俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
先週は風邪ひいてました(喉痛かった……)。
大地が震え、空が歪み、空気が震える。
目の前に降り立つ赤き狩人は俺たちの誰もが予想だにしていなかった禍々しき変化を遂げた。
「ハハハ!! これがオレの新しい力だぁッ!!」
より刺々しい装甲を纏うアナザーテイルレッドが高らかに声を上げる。
放たれるオーラはその見た目に違わぬ威圧感を放っており、触れると全身と言う全身が痛みのシグナルを送ってくる。
見ているだけでわかる。あの力、あの姿は今までの何よりも危険だ。
「ティアナ……お前わかるか……?」
(うん、わかる。あれは……危険……すぎる!!)
ティアナも何とか平静を保とうとしているが、声が震えているのがわかる。
たった視界に入れただけでここまでの危機感を与えるあの力の根源はなんだ?
確か奴はゼロの力? とか何とか言っていたがそれがこの力なのか?
「トゥアールさん!!」
『今、大至急で解析している所です!! しかし、この力は……!?』
通信越しでもわかるトゥアールさんの焦り声は間接的にこの力の異質さを表している。
あのトゥアールさんがまるで理解できない様子を見せるだなんて早々ない。
それほどに奴の使用したこの力は異質なんだ。
「はッ、頼みのトゥアールもどうやらこの力はわからねぇみてぇだなぁ?」
「くッ……!!」
「ハハハ、そう睨むなよ坊主。なぁに、オレもこの力の細かい理屈だとか知らねぇんでな。悪いが体験してみてくれや!!」
ヤバイ、来る!!
直感がそう告げるよりも早く、アナザーテイルレッドは目の前に肉薄してきやがった。
防御や回避なんて間に合う訳がない。
まるでスローモーションでもかかっているかのような感覚の下で吹き飛ばされる俺は、今どうやって攻撃されたのかがわからないどころか、そもそも攻撃をされたのかすらもわからない感覚のまま地面に叩きつけられる。
「ッ!!」
「オイオイ、さっきまでの威勢はどうしたよ? ええ!?」
追撃を仕掛けんとするアナザーテイルレッド。
奴の手に握られたブレイザーブレイドが振り上げられたのが、今度は辛うじて見る事が出来た。
俺は咄嗟にウインドセイバーを盾にする。
「そらッ!!」
「くそっ!!」
ガキンと激しい音と共にぶつかる二つの刃。
さっきまで激しい火花と共に何度も拮抗してはぶつかりあうそれらであったが、今となってはそれはもう過去の事のようだ。
まるで歯が立たない。
打ち合った瞬間にそれがわかる程、力の差は歴然であり、俺は方はいともたやすく弾かれ、そのまま体勢を崩される。
装甲と同じように刺々しく変化したブレイザーブレイドは本家の使用する剣とは似ても似つかねぇ。
俺たちのツインテールを断ち切らんとその鋭利な刃は振り下ろされる。
「あばよッ!!!」
「くそった――させる……もんですか!!」
その時、ティアナの意識が俺のを押しのけ現れる。
そして、そのままテイルバイオレットもといティアナは横に飛ぶことで振り下ろされた斬撃に間一髪で回避に成功。
ティアナの持つ卓越した感覚と反射神経に救われた形だ。
「悪ぃ!! 油断した!!」
(別にいいの!! こっちだって、こっちにだけ集中してなかったら危なかった!!)
再び意識を交換し、アナザーテイルレッドと距離を取る。
「今の……総愛の人格か。成程、坊主が戦いに集中し、本当にやばくなった時だけに備えていやがったって訳か」
あともう少しというタイミングで避けられたというのに酷く冷静に分析するアナザーテイルレッド。
しかし、それがかえって不気味だ。
ヒャッハーしていない時の奴ほど恐怖を感じない事はない。
「まぁいいか。別にてめぇらがどう戦おうがオレのこの力に勝てる訳がねぇんだからなぁ」
(ねぇ、和輝……)
「ああ、わかってる……」
しかし、今更だが、今の奴から感じるこの独特なオーラはなんだ?
