俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回、話詰め込みすぎているかも……


第166話 恥じらい脱ぎ捨て、敵を討て

 ~それは二日ほど前の事。

 

 

 ベルフェゴギルディ攻略の為に特訓に励んでいた華は、決戦の日が近づいているというのに一向に手ごたえのある結果を出せず行き詰まりを覚えていた。

 このままいけば初戦の時と同じ無様な結果を晒すのは目に見えている。

 だからとて焦った所で何も変わらないのもまた事実。

 華は一先ずの息抜きをすべく、休憩がてら喫茶アラームクロックへと足を運んでいた。

 本音を言うのならば酒でも飲んで辛い事や疲れを吹き飛ばしたいものであるが、流石にそれはやりすぎだろうと自制した結果だ。

 

「う~ん、見てはいけない相手かぁ……それは確かに厄介だ」

 

「そうなんですよね。いや、別に見ないようにするのは出来るんですよ。でも、能力の発動条件は自分の視線でもいいみたいで」

 

「自分が見ていてもいい……物は言いようとはよく言った物だ」

 

 華以外の客がいない店内で正樹相手に愚痴をこぼしていた華。

 話し相手となってくれた正樹も攻略の為にう~んと悩んでくれているがいい答えは浮かんでなど来なかった。

 時間がゆっくりと過ぎていくそんな中、正樹がふと呟いた。

 

「にしても裸を見てはいけないとはよく考えた敵だなぁ。男の自分だったらいくら相手がエレメリアンでも女型ならガン見しちゃいますよ」

 

 なんてデリカシーの発言だろう。

 だがしかし、その瞬間、華はとあることを閃いた。

 

(そうか……相手は全裸属性のエレメリアン。だったら……)

 

 

 

 

 

 そして現在。

 

「僕の能力を見切った……? だって?」

 

 ベルフェゴギルディと対峙するテイルブルームは既に手負い。

 そんな状況下で放たれた能力の攻略宣言に眉をひそめるベルフェゴギルディ。

 対するテイルブルームの目は力強い。

 

「ええ、そうです。その能力はもう通用しません……いや、通用しないわ!!」

 

 深手を負っているのにも関わらずそう高らかに宣言。

 その姿を見てもベルフェゴギルディにはまるで理解できない。

 ただのやせ我慢やハッタリしては自信に満ちすぎている。

 

「言っとくけど、僕の能力は今までどんな相手にも破られた事はない。それはこの僕が一番わかっているんだ。僕の裸体は如何なる障害であっても傷つかない……」

 

 傷一つない自身の裸体を見せつけるベルフェゴギルディ。

 貧相な体つきとは言え、一応女性型と思しき身体を堂々と見せつける様は流石全裸属性のエレメリアン。

 しかし、テイルブルームは怯まない。

 

「ええ、それは初戦で痛いほどわかったつもり。どれだけ特訓を重ねても破ること出来ない事なんてね」

 

「じゃあ何さ……無駄だとわかってやるつもり……」

 

「無駄じゃない。と言ったら?」

 

 不敵な笑みで挑発するテイルブルーム。

 ベルフェゴギルディが苛立ちを見せる中、テイルブルームは変身アイテムであるテイルペンダントを掲げ、そこに秘められし新たなる力を解放する。

 

「テイルイエロー……あなたの力、今使う!!」

 

 放たれる眩き黄色の閃光。

 それは雷鳴と共に形を成し、テイルブルームを包み込む。

 傷だらけでボロボロだったテイルブルームの装甲は修復され、各部に追加されていく黄色の重装甲。

 背中の陽電子砲、肩のバルカン、両腕のビーム砲、腰部のミサイル。

 思いつく限りの強力な重火器の全てが彼女を覆い、テイルブルームの緑の髪が穂先から根本へと徐々に黄色に染まり強化変身完了。

 これこそがテイルイエローの力を模したテイルアーマー、テイルアーマーYで武装した強化されたテイルブルームの姿だ。

 

「この力は希望。あなたと言う悪に裁きの雷を落とす希望のツインテール。テイルブルーム ジャッジメントチェイン!! ここに誕生!!」

 

