俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
多分、今回が最後の通常エピソードです。
トゥアールが建造した地下秘密基地。
そこは地上から何十、何百、何千メートルも深くに存在している現代科学では到達できない神秘とも言えるテクノロジーの塊である。
ここにはコンソールルームやトレーニングルーム、メディカルルームといったよく皆に使用される部屋の他にも、トゥアールの自室や和輝とティアナ専用の愛部屋もとい相部屋、いくつものゲストルームに多種多様の娯楽施設、変な部屋で言えば、○○しないと出られない部屋のような一発ネタか何かかと首をかしげてしまう罠のような部屋まで大量に存在している。
そしてその中、この基地内で特に大事と言われる部屋が二つ。
一つはこの地下基地内で最も厳重に管理された部屋、名を属性玉保管研究室。
ここでは、トゥアールをもってしても未だすべてを理解できる訳でない神秘そのものである属性力。その結晶である属性玉が多量に保管されており、トゥアール以外の者がここに入ることは出来ぬようになっている。これはかつて、敵側の
属性力を研究する以上、納得の厳重さと言えよう。
そしてもう一つ、二つ目に大事とされる部屋。
それはこの基地内のネットワークを管理するコンピュータールーム。
そこにはこの基地の全てが詰まっていると言ってもいい。各種施設の管理や防衛用プログラムの統括は勿論、科学者にとって命とも等しい今までの研究内容及び戦いの記録といった多種多量のデータがメインデータベースに詰まっている。トゥアールとってかけがえのない思い出とも言えるかつてテイルレッドたちツインテイルズと共に戦った記録の全ても同様にだ。
バックアップこそ存在するが、あまりにも膨大すぎるのとトゥアール自身の想いからくる確実な修復が求められるが故にここのセキュリティは一際固い。
今の今までどんなサイバー攻撃もはねのけてきた。
これのおかげで和輝たちは今日も充実したサポートを受けられているのだから感謝と言うしか他ならない。
――地下秘密基地内、属性玉保管研究室。
先述したように多くのエレメリアンの亡骸とも言える属性玉が眠るこの部屋。
ここから起きるのは未来を生きるトゥアールの超科学でも説明しきれない不可思議な事件。
大量に保管された属性玉の幾つかから抜け出した怨念とも言える負のエネルギーが集まったそれは、ウイルスかの如く人知れず地下基地内のメインデータベースへと潜り込んでいくのであった。
◇
月日は遂に2月の1日となった。
ある意味で俺にとって最も大切な日が明日に迫る。
そう、明日はツインテールの日、ティアナがこの世に生を受けた誕生日だ。
主役であるティアナを除いた俺たちはその誕生日パーティーの準備に精を出し、それぞれがそれぞれを手伝いつつ頑張っている。
会場は話し合った結果トゥアールさんが用意した地下秘密基地のパーティールーム。
どうせなら機械に頼らず自分たちの手で準備してやったらどうだと俺が提案したのが始まりだ。
ちなみに当のティアナにはパーティーをすること自体は隠していなかったりする。明日の楽しみの為に待っていてくれとお願いした程度だ。
「たっくん、お使い頼んでもいいかしら?」
「へい、よろこんで!!」
「疲れた……」
「こら青ちゃん!! サボろうとしない!!」
「片霧さん、これはどこに置けば……」
「あ~それはですね……」
皆に指示を出す悠香さん。
提案しておいて何だが、こういう時のリーダーは決まって悠香さんだ。
年下も年上も関係なく指示を入れては皆を動かしていく。
ちなみに悠香さんは掃除が大の苦手ではあるが、こういった飾りつけとかの準備は得意であると豪語している。曰く、掃除は自分の為にするからやる気が出ないけど、こういった誰かの為にやる行動は楽しいしやりがいはあるのだと。
まぁ、他にまとめ役となる人がいないからってのもあるとは思うがな。
「にしても、トゥアールさんもよくやるよなぁ。基地にこんなパーティールームまで用意しておくなんてよ」
飾りつけの入ったダンボール箱を運び終え一息つきつつそう一言。
改めて見回しても中々に広い部屋もとい会場だ。
学校の体育館とかと比べても問題ない程度のデカさをしていやがる。
