俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第172話 因縁の対決 アナザーテイルレッド!!

 決闘に指定された場所は山奥の採石場。

 使われなくなって久しいこの場に訪れる者など、それこそ特撮か何かの撮影をする者たちくらいであろうが、ここは人里からかなり離れている且つ、先日前もってこの辺りが危険であると情報を流していたおかげで人の気配一つない。

 マシントゥアールから降りては周囲を見渡した俺とティアナは先日の挑戦状を思い出しながらもその時を待つ。

 

「和輝……」

 

「わかってる。アナザーテイルレッドの野郎は今日絶対にブッ倒す」

 

 俺たちにとって宿敵とも言える存在、それがアナザーテイルレッド。

 奴はティアナのツインテール属性を狙い、ティアナがこの世界、この時間にやってくる原因を作った元凶。一度ブッ倒した後は色々理由をつけて俺たちを助けてくれる事もあったが、久しぶりに面見せたと思ったら、アルティデビルと手を組みそして支配したとか言いやがった。

 

(明日の明後日、オレはテメェらに一対一の挑戦を申し込んでやる。勿論、拒否はさせねぇぜ)

 

 アルティデビルを支配したと語った直後、アナザーテイルレッドが叩きつけた挑戦状。

 奴はタイマンを所望するようだが、真意が理解できねぇ以上は警戒しておくに越したことはない。

 現在、この場にいるのは俺とティアナの二人だけだが、いつでも救援に入れるように華先生には基地の転送装置前で待機してもらっている。

 

「ねぇ和輝……」

 

「だからわーってるよ。アナザーテイルレッド、いやレイジの野郎は――」

 

「違う、そうじゃなくて」

 

 アナザーテイルレッドにばかり意識を向けていた俺であるが、その瞬間、今日初めてティアナへと意識が向いた。

 ティアナの表情には強い迷いを感じさせる。

 

「お前、まだ……」

 

「う、うん。実は……そうなの」

 

 ティアナの持つ迷い。

 それはアナザーテイルレッドとの戦いを拒みたい気持ちから来る物で間違いない。

 だがしかし、今はそんな事を言っている場合じゃねぇ。

 

「おいティアナ。いいか? 奴は俺やお前の属性力だけじゃねぇ。この全平行世界の属性力もといツインテールを狙う奴なんだ。それに今の奴はアルティデビルを奴らと手を組んじまったんだ。もうこれまでみたいに俺たちを助ける事はない」

 

「う、うん。それはわかってる……」

 

 頷くティアナだが、その口調と態度からして心からわかってるとは思えない。

 

「お前な……!!」

 

「わかってる……!! 私だってわかってる。でも、もしそうじゃなければいいなとは思わずにはいられないの」

 

 そう強く言い返されて俺はそれ以上は何も言えなくなる。

 ツインテールを想う時のティアナはいつも純粋だ。

 それは良いとか悪いとかじゃない。

 

「お前……」

 

「……ごめん。でも……そうよね、向こうから挑戦してきた以上は迎え撃つしかないのよね……。これまでもずっとそうしてきた訳だし」

 

 相手がエレメリアンとは違う人だからこうも迷うのだろうか? もしくはツインテールを通じて感情すらも感じ取れるティアナだけが感じる何かがあるのかも……

 そんな事をふと思ったその時、ティアナの表情が変わる。

 

「……!?」

 

「まさか……!!」

 

 ティアナにつられる形で空を見上げる。

 

「そうさ、そのまさかだぜ。クソガキども……!!」

 

「アナザーテイルレッド!!」

 

 そこに浮かんでいたのは、宿敵たる赤い狩人(アナザーテイルレッド)その人。

 ある意味では見飽きたその邪悪な笑みを浮かべる奴は刺々しいオーラを放ちながらゆっくりと地上へと降りてくる。

 

「うれしいぜぇ。ちゃんとこうやってオレとの約束を守ってくれてんだからなぁ」

 

「お前……!!」

 

「おっと、これ以上の御託は結構だぜ。オレはお前らを潰すために来たんだ。正真正銘の一騎討、それ以外の何がいるよ? ええ!?」

 