初見からずっと刺々しく危険な感じとは例えてみせたが、何と言うかそれだけじゃないというか、そうでもないというか何というか……
言ってしまえば、ないと言えばない。しかし、ある。
気味の悪い感覚だぜ。目と感覚で認識が一致しねぇ。
まるで、存在しない物を無理やり存在させているような異質感とでも言うべきか。
「なぁティアナ? お前もわかるよな? この違和感」
(う、うん。和輝が言いたい事はわかるよ。私もさっき出てちょっとわかった……。でもそれより……)
「ん? どうした?」
(いや、ごめん。気のせい……かな)
俺とは違う何かが気になる様子を見せるティアナ。
俺としては気になることがあるのなら隠さずに言ってほしいが、今はそんな事を言っている場合でもない。
今まさに奴の攻撃は再開される。
「さぁ行くぜぇッ!! ガキ共ぉッ!!」
「来る!!」
(うん!!)
再び向かってくるアナザーテイルレッドはまたもブレイザーブレイドを叩きつけんとする。
何度も何度も同じ手ばかり。
しかし、パワーアップした奴の一撃は重く鋭い。
こちらとしても受け流して守り切るのは至難の業だ。
ティアナのアシストの下で感覚を研ぎ澄まし、一発一発を紙一重で躱していく。
「守ってばかりじゃ勝てねぇぜぇ!?」
「わーってんだよ!! くそッ……!!」
「これはどうよ!!」
斬撃を受け止めたその瞬間、奴の長くしなやかな脚が脇腹へと襲い掛かる。
「ぐッ!?」
なんて威力だ。
たった一撃だってのに意識が飛びそうになる。
何とか耐えきり、片腕でその脚を掴む。
「ほう……」
「うあらっ!!」
掴んだ脚を力任せに投げ飛ばす。
こればかりはいくらパワーアップ果たした奴と言えど、完璧に対応しきることは出来なかったのか、着地こそすれど隙は十二分に生まれた。
「いくぞティアナ!! 今度はこっちの番だぜ!!」
(え、ええ……!! 全力で行きましょ!!)
ここからは俺たちのターン。
こうなった以上は出し惜しみなんてしてられない。
さっきトドメを刺すべく放ったエクストームブレイザーを更なる力で叩きこむっきゃない。
「「
二度目の完全開放は一度目を遥かに凌駕する熱量を帯びていた。
これが俺たちの出せる全力なんだと奴に見せつけるべく燃え上がる炎は爆風を巻き起こし、その勢いを乗せる。
言うなればこれは強化エクストームブレイザー。
エクストリームブレイブの状態で出せる最大の一撃であり、どんな敵であろうとも喰らう以上は無傷では絶対に済まない威力を誇る。
「おうらぁぁぁーーーッ!!!」
振り下ろされる二刀の炎斬。
アナザーテイルレッドは避ける素振りはおろか、防御する素振りすら見せない。
これならいける。
そう確信した瞬間、奴の不敵な笑みが見えた。
「甘いぜ坊主。そーいうのはな、フラグって言うんだぜぇ?」
何言ってんだよこの野郎。
まさか、さっき感じた違和感の正体か!?
その時、ティアナが心の中で声を上げる。
(待って和輝!! 力が抜けてる!!)
「何!?」
そんなバカなと驚愕しながら放つ必殺の強化エクストームブレイザー。
しかし、それはティアナの叫んだ通り、奴の身体に叩きこむ直前となってその勢いが完全に無くなってしまい、奴の目の前で不自然なくらいピタリと止まってしまった。
「言ったろ? フラグだってなぁ」
「何をしたんだ……!!」
「ヘッ、さあなぁッ!!」
鞭のように振るわれる回し蹴りが俺たちを吹き飛ばす。
直後、トゥアールさんからの通信が入った。
『今のでわかりました!! レイジの手に入れた力の正体は無属性!! 存在しているようで存在していない、属性力の対極に位置する負の力その物です!!』
普段の冷静さを一切感じさせないその言葉遣いからわかるその力のヤバさ。
無属性? 負の力その物?
