俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第162話 命短し奪えよ童貞

 みんなは好きな女の子に急に押し倒された事ってあるか?

 誰もが一度は妄想するシチュエーションだよな……多分……。

 前にもあった気がする俺は正直、ちょっと……いいなって思ってた……。

 夢でもラッキースケベでも何でもいいから起きてくれねぇかなって思う事は一度や二度じゃねぇ。

 今こうやって目の前で起きるまではな。

 

「おい……。どうしたティアナ? そんな息荒くしてよ……」

 

 興奮気味のティアナに抱き着き押し倒され、熱い吐息を吹きかけられている俺はそんな事を思いながらティアナの表情を凝視する。

 どう見ても様子がおかしい。でも、これは夢じゃねぇよな?

 

「ねぇ……――して……」

 

「ん? 何?」

 

 今にも消えそうなか細い声で何かを願うティアナ。

 荒い吐息はその間も熱を増している。

 

「おいおい和輝~? ラッキースケベじゃねぇかよ~」

 

「もう、たっくんったら。そんな様子じゃないでしょ。大丈夫?」

 

「熱でもある……?」

 

 様子のおかしいティアナに気が付いたみんなが声をかけてくる。

 匠は俺を茶化し、悠香さんはそれを咎め、青葉さんが熱の心配を。華先生は未だ部屋の隅で落ち込んでいるのでまだ気づいていない。

 あれ? トゥアールさんは?

 こんな時、真っ先に茶化しそうなトゥアールさんが何も反応していない事に気が付いた俺がトゥアールさんを探そうとした時、ティアナがお構いなしとさらに顔を近づけてきた。

 

「おい、ちょっと……近い。近いですティアナさん……。当たってるぞオイ……」

 

「和輝……」

 

 恍惚な表情でより一層迫ってくるティアナは胸が当たっている事など気にしない。

 ティアナは貧乳だ。それもかなりのド貧乳。

 それが当たっている。つまりそういう事だ。

 

「お願い和輝……私と――して」

 

「は?」

 

 今何言った? 

 そういったニュアンスで聞き返すと、ティアナははっきりと大きな声で……

 

「私と……!! エッチして!!」

 

 言いやがった。

 

「はぁぁぁッ!?」

 

「ちょっと何!? どういう事!? 和くん!?」

 

「そうだぜ和輝!! お前~」

 

「知るか!! 俺が聞きてぇよ!!」

 

「涼原君!! これは一体どういうことですか!?」

 

「先生は復活してんじゃねぇよ!!」

 

 ティアナのとんでも発言で大混乱となるコンソールルーム。

 華先生はガミガミ喚くし、悠香さんは青葉さんを巻き込んでキャーキャー五月蠅い。匠の野郎はうらやましいだとか何とかとは別ベクトルでやかましい。

 

「これは……まさか……!!」

 

「どうしたんだよトゥアールさん!? 何が起きてんだよ、ティアナは!!」

 

 先程からずっと騒いでいる様子が見えなかったトゥアールさんはタブレットか何かを操作しては何かに気が付いたようだ。

 こういう時はあんまし信用できねぇが、今はそこに頼るしかない。

 そう助けを求めようと首を向けるがしかし、ティアナはそんな俺の背けさせないよう固定する。

 

「ちょお前!!」

 

「ママじゃなくて私を見て……!! 私をもっと……!!」

 

「だからおかしいんだよお前は!!」

 

 マウントポジションにも近いこの状況。

 ティアナの迫力は狩りを行う獣のそれだ。

 ティアナの奴、ツインテールをまるで手足のように動かして俺の手首を縛り付け動かせないようにしてやがる……!!

 変身もしないでこの芸当……お前、バケモンか!?