 新しき姿へと変わったテイルブルームが力強くそう名乗る。

 すると、快晴だったというのに何処からか雷が背後に落ち、ヒーロー番組を思わせるような爆発が起きる。

 思わず「なんだとぉ!?」と悪役らしく言いたくなる光景だ。

 だが、ベルフェゴギルディはその姿をみては鼻で笑う。

 

「なーんだ。またそれか……」

 

 そう、実はベルフェゴギルディは一度この姿を見ている。

 あの時は焦ったテイルブルームがその力に飲まれ反動でダウンしてしまっていた。

 今回は状況が違うとはいえ、その力を見ても脅威には映らない。

 

「どうあがいたって無駄さ。僕の裸体は傷つかない。絶対にね!!」

 

「さぁ? それはどうかしら!!」

 

 両手を広げ、かかってこいと言わんばかりの体勢で待ち構えるベルフェゴギルディへとテイルブルームは全砲門を向ける。

 目を閉じ、自身の心眼を以てベルフェゴギルディをロックオンするその様は今日に至るまでの特訓で培った技術は初戦の時とは違う手際の良さ。

 追加装甲の全てが駆動し展開してはありとあらゆる武器が音を轟かせる。

 

「フルバーストッ!!」

 

 放たれる砲撃の嵐。

 それは初戦で見せたという照準を度外視したある意味無茶苦茶な弾幕とは違い、予めのロックオンのおかげでそれら全てが正確にベルフェゴギルディを狙う。

 これならば如何にベルフェゴギルディと言えど回避しきることなど出来ない。

 

「確かに……僕の陰部守る闇(スロウス・ペオル)は視線がないと発動しない。それも、いくら僕自身の視線でもいいと言ってもこのままじゃカバーできない死角はいくらでも存在する……。無茶苦茶せずちゃんとロックするなんてちょっとは考えたじゃん……」

 

『やったぜ華先生!! これならいける!!』

 

 通信越しに匠が勝利を確信する程の一手。

 確かにこれならば鏡でも使わねば自分の顔は見れないし、もし見れたとしても直接見てはいないが故に能力は発動しない。

 諦めたかのようにベルフェゴギルディは動きを止める。

 だが次の瞬間、

 

「でもね、どうせそうくると思っていたんだよ……!!」

 

 ベルフェゴギルディの目が赤く光り、何かを空へと飛ばした。

 一体何をした?

 そう訝しむ暇もなく、直後に降り注がれる砲撃の嵐。

 木端微塵に消し飛んだであろうと確信できる轟音が響き渡り、この爆心地を煙で包み込む。

 

『やったか……!?』

 

『ちょっとたっくん!! それ生存フラグ!!』

 

 通信越しに聞こえてくる二人のお約束とも言えるやり取り。

 テイルブルームが目を開くと、そこには煙の中から無傷で現れるベルフェゴギルディの姿があった。

 

「じゃじゃーん、どうやらまた僕の方が上だったみたいだね」

 

 勝ち誇るベルフェゴギルディが爆風で垂れた自身の前髪を払う。

 そこにあるのは空洞になった眼窩。本来ならば眼球が収められている筈の場所である。

 

「眼が……ない」

 

「そう、正解。何も僕の目はここに収まり続けている訳じゃない。僕の眼は自由に飛ばし、自由に動かすことが出来るのさ……!!」

 

 ベルフェゴギルディのあふれ出る自信。

 それは自分自身の眼を自由に飛ばすことが出来る能力あっての事であった。

 普段、自室の中から出ようとしない中、生の裸体を身体を動かずに見に行くべく身に着けたこの能力は陰部守る闇(スロウス・ペオル)と抜群の相性を誇る。

 

「今、僕の眼はここから上空遥か彼方を飛翔し、監視衛星のように僕らを見ている。勿論、能力の条件を満たすように僕自身へ常に視線を飛ばしているのさ」

 

 鍛えられた視力はどんなミクロの裸体であっても見逃さない。

 故に可能とされるこの驚異のシナジーはベルフェゴギルディの無敵っぷりをより強固な物へと変える。

 高速で動き回る眼球はどんなA級スナイパーであっても撃ち落とせない。

 

