俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回は回想オンリーです。


第30話 12年前の真実 後編

 アルティメギルと戦う為、自身のツインテール属性を使い変身する魔法少女シャイニーブルームの力。それは偶然、ティルと出会ったことで手に入れた物……華はそう思っていた。

 だが、現実は違った。全てはアルティメギルによって仕組まれたことであり、手のひらの上で踊っているに過ぎなかったのだ。

 

「ティルは華を騙していたんだね……これまで、ずっと……」

 

 知らず知らずのうちにアルティメギルの侵略を手助けしていたという事実よりも、今まで苦楽を共に一緒に戦ってきた相棒(ティル)が、今まで何度も倒してきた敵と同じエレメリアン(ドラコギルディ)だったことの方が華にショックを与えていた。

 華の目から涙が落ちた。

 

「そう……なるね」

 

 否定などできない事実だった。

 

「覚悟はできているよ。僕は……今ここで倒される決心で明かしたんだから……」

 

 華が復讐の怒りに燃える熱い性格ならば今ここで、ドラコギルディの言う通りに倒していたかもしれない。

 だが、華は違った。瞳に浮かぶ涙を拭うといつも通りの優しい声で語りかける。

 

「ねぇ、ティルはどうしてこの事を言ってくれたの……? だってこんなことを言ったらティルは裏切りとみなされて殺されちゃうかもしれないのに……」

 

 このまま何も言わなければ、作戦は完璧に成功し、この世界はアルティメギルの手に落ちていただろう。なのに何故、ティルは倒される覚悟をしてまでこの事を伝えたのか。いや、それだけじゃない。もしここでこんな事を言ったのがバレたら裏切り者とみなされ粛清される可能性すらあるというのに何故……?

 華はその事が気になったのと同時にティルの今後が無性に心配になった。

 

「え……!?」

 

 ドラコギルディは驚いた。

 こうなってしまった以上、まず最初に怒号でも飛んでくるか、もしくは何も言わず倒しに来る。その覚悟すらあったのに、聞こえてきたのは自分を心配する声。涙を流し終えた直後もあって声量こそ小さいが、とても優しかった。

 

「それは……」

 

「ティルは華を騙していたかもしれないけど、華は楽しかったよ」

 

 華の脳裏にティルと出会ってからこれまでの記憶が鮮明に蘇ってくる。

 朝寝坊しそうになった時、何度もティルが起こしてくれた。

 魔法少女アニメを見ていた時、ティルと共に面白かった所を語り合った。

 肝試しの最中に恐怖で動けなくなった時、ティルが勇気付けてくれた。

 残り一つのお菓子を巡った時、ティルと大喧嘩したこともあった。

 一緒にお風呂に入った時、ティルは赤くのぼせてしまい、パニックになったこともあった。

 シャイニーブルームとしてどう振舞えばいいのか悩んだ時、ティルは優しく教えてくれた。

 正体がバレそうになった時、ティルは自分が守るからと言ってくれた。

 そして、何よりも……ティルは……どんな時でも一緒にいてくれた。

 

「この一年間、ティルと過ごす毎日が。もしかして、ティルも……」

 

「……うん。それもあるけどね」

 

 ドラコギルディは華に顔が見られないように背を向けた。

 

「僕……好きになっちゃったんだ……!!」

 

 その顔は以前、ティルの状態で見せた風呂場でのぼせた時以上に真っ赤であった。

 

「人間でもないエレメリアンな僕が好きになるなんておかしいのにね……」

 

「そんなことないよ。だって華も……」

 

 ドラコギルディは振り返る。

 もしかして華も……。ドラコギルディは唾をゴクリと飲み込んだ。

 

「ツインテール大好きだもん……!! エレメリアンだからって好きになってはダメなんてないよ!!」

 

 華はさっきまでとは違う大きな声量で自信満々に答え、ドラコギルディは盛大にズッコケた。

 

「あれ? どうしたの? ティル?」

 

「いや、何でもないよ……」

 

 苦笑いを浮かべるドラコギルディ。

 

「とにかく、僕はこれからも華と共に戦うよ。レオギルディは僕の師匠だからとても強いけど、僕たち二人の力を合わせればきっと勝てる……!!」

 

