俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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先週に誕生日を迎えた私。26でございます。



第160話 無敵の怠惰、不死身の色欲

「どうだね? これが我が性なるパートナーである」

 

 色欲の性癖、性行為属性(セックス)のアスモデウスギルディ。

 奴の奥義、聖巧なる伴侶(ラスト・アエーシュマ)により作り出された女エレメリアンが笑う。

 

「リリスギルディよ。よろしくね」

 

 肩を抱き寄せ見せつけるアスモデウスギルディ。

 相手となるその女エレメリアンことリリスギルディは恥じらい一つ見せずに肌という肌を合わせんとアスモデウスギルディに身をゆだねる。

 それは様は今まで何度も寄り添い連れ合った生涯の伴侶(パートナー)かのよう。

 どことなく大人でディープな関係性を想起させるその二人の姿に俺は動揺のあまり言葉を失った。

 

「ほう、動揺しているのか。それとも吾輩たちの愛に見惚れているのかな?」

 

 モノクルの奥の瞳が怪しくギラつく。

 リリスギルディはそんなアスモデウスギルディの体にさらに密着し囁く。

 

「ならもっと見せつけてあげましょう。私たちの愛を、私たちのセックスで」

 

「そうであるなマイハニー」

 

 そう答えたその瞬間、アスモデウスギルディはリリスギルディの腰部に手を当てては大振りでダイナミックな動きと共にお姫様抱っこをしては、そのまま顔を寄せ付ける。

 息ぴったりなその動きはまるで古めの洋画に出てくるダンスパーティーの一幕。

 腰部に手を当てられた瞬間、リリスギルディは「ああん……」と喘ぎ声に似た声を出したが、最早そんなことどうでもよくなるほどの鮮やかな動きだ。

 

「さぁ来て……」

 

「ああ……」

 

 呼び合う二人は心を重ねるように互いを求めあう。

 そして、アスモデウスギルディとリリスギルディ、二人の口が重なった。

 

「おい!?」

 

(キスした……!?)

 

 動揺する俺たち。

 アスモデウスギルディたちはそんな俺たちをまるで気にせず接吻を続ける。

 それは初々しいカップルが行う軽い物とはまるで違う大人な物。

 傍から見ていてもわかるほどに彼らは自身の舌という舌を濃厚に絡ませあう。

 口元から垂れる唾液のような物が反射する光が光沢を想起させては実に淫乱。

 熟練のそれとも言えるその接吻は時間を超越する。

 時間にして数秒も経たない筈が、体感で何十分、いや何時間とも長く感じてしまう程であった。

 

「うぉぉ……マジか」

 

(な、なによアレ……!! か、和輝……!?)

 

「落ち着け……!! ただの……キスだ」

 

 ちょっと刺激が強すぎるが一応はただのキスだ。

 だけど、まだまだエロに詳しくないティアナからすれば、あのディープキスは刺激が強すぎるってのは何となく理解できる。

 アスモデウスギルディたちはそんな俺たちの反応に気が付いたのかニヤリと笑う。

 

「おやおや、君たちにはまだ早かったかな?」

 

「何がだよ……!!」

 

「君たちはカップルなのであろう? キスの一つもしないのかい?」

 

「ッ……!! そ、それは……!!」

 

 言葉に詰まる。

 一応、俺とティアナはキスをした事がない訳じゃない。

 付き合う事が決まったあの日、俺はティアナのツインテールに口付けし、ティアナはティアナでそんな俺に対する返しとして俺の唇を奪った。

 でもそれは今のようなディープキスではない。

 断じてない。

 

「恥じらいもまた一興。これから淫らになればいいのである」

 

「誰がなるか!!」

 

 うんうんと頷くアスモデウスギルディへとそうツッコむ。

 が、当の本人はまるで聞いちゃいない。

 

「ねぇあなた? 可愛い後輩たちにもっと見せてあげましょう」

 

「見せてあげる……か。確かにそれは素晴らしい提案であるなマイハニー。若者たちのセックスへの抵抗を無くすためには最良の提案だ」

 

 いやいや、見せんじゃねぇよ!!