「さ、これでわかったでしょ? 僕の眼が僕の裸体を映す限り、僕の裸体はどんな攻撃でも傷つかないのさ!!」

 

『マジかよ……!!』

 

 通信越しに感じられる匠の絶望。

 勝ち誇るベルフェゴギルディがとどめを刺さんとテイルブルームへと再びにじり寄る。

 だがしかし、テイルブルームはそれすらも予想通りとばかりに笑う。

 

「ふふっ、どうやら引っかかったようね」

 

「何が……?」

 

「私の目的は……何もこの砲撃であなたを倒す事じゃない。ただ、勿体無かっただけ……」

 

「はぁ? 勿体無い? 何が?」

 

 意味が解らない。

 そう言いたげな表情を見せるベルフェゴギルディ。

 ニヤリと笑うテイルブルームは手に持った武器を捨て、そして……

 

「これが私の真の覚悟!! 見せてあげる!! これが私の完全脱衣(フルブラスト)!!」

 

 ビーム砲にバルカン砲、折角追加されたいくつもの重装備の全てが弾け飛ぶ。

 残るのは水着同然の露出度である緑のインナースーツのみ。

 本来ならば残る筈であろうテイルブルーム本来の装甲すらも脱ぎ去ったその姿は肌色の面積が多すぎる。

 脱衣したテイルブルームは威風堂々とした立ち姿でベルフェゴギルディを向かい打つ。

 

「ぬ、脱いだ……!? 自分の意志で……!?」

 

「はあああッ……!!」

 

 目を閉じ、拳に力を籠める。

 

「無駄な事を!!」

 

 ベルフェゴギルディは止まらない。

 どんな攻撃でも、自身の目が空に浮かびこちらを見ている限りは効きやしない。

 そう、見ている限りは。

 

「ッ!? まさか!?」

 

 拳が繰り出された直後、ベルフェゴギルディは気が付いた。

 テイルブルームの拳がベルフェゴギルディ腹部を捉える。

 

「ガッ!?」

 

「はぁッ!!」

 

 初戦の時を含め、最も手ごたえを感じる一撃が炸裂。

 腹部を抉るテイルブルームの拳はベルフェゴギルディを気持ちよくブッ飛ばした。

 

『ちょっと……!! 何が起きてんすか!?』

 

『まさか……先生が脱いだのって……』

 

 戦いを見守る悠香は気が付いた。

 テイルブルームは吹き飛んだベルフェゴギルディへとビシッと指を刺す。

 

「あなたの能力の弱点、それは守る対象や箇所に視線を当てないといけないという事。つまり、あなたの事を誰も……あなた自身でさえも……見ていなければ発動はしない。今、あなたは私のこの姿に目を離せないでいる!!」

 

 テイルブルームの指摘は当たっていた。

 ベルフェゴギルディは先程の攻防の際、自分自身ではなく、テイルブルームを見てしまっていた。

 その理由は明白。テイルブルームの姿が裸かと思えるくらいの露出を見せているからである。

 

「ぼ、僕は裸を……露出を好むエレメリアン……だからこんな事を……!!」

 

 よろめきながら立ち上がるベルフェゴギルディ。

 歯噛みしながらもまだまだ闘志は消えてはいない。

 

「さて、あなたは私のように、自分を抑え込むことが出来るかしら?」

 

 

 

 

 

『ちょっとトゥアールさん!! 華先生が脱ぎやがった!!』

 

『そっちはそっちで何が起きているんですか!?』

 

 通信の向こう側、聞こえてくる匠たちの騒がしい声。

 アスモデウスギルディたちとの戦いがクライマックスを迎えようとしている中、俺とティアナからすれば何とも気の抜ける会話内容だ。

 

「なぁティアナ、あっちはあっちですげぇ事起きてるみてぇだぜ」

 

「そうみたい……ね」

 

 俺たち二人は互いに苦笑いを浮かべる。

 全く……どうしてこうもカッコよく決めることが出来ねぇんだよ。

 華先生の脱いだ姿はちと気になるが、今はアスモデウスギルディへのトドメが先だぜ。

 

「さぁ……来い!! お前たちのセックスをもっと見せてくれ!!」

 

「わかったよ、見たいならいくらでも見せてやる。俺たちのコンビネーション!!」

 

「行くわよ和輝!!」

 

 ブレイブチェインとエモーショナルチェイン。

 赤と青のテイルバイオレットが動き出す。

 目標はアスモデウスギルディとその分身体リリスギルディ。

 二体を同時にブッ倒す!!