 華は頷いた。

 シャイニーブルーム(この力)を得ることはアルティメギルによって仕組まれた物だった。本来なら勝ち目などない。だけど、アルティメギルはドラコギルディが裏切るなんて想定していなかった。だから勝てるかもしれない。

 

「というかレオギルディってティルの師匠なんだね」

 

「師匠は凄いよ。僕が一日で根を上げたアルティメギル五大究極試練の一つスケテイル・アマ・ゾーンをクリアあと一歩の所まで行ったんだから」

 

「すけている? あまぞーん? 何それ?」

 

「一年間、通販で買った物が透明な箱に包まれて配達されるんだ。考えるだけで身震いが止まらないよ」

 

 ふざけているような事を真面目な口調で言うドラコギルディ。そのギャップがとても可笑しく見える。

 華はクスクスと笑い出す。

 

「何それ。変なの~」

 

「笑う所なのかな?」

 

 面白がって笑う華と何故、笑っているのかが理解できていないドラコギルディ。その対比がより一層、可笑しな空間を作り出していた。

 もう、華の目には涙は欠片も存在していなかった。

 

「ねぇ、華……!!」

 

 華がひとしきり笑い終わったのを確認したドラコギルディは声をかけた。

 

「きっとレオギルディは明日もやって来る。その戦いが終わったらさ……」

 

 ここで深く深呼吸。ドラコギルディの想いは固まる。

 

「付き合ってくれないかな……こんな僕でもよかったら……さ」

 

「うん、いいよ!!」

 

「ほんと!? 本当に!? 僕ってエレメリアンだよ? それなのにいいの……!?」

 

 今まで生きてきて最大級の喜びを見せるドラコギルディ。

 とてつもない幸福に包まれていたが……

 

「クリスマスのプレゼント選びだよね!! 華もまいちゃんにわたすプレゼントまだ買っていなかったからオッケーだよ!!」

 

 またもドラコギルディはその巨体をズッコケさせる。その眼には涙が浮かんでいた。

 

「師匠……!! 今わかったよ。鈍感系主人公に振り回されるヒロインたちの気持ちが……!!」

 

「どうしたの?」

 

 華は鈍感だった。何故、ドラコギルディが泣いているのかがわからなかった。

 

「……何でもないよ。とりあえず、明日の戦いに備えて今は休もう。今日も戦いの怪我は深くはないけど、焦りは禁物だしね」

 

「そうだね!! じゃあ、華はティルも一緒に食べれるように下からご飯取って来るよ!!」

 

 華はこれから先もティルと共に過ごす日々に胸を躍らせながら、階段を駆け下りて行った。

 

 

 

 

 レオギルディの部隊が停泊しているアルティメギル秘密基地。

 ここでは日夜、個性的な姿をした怪物(エレメリアン)たちによって様々な討論が盛んに行われている大ホール。討論の内容はこの世界のツインテール戦士であるシャイニーブルームをどのようにして倒すかが主だ。

 

「どうだ!! これが我が魂の力作!! 笑顔のシャイニーブルームたんだ!!」

 

 ヤモリのエレメリアンが画用紙一杯に描かれたシャイニーブルームの絵を掲げた。それを見た周囲のエレメリアンたちは口々に「おぉ~」と歓声を上げだした。

 一見するとふざけているような光景ではあるが、彼らには何か考えがあるのだろう。きっと多分……

 

「ちょっと待て!! シャイニーブルームたんにそんな下品な乳はついてはおらぬぞ!!」

 

「何をいうか!! シャイニーブルームたんの胸からは高い将来性を感じるのだ!! これはそれを表現しているということがわからぬのか!!」

 

「何だと!! 魔法少女には貧乳こそ至高なのだ。貧乳の騎士、クラーケギルディ様が以前、私にそう教えて下さったぞ!!」

 

「別にいいではないか!! 巨乳な魔法少女がいても!!」

 

 彼らは知らなかった。魔法少女シャイニーブルームの力がどこ由来の物なのか、アルティメギルが何故、常勝し続けているのかが。

 盛り上がっていくレオギルディの部下のエレメリアンたち。そんな彼らから隠れるようにレオギルディはこっそりとこの基地に帰還した。誰にも見られずに自室にたどり着いたはずだった。