 挑発的な言葉を混ぜながら俺たちへと剣先を向けるアナザーテイルレッド。

 その瞳は「戦い」という二文字しかないと思える程に真っすぐ、俺たちを睨んでいる。

 俺はいつでも戦えるように装着されているテイルドライバーを構え、アナザーテイルレッドもまた自身の力を解き放たんとする。

 

「ちょっと待って!!」

 

 しかし、案の定と言うかティアナはそれに待ったをかけた。

 

「ああん? どうした総愛?」

 

「どうしたじゃない。そっちこそどうしてそこまで私たちとの戦いにこだわるのよ!!」

 

「こだわるだと?」

 

「そうよ!! あなただってわかってるはず!! 今はまずアルティデビルを倒し、この世界のツインテールを守るの!! なのにアルティデビルと手を組み、支配するだなんて……!!」

 

「なんだ? 失望したって言いたいのかぁ?」

 

 ティアナの想いを嘲笑うかのような視線を送るアナザーテイルレッド。

 奴の信念もまた、固い。

 

「前にも言ったろ? オレはオレ、アナザーテイルレッドだ。オレはツインテールを守る者でもあり、狩る者でもある。オレがどうしようがその時の気分次第でどうだって変わる。今はてめぇらガキ共との決着をつけたいだけさ」

 

「……ッ!!」

 

「それにな、そもそもわかりあうんなら、それこそ戦い合うってのが筋ってもんだろ? どうした? エレメリアンは平気でぶっ殺す癖に、人間のオレ、それもちょっと助けてやった程度で揺らぐのか?」

 

 こればかりは奴の言い分が正しい。

 以前も俺は言ったが、分かり合える奴と分かり合えない奴もいる。そもそも分かり合うには拳と拳を何度も交える必要があるのは誰が相手とて同じだ。

 

「これ以上は無駄だぜ。奴はやっぱしここでぶっ潰すに限る」

 

「う、うん……」

 

 自身に言い聞かせるかのように頷くティアナだが、やはりどこか納得はいっていない様子。

 それをみたアナザーテイルレッドはならばとばかりに言い放つ。

 

「だったら、無理やりにでもやる気になってもらおうか」

 

 何をするつもりだ?

 かつての経験からまた俺の命でも狙うのかと警戒する中、アナザーテイルレッドは周囲を見渡し、空の彼方へ叫ぶ。

 

「どうせてめぇの事だトゥアール!! 万が一の為にお仲間さんの一人か二人でも準備してんだろ!! 悪いが邪魔はさせねぇぜ!!」

 

 そして、アナザーテイルレッドは指をパチンと鳴らす。

 何をしたんだと身構えるも、これと言った変化は周囲に起きない。

 しかし、それは確かに効果があった。

 

『大変です!! 日本、いや世界各地に大量のエレメリアンが出現しました!!』

 

「何!?」

 

「そんな!?」

 

 テイルブレスを通じて聞こえてくるトゥアールからの報。

 どうしてこのタイミングでエレメリアンが出現したかなんてわかりきっている。

 

「お前……!!」

 

「おいおい、そう睨むなよ。文句言うならそこの総愛に言いな。オレはあくまでてめぇらとの一騎打ちを所望しただけなんだぜ」

 

 だからといって、関係ない人々を巻き込むような、それこそ人質にも近いこんな真似をするなんて許せない。

 ティアナの想いもあり、俺も少しコイツの事を分かり合える可能性もあるんじゃないかと思ってしまっていたが、やっぱしコイツだけは許せねぇ。

 アナザーテイルレッドは以前倒した時と同じ、悪のツインテールそのものだ。

 

「どうしてこんな真似をするのよ!!」

 

「だから言ったろ? お前さんがいつまでも煮え切らないからこうするっきゃないのさ。恨むなら甘い幻想を抱いた自分を恨むんだなぁ」

 

 なおもティアナを挑発するアナザーテイルレッドに俺は我慢が出来ない。

 それはティアナ自身も同じなみてぇだ。

 

「やっぱり許さない!! あなただけは絶対に!!」

 