 

「二人同時……!! いや、違う!!」

 

 先陣を切るのはこの俺。

 ブレイブチェインとなり、身体能力が上昇した俺はウインドセイバーを二本握り締め突貫。

 反応の遅れたアスモデウスギルディを切り裂いていく。

 

「くぅぅ、リリスギルディ!!」

 

「わかってるわ!!」

 

 カバーに入らんとするリリスギルディ。

 しかし、そんなことすれば俺の相棒が牙をむく。

 猛襲するティアナは青いテイルバイオレット。

 

「その程度の連携、わからない筈が……早い!?」

 

 エモーショナルチェインはブレイブチェイン以上の攻撃力と機動力に特化した超攻撃形態。

 わかっていても防げないティアナの連続攻撃は防御の暇を与えない。

 そして勿論、俺も負けちゃいない。

 

「うらぁッ!!」

 

「ちょっと待って、赤い方も……!!」

 

 ティアナに注意がいけば今度は俺が。

 基本にして完璧な波状攻撃の嵐が、ブレイブとエモーショナルによって強化されアスモデウスギルディたちを追い詰めていく。

 

「しかしである!! 完璧な連携は時として不幸を呼ぶ!! どれだけ対策しても罹ってしまう性病のように!!」

 

 アスモデウスギルディがそう叫ぶと、ティアナの腕を掴み動きを止め、俺からの攻撃を防ぐ盾のように引き寄せる。

 その時間、僅か0.1秒。

 タイミングを合わせ波状攻撃を仕掛けていた都合上、攻撃自体は止められない。

 このままでは俺のウインドセイバーがティアナのツインテールを切り裂いてしまうだろう。

 だがしかし、俺は止まらない。

 俺はティアナを信じている。

 

「私のツインテールはたとえ和輝であっても傷つけさせない!!」

 

「何ッ!? うおおおおおっ!?」

 

 力を振り絞るティアナ。

 母親譲りの馬鹿力は拘束されながらもその立場を逆転させる。

 力ずくで立ち位置を入れ替えられたアスモデウスギルディへウインドセイバーが突き刺さった。

 

「ぎゃあああッ!!」

 

 耳がつんざくような悲鳴がアスモデウスギルディから上がった。

 拘束を振りほどいたティアナがアスモデウスギルディへと向かう。

 

「よしティアナ!!」

 

「わかってる!!」

 

 今がチャンス。そう考え行動に移そうとする俺たち。

 その瞬間、今度はリリスギルディが立ちはだかる。

 

「さて、赤い方はどうかしら?」

 

 リリスギルディの腕が変化、グニョグニョと蠢く悪い触手へと形を変える。

 そのあまりの気持ち悪さに俺は思わず動きを止めてしまう。

 リリスギルディはそんな俺を触手を使い絡めとる。

 

「くッ……!!」

 

「和輝……!!」

 

「さぁ、攻撃を止めるなら今のうちよ!! この坊やはあなたのように出来やしない!!」

 

 確かにリリスギルディの言う通りだ。

 俺はティアナのような馬鹿力はない。

 この触手を引きちぎって脱出することなんて出来ない。

 でも……

 

(大丈夫だ。俺だって、お前にツインテールを傷つけさせない)

 

(わかってる。だから私も全力で)

 

 目と目を合わせ互いの意図を伝えあう。

 ティアナは足を止めず加速、ナギナタモードとなったウインドセイバーを振りかぶる。

 

「切り裂きなさい!! あなたたちの手で!!」

 

 リリスギルディはその刃が俺のツインテールに当たるよう盾となった俺を突き出した。

 ウインドセイバーが振り下ろされる。

 だが……

 

「甘いんだよッ!!」

 

「何ッ!? きゃああッ!?」

 

