俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第165話 二人を結ぶ物

 俺たちっていつもこうなんだよなと今までを振り返るとふと思う。

 何か壁にぶつかっては俺かティアナ、そのどちらかがきっかけとなり問題を一先ず解決し、絆を深めていく。

 ある意味では正しい関係なんだろうけど、それらの積み重ねがありすぎた結果、俺たちは互いに依存するようにもなっていった。

 ティアナがいないとダメとか、俺がいないとダメだとか……まぁその他もろもろ全部か。

 正直、今回もぶっちゃけ変わんないんじゃないかとは少し思う。

 ティアナが提案した「ただの恋人関係がダメなら恋人同士でもありライバルでもある相棒関係でいきましょう」ってのも冷静になってみるとその場の勢いで言ってみたに過ぎないとも言える。

 だってさ、意味わかんねぇじゃん。

 何だよ、今更になって相棒って……

 もうそんな関係性なんてとっくに過ぎ去っただろ俺たちって。

 

 

 ツッコミを入れればキリがない。

 それくらいには無茶苦茶でただの勢い任せ。

 いつもこうなんだ。だからダメなんじゃねぇのか。こんなだから同じような悩みを繰り返すんだろ。

 俺の心の奥底に眠る自分自身への弱さに対するコンプレックスがそう警鐘を鳴らす。

 でもさ……

 

「それが……俺たちの良さって事なんだよな……」

 

 つい声に出てしまった。

 後部座席のティアナが急にどうしたのと言いたげなニュアンスで「うん?」と声を上げる。

 俺はそれに何でもないと返しつつ前方へと向き直り笑みをこぼす。

 

(別にいいんだよな。俺たちは俺たち、他の誰でもないし他の誰にもなれやしない。大事なのは自分は自分であると思う事くらい……か)

 

 そう結論付けマシントゥアールをさらに加速させる。

 速度制限無視ってる気がするけど、まぁ見逃してくれ。

 疾走する風の中、前を見たまま後ろのティアナへ告げる。

 

「俺はいつかお前を超える。俺だって……ツインテールが好きなんだ。好きになった以上、その想いは誤魔化せねぇ!!」

 

「いいわ上等よ!! 私だってこの髪に込めてきた想いは伊達じゃない。和輝の事は好きだけど、それはそれとしてツインテールの事に関しては負けやしない!!」

 

 初詣の日に引いたおみくじ。その項目の中に恋愛について争いが来るといった内容が書いてあったな。

 もしかしてそれってこれからの事を刺していたのか? 

 神の味噌汁……いや、神のみぞ知るって事で真相はわからねぇ。

 ま、一つ言えるのは……

 

「兎に角、いいか? 俺はな!!」

 

「私だってね!!」

 

「「絶対にお前(和輝)にはならねぇ(ない)んだから(な)!!」」

 

 二人の声が重なり、そして到着する。

 目の前にいるのはボロボロになりながらも何とか粘っていたテイルブルーム。

 対する向こうはアスモデウスギルディとリリスギルディ、あとベルフェゴギルディの合計三体のエレメリアン。

 マシントゥアールから降りた俺たちはアスモデウスギルディたちと向かい合い、テイルブルームはベルフェゴギルディと共にこの場から離脱する。

 真の決戦が今、始まるんだ。

 

 

 

 

 爆裂する二色の紫光が辺りを照らす。

 青紫の光を纏い変身するのは和輝、赤紫の光を纏い変身したのはティアナ。一見すると瓜二つだが、目つきと身長と体格に多少の差異がある二人のテイルバイオレット。

 名づけるのであればそう、テイルバイオレット ハーフチェイン。

 本来ならば存在しえなかった二人で一人のテイルバイオレットを二人に分けた形態だ。

 

『どうやら、問題は解決したようですね』

 

「ああ、世話かけた」

 

「ごめんなさいママ。でも、もう大丈夫!!」

 

 通信越しにそう報告する和輝たち。

 その様はトゥアールから見てもいつもの二人と変わらなく……いや、それ以上の安心感を感じさせる。

 

