俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
総二:ティアナと同じ反応(でもティアナよりマイルド)
愛香:自分の役の扱いにブチギレる
慧理那:特オタ目線のツッコミ、自分の役の扱いにはノーコメント?
トゥアール:テイルブルー役をいじり倒し、愛香に鉄拳制裁(いつもの)
唯乃:一番熱中して見る
他:自分にあたる役が出てないことが嬉しいような悲しいような複雑な気持ち
結局あの後、俺とティアナはDVDの続きを見る気にはなれず時間が過ぎてしまった。今はもう就寝時間。俺は居間で布団を敷いて毛布にくるまっていた。
何故、居間で寝ているのかというと昔、おやっさん家に泊まる時に使っていた部屋が現在はティアナの部屋になっているからだ。流石に夜、女子と一緒の部屋で寝るようなことはしないしできない。かと言って40過ぎのおっさんと一緒の部屋で寝るのも何かが違う。んで居間に布団を敷いて寝ているってわけだ。
「にしても寝れねぇな」
俺は朝は苦手だが、夜はそうじゃない。むしろ夜の方が体も動くといった方がいいかもしれない。要するに夜行性ってやつだ。この特徴は涼原家代々続く物の一つだとか何とかばあちゃんが言ってた気がする。
それにしてもテイルブルーの暴れっぷりは凄かった。編集してあれだったら実際はどれくらい恐ろしいんだ。いつか会うことがあるのなら本物はもっと普通であることを祈る。あ、戦闘中の映像は声以外本物だったか……
他にはティアナの反応も気になる。あの様子、ティアナはツインテイルズを知っていた可能性がある。いや、知っていたなんてもんじゃねぇ、ツインテイルズと親しい関係にあった可能性のほうが高ぇ。やっぱティアナはツインテイルズの世界出身じゃねのか? でも、唯乃さんは紫のテイルブレスを持っている奴なんて知らないって言ってたしなぁ…… エレメリアンと戦っていてその存在をツインテイルズの一員である唯乃さんが認知できていない訳ねぇし、やっぱ気のせいかぁ……?
寝る為に布団を被りながら頭の中に色々なことを思い浮かべるが全くといっていいほど寝れる気配がしない。このままじゃ時間を無駄にしているような気がする。
暗闇の中、ガバっと布団を跳ね除け充電中のスマホを手に取る。そして時刻を確認、1時52分。学校が始まる時間まで後、約7時間。起きないといけない時間なら5時間半。
「埒明かねぇし……ちょっくら起きるとしますか」
暗闇の中、記憶を頼りに壁についている電気のスイッチを辿る。
「確かこの辺りだったはず……」
カチリと音がし、天井の電気が点いて居間は明るさを取り戻す。カーテンは全部閉めているが外から見れば誰かが起きているのが丸わかりだろう。
さて、電気を点けたはいいがここからどうしたものかねぇ。正直、何も考えずとりあえず電気を点けてしまったしなぁ。このままティアナやおやっさんを起こす訳にもいかねぇし、どうっすかな……
神がいるのならきっと「やることがないなら早く寝ろ」と言うだろう。そう思ってしまうくらい俺は何も考えていなかった。
「……」
何かないかと探す途中、眼が何かを捉えた。それは居間の端、丁度テレビの目の前にぞんざいに放置されている分厚いケース。そう、『空想戦姫テイルレッド』のケースだ。
何か不思議な力に引っ張られるようにケースに向かうとそれを拾った。
「たっく……しょうがねえな……」
このまま寝れずに時間が過ぎるより、どんな内容であれこのDVDを見てるほうがマシかもしれない。最悪、テイルブルーのシーンはカットするなりなんなり対策の仕様はいくらでもある。
リモコンを操作し、テレビの電源を入れる。寝ている奴らの為にも音量は最小限に留めるのを忘れない。起動すると同時にメニューボタンを押してメニュー画面に移行する。
本当……このDVDは妙に凝ってるというか何というか。レンタルビデオ店などで置いてあるDVDと何ら変わらない代物だな。
それから少しばかり時間が経った。
『でたな! アルティメギル!! 変身!! とぉっ!!』
勇ましい声と共に飛び上がり、画面から姿を消す。そして即座に場面が切り替わり、テイルレッドがエレメリアンと対峙している場面に切り替わる。