 構わず振り下ろされた刃はツインテールの片房ごとリリスギルディを切り裂く。

 予想だにしていないまさかの正面突破に悲鳴を上げ拘束解除。

 そして、リリスギルディは見る。

 俺のツインテールが無事であるという事を。

 

「な、なぜ? どうして……?」

 

「そんなの、ちょっと頑張って意識さきゃあやれんだよ!!」

 

 そう、俺がやったのは至極簡単。

 ブレイブチェインによって得られる力を使い、ツインテール全体を鉄のように硬化させ、その上でどんな攻撃をも受け流す柔らかさも与えた。

 そうすれば、斬撃に傷つかずにする事は可能だ。

 

「ば、バカな……!!」

 

「いくら信じあえていてもそのような真似を出来るなどとは……なんて奴らである……」

 

 傷つきよろめきながら仰天するアスモデウスギルディたち。

 そんな奴らへと俺たちは言い放つ。

 

「俺たちはただ庇い合って支え合うだけの関係じゃない」

 

「そうよ、私たちは互いを信じ、互いを乗り越えるために共に戦う」

 

「性行為という形でしか愛を語れないお前に」

 

「私たちは負けない!! 私たちのツインテールは……」

 

「俺たちのツインテールは……」

 

「「二人で一つ!!!」」

 

 声が重なり、たじろぐアスモデウスギルディたち。

 さぁ、後は最後の仕上げだ。

 俺たちは共にウインドセイバーを構えてはその力を解き放つ。

 

「「完全開放(ブレイクレリーズ)!!」」

 

 赤と青、二つの光がそれぞれ爆裂し、炎と水が旋風と共に巻き上がる。

 狙いはアスモデウスギルディとリリスギルディ。

 心を合わせ、タイミングを合わせ、同時に切り裂かんと共に跳び上がる。

 

「「ツインストーム! スライサーーッ!!!」」

 

 赤と青の斬撃がアスモデウスギルディとリリスギルディ、二体の身体を寸分狂わず同じタイミングで切り裂いた。

 火花が上がり、敗北を悟るアスモデウスギルディたち。

 

「しかと見せてもらったぞ……!!」

 

「これがあなたたちの……!!」

 

 最後の最後、二体は共に抱きしめ合うかのように寄り添い合う。

 そして、火花散らすその体は大爆発。

 色欲の性癖はその不死の力を失い、愛する者と永遠の存在となったのだった。

 

 

 

 

 アスモデウスギルディとの戦いが終わったのと同タイミング。

 テイルブルームとベルフェゴギルディの戦いもまた佳境へと差し掛かっていた。

 裸同然の姿で殴り合う両者。

 あえて装甲と脱ぎ捨て裸を晒すことで視線をベルフェゴギルディ自身に向けさせないようにするテイルブルームの奇策は、ベルフェゴギルディの持つ優位性を奪い去り、戦いの流れをテイルブルーム側へと傾けさせた。

 ここに至るまで受けたダメージや、そもそも敵を見てはいけないという無数のハンデも、今のテイルブルームには何一つの影響を与えない。

 

「僕が……負けるのか!? 無敵の僕が!?」

 

「なら見なきゃいいんじゃない? はぁッ!!」

 

 急接近し、繰り出される音速の鉄拳。

 反応が遅れたベルフェゴギルディに残された唯一の防御手段は空に浮かばせた自身の眼で自分自身へと視線を送る事。そうすればどんな攻撃をも防ぐモザイクの闇が現れる。

 しかし、そうしたくとも自分自身の本能がテイルブルームの露出した肌のみへと視線を向けてしまう。

 

「きぃぃ!? あぎゃああッ!?」

 

 拳を叩き込まれ吹き飛ぶベルフェゴギルディはゴムボールかのように地面に何度もバウンドしては地に伏せる。

 もう、勝負はついた。

 とどめを刺さんとテイルブルームが完全開放せんとする。

 が、ベルフェゴギルディは往生際悪く立ち上がり、テイルブルームから距離を取っていずこかへと逃げていく。

 

「逃げるつもり……!?」

 

『いや、違います!! あのエレメリアン、人がいる方に向かってる!!』

 