これじゃただの誕生日パーティーとは言えねぇ、どこかの財閥のお嬢様とかが主役の奴だぜ。
「あれ? もしかして和くん知らないの?」
「ん? 何が?」
「ほら、あれ」
俺の呟きを聞いた悠香さんが近づき部屋の隅に存在する扉を指さす。
そこに注目すると先程から聞こえていた小さいながらも妙な音が響く先であるとわかる。
程なくして扉の中からトゥアールさんが出てきた。
「いや~少し凝りすぎましたね~」
そう言ってまたどこかへ行ってしまうトゥアールさん。
悠香さんに連れられ今トゥアールさんが入っていた扉の先を覗くと、そこに広がっているのはパーティー用の食事を作る為の厨房。
どこを見てもキラキラと光り輝く様を見て俺は答えにたどり着く。
「なに……? もしかして、今作ったのか?」
「そう、せーかい。ここ含めて会場も全部、新しく増設したみたいよ」
こいつはたまげた。
まさかこのパーティールーム全て、ティアナの誕生日を祝うためだけに新しく作ったのかよ……
俺はてっきり、元々あった部屋を使っただけだと思っていたぜ。
いやま、トゥアールさんなら出来ておかしくはないし、やってもおかしくはない。
いやでも、ここって確か地下数千メートルとかにあるんだよな?
そんな場所で専用の厨房含めて半日もかからずに作っちまうとかもう科学とかで説明つかねぇだろオイ……
「そんな気軽に出来るもんなのかよ……」
「なーに言っているんですか。こんなのトゥアールちゃんにかかればちょちょいのちょいですよ」
噂をすればなんとやら。
いつの間にか俺の下へトゥアールさんがやってきていた。
悠香さんへとこの部屋の構造や仕組みをまとめたマニュアルらしき物を渡すトゥアールさん。
悠香さんはそれを青葉さんと共に確認すべく離れていく。
俺の周りにはトゥアールさんだけが残り、二人揃って少し休憩をいれるべく会場の外へ出ては渡された缶コーヒーを開けつつ一息つく。
「以前にもお話しましたよね? 元の世界での総愛の誕生日の事」
「ああ覚えてるよ。確かあれだろ? 今まで友達と呼べるような奴がいなかったからどうたらってやつ」
少しいい加減な返事かもしれねぇが、俺はちゃんとわかっている。
だからわざわざこうやって手作業で準備をしようって言ったんだ。
トゥアールさんはそんな俺の態度を見て優しく微笑む。
「まぁ任せておけよ。こんな広い会場用意してくれたんだ。盛大に盛り上げてやるよ」
自信満々に俺はそう胸を叩く。
しかし、問題は少し残っている。
みんなのおかげで準備は着々と進んでいるし、当日の料理とかはいつも通りおやっさんに任せるとして、あとはパーティーの出席者をどうするかだ。
ある程度仲のいいクラスメイトとか関係のある知り合いとかを何人か呼ぶにしても、会場が広すぎるあまりスペースが余っちまう可能性が高い。急に呼んでも来れるかわからない奴も何人かはいるだろうし、さてどうするか……
「ったく、しょうがねぇ。気は乗らねぇがアイツらも呼ぶか……」
「アイツら?」
「頼りにはなる奴らですよ。……一応」
トゥアルフォンを開き、その“アイツら”に連絡を送る。
すると二秒も経たずに『喜んで参加させてもらいやす』の返事が。
俺の人脈ってこんなのでいいのかよと笑えばいいのか泣けばいいのかわからず複雑だ。
「となると後はプレゼント……ですね」
「そうなんだよなぁ……そこが大変だぜ」
こんな規模で誕生日パーティーをするんだ。
当然、誕生プレゼントは必要になってくる。
さて、ティアナに何を送れば喜んでくれるのか……
ぶっちゃけ何を送ってもアイツなら喜んではくれそうだが、どうせならもっとイイ物を送りたい。形に残る物だけじゃない、もっと大事な物をだ。
何がいいかを考えつつコーヒーを口に含む。
「大変ですよね。わかりますよその気持ち。和輝君が渡すべき童貞はもう前回渡しちゃいましたしね~」
「ぶーーーーッ!?」
急にぶっこんで来やがったトゥアールさん。
俺は思わずコーヒーを吹いちまった。
「あれ? 嬉しい事じゃないんですかぁ?」
「いやいや、急に言うんじゃねぇよ。誰かに聞かれたらどうすんだよオイ……!!」
慌ててキョロキョロと周囲を確認。
会場の外の廊下にいるのは俺とトゥアールさんの二人だけ。