「うむ、どうやら一皮むけたようであるな」

 

「そのようねぇ」

 

 勿論それは相手であるアスモデウスギルディたちも感じ取っていた。

 彼らの目に映るのは、以前の一見すると理想的なカップルのように見えて実際はどこか危ういそんな二人ではなく、言うなれば大人の余裕といった雰囲気を感じさせる二人だ。

 これこそアスモデウスギルディの求める二人の姿なのだと直感できる。

 ただ、アスモデウスギルディはそんな二人を見て少しの疑問を抱く。

 

「しかし、おかしいであるな。少女よ、お前からは未だ処女の気配がする。なのにも関わらずなんだその満ち足りたその気配は。何がそこまで心を満たす」

 

 アスモデウスギルディの抱いた疑問。

 それはティアナの様子についての物であった。

 

「お前は前回、我が秘術を喰らった筈だ。この術はその者の恋心を性欲に変換し、暴走させ、心を飢えさせる。解除するには求めし者と身体を重ねるしかない。セックスを行わずして何がお前の心を満たす」

 

「何がって……それは……」

 

 ぽかんとした表情で考えるティアナ。

 ティアナからすればこの心の暴走はいつの間にか収まっていた物であり、直接の原因はわかっていない。

 でも一つ、わかる事がある。

 

「私の心を満たすのは恋とか愛とかそれだけじゃない。ただそれだけよ」

 

 はっきりとした表情でティアナは答え、隣に立つ和輝がフッと笑う。

 アスモデウスギルディはそれを聞き、思っていた事とは違うが何かセックスに値する事が行われたのだと理解した。

 セックスこそが絶対の表現であると認識するアスモデウスギルディであるが、だからとてそれ以外を否定するつもりはない。

 ならば上回るだけであるという話だ。

 

「いいだろう。ならば見せてみるがいい。性行為(セックス)ではないお前たちのツインテール(セックス)とやらを!!」

 

「嫌な言い方すんじゃねぇよ!!」

 

 それを皮切りに戦いの火蓋は切って下ろされた。

 まずに前に出て向かっていくのはアスモデウスギルディ。迎撃に向かうのは和輝が変身したテイルバイオレットだ。

 アスモデウスギルディは手から噴き出す炎を形にし剣を作り出し振り下ろす。

 和輝はウインドセイバーを水平に構えて受け止める。

 

「やはり、この程度では受け止めるのも容易いようであるな」

 

「当然だろ……!!」

 

「しかし、油断するなよ。攻め手は吾輩だけでない」

 

 そう、敵は一体ではなく二体。

 アスモデウスギルディと共にいるのは命を分け合った分身体、リリスギルディがいる。

 

「ゆけ!! ハニー!!」

 

「ええ、わかってるわ!!」

 

 受け止めた和輝の右側面から攻め込んでくるリリスギルディ。

 基本的な連携攻撃だが、一人では対応不可能な戦法だ。

 初戦では人格を入れ替えながら対処に当たっていた和輝たちも物理的に対応しづらいシンプルな数を活かした戦い方。

 しかし、今回に限っては条件は和輝たちも同じ、二体二の戦いであった。

 

「私を無視すんじゃないの!!」

 

「ッ!?」

 

 割り込んでくるのはティアナが変身したテイルバイオレット。

 赤紫のツインテールを揺らし颯爽と出てきた彼女が見舞うのは軸足をしっかりと回し放つ強烈な回し蹴り。

 飛んでくるボールを打ち返すバッターかのようにリリスギルディを蹴り飛ばしては迎撃した。

 

「ッ!? 大丈夫であるか!?」

 

 吹き飛んだリリスギルディを心配しアスモデウスギルディの意識がそれる。

 勿論、和輝はそんな隙を逃すような男ではない。

 

「心配してる場合かよ!!」

 

「しまっ……!!」

 

