俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第2話 青紫の戦士

 やばい……これはあれだ。完全に見失ったってやつだ。

 あの子を追いかけはじめたのが5時過ぎだったはず。現在6時、既に1時間近く探していることになる。

 町中を走り回ったが手がかり一つ見つかりゃしない。そんな自分自身を猛烈に攻めたくなる。

 このままでいいのか。あの素晴らしいツインテールを持つ少女に二度と会えないぞ。と

 おっといけねぇ。これだと俺はあの子のストーカーみたいじゃねぇか。今の俺じゃとてもじゃないが匠のことを笑えない。

 俺はあくまでも落とし物を届けるために探しているんだと気持ちを切り替える。

 しかし、6時になり仕事終わりの人達が増えてきたせいか探しだした時と比べ、大通りは人で溢れかえっていて捜索は困難を極めていた。

 この状況で人探しなんて、学校のプールに落とした1円玉を見つけるレベルで無理な話だろう。

 だが今の俺は全くと言っていいほど諦めていない。

 絶対に見つけるんだ。

 そう意気込んで捜索を再開した。

 日が沈みかけている空が俺を焦らせる。

 あれ? そういえば何か忘れているような気が……

 

 

 

 

 その時は突然やってきた。

 お目当てのあの子が路地裏に足を踏み入れるその瞬間、俺の目は見逃さなかった。決して見間違えなんかじゃない。

 

「見つけたぁぁぁ!!」

 

 俺は大声で叫び、全身のリミッターを解除したかのように全力で走った。

 凄く横腹が痛い。

 こんなに速く走ったのはいつ以来だろうか。

 ようやく俺はあの子に追いつくことができた。

 

「あなたさっきの――」

 

「やっと見つけたぜ」

 

 俺は肩で息をしながら話しかけた。

 意気込むのはいいけどこんなにばててしまうとは……

 これは日ごろからもっと運動をしねぇとな。

 

「あなた、もしかして――」

 

 やっと気づいたか。

 俺は君がさっき落としたこのブレスレットを届けにわざわざこの広い町を走り回ったんだ。

 

「ストーカーね!!」

 

 やべぇ……恐れていたことが現実になった。

 幸いな事にここは路地裏で今2人しかいない。

 もし大通りでこんな事言われれば最悪の場合、警察沙汰になったかもしれない。

 

「絶対そうよ!! ここなら襲えるとでも思っているんでしょ!!」

 

 言い返したいがまだ横腹が痛くて声がでない。

 

「早く消えなさい。さもなきゃ容赦しないわよ!」

 

 彼女は拳を握りしめ、威嚇してきた。

 

「違うって。俺はただ――」

 

「違うって何よ。さっき私のことをじろじろ見てたじゃない。」

 

 もう完全に最初の可愛らしいイメージは吹き飛んでいた。この子、正直言ってかなりキツイ性格していると思う。まあ俺もあまり褒めらるような性格ではないことはわかっているが……

 

「それは悪かったけどさ」

 

「何よ案外あっさり認めるのね変態」

 

 どうして落とし物を拾って届けるだけで変態呼ばわりされないといけないんだ。ここまで言われたい放題言われるのは癪に障る。

 

「誰が変態だ!!」

 

「こんな所まで追いかけてくる時点で変態よ!!」

 

「大体な、俺はお前みたいな貧乳なんか興味ねぇよ!!」

 

「レディに対して何てこと言うのよ!!」

 

 彼女の顔が赤く染まった。

 先に仕掛けたのは彼女のほうだ。こうなったら徹底的に言ってやる。

 

「そんな体付きでレディだって? よくいうぜ」

 

「なんですってぇぇぇ!!」

 

 俺は完全に当初の目的を忘れ、言い争いをしていた。

 その時だった。

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 奥からだろうか。

 女性の悲鳴が聞こえた。

 するとさっきまで俺と言い争いしていた彼女は一目散に駆け出した。俺も気になるので彼女と一緒に追いかける。

 

 

 

 

 悲鳴が聞こえた場所に向かうと1人のメイドさんと思われる女性が倒れていた。

 

「おい!! 大丈夫か!?」

 

 咄嗟に駆け寄って息があるかを確かめる。気絶しているだけのようだ。

 安心しホットする。

 

「やられたわ。属性力(エレメーラ)が奪われてる」

 

 属性力? 聞いたことない言葉が聞こえた。

 

「気を付けて。まだ奴らは近くにいるわ」

 

「奴ら? この人を襲った犯人か?」

 

 その時だった。物陰から何かが彼女を襲った。彼女は突然の襲撃を難なく躱した。

 

「でてきなさい!! エレメリアン!!」

 

 言葉を失った。物陰から姿を現したのは正に怪物としか言えない存在だった。

 身長は2メートル。カラスとフクロウを足して2で割ったような奇妙な鳥の顔。黒く引き締まった体と背中に生えた羽。足は犬の足? のようにも見える。

 

「ただの人間如きが我の攻撃をかわせるはずなどない。何者だ貴様」

 

 地の底から聞こえてくるような不気味な声だった。

 

「私はあなたたちを倒し、ツインテールを守る者よ!!」

 

 はい? 何かすごく変な言葉が聞こえた気がする気。

 ツインテールって言ったか? 聞き間違えか?