よく見るとエレメリアンの姿も少し違うし、テイルレッドもさっきまで感じていたエレメリアンが変身した人間特有の違和感がまるでない。だが、それ以外はほぼ違和感なし。架空のドラマと現実の映像をよく編集しつなげれたなと感心してしまう。
「まぁでも、そこはテイルオンだろうが……」
最初から思ってたんだけどよ。ハーゲンティギルディの野郎……ヒーロー大好き、テイルレッドたん大好きとか何とかぬかしている癖に、全体的に中途半端でリサーチが足りてない。変身のさいの言葉やキャラそれぞれの仕草などがだ。
俺自身、ブルーとイエローは会ったことも話を聞いたこともないから知らない。だからこのDVDのブルーとイエロー役が本物とどれだけ違うのかわからねぇ。だが、レッドは唯乃さんとの会話で大体の人物像は把握しているつもりだ。ここに映っているテイルレッドはどちらかというと唯乃さんの方が近いと思うくらい違和感がある。
『赤き正義の炎!! テイルレッド見参!!』
相変わらず口の動きと台詞がかみ合ってない。ま、そこは置いておくとして、俺は正義という言葉に引っかかる。
「正義ねぇ……」
考えてみれば、俺たちは正義のために戦っているのだろうか?
俺は正義のヒーローになりたかったのか?
ふと自分自身に問いかける。
「……いや、違うな」
俺が変身したのはツインテールを属性力を守ることだ。それは文面だけ見れば馬鹿馬鹿しくてとてもじゃないが真面目な正義とはいえないかもしれない。でも、俺は守りたかった。
ツインテールを……ティアナのツインテールを
「って……どうしてそこでティアナが出てくんだよ!!」
顔が赤くなっているのが鏡を見なくてもわかる。何だかとても恥ずかしい。
テレビ含めた全ての電気を消すと布団に深くもぐりこんだ。
◇
ここは何処だろうか……
ティアナは夢を見ていた。夢宮ヒカリのライブがあった夜と同じような夢。それは自分自身の記憶の1ページ。
(これは……)
視界が晴れてくると同時に見えてきたのはテレビ。映っているのは『空想戦姫テイルレッド』ではなく普通の特撮ヒーロー番組、日曜朝に子供たちが見るような番組だった。
視界が晴れると同時にティアナは辺りを見渡す。そこはなに一つおかしな点がない平凡な家のリビングだった。
(……また小さい。それにこの人……)
よく見るとティアナの体は前回同様幼く、誰かの膝の上に座ってテレビを見ていた。
その誰かは金髪のツインテールが特徴の女性。金髪でツインテールだというのに和服が似合うであろう凛とした風貌に思わず目が奪われる。また、服を着ているというのに巨乳なのがすぐにわかる。
おそらくだがこの女性もテレビを見ているのだろう。いや、もしかしたらこの番組を視聴しだしたのは私ではなくこの人なのでは? そうティアナが思うくらい真剣にテレビの画面を見つめている。
「ちょっと!! また、朝っぱらから人の家に上がり込んで何見てんのよ!!」
ティアナの耳に女の声が聞こえてきた。ティアナが声のした方向に振り向くと、濃い青というより紺色に近い色の髪をツインテールに結んだエプロン姿の女性が腕を組んで立っていた。ちなみにその女性は現在のティアナ同様、胸が清々しいしいほどの絶壁ぷりが特徴であり、金髪の方とは胸囲の格差がありすぎて涙が出そうになるくらいほどだ。
この状況、幼いティアナも含めてツインテールが三人もいる。とてもじゃないが普通の家庭の風景とはいえないだろう。
「ちょっと静かにしてください。今、いいとこですの」
金髪の女性は振り向かずテレビの画面に集中している。
ティアナは何となくだが理解した。その人たちがとても大切だった人だということを。
「それにまた――も一緒に……あたしの娘に何見せてんのよ!!」
「子供がヒーロー番組を見るのは当然のことですわ」
「――は女の子でしょ!!」
「わたくしは小さい頃からヒーロー番組は見ていましたわ」
「あんたが特殊なだけでしょうがー!」
紺色のツインテールの女性が喋った単語の中でティアナが聞き取ることができない物が一つだけ存在した。
(今の……もしかして私の名前……? それにこの人が私のお母さんなの?)