 タッグマッチにおいて、相方である片方がやられてしまい、もう片方が心配してそちらに意識がいけば大きな隙を生んでしまうのは当然の事だ。

 しかし、それはわかっていても不意に起こればそうなってしまう。

 いくらどちらかが生き残りさえすれば不死身のアスモデウスギルディと言えど、予想だにしていないリリスギルディのピンチに反応しない訳がなかった。

 

「はああああッ!!!」

 

「ぬううッ!?」

 

 気合の籠る叫びを上げ、ウインドセイバーに入る力が増していく。

 先程までは徐々に押していた筈のアスモデウスギルディは逆に押し返される。

 すんでの所で何とか踏ん張るアスモデウスギルディ。

 しかし、何度も言うがこれは二対二の戦い。

 そう、和輝の隣にはティアナがいる。

 

「しっかり抑えててなさい!!」

 

「わーってる!! やれ!!」

 

「もう一人のテイルバイオレット……!!」

 

 飛んでくるもう一人のテイルバイオレット。

 掛け合いを聞いて反応するアスモデウスギルディであるが、時すでに遅し。

 それどころか、意識をもう一人に割いた結果、剣に込める力がほんの少しだけだが緩んでしまう。

 

「うらぁッ!!」

 

「ぬおっ!?」

 

 ウインドセイバーの一太刀が押し切り、体勢を崩させる。

 

「やぁッ!!」

 

「ぐぬおっ!?」

 

 そして、放たれた追撃の飛び蹴りが顔面を抉る。

 吹き飛ぶアスモデウスギルディ。

 二対二の基本的な攻防はまずはテイルバイオレット側が制したと言える。

 

「素晴らしいコンビネーションである……!! 是非ともお前たちのプレイをじっくりと鑑賞してみたいものだ。だが、忘れてはいないか? 吾輩への攻めは全て返されるのだ!!」

 

 アスモデウスギルディの能力は複数あるが、その中で最初に見せた能力こそ受けたダメージの反射能力である。性行為における受け攻めから生み出したとされるこの能力は生き残りさえすればどんな攻撃や快感でも跳ね返す。

 

「さぁ受け取れ我が愛を!!」

 

 立ち上がると同時に今受けた攻撃をエネルギーに変換しては下半身から解き放つ。

 受けたダメージはティアナからの飛び蹴り一発程度だというのに、その衝撃波の威力は倍以上。これは和輝たちと戦う喜びと快感を上乗せしているからに他ならない。

 迎え撃たんとする和輝たち。

 一人では相応のダメージを受けてしまうが果たして……

 

「和輝!!」

 

「いくぞ!!」

 

 和輝とティアナは怯まなかった。

 跳ね返される衝撃は二人同時に放つ拳の拳圧で霧散したのだ。

 

「やるであるな……だがしかし!!」

 

 反射攻撃を防がれたというのにアスモデウスギルディは笑みを絶やさない。

 アスモデウスギルディの視線の先、丁度和輝たちを挟むように移動していたリリスギルディが合図を送る。

 そう、今の反射攻撃はただの囮。

 リリスギルディへの注意を逸らすためのただのフェイクだ。

 

「イクぞ!!」

 

「ええ、イキましょう!!」

 

 加速し接近する両者は挟み込むように襲い掛かる。

 和輝たちは背後に迫るリリスギルディに気づき互いの背中を合わせて交互に向かい合う。

 このまま迎撃しようとしても加速し勢いづいている相手側の方が有利。

 それを理解する和輝たちがやる事は一つ。

 

「ティアナ!!」

 

「ええ!!」

 

 敵が加速しているのならばこちらもそうすればいい。

 だが、今から走り出すにはもう遅いこの状況では大地を蹴る程度では反動が足りない。

 そんな中で和輝たちが行ったのは共にほんの少し地面を蹴って足を地から離し、そのまま背中合わせのままそれぞれが向かうべき方向を定める。そして、空中にてそれぞれの足裏を合わせて足を折り曲げては解き放つ。するとそれは互いに蹴り飛ばす勢いを反動を合わせてより勢いよく射出される。