誰も聞いていないとわかりホッと胸をなでおろす。
「別にいいじゃないですかぁ。年頃の子が彼女相手に盛んになることは普通の事ですよぉ~?」
「んじゃあ、どうしてそんなにあんたはニヤケ顔なんだよ」
どう見ても揶揄ってるだろオイ。
そう睨みつけるもトゥアールさんのニヤケっぷりは収まらない。
いやそんな事ないですよと言っては俺をどう揶揄うかを考えている様子だ。
「じゃあ聞くが、総二さんはどうだったんだよ。俺くらいの年の頃の総二さんはあんたの事を襲おうとしたのか?」
「うっ……、それは……」
実にわかりやすくギクリとしてみせるトゥアールさん。
トゥアールさんの性格や、未だ処女であることを知っている俺からすれば答えなんて聞かなくともわかっている。
「そりゃあ、全盛期は毎夜毎夜狙われてはその度に愛香さんが――」
「嘘つけ。逆だろ絶対」
ピシャリとそう言い切りトゥアールさんを黙らせる。
今まで断片的ではあるが、トゥアールさんたちの過去やみんなの性格は見ているので今更そんなウソには引っかからない。
尤も、あんなわかりやすい反応を見せた以上はそんなの関係なく信じないがな。
「自分で言うのもなんですけど、総二様はかなり変わっていましたし……」
「まぁ、普通じゃねぇよな」
あの娘あってあの親ありだ。ある意味で総二さんはティアナをより悪化させたような人なのは知っている。
まるでツインテールが人の姿をしたような……
って、流石にそれは失礼が過ぎるか……
「でも、不思議だよな。そんな総二さんが愛香さんと結婚して娘作っちまうなんてさ」
一体、どんな事が起きたらあの人が親になる道を選ぶのだろうか。
ティアナが生まれるのが正史ではないのは知っているが、そうでなくても誰かと結婚して娘を授かるのは変わらない事実。
ティアナもとい総愛誕生の秘話って奴を知りたくなってくる。
「あれ? もしかして気になります?」
「そりゃあ……って、あんた知ってるのかよ!?」
「勿論です。何なら総二様と愛香さんの初夜の様子は基地のデータベースに保管してますから」
え、マジ? ちょっと気になるぞオイ。
あのツインテールしか興味なさそうな総二さんと、暴力的でむっつりな愛香さんの初エッチ……
ちょっと話がズレてる気がしない事もないが、気になると言えば気になる。
「来たるべき日が来れば見せてあげてもいいですよ~」
「お、おう」
「あ、ちなみに和輝君と総愛の初夜もばっちり保存してますからね~」
「はぁ!? ちょっと待てオイ!!」
唐突のカミングアウトに驚愕する俺の全身を悪寒が駆け巡る。
それだけは絶対に削除せねばとトゥアールさんの首根っこを掴もうとする。
――その時だった。
『緊急事態発生 緊急事態発生 緊急事態発生』
「「ッ!?」」
突如聞こえてくる非常警報。
それはいつものエレメリアン出現のブザーとはまるで違う。
何となくだが、これはそれらよりも遥か上位の危険性を訴えているように感じられる。
ただただ無機質に繰り返す警告音に会場で準備を続ける皆も気が付いた。
「ちょっとどうしたんですか!?」
「なんかヤバい感じするっすけど!?」
「危険……」
「観束先生……!! これは……」
皆にそう問い詰められたトゥアールさんは白衣のポケットからにゅるんとタブレットを取り出しては何があったのか調査を開始。
みるみるうちにその顔が険しくなっていく。
「一先ず移動しましょう。もしかすると、この基地……いや、この
トゥアールさんはハッキリとそう答えた。
◇
明日は私の誕生日パーティー。生まれてきてもう17回目にもなる誕生日とそのパーティーの中で、今回は今までと違ってお父さんやお母さんの友達たちではなく、私自身の仲間や友達が主導となって開いてくれる特別な物になっている。
今日はその準備をすると聞いていた事もあり、私は一人、内容に胸を躍らせながら楽しみにみんなを待っていた。
『緊急事態発生 緊急事態発生 緊急事態発生』
「ッ!? 何!?」
突然、トゥアルフォンがけたたましいその音を響かせた。
これはいつものエレメリアン出現音とは違う警告音。
昔、ママたちが言っていた気がするそれは最上級の危険を示している。
まさか……ママったら私の為にだとか何とか言って変な事でもやらかしたんじゃないでしょうね……!?