同じように困惑する俺たちへ向けてアナザーテイルレッドは笑う。
「そうさ、これが
◇
人の思考や嗜好、ありとあらゆる個性や好みといった目に見えない様々な要素。それらを愛する心から生まれる精神エネルギー、それが
しかし、この無属性は属性力という枠組みに入りながらそれらとは全くの対極に位置するイレギュラーの塊。
無個性とも違う、ないはずの属性、無属性。
和輝とティアナ、テイルバイオレットの二人ではその存在そのものがあり得ないイレギュラーの名を聞いてもいまいちの実感を覚えない。
ただわかるのは明らかに異質であるという事だけである。
「無属性……? どういう意味だ……」
「オイオイ、これだけ見せてもまだわからねぇか? お勉強の出来ねぇガキは嫌いだぜぇ?」
「うっせぇ!! ヤベェもんに手を出したって事くらいわかんだよぉッ!!」
ウインドセイバーを握り締め突貫するテイルバイオレット。
一見すると挑発にまんまと乗っただけのように見える一手だが、和輝とて決して馬鹿ではない。この突撃はあくまで勝つための布石だ。
本当の目的は今言われた無属性の弱点を探る為。
どんな力であっても、先程のように必殺技クラスの大技を無力化するには一定の条件を有するだろうと考えた和輝の考えは決して間違いじゃない。
しかし、今回ばかりは相手が悪い。
「てめぇらがどう歯向かおうが!! 無駄なんだよぉッ!!」
「うるっせぇ!!! ッ……!?」
ウインドセイバーを突きささんとするが、まるで力が吸い取られたかのように動きが鈍る。
アナザーテイルレッドはただ高笑いを上げながらの棒立ち。
なのに攻撃はどうやっても届かない。
(ダメよ和輝!! 理屈はわかんないけど、力が無くなってる!!)
『和輝君、一度下がってください!! このままでは奴の思う壺です!!』
「くっ……!!」
心と通信、双方からの撤退指示を受け、テイルバイオレットは攻撃を中断し距離を取る。
それに対してアナザーテイルレッドは攻撃を仕掛けるではなく、ただニタニタと笑みを浮かべるだけだ。
それが和輝にとってたまらなく腹が立つ。
だが、このままやっても無駄なのは事実だ。
「クッソ、何かねぇのかよ!! てか無属性って何なんだよ!! 厨二病患者みてぇな事言いやがって!!」
「お~お~、好き勝手言ってくれるなぁ。まぁ、この呼び名を決めたのはオレじゃねぇし、そもそも、名前なんてどうだっていいさ。どうせこの力は世界からも拒まれた禁忌の力だ。このオレの姿もフォビドゥンチェインとでも名付けるのも悪くねぇ」
調子乗りやがってこの野郎とばかりの目つきで睨みつけるもアナザーテイルレッドの圧倒的優勢には変わらない。
このまま和輝に戦わせ続けるのは危険と判断するティアナがその意識を交代させる。
「ゴメン、ちょっと和輝は下がってて……!!」
(お、おい!!)