 俺もティアナもそれぞれそうツッコむがアスモデウスギルディらは自分たちの世界に入っていて聞きやしない。

 

「マイハニー? 今日はどこを攻めて欲しい?」

 

「もう、わかってる癖にぃ」

 

 やめろバカ!! 

 こんな場所でヤろうとすんじゃねぇよ!! 

 てか、いくら人型に近いとはいえエレメリアン同士のセックスなんて誰得なんだよオイ!?

 

(和輝!! このままじゃ!!)

 

「わかってる!! 誰がさせるかよ!!」

 

 ウインドセイバーを手に取り奴らを止めんとする。

 このままじゃ色々ヤバくなるってのを俺たち二人とも本能で察してしまったが故だ。

 そんな時、この野原に何処からともなく声が響く。

 

性行為属性(セックス)を愛すると言っておきながらその程度ですか!!」

 

 それは聞き覚えしかない声。

 そういやさっきから通信で声が聞こえてこなかったなと思い出す。

 

「なんだ!? 何者であるか!?」

 

「見て、あそこよ!!」

 

 リリスギルディが気づき指をさす。

 振り向くアスモデウスギルディと俺たち。

 堂々と立ち構え、白衣たなびかせていたのは――

 

「私は次世代を導きし美女、マザーツインテール!!!」

 

 目元を隠す専用のバイザーを着けたトゥアールさんだった。

 背後で爆発でも起きるんじゃないかって思うくらいには堂々とした名乗りだ。

 

「貴様、何者なのである!?」

 

「誰なのよあんた一体!?」

 

 アスモデウスギルディとリリスギルディは揃って大げさに驚いてくれた。

 七つの性癖というよりどちらかというと一般エレメリアンみたいな反応だな。

 特にリリスギルディのリアクションは浮気現場を見つけた奥さんのそれに近い。

 

「私はマザーツインテール。テイルバイオレットの母です!!」

 

「なんと!? ……はッ!? まさか貴様がベリアルギルディの言っていたテイルホワイトであるか!!」

 

 そういやベリアルギルディの野郎はテイルホワイトに何か恨みありだったな。

 ハッと思い出した様子のアスモデウスギルディのリアクションを見て思い出す。

 トゥアールさん改めマザーツインテールはアスモデウスギルディへとビシッと指をさす。

 

「そんな事よりもアスモデウスギルディ!! 性行為属性(セックス)を愛すると言っておきながらその程度とは笑えますねぇ!!」

 

「何だと!? 吾輩の何がおかしい!!」

 

「そのリリスギルディとか言う女の事です!! あなたはそれを伴侶だとか妻だとか言ってますが私にはその正体がわかっていますよ!!」

 

「何ッ!?」

 

「あなたのその能力、ただの分身とは違えどそれは己の属性力を分裂させて生み出した分身体であることに変わりありません!!」

 

「それが何なのだ!! 我が伴侶を愚弄するか!? リリスギルディは我が奥義によって生み出された性なるパートナーである!! 性行為属性(セックス)は一人では出来ぬ事など、母を自称する貴様ならばわかるだろう!?」

 

 ヒートアップするマザーツインテールとアスモデウスギルディの舌戦。

 油断するとそれぞれが共にR18用語を言ってしまうんじゃないかという嫌な緊張感が付きまとう。

 うろたえながらも言い返したアスモデウスギルディへとマザーツインテールは声高らかに告げる。

 

「一人で出来ないから生み出した? それこそが甘いと言っているんです!! あなたの生み出したそれは言ってしまえばただのダ〇チワ〇フもといラブ〇ール!! セックスを夢見ながら一人寂しくオ〇ニーしかできない弱さが生み出した空想でしかありません!!」

 

「なぁッ!?」

 

 中々に過激な言葉がトゥアールさんの口から発せられた……気がする。

 いやま、確かにそう言われればそうかもしれねぇけどよ……

 アスモデウスギルディは先程までの威勢を失ったのか膝をつく。

 

「大丈夫よあなた!! 私はダ〇チワ〇フでもラブ〇ールでもないわ!!」

 

「り、リリスギルディ……!!」

 

「どこまでも都合のいい妄想ですねぇ!! ダ〇チワ〇フに慰められる男なんていませんよ!!」

 

「ぐはァァッ!?」

 

「あなたぁぁぁッ!?」

 

 吐血し吹き飛ぶアスモデウスギルディとそれを追うリリスギルディ。

 何が何だかよくわからねぇが、兎に角マザーツインテールが優勢って事でいいのか?