「言っておくが、今さっき呼んだ奴らはここらずっと基地に軟禁されて欲求不満なんだ。オレが何を言わなくてもどんな暴走するかわからねぇぜ? 止めたきゃさっさとオレを倒すんだなぁッ!!」

 

「言われなくても!! 行くわよ和輝!!」

 

「ああ、こんな奴はここでぶっ潰すぞ!! 華先生はそっちを頼む!!」

 

『わかったわ!! こっちは任せて頂戴!!』

 

 世界中に解き放たれたエレメリアンは華先生ことテイルブルームに任せ、俺たちは目の前にいやがるアナザーテイルレッドを倒す為に心を一つに合わせる。

 採石場に巻き起こる紫の旋風が俺とティアナ、二人の身体を包み込み、二心一体の戦士、テイルバイオレットエクストリームチェインが降臨。

 

「行くぞ!!」

 

(アナザーテイルレッド!!)

 

 風を巻き上げ、飛翔する俺たち。

 

「へっ!! やってみなぁッ!! クソガキどもぉッ!!」

 

 対するはツインテールを羽ばたかせ舞い上がるアナザーテイルレッド。

 因縁の対決の火蓋は切って落とされた。

 

 

◇

 

 

 一騎討ちを求めるアナザーテイルレッドによって世界各地に出現させられたエレメリアンたち。

 気が付けばそこは、引きこもっていた自室ではなく、場所も知らぬ街中。

 何が起きたのかがまるでわからぬ彼らは暴れだす以前に困惑が勝る。

 それはこの地に出現させられたこの二体のエレメリアンも同じことだ。

 

「な、なぁ……? これってどういうことだ?」

 

「わ、わからん。しかし、ここは……」

 

 地理に疎い彼らは知らぬが、ここは日本より遠く離れた外国の地。

 テイルバイオレットたちの活躍も殆ど知らぬこの地に住む者たちは突然出現した怪物たちに恐怖と驚きを隠せない。

 

「ま、待つのだ!! 我々は怪しい者ではない!!」

 

「そうだ!! 我々とて何が何だかわからぬ!!」

 

 精神生命体たるエレメリアンの言葉は言語の壁を容易く乗り越える。

 がしかし、そもそもエレメリアンなんぞをろくに知らぬこの地の人々はそんな彼らの言葉に耳を貸さずに逃げていく。

 わからん。実にわからん。

 二体のうちの片方が首をかしげる中、もう一人が真相に気が付いた。

 

「そうか、わかったぞ。これはベリアルギルディ、もしくはアナザーテイルレッドのせいに違いないという訳か」

 

「ん? それはどういう事だ?」

 

「簡単な話よ。奴らはテイルバイオレットとの一騎討ちを所望していた。つまり、俺たちは邪魔なテイルブルームなどの注意を引く囮って事だろう。他の仲間の何人かが同じ事が起きているとメールで教えてくれたわ」

 

 なるほどと頷くもう一体のエレメリアン。

 しかし、それはそうと囮という事実には少しばかり気に食わない。

 

「ぬぅ、我らを出しに使うか」

 

「だが、これはチャンスとも言える。ここで大暴れし、奴らに恩と実力を売るチャンスだ」

 

「そうか、それもそうであるな」

 

 そして、アナザーテイルレッドの目論見通り暴れ始めるエレメリアンたち。

 それは各地に出現させられた他の者たちの大半もそうであった。

 今まで軟禁させられ続けた彼らの溜め込んだ鬱憤は凄まじい。

 皆が皆、自らが求める属性を目当てに好き放題動き回っては被害を拡大していく。

 その様は世紀末の荒くね者共のようであった。

 だが、そんな彼らの寿命は短い。

 

「それまでです!! それ以上はこのテイルブルームが許さない!!」

 

 トゥアールの用意する転送装置を使い、世界各地を飛び回るテイルブルーム。

 出現したエレメリアンたちは皆、今のテイルブルームからすれば口ほどにもない相手。

 一瞬の如き速度で制圧し、エレメリアンを倒して回るテイルブルームだが、その数はまるでもって減りやしない。

 

(負けないでね二人とも……)

 

 テイルバイオレットの二人に祈りを送り、テイルブルームは世界を駆けた。

 