ティアナは一つの核心に迫ろうとしていた。
だが結局、ティアナは自身の名前もこれ以上の新しいことも知ることは出来ずに夜が明け、目覚めてしまうのであった。
◇
ハーゲンティギルディが再び現れると予告した5月最後の土曜日が訪れた。俺は結局、『空想戦姫テイルレッド』を全てを見終えることはなかった。
「どうするのよ。確か、今日ハーゲンティギルディが現れるんでしょ」
エプロン姿のティアナが話しかけてきた。今はアラームクロックで昼食を頂いた直後だ。
「どうするのこうするもブッ倒すしかねぇだろ」
「そんなことはわかってるわよ。結局、見きることできなかったんだし……」
「お前、律儀なやつだな。元々、ハーゲンティギルディと俺たちは敵同士だぜ? 言うこと全て守る必要なんてねぇだろ」
「確かにそうね……」
ハーゲンティギルディは人々迷惑をかける今までのエレメリアンと違う。ただ純粋にヒーローに憧れを持ち、悪役として倒されたいという変わり種中の変わり種のエレメリアン。おそらくだが、ティアナはそんな奴を敵として見ることがあまり出来ていないのだろう。
「ま、野郎には物申したいこともあるしな……今日はガツンと言ってやらぁ」
そう言い終わると同時にティアナのポケットから聞こえてくるエレメリアン出現のブザー音。俺は急いで外に出てバイクを準備、ティアナもエプロンを脱いで後を追う。
「場所は?」
「位置的に郊外の採石場ね」
「たっく……何処までもヒーローオタクな野郎だぜ」
ティアナがヘルメットを被り後ろに乗り込んだことを確認すると、ハーゲンティギルディが出現したとされる郊外の採石場へバイクを走らせた。
「わ―はっはっはっはっは!!」
人っ子一人としていない無人の採石場。そこには人ではなくエレメリアン、ハーゲンティギルディの高笑いが虚しく響き渡っていた。ハーゲンティギルディは崖を高くそり立つ崖を背に仁王立ちだ。
やっぱし、相変わらずこのノリかよ……
そう言いたくなる気持ちをグッとこらえ、ハーゲンティギルディ待ち受ける開けた場所へ崖上から飛び降りる。高さにして約20から30メートルはあろう崖ではあるが、テイルバイオレットに変身している俺に恐怖はない。
「きたか!! テイルバイオレット!!」
見事にハーゲンティギルディの目の前に着地。ハーゲンティギルディは精一杯低い声で歓迎する。
「約束通り来てやったぜ、てめえをブッ倒しにな」
今回は前回のような不意打ちはなしだ。ティアナほどではないが俺も別にハーゲンティギルディに対する敵意はない。ただただ面倒くさくて五月蠅い奴、でもどこか憎めない。そんな奴に不意打ちといった卑怯な真似はしない。
ハーゲンティギルディの目の前で一呼吸置くと、フォースリヴォンを触れてウインドセイバーを持ち飛びかかる。ハーゲンティギルディは驚いた表情のまま攻撃を回避し、後退る。
「おい、ちょっとまてーー!! テイルバイオレット!! 名乗りはどうしたんだよ名乗りは!! 『空想戦姫テイルレッド』を見たんじゃないのかよ!! ならヒーローである君が名乗るなんて当然の事わかるだろ!! 名乗りもなく武器をだして攻撃しに来るなんて何事だよ!!」