 悠香の通信を聞いたテイルブルームはベルフェゴギルディの目的を理解する。

 狙いは恐らく、人質などではなく、周りの人々の視線。

 ひとたび人だかりの中に陣取られては、誰かの視線がベルフェゴギルディに向かってしまい、倒すのが不可能になってしまう。

 

「そうはさせない!!」

 

 そうはさせまいとベルフェゴギルディの後を追い、通信から伝えられる方向へ。

 しかし、時すでに遅かった。

 街はずれから人の多い中心へと辿り着いていたベルフェゴギルディはテイルブルームがやってきたのを確認すると、突然の事に困惑し逃げ遅れた人々ごと周囲一帯を結界で閉じ込める。

 

「か、怪物!?」

「なんだこれ!? ここから出れないぞ!?」

「助けて~テイルバイオレット~!!」

 

 悲鳴を上げ、助けを呼ぶ人々。

 皆を逃がすにはこの結界を破壊するしかないが、それはベルフェゴギルディの撃破が条件となる。

 

『くそぉ、またあの結界か!!』

 

「くッ……そちらから干渉は?」

 

『ダメです先生。中にどうやっても入れない!!』

 

 やはり倒すしか方法はない。

 この結界は他者のやる気を吸い取り、時間が経つほどベルフェゴギルディ有利となる空間。幸いなのは結界自体広くはないがそこまで狭くない事。これならば使う技を間違わなければ人々に被害を出すことはないだろう。

 だが、誰かの視線がベルフェゴギルディの裸体に向けば攻略不可能となるこの状況ははっきり言って最悪の一言に尽きる。

 

「さぁ形勢逆転かな?」

 

「卑怯な……」

 

「ククク……。さらに……っと」

 

 意に介さない様子のベルフェゴギルディは今度はその自身の身体に力を籠める。

 するとどうだ、もともと女性型とは言え貧相としか言えなかったベルフェゴギルディの体つきがみるみるうちに成長していき、いつの間にかその身体は裸体が似合うセクシー極まる極上のダイナマイトボディへと変化を遂げた。

 

「お、おい……。見ろよあの怪物……!!」

「す、すげぇ……!! おっぱいデカいし、尻もデカい!!」

「しかも裸だ……!!」

 

「みんなダメ!! ベルフェゴギルディに目を向けないで!!」

 

 慌てて人々にそう声をかけるテイルブルーム。

 しかし、本能に負けてしまう一部の男たちは言う事を聞いてはくれない。

 それどころかだ。

 

「てか、テイルブルームもすっげぇな……」

「こっちも負けてねぇし、それに……」

「怪物程じゃないけど、露出ヤバ……」

 

 露出しまくっているテイルブルームに発情する始末だ。

 その様をみたベルフェゴギルディは大いに笑う。

 

「どうだい? これが人間!! 人もエレメリアンもみんな、裸の魔力からは逃れられないのさ!!」

 

 見てはいけないとわかっていてもついつい見てしまう。

 それこそが裸を愛するエレメリアンが辿り着いた真理である。

 

「そうですか……」

 

「ははッ、ようやく諦めたか!! いい加減ダルイ真似やめて楽になりなぁッ!!」

 

 陰部守る闇(スロウス・ペオル)が発動できる事を確認したベルフェゴギルディは、今度こそ勝利を確信し、決着をつけんとエネルギーを貯め始める。

 次の一撃でテイルブルームは終わる。

 属性力と身に着ける物を全て奪われ無残な裸体を晒すのは時間の問題だ。

 

「なら……」

 

「ん?」

 

 その時だった。

 テイルブルームは顔を上げ、いつの間にか手にしていた酒瓶を見せつける。

 それはなんだと尋ねる暇もなく、テイルブルームは叫ぶ。

 

「だったら、もっと私を見ていなさい!! 皆を守る為ならどんな辱めをも受けてみせる!!」

 

 その宣言はそれだけはしてはダメだと言う自分自身の理性を黙らせる宣言。

 強化アイテム、開花の酒瓶(ブルムボトル)を開け中を飲み干すテイルブルーム。

 するとその姿は光に包まれ、裸体を隠す最後の砦であったインナースーツがはじけ飛ぶ。

 