 バカバカしいながらもシリアスだった空気がただただバカバカしいだけの空気になってしまっている気がする。

 

(ねぇ和輝……? ダ〇チワ〇フとかラブ〇ールって何?)

 

「……大人のおもちゃだ」

 

(オ〇ニーは?)

 

「えーっとだな……おかず片手に息子を……って何言わせてんだよ!!」

 

 ティアナの純粋発言に思わず乗りツッコミのような形で説明してしまった。

 アスモデウスギルディの気持ちがちょっとわかるというか……なんつうか凄く精神的にくるというか……

 ティアナさん。勘弁してくださいっす……

 

「和輝君!! 大丈夫ですか!?」

 

「半分はあんたのせいだよ!!」

 

 心配してくれているマザーツインテールへとそう一言。

 まぁ、おかげで向こう側のペースが乱れたのはありがたいけどよ。

 

「兎に角、隙は作りました。まだ能力の全貌が見えない以上、迂闊な事は出来ませんが、とりあえずは今のうちです」

 

「だな。とりあえずはサンキュー」

 

(ママは下がってて、あとは私たちが!!)

 

 非戦闘員たるマザーツインテールを下がらせ前に出る。

 

「ただし、エクストリームチェインバースト。あれだけは使用してはいけません」

 

「おん? どしたんだよ急に……」

 

(和輝!! 来たわよ!!)

 

 急になぜそんな警告をするのかわからず聞き返そうとするも、立ち直った様子のアスモデウスギルディがリリスギルディと抱き合いながらやってきた。

 意識をアスモデウスギルディたちへと切り替える。

 

「成程……吾輩もまだまだであったな。その程度の戯言で動揺してしまうなど、確かに甘い」

 

「戯言? いいえ、私が言ったのは真実です。あなたは性行為属性(セックス)を愛するなどと言っておきながら本当のセックスを知らない。所詮は生殖の概念のないただのエレメリアンなんですねぇ!!」

 

 下がらせていながらも尚も火力の高い言葉で攻めるマザーツインテールは至って普通。

 対するアスモデウスギルディは先程の様子を見るにこれも中々のダメージなのだろうと直感するがしかし、打って変わって堂々としている。

 

「中々言ってくれるではないか。であるがしかし、貴様はどうなのだ?」

 

「ッ……!! どういう意味ですか……!!」

 

 たじろぐマザーツインテール。

 何か思うところでもあるのかと勘ぐってしまう反応だ。

 

「吾輩にはわかるぞ」

 

「何がです……」

 

「貴様は言葉や雰囲気では誤魔化してはいるが、その実、貴様!! その年で処女であるな!!」

 

「ッ……!?」

 

 本人の性格と今までのリアクションからみて何となくそうじゃないかと勘ぐっていた俺としてはやっぱりそうだよなと頷くが、マザーツインテールはわかりやすく動揺している。

 

「な、なにを言ってるんですか……!! みればわかるでしょう? こんな貞操観念低そうな服装をした……男をひっかける事しか考えてなさそうな私が……処女? かつて童貞食いたくてムラムラしてる節操なしの女と呼ばれた私ですよ!?」

 

「いいや処女だ。貴様はそんな口ぶりをしておきながら後を一歩を踏み出せない良心

という名の下らぬストッパーがある!!」

 

 ビシッと指を刺し事実を突きつける様は先程の再放送。

 構図は逆転しているが、まるで同じだ。

 

「大方、貴様は想い人と性行したいと願いながらも、同性の親友がその想い人と結ばれた為に自ら身を引いた!! そうなのであろう?」

 

 正解も正解。大正解でございます。

 マザーツインテールもといトゥアールさんって華先生とはまた別ベクトルで真面目なんだよなぁ。

 いやま、ある意味では凄く「良い女」って奴なんだろうけどさ。

 

「その程度の愛しか持たぬ貴様などにセックスを語る資格なし!! 貴様こそ負け犬は負け犬らしく、命持たぬ人形で満足するのであるな!!」

 

「セ、セックスだけで愛を語ってんじゃありませんよ!! シミュレーションだけでなら何百何千何億とヤッてるんですよこちとら!!」

 

 やめろトゥアールさん!! もう無理だ!!