 

「和輝……!! お願い……お願いだから私とシて……!! なんだかわからないけど、そうでもしないと私……おかしくなる……!! なんだかすっごくそうしないといけない気がするの!!」

 

「何だよそれ!! エロゲキャラじゃあるめぇし!!」

 

 どこのバカエロゲだよと思わず言ってしまうくらいティアナ発言は支離滅裂だ。訳が分からねぇ。

 ここまで来たら興奮よりも恐怖が勝る。

 周囲のアホ共はそんな事お構いなくそれぞれ騒ぎやがってこん畜生。

 

「ダメです!! 和輝君、今の総愛とヤッてはいけません!!」

 

 こうなりゃあとでやってやるからと一人、くだらない覚悟を決めそうになる俺へとまさかのトゥアールさんがまったをかけた。

 思わず「はぁッ!?」と口にしてしまう程に衝撃的な行動だが、明らかな異常が俺の冷静な心を取り戻させてくれた。

 とりあえずこの場を切り抜ける。

 そう決意した俺はティアナと心からしっかりと向き直る。

 

「ティアナ!! とりあえず落ち着け!!」

 

 声を大にしてそう叫ぶが、案の定、今のティアナは聞く耳を持たない。

 尤も、それはわかっている。

 だから俺はわずかに動く手を動かしティアナのツインテールを優しく触れる。

 

「あぅん……そこ……!!」

 

 どう聞いても喘ぎ声にしか聞こえそうにない言葉を発するティアナだが、俺がやったのはツインテールを撫でてやっただけにすぎない。

 でも、ティアナにはこれが一番効果ある。だから俺は落ち着くまで何度も優しくツインテールを撫で続ける。

 コツというか、ティアナが1番喜ぶ箇所は右の房の穂先よりやや上にある。テイルレッドのツインテールで例えるなら赤がオレンジにグラデーションし始める辺りって感じだな。

 続けること約数分、程なくしてティアナは落ち着きを取り戻し、気を失った。

 

 

 

 

「……で、何がおきてんだよ」

 

 ティアナが再び眠りにつきメディカルルームへと運び終えた俺たち。

 コンソールルームへと戻る道中にて俺はトゥアールさんに先程の事を尋ねた。

 さっきのティアナの異変はただの気の迷いとかじゃ説明はつかねぇぜ。

 

「実はですね。和輝君が気絶し、アスモデウスギルディらが撤退する寸前に総愛はアスモデウスギルディの放つ光線に当たっていたんです」

 

「じゃあそれのせいって事か?」

 

「恐らくは。念入りに調べたつもりでしたが、ああいった効果を発揮する物だったとは……」

 

 こればっかしはトゥアールさんの超科学でも流石に仕方ない。

 にしても何だよコレって感じだぜ。

 

「さっきの見るに、あれって性欲の暴走って感じかしら?」

 

「過去に一度、恋愛属性のエレメリアンが人の恋愛感情を暴走させる技を使ってきた事があります。今回はそれの性欲バージョンと言って差し支えないと思います」

 

「性欲って……あの性欲ですか……?」

 

「華先生、それ以外に何があるんすか」

 

「でも、謎だけどな。ティアナって性欲なんてなさそうな感じするしさ」

 

 性欲の暴走。だからティアナはあんな風になっちまっていたのかと理解する一方で、あのティアナに性欲って物があったとは思えない。

 ぶっちゃけティアナってさっき落ち着かせたみたいに欲情する対象にツインテールを含むような奴だし、体を求めるというよりツインテールをいじってほしいと迫る方が納得できる。

 

「そこはあれじゃない? トゥアール先生も言ってたけど、最近のティアちゃんは和くんに依存し始めているからとか」

 

「それもありますが、マモンギルディの一件でそういった事に興味を持ち、知ってしまったのも原因と思われます。未遂に終わってしまったとは言え二人揃ってラブホテルに行くくらいには認知してはいましたし」

 

 サラッとみんなの前でラブホ行った事を暴露しやがるトゥアールさん……

 いやま、事実だし最早公然の秘密な感じあったけどよ。

 まぁ、んなことよりも今はティアナの状態についてだ。偶然が重なったとはいえ、まさかこうもピンポイントで効果を発揮しやがるとは。

 

「で、どーすんすか? さっきはヤっちゃいけないとか言ってたすけど」

 

「川本君!!」

 

