俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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話を考えるのに今回が一番苦労しました。


第16話 不死鳥(テイルフェニックス)VS不死鳥(フェネクスギルディ)

 絶体絶命の危機に突如として現れたテイルフェニックスと名乗る謎の戦士。

 素肌を覆うアンダースーツと鋭角的な紅い装甲。首からたなびく青いマフラー。背には巨大でメカニカルな翼。そして、腰にはポニーテール属性のエンブレムが刻まれたバックルのベルト。俺が纏っているテイルギアとほとんど瓜二つだ。

 

「ティアナ、テイルフェニックスって何者なんだ!? 味方なのか!?」

 

『わからないわよ!!』 

 

 テイルフェニックス、彼女は自分自身をそう言っていた。名前やこの状況などを考えればテイルフェニックスは決して敵ではない……筈。しかし、テイルフェニックスの髪型がツインテールではなく、その対極に位置するとも言えるポニーテールなのが少し謎だ。

 

『けど、なんだろうこの感じ……初めて会った気がしない……』 

 

 どうゆうことだよ……そいつは……

 もしかして、お前の失われた記憶に関係あるのか……?

 

「お前さん安心しな、俺様は味方だ」

 

 テイルフェニックスは困惑する俺に向かって敵ではないと説明をしてくれた。その言葉はとても嘘をついているようには聞こえなかった

 とりあえず敵ではないと知り少し安心する。

 

「てかポニーテールのテイルギアもあるんだな……」

 

『そんなの覚えていないわよ……』

 

 ティアナが覚えていないだけでポニーテールのテイルギアも存在しているらしい。なら三つ編みなどの他の髪型のテイルギアもあるのか……?

 

「ほんっと、ムカつく奴だね……君は!!」

 

 瓦礫の中から立ち上がったフェネクスギルディはテイルフェニックスを憎悪に満ちた目で見つめた。

 

「今度は逃がさないぜ! フェネクスギルディ!!」

 

 テイルフェニックスの顔も真剣なものに変わった。

 二人の間にバチバチと火花が散っているのが目に見えなくともわかる。不死鳥の名を持つ二人の戦士。互いに凄まじい気迫を出しながら牽制しあっていた。

 それにしてもテイルフェニックス、なんつーか言動の一つ一つが凄く暑苦しい。技名を叫びながら現れたことも含めてそう言える。俺とは正反対の性格だ。

 

『和輝も時々結構暑苦しいわよ』

 

「だ~から人の心を読むなって! てか誰が暑苦しいだよ!!」

 

 ティアナのツッコミが素早く飛んできた。自分で言ってはなんだが俺はどちらかというとクールなほうだと思っているんだが…………。

 てか俺たちさっきまで絶体絶命の状況だったというの随分と緩いな。助けが来たことでホッと一安心している証拠だ。

 

「フェニックスパーーーーーーーンチ!!」

 

「ッ!!」

 

 俺たちが茶番をしている間に勝負は動き始めていた。テイルフェニックスは技名を高らかに叫びながら拳を繰り出す。繰り出す拳とともに揺れる深紅のポニーテールと首からたなびく青いマフラーがとても綺麗だ。

 フェネクスギルディは翼を広げながら大きくその場を離脱し攻撃を躱す。しかし、テイルフェニックスはその回避行動を読んでいたかとばかりにフェネクスギルディの回避先に先回りし、再び拳を繰り出す。

 

「くッ!!」

 

 初撃を大きな動きで回避した結果、テイルフェニックスの二度目の攻撃はフェネクスギルディにクリーンヒット。瓦礫の中に叩きつけた。

 

「すげえ…………」

 

 思わず感嘆の声が漏れた。

 最初に放った飛び蹴りを含めても三発の攻撃。たったそれだけの攻撃だというのに俺は早くもテイルフェニックスとの力の差がどれほどのものかがわかった。テイルフェニックス、彼女の実力は底知れない。

 

「喰らいなよ!!」

 

 だがフェネクスギルディもただ攻撃を喰らっているだけではない。お返しとばかりに手から蒼い火炎弾を放ちテイルフェニックスを攻撃する。

 

「そう来るならこれだ! フェニックスラッシューター!!」

 

 全く焦ることもなくテイルフェニックスは自身の腰にベルトに触れる。するとベルトは剣に変形した。手に持った剣は柄が折れ曲がり、刃が展開、銃口が現れ一瞬の内に銃に変わる。テイルフェニックスはフェニックスラッシューターから放たれる光弾で火炎弾を打ち落としていった。

