俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「おい、知ってるか~お二人さん~」
堀井との鬼ごっこを終え、教室にやってきた匠が俺に対して放った一言はそれだった。さっきまで全速力で走っていたとは到底思えないくらい元気の余った態度が目立つ。
「何をだよ」
匠のへらへらした態度には若干の苛立ちを覚えるが、これはいつものことだ。もう10年以上の付き合いだしもう慣れた。
俺は興味半分、呆れ半分で問いかけた。
「悠香さんたちが毎週出してる新聞があんだろ」
「おう」
「そうね」
「どうやらよ、当分の間休刊らしいぜ」
「んなこと知ってるよ……」
一応、俺だって愛読者の一人だ。そんなレベルのスクープなんざ知ってるに決まってらぁ。
俺の机の上にそのまま腰を下ろし話を聞いているティアナのみ「へぇ~」と匠が求めるであろう反応をしていた。
「チッチッチ、それだけじゃないんだな~これが」
人差し指を左右に振りながらそうじゃないと言い張る匠。その様は若干どころじゃなくかなりウザく、随分とイラっとさせてくれる。
匠は周囲を見渡し、クラスメイトの誰も俺たちに集中していないことを確認すると手招きをし、ひそひそ話の合図を出した。どうやら周囲に聞かれたら不味い話題のようだ。エレメリアン関係だろうか?
「何でもよ、休刊の理由はな……」
匠のひそひそ声が俺とティアナの耳に入って来る。俺もティアナも集中してその声に耳を傾ける。
「……あまり号外にできないスクープを追っているからだってさ」
「「……え、それだけ?」」
正直、もっと具体的な内容かと思っていた。肝心のスクープの内容がわからないようじゃ意味がないし……
随分と肩透かしな内容だったこともあり、俺とティアナのリアクションが完全に一致した。互いに口をあんぐりと開けて呆れてしまう。対して匠は妙に自信満々。まだ何か言いたげだった。
「馬鹿だな~お二人さん。俺たちって悠香先輩とどういう関係よ。言ってみ、ほれ」
小馬鹿にするような態度が再三、俺を苛立たせる。気持ちを何とかグッとこらえて匠の言う通りに言ってみる。
「テイルバイオレットやエレメリアンのことを共有できる仲間みたいな関係……だろ」
「そう、正解!!」
テイルバイオレットが俺であるという事を知っている人間は限られる。ティアナは当然だから除外するとして、匠に悠香さん、青葉さん、後は人気アイドルの夢宮ヒカリと異世界のポニーテール戦士、テイルフェニックスこと唯乃さんの五人。つまりこの五人はそれ以外の他の知り合いよりもより強い特殊な繋がりが存在していることになる。
「それでそれがどうしたのよ」
「だ~から、そんな関係なんだし、直接聞きに行けばいいってことでしょうが」
あ~そういうことか。完全に理解したよ。
詰まる所、
「遅くなったなみんな、席につけ~ホームルームを始めるぞ~」
教室のドアがガラリと開けられ、年老いた担任が姿を現す。いつもより少し遅いがホームルームの始まりだ。
「んじゃ、今日の昼は部室で決まりってことで」
「はいはい、わかったから匠もさっさと席に戻る。ほら邪魔よ」
ティアナも匠もそれぞれ、自らの席に戻りだした。
あっという間に時間は経ち、昼休みとなった。俺たち三人は昼飯を片手に新聞部部室へ足を運んだ。
俺と匠はいつも通りお約束のサンドイッチ、ハムと卵がそれぞれ二つだ。一方、ティアナはおやっさんお手製の弁当。昨日の日替わりメニューは鮭のバター焼きだったのでおかずはきっとそれだろう。今更だが少し羨ましい。
「悠香先輩、青葉先輩たのもー」
「お前は道場破りかっつーの……」
上機嫌で部室のドアをガラリと開ける匠。勿論だが、一応ノックくらいはしている。親しき中にも礼儀ありって奴だ。まぁ、返事は帰ってこなかったけどな。
「うおーすげー」