問い詰めるべく基地へ向かった私は、コンソールルームへと急ぐママたちを発見した。
「ちょっとママ!! 何やったのよコレ!?」
開口一番、私はそうやってママを問い詰める。
事と次第によっては暴力的解決も視野に入れているのは、信頼と実績、あとは楽しみを阻害された少しの苛立ちからかな。
「ストップ!! ストップ!! 今はそれどころじゃねぇんだよ!!」
「そうそう!! 落ち着いて!!」
和輝と悠香さんが止めにかかったのでこちらもすんなり拳を下ろす。
ママの顔つきにおふざけの色はない。
これは……本当って事なのね。
「ちょうど良かった。総愛にも後で来てほしかったところです。兎に角、今は急ぎましょう!!」
おふざけなしのトーンでそう言い切ったママはコンソールルームへと辿り着くや否や、同行していた青葉さんに指示を送りながら自らも専用席に座りディスプレイを操作する。
なおも鳴り響く警告音と部屋全体を照らす赤いランプ。
トゥアールママと青葉さんの様子からして何かと戦っているという事だけはわかる。
「ねぇ、和輝。何があったの?」
「いや……詳しくは俺も……。ただ、何でもこのままじゃ地球が木っ端みじんに吹き飛ぶかもしれねぇとか……」
「はい!?」
急に聞かされる地球滅亡の危機にどこからどうツッコめばいいかわからない。
ママにどういう訳か詳しく聞き出したいけれど、当の本人はどう見ても話しかけちゃダメと言った雰囲気を出していて一言も声をかけさせてはくれない。
どういう事なのかさっぱりわからないけど、青葉さんのみがわかっているという事はこの基地の機能そのものに何かが起きたとしか考えられない。
何かと戦う二人を見守り続ける事数分。
ようやく、警告音などが解除され元の基地へと戻った。
「ふう……何とかくい止めましたね」
「でも、時間の問題……」
「ですね……」
ホッと一息つく二人。
だけど、二人の会話を聞くに危機は去っていない様子。
「ねぇ……一体何が起きたの?」
訳がわかっていない私たちを代表する形で恐る恐る尋ねる悠香さん。
するとママは私たちへと向き直った。
「単刀直入に言います。この基地は先程、ウイルスに侵入されました」
う、ウイルス!?
それってつまりこの基地のコンピューターにサイバー攻撃を仕掛けてきた奴がいるって事!?
和輝たちもみんな、私と同じように驚き、焦る。
「青ちゃんは聞いてたの!?」
「うん……さっき移動中……」
悠香さんは青葉さんに確認を取る。
一方で華先生や匠は私や和輝以上に慌てていた。
「観束先生、ちょっとそれ……大丈夫なんですか!?」
「大丈夫か否かで言えば、大丈夫じゃなかったですね」
「じゃ、じゃあアレっすか!? さっき言ってた地球が吹っ飛ぶかもしれねーってのは……」
「それはついてはこの基地の自爆装置を作動されかけたという事です。この地下基地は規模もそうですが、全体の電源を独自で賄っている都合上、全ての自爆装置を同時に起動してしまうと惑星の核に甚大なダメージを負わせてしまう可能性が高く、それら全ての起動はこの地球全土の破壊を意味します」
淡々と答えていくママ。
どうしてそんな危ない装置があるのよと声を大にして言いたいけれど、どうせ自爆装置はロマンでしょうがとか何とか言うにきまっている。
今はそんな事よりも、そのウイルスがどうなったのかと何が原因で起きたのかが大事よね。
「ママ。どこから侵入されたのかわかるの?」
「てか、そもそもこの基地のセキュリティってどうなってんだ?」
私がそう質問し、和輝がそう呟く。
ママはその両方に答えるようにディスプレイを操作。
半分ずつモニターに映し出されるのは基地全体の見取り図と基地全体のセキュリティを示していると思しきプログラムの羅列……なのかな?
