俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第3話 始まりの終わり

「どうなってんだよぉぉぉ!!」

 

「私が言いたいわよ!! なんであなたが変身してるのよ!!」

 

 俺が変身したことに対してティアナが文句を言ってきたが、そんなことはどうでもいい。俺が女になってしまったことの方が重要だ。

 

「知るかよ!! どうすんだよ!! 俺の息子が!!」

 

「何こんな時にそんな所の心配してるのよ!!」

 

 何がそんな所だ、16歳にして未だに童貞卒業の兆しが見えない俺からしたら一大事だ。

 

「お前は男じゃないから――」

 

「和輝!! 前見て!! 前!!」

 

 ティアナの言葉を聞き、我に返る。そういえば戦いの真っ最中だったな、余りの衝撃で完全に忘れていた。

 怪物の突き出した拳を腕をクロスさせて受け止めた。

 さっきと違い全然痛くない。

 

「不意打ちとは随分と卑怯だな!! おい!!」

 

 お返しにこちらも怪物の胴体に向けて拳を数発打ち込むと怪物は苦悶の声を漏らす。怪物は殴られた箇所を庇いながら後退した。

 

「すげえ……なんて力だ」

 

 これがテイルギアの力。ツインテールが好きなだけでこんなにも力が溢れるのかよ……

 

「ボーっとしない!! 次が来るわよ!!」

 

「えっ?」

 

 怪物の脚が横薙ぎに俺を襲い、吹き飛ばした。

 

「和輝!!」

 

「自分の心配をしたらどうだ? ツインテールを守る者よ」

 

 怪物は手から再び、あの金属の輪を作り出し、ティアナに迫る。

 

「だから奪わせねぇって言ってんだろ!!」

 

 勢いをのせた飛び蹴りで怪物をティアナから引き離した。

 

「ありがと……」

 

「危ないから逃げろ。近くにいたら邪魔だ」

 

「私のことを邪魔者扱い!? それどういうことよ!!」

 

「事実邪魔だろ!! さっさと逃げろ!!」

 

 なんで逃げないんだよ……俺は心配して言ってあげてるんだぞ!?

 

「私は逃げないわ……変身できなくとも私は……ツインテールの戦士なの!!」

 

 そういや……本来、ティアナが変身してコイツと戦うはずだっただよな。

 邪魔者扱いは流石にちょっと可哀想だったか……でも、もうちょっと離れてくれよ……

 

「そんなに言うんだったらもう少し離れてろ!!」

 

 そう言い終わると同時に怪物は再び俺に向かって突撃してきた。

 

「人間風情がァァァァ!!」

 

「コイツ、頭に血が上っていやがる」

 

 さっきまでとは違い、乱暴に腕を振るってきた。だが戦いにおいて、冷静さを失った攻撃を躱すのは簡単だ。

 姿勢を低くし攻撃を躱し、カウンター気味に顎にアッパーを見舞う。さらによろけた体に対してヤクザキックで追撃を行う。

 

「人間なめんなよってな!!」

 

 この調子ならなんなく勝てそうだ。それにしても動く度に揺れる、青紫のツインテールはとても美しく綺麗だ。見惚れそうになってしまう。

 

 

「ガァァァァァッ!!」

 

「!」

 

 怪物は背中の翼を大きく広げ突撃してきた。油断していた俺は反応することが出来ず、怪物に首を捕まれ宙を飛んでいた。

 ドンドン地上から離れていく。

 

「和輝ぃぃぃぃぃぃぃ――――」

 

 ティアナの叫び声が聞こえなくなっていった。

 

 

 

 

 どのくらい飛ぶつもりなんだコイツは……

 このまま宇宙まで飛び放り出すつもりか? それとも勢いに乗せて地上に叩きつけるつもりか?

 どうすればこの状況を打開できる? 