 悔し紛れの言葉を発しつつも、マザーツインテールはすんと後ろに下がる。

 その姿は言っちゃ悪いが哀愁が凄い。

 ほんと、総二さんって罪な男だよな……

 

「所詮負け犬だな。それより、我が伴侶を見るがいい」

 

「ふふふッ」

 

 勝ち誇ったアスモデウスギルディがリリスギルディを抱き寄せる。

 負け犬を嘲笑うかのような醜悪を笑みを浮かべながら身をゆだねるリリスギルディ。

 どう見てもそれはただ意思を持っただけの人形とは思えない。

 絆よりも深く大人なつながりを持った生涯の相棒。

 創造主の思い通りになる存在ではなく、独立した命を持った存在なのではないかと錯覚してしまう。

 

「大丈夫よママ!! ママの仇は私たちがとるんだから!!」

 

 トゥアールさんへの励ましも込めてティアナの意思が俺に代わって表へ出てそう宣言。

 

「総愛……!!」

 

「ママはママらしく処女(?)のままでも大丈夫よ!! 一生処女(?)のままでもいいじゃない!!」

 

「いやぁぁぁ!! 総愛にも言われたぁぁぁ!!」

 

 ティアナ、トドメ刺してるぞソレ。

 口から魂のような靄を出しながらぶっ倒れるマザーツインテール。

 悲しい事に、戦いに集中するべくアスモデウスギルディらと向かい合うティアナは気づかない。

 まぁ、見たとこ無事そうだし別にいいか。

 いたらいたらで一々五月蠅いしな。

 

「さて、二回戦の続きといこう」

 

「ええ、かかってきなさい」

 

(行くぜティアナ!!)

 

「吾輩は絶倫である。何度でもヤってやれるのである」

 

「楽しみねぇ」

 

 相手は二人。アスモデウスギルディとリリスギルディ。

 一見すると数の利で不利が付いているが、俺たちはそもそもが二心一体。

 それに奴の能力はもうわかっているし攻略法もある。

 いくら二人に増えた所でそれは何も変わらない。

 

(エクストリームチェインバースト。あれだけは使用してはいけません)

 

 先程の警告が思い起こされる。

 確か、エクストリームチェインバーストは多用すれば俺たち二人の融合が解けなくなる可能性があったな。

 まだ二回しか使っていないからまだ大丈夫だとは思うが念には念を入れよう。

 トゥアールさんが急にあんなこと言った以上、何かある可能性の方が高い。

 気を取り直し、戦いが再び幕を開ける。

 

 

 

 

 一方こちらはテイルブルームVSベルフェゴギルディ。

 怠惰の性癖、全裸属性(ヌード)のベルフェゴギルディはニタニタと笑い、テイルブルームは向かっていく。

 普段の彼女とは打って変わって激しく繰り出される攻撃の数々。

 拳や蹴りの一撃は、巨木をへし折り鋼鉄をも爆砕する爆撃のようであり、力任せとまでは言わないとしても、中々に苛烈で恐ろしい。

 しかし、そこまでの威力を出そうともベルフェゴギルディには届かない。

 

「無駄無駄。僕の陰部守る闇(スロウス・ペオル)はどんな攻撃をも守る。たとえそれがこの星を破壊する一撃だったとしてもね」

 

「くッ……!!」

 

 徒手空拳だけでなくグランアローで斬りかかるも、こちらもまるで手ごたえがない。

 テイルブルームの攻撃は何もかも全てベルフェゴギルディの肌を傷つける寸前で受け止められるのだ。

 これこそがベルフェゴギルディの能力、陰部守る闇(スロウス・ペオル)

 見えてはいけない箇所を隠すモザイクの如き闇が自らを守る絶対の防御。

 

「気が済むまでしてきなよ。僕、攻撃するのも全部めんどーだしさ」

 

「馬鹿にして……!!」

 