 

『フェニックスラッシューターって随分と言いづらいわね……噛むわよ、普通』

 

 ティアナが武器の名前にツッコミをいれる。ちなみに俺も同意見だ。銃剣だからフェニックスラッシューターってことなんだろうけど確かに言いづらい。うっかり噛んでしまわないかが心配だ。

 

「おらあああああっ!!」

 

「このおおおおおっ!!」

 

 俺たちがツッコミを入れている間も不死鳥たちの戦いは続いていた。互いの拳が、脚が、武器がぶつかっていく。その威力、速度は完全に互角といったところか。

 激突するたびにその衝撃で周囲の瓦礫は吹き飛び、地面が爆裂していく。二人とも炎を纏った攻撃が多いため、余波がとても熱い。その熱さからは二人の怒りが伝わってくるようであった。

 

「そろそろ決めさせてもらうよ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 フェネクスギルディは全身から吹き出ている蒼い炎を天高く一カ所に集め出し火炎弾を形成した。その大きささっき放った火炎弾の比ではない。その大きさたるやまるで太陽。暗黒の蒼い太陽だ。

 

「俺様の……完全開放(ブレイクレリーズ)!!」

 

 テイルフェニックスは持っているフェニックスラッシューターを天高く掲げた。フェニックスラッシューターの刀身の銃口が開き、巨大な炎の刃が形成されていく。

 

「はぁぁっぁぁ!!」

 

「バーニングフォースフィニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!」

 

 フェネクスギルディの火炎弾が暗黒の蒼い太陽ならテイルフェニックスの巨大な炎の刃は正義に燃える紅い太陽。互いの必殺技は空中でぶつかり、ビックバンかとおもうくらいの大爆発を引き起こす。

 

「やべぇ!!」

 

 爆発の規模にいち早く気づいた俺は咄嗟にティアナたちの下に駆け寄る。駆け寄ったと同時に出した紫の暴風壁が俺とティアナ、悠香さんを爆発の余波から守った。

 大爆発は終わり、戦いの勝者がどちらなのかが気になった。

 

「勝ったのか?」

 

「でも……フェネクスギルディは不死身のはず……」

 

 ティアナの言葉を聞いてハッとする。そうだ奴は不死身だ。

 しかし、周囲にフェネクスギルディの気配は全くなかった。あるのは瓦礫の山だけだ。

 

「くっそー!! やっぱ無理か!!」

 

 フェネクスギルディの復活に警戒していた俺たちだったが、天高くからテイルフェニックスの独り言が聞こえてきた。

 彼女の様子からしてフェネクスギルディはどうやら逃げたようだ。

 警戒を解いた俺たちの前にテイルフェニックスが降り立った。

 

「お前さんがこの世界の戦士ってか。俺様はテイルフェニックスだ! よろしくな!!」

 

「お、おう。俺はテイルバイオレットだ。よ、よろしく……」

 

 挨拶もやっぱり暑苦しいな。何て言うかこの感じ、ちょっと苦手だ…………

 

「ふ~んお前も総二と同じか」

 

 総二って誰だよ……

 テイルフェニックスは俺の姿をじろじろ見ながらそう言ってきた。 

 

「お前、男だろ。俺様は誤魔化せないぜ!!」

 

「「「なッ!?」」」

 

 何度目だろうか。またまた俺の正体がバレてしまった…………

 

 

 

 

 俺たちは互いの情報交換も兼ねてアラームクロックで昼食をとることになった。

 会話の内容が色々とアレなので俺たちはアラームクロック内最奥のテーブル席に座っている。周囲に客はいないので俺の正体がバレる心配は大丈夫だ。

 

結翼唯乃(いわばねゆの)、テイルフェニックスねぇ…………」

 

 ご飯を飲み込んだティアナが言った。

 テイルフェニックスの変身者、結翼唯乃。変身前後ともに言動こそ男勝りだが、見た目自体は紅いポニーテールが素敵な快活そうな女の子であった。最初、俺は言動からして男が変身しているかと少し思ってしまった。

 

「まさか……ツインテイルズのメンバーにポニーテールがいるなんてな……」

 