「相変わらずって言いたいところだけど……何なのよこの汚さは……」
「だな……」
ドアの先に広がっていた景色は正にゴミ一色の富士山と言った所か。元々ゴミ屋敷寸前の有様だったのに今日はそれ以上の散らかりっぷりが目立っていやがる。てか、悠香さんも青葉さんもいないようだな……鍵あけっぱなしでこの有様とか、泥棒でも入ったのかと勘違いしてしまうぜ、全く……
そんなゴミだらけの部屋の中、俺は部屋の真ん中にあるテーブルの上にある紙の山が目に入る。
「てか、何これ……? 新聞か……? よく見たら全部昔のじゃねぇか……」
数十年前の新聞が束になって山積みになっているとは。こいつのおかげで昔のことを調べているのであろうことが容易に予想がつく。
ティアナと匠も新聞の山に気づき、俺も含めて皆それぞれ、新聞の山を物色し始める。
「アテネオリンピック開幕って……これ随分前だな……」
「ねぇ和輝、こっちには新ヒーロー滑舌最悪だって」
「おい、お二人さん。そんな物よりこれ見ろよこれ」
匠が見ていた新聞にはでかでかと一面にシャイニーブルームがエレメリアンと戦う写真が飾られていた。それは時たまテレビの特集で映る物と同じ写真だ。
「もしかすると悠香先輩が追っているスクープって……」
「十中八九、こいつの事だろうな……」
「そうね……」
その時だった。
「あれ? かずくんにたっくんにティアちゃん?」
「……何してるの、三人そろって」
部室の入口に悠香さんと青葉さんが立っていた。青葉さんは悠香さんと比べて少しばかり棘のある言い方だが、別に怒っているって訳ではなさそうだった。
それに気づかない匠はしどろもどろになりながら訳を話しだす。
「いやーこれはですねー。あのー……そのー……何つうーか。休肝する理由が知りたかったっつーか……何つーか……」
「あ~そのこと……ねぇ」
悠香さんは悪戯な笑顔を浮かべる。何かを企んでいるのは明白。しかし、その様子に気づいた青葉さんが悠香さんの脇腹を突っついた。すると、ぐぅ~と腹がなる音が悠香さんから聞こえてきた。
「……変なこと考えない。早くお昼にするよ」
「……そ、そうね。時間も勿体無いし早く食べましょうか」
悠香さんは顔を真っ赤にしながら言った。完全になかったことにしようとしていたのがまるわかりだ。
「と、とりあえずテーブル片付けましょ。ね?」
「はいはい」
「ほいきた、合点っす」
悠香さんの号令を聞き、俺と匠がテーブルの片付け作業に入る。片付けと言ってもテーブルの上を占領している新聞紙の束を床に降ろすだけだがな。
一瞬にして片付けが終わり、全員がテーブルを囲む形で昼食を食べだした。
「へぇー、ティアナちゃんって見かけによらず結構食べるんだ……」
「青ちゃん、ティアちゃんの食べっぷりはこんなもんじゃないんだから~」
青葉さんがティアナの弁当の大きさを見て驚いていた。それもそうか、ティアナの弁当は特大サイズなんだしな。初見なら驚くのも無理はない。俺も最初はビビったしよ。
てか、青葉さんと飯食うの初めてか。今まで何度か
「ちょっと、悠香さん。変なこと言わないでください」
変なことと当の本人は申していやがるが、悠香さんは別に嘘は言ってない。ティアナが見かけによらずかなりの大食いなのは俺がよーく知っている。たっく……笑わせんなよ。
心の中で笑いながらハムサンドを口に頬張る俺をティアナはジッと睨んできた。
「何よ和輝。今絶対、心の中で笑ったでしょ」
「わ、笑ってねぇよ。てか心読んでんじゃねぇ」
サンドイッチを飲み込んで一言。そのままの勢いに任せて思ってもない嘘をつく。だがしかし、言い終わると同時に俺は致命的なミスを犯したことに気づいた。
「心を読んだってことは……」
「あ、ヤバ……」
「やっぱり、笑ってたんじゃないの!」
やっぱし、気づくよな……
こればかりは言い逃れできそうにない。これってよ、策士策に溺れるって奴かぁ?