 

◇

 

 

 紫と赤、二つの軌跡が天空にて激突する。

 風の力を宿す太刀であるウインドセイバーと炎の力を宿す奴のブレイザーブレイド。

 それらはぶつかるたびに火花だけでなく、小規模の爆発をも生んでおり、踏ん張りがきかないこの空においては中々に邪魔くさい。

 

「くッ……!!」

 

「どうやら空での戦いはオレの方に分があるみてぇだな!!」

 

「るっせぇッ!! まだ始まったばかりだろうが!!」

 

 風の力で気流を操り、流れのままにアナザーテイルレッドへ肉薄すると、斬りかかると思わせた後、柄の部分で素早く奴の懐目掛けて叩きつけんとする。

 しかし、奴はそれより一足早くツインテールを羽ばたかせ更なる上空へと逃げた。

 

「空中機動でオレに勝てると思っちゃいねぇよなぁッ!?」

 

「なッ……!?」

 

「隙ありィッ!!」

 

 自由落下の勢いを乗せた奴のブレイザーブレイドが俺たちのツインテールを狙う。

 死刑執行のギロチンの如き斬撃ではあるが、俺たちだって負けちゃいない。

 

(和輝!!)

 

「たりめぇだぜ!!」

 

 アナザーテイルレッドの動きの予測をティアナに任せ、俺は風の操作に集中。

 脚部のみを押し上げる上昇気流を発生させ、その勢いを乗せたサマーソルトキックで振り下ろしていたブレイザーブレイドを弾き飛ばした。

 

「何ッ!?」

 

(今よ和輝!!)

 

 ティアナがアナザーテイルレッドの体勢が崩れた事を教えてくれた。

 俺は回転を終えた後に体勢を整えそのまま迎撃の流れへ。

 ウインドセイバーを突きささんとするが、奴は間一髪で体を捻ってはそれを回避。

 そのままの流れでアナザーテイルレッドは距離を取るようにツインテールを羽ばたかせる。

 

「お~お~、随分と殺意の籠った攻撃だ」

 

「あったり前だろ。悪いが、俺はあん時の事を許すつもりはないんでな」

 

 ティアナがどう思おうが、コイツに対する怒りは戦えば戦う程沸々と湧いてきやがる。

 こんな事を言うのも何だが、正直言ってコイツに対する憐みの気持ちは万が一つもない。

 

(和輝、大丈夫?)

 

「大丈夫。別に怒りに飲まれちゃあいないさ。しっかし、空中(ここ)での戦いは奴の言う通り……か」

 

 空中における機動力は奴の方が高い。

 こればかりは紛れもない事実としか言いようがない。

 こちらは風を操る事で疑似的に空を飛んではいるが、奴はツインテールを自由自在に羽ばたかせ空を飛ぶ。俺たちにもっと力があれば風を操り奴の飛翔を妨害できるんだが、悲しい事に俺は自分を浮かせることで精いっぱいって訳だ。

 

「生憎、オレはそう優しくはないんでなぁッ!! てめぇらのツインテール、切り落とさせてもらうぜぇッ!!」

 

 弾き飛ばされたブレイザーブレイドの代わりとなるもう一本を生成するアナザーテイルレッド。

 そしてそのまま、こちらへ向かって飛翔する。

 

(来るわよ!!)

 

「ああ、きやがれ!!」

 

 再び始まる刀と剣のぶつかり合い。

 ティアナが動きをある程度予測するおかげで喰らいつけはするが、一発一発が重い。

 一度ブッ倒したあの時から俺たちも強くはなっている筈なのだが、その実力差はあの時とは比べ物にならない程に狭まっている。

 

「つ、強ぇ……!!」

 

「当たりまえだぁッ!! 何も強くなったのはお前らだけじゃねぇッ!! オレのツインテールだってな、日々日々進化しているんだよ!!」

 

(お父さんみたいな事を……!!)