「大丈夫、時間稼ぎするだけだから!! ママはあの力の詳しい解析と解説を和輝に!! 何かヒントがあるかもしれないから!!」
『わ、わかりました!! 総愛こそ気を付けてください!!』
「うん!!」
顔つきの変化したテイルバイオレットはアナザーテイルレッドと向かい合う。
ウインドセイバーを捨て、彼女自身の得意とする肉弾戦を行うかのように構えを取る。
「おいおい、何の真似だ? 今のオレと殴り合いが成立するとでも?」
「さぁね、でも、時間稼ぎにはなるでしょ?」
生意気なガキだぜとばかりに笑うアナザーテイルレッド。
対するティアナは別の想いを抱いていた。
「(やっぱり、錯覚なんかじゃない。レイジの……レイジさんのツインテールが苦しんでいる)」
それを感じたのはつい先ほどの事。
アナザーテイルレッドが無属性の力を解放し、フォビドゥンチェインへと進化を遂げた時の事からである。
一度はただの錯覚であると感じたそれであるが、いざこうやって対面してみればわかるのはティアナのツインテール属性が父親同様の高さを物語る。
「どうして……どうしてあなたはそんな風にできるの……」
「あぁん? どういう意味だぁ?」
「どうしたもこうしたもない!! あなただってツインテールを愛する人でしょ!! なのにどうしてここまで傷つける事に躊躇がないの!! 他人も!! 自分も!!」
飛び掛かり仕掛けるのはテイルバイオレット。
想いを乗せた言葉と共に拳を繰り出すが、やはりそのどちらも届く筈もない。
「ハッ!! この力をどう使おうが、てめぇらにどう当たろうがオレの勝手だろ!!」
「うっ……!!」
繰り出す攻撃は力を失い、逆に返ってくる攻撃はその何十倍の威力を持つ。
乱暴に返された腹部への蹴りは何とかガードしきるも、その衝撃は今までのどんな敵が行ってきたそれより強く、どう踏ん張っても後ずさりは止められない。
「いいかぁ? 何度も言うが、オレがどうしようがオレの勝手さ!! オレはアナザーテイルレッド!! もう一人のテイルレッド!! もう一人の総二って訳だ!!」
ブレイザーブレイドの斬撃と同じく放たれる蹴りの乱舞がテイルバイオレットを襲う。
意識を担当するティアナはその常人離れした反射神経と、同じく常人離れした高いツインテール属性からなる動きの予測をフルで使い何とか紙一重で避け続ける。
「違う!! あなたはお父さんなんかじゃない!! あなたはあなた!! お父さんはそんな風にツインテールを扱わない!!」
ティアナの目に見えるのはアナザーテイルレッドの姿だけではない。
その禍々しき無属性の力で自らを縛り上げる痛々しいツインテール。
「何を分かった事をきく!! オレも総二も本質は違わねぇ!! オレはアナザー!! 本質以外の何もかもが正反対なのがオレなのよ!!」
「そう。でも、だからってどうしてこうも!!」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと……、御託はいらねぇんだよぉッ!!」
ブレイザーブレイドにて薙ぎ払われるテイルバイオレット。
これも防御こそ出来、致命傷こ避けたが、そのダメージは到底無視できない。
このままでは融合している和輝にも危険が及ぶと判断するティアナはその痛覚をも引き受ける。
(お、おい!! 何やってんだよ!!)
「大丈夫!! 今は私にやらせて!! 和輝さえ無事なら、私だって死にはしないから……!!」
それはそうでも、だからとて和輝からすれば到底首を縦に触れる事ではない。
ティアナを下がらせるべく自分が変わろうと意識を戻そうとする和輝であったが、ティアナの意思は和輝よりも強く、その行為を拒絶する。
「大丈夫……まだやれる!! それに、アナザーテイルレッドを止めるのは私の願いでもあるんだから!!」
何が彼女をそこまで駆り立てるのか。
これまで何度も助けてくれたからであろうか?
それとも本当は優しい心の持ち主と信じているからであろうか?