 涼しい顔で余裕を見せるベルフェゴギルディと手も足も出せずにいるテイルブルームの対比が目立つ。

 一方はただ立っているだけだというのにここまで圧倒されるのはテイルブルームにとっても初めての経験だ。

 実力差とも違う、相性差がそこにあった。

 

『先生、一度立て直しましょう。幸い、攻撃してくる様子はありませんし』

 

 撤退を促す悠香の通信が耳に入る。

 実際、攻撃するのも面倒だと答えるようにベルフェゴギルディは何もしてこない。

 

「そ、そうね……悔しいけどここは……」

 

「あれ? 逃げるの? ダルいなぁ。それはやめてほしいなぁ……!!」

 

 今までただ立っていただけのベルフェゴギルディであったが、テイルブルームが逃げの姿勢を見せたその刹那、動き出す。

 

「逃げるなんてさーせない」

 

 そう一言呟き指を鳴らす。

 するとどうだ。

 周囲一帯を覆うように闇が展開されていく。

 

「なッ……!?」

 

『何これ!? 結界!?』

 

 悠香の例えはズバリ的中だ。

 ドームのように周囲を包み込んだこの闇はベルフェゴギルディの能力の応用。

 極度ともいかなくとも重度の引きこもりである彼女がこういった結界を展開できるのはある意味では当然の事である。

 

「逃がさないよ。今は僕と無駄な時間を過ごすんだ」

 

「どうやら、やっぱり倒すしかないようね」

 

 積極的に襲ってくる訳ではないが、だからとて逃がす訳ではない。

 それがベルフェゴギルディのスタンスである。

 脱出する方法はただ一つ、ベルフェゴギルディを倒すしかない。

 

(相手の能力を突破するには……認知できない速度で攻撃するしか……いや、それじゃダメ。確かあの能力は誰かの視線があれば発動すると言っていた。じゃあ何? やっぱりあの闇を超えるほどの攻撃力を出せばいいの?)

 

 攻略法を考えつつテイルブルームは何度も向かっていく。

 どんな攻撃をしても防ぐ陰部守る闇(スロウス・ペオル)

 思いつくのは能力を発動を封じる事と、そもそもの防御を強引に突破するの二択。

 テイルブルーム自身としては出来れば後者の択はとりたくない。

 最大火力をもって突破できなかった場合、それ即ち完全な敗北を意味するからである。

 向こうから攻撃してこない以上、敗北の条件はこちらが力尽きるしかないのだ。

 テイルブルームは体力を温存しつつ攻略法を模索し隙を伺う。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「持久戦? ダルい事するねぇ。でもだよ? ゆっくりしてていいのかなぁ?」

 

 何度目かの攻防の果て、テイルブルームは自身の身体の不調に気が付いた。

 意識しないと気が付かないほどゆっくりとであるが、段々と身体の動きが重くなってくる。

 

「僕は何もしない。でも、この結界はどうかな?」

 

「タイムリミットはあるようね……!!」

 

 正解と言わんばかりの微笑みを見せるベルフェゴギルディ。

 この結界はベルフェゴギルディが作り出した空間故に中に居続ける事=やる気というやる気が失われていくのだ。

 

「どうやらダラダラ考えてる暇はないみたいね!!」

 

『でもだからってこのままじゃ……!!』 

 

『クソー!! あんのモザイクさえなければなー!!』

 

 タイムリミットが存在すると言われた以上、冷静な判断というのはその人が思っている以上に失われていく。

 このままじゃダメだと理解したテイルブルームは一か八かの方法を試す。

 

「こうなったらこれしかない。あの闇は……私の視線を引き金に発動するのであれば!!」

 

 心を無に、神経を研ぎ澄ます。

 テイルブルームが行ったのは実に単純で実に難しい戦い方。

 

「ハァっ!!!」

 

「無駄だって――ッ!?」

 

 距離を詰めて放たれる拳がベルフェゴギルディのどてっ腹に直撃した。

 戦い始めて数十分目にして初めて実感できた手応え。

 まさかやられると思っていなかったベルフェゴギルディは目を見開く。

 

「何……!? まさか……」

 