 

 考えろ……何か策はあるはずだ……

 

「これで終わりだ。  最後に我が名を聞くがいい」

 

 名前だと? この野郎、勝ち誇りやがって……

 

「我が名はアンドラスギルディ。家政婦属性(メイド)のエレメリアンだ。 人間よ光栄に思え」

 

 アンドラス? どこかで聞いたような気がするが……何だアンドラスって?

 ていうかこんなに厳つい見た目でメイド好きなのかよ……コイツ。

 

「苦しいか? 人間よ」

 

 クッソ……俺はこんな奴にも勝てずに死ぬのか……

 死ぬ前には童貞卒業くらいしたかったなぁ……あ、でも今の俺は女だから童貞卒業とか関係ないな。

 ん? 童貞? 女? 

 そうだ……あるじゃねえか女性にのみ許された必殺技が……! でも効くのか?いや、一か八かやってみるしかねぇ!!

 

「爺ちゃんが男の戦いでこれだけは使うなって言ってたが、生憎今は女なんでな!!」

 

「何を言ってる? 人間」

 

「こういうことだッ!!」

 

 力を振り絞り、怪物の股間めがけて鋭い蹴りを放った。

 

「ッ!!」

 

 アンドラスギルディはうめき声と共に俺の首から手を離す。

 自由になると俺は空中で体勢を整えて、ビルの屋上に着地した。

 

「やっぱし怪物にも効くんだな……金的って……」

 

 爺ちゃん、約束破ってごめんな。 でも今は女だから許してくれるよな?

 

「貴様ァ」

 

 流石に応えたのかさっきよりも勢いがない。だが、少しするとアンドラスギルディの体から怒りのオーラが溢れ出てきた。

 

「もう許さんぞ!!」

 

 今更こんな奴に許しを請うなんて……悪いがそんな気は更々ない。

 

「我に剣を抜かせるとは……覚悟しろ人間!!」

 

 アンドラスギルディは身の丈くらいの長さの剣を片手で持つと、俺に向けてそう言った。因みに剣と言っても、別にあっちの剣ではなく武器の方の剣だ。

 

「お前!! 武器は無しだろ!! 武器は!!」

 

 いくら強くなっていようが武器持ちに対して、素手で戦えるほどの技量はまだ無い。

 

『何言ってんの!! あなたにもあるでしょ!!』

 

 抗議する俺にティアナの声がどこからともなく聞こえてきた。

 

「ティアナの声!? どこに居るんだ!?」

 

 辺りを見回すがティアナの姿はどこにもいない。当たり前だ。ティアナは今、このビルと隣のビルの間に居るんだ。

 

『私のテイルブレスを通して喋ってるの!!』

 

 なるほどな……テイルブレスが通信機の役割をしてるって訳か。そういや俺のテイルギアは、ティアナのテイルブレスから出てきたんだよな……

 

「あれ? なんで俺の状況がわかるんだ?」

 

『急にテイルブレスが光って、あなたの声が聞こえたきたのよ!!』

 

 ティアナの焦る声が聞こえてくる。

 それにしても随分空気を読んでくれる変身アイテムだな……

 

「何をブツブツ言っている」

 

 咄嗟にその場から離れ、アンドラスギルディの剣を紙一重で躱す。

 

「さっきから油断しっぱなしだな。俺」

 

 これで何回目だ……初戦闘とはいえ流石に油断し過ぎだ。このままでは命が幾つあっても足りやしない。

 

「ティアナ!! さっき武器があるって言ったよな!! どこにある? 教えてくれこのままじゃジリ貧だ!!」

 

 アンドラスギルディの攻撃を躱しながらティアナに聞いてみた。

 

『フォースリヴォンを触って念じるの!!』

 

「リヴォンってなんだ!? 普通、リボンだろ!?」

 

 ウに点々って……なんだその中学生が喜びそうな単語は!?