「和輝、お前バカだな~嘘ついた直後にばらすなんてよぉ~」
匠はゲラゲラと笑いながら茶々を入れてくる。
他人事だと思って楽しそうに笑いやがってこの野郎……
「一年最後の期末テスト、最下位のお前には言われたくねぇよ」
「あら~かずくんは最下位から何番目のかしらね~? 確か、最下位から数えて2番目だった気がするけどぉ?」
「……ツインテール馬鹿じゃなくてツイン馬鹿だね」
匠への俺のカウンターは悠香さんと青葉さんの介入によって見事、粉砕。部室内に女性陣の笑いがドッと巻き起こり和やかな空気に変わっていく。
同年代でもない先輩の悠香さんが俺の入学テストの結果を覚えているのかは少し驚いたが、まっいいか。
◇
「で結局、何故休刊するんすか? 巷じゃドデカいスクープを追ってるとか流れてますよ」
「ん~それはね」
昼食をそれぞれが食べ終わり、ランチタイムではない休息の時間が訪れた。そんな中、匠は当初の目的である新聞部休刊の理由を悠香さんに聞いていた。
「ひ、み、つ……って言いたい所だけど、あなたたちなら特別に少しだけ話してあげるわ」
前半、無駄にエロい言い方だったのが少し鼻につくが、一緒に揺れる悠香さんのポニーテールが見事にそれを打ち消していた。本当、いいポニーテールだよ。全く……
「青ちゃん、例の奴、カモ~ン」
「……はいはい」
食事が終わると真っ先にパソコンの画面と睨めっこを開始した青葉さんが、悠香さんに何かを投げ渡してきた。
「じゃーん、これなんでしょ?」
悠香さんが見せてきた物、それはあるデータがグラフとなって記載された一枚の紙だった。
「「何これ……?」」
「何すか? それ?」
内容が気になった俺とティアナ、匠の三人は覗き込むように前のめりの体勢になる。あともう少しで読めそうな所までいったが、悠香さんはその紙を背中に隠した。
「ごめんね~まだ見せれるのはここまでなの」
ぶりっ子のようにウインクをしながら悠香さんは一言。こういう仕草の一つ一つがイラっとさせてくれるが、何故か強く言い出すことが出来ない。悠香さんの人となりが成す技の一つだろうか? それとも悠香さんのポニーテール属性か?
「ヒントくらい何か言ってもいいじゃないすか~ ねぇ、悠香先輩~」
いつの間にか匠は悠香さんの背に回り、肩を揉んでいた。なんて早さだ……
「あら~結構、こってたのよね~」
匠が肩を揉み、悠香さんは年取ったおばさんのような声を出すこの光景。一体何を見せられているんだと呆れて苦笑い。隣のティアナも同様の表情を浮かべていた。
「仕方ないわね~ちょっとだけよ~。実はね今、あたしたちはシャイニーブルームの正体と謎を追っているの」
シャイニーブルームの正体と謎ねぇ。大体予想はついていたがやっぱし、シャイニーブルーム関係か。でもさっきのグラフは一体……?
「結構なスクープになるかもだからあんまし深くは言えないんだけど、昔にエレメリアンと戦っていた魔法少女シャイニーブルームには何か重大な秘密があるのよ」
「重大な秘密……すか?」
「そうそう。ねぇ、三人は何か知らない? 別にあれよ、自分のじゃなくて両親が何か知っているとかでもいいのよ」
「そう言われても……なぁ?」
「ええ、私はこの世界に来てまだ半年も経ってないし……」
ティアナは兎も角、俺も同じだ。シャイニーブルームなんて4月にパソコンで調べるまで露も知らなかったんだしよ。おやっさんはどうかは知らないが、ばあちゃんは確実に知らないだろうしな。
あれ? 待てよ?