答えは否。
ティアナがアナザーテイルレッドに向かっていくのはただ純粋な願い。
敵も味方も関係なく、ツインテールを守りたいという想いからである。
「なら粉々に打ち砕いてやるぜぇ!! このオレがなぁッ!!」
振りかぶるブレイザーブレイド。
その凶刃が狙うのはティアナもとい、テイルバイオレットの力の根源であり、彼女の全てであるツインテール。
「守ってみろ!! やれるもんならなぁ!!」
音速にも迫る高速の斬撃。
首でも刎ね飛ばすかのような鋭い一撃は和輝はおろか、ティアナですらその反射神経の上をいく勢いだ。
しかし、ティアナの想いは負けない。
「させない!! 誰にも!! 奪わせない!!」
「何!? 白刃取り!?」
あまりにも危険な防御手段だが見事テイルバイオレットはその凶刃を白刃取る。
そして、そのままブレイザーブレイドを跳ねのけると、カウンターで拳を叩き込む。
「くッ……!!」
後退るアナザーテイルレッド。
無属性の力によって無力化された拳はアナザーテイルレッドの身体に届く筈もなく、今のもダメージとしては全くのゼロ。
しかし、アナザーテイルレッドはその気迫に押されてしまった。
「ツインテールを粗末に扱うあんたに!! 負けるつもりはない!! 絶対に!!」
力を振り絞るティアナ。
しかし、限界は刻一刻と近づいていた。
◇
『いいですか。私の見立てですと、あの力、
ティアナが表に出てアナザーテイルレッド相手に時間を稼ぐ中、俺はトゥアールさんからの通信を聞きながら奴の能力の対策を考えている。
つっても、正直言ってまるでわからねぇのが実態だ。
現状、トゥアールさんからの解説でわかったのはあの無属性の力がテイルギアのもたらす力とは正反対であるって事くらい。
望むなら俺が表に出てティアナには休んでほしい。
でも、アイツはそれを望まない。
何なら、俺を思ってかダメージや疲労の殆どをこちらに来ないようにも感覚を遮断までしてくれている程だ。
(クッソ、持ちこたえくれ……)
『大丈夫ですか? こちらの声は聞こえていますカ?』
(ああ、すまねぇ。俺は大丈夫だ。続けてくれ……)
トゥアールさんの追加した新機能にて、心の中の方とも通信できる今、俺が集中するのは戦いの結果じゃねぇ。
ティアナが頑張っているのは感覚を遮断されていようが伝わってくるからな。
『今、解析を終えた所、どうやら攻撃が届かないのは無属性のコアが半自動的に自身以外の全てを文字通り無に帰しているからのようです』
(じゃあ何だ? 常時超強力なバリアでも貼っているって事か?)
『わかりやすく言うとそうなりますね。あの変化したギアの装甲は自分以外の全ての属性を吸収し無力化する。ただのバリアと違うのは受け止め防いでいるというより、属性力全般のエネルギーその物の強制的な無にする。そのような特性を持っていると思われます』
(なるほど、つまり属性力に対する圧倒的な防御兵装、さしずめ
数週間前、華先生が撃破したベルフェゴギルディを思い出す。
あれも言ってしまえば似たような超防御の能力を有する難敵だった。
ただ違うのは、ベルフェゴギルディの能力と違って、発動させるための条件や制約といった類のものがない所と、そもそものエネルギーを無にしているって所か。
『何度も言いますが、無属性は本来ならば存在しえない真逆の存在です。故にだと思いますが、どれほどの力をぶつけても超える事は不可能。むしろその特性を考えると、こちらの力に合わせてその力を強くする可能性すらもあります』
(じゃあ、ますますどうしようもねぇじゃねぇか……!!)
曰く、無属性は極限の負の数であり、これを正に戻すにはただ属性力でぶつかっても無理。
ならば属性力を使用していない純粋な破壊力でならとも考えるが、それはそもそもテイルギアの力がそれを許さない。
まさに反則。お手上げだ。
「くぅ……!! あぁ……!!」
「ハッ!! 負けるつもりねぇんじゃねぇのかぁッ!?」
わずかだが聞こえてくる戦いの音。
そちら側への意識を回していないから細かくどうなっているかはわからねぇが、やはりティアナは苦戦している様子だ。
だが、ティアナは諦めていない。何ならその闘志はより熱く燃え上がっている。
俺はティアナを信じて考えに集中する。
しかし、やっぱし名案なんて出てこねぇ。
(クソ……そもそもこっちからの攻撃は効かねぇ癖に向こう側からはやりたい放題って何なんだよ……!!)