 俺は豚カツを噛みながら喋る。

 唯乃さん自身が話した内容は、こことは違う別世界でツインテイルズと呼ばれる集団の一員としてエレメリアンと戦っていたということ。度々エレメリアンどもが言及していたツインテイルズってのがまさか俺の助けに現れるとはな……

 まぁ、唯乃さん自身は自分の世界で倒し損ねたフェネクスギルディを追ってきただけみたいだがな……

 

「しっかし、アルティメギルが一度襲ったことがある世界でテイルレッドを知らないなんてな……」

 

 さっきまでご飯と豚カツを掻きこむように食べていた唯乃さんが言った。唯乃さんの一人称や食べ方、座り方といずれも女の子の仕草ではない。

 唯乃さん曰く過去にアルティメギルに襲われたことがある世界でテイルレッドの名を知らぬ者はいないとのことだ。なんでもテイルレッドがアルティメギル首領を打ち倒したその瞬間はあらゆる並行世界で観測できたらしい。

 

「検索してもテイルレッドなんてワード掠りもしないし、そんな戦いを見た人は誰一人いないみたいよ」

 

 一人だけ豚カツ定食を食べずにコーヒーを飲みながら話を聞いていた筈の悠香さんがスマホと睨めっこしていた。やはり、この世界ではテイルレッドVSアルティメギル首領は観測できなかったらしい。ちなみに悠香さんのスマホは俺がアンドラスギルディに襲われた時とは違って無事であった。

 

「あれ? 総二の奴、首領をブッ倒した時に全異世界のツインテールと繋がったとか言ってたんだけどな……」

 

 味噌汁を飲みながら唯乃さんが首を傾げる。

 だから誰だよ……総二って……

 

「ん? そういえば…………!」

 

 俺がティアナと初めて出会ったあの日、不思議な夢を見た。その夢の内容が唯乃さんがさっき言ったテイルレッドとアルティメギル首領との戦いと非情に似ていたことを思い出した。

 でもあの夢を見たのは今年4月の頭だ。テイルレッドがアルティメギル首領を打ち倒したのは3年前らしいし、やっぱり関係ないのか……?

 

「どうしたのよ?」

 

 ご飯のおかわりを持ってきたティアナが尋ねてきた。

 

「いや、なんでもなねぇ。ごちそうさまでした。」

 

 やはり俺が一番早くに食べ終わってしまった。まあ、今回は話をしながら食べていたので食べ終わるのがいつもよりもかなり遅いのだが。

 

「ごちそーさん、 美味かったぜ大将!!」

 

 俺に続いて唯乃さんが完食した。唯乃さんの嬉しそうな感じからして随分と口にあったようだ。そいつは何よりだ。

 

「美味いだなんて、そう言ってくれて俺は嬉しいぜ。でもさ一応ここ喫茶店なんだし、大将じゃなくてマスターって呼んでくれないか?」

 

「すまねぇな大将。俺様の中でマスターはもう既にいるんだよ」

 

「そうか~なら仕方ないな~」

 

 空になった俺の器を運びに来たおやっさんが唯乃さんと楽しそうに喋っていた。おやっさんの性格的に唯乃さんと仲良くなるのは早いと思っていたが、ここまで早いとは……

 そうこうしている内にティアナも昼ご飯を食べ終わっていた。さて、おやっさんも向こうに行ったことだし、食後のコーヒーでも飲みながらゆっくり情報交換といきますか。

 

「なぁ、お前の腕につけてるソレ。俺様に見せてくれないか?」

 

 食べ終わったばかりのティアナに話しかける唯乃さん。腕につけてるソレってのは間違いなくテイルブレスのことだろう。

 ティアナは「はいどうぞ」といった感じで渡す。受け取った唯乃さんはテイルブレスをまじまじと見つめる。

 

「やっぱり、こいつは俺様の知ってるテイルブレスその物だ。お前がこれを作ったのか?」

  

 唯乃さんはテイルブレスを返しながら問う。

 

「ううん、多分違うわ」

 

「アルティメギルを滅ぼした後、色んな異世界でテイルブレスやテイルギアを模した物を見かけたが……コイツは間違いなく本物だ」

 

 へー、だから俺の纏うテイルギアを見ても不思議に思わなかったのか……

 まあ、そりゃあそうか。全並行世界を襲った悪の大組織を打ち倒した戦士の装備を真似るのは当然といえば当然。

 てかテイルバイオレットが身に纏っているテイルギアってツインテイルズの物とは違うのか……まぁ、ティアナの言っていたテイルギアとは異なる点も多いし当然か。

 

「てか、ティアナお前。テイルフェニックスを見たときに初めて会った気がしないとか言ってたよな? もしかしてお前が居た世界って――」

 

「でも紫のテイルブレスなんて初めてみたって感じよ……」

 

 淡い希望を抱いたがティアナの言葉聞きハッとする。

 

「それもそうか……」

 

「確かにお前とはこの世界で初めて会ったし、全くわからねぇけど、お前から総二と似た雰囲気を感じるんだよな~」

 

 だ~から総二って誰だよ!!