「おい、匠。確か、前言ってなかったっけ? お前の親父が昔、見たとか何とかって……」
マルコシアスギルディ戦の前に匠と交わした話を思い出したので匠にその事を振ってみる。しかし、匠は首を横に振った。
「いんや、あの時の親父の口調からして多分、ほとんど覚えていないぜ。結構曖昧な言い方だったしよ」
匠の言葉を聞いて、悠香さんがガッカリしたように俺には見えた。
「ん? でも待てよ。確か……堀井の奴……」
「堀井って日本史の堀井先生よね? それがどうしたの?」
悠香さんは匠の話の続きを聞いて、ガッカリした表情からキリっとした表情へ即座に切り替えた。
「確か……あいつ昔、友達とどちらがシャイニーブルームのお兄ちゃんに相応しいかを争ったとか言ってたんすよ」
俺が知らず、匠のみが知っている堀井の昔話。匠の奴、いつの間に……
「なるほど……取材してみる価値ありってわけね……」
悠香さんがそう言い終わった時だった。6月入って初めてとなるあの音が聞こえてきた。あの音というのは勿論……
「和輝!! エレメリアンが出たわ!! それもかなり近い!!」
「マジかよ……!!」
部室の奥、壁にかかっている時計をチラ見。今の時間からして昼休みが終わるまで後15分程度といった具合か。まぁ、最悪授業はサボるけどな。
エレメリアンが出たんだし仕方ない仕方ないと心に言い聞かせる。
「和輝、ここで変身しましょ。校舎内じゃ誰が何処で見ているか危ないし」
「そうだな」
ティアナの提案を即座に飲む。するとティアナのテイルブレスが輝き、俺の腰にテイルドライバーが出現する。俺はいつも通り変身の掛け声を腹の底から発する。
「テイルオン!!」
汚く散らかった部室内を青紫の閃光が照らす。そして、この俺が変身するテイルバイオレットが顕現した。
「……すご。生変身、初めて見たよ……」
一番離れているはずの青葉さんが一番驚いている。そう言えば青葉さんの前で変身するのも初めてだったな。てか、変身といい食事といい青葉さんと関わる機会が少なすぎる気がする。
「で、ティアナ。場所は」
「
「了解、ならさっさとブチのめしに行くとするか」
俺とティアナは部室から飛び出した。
「頑張れよ~!!」
「かずくんは兎も角、ティアちゃんも気を付けてね~!!」
匠と悠香さんの声援を背に受け、俺たちは全速力で現場に急いだ。
◇
時は少しだけ遡る。
和輝たちがいる旧校舎一階の新聞部部室からさほど離れていない場所、ここは教員のみが開けることが許可されている倉庫前。華は一人の女子生徒と一緒にいた。
「ありがとうございます。山村先生」
「別にいいのよ。これも先生の仕事なんですから」
教員である華の付き添いの下、倉庫の中の物を取り出しに来ていた女子生徒は笑顔で感謝を述べると、旧校舎の方へ走り去っていった。
生徒から華への評判はとても良かった。それは今のようにどんな時でも生徒のために行動しているからに他ならない。普通、他の教員は昼休みという貴重な時間に校舎の辺境であるこの倉庫に行きたがらない。だが華は違い、率先してそれらの行動を行うのだ。
「これが今の私の仕事……」
女子生徒が去ったことで生徒の前では極力見せないように心がけている曇った表情が華の顔にでてしまう。口から出た言葉はまるで今の自分自身に言い聞かせているようであった。
「ほう……。いい
「誰!?」
華の耳に聞こえるは威圧感漂うバリトンボイス。華は周囲を見渡した。そして華の目はライオンのような怪物を捉えた。
「あなたは……レオギルディ……!? やっぱりあの時の約束は……」
「何を言っている人間。俺はアルティデビルのプルソンギルディだ」