 

『正式名称なんだからしょうがないでしょ!? 私も可笑しいと思ったわよ!!』

 

「製作者は中二病患者かよ!!」

 

『知らないわよ!! そんなこと!!』

 

 ツッコミを入れるのも程々にして、頭のリボン型パーツに触れて念じる。するとリボンは発光し、周囲に紫の風が吹き始めた。紫の風は次第に右手に集まり、刀の形に変わった。

 

〈ウインドセイバー〉

 

 やっぱ日本男児の武器といえば刀だよな。ちゃんと念じた通りの武器になってくれてよかったぜ。

 

「さてと……反撃開始だ!!」

 

 ウインドセイバーを横薙ぎに振るい、アンドラスギルディの体に傷をつける。

 アンドラスギルディも負けじと剣を振るい、互いの刃がぶつかり合う。

 

「何故だ? 何故こんな力が……」

 

「さぁな? ツインテールが好きなだけでここまでやれるらしいぜ」

 

 何度目だろうか? 剣劇の回数はもう覚えていない。それほどまでに俺とアンドラスギルディの剣の実力は拮抗していた。

 そして終わりは突然やってきた。アンドラスギルディの剣が限界を迎え、刀身が粉々に砕け散る。

 

「そこだぁ!!」

 

 そんな隙をみすみす逃す俺ではない。

 がら空きの胴体にウインドセイバーを振るう、さらに締めのミドルキックを繰り出し、大きく吹き飛ばす。

 

「ティアナ!! 必殺技とかそういうのはないのか?」

 

『頭の中で念じるの!! そうすれば自然とでてくるわ!!』

 

 ティアナに言われた通りに頭の中で念じてみる。すると頭の中にイメージが浮かび上がってきた。

 

完全開放(ブレイクレリーズ)

 

 紫の風が吹き荒れ始めた。風はウインドセイバーに集まり、刀身が光輝いていく。

 光輝くウインドセイバーを構え、アンドラスギルディに突っ込んでいく。 

 アンドラスギルディも迎撃に光弾を発射するが、風の障壁が身を守ってくれているので効果がない。

 必殺の一閃〈ストームスライサー〉がアンドラスギルディを襲った。

 

「ぐぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 全身から放電を起こし、苦悶の声を上げるアンドラスギルディ。

 

「この我が……人間如きに……負けるだと……」

 

 アンドラスギルディは大爆発を起こし、消えていった。

 

「勝ったぜ……」

 

 アンドラスギルディが爆発した場所から光の粒子が溢れ、あたり一帯に降り注いでいった。

 

「これで襲われたメイドさんたちの属性力も戻っただろうな」

 

 今の光の粒子が奪われた属性力だということは直感で理解できた。

 

「さて、とりあえず戻るか」

 

 ティアナの下に向かうため俺はビルの屋上から路地に向かって飛び降りた。

 

 

 

 

 ティアナの目の前に降り立つと青紫の光に包まれ変身が解除され、男の姿に戻った。

 

「あれ戻った!? 俺、戻れたの!?」

 

 もしかしたら一生、女のままでいなくてはならないと思っていたので、無事男に戻れて安心した。

 安心した俺は目の前にティアナがいることをすっかり忘れ、股間を触り息子の存在を確かめた。

 

「おお~懐かしきこの感触」

 

「私の目の前で何やってんのよ!!」

 

 別に見せた訳じゃないからいいだろ……こちとら16年間一緒だった物がなくなっていたんだ。騒ぎたくもなるだろ。普通。

 

「あなた、さっき倒したエレメリアンの属性玉(エレメーラオーブ)は?」

 

「何だそれ?」

 

 また新しい単語が出てきた。

 初めて聞く単語に頭の中に?を浮かべる。

 

「緑色に光る、これくらいの菱形の石よ」

 

 指で丸を作り、ティアナは説明してきた。

 

「それくらいの石なら確か……アンドラスギルディが爆発した場所に落ちていたぞ」

 

「落ちていたならなんであなたは拾わないの!?」

 

 ティアナがガミガミ言ってきたが、悪いが俺には男の落とした物に対して興味はない。だがティアナの様子を見るに大事な物らしい。

 

「拾いにいくわよ!!」

 

「どうやって拾いに行くんだよ」

 

 大きな声で言っているが目当ての物はビルの屋上にある。こんな夜にビルの屋上に上がるなんて到底出来ないだろう。

 

「変身して……」

 

「はい?」

 

「拾ってこなかったあなたの責任でしょ、早く変身して拾ってきて」

 

 確かに……変身すれば屋上に上がるくらい造作もないだろう。だがこんなことの為に変身していいものなのか?