『そもそも、能力の上昇値が本来予想されるレベルを逸脱しすぎています。無属性はあくまでこちら側の干渉を無にしているだけではない……?』
トゥアールさんがそう頭を悩ませているが、確かにその通りだ。
さっきも言ったが、こっちのは無効にする癖に自分のは逆に強化するなんて意味不明だぜ。
他の属性を無にする無属性……か。
ん? ちょっと待て……
(なぁ、ふと思ったんだがよ。そもそも前提がおかしくねぇか?)
『と、言いますと?』
(いや、確かさ、テイルギアってそもそも使用者の属性力とギアのコアに使われている属性力を共鳴させて強くなるってシステムだよな?)
『はい、それがなにk――ッ!! 成程、そういう事ですか!!』
閃いたトゥアールさんのディスプレイを叩く音が聞こえてくる。
どうやら当たりだったみてぇだな。
数秒も経たず、解析を終えたであろうトゥアールさんの声が響く。
『わかりました!! レイジが使用したあの新型のギア。あれは属性力を共鳴させ力を発揮する物ではありません。あれはコアに使用されている無属性と使用者の属性力を反発させて力を発揮しています!!』
(てことはつまり、レイジの野郎の属性力が高いからあんなに強いって事か!?)
『理論上はそうなります。ですが、本来のシステムの真逆をいくシステムです。あれを調整したのは余程の天才だと推測できますが、危険性は相当な物の筈です』
余程の天才か……
思いつくのは七つの性癖を送りこんで来た黒幕ベリアルギルディ。
アルティデビルと手を組んだ以上、繋がっている可能性は高い。
しかし、にしても属性力の共鳴ではなく反発か……
どこまでも真逆にして対抗してくるなんて何の運命だよ全く……
(なぁ聞くが、反発なんかさせてレイジの野郎は無事なのか?)
『いえ、それはあり得ません。自らの宿す属性力は、言わば神より与えられたもう一つの命。反発させ痛めつけるのは自分自身の属性力を捨てる行為と何ら変わりのない背信行為。使い続ければいずれ限界は来ます』
実体験がある故に説得力のある言葉だ。
つまり、あの力は確かに強いがその力の特性上、ずっとそのままでいられる可能性はまずないって事か。
『それにそもそも、いくらレイジのツインテール属性が高かろうと、あれを続けていればいずれ自分自身の属性力も無になるでしょう。そうなれば終わりです』
冷たく言い放ったトゥアールさん。
トゥアールさんの気持ちは誰よりも複雑故、その本当の想いまではわからない。
兎に角、攻略の糸口はつかめた。
(わかったぞティアナ!! 一先ず代われ!!)
「和輝!? わ、わかった……!!」
そして、俺の意識が再び表に出る。
距離を詰め、襲い掛かるアナザーテイルレッドを前に二刀のウインドセイバーを手にし応戦を開始する。
「ッ!? てめぇは坊主の方か!!」
「ああ、俺のティアナが世話になったなぁッ!!!」
「惚気た事を言う!!」
繰り出されるブレイザーブレイドの一撃はやはり重い。
これが属性力の反発がもたらす力なのかと圧倒されそうになるその瞬間、アナザーテイルレッドに異変が起きた。
「ぬ"ッ!?」
突如として力が抜けるアナザーテイルレッド。
やはり来たか、力の代償が。
ブレイザーブレイドをはね飛ばし、反撃の二連斬を叩き込むも、
「クソ……やっぱ解除しねぇ限りダメか……!!」
「ぬぅあぁぁぁッ!!!」
「あっぶねッ!!」
苦し紛れの横薙ぎ一閃を大きく跳躍する事で回避。
少しでも反応が遅れれば致命傷だったが、何とか無事だ。
すかさず奴との距離を取る。
(ねぇ和輝? それでどうするの?)
「どうするも何も、こいつは持久戦だ。話は聞いてるか?」
(うん、戦いながら少しずつだったけど、わかってる。無属性の危険性、属性力の反発……)
流石、ティアナだ。
あの状況下でもこっちにも少しとは言え意識を避けるとはな。
まぁ、俺より地頭いいし、当然か。
「兎に角、今は耐える。そうすりゃ奴だって限界は来る。さっきのだってその証だ」
アナザーテイルレッドを目を向ける。
奴はいつも通りの表情で俺たちへその邪悪な笑みを絶やしていないが、心なしかいつもの余裕が段々と崩れている気がしない訳でもない。
やっぱり、アイツもアイツで苦しんでいるって事か。
(ねぇ和輝? もう一度だけ、わがまま言っていい?)