 

「「いっけぇぇ!!」」

 

「「何!?」」

 

 少しのタイミングでも間違えれば失敗するその突撃方法であるが、完璧とも言えるタイミングを以て成功させた和輝たちの急な反撃はアスモデウスギルディたちを仰天させる。

 結果、飛び掛かったはいいが攻撃のタイミングを失うアスモデウスギルディたち。

 逆に和輝たちはそれぞれが拳と脚を以てカウンターに成功した。

 

「や、やるである……!!」

 

「そ、そうねぇ……」

 

 戦いの流れはテイルバイオレット側にあった。

 

 

 

 

 コンソールルームにて戦いを見守るトゥアール。

 彼女の目に映るのはアスモデウスギルディたちと互角以上に立ち回る二人のテイルバイオレットの姿だ。

 息の合った連携を見せられるたびにエクストリームチェインバーストの副作用が脳裏にちらついてやまない。

 融合せずに戦えるハーフチェインの姿となっていようとも不安な事に変わりはないのだ。

 

「いや、ですが信じるしかないですよね」

 

 悠香たちは現在、ベルフェゴギルディと戦うテイルブルームのサポートをするべく別の画面の見ている。

 故にこの声はトゥアール以外は誰も聞こえない。

 

「それにしてもあの二人、いつの間にあんな連携を……」

 

 優先に立ち回る二人の姿を見てふとそう思う。

 彼女が知っている二人の連携は悪くはないものの、アスモデウスギルディたち敵うような物ではなかった。

 勿論それはアスモデウスギルディの能力によってティアナがおかしくなっていた事も原因ではあるが、それ以上に二人の心に問題があったのが原因だったのではとトゥアールは思っていた。

 互いを想いすぎるあまり生まれる小さな不和。

 それは寝取られ属性によって生じた傷が元々あった少しの歪みを大きくし、信用しているように見えてどこか自分自身を信じ切れていない二人という関係を生み出していたのではないか。

 二人の動きを見てトゥアールは希望を抱く。

 

「本当、子供と言うのはいつの間にか大人になっていくのですね」

 

 戦うティアナを姿を見てはかつての自分と重ね考える。

 若き日のじゃれ合いを思い出し全身に痛みが走ったのは内緒である。

 

 

 

 

 数分と言う短い時の中で何十、何百と繰り返される攻防の数々。

 俺たちはゆっくりとであるが着実にアスモデウスギルディを追い詰めていく。

 奴が受けたダメージを吸収し跳ね返す能力を持っていようとも、何度も何度も繰り返せば疲労自体は溜まっていく。

 その証拠に相手側の連携に見えてくる穴が増えてきた。

 

「和輝!!」

 

「おう!!」

 

 聞こえてくるティアナからの合図。

 それ以上の指示は必要ない。

 アイツならこう考えるだろう。もし、違ってもその時は俺、もしくはアイツ自身がふぉを入れれば問題はない。

 その考えのまま俺たちは二人同時に動き始める。

 互いを信じ、同時に自分自身を信じる。

 それが俺たちが自然に決めた戦いのルールだ。

 

「く、来る!!」

 

 身構えるリリスギルディへと俺はウインドセイバーを構えて接近。

 力強く振り下ろさんとするとアスモデウスギルディが盾にならんと割り込んでくる。

 

「させんのである!!」

 

「何度も何度も邪魔なんだよ!!」

 

 深々とウインドセイバーの剣先がアスモデウスギルディの肉体へと突き刺さる。

 しかし、奴らはどちらが生き残る限り不死身。

 致命傷になり得る一撃だったが、即座に再生しては傷跡から斬撃波を放つ。

 この距離では咄嗟の回避は困難。

 だが、それはあくまで一人の時の話。

 その時を待っていたと言わんばかりに今まで俺の背に潜伏していたティアナが姿を現しては、俺の身体全身を踏み台代わりに跳躍。

 俺は俺で、不格好ではあるが、頭上を斬撃波が通過する形で回避に成功した。

 

