のまま、ベルフェゴギルディは自身が羽織っている大きなコートに手をかけそれを脱ぎ捨てる。

 

「なッ……!?」

 

 思わず赤面するテイルブルーム。

 それもそのはず、何故ならベルフェゴギルディのコートの下には装飾品や衣服の類はない。

 つまり、裸であった。

 

「あれ? どしたの……?」

 

「どどど、どうしたじゃありません……!! あなた裸……!?」

 

 エレメリアンも個体によっては裸同然の物も多いが、それはそのエレメリアンが人型とはかけ離れた異形であるから気にしない。

 しかし、ベルフェゴギルディは頭部に生えた角や鋭く尖った異形の瞳など頭部を除けば殆ど人とは変わらぬ姿をしている。

 首から下、その体つきは所謂年頃の女の子のそれであり、本来なら見えてはいけない胸や股あたりまで完全に見えてしまっている。

 このまま街中を出歩けば公然わいせつで捕まるのは必至であると断言できるくらいだ。

 

「だる……裸の何が悪いんだよ……」

 

「いやでも、しかし……」

 

 何がいけないとばかりに睨んでくるベルフェゴギルディにテイルブルームは言葉が詰まる。

 本来でならもっと恥ずかしがってもおかしくないその姿をしながらもベルフェゴギルディに一切の恥じらいはなく、テイルブルームは圧倒されているのだ。

 

「僕の属性は全裸属性(ヌード)。服を着るだなんて面倒くさい……」

 

「は、裸の属性……!!」

 

「あれ? 僕を倒すんじゃないの?」

 

 ニタニタと笑いながらそう挑発するベルフェゴギルディ。

 その一言を聞いてテイルブルームは我に返る。

 そうだ、裸になっているからなんだ。裸になっていようがいまいが、敵である以上は倒すのが道理。

 

「い、行きます……!!」

 

 意を決して飛び込むテイルブルーム。

 間合いに入ると同時に拳を握り締め、力強く重い一撃を繰り出す。

 その一撃は本人の技量もあってテイルバイオレット以上の威力だ。

 

「ふ~ん……」

 

(動かない……?)

 

 今まさに攻撃が直撃しようというのにベルフェゴギルディは回避も防御も何の素振りも見せない。

 ガタイから見てもそう打たれ強くは見えないが何が狙いなのか?

 攻撃を繰り出しながらテイルブルームはその明らかに不可解な棒立ちに不安を覚えるが、だからとて一度やってみないとわからない。

 

「はぁッ……!! ッ……!?」

 

 見事なフォームで繰り出された正拳突きはベルフェゴギルディの腹部を捉えた。

 まともに食らえば吹き飛ぶのは確実の一撃。

 しかし、テイルブルームは感じた。

 何かに受け止められたかのような不思議な手ごたえのなさに。

 

「なに? 僕はただ見ていただけだよ?」

 

 澄まし顔で挑発するベルフェゴギルディ。

 ムキになるというわけではないが、テイルブルームは再度攻撃を繰り返す。

 鋭い手刀、強烈な回し蹴り、破壊力抜群の掌底といったテイルブルーム得意の体術をありとあらゆる角度から狙い浴びせる。

 しかし、そのどれもがベルフェゴギルディの肌にぶつかる直前に何かに阻まれる。

 衝撃を殺し、まるで何もなかったかのように受け止めるそれは手ごたえのない防壁。

 テイルブルームは距離をとった。

 

「あれ? 諦めた?」

 

「いいえ、諦めません……!!」

 

 カラクリはわからないが、恐らく接触での攻撃を防御するのが敵の能力。

 そう断定したテイルブルームはグランアローを手にし構える。

 飛び道具でならどうだの判断だ。

 完全開放し、必殺の矢を放つ。

 

「ブルームツイン……」

 

「だるッ……でもね……!!」

 

「シュート!!!」

 

 放たれる光の矢。

 並みのエレメリアンであれば必殺の一撃となるそれを見てなおもベルフェゴギルディは笑みを絶やさず動かないでおり、直撃する。

 やった!! と一瞬喜びかけるテイルブルーム。

 しかし、テイルブルームは捉えた。

 放たれた光の矢を受け止める黒い靄のような闇を。

 

『先生、敵の能力ってもしかして……』

 

「ええ、今わかったわ……」

 

 ベルフェゴギルディを守るのはどこからともなく沸いて出る黒い闇。

 それはまるで映してはいけない箇所を隠すモザイクのよう。

 

「ようやくわかった? これが僕の陰部守る闇(スロウス・ペオル)。どんな攻撃も僕が裸である限り、そこに誰かの視線があれば闇が出てきて絶対に受け止め守る」

 

 全自動の絶対防御。

 それこそがベルフェゴギルディの能力。

 どんな攻撃を前にしても決して避けようとも防御しようともしなかったのはこれに起因する。

 

「さ、だるくなってきたでしょ? 無駄ってわかるまで何度でも相手してあげるからさ」

 

「誰がそんな事……!!」

 

 攻略法ならばある。絶対に。

 もしもの可能性を信じ、テイルブルームは向かっていった。

 

 

 

 

 ウインドセイバーの剣閃がアスモデウスギルディを傷つけていく。

 しかし、野郎の能力は受けたダメージを蓄積しそれを跳ね返す所謂反射カウンター。

 こうして傷つければ傷つけるだけ、返ってくる攻撃は苛烈さを増す。

 

「中々いい攻撃である。では受け攻め交代といこうか!!」

 

 膨れ上がった快感を放出するかのように溜め込んだダメージを解き放つ。

 アスモデウスギルディの体から飛ぶのは今まで切りつけたウインドセイバーの斬撃だ。

 直撃すればズタズタになるであろう斬撃の嵐を俺はウインドセイバーで弾いては避けるを繰り返す。

 

「チッ……!! 埒が明かねぇぜ……!!」

 

(和輝!! 上!!)