少し予想ついていたことだが、やはりハーゲンティギルディは俺が名乗りもせず攻撃したことに怒っているようだ。正直、今回は不意打ちなしだから勘弁してほしかったけどな。
「あのなぁお前――」
「それにその喋り方!! 全く変わってないじゃないか!! それじゃ正義のヒーロー失格だよ!! そんな乱暴なヒーローはテイルブルーだけで十分だ!! いや……ブルーとイエローはヒーローとはいえない!! レッドたんこそが理想のヒーローなんだよ!!」
この野郎……!! 俺の言葉に耳を傾けむけないどころか相変わらずの早口で自論をまくし立ててきやがる。てか、ブルーとイエローはヒーロー扱いじゃないんだな……
「だから――」
「いいか!! 僕はあのDVDでテイルブルーとテイルイエローをだしたのはだね、こんな振る舞いをする奴はみんなからどのように見られているかを表現しているんだぞ!! ブルーとイエローは酷い扱いにしてレッドのヒーロー像をより目立たせるためなのに……!! それなのに……!! テイルバイオレット、君というやつは……!!」
『聞いてないわね、あれ』
崖上で見ているティアナがテイルギアを通して一言。ティアナの言う通りハーゲンティギルディは全く俺の話を聞こうとしていなかった。
さっきは憎めない奴だとか何とか思ったが、ここまで無視されると怒りが溜まって来る。堪忍袋の緒が切れそうだ。
「だ~から!! あのな――」
「不良少女がヒーローなんて僕は認めないぞ!! 絶対に――」
プッツンと頭の中で何かがキレた音がしたような気がした。俺は衝動のままにハーゲンティギルディに飛び掛かり、全力の拳を顔面目掛けて叩きこむ。
「だらぁぁ!!」
「認めな――はぎゃあっ!?」
「さっきからうっせぇんだんだよ!! グダグダグダグダとてめえの言い分ばかり好き放題言いやがって!! いいか!! 俺は不良なんかじゃねぇ!!!」
『え!? そこなの!?』
ティアナの驚く声が聞こえてくる。どうやら俺が不良扱いされて怒ったことに驚いているようだ。
「俺はな!! そこらにウロチョロするガラの悪い不良どもと一緒にすんじゃねぇ!! 俺は真面目な高校生だっつーの!!」
高校一年生の頃だった。俺と匠はよく不良と間違われたことがあり、地元の不良グループに因縁つけられ面倒なことが沢山あった。その結果、彼女は作れず、高校生だというのにクリスマスなどでボッチを経験するはめになるわ、警察のお世話になりばあちゃんに迷惑かけたりと散々だった。だから俺は不良扱いされるのが嫌いだ。
まぁ、別に不良扱いされたからといってぶちギレるほど俺はやばくない。今回は溜まりに溜まった鬱憤も原因だ。
『いや、どう見ても和輝も匠も立派な不良です。はい』
ティアナが何言っているのかは聞こえてこない。それほどに俺は目の前にいるハーゲンティギルディに集中していた。
「でもその口調からして――」
「それになぁ!!」
ハーゲンティギルディが何かを言いたそうに口を開いたが、俺は大声でそれをかき消し喋ることを続ける。
「お前は何か勘違いしてるぜ。ツインテイルズはどうだが詳しいことは知らねぇが、少なくとも俺は正義のために戦っているんじゃねぇ!!」