「残念だったな」

 

「何ッ!? もう一人を踏み台にした!?」

 

「そうよ!! これが狙い!!」

 

 しまったと焦るアスモデウスギルディだがもう遅い。

 アスモデウスギルディを飛び越え、その先で守られるリリスギルディの背後へと回ったティアナはウインドセイバーを振りぬく。

 

「速い……!? きゃあああ!?」

 

 そう断末魔を残し、リリスギルディは力強く振るわれたウインドセイバーの一撃で消滅。

 当然、リリスギルディもリリスギルディでアスモデウスギルディがいる限り不死身である為、消滅しても瞬時に復活する。

 がしかし、疲労自体は残る。

 そしてそれだけじゃない。

 

「ぬぅぅ……またしても我が伴侶を……!!」

 

「だ、大丈夫よ。私はあなた以外でイキ果てやしないわ」

 

 悔しさを滲ませる相手側二人。

 いくら不死身と言えど目の前で自分の愛する存在がやられるのはやっぱしこたえるみてぇだ。

 肉体とは違う精神的なダメージはしっかりと刻み込めている。

 

『反射能力はあくまでアスモデウスギルディの固有能力。ただの分身体であるリリスギルディには不死の能力以外の能力は存在しないようですね』

 

「ああ、みてぇだな」

 

 ここまでの攻防で得た情報を纏めるトゥアールさんの報告に俺たちは頷きあう。

 アスモデウスギルディの強みはリリスギルディという存在ありきの不死の力。

 でも、同時に彼女自身が立ち回りにおける弱点にもなっている。

 不死以外の能力を持たず、身体能力もやや低め。なのにアスモデウスギルディは彼女の事を大切にしようとするあまり逆にフォローする羽目になっている。

 奴がもし、リリスギルディの事をただの意思のあるダ〇チワ〇フもといラブ〇ールだと思い非情に扱えたのならもう少し厄介だったのは想像だに難くない。

 

「い、いける……!!」

 

 繰り返される攻防の中、俺は勝利を確信していた。

 最初は不安だった二人の連携も少し心の在り方を変えるだけで劇的に改善された。

 エクストリームチェインに比べて力が大きく落ちるこのハーフチェインでもなんら問題ない。

 元々、足りなかったのは精神的な要素だけだったとはいえ、こうもなってくれるとはな……

 

「こら和輝、油断しない」

 

「へッ、んな事わーってるよ。お前こそな」

 

「私は油断してませーん」

 

 戦闘中でありながらも心に余裕があるのはいい事であると何処かで聞いた話だ。

 軽口を叩きながらも俺たちは互いに油断しない。

 徐々に弱っていくアスモデウスギルディたちから一時も目を離さず見据え続ける。

 

「まさか吾輩たちがこうもしてやられ続けるとは」

 

「……そうねぇ。あの子たちもやるじゃない」

 

 よろめきながらも立ち上がるアスモデウスギルディたち。

 先程は悔しさを滲ませていたが、今言葉に出たのは驚きと称賛。

 敵だって馬鹿じゃない。落ち着きは直ぐに取り戻してきやがる。

 

「ふふ……だが惜しいな……」

 

「ええ、そうね……」

 

 すると今度は、打って変わって笑みがこぼれる。

 まだ何か策でもあるのかと思えてくる余裕っぷりに俺もティアナも警戒心を強める。

 

「惜しいって……何がよ」

 

 ティアナがすかさず追及する。

 確かにこの状況、どう見ても俺たちが有利。

 いくら不死身の能力があろうとも、破れる手段が確立されている以上はアドバンテージになりえない。このまま弱り切り、生じた隙をつければ奴ら同時に倒すなんて訳ない。

 問われたアスモデウスギルディはにやけながらもハッキリと口にする。

 

「なに、そのままの意味である。確かにお前たちは強い。お前たちのその絆と愛は吾輩たちの物よりも遥かに上である。だがしかし、お前たちは純粋すぎる。お前たちはセックスのもたらす真の力を知らない。同時に恐ろしさもな……」

 

「またそれかよ……」

 

 相変わらずうるせぇ奴だ。

 ようは俺とティアナに性的関係がない事を悔んでいるって事だろ?