「この基地はありとあらゆるサイバー攻撃に対応できるように私自身が制作したいくつものプログラムが何重にも組み込まれています。外からネットワークを通じて基地にアクセスすることは断じてあり得ません。これらのデータはほんの一握りですが、これだけでもこの星及びこの世界、この時代において突破は不可能と思ってください」
ママがそう断言しているけど、それは正しい。
だってトゥアールママの持つ技術力は属性力という未知の領域にも踏み込める程であり、普通の人間じゃあ逆立ちしても勝てっこない。それはエレメリアンだって同じ事。並みの頭脳を持った程度じゃ人外であるエレメリアンでも太刀打ちできない。
「しかし、唯一穴があるとすればこのメインコンピューター存在するこの部屋からの直接のアクセスでしょう。ここからであればいくらか突破難易度は下がると思われます」
画面半分に表示された基地中枢に存在しているとされるコンピュータールーム。
そこは私たちも立ち入りできない禁止区域になっている。
「でも、この基地に入れるのって俺たちだけだろ? 侵入者でもいたのか?」
至って当然の疑問ね。
この基地のセキュリティは何もネットワークの中だけじゃなく、現実の方も超が付くほどの高性能。私たちが普段何気なく出入りして使用している裏で、もしどんな敵が侵入しようとも一発でわかるようになっている。
いくら今日が明日の準備で手一杯になっていようとも、気づかれずに潜り込むはおろか、コンソールルームへと直接入り込むことなんてありえない筈……
「それについてはこれを見てください」
再びママは画面を切り替える。
今度映し出されたのは事件直前と思しき属性玉保管研究室。
ここには私たちが倒したエレメリアンやお父さんたちが倒したエレメリアンの属性玉の一部が保管されている。
「これがどうしたの……って、ん?」
「なにアレ……動いてる?」
「お、お化けですか!?」
お化け嫌いの華先生が怯えるのも無理はない。
映像に映るのは、保管された属性玉の一部から靄のような物が噴き出て、それらが合わさって形作る様子だった。
まるで幽霊もしくは怨念。
私たち全員が抱いた印象はそうとしか言いようがない。
「先程、私も確認しては衝撃を受けました。まさか、このような形で蘇り、襲ってくるとは……」
「それってじゃあ、さっきのウイルスってのは……」
「はい、これこそが敵の正体です。敵は属性玉に残っていた倒したエレメリアンの怨念の集合体。これが先程、この基地に侵入し攻撃を仕掛けてきたウイルスです」
まさかすぎる正体……と言った所ね。
倒した後の属性玉にも意思が残ったりするって話はお父さんたちから聞いてはいたけど、こんな形で見る事になるとは思っていなかった。
記録された映像では、怨念の集合体が保管室を通じて基地中枢へと潜り込む所まで映されていた。
「目的は恐らく、私たちへの復讐。そう考えるのが妥当ですね」
「だから、俺ら全員を吹き飛ばすべく自爆装置を狙ったのか……」
「実体がないんじゃ、あたしらの属性力を狙う理由もないしね」
だからってあまりにも過激すぎない?
幽霊にこんな事言うのもなんだけど、リベンジしたいなら正々堂々と向かってくればいいのよ。いくらでも相手してあげるわ。
「まぁ兎に角、危機は去ったって事でいいんすよね?」
匠がそう安心しきるがしかし、
「いえ、そうとは言えません。今先程、青葉さんと共にウイルスを抑え込みはしましたが、活動を再開するのは時間の問題です」
きっぱりとママがそう言い切り、青葉さんが頷いた。
じゃあ地球滅亡の危機はまだ終わっていないって事……!?