 ある意味本題とも言える部分に切り込む匠と相変わらずの反応を見せる華先生。

 俺としては勘弁してくれよって感じでもあるが、トゥアールさんは冷静だった。

 

「それも先程話した事に繋がることですよ。今の総愛と和輝君は互いの結びつきが強くなりすぎていますし、こんな状況でもしセックスなんかで体を重ねてより深い結びつきを得てしまえば、ますます危険性が高くなってしまいます」

 

「へー……意外……」

 

 青葉さんが思わずそう言ってしまうくらいには意外な考えだ。

 トゥアールさんの事だし、こうなった以上は一度がっつりセックスしてティアナにかかった呪縛を解除しましょうとかぬかすもんかと思っていたくらいだしな。

 

「いやま、そりゃあ私だってこんな事がなければ和輝君には総愛の事をズッコンバッコン犯してほしかったですよ」

 

 前言撤回。やっぱトゥアールさんはトゥアールさんだ。

 冗談とも思いづらいほどにはサラッとそう言ってのけたトゥアールさんに皆が苦笑いを浮かべたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 アルティデビル基地の大ホール。

 かつては多くのエレメリアンで賑わっていたこの場所は、七つの性癖(セブンス・シン)の登場して以降、程なくして使われなくなった。立場が上である七つの性癖から許可を貰えぬと出撃できぬ上、彼らに弄ばれるような事をされて心が折れた者は多い。

 一部の面々が隠れて集会するだけの大ホール。今日もそんな風にこそこそと使われるだけだと……そう思われていた。

 のだが、

 

「どうしたというのだ?」

 

「急に呼び出されたと思えば、こんなにも」

 

 今日の大ホールはいつかの光景を思い起こせる様子を見せていた。

 並べられた席には基地内に在住しているエレメリアンの殆どが着席している。

 彼ら全員、何事なのかと隣同士で首を傾げているが、そんな事はどうでもいいと思えるくらいには賑わっている。

 

「ここでまたこんな光景を見れるとは……夢みたいじゃ……」

 

 全盛期の賑わいを見ては涙腺が緩んだ様子のアガレスギルディ。

 

「おいおい、アガレスギルディの奴が泣いてるぜ」

「アイツが呼んだんじゃねぇのか?」

「いや、あのアガレスギルディだ。誰かがそう命じたに違いない」

 

 誰もが首をキョロキョロさせてはアガレスギルディに命じた背後の存在を探る。

 大ホールの席が遅れたやってきたエレメリアンで埋まったその時、大ホールの入口が開いては外より大柄な壮年の悪魔(エレメリアン)が姿を現す。

 七つの性癖、色欲を担う性行為属性のアスモデウスギルディだ。

 

「お前たち、今日ここに集まってもらったのは他でもない。吾輩、七つの性癖色欲のアスモデウスギルディが諸君らの腑抜けた心を正し、このアルティデビルを立て直すためである」

 

 はっきりと大きな声でそう宣言するアスモデウスギルディ。

 当然、いきなりそう言われて反発しない筈もなく……

 

「何だと!? 」

「何を企んでいる!?」

「また七つの性癖か!?」

 

 そう声を上げる一同だが、無理もない。

 彼らにとって七つの性癖の印象は最悪も良いところだ。後から現れた癖に実力を含めた何もかもが上であり、いつの間にかこの基地内で上位の権限まで得ていてこちら側のプライドをズタズタに引き裂いていく。しかも、それだけではない。レヴィアタンギルディから始まり直近のマモンギルディから約四名、一名を除いてその全員がこの基地内の者に被害を与えていた。例外である一名も挨拶一つどころか顔見せすらしなかった奴である。

 故にこの反応は当然の事なのだ。

 

「ほう、どうやら吾輩は招かれざる客であるか」

 

 いくつかの面々はかつてレヴィアタンギルディがやってきた時の事を思い出す。

 あの時も最初はこうだった。しかし、レヴィアタンギルディは自身の持つ他者の思考を侵食する能力を駆使していとも簡単に基地内殆どを洗脳してしまった。

 今回もそうなのかと身構える。

 しかし、アスモデウスギルディはと言うと。

 