 追撃をしかけんと詰めるテイルブルーム。

 ベルフェゴギルディは初めて自発的に動き出した。

 

「ダルッ……コイツ目をつぶってる!!」

 

 放たれる攻撃を避けながらベルフェゴギルディはテイルブルームの表情を見て舌打ちする。

 そう、テイルブルームは目をつぶりながら攻撃をしていたのだ。

 

『先生すごい!! 確かに視線がなければ発動しない!!』

 

 そう、陰部守る闇(スロウス・ペオル)の弱点はその発動条件にある。

 あくまで裸体を視線から守る要領で展開されるその闇は誰かの視線がなければ発動しない。

 つまり、目をつぶってベルフェゴギルディを見なければいいのである。

 

『でも目をつぶったまま戦えんすか!?』

 

 通信で聞こえてくるのは心配する匠の声。

 確かにいくら単純とは言え敵を見ずに戦うのは至難の業だろう。

 だが、テイルブルームの今まで培ってきた経験は他の戦士のそれを凌駕する。

 ティアナのようにツインテールを感知することが出来ぬとも、集中さえすれば目を閉じて気配を辿って殴り合うなど造作もない。

 

「くッ……!!」

 

「これで終わりよ……!!」

 

 流れに乗ったテイルブルームはとどめを刺さんと拳を握り締める。

 肉体がそこまで強くないベルフェゴギルディでならこの程度でも致命の一撃となるのは必至だ。

 勝負は決した。

 そう思われた……がしかし、

 

「なーんてね。無駄だよ……!!」

 

「ハァッ!! ……ッ!?」

 

 放たれた必殺の拳。

 しかし、何かに受け止められたかのように再び手ごたえがない。

 避けられた訳でもない以上、これは一体?

 目を見開き確認するとそこには攻撃を受け止める闇が展開されていた。

 

「嘘!! 見てなかったはずなのに!?」

 

「確かにね。でも、僕は目を開けていた」

 

「それってまさか……!!」

 

「そう、この能力は何も相手の視線からしか発動できない訳じゃない。僕の視線でもいいのさ」

 

 何と絶望的な宣告であろうか。

 この間も力は徐々に失われていく。

 限界という名のタイムリミットは刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

「さぁイクぞハニー!!」

 

「ええ、あなた!!」

 

 アスモデウスギルディとリリスギルディの連携攻撃。

 防御力の高さを生かしてアスモデウスギルディが盾となり、リリスギルディが死角から俺たちを狙う。

 リリスギルディはその見た目通り、スピードこそあれど直接的なパワーはアスモデウスギルディと比較するとあまり強くない。アスモデウスギルディはその逆だ。

 奴らの連携はそんな短所を容易く埋める。

 

「溜まったぞ!! さぁイケ!! ハニー!!」

 

「ああん、イッちゃうわ~!!」

 

 聞きたくもない喘ぎ声のような雑音と共に放たれる同時攻撃。

 アスモデウスギルディは自身の反射能力を活かし、溜め込んだ攻撃をエネルギーに変えて放出。リリスギルディはその反射攻撃を回避できぬようホーミング弾を飛ばす。

 大小サイズも挙動も違うエネルギー弾がこちらへと向かってくる。

 

(任せろティアナ!!)

 

「お願い和輝!! 任せろ!!」

 

 コンビネーションならこちらだって負けやしない。

 人格を入れ替え、表に出た俺がアスモデウスギルディの放つ巨大なエネルギー弾に意識を割いて迎撃。

 ウインドセイバーで叩き切ると同時に飛来する大量のホーミング弾はティアナに任せる。

 

「頼む!! ええ、任せて!!」

 

 どの弾がどこから飛んでくるかなど集中したティアナに分からぬ筈がない。

 一瞬の人格切り替えを終えたティアナはウインドセイバーを投げ捨て、飛んでくる弾を全て拳一つで迎撃しきってみせた。

 

「なんと!?」

 

「私たちのプレイが!?」

 

 ここまで完璧に迎撃されるとまでは思ってもみなかったのだろう。

 目を見開き驚愕する二人。

 俺たちはその隙を見逃さない。

 

「来て!! 私たちのツインテール!!」

 