 呆れてしまいそうになるその時、アスモデウスギルディの目が光る。

 

「吾輩は性行為属性(セックス)のアスモデウスギルディ!! セックスとは愛!! 愛とはセックス!! 今一度、愛の果てに溺れるがいい!! お前たちの純粋さが敗北を誘うのだ!!」

 

 聞こえてくる警告音。

 テイルギアからこれが聞こえてくる事は極めて稀な事態だ。俺もティアナもヤバいという事を自覚する。

 がしかし、

 

「逃げられはせん!! 性欲とは生物にとって逃れられぬ脅威でもあるのだ!! 喰らえ我が奥義、性欲断技(ドロウ・イン・セクシャル)最大出力!!」

 

 広範囲に放たれる拡散光線。

 アスモデウスギルディの目や指先、全身から放たれたそれは周囲一帯を覆い尽くす。

 逃げ場もなく、反応が遅れた俺たちは互いに被弾を許してしまう。

 

「くッ……!? これ……!?」

 

「ティアナが喰らった奴か!?」

 

 他者の性欲を暴走させるアスモデウスギルディの能力。

 喰らった瞬間、炎にでも包まれたかと思っちまうくらいに身体全身が熱くなっていく。

 変身の影響で女になっていなければ俺の息子は確実にアップし始めていただろうと思えてくるこの感覚は性欲以外に他ならない。

 

「か、和輝……!!」

 

「ティアナ……!!」

 

 立つ力を失い地に伏せた俺たち。

 惑わされるな、落ち着けと心が警告を鳴らしても身体は互いを求めあう。

 

「卑怯と罵るならいくらでもするがいい。だが、吾輩は戦士であると同時に雇われたプロでもあるのだ。お前たちを下すためならばこの力を使う事に躊躇はない」

 

 伏せた俺たちをみてアスモデウスギルディは勝利を確信していやがる。

 反論しようにも身体の自由は効かねぇし、思考までもぼやけてくる。

 

『落ち着いてください二人とも!! 今の和輝君は女です。どう頑張ってもレ〇セックスにしかなりません!! 子供も産めません!!』

 

「わかってる!! でも……な!!」

 

 トゥアールさんの言う通り、今の俺は変身の影響で女になっている。

 だからティアナと交わるなんて不可能だし、常識的に考えればおかしいんだ。

 でも、この能力はそんな常識をも上回る。

 

「すまん……!!」

 

 湧き上がる熱情のまま倒れたティアナに覆いかぶさる。

 垂れる俺のツインテールがティアナのほほに触れた。

 

「ははは!! 女子同士というのも格別である!! 吾輩にとって性に性別などは関係ない。愛があればそれは例え無機物同士だとしても交わる事に不満なしである!!」

 

 アスモデウスギルディの野郎は高らかにそう声を上げ、リリスギルディを抱きしめる。

 俺はそれをチラリとみる事しか出来ず、後は本能のままティアナを狙っていた。

 

「ティアナ……!!」

 

 なんて可愛い瞳に、眉に、唇に、頬……

 顔を見るたびにそのパーツ一つ一つに目を奪われる。

 変身したのに全然大きくならない胸もまたチャームポイント。

 母親に似たのか知らねぇが、こうなった時に弱気になるのもまたいい。

 そして何より、その輝くツインテールが俺の心をときめかせる……!!

 

「ティアナ……いや、総愛!! 俺は――」

 

 普段あまり言わない本名を口にしつつ、我慢できなくなった俺は口付けせんと首を動かした。

 がしかし、

 

「ダメ。こんな力に惑わされないで……!!」

 

「え……!?」

 

 俺を止めたのはまさかのティアナだった。

 同じ能力を受けたはずなのにどうして……?