「吾輩は……セックスが好きである!!」

 

「「「「は?」」」」

 

「吾輩は異性同士……いや、同性同士でも構わぬ。吾輩は自他を含めて、誰かが誰かを愛するセックスが大好きである!! 互いが愛を求め、淫らによがり、身体を重ね合う!! これほどまで原始的で興奮させてくれる幸せな行為が他にあっただろうか!? いやない!!」

 

 皆があっけにとられる中も熱く語るアスモデウスギルディ。

 しかも内容はあまり大声で言いたくないような事。

 であるのに、このアスモデウスギルディは何も臆してなどいない。思わず目頭が熱くなってしまう程には堂々と語っている。

 この宣言は威嚇する野生動物を相手に武器を捨て敵意はないと言うに等しい。

 しかし、反発する者の大半は冷笑していた。

 

「そこの君、君はどんなセックスが好みだ? 勿論、自身が実際にやりたい事でなくてよい。もしも出来るのならで構わぬ」

 

「お、俺でございますか!?」

 

 唐突にふられて硬直するのは亀のような姿をしたエレメリアン。

 当たり前だが、どんなセックスが好きかと尋ねられるなんて経験はない。

 それにここには他にも多くの仲間がいる。もし、答えればどんな目で見られるかなんて簡単に想像つく。

 

「……それは……」

 

「言えぬか……」

 

「は、はい……」

 

 いくら実力も立場も上のアスモデウスギルディから尋ねられようと、こればかりは流石に口ごもる。

 そんな彼へアスモデウスギルディは近づき肩を叩く。

 

「大丈夫である。我々はエレメリアン、愛を語る事におかしなことはない。ただ自身の性癖と合わせたシチュエーションを答えてくれればよいのだ」

 

「しかし……!!」

 

「吾輩は笑わぬ。いや、祝福しよう。愛を語ることは素晴らしい」

 

 レヴィアタンギルディの行った洗脳とは違う勇気が湧いてくる言葉。

 勇気を貰ったエレメリアンは恐る恐る口にする。

 

「俺はその……お互いに縛られたままヤリたいです。出来るならその……ガチガチの亀甲しばりで……」

 

 このエレメリアンの属性はズバリ緊縛属性。それもどちらと言えば一緒に縛られるのが好みな変態である。

 それを知った周囲のエレメリアンたちは皆ドン引きし、中にはせせら笑いを漏らす者もいた。

 するとアスモデウスギルディは声を荒げる。

 

「お前たち笑うな!! よいか、この者は縛られるのが好きだと言ったのだぞ? それの何がおかしい!? 互いを縛り縛られ愛を育む……痛ましくともこれほどまで美しいセックスの形はない!! 同じ苦しみを分かち合う事もそれもまた一つのセックスの形なのだぞ!!」

 

 当人以上に熱く、熱く語るアスモデウスギルディ。

 この熱量にはせせら笑っていた一部も黙り込む。

 

「アスモデウスギルディさん……」

 

「大丈夫である。どんなセックスの形であれ笑われる必要などない。君もまた堂々とするべきなのである。さすれば君は新しいステージへと進めるであろう」

 

「は、はい!!」

 

 そうだ、何もおかしな事などない。アスモデウスギルディの言う通り、自分自身の性癖を語るのに何もおかしくない。

 

「よいかお前たち!! そもそもセックスは何一つ下品でもない!! 愛を確かめ、次世代に子を残す行為そのものが冷笑されるなどあってはならぬのだ!! この空気を残し続ければいずれは人間もエレメリアンも滅びてしまうのだぞ!! まずは我々が見本をなるのだ!!」

 

 はじめの冷笑する空気はいずこへ行ったのか。

 アスモデウスギルディへ歓声が巻き起こる。

 

「どんな属性でも性癖でもいい!! 吾輩は全てを肯定しよう!! さぁ、皆の好みを教えてくれ!!」

 