敵が実態を持たない以上、私たちは手出しできないし、どうすれば……
不安と緊張感で全体が包まれる。
「いえ、ですが対策はあります。ウイルスが潜んでいるデータ内に入って、直接対決に持ち込み、倒せばいいんです」
直接対決? データ内に入る?
摩訶不思議なその発言にみんなピンと来ていない中、ママは魔法の言葉「こんなこともあろうかと」を言いながらとある機械を運んでくる。
「な、何これ……?」
「まんま、ジャンク……」
「ボロい……パソコン?」
それは和輝が言う通りのボロくて古い昔の手作りパソコン。
モニターが中途半端にデカくて厚くてアナログテレビのようであり、キーボード含めたその他全てのパーツが90年代物と思われる程に古臭く汚らしい。肝心の作りも電子部品が乱雑に組み合わされ、一部部品や回路が不必要に露出されているそれはそう詳しくない私でもわかる程に雑で初歩的。何に使うのかわからないパトランプが増設されていたり、明らかに蒸気や火花を吹き出すようなおおよそ普通ではない箇所も散見される。
何と言うか、とてもじゃないけどトゥアールママが作ったものに見えない。
「ママ……これ……」
呆れ半分困惑半分でこれは何なのかと指摘する。
するとママは自信満々に胸を張る。
「こちらはとあるインスピレーションの下に開発し、完全再現に至ったデータ空間及びコンピューター世界への移動用中継装置です。このブレスレット型のトゥアセプターを用いて使用者の身体をデータへと変換しこの装置を経由すれば、ありとあらゆるデータの世界へと移動しその先のウイルスやプログラムと戦闘を行うことが出来ます」
テイルブレスとはまた違った形状の白いブレスを取り出してママがそう説明。
原理は全くわからないけど、どうやらこの装置を使えばウイルスとの直接対決が出来るという事だけはわかる。
見た目がやたらと古臭いのは本人曰くリスペクトだとか何とか。
「転送できるのはスペックの都合上、二人となっています。転送先で変身できるか否かも現実と同じと思われます」
つまり、これを使えるのは私と和輝と華先生の三人。
それでいて一度に使用できるのは三人のうちの二人。
となると誰が使うかなんてわかりきっている。
私と和輝は互いに頷きあい、トゥアセプターとかいう白いブレスを受け取り片腕に装着。
「万が一の事があった場合、即座に強制終了し、現実世界へと戻すのでその点はご心配なく。しかし、状況からして失敗してからの再挑戦は不可能であると思っていてください」
「ああ、わかってる」
「あともう一つ、向こうでの変身時間はこの装置の処理性能に依存していますので、長時間の変身及び強力すぎる変身、同時に複数の強化変身は負荷上昇による強制終了を早めます。エクストリームチェイン、ハーフチェインなどであれば問題はないと思われますが、それ以上は禁止としてください」
「わかったわ」
つまり、アスモデウスギルディたちを破ったハーフからの強化変身は禁止。勿論、エクストリームチェインバーストも。
ママの見立てでは、敵のウイルス自体の強さは、属性力を有していないから大したことはないらしいけど、不安は少し残る。
でも、ここで私たちがやらなきゃこの基地はおろか地球全てが吹き飛んでしまう。
そんなことは絶対にさせやしない。
「ではお願いします」
みんなに見送られる形で私たち二人はトゥアセプターを起動。
特撮ヒーローめいたワードを唱えた私たちの身体は装置のモニターへと吸い込まれていった。
◇
光のチューブとでも言えばいいだろうか。
データ空間へとつながる道を突き進む俺たち二人が抱いた印象はそれとしか言えない。
異世界へ渡る空間とはまた違う、近未来的な通り道。
この先にあるデータの世界とはいったいどうなっているのか?