 

「それにこの身体!! オレのテイルレッドはお前らのようなガキじゃねぇよな!! 大人様の力に敵うのかぁ!?」

 

 アナザーテイルレッドらしい人を小馬鹿にする言い方だが、オリジナルチェインと自称する大人のテイルレッドを思わせる今の奴の姿は、以前倒した本家に似た子供の姿よりも何倍もパワーもスピードも上だ。

 不足したであろう小回りも奴自身の戦闘テクニックがカバーしているせいで隙が無い。

 しかし、強くなったのは俺たちも同じ……!!

 

「だったら見せてやろうぜ……!!」

 

(そうね……!! 私たちのツインテールだって、あの時から沢山進化してきた!!)

 

 そっちがそうくるなら、こっちだってやりようはある。

 叩きつけられるブレイザーブレイドを捌き切り、少し距離を取った後にテイルドライバー右側面のスイッチへと手を伸ばす。

 

「テイルアーマー、総二の力でも使う気か!! だがさせねぇなぁッ!!」

 

 しかし、アナザーテイルレッドは見過ごしてはくれない。

 本家にはない多量の全方位斬撃装備(サテライトソード)ブレイザーセイバー全10基を俺たちめがけて発射する。

 

「やれよ!! セイバー!!」

 

 複雑な軌道の下で飛び交う刃は高速で迫るミサイルかのようだ。

 このままエクストリームブレイブへの変身を強行しても良くて変身完了と同時に八つ裂きだ。

 俺はテイルドライバーへ伸ばす手を止め、回避するための行動に移る。

 

「トゥアールさん!! マシントゥアールを!!」

 

『わかりました!! マシントゥアール!! ストライカーモード!!』

 

 飛び交うブレイザーセイバーを弾き避けていると、この空を切り裂く轟音が聞こえてくる。

 流線形の白いマシンはバイクではなく戦闘機。

 跨るのではなく、サーフボードの上に立つかのように乗り込み、脳波で動かすそのマシンは俺の愛車であるマシントゥアールの高速戦闘形態だ。

 

「一先ず任せるぞ!!」

 

(任せて!! そっちこそ頼むわよ!!)

 

 マシンの操縦に専念すべく身体の主導権は俺から私へと変わる。

 飛び交うブレイザーセイバーをかいくぐりながら上に乗った私は和輝が出す脳波で動かすマシントゥアールで高速飛翔。

 気流で空を浮くのと訳が違う超高速の機動はブレイザーセイバーでは到底追いつけない。

 

「けッ、トゥアールの野郎め……!! 厄介な真似をしやがる。だがな……!!」

 

 当然、アナザーテイルレッドはただ見ているだけでなかった。

 ブレイザーブレイドを片手にツインテールを羽ばたかせる。

 

「どれだけ速いマシンで動こうが、軌道さえ読んじまえばこっちのもんよ!!」

 

 そう言うや否や、アナザーテイルレッドはブレイザーセイバーを操作する。

 数基の刃が背中を追い、もういくつかの刃が逃げる先へ先回り。

 まるで私たちの動きを正確に把握しているかのような読みと完璧とも言える操作精度には私も和輝も舌を巻くしかない。

 

「和輝!! このままじゃ!!」

 

(わーってる大丈夫だ!! 俺を信じろ!!)

 

 わかったわ和輝……!!

 そう心の中で頷くと同時にマシントゥアールの速度のギアがさらに上がる。

 背後から迫る刃を置き去りにし、私たちを乗せるマシンは音速を超えた。

 

「な、なんつー速さだ……!!」

 

 アナザーテイルレッドが驚いている間も私たちは止まらない。

 向こうが視認できない内に私は私のすべきことをなすべく手を伸ばす。

 

「来て!! 私たちのツインテール!! テイルバスター!!」

 

 音速の領域だろうとやってくる極限双房銃テイルバスター。

 テイルバスターをバスターキャノンモードへと組み換え、その銃口を真正面へと向けて完全開放。

 和輝の操縦でマシントゥアールがUターンすると同時にそのエネルギーを解き放つ。

 

「吹き飛びなさい!! エクストームブラスト!!!」

 

「何ッ!?」

 

 放たれたエネルギーは追いかけ飛翔するブレイザーセイバーを飲み込み大爆発。

 軌道を読んで回り込もうとしていたアナザーテイルレッドも逆に撃ち落としてくるとは思ってもみなかったようであり、反応が遅れてしまったのがわかる。

 