「はい!! はいはい!! オレオレ!!」

 

 勇気を貰った者たちが手を上げる。その中でもとびきり元気よく手を上げた者をアスモデウスギルディは指名する。

 

「オレはやっぱ、女を物のように犯すシチュエーションがいいな!! 凌辱こそ最高のセックスはないぜ!!」

 

 豹の思わせる姿をしたエレメリアン。

 指名した直後こそ元気そうでなりよりだと頷くアスモデウスギルディであったが……

 

「ふざけるな!! 貴様は万死に値する!!」

 

「ええ!? そんなぁ!?」

 

 ああ無情……

 それはアスモデウスギルディの逆鱗に触れる事であった。

 一瞬でブチぎれたアスモデウスギルディの放つ光線をくらい、豹のエレメリアンは頭から壁に突き刺さる勢いで吹き飛んだ。

 

「よいか。吾輩は愛のないセックスが嫌いなのだ。愛のないセックスなどセックスにあらず。愛は独りよがりではなく、分かち合う物なのだ!!」

 

 一部、その手の属性を有するエレメリアンが下を向いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 その夜、俺は一人ベッドに横になっていた。

 ティアナはあの後、トゥアールさんによって当分の間は基地内に隔離されることに決定した。曰く、性欲を制御する薬を調合する程度であればそう時間がかかるものじゃないが、万が一の事があるし当分の間は会わない方がいいとのこと。

 俺としては早めの解決を願うしかねぇ。

 

「疲れたな……」

 

 もう夜も深いというのに一向に眠れそうにない。

 戦いがあった日から今日まで一日か二日程度も眠り続け休息に徹し続けていた以上は当たり前なのだろうが、それにしてはやけに疲れが酷い。

 眠りたいのに眠れない。それが今の俺なんだ。

 

(つまり、今の二人は少し互いに依存しているって事ね)

 

 会議中、悠香さんから言われた俺もティアナも互いに少し依存し始めているという言葉を思い出す。こうやって夜一人になってみてひどく実感できる。寝るときにティアナが隣にいないだけでこうも寂しく、恋しくなっちまうのか。

 マモンギルディ戦以降、より強くなっていたこの想い。

 一応、短時間のそれであれば問題はないのだが、こうも先が分からず、なおかつこういった本来は休息としてあてがわれるような時間にいないのは思っていた以上に負担がかかっている。

 今もし、ティアナと隣で寝る事が出来たのなら俺の指先は無意識の間にアイツのツインテールを撫でたり絡めたりしているのかもしれねぇ。

 なんつうか、ティアナや総二さんの事を笑えねぇなとは思う。

 

「……でも、このままじゃダメ……なんだよな」

 

 このまま二人で戦い続けるためにも、俺とティアナは互いに自立した関係にならねばいけねぇ。

 支え合うのは悪い事じゃないし、何も間違ってはいない。

 がしかし、それは互いが互いに精神的な意味で自立していなくちゃ成立しないんだ。

 今のように歪なままで進み続ければ、俺とティアナのツインテールは歪んだ状態で結びついてしまい、もう二度と解くことが出来なくなる。

 それは絶対に避けなくちゃならねぇ。

 だから俺は……乗り越えてみせる。

 

「……」

 

 左腕のテイルブレスⅡを可視化させては見つめる。

 さっき、トゥアールさんが簡易的なメンテナンスとアップデートを済ませてくれたこのテイルブレスは、今までのティアナを必要とする変身を可能とするテイルドライバーへ変化する機能だけでなく、本来の機能であるブレス単体でのティアナを必要としない俺一人での変身も可能となった。

 勿論、ティアナと融合するエクストリームチェインよりかは遥かに劣る。

 が、それ以前のノーマルチェイン程度は力を発揮できるし、ティアナのテイルブレスにも同じ機能が追加された事による二人で同時変身のコンビネーションは作戦や状況次第ではエクストリームチェインを凌駕する。