「え!? 正義のために戦うヒーローじゃないの!? じゃあ一体、何のために……?」
少し脱線してしまっていたが、ようやく本題に入ることができた。そう俺はこれを言いに来たんだ。このオタク野郎のエレメリアンに物申すために。
「俺はな……ツインテールを……ツインテールを守るために戦うんだ!! そこに正義感とかいった物はねぇ!! あるのはただ好きなものや好きだという気持ちを守りたいってだけなんだよ!! わかったかこのヒーローオタクの根暗野郎が!!」
勢いでヒーローオタクの根暗野郎とか口走ったがこれは余計だったかなとほんのちょっとばかし後悔。まぁ、当たってるから別にいいか。
「後な!! 他人に自分の理想やルールを押し付けんじゃねぇ!! 俺はこういう奴なんだよ!! これからも何言われようともぜってぇ、変えねぇからな!!」
正直、一番大事な部分はこれな気がする。好きなことへのこだわりがあったとしてもそれを自分以外の他人に押し付けるような真似は良くない。
『要するに自分のスタイルを意地でも変えたくないから、屁理屈をついているってことね』
本音を言うと確かにそうなんだけど、それは言わないでくれよ。だって以前、テイルフェニックスに合わせてヒーローっぽく振る舞ったのすげー恥ずかったんだし。
「……」
黙って聞いていたハーゲンティギルディは未だに一言も喋らず、黙り続けている。テイルバイオレットが正義の為ではなくツインテールの為に戦っている事実に余程ショックだったのだろうか……? それとも説教が効いたか……?
「かっこいい……」
「ああん?」
ぼそぼそとハーゲンティギルディの口が動いた気がした。何か言ったような気もしたのでハーゲンティギルディに近づいて耳を傾ける。てかよく見たらハーゲンティギルディの野郎、泣いていやがる。
「かっこいい!! かっこいいよテイルバイオレット!!」
「あーなるほど、かっこいいって言ってたのかよ……ってかっこいいだぁ!?」
『嘘でしょ!?』
どうしてこの流れでそうなっちまうんだよ!! おかしいだろうが普通!!
感動の涙を流すハーゲンティギルディを見て心の中でツッコまずにはいられなかった。ティアナも同じ気持ちなのかツッコむ声が聞こえてくる。
「僕が甘かったよ……君は紛れもなく僕の大好きなヒーローその物だ!! 口調や仕草が型破りなだけでちゃんとした正義の熱い心を持っているヒーローだよ!!」
「だーから……俺は正義とか別にどうでもいいっての……」
もうツッコむのも無駄だとわかってきた。変なスイッチが入ってしまったこの野郎は止められない。このヒーローオタクのエレメリアン、ハーゲンティギルディを。
「よし、
「モケーー!!」
ハーゲンティギルディは立ち上がると岩陰に隠れてカメラを回していた戦闘員に指示を出し、俺に向かって突進してきた。牛の姿をしたエレメリアンらしくその突進の迫力は中々のものだ。
「テイルバイオレット全力でかかってこい!! 僕は全てを受け止めて見事に散ってみせる!!」
「結局、やられるのが目的かよ!!」
ぶれない奴だよ……コイツは……
だが、その心意気、気に入ったぜ。こちらも全力で迎え撃ってやるよ!!