 ティアナの呼びかけに応じて召喚されるテイルバスター。

 バスターキャノンモードへと変形させ、その銃口をアスモデウスギルディへと定める。

 

完全開放(ブレイクレリーズ)!!」

 

 装甲の一部が展開し、隙間から漏れるツインテールの粒子。

 巻き起こる紫の旋風が大きな力となり、爆発的な力を生む。

 

「エクストーム!! ブラスト!!!」

 

「これは……何とぉッ!?」

 

 放たれる光の奔流はアスモデウスギルディらを目指す。

 アスモデウスギルディはこの必殺技を耐える事などありえないと直感した様子だが、背後のリリスギルディはそれに気づいているようではない。

 つまり、受けるしかない。

 

「避けろハニー!!!」

 

「きゃぁ!!」

 

 迫るエクストームブラストを前にアスモデウスギルディはリリスギルディを守るべく突き飛ばす。

 盾になることを諦めた奴にとって最善の手だった様子だが、それもまた俺たちの狙いだ。

 アスモデウスギルディさえ倒してしまえば問題ない。

 

「うおおおおおおッ!?」

 

「あなたぁッ!!!!」

 

 光に飲み込まれ爆散するアスモデウスギルディ。

 残されたリリスギルディは涙を流しへたり込む。

 ただの分身だというのにすぐには消えぬ彼女を見るに、確かに奴には別の命が宿っていやがるんだなとわかる。

 尤も、だからって可哀そうだとは思わねぇがな。

 

(終わったな)

 

「ええ、そうね」

 

 一体が二体になる。確かにそれは単純にして強力な戦法だ。

 でも、それは即ち足を引っ張り合う可能性だってある。

 今の一撃だって、アスモデウスギルディがリリスギルディの盾になるのではなく避ける選択をとってりゃ多分助かったかもしれねぇ。

 ま、リリスギルディがいようがいまいが、アイツの性格からして避ける選択を取っていたのかはわからねぇがよ。

 頷き合った俺たちは残されたリリスギルディへトドメを刺さんと近づいていく。

 その時だ。

 

「油断してはいけません!! まだ生きています!!」

 

 マザーツインテールがそう叫んだ。

 一転して笑い出すリリスギルディ。

 俺たちは放たれた殺気に振り返っては現実に目を開く。

 

「言ったであろう。セックスは一人では出来ぬとな……!!」

 

「アスモデウスギルディ!?」

 

(生きていた!? いや違う!!)

 

「セックスを愛する者として相手残して果てるなどありえぬ事だ」

 

 堂々と言い切り立ちはだかるアスモデウスギルディのその姿は一つの傷もついてはいない。

 生まれたてと言えるその綺麗すぎる肉体を見て俺は直感した。

 コイツは一度死んだうえで生き返っちまったんだと。

 

「何なのよコイツ……」

 

「どうして? といった顔だなテイルバイオレットよ。ならば教えてやろう。我が伴侶リリスギルディは何もセックスをするための理想の相手というだけではない。我らは一つの命を分けて生きているのだ。どちらか片方が死ねども、どちらかさえ生きていれば果てる事はない」

 

 予想的中。

 つまり、こいつらは同時に倒さなきゃやられる事はないってか。

 だったら、まとめてブッ倒すまでだぜ。

 

「ネタバレありがとよ!! んじゃあ纏めてやってやらぁッ!!」

 

 そうと解ればさっさとやるに限る。

 ティアナから人格を交代した俺はテイルバスターを再び奴らに向ける。

 今度は逃がさねぇ。

 もし、さっきみたいに突き飛ばして庇おうとも片方が再生する前に消し飛ばす。

 

「エクストーム……!!!」

 

「無駄である!! フン!!!」

 

「また盾になる気かよ!! だが意味ねぇぜ!!」

 

 二人まとめて吹き飛ばせば問題ないと俺は引き金を引いた。

 再び放たれたエクストームブラストはアスモデウスギルディらを逃がさず直進。

 もし、どちらかを逃がそうとすれば銃口をそっちにも向けてやる。

 

(待って、何かおかしい!!)

 

「どうしたティアナ!!」

 

(リリスギルディが動いていない!!)