「プルソンギルディ……? それにアルティメギルじゃない……?」
「ごちゃごちゃとわからんことを……。まぁいい、貴様から迸る溢れんばかりのツインテール属性もついでに頂かせてもらうとしよう」
プルソンギルディはその太い腕を華に向かって振り下ろす。まるで丸太が倒れ掛かってくるかのような大迫力、普通の人なら腰を抜かしてしまうだろう。そう、普通の人なら……
「ッ!!」
「何!?」
華は全く恐れることなくプルソンギルディの振り下ろした腕を回避した。その様はまるで熟練の格闘家のようだ。
プルソンギルディも気絶させるため本気で振るっていなかったとは言え、全く動じずに回避されるとは思ってもみなかったようだ。少なからず動揺が生じる。
「貴様、何者だ……!! そのツインテール属性にその身のこなし……!! ただ者ではないな!!」
プルソンギルディに問われた華は胸元のポケットからくすんだ緑色のペンダントのような物を取り出し、見つめる。
「今は……ただの教師よ……」
華は腹の底から絞り出すようにそう答えた。勿論だが、その答えに納得するプルソンギルディではない。少し不満気に再び腕を振りかぶる。
「まぁいい、貴様が何者であろうがなかろうがここで俺に奪われるのは必然の道理!!」
「しまった……!!」
華は何かを思い詰めてしまった為にプルソンギルディの攻撃に反応が遅れてしまう。いくら凄かろうと人の力ではエレメリアンに敵うはずなど毛頭ない。
華の体をプルソンギルディの太い腕が振り落とされる。その時だった。
「させるわきゃねぇだろうが!!」
青紫の風が巻き起こり、華の体が浮き上がって弾かれる。そして、プルソンギルディの腕は乱入してきたテイルバイオレットの持つウインドセイバーが受け止めた。
「あれが……テイルバイオレット……」
◇
「あっぶねぇ、ギリ間に合ったぜ」
「貴様はテイルバイオレット……!!」
ティアナの指した場所に急いだ俺が見たのはライオンのようなエレメリアンが山村先生を襲っている所だった。何とか間一髪間に合った。
「ご名答……!! どおらっよぉ!!」
エレメリアンの丸太のような腕をウインドセイバーで強引に横に逸らす。そしてガラ空きになった腹にむかって全力のケンカキックを叩きこむ。
「グッ!?」
エレメリアンの口から苦悶の声が漏れ、体勢が崩れる。それを見逃す道理など全くない。縦に横にウインドセイバーの刃を叩きこむ。腹筋バキバキに割れたエレメリアンの体から火花が飛び散る。
「うぐぉ!?」
「おらおら!! まだ終わらねぇぞ!!」
そこからさらに袈裟、逆袈裟とウインドセイバーで滅多切り。フラフラとよろめくエレメリアンの体に対し、締めの中段蹴りをブチかます。
俺は完全に勝ちを確信していた。しかし、それが不味かった。
「この俺、プルソンギルディを舐めるなよ……!!」
「なんだとこの野郎!?」
エレメリアン、プルソンギルディは突如爆発するオーラを周囲にまき散らした。煙が視界を塞ぐ。
『何よ……あれ』
ティアナの声と同時に煙が晴れていく。絶望的な光景が俺の瞳に映りだした。
「嘘だろ……」
俺の目の前に立っているのは先程と変わらずプルソンギルディ。しかし、その大きさはさっきまでの比ではない。さっきまでが約3メートルくらいだとすれば今の野郎の大きさは約10メートル。校舎を見下ろすほどだ。
「テイルバイオレット、確か貴様は不良少女らしいな。ならば教師属性を持つ者として少し懲罰を与えるとしようか」
「誰が不良だ……」
どうして俺は不良扱いされんだよ。口が悪いのが原因か? それとも態度の問題なのか?