 

「確かに貴様からは凄まじいツインテール属性を感じる」

 

 聞き間違いじゃないのかよ。なんだよツインテール属性って。また夢でも見てるのかよ俺は!?

 怪物が放った光弾の炸裂音で俺はこれが現実であることを再認識する。

 物影に彼女が連れ込んでくれたおかげで助かった。

 

「大丈夫?」

 

 なんだろう。さっきまでの彼女とは違い、安心感をかんじる。と思ったら、今度は1人で慌てだした。

 

「ちょっとまって。……ない。……私のテイルブレスが……ない」

 

 おいおい、さっきまでの安心感と緊張感を返してくれ。慌てる彼女を見て俺の中に不安が生まれる。

 ん? あれ? ブレスってブレスレットのことだよな。これはもしかして――

 

「これのことか?」

 

「なんであなたが持っているのよ!?」

 

「お前がさっき落としたから届けにきたんだよ!!」

 

 やっと誤解が解けたぜ。最初から話を聞けよ。

 彼女は俺からテイルブレスを受け取ると物影から出て怪物と対峙した。

 

「覚悟しなさい!! テイルオンッ!!」

 

 勇ましく叫ぶ彼女の体を光が包み……こまなかった。

 

「あれ? 故障? おーい私のテイルブレス~もしもし~」

 

 おい、どうして盛り上がる場面でここまで盛り下がる状況に変えれるんだ。

 その時、怪物は彼女にむかって再び光弾を放った。

 

「危ねぇっ!!」

 

 体が勝手に動き、彼女を突き飛ばしていた。

 

「とにかく逃げるぞ!!」

 

 俺は彼女の手を取り、全力で路地を駆け抜けた。

 

 

 

 

「撒けたのか?」

 

 後ろを振り向くが怪物は追ってきてはいない。とりあえず撒いたことにほっとし座り込んだ。

 今更気づいたが、この路地かなり広い上に複雑に入り組んでいる。

 時刻ももう7時を過ぎているくらいだろうか……空はもう真っ暗だ。スマホを怪物が居た所に落としてきたみたいだから確認の仕様がない。

 

「さっきはありがと……」

 

 「別に構わねぇよ、それより名前を聞いていいか? まだ聞いてなかっただろ?」

 

 いつまでも彼女や、この子では呼びづらいから名前を聞いてみることにした。

 

「…………ティアナよ……」

 

 随分と暗い表情で答えた。名前を言うのがそんなに嫌なのか?

 

「俺は涼原和輝だ。 てかティアナってことは外国人かよ!? あんた!?」

 

 考えみればで地毛が赤紫色の日本人がいるわけないよなぁ……

 

「この名前は……って別にいいわ。外国人なんかじゃないわ。私は……異世界人よ」

 

 さらっと凄いこと言われた気がするが、あんな怪物を目の当たりにした今だからすんなりと受け入れられた。

 

「ごめんなさい……話も聞かずにストーカーや変態呼ばわりして……」

 

 謝っているティアナの顔はすごく可愛いかった。 

 やっぱし見た目はいいよな、見た目は。

 

「いや、変態なのは事実かもな。君のツインテールに見惚れたのも追いかけた原因の一つだし」

 

「ツインテールを褒めてくれて、ありがと……」

 

 ただ見惚れただけなのに随分嬉しそうだ。ツインテールを指でいじってるし。

 

「俺こそごめん……貧乳呼ばわりして……さ」

 

「もう気にしていないわ」

 

 なんとか許してもらえたようで安心した。ていうか冷静になって思い返すと俺って結構最低じゃね!? 見惚れて追いかけたくせに興味ないとか言ったり、女性の体形をからかったり。

 

「そういや、あの怪物は何なんだ? なんで襲ってくる?」

 

 話題をさっきの怪物のことに変えることにした。

 なんなんだよさっきの怪物は……

 

「奴らはエレメリアン。 人の心の輝き、属性力を奪うの。襲ってきたのはきっと私のツインテール属性が原因かもね……」

 

「属性力ってなんなんだ?」

 

「属性力ってのは簡単に言うと何かを好きだと想う気持ちが精神エネルギーとして凝縮したものよ。例えばツインテール属性を失うと、その人ツインテールに対する情熱を失ったうえでさらに一生ツインテールをすることができなくなるの」

 

 なるほどだからさっき倒れていたメイドさんの髪はほどけていたんだな。てか一生ってなんて罰ゲームだな。さらにそれに失うとそれに対する情熱なんかも無くなっちまうのか……最初は馬鹿馬鹿しいと思っていたけど、好きな物に対する情熱を奪われるなんて俺は嫌だ。

 あれ? なんでツインテールが優先なんだ? 他にも色々あるだろ普通。

 

「ツインテールは全属性の中で最強なの」

 

 勝手に心を読まないでくれよ…… てか!?ツインテールが最強!?どんどん頭が混乱してきたんだが……

 

「最強のツインテール属性を核に動くのがこのテイルギアなんだけど……」

 

 ツインテールが好きなことがこのテイルギアを動かす条件なら俺も該当しているのではないのか? 