 

 何だと!? そいつはどういう事だ!?

 ティアナ曰く、リリスギルディが先ほどと違ってアスモデウスギルディの背に隠れたまま一切動いていないらしい。

 まさか受け止めきれるとでも思っているのか?

 もしそうだとするのなら勘違いもいいとこだぜ。

 なら念には念を入れてブッ飛ばす!!

 

「行くぞ!! エクストリームチェインバーストだ!!」

 

(わかったわ!! 一瞬だけでも、私たちの最大火力で!!)

 

 使うと言われた手前ではあるが、一瞬の使用なら問題ない筈だ。

 今の俺たちなら何とかなるにきまってる。

 そう信じて俺たちは心を完全に一つに合わせ極限解放。

 装甲がパージされ、真の極限進化形態へと変わる。

 

「二人とも……!!」

 

「「ハアアアアアァッ!!!!」」

 

 俺と私の意識が重なり、その力は全開する。

 より強力になったエクストームブラストはアスモデウスギルディに受け止める事はおろか、ほんの数秒耐える事も許さない。

 逃げ場を無くさせる極限の一撃はアスモデウスギルディを消し去り、そのまま背後で庇われていたリリスギルディをも飲み込んだ。

 

「ふ~、何とかなったな」

 

(ええ、そうね……)

 

 バーストが解除され、通常のエクストリームチェインへ戻った俺たち。

 必殺技の余波で野原は抉れ、辺り一面は見る影もない。

 これなら奴らも倒しただろうと確信する。

 が……、

 

 

 

「言ったであろう? 我らは果てぬ。共に絶頂するその時までな」

 

 

 

 聞こえてくる声に耳を疑った。

 俺は聞こえてきた方へと首を向ける。

 吹き飛ばした野原の中心にアスモデウスギルディとリリスギルディは立っていたんだ。

 

「何!?」

 

(噓でしょ!? どうして!?)

 

「まさか、これはもしや……!!」

 

 倒した瞬間の映像をバイザーにて再生するマザーツインテールが何かに気づいた。

 その何かを聞こうとした矢先、アスモデウスギルディはリリスギルディと共に向かってくる。

 

「やられるかよ!! ッ……!?」

 

 迎撃してやると意識を向けたその時、突如俺は俺自身が何なのかわからなくなった。

 自分が自分でないような気持ちの悪いこの感覚がバーストした事の反動であると知った時にはもう遅かった。

 

「お返しである!! 我が攻めを受けて絶頂し、果てるがいい!!」

 

 アスモデウスギルディの反射攻撃。

 溜め込み放出するのはさっき俺たちが見舞ったエクストームブラスト。

 全身から放たれた強烈なエネルギー波を前に俺たちはマザーツインテールを庇うので必死だった。

 まるでさっきの再現だ。

 違うのは……俺たちは立ち上がれず、敗北したって事かよ……

 

「総愛!! 和輝君!!」

 

 力尽き変身が解除された俺たちへと駆け寄るマザーツインテール。

 完全に意識を失う直前、空の彼方から別の影が舞い降りる。

 

「そっちも終わったんだ……」

 

「どうやらそちらもそのようだな。ベルフェゴギルディよ」

 

 現れたのはテイルブルームと戦っていたはずのベルフェゴギルディ。

 ベルフェゴギルディは俺たちの目の前へ倒した敗者を投げ捨てる。

 それはツインテールこそ無事だが、それ以外は着るもの全てを奪われ全裸と化したテイルブルームだった。

 

「言いつけ通り、属性力は奪ってないよ。今日はあくまで下見でしょ?」

 

「にしてはやりすぎたようであるがな」

 

 舐めプされたにも近い屈辱だが、今はもう戦えない。

 

「次合う時は心だけでなく、身体も重ねるのだな」

 

 俺はその言葉を最後に意識を失った。




今更ですけど、エレメリアンの生殖器官ってどうなってるんでしょうね?
原作でのマーメイドギルディらの発言を考えると無いが正しいんでしょうけど、アイツらエロゲしたりするしなぁ……
18禁二次創作だと大体生えててレッドが犠牲になってるイメージ(竿役がブルーになってるパターンもままあるけど)
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