「クソったれ……!! だが……何ッ!? いない!?」

 

 私たちを完全に見失うアナザーテイルレッド。

 ならばとばかりにマシントゥアールのスピードは再びトップスピードへ。

 アナザーテイルレッドの上空から奇襲をかけた。

 

「はあああああッ!!!」

 

「ッ!! 上か!!」

 

「遅い!!」

 

「くッ!? があああああっ!?」

 

 マシントゥアールの体当たりはアナザーテイルレッドに直撃した。

 天空より激突する白きマシンの威力は普通の体当たりとは訳が違う。

 隕石でも落ちるかの勢いで叩き落されたアナザーテイルレッドは採石場のド真ん中に大きなクレーターを作った。

 

(勝ったのか……?)

 

「いや、まだよ……!!」

 

 クレーターの中で立ち上がるアナザーテイルレッド。

 見た目こそ酷くボロボロだけど、その笑みはまだ諦めていない。

 マシントゥアールから降りて地に足を付けた私は、向かってくるアナザーテイルレッドを迎え撃つ。

 

「まだまだ終わらせねぇぜぇッ!! 最後に勝つのはオレなんだからなぁッ!!」

 

「だったら徹底的にやってやるわよ!!」

 

(勝つのは……俺たちだ!!)

 

 始まる地上での第二ラウンド。

 周囲の事をまるで気にしない激闘は爆風と共に地形を変えていく。

 こんな戦い、早く終わらせる……!!

 そう決心した私は属性力の制御に専念すべく、身体の主導権を俺へと渡してきた。

 

(お願い和輝!! アナザーテイルレッドを……レイジをやっつけて!!)

 

「任せろ!! コイツはここでぶっ潰す!! 来い!! テイルアーマー!!」

 

 身体の意識が俺へと渡るや否や、先程は妨害されてしまったエクストリームブレイブへの強化変身を使用。

 アナザーテイルレッドの野郎はさっきと同じように妨害しようとするが、今さっき撃墜された際のダメージがデカかったのかその動きは鈍く、俺たちの強化変身は完了した。

 

「テイルバイオレット!! エクストリームブレイブ!!」

 

 赤い勇気が燃え上がる。ツインテールを守る為に全開する。

 強化変身を果たした俺は二刀のウインドセイバーを構え、アナザーテイルレッドを圧倒する。

 本来ならばブレイブチェインの力はアナザーテイルレッドにとって対策済みなのだろうが、極限の力であるエクストリームと合わさったエクストリームブレイブは奴であろうと対処できない。地上に降りてしまえば猶更だ。

 さぁアナザーテイルレッド。これでお前は終わりだ……!!

 

 

◇

 

 

 繰り広げられるテイルバイオレットとアナザーテイルレッドの死闘。

 戦う場所がもし、都市部であったのならその被害は想定されるレベルを遥かに超えていると言える。

 嵐の如き風と灼熱を帯びた黒ずんだ炎が今日この場において何度交差したかこの二人ですらわからない程なのだ。

 

「その力、オレが与えてやったってのに生意気なぁッ!!」

 

「てめぇこそ!! いつまでも悪趣味な姿しやがって!!」

 

 叩きつけんとする大剣の一撃を二刀の刃で受け流しては、返す刀でアナザーテイルレッドへとダメージを与えていくテイルバイオレット。

 するとアナザーテイルレッドは負けじと足を繰り出す。

 しかし、勢いに乗ったテイルバイオレットにそんなものは通用してはいなかった。

 エクストリームブレイブとなり、より高まったツインテール属性の力は、ティアナによって動きの一挙手一投足まで先読みされるのだ。

 テイルバイオレットは繰り出された蹴りを膝を使う事で受け止め弾く。

 

(チッ、やっぱしそうは簡単にいかねぇよな……!! このガキ共が……!!)