『うおおおおい!! 先生それヤバイっす!!』

 

『見えてる見えてる!! ほとんど見えてますよ!!』」

 

 匠と悠香、二人の悲鳴が聞こえてくるその姿。

 それはほぼ全裸と言って差し支えないテイルブルーム。

 日焼けとは縁のない健康的な白い肌に映える黄緑のツインテール。

 唯一、乳首と股間部分のみ花型の二プレスと前貼りが隠しているが、それ以外は全てが肌色だ。

 

「みんな、裸がみたいなら私を見なさい!! 怪物のではなく、私だけを見ていなさい!!」

 

 全裸となったテイルブルームがそう呼びかける。

 そのあまりにも堂々とした見事な裸体に男たちは心射抜かれた。

 

「わ、わかったぜテイルブルーム!!」

「おらお前ら!! テイルブルームは俺たちの視線をご所望だ!!」

「あんな怪物見るんじゃねぇぞ!!」

「あと、良い子には見せるなよ!!」

 

 団結した男たちの行動は早かった。

 子供たちは女たちに任せて目をそらさせ、男どもはベルフェゴギルディにではなく、テイルブルームへ視線を向けるように声を掛け合う。

 そのかいあってか、ベルフェゴギルディへ向けられる視線がなくなり、陰部守る闇(スロウス・ペオル)が解除される。

 

「な、そんな馬鹿な!? 僕の裸体があんな奴に負ける……!?」

 

「みんな、ありがとう!!」

 

 テイルブルームは空高く跳躍した。

 結界で覆われた限界高度までその動き僅か2秒。

 皆の視線が自身に追いついた事を確認したテイルブルームは首からさげるテイルペンダントを介して全身の力を完全開放。

 そのしなやかな足先の踵をベルフェゴギルディへ向け、心の目を以て動きを掴む。

 

「喰らいなさい! タイタニック!! ジャッジメントォォッ!!」

 

 振り下ろされる裁きの鉄槌。

 急降下によって加速する強烈な踵落としは回避行動をとろうと慌てるベルフェゴギルディに直撃。

 辛うじて木っ端微塵にはならなかったものの、その身体は限界を表すかのようにスパークが走る。

 

「だ、ダルすぎ……やらなきゃよかった……」

 

 その断末魔は怠惰になりきれなかった事に対する後悔なのだろうか。

 一言そう言い残すと同時にベルフェゴギルディは爆発四散。

 周囲を覆う結界は姿を消した。

 

「テイルブルームが勝った!!」

「みんな無事よ!!」

「ありがとうテイルブルーム!!」

 

 感謝の気持ちを叫ぶ人々。

 彼らはテイルブルームがなぜ裸同然の姿をしていたのかはわからないが、二重の意味でありがとうの気持ちでいっぱいだ。

 巻き込まれた人の中のとある老人は逝く前にイイ物見れたと実に満足気である。

 ちなみに当の本人はと言うと……

 

(は、恥ずかしい!! こんな姿で私……!!)

 

 酔いによってある程度誤魔化していた羞恥心が復活。

 誰にも見られず、誰にも見せようとせず、人々に感謝されるヒロインの姿には到底見えぬ様子のまま、その場を急いで去るのであった。

 

 

 

 

 アスモデウスギルディたちを撃破してから数日後。

 俺とティアナの二人は、トゥアールさんにエクストリームチェインの状態を調べてみたいと言われ呼び出されていた。

 ある程度の原因は解決したとはいえ、内容が内容であるからして俺もティアナもドキドキを隠せない。

 

「えーっと……どうなんだよ俺たち」

 

「大丈夫……よね? ママ?」

 

 トレーニングルームでの変身を解除し、コンソールルームに戻ってきた俺たちは、ディスプレイを前に険しい表情を浮かべるトゥアールさんへと恐る恐るそう尋ねた。

 うーんと答えるわけでもなく、ただ黙って画面を見続けるトゥアールさん。

 人生においてここまでの緊張感はなかったぜと思える時間が流れて数十秒。

 ようやくトゥアールさんは俺たちの方へと顔を向け、その表情を解いて優しく微笑んだ。

 