 男の人の名前ってのはなんとなくわかるが……

 

「その総二って人、絶対男でしょ! いくら私の胸が小さいからって男と同じ雰囲気ってどういうことよ!!」

 

 ティアナが怒りのあまりに叩いたテーブルにヒビが入る。

 人にあたらないのはいいけど、物にあたるなよ……そのテーブルみたらおやっさん泣くぜ?

 

「その馬鹿力といい胸のことといい、その辺は愛香そっくりだな!!」

 

 胸アレルギーを発症し怒るティアナとそれを見て一層けらけらと笑う唯乃さん。

 てかまた登場人物増えたぞ、おい。

 

「はしゃいでいるところ悪いけど、フェネクスギルディの対策しなくて大丈夫?」

 

 脱線していた話を悠香さんが元に戻してくれた。

 そうだ……フェネクスギルディがいつまた暴れ出すかわからねぇ。

 唯乃さんがいるから追っ払うことくらいはできると思うが、不死身の奴をどうやったら倒すことができるのか……

 

「唯乃さん、フェネクスギルディの野郎をどうすれば倒せるとおもう? あいつ不死身だからどうやっても復活しちまう」

 

「首領が俺様にやったみたいに無を与えればいいとは思うんだけどな……」

 

 その言いかただと唯乃さん、まるであんた自身も奴と同じ不死身の体を持っているみたいじゃないか。いくらフェニックスの名を冠する戦士だからといってあんたは人間だろ?

 

 結局、明確な対策が出ることはなく、ただ時間だけが過ぎていった。

 

 

 

 

 ゴールデンウィーク真っ只中の繁華街。大勢の人で賑わうその様子を一望できるビルの屋上にフェネクスギルディはいた。

 

「ムカつく、ムカつく、ムカつく…………」

 

 まさか、忌々しいテイルフェニックスが次元を超えてやってくるなんて……。折角、テイルフェニックスがいないこの世界に来たというのに、これでは意味がない。

 フェネクスギルディは怒りのままにフェンスを叩く。その腕力で叩かれたフェンスは無残な形に変形してしまった。

 

「随分とイラついているようだね、フェネクスギルディ」

 

 フェネクスギルディは声がした方向を振り向いた。

 声の主はアルティデビルの実質的なリーダー、バアルギルディであった。

 

「何かな? バアルギルディ君?」

 

 怒りを露わにしながら尋ねるフェネクスギルディ。そんなフェネクスギルディの様子を見てもバアルギルディは全く動じなかった。より怒りが沸いてくるフェネクスギルディ。

 

「少し様子を見に来てね。まさか、テイルフェニックスが現れるとは……」

 

「それがどうしたんだよ……!!」

 

「私が手伝って上げても構わないんだよ」

 

 それを聞いたフェネクスギルディはバアルギルディに向かって火炎弾を放った。

 回避する様子を見せないバアルギルディ。火炎弾はバアルギルディの側面ギリギリを通過し、飛翔していた一羽の鳥に激突し撃ち落とした。

 

「邪魔をするなよバアルギルディ……!!」

 

 次はない。そう言っているようであった。

 だが、バアルギルディは涼しい顔のままだ。

 

「手厳しいな」

 

 やれやれといった風に手を広げるバアルギルディ。

 

「ポニーテールは一つ残らず消してやる、絶対に……!!」

 

 そう言い残すとフェネクスギルディは繫華街の中に飛び出していった。翼から放たれる熱風が熱い。怒りを表現しているかのようだ。

 一人になったバアルギルディは一人、呟く。

 

「さて、どうするかな、テイルフェニックス…………いや、フェニックスギルディ」

 

 

 結翼唯乃、その正体を和輝たちは知らなかった。




テイルレッドと出会える日は一体いつになるのやら……
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