てか、この野郎。この態度からして昔問題になった体罰教師気取りかよ、おい。
「ぬうんん!!」
丸太なんてもんじゃねぇ。巨大な大木クラスの腕が俺の体に振り落とされる。咄嗟にウインドセイバーで受け止める体勢に入る。
「ぐぁぁぁぁ!!」
結果は見えていた。この体格差では受け止めれる筈もなく、地面に叩きつけられた。
『和輝!!」
ティアナの悲痛な叫びが聞こえてくる。俺の体はなんとか動いてくれたが、肝心のテイルギアは限界寸前だった。
「ふん、他愛ない。これがテイルバイオレットの実力か」
プルソンギルディのサイズが最初に見た時のサイズに戻っていく。そして、属性力を奪うあの金属の輪を作り出した。俺の属性力を奪おうとしているのは明白。絶体絶命だ。
俺が諦めかけたその時、緑の光がプルソンギルディの胸を貫いた。
「何ィ!?」
不意の攻撃を喰らい、のけぞるプルソンギルディ。かなりのダメージを負ったのはすぐにわかる。俺は立ち上がり、ギアと体に鞭を入れ反撃の構えを整える。
だが、一足早くプルソンギルディは逃走の構えに入る。
「くそぉ……何の光だ……!! やってくれる……!! だが一先ずここは……」
そう言い残し、消え去るプルソンギルディ。一先ず戦いは終わった。俺はホッと一安心。
『何だったの……今の……』
ティアナの言葉を聞いて思い出す。俺を救った緑の光の事を。
俺は光が飛んできた方向を見た。しかし、そこには何もなかった。だが、俺の脳裏にはある疑問が浮かんだ。
「あそこって……山村先生がいた場所だよな……」
てか、山村先生の姿が何処にもない。一体どうなっていやがるんだ。
そんな考えにふけている時だった。騒ぎを聞きつけたであろう生徒の声が聞こえてくる。
「あ!! テイルバイオレットじゃん!!」
「ほんとだ!! テイルバイオレットの姉貴だ!!」
「テイルバイオレット様~!! サインして~!!」
ヤバ……これってもしかして追われる奴ですかね……
俺の不安は見事に的中。大群の生徒たちが追ってきた。俺はテイルギアによって強化された脚力をフルで使い、逃げ回った。
その後、何とか逃げ切るも午後の授業がテイルバイオレット捜索に切り替わったのは言うまでもない。
◇
職員室、一人取り残された堀井は愚痴をこぼしていた。
「全く……授業ほっぽり出してテイルバイオレット捜索とは……なってない!! 実になってない!!」
同僚の先生は皆、テイルバイオレット捜索に出かけてしまったが、堀井は行こうとは思わなかった。何故だかわからないが、無意識に体が拒否していたのだ。
「失礼します。堀井先生はいますか?」
職員室のドアが開き、悠香が現れる。堀井を見つけた悠香は堀井が返事をするまでもなく、駆け出した。
「堀井先生、突然ですけど、お時間頂けますでしょうか」
「おおう、別に構わんがどうしたんだ? 確か君は三年の片霧だよな?」
「ちょっとした取材を……と思いまして」
「取材? 俺に? もしかして先日、山村先生と梅屋でご一緒したことがバレたのか……? や、やめてくれよ!! 熱愛報道は教師としての自分の立場がだな……」
至極どうでもいい勘違いをする堀井。だが悠香はそんな堀井をお構いなしに冷淡に告げる。
「先生が昔ファンだったと聞くシャイニーブルームについてです」
原作にライオンモチーフのエレメリアン、ライオギルディが出ているので、こちらではレオギルディという名称でライオンモチーフのオリジナルエレメリアンを登場させていくつもりです。