 

 苦し紛れの反撃すらも防がれ、逆にカウンターを貰ってしまうアナザーテイルレッドは本人がそう心の中で悪態程に追い詰められていた。

 何度目かの攻防の果てにアナザーテイルレッドは吹き飛ばされる。

 表情にこそ出してはいないが、内心はやはり諦めが強い。

 

(流石はお前らの娘とそいつが認めた男だ……オレなんかじゃ結局この程度か……)

 

 そう自虐しながら振るうブレイザーブレイドではテイルバイオレットに届く筈もない。

 戦いの行方はもう見えたと言っても過言ではない。

 テイルバイオレットは決着をつけるべく二刀のウインドセイバーを燃え上がらせる。

 完全開放されたエネルギーが炎と嵐を巻き起こし、その熱量はアナザーテイルレッドの放つそれを遥か凌駕する程に達する。

 

「これで終わりだ!! 行くぞレイジ!!」

 

 爆炎と爆風を背に猛突するテイルバイオレット。

 変身者である和輝とティアナの二人はおろか、この戦いを見守るトゥアールたち全員がその勝利を確信する。

 遂にアナザーテイルレッドの最後がやってきたのか。

 しかしその直後、アナザーテイルレッドの目に再び光が宿る。

 

「だけどなぁッ!! そう簡単にはいかねぇよなぁッ!」

 

「ッ!?」

 

 その急変に何か不吉な予感を覚えるテイルバイオレットの二人。

 だが、ここで止まる理由もない。

 必殺のエクストームブレイザーがアナザーテイルレッドの全身を焼き切る。

 

 

 ……筈だった。

 

「何!? なんだこの感じ!?」

 

(凄く、変な感じ……!!)

 

 今まさに必殺技が炸裂したであろうその瞬間、予感は現実へ変わる。

 アナザーテイルレッドの全身から発せられる禍々しく気味の悪い、ツインテール属性とは違うまた別の属性力が、テイルバイオレット渾身の必殺技をまるで最初からなかったかのように霧散されたのだ。

 不思議な事にその属性力の力は今まで見てきたどのエレメリアンが愛するそれらとはまるで違う異質な雰囲気に溢れている。

 身の危険を本能で感じ取ったテイルバイオレットはたまらず距離を取った。

 

「な、なんだアレ……」

 

(わからない……。ママ!!)

 

『この反応は……!? データが表示されない!?』

 

 基地にてその力の解析を行おうとするトゥアールであったが、機械はまるで壊れてしまったかのように無反応。

 

「ハッハッハ!! そりゃあそうさ!! 何てったって、この力の根源は無その物!! これこそがてめぇらを超えるオレの新しき力だぁッ!!」

 

 アナザーテイルレッドが高笑いを上げる。

 そして、いつの間にか握られていた黒いデバイスを掲げた。

 

「テイルオン」

 

 そう呟くようにデバイスを起動させると、アナザーテイルレッドの姿が変わる。

 血のように赤い深紅はより深く、よりどす黒く、装甲の各種赤きパーツはその色を濃く変え、僅かに残っていた白は邪悪な黒と無機質な銀に。何者をも拒絶するその禍々しい変化はツインテールが悲鳴を上げているようにも感じさせる程見るからに痛々しい。

 全身に赤黒いスパークが走る。

 ツインテールを狙う狩人はその変身を完了させ、溢れ出る危険な力を屈服させた。

 

「どうよ!! これこそが無属性(ゼロ)の力!! テイルレッドを超える、オレだけの姿ってなぁッ!!」

 

 無属性を纏う赤いツインテールの戦士。

 皮肉にも、それはかつて多くのエレメリアンを率いたとある人物が到達した姿に近づいた物であった。

 

 

 

 

 

 

 

「フン、ようやくなったか。全く、出し惜しみが過ぎるんだよ」

 

 戦いを遠くから見つめる二つの影。

 一つは正体不明の謎のエレメリアン、その隣は黒き悪魔ベリアルギルディ。

 

「精々役に立てよ。実験動物(アナザーテイルレッド)よ」

 

 この戦い、最後に笑うのは果たして誰なのか……

 それは神のみぞ知る事であった。




次回含めて今回は今までの力を全てぶつけ合う内容にしたいと思い、こんな感じになっています。
次回はアナザーテイルレッドの逆襲……かな?
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