地球の命運がかかっているってのにワクワクが止まらねぇ。
やっぱし、俺はいつまで経っても男の子のままなんだなと自覚する。
道の先、データ空間の入口が眩しい光と共に見えてきた。
「手ぇ離すなよ!!」
「うん!!」
手を握り締め、光の中を突き進む。
次に俺が目にしたのは眩しいくらいの青空だった。
「う、うぅん……? あれここは……」
「げ、現実……?」
どこから来たのか? ここは何処なのか?
気が付くとそこはいつもみる景色と何ら変わらない。
日本の一般的な家屋、建物、道路が並ぶ住宅街。
何もかもが普通で真新しさを感じさせないその風景は俺たち二人が幻を疑っても仕方がない程に異常なし。
強いて言うならば、今立っているこの場所の細かい地理はピンとこないといった所か。
少なくとも俺たちが知っている街ではない。
「あれ、ここって……」
「ん? どした? 覚えでもあるのか?」
「う、うん。ちょっと……ね」
ハッキリではなく、うっすらと見覚えがあるといった程度の反応を示すティアナ。
そもそもここが本当にデータの空間なのかすらわからない俺からすれば何もかもがピンときていないのでハテナマークしか浮かんでこない。
果たして本当にここはデータの中なのかと思ったそんな時、トゥアールさんから渡されたブレスが光り、ゲームのウィンドウを思わせる画面が空中に出現する。
『どうやら問題なく辿り着けたようですね』
「ト、トゥアールさん!?」
『今、私たちはモニターを通じて二人の様子を確認しています。こんな形ですが、普段通りのナビゲーションは任せてください。ちなみにここは恐らく、基地内に残っていたいくつかの記録のうちの一つを再現したデータで構築された世界のようです』
どうやら、本当にここはデータの中って事か。
宙に浮くウィンドウを見たことで急に実感がわいてきた。
漫画とかアニメとかで見たゲームの世界に入る展開を思い出すぜ。
『現状、目標であるウイルスの反応は検知できません。ですが、この世界のどこかに潜伏しているのは確かです。こちらはこちらで反応を追うので、お二人も探索をお願いします』
「わかったぜ、また連絡してくれ」
そう言い終えるとウィンドウがブゥンと音と共に消える。
ますますゲームっぽいなオイと心の中で思いながらティアナと共にここがどの記録を再現した世界なのかを考える。
「私にだけ引っかかっているって事は、どうやら私の……いや、お父さんたちの記録って可能性が高いわね」
「だな。だがそうなるといつどのタイミングなのかだ。時期にもよるけど、場合によっては面倒だぜ」
このデータ空間もといデータ世界。
恐らく、そこにいた人々もちゃんと再現されているのだろう。
住宅街故に人は少ないが、ちゃんと通行人は存在しているし、俺たちの事も認知している様子。
流石にさっき見せた通信用のウィンドウまでは見えていないので、彼らからすればちょっとしたイレギュラーではあるが、そこまで騒ぎ立てるようなものじゃないと推測できる。
「にしても、嫌な記憶思い出すな」
「そうね。マモンギルディの夢世界そっくり」
しかし、それはこの世界が限りなく本物に近いという意味でもある。
流石にあの時のような事は起きないだろうと俺もティアナも意識を切り替える。
まずやるべきは情報収集。
再現された存在と言えど、喋りかける事が出来る以上は彼らもまた、この世界で生きる一つの生命であると認識した方がいい。
さて、どうするかと悩み始めたそんな時、
「――話は聞かせてもらったわ」
誰だお前はと思わず叫んでしまいたくなるそんな声が俺たちの背後から聞こえてきた。
振り向いた先に立っていたのは、ティアナ及びその親である総二さんの面影がある、一見普通に見えるけど何か違う不思議な雰囲気を感じさせる女性。
買い物袋を下げてる様子から見てその帰りなのだろうけど、一体全体なんなんだ……!?
俺がそうやって困惑する中、ティアナはその女性をみてハッとする。
「お、おばあちゃん……!?」
ティアナがそう呟いた。
という訳で次回は原作のあのキャラとか色々出てくるかも。
と言ってもティアナが生まれる場合の話なので、原作とはちょっと違うかもしれませんが……
サブタイ含めてとある特撮ヒーローをネタにしましたけど、原作者もアニメの小説版とかで関係してるしセーフ……かな?