「調べたところ、今の二人の状態であれば、当面の危機は去った。と言ってもいいと思われます」

 

「え? じゃあ俺たち……」

 

「大丈夫……ってこと?」

 

 聞き返す俺たちへはいと断言してくれるトゥアールさん。

 緊張が解けた事で俺もティアナも喜びを隠せず、二人して抱きしめ合う。

 

「や、やったぜオイ!!」

 

「ありがとママ!!」

 

 最強形態であるエクストリームチェインが今後も使えるというのもそうだが、それ以上にこれこらもティアナと共にいれる事が何より嬉しいんだ。

 今さら照れる必要もなく、俺たちはただこの喜びを分かち合う。

 

「ですが、エクストリームチェインバーストの危険性が無くなったわけではありません。今後も多用は厳禁という形でお願いしますよ」

 

「おう!! 任せとけって!!」

 

「そうそう、私たちのツインテールは何があっても大丈夫!!」

 

 あれ? ちょっと浮かれ過ぎているか?

 まぁでも、沈み込むよりかは遥かにいいか。

 トゥアールさんからの忠告を心に留めつつ、これからの事を考えていく。

 俺たちはこれからも二人で一つの唯一無二のパートナー。

 時に支え合い、時に競い合う。ただ互いを求め合うだけの関係ではない理想的な関係を目指していくだけだ。

 

「さて、問題はなくなった訳ですね。では和輝君」

 

「ん? どしたトゥアールさん」

 

 喜び合うのがひと段落ついた時、トゥアールさんの顔つきがまた変わる。

 さっきまでが昔話で出てくる優しき主人公の母親なのだとしたら、今のトゥアールさんはさしづめおとぎ話の邪悪な魔女。 

 嫌な予感がしたと思えば、トゥアールさんは胸元からペン型の簡易転送装置を取り出して起動。

 普段以上に綺麗に整えられた俺たちの寝室へ場所が変わる。

 

「ねぇ……和輝?」

 

「あ、マジか……」

 

 いつの間にやらティアナも乗り気で服を脱ぎ始める。

 これって……まぁアレですよね。

 トゥアールさんがニタニタと笑みを浮かべる中、俺も覚悟を決めてティアナをベッド上で押し倒す。

 

「ねぇ和輝、私こういう事あまりよくわかってないの……。あと、今はちゃんとした名前で呼んでほしいな……」

 

「わーったよ。総愛」

 

 これ以上は無粋とばかりにトゥアールさんはごゆっくりどうぞ〜と一言かけて退出。

 俺たち二人は今日に至るまでを振り返り笑い合った。

 

 

 

 一方その頃、華先生はというと……

 

「皆さん助けてください〜!! テレビで!! 私の裸が!!」

 

 悠香たち新聞部の皆に泣きつく華先生。

 指さすテレビに映るのは、ベルフェゴギルディと戦うテイルブルーム。戦いに巻き込まれた誰かによって撮影されたであろうその姿は、当人からすれば目を覆いたくなる程の見事な全裸姿であった。




アスモデウス&ベルフェゴ編はこれにて終了です。
話のラストで和輝とティアナがした事は詳しく書けないので、読んで頂いた皆さん各々で想像してください。

あと、華先生とベルフェゴギルディの戦いは本来、裸体を見せることに対する抵抗を軸に華先生のドラマも考えてはいたんですけど、和輝たちの本筋も長いし流石にくどいなと思って大幅カットした結果こうなりました。



キャラクター紹介31

 テイルブルーム(ジャッジメントチェイン)
 武器:大地の弓 グランアロー、他
 必殺技:ブルームツインフルバースト、タイタニックジャッジメント
 
 トゥアールがテイルイエローのデータを元に作り出したテイルアーマーY(イエロー)によって強化されたテイルブルームの新たな姿。
 雷の力を操る事が可能となった他、武装されたいくつもの銃火器を使用した砲撃を得意とする。
 装甲を脱ぎ去ると身軽になれるが、その姿は色々と際どい。
 酒に酔うとさらなる脱衣が可能となる。
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