 

「しまった!?」

 

 反射される攻撃を捌くのに集中していたせいか、アスモデウスギルディがいつの間にか空中に跳躍していた事に気が付かなかった。

 落下の勢いに合わせてそのまま踏みつぶさんとアスモデウスギルディが迫る。

 俺は体勢を崩し地面に転がりながらも何とか避ける事に成功した。

 

「ほう、避けたか。反応できぬと思っていたがやりおる」

 

「生憎、こっちは一人じゃねぇんでな」

 

 見下ろすアスモデウスギルディの口元が嬉しそうに笑う。

 立ち上がれていないのもあるが、こうも近くに立たれると体格差からなる迫力は中々だ。

 

「さて、ここからどう攻めようか……」

 

「あ?」

 

「テイルバイオレットよ、貴様はどの体位が好みだ? 正常位か? 後背位か? 屈曲位か?」

 

 全身という全身に鳥肌が立つ。

 特に現在は変身の影響で女体化している事もあってか貞操への危機感に関しては人一倍過敏になっている。

 俺は慌てて起き上がり距離をとる。

 

「ほんっと気持ち悪い野郎だぜ。俺は男ってわかってんだろ!!」

 

「なに、吾輩は性行為そのものを好むのだ。男か女など関係ない」

 

 エロゲに出てくる敵じゃあるめぇし、何てこと宣言してんだよオイ。

 

『別の意味で不味いですね。このままでは和輝君の童貞よりも処女の方がなくなってしまいます!!』

 

(ちょっとママ!! そんな事言ってる場合じゃないってば!!)

 

 ティアナの言う通りではあるが、俺もトゥアールさんと同じ不安を抱いたなんて言えない。

 まぁしかし、このままやられっぱなしって訳じゃねぇ。

 

「安心しろよ、何となくだが攻略法は掴んだ」

 

(どうする気? 何か策があるの?)

 

「なーに、この手の奴のお約束さ。こういった攻撃を吸収して反射してくる奴の攻略法は反射容量を超えるほどの攻撃をぶちこめりゃあいい」

 

 ガキの頃、アニメや特撮でヒーローやヒロインたちがこの手の能力を使う相手をそうやって突破してきたのを覚えている。

 どれだけの攻撃をはね返す力があろうとも、一度吸収するプロセスを挟んでいる以上はこの弱点は免れない。

 脳筋戦法と言えばそうかもしれねぇが、これが一番手っ取り早くて楽ってもんだ。

 

(オーケー、わかったわ)

 

「ああ、今の俺たちならこんな奴だろうが何とかなる……!!」

 

 ここまで何度か攻防を繰り返してわかったことだが、アスモデウスギルディは確かに強い。フィジカルだけなら今まで戦った中でも別格だ。

 がしかし、今の俺たちなら全力で挑めば問題なく倒せるレベルでしかない。

 エクストリームチェインバーストまで使うかは定かではないが、ここ最近どんどん強くなっている俺たちならやれる、絶対に。

 

「どうやら、吾輩の弱点に気が付いたようだな」

 

「さて、そいつはどうかな……!!」

 

「ふむ、であるならば仕方ない。吾輩も奥の手を切るとしよう」

 

 何ッ……!? まだ何かあるのかよ……!?

 驚愕する俺を放置しアスモデウスギルディは全身から紫ともピンクともとれる瘴気を溢れ出させる。

 そしてその瘴気は一つの形になってアスモデウスギルディの隣に立つ。

 

「何……!? エレメリアンがもう一体!?」

 

(分身!? しかも……女……!?)

 

 ファンタジーに出てくる淫魔その物のような女エレメリアン。

 どことなくアスモデウスギルディに似た雰囲気を持つが、その個体の見た目はまさしくエロティックな大人のお姉さんと言ったところ。

 

『属性力反応が増えた……いや、分裂した!?』

 

 通信越しから聞こえてくるトゥアールさんの声が驚愕で満ちていた。

 ただの分身とは訳が違う、もう一体の敵の誕生に俺たちは動揺を隠せない。

 

「これこそが吾輩の性なる奥義。聖巧なる伴侶(ラスト・アエーシュマ)である」

 

 色欲の脅威は、まだ始まったばかりであった。




この位なら流石に大丈夫でしょの精神です。
ピー音の下にある言葉は……ちょっとね。
アスモデウスとベルフェゴのキャラ紹介は次回で。
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