 予想外の出来事に思考がフリーズを起こし動きが止まる。

 そんな俺へとティアナは語り掛ける。

 

「和輝、私はあなたが好き。あなたと一緒にいつまでも生きたいし、子供だって作ってみたい。恋人関係じゃなくなったと言ってもこれだけは否定できない事よ。でも、私はこんな形で和輝を求めてなんかいない!!」

 

 そうだ。俺もそうだ。

 敵の能力に抗いながらもそう訴えるティアナを見て、俺も俺で正気を取り戻す。

 身体は熱い。全身がムラムラして仕方ねぇし、下半身はなんかキュンキュンいってやがる。

 でも、それ以上に、俺だってティアナに負けてられないという悔しさが燃え上がる。

 

「俺も……同じだぜ……。俺が好きなのは俺の事を好き好き言ってくっついてくるお前じゃない。俺が好きなのは……ちょっと強気で、貧乳で、暴力も時々でるけど……大好きなツインテールのために命はって頑張る最高で最強の、ツインテールを愛するお前なんだ……!!」

 

「私だってそう!! 私が好きなのは……誰に対しても素直で完璧超人の和輝じゃない!! ちょっと意地っ張りで……口が悪くて……すぐに自分を責めて悩んだりくよくよするけど……時々すっごくかっこよく、最後は絶対にあきらめないでいるそんな和輝が大好き!!」

 

 互いの気持ちが燃え上がる。

 そこにあるのは互いが必要だからくる想いではなく、想いがある故に求めあう気持ち。

 依存心なんて物はない真の正しき感情だ。

 

「「俺たち(私たち)は!! こんな所で負けやしない!!」」

 

 俺たち二人は共にそれぞれ立ち上がりかけられていた呪縛を振り払った。

 アスモデウスギルディはそんな俺たちを見て仰天するしかない。

 

「なんと……性欲までも跳ね返すのか……」

 

「あり得ないわ……」

 

 後ずさる二人。

 俺はそんな二人に指を刺す。

 

「確かに俺たちは性も何も知らないまだまだ青い関係だ。でもな、俺たちの想いはそんなもんじゃねぇ!! 俺たちを結ぶ物、それは――」

 

「ちょっとまって和輝」

 

 俺がビシッと決めようとした時、急にティアナが言葉を遮ってきた。

 おいおいこういう時くらいカッコよく決めさせてくれよ……

 そうぼやきたくなる中、ティアナが俺の髪もといツインテールの結び目へ触れる。

 

「解きかけてるわよ。さっきのドタバタで緩んじゃったかしら」

 

「え、マジ!? それはサンキュー」

 

 ツインテールが解ける事=変身が解ける事。

 気づいてくれたティアナに感謝する俺もまた、ティアナのツインテールが気になった。

 

「お前こそちょっと待て、ほらちょっと貸せ」

 

「ちょっと……!! 乱暴にしないでよ」

 

「わーってる。あんときから練習してるっつーの」

 

 傍から見れば互いのツインテールを結び直す二人のテイルバイオレットの姿はすげぇシュールなんだろうなとは思う。

 アスモデウスギルディもほら、俺たちを見て言葉を失ってやがる。

 

「これが……この者たちの……!!」

 

 数秒後、整え終えた俺たちはアスモデウスギルディたちと向かい合う。

 律儀に待ってくれていたのはありがたいが、もう次はない。

 次の連携で決めさせてもらうぜ。

 

「えーっと何言おうとしてたっけ……。あーもう、行くぞティアナ」

 

「ええ、いきましょ」

 

 互いにそれぞれテイルブレスを掲げ、赤と青、二色の光を爆裂させる。

 その光はそれぞれ鎧となり、赤は俺へ、青はティアナへ。

 勇気のツインテールの名を持つ赤き追加装甲、テイルアーマーR。

 愛情のツインテールの名を持つ青き追加装甲、テイルアーマーB。

 テイルバイオレット ブレイブチェインとテイルバイオレット エモーショナルチェインがそれぞれ並び立った。

 