 そう思い声をかける。

 

「俺に貸してくれよ、俺だってツインテールは大好きだ。もしかしたら――」

 

「男には無理よ、変身できるはずがないわ」

 

 そうきっぱり無理と言われるとチャレンジしたくなるもんだ。

 ティアナからテイルブレスを受け取った俺は、さっきティアナが言った言葉を叫んだ。

 

「テイルオン」

 

 何も起きなかった。もしかしてと思ったがやはり男では駄目なのか……

 

「ほら言った通りでしょ」

 

 ティアナのドヤ顔がすごく腹立つんだが。

 

 

 

 

「鬼ごっこはもうお終いかぁ?」

 

 

 周囲を見渡すがどこにもさっきの怪物はいない。もしやと思い空をみやげると……怪物が翼をはためかせ飛んでいた。

 

 

 

 

 完全に油断してた。まさか空からくるなんて……

 

「大人しくツインテール属性を我に差し出せ。 我はアルティメギルの者ほど優しくはないぞ」

 

「渡すもんですか!!」

 

 ティアナは近くにあった鉄パイプを握りしめ怪物に突撃した。

 しかし、結果は良くなかった。ティアナは怪物の放つ衝撃波に吹き飛ばされ壁に激突し苦悶の声を漏らす。

 

「どうすんだよ……」

 

 勝ち目はない。戦闘においては素人の俺から見てもそれは明らかだった。

 しかしなんだろうこの気持ちは、怪物に対する恐怖ではない別の何かに対する恐怖だ。

 

「では頂くとしようか」

 

 怪物の手から金属の輪が出現した。

 それを見て確信する。あの金属の輪こそが恐怖の正体。

 どうやって属性力を奪うのかはわからないがあの金属の輪を使うのだろう。もしかして……俺は奪われることを恐れているのか……? 奴にティアナの属性力を……ツインテールを……

 

「お前らなんかに奪われてたまるかよぉ!!」

 

 自分でも驚くほど体は素早く動いていた。

 ティアナが落とした鉄パイプを握りしめて突撃していく。

 恐怖がなくなったと言えば嘘になるが、それよりも俺は奴に属性力を奪わられることの方が怖かった。その想いが俺を動かしていた。

 

「人間ごときが」

 

 怪物の放った拳は鉄パイプを簡単にへし折り、俺の体を吹き飛ばした。

 

「ぐはっ!!」

 

 喉の奥から胃酸が逆流してきやがった、だがそれをかき消すくらい口の中は鉄の味で充満していやがる。

 体もあちこちで悲鳴を上げている。

 

「和輝っ!!」

 

 ティアナが俺を心配し、抱き起した。

 

「なんで動かないのよ!? お願い!! 動いてよ!!」

 

 ティアナは泣いていた。とても悔しそうな顔で。

 こんなのでいいのかよ……何も出来ずに奪われるのを見ているだけなんて……

 いいや、そんなの…………絶対にいいわけない!!

 俺は痛む体に鞭を打ち立ち上がる。

 

「ティアナのツインテールは…………俺が…………俺が守るッ!!」

 

 その時、ティアナのテイルブレスが眩い光を放った。

 ここに居る全員、あまりの眩しさに目を閉じる。

 

「なんだよ……これ?」

 

 目を開けた俺の目の前には紫のベルトのような物があった。

 バックルの中央には薄緑の不思議な石が埋め込まれていてとても神秘的だ。

 触れてみるとわかった。こいつなら……戦える!!

 

 俺がやろうとしたことを察知したのか、怪物は襲い掛かってきた。

 さっきまで重症を負っていた者とは思えない身のこなしで怪物の攻撃を受け流し、ベルトのような物を装着する。

 より過激になる攻撃を受け流しながら俺は右側面のスイッチを押し込み、頭に浮かんだ変身機構起動略語(スタートアップワード)を叫んだ。

 

「テイルオン」

 

 青紫の光が俺の体を包み込み変身を完了させる。

 首から下を紫のインナースーツが覆い、その上に青紫の装甲が包み込むように装着されていた。

 全身から力があふれ出てくる。凄い力だ。これなら奴とも戦えるだろう。

 俺は体中を見渡した。力強さとしなやかさを両立したような腕に足。そして少し控えめ胸……胸?

 股間を触るが16年間慣れ親しんだあの感触がない。よく見れば視界の左右に青紫の長い髪が揺れている。それに俺の髪はこんなに長くはない、ましてや青紫に染めてすらいない。

 もしかしてと思い俺は近くの窓ガラスに映った自分を確認する。

 青紫の装甲を身にまとったツインテールの女の子、それが変身した俺の姿だった。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 甲高くなってしまった俺の声が夜の路地に響いた。

 

 

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