「ん? なんだ?」
(アナザーテイルレッドを……いや、レイジさんを助けたい。レイジさんのツインテールをあの力から救ってあげたい!!)
やっぱりな、お前ならそう言うと思ったよ。
ある程度、予想していた言葉を聞いて俺はティアナを呆れたらいいのかわからねぇ。
でも、奴のツインテールを救いたい……か。
それに関しては少しだけだが同意できる。
「ああ、やってみせようぜ。俺たちのツインテール属性はあんな無属性に負ける訳がねぇ!! あの野郎にもそれを見せつけてやろうじゃねぇか!! そうだろ!?」
(うん!!)
目的とその手段を再認識し、立ち向かう俺たち。
恐らくだが、決着の時は近い。
その時が来るまで、耐え抜くだけだ……!!
◇
和輝たちテイルバイオレットがアナザーテイルレッド相手に持久戦を開始した頃、テイルブルームは未だ全世界に解き放たれたエレメリアンたちの対処に当たっていた。
「覚悟しろテイルブルーム!! 俺たちだってやるときゃあやるんだ!!」
「そう……。なら容赦はしない!!」
向かってくる有象無象のエレメリアンたちを次々と倒していくテイルブルーム。
鎮圧が終わり次第、悠香らの通信を受け別の場所へと転々とする。
一体一体の強さは七つの性癖などに比べれば大したこともなく、ここまでの戦いで強くなったテイルブルームからすればそう面倒な相手たちではない。
だが、数という点に関しては面倒この上ない。
先程入った通信でアナザーテイルレッドが無属性と呼ばれる禁忌の力をふるっているのは知っている。
テイルブルームとしては出来る限り早く、その援護に向かいたいのだが、全世界に散っていったエレメリアンの数は中々に終わりが見えてこないのだ。
「片霧さん!! テイルバイオレットは大丈夫なの!?」
『大丈夫……とは言い難いですけど……。それよりも先生!!』
「わかってる!!」
次の転送先は何の因果か外国ではなく日本。
それも和輝たちが戦っている場所からそう遠くない箇所だ。
しかし、ここが終わってもまだ他の場所で助ける求める声は多い。
悔しさと煩わしさを覚えつつテイルブルームは現場へと急ぐ。
「ち、違うのじゃ!! わしはただ、気が付いたらここにいただけで!!」
「関係ありません!!」
おろおろと慌てていたのは下半身がワニになった老人風のエレメリアン。
少しでも急がねばと焦るテイルブルームは相手側に戦意がなかろうとも今日に限っては容赦はしない。
エレメリアン、アガレスギルディの最期が迫らんとしたその時だった。
「待ちたまえ。今は我々が争う状況ではない……!!」
「あなたは……!!」
「この混乱、同胞の不始末は私に任せてもらおう」
空より降り立った白き翼。
その姿はテイルブルームも見覚えがあるあのエレメリアンであった。
いつまで引っ張るんだよって感じですけど、次回で多分あの男が復活します。
キャラクター紹介32
アナザーテイルレッド(フォビドゥンチェイン)
武器:ブレイザーブレイド ゼロ、他
必殺技:エクスキューションブレイザー、パニッシュメントブレイザー
対
本来ならばどのような属性をも無にしてしまう無属性という特殊な属性を核とする都合上、属性力の共鳴による強化ではなく、その反対である属性力の反発を元に出力を高めている。
だが、その使用上、使用者の負担は同じように使用者及びそのツインテールに負荷を強いるフォーライザーチェインなどのそれらと比べ物にならない程であり、長時間の使用は使用者の命とツインテールその物を削っていく正に禁忌に相応しい力である。