 

 

 

 そしてこちらは、テイルブルームVSベルフェゴギルディ。

 場所を移し、人気の少ない街はずれまで移動し向かい合う彼女らであったが、その勝負は誰が見てもわかるくらいにはベルフェゴギルディが有利。

 自他問わず誰かの視線があれば発動可能な無敵の能力を持つ全裸属性(ヌード)のベルフェゴギルディにダメージはない。

 一方でテイルブルームは先程までアスモデウスギルディたちも相手取っていた影響もあり既に満身創痍と言えるほどのダメージを受けている。

 

「まだやる気? ダルイしさ、無駄だって事くらいわかってほしいんだけどな」

 

 挑発するベルフェゴギルディ。

 しかしこれはある意味ぐうの音もでない正論である。

 このままやっていても攻略など出来やしない。

 だがテイルブルームは諦めない。

 

「悪いわね、私はどうやら真面目過ぎるようなの……だから逃げたり諦めたりなんてしないわ」

 

「はーッ、面倒クサッ……!!」

 

 啖呵を切られたせいか、珍しく自分から向かっていくベルフェゴギルディ。

 テイルブルームからすれば本来得意とするカウンター戦術を喰らわせるに丁度いい行動なのだが、今まで受けた疲労とダメージが事を簡単にはいかせない。

 それどころか、むしろ追い詰められた形だ。

 短期決戦も長期決戦もどちらも不利。

 であるならば、少しでも粘りテイルバイオレットたちがアスモデウスギルディを倒す時間を稼ぐのが最善のテイルブルーム側にとって短期決戦を仕掛けられるのはより不味い事なのだ。

 

「くッ!!」

 

「反撃させる訳ないじゃん」

 

 ベルフェゴギルディの怒涛の猛攻。

 服という服を脱ぎ捨て身軽となった彼女の乱舞は一切の空気抵抗もなく襲い掛かってくる。

 これも裸である故のアドバンテージ。

 見て迎撃しようとすれば、それを防ぐ闇が現れるのでより始末が悪い。

 

「がぁッ……!!」

 

 吹き飛ばされ壁に叩きつけられるテイルブルーム。

 勝利を確信しとどめを刺さんと近づくベルフェゴギルディ。

 テイルブルームは立ち上がり覚悟を決める。

 

「どうやら……私もやるしかないようね……」

 

「ん? なにが?」

 

 テイルブルームの様子を見て何かを感じ取ったベルフェゴギルディが足を止める。

 対するテイルブルームはベルフェゴギルディへと言い放つ。

 

「あなたの能力はもう見切りました!! 私の覚悟……見せてあげるわ!!」

 

 迷いを捨てたテイルブルームの作戦が今、始まる。




今更ですけど、この作品の作風って客観的に見るとどういった風に見えているんですかね?
この作品全体の印象やうちの子たちの印象ってどうなのかなと。

あ、それはそうと、次回は華先生が脱ぎます。


キャラクター紹介30

 テイルバイオレット(ハーフチェイン)
 身長:160cm(和輝)150cm(ティアナ)
 体重:48kg(和輝)40kg(ティアナ)
 B80・W56・H80(和輝)
 B70・W54・H75(ティアナ)
 武器:風の刀ウインドセイバー
 必殺技:ストームスライサー、他

 本来ならば存在しえなかった、二人がそれぞれテイルバイオレット変身する際の姿。
 見た目は通常のノーマルチェインと差がなく、和輝は青紫、ティアナは赤紫。
 エクストリームチェインバーストの副作用を抑えるための代用として作られた経緯故に出力自体はエクストリームチェインバーストはおろか、通常のエクストリームチェインの半分以下。
 ただし、融合していては出来ない二人同時の戦法は時として有効に働く為、コンビネーションと相手次第ではこちらの方が有利となる。
 ブレイブチェインやエモーショナルチェインになること自体は引き続き可能。
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