 特に分身体含めて同時撃破をしなくちゃならねぇアスモデウスギルディにはこちらの戦法が有効だ。

 その為にも俺はティアナがいない状態でもより強い力を発揮できるようにならなくちゃならねぇ。

 

「俺、強くなるぜ。お前に頼るだけじゃなく、お前を守れるような……そんなツインテールになってやる」

 

 テイルブレスに想いを語り、目をつむる。

 一年前、ティアナと出会った当初はそもそもテイルブレスの単独起動が出来なかった。その事を思えば、今の俺は確かに成長している。これからもティアナと共に歩む為にも俺は体も心も強くなるんだ。

 決意を新たに、眠れないながらも眠ろうとする。

 そんな時だった。

 

「ん……?」

 

 今何か、部屋の外で音がしたか?

 足音のような小さな雑音。音を押し殺すようなものではなく、割かしハッキリと聞こえてくる。

 一瞬、婆ちゃんのかなと思っちまうが、今の時間の婆ちゃんは爆睡している筈だからそれはない。俺の婆ちゃんは一度眠ると用事がある時を除けば昼くらいまで絶対に起きないんだ。

 じゃあ一体……誰だ?

 

「はぁ……はぁ……」

 

 足音以外に廊下から聞こえてくるのはその人物の息遣いだろうか?

 やけに荒い息だなと思った直後、俺はまさかそんな訳と一つの可能性を思い浮かべる。

 足音は寝室の前で止み、ドアノブに手をかけられた音がする。

 そして、ガチャリとドアが開き、廊下より黒い影が侵入してきた。

 

「えーっと、お前は……」

 

「ふーッ、ふーッ……」

 

 暗闇の中、荒い息遣いのまま迫ってくる影。

 目が闇になれ、見つめ合ったそこにいたのは……

 

 

 

「和輝ーーーッ!!!」

 

「ぎゃあああ!! やっぱお前かよぉぉッ!!」

 

 そこにいたのはやはりというかティアナだった。

 息を荒くし目を血走らせ、右腕のテイルブレス以外は何も身に着けておらずほぼ全裸、ツインテールをうにょうにょを蠢かせるその様は変態を通り越してもはや化け物。

 どう見ても治っていないティアナがそこにいた。

 

「うふふ、絶対に逃がさないわよ!! 和輝!!」

 

「ざっけんな!! 夜這いなんてしてんじゃねぇ!!!」

 

 ティアナの目的、それは暴走する性欲に従い俺とセックスをすること。

 どう見ても言葉でわかる状態ではない為、このままでは俺の童貞が奪われかねない。

 俺はヤバイと判断し、窓を通して外に逃げようとする。

 しかし、ティアナはそんな俺を逃がすまいと獣のような俊敏性を以て逃げ道を奪い、動揺する俺をそのまま押し倒してきた。

 

「つ~かま~えた」

 

「バカバカバカバカバカ!!! お前マジでやってんのか!? 正気に戻れ!!」

 

「何言ってんのよ。私はマジよ。マジにヤるのよ!!」

 

 ふざけんな!! と声を大にして叫ぶも今のティアナにはまるで効果がない。

 まぁ、当たり前と言えば当たり前。獲物を前にしたサバンナの肉食動物が待てを知らぬように、今のティアナは性欲が暴走しまくったせいで歯止めが利かない。

 万事休す。俺はこのままティアナに逆レ〇プにも近い形で童貞を失っちまうのか。

 折角ならもっとまともなシチュエーションで童貞卒業をしたかったな……

 これもある意味、今までずっとヘタレだったツケが来たって事なのか……

 

「ってそんな事させませんよ!!!」

 

 だが、こんな状況でも救いの神、もとい女神はやってきた。

 いつぞやのクリスマスと同じように窓をぶち抜き、参上するトゥアールさん。

 どうして外から? どうして窓をわざわざぶち破った? 