 人使いの粗さに不満を持ちながらも、拾わなかった俺の責任でもあるので渋々テイルドライバーを装着する。

 因みにテイルドライバーってのは俺の使用した変身ベルトの名称だ。ガキの頃見ていた特撮ヒーローにでてくるベルト状の変身アイテムが○○ドライバーだったのでテイルブレスからテイルをとってこう呼ぶことにする。

 

「テイルオン」

 

 変身機構起動略語を言いながら初変身と同じ手順で右側面のスイッチを押し込んだ。

 青紫の光が俺を包み込み変身を完了――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しなかった。

 

「あれ?」

 

「何してるの? 早く変身しなさいよ」

 

 訳が分からない。もしかしてあまりにも悪い変身シチュエーションにテイルギアが拒否したのか?

 

「なぁ、テイルギアに意思ってあるのか?」

 

「あるわけないないでしょ」

 

 ティアナの怒りが伝わってくる。ふざけてないで早く変身しろと言っているようだった。

 

「変身できねえんだけど……」

 

「はあ? だったらさっきは何で変身できたのよ!?」

 

 何で変身できたのかに関しては俺だって知りたい。

 

「貸しなさいよ。 私が試してみるわ」

 

「はいよ」

 

 ティアナは俺と同じ手順を踏んで変身を試みるがテイルドライバーはうんともすんとも言わなかった。

 

「どうして変身できないのよぉぉぉぉ!!」

 

「うるせぇな!! 俺が知るかよ!!」

 

 二人の声が路地に響き終わるとテイルドライバーは突如発光し、ティアナのテイルブレスに吸い込まれていった。

 

「おい!! 俺のテイルドライバー返せよ!!」

 

「はあ!? 返す返さないも何も私だって訳がわからないわよ!?」

 

 何故変身できなくなったのか? 何故テイルドライバーは消えたのか? 謎は深まる。

 

「おい!! 君たち!! こんな時間にこんな場所でなにをしているんだ!!」

 

 ヤバい……言い争っていたら警察の声が聞こえてきやがった。時刻は8時を過ぎている頃だろう。このまま騒ぎ続けていても何も解決しない。こは言う通り帰るしかないか。

 

「とりあえず今日はもう遅いし、属性玉の回収はまた今度だ!!」

 

「…………わかったわよ……」

 

 ティアナは渋々頷いた。

 

 そういやティアナの住む場所はどうなっているんだろうか?異世界出身って言っていたし住む場所がないかもしれない。もしそうなら俺の家にでも泊めてやるか。幸いばあちゃんと二人暮らしで部屋なら何とかなる。

 

「帰る家がないなら俺の家に――」

 

「帰る家ならあるわよ」

 

 俺の提案は一瞬で却下されてしまった。

 

「あるんだな……」

 

「当たり前でしょ、私が今まで野宿してきたと思ったの?」

 

 普通こういう時って家に泊める展開だと思っていたが現実はそうじゃないらしい。

 

「じゃあ家まで送ってやるよ。 こうみえて俺、バイク――」」

 

「遠慮するわ」

 

 また、却下されてしまった。二度も一瞬で断られるのは流石に応える。

 

「今日はありがと……」

 

 そう言い残し、ティアナは走り去っていった。俺もバイクを回収し、帰路に就いた。

 

 

 こうして俺の忙しすぎる一日は幕を閉じた。この時、俺はまだ知らなかった。これから始まるツインテールをかけて戦う争いに巻き込まれていったことを…………

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