「行くぜティアナ!! 飛び切りのを頼むぜ!!」
『はいはい、わかったわよ』
少しウンザリ気味のティアナから送られてくる大量のツインテール属性が俺の全身を駆け巡る。俺はウインドセイバーを地面に突き刺すと腰を深く落とし、必殺キックの為に跳躍する構えに移行する。
「はああああああ……」
俺の周囲で嵐が巻き起こる。場所が場所なだけに大量の砂を風が巻き上げる為に視界が見えなくなる。しかし、俺にはわかる。ハーゲンティギルディがどの方向から突っ込んでくるかが奴の気迫を感じることでわかるんだ。
集中を終え、嵐を突き破り斜め上に跳躍。全ての風を背に必殺のキックの構えに移行し、突進するハーゲンティギルディを迎え撃った。
「でらぁぁぁッ!!!」
「うおおおおお!!」
俺の強化ストームストライクとハーゲンティギルディの突進がぶつかり合う。ハーゲンティギルディは散るのが目的とかぬかしていやがった癖にその勢いに手加減は全く存在していない。
脚と角、男と男、信念のぶつかり合いがそこにはあった。俺は今、女だとかいう野暮なツッコミはなしにしていただきたい。
「でりゃあッ!!!!」
決着はそう遅くなかった。俺のキックがハーゲンティギルディの角をへし折り、顔面を蹴り砕いた。綺麗な身のこなしで着地する俺と対照的にハーゲンティギルディは頭から順に全身を火花と放電が駆け巡る。
「僕は一番の幸せものだ……こんなカッコいいヒーローにやられることが出来るなんて……」
そう言い残しハーゲンティギルディは爆発四散。全く最後の最後まで根はぶれない変な奴だったとしみじみ感じるぜ。
岩陰でカメラを回していた戦闘員を見逃し、俺はハーゲンティギルディが爆散した場所に足を運ぶ。そこにはゆらゆらと緑に輝くハーゲンティギルディの
「あれ? これって……」
属性玉を見て何かが引っかかった。必死に記憶の中を漁り、ついこの間の出来事を思い出す。
「あーーーー!!!」
採石場に俺の声が響き渡った。
◇
「本当にあるの? こんなところに属性玉なんて……」
おやっさんの部屋の押し入れを漁る俺に向かってティアナが呆れ半分で聞いてくる。だが俺はさっき戦いで思い出すことができたんだ。この部屋でみた何かが何であるかをそれは属性玉だ。間違いない。
「確かこの辺りに……」
少し前の記憶を頼りに押し入れを捜索する。相変わらずフィギアや玩具が邪魔で邪魔で仕方ない。
全然見つからず不安になってくる中、その時は突然訪れた。
「……あった!! 見つけたぜ!! ほら見ろよティアナ!!」
「嘘でしょ……本当にあるなんて……」
おやっさんの部屋の押し入れから出てきた緑に光る不思議な石。それは紛れもなく属性玉で俺の見間違いなどではなかったことが証明された。
「どうしてなの……どうして正樹さんが……」
見つけた喜びで忘れていたがそう言えば何故、おやっさんの部屋でこんなものがあるんだよ……。もしかしたらおやっさんの悪い癖が発動し、ティアナが居間で落っことした属性玉を拾ってのか? いや、でもティアナの性格からして普段、居間で属性玉なんか出さないだろうしな……
「見たな~~」
考え込む俺たちの背後、部屋の入口のドアから誰かの声が聞こえてきた。それ聞き、俺とティアナは咄嗟に臨戦態勢に入る。
「おいおい、何警戒しているんだよ。俺だよ俺」
「なんだおやっさんかよ……」
「びっくりしたわ……」
よく見たらそれはおやっさんだった。俺とティアナもホッとする。
「また、お前ら勝手に人の部屋に上がり込んでは荒らしやがって……片付け大変なんだぞ……」
「「それはごめん(なさい)……ってそうじゃなくて!! これなんだよ(なの)!!」
ティアナと言葉が幾つか重なりながらもおやっさんを問い詰める。理由は勿論、この部屋で属性玉が見つかったことだ。
「あー! それそこにあったのか! いやーごめん、ティアナちゃん。すっかり忘れていたよ」
「「は?」」
それから数分間、訳を聞いた。なんでもこの属性玉はティアナが初めてこの家、アラームクロックにやってきた時に持っていた物、つまりボロボロのティアナがずっと握りしめていたと物らしい。んでここに来た時、おやっさんと出会って安心した拍子に落としていたらしい。
〈
属性玉を握るとその属性が頭に流れ込んでくる。
俺はこの属性が何を意味しているのかが全くわからなかった。
原作既読済みの読者目線ではティアナの正体がある程度わかるかと思います。伏線張りまくっていたので多分、以前から気づいていた人が大半だと思いますが……