 そんな疑問がどうでもよくなるくらいには今のトゥアールさんが輝いてみえる。

 

「マ、ママ……!!」

 

「やはり、ここに来てましたか……。旧型とは言え、改良を施したAAS(アンチアイカシステム)全てを破壊するとは、やはり半分とは言え蛮族の血は健在というわけですね……」

 

 トゥアールさんの口ぶりからして、どうやらティアナは俺とセックスをするために基地内の設備をぶっ壊してここにやってきたらしい。

 これが性欲の力……? いや、ティアナのパワー的に多分平常時でも苦労せずぶっ壊しそうな気がしないでもない。

 

「兎に角、早く和輝君から離れなさい!! さっきも言った通り、このままじゃ二度と変身できなくなりますよ!! 第一、夜這いなんてはしたない!!」

 

「うるさいうるさい!! 私は和輝とエッチするの!!」

 

「だったら邪魔するまでです!! ヤリたいならかかってきなさい」

 

 構えるトゥアールさんとそれに応じるティアナ。

 二人の闘気は冬の寒さを真っ向からねじ伏せるかの如く熱い。

 絶対にエッチしたい娘と、それを止める義母。

 史上最低の対決が幕を開ける。

 先に仕掛けるのはティアナ、迎え撃つのはトゥアールさん。普段はあっけなくやられる印象しかないトゥアールさんだけど今日に関して言えばまるでそんな事なく、ティアナの上をいっていた。

 

「もう……ママっ……!!」

 

「今まで私があなたたち母娘にどれだけやられてきたと思っているんですか。これまで蓄積してきたデータがある以上、総愛には負けませんよ!!」

 

 ひらり、ひらりとティアナの攻撃を決して広いとは言えない部屋の中で回避していくトゥアールさん。

 豪語しているように今まで培ってきた敗北のデータは無駄じゃなかったのだろう。

 まぁ、回避したせいで拳圧が壁や家具をぶち抜いてぶっ壊しまくっているんだけどな。

 

「でもまぁ、すげぇ……。このまま持久戦に持ち込めば先に力尽きるのはティアナの方だ。トゥアールさん!!」

 

「もとよりそのつもりですよ!!」

 

 ティアナと付かず離れずの距離を保ち、もしこちらを無視しようなら絶対にちょっかい出してやると言わんばかりの姿勢を見せるトゥアールさん。

 流石のティアナも疲れが溜まってきたのか動きのキレが悪くなってきた。

 

「うぅ……!!」

 

「この程度で音をあげるとは、総愛は若いというのにまだまだですねぇ!! 私があなたくらいの歳の時はこんな程度ではへこたれませんでしたよ!!」

 

 勝利を確信したトゥアールさんはティアナに対して勝ち誇る。

 俺もようやく大人しくなってくれる……!!

 と、そう思っていた……がしかし、

 

「テイル……オン……!!」

 

「「え……」」

 

 爆裂する赤紫の光を前にし俺とトゥアールさんの反応は重なった。

 ティアナの口から紡がれた絶望の変身機構起動略語(スタートアップワード)

 テイルブレスの輝きの中から現れたのは赤紫カラーのテイルバイオレット。

 

「ちょっとおい!! どうして一人で変身してんだよ!! アイツのテイルブレスはまだその機能つけてない筈だろ!!」

 

「いや……実は和輝君の物をアップデートする時についでに総愛の分もしてしまいまして……」

 

「今のティアナに何渡してんだよ!!」

 

 トゥアールさんを責める間もティアナはゆっくり向かってくる。

 目つきや雰囲気はさっきのままだが、変身した事もあり迫力が倍増してやがる。

 折角のティアナ単独での初変身がこれかよ……

 なんてぼやきを入れつつ、俺はトゥアールさんがぶち破った窓を通って外へ脱出。

 

「ちょっと和輝君!?」

 

「うるせー!! 俺は逃げるぜ!! 後は頼んだ!!」

 

「ちょっと待ってくだ……あァァァッ!!!」

 

 夜の街へと逃げる俺の背にはトゥアールさんの悲鳴が響き渡ったのであった。




夜這いを妨害するトゥアールという原作とは逆のパターンをやってみたかったんですよね。
もう一つやりたかったネタは次回か次々回あたりでかなぁ……
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