 

「何をしているのですか。レオギルディ隊長」

 

「ギクッ!! って……何だ。ファルコンギルディお前か……」

 

 隼のエレメリアン、ファルコンギルディはこの部隊の立場では№2に位置し、アルティメギルが行っている作戦及び今回の実験も把握しているこの部隊では数少ない存在であった。

 

「まさか隠れて出撃していたのではありませぬよね? 困ります。まだ、シャイニーブルームの人気は完全な物ではありませぬのは知っているでしょう。隊長のような方はもっとこの世界にツインテール属性が満ちてからではないと」

 

 ファルコンギルディの言う通り、日本におけるシャイニーブルームの人気はかなり高いが、それ以外の国では一部に熱狂的なファンこそいれど、人気としてはまだそこまでであった。

 今回、レオギルディが出撃したのはこの世界にツインテール属性が満ちたからではなかったのだ。

 

「ドラコギルディが心配なのだ……」

 

「隊長。しかしですね」

 

「早くドラコギルディに会いたい。そのことを想うとどんな少年を見ても心が躍らんのだ」

 

 ファルコンギルディは思い出す。ドラコギルディが出撃してしまった日、レオギルディが自室にて延々と泣いている所を見てしまったことを。

 

「あーもう我慢できん!! こんな実験もうやめだ!! ドラコギルディを取り返してくる!!」

 

 そう言うとレオギルディはファルコンギルディの制止を振り切り、再び出撃するために駆け出した。

 

「全く……困った物だ。隊長の少年属性(ボーイ)には」

 

 レオギルディはドラコギルディが好きなのだ。普段はそれを隠し、威厳を保っていたのでドラコギルディや他の部下たちからはただの師匠及び隊長としてしか思われていないが、レオギルディはドラコギルディの少年のような仕草や喋り方その全てが愛おしかった。

 

 

 

 

 2004年12月24日。

 昼過ぎにティルがキャッチした昨日と同じエレメリアンの反応。レオギルディの物だ。世間がクリスマスイブに浮かれる中、華はシャイニーブルームに変身し、決戦の地に向かっていた。

 

「勝てるかな……」

 

『大丈夫だよ。今回は僕も戦うから絶対に勝てるさ』

 

「う、うん!! そうだよね」

 

 ティルことドラコギルディは守りたかった。華と華が愛したこの世界のツインテールを。

 そうこうしている内にシャイニーブルームは決戦の地に降り立った。場所は昨日と同じ辺り一面何もない平原だ。レオギルディは仁王立ちで構えていた。

 

「待ちかねたぞ、シャイニーブルーム。今日、ここで決着をつけてやろう」

 

 威圧するように口を開くレオギルディ。シャイニーブルームは昨日の戦いでコテンパンに負けたこともあり、後退ってしまう。

 レオギルディはニヤリと笑みを浮かべた。それは勝利を確信した証だ。

 

『大丈夫。怯えないで。僕がついているから』

 

「ティル……!! うん!! そうだよね!!」

 

 一人ならば戦う前から怖気づいてしまっただろう。だがしかし、シャイニーブルームは一人ではない。シャインペンダントの中から聞こえてくるティルの声に励まされたシャイニーブルームは力強い眼差しをレオギルディにぶつけた。

 

「昨日、あれだけの大敗を期したというのにその眼……敵ながらあっぱれといったところだな」

 

 レオギルディは余裕そうに称賛を送る。だが、その態度は一瞬にして崩れ去ることになる。

 

『僕も……戦う……!!」

 

 シャインペンダントのクリスタル部分が強く発光し、シャイニーブルームの隣に竜型のエレメリアン、ドラコギルディが並び立った。魔法少女と怪物が並びたつその画はとてもアンバランスな物であった。

 

「な、何!? 何故、変身を解いた!? ドラコギルディ!!」

 

 さっきまで見せていた堂々とした姿から一転、レオギルディは酷くうろたえる。当然だ、レオギルディからすれば真面目で愛らしい愛弟子のドラコギルディが作戦を完全に無視し命令違反をしているのだから。

 

「僕は決めたんだ……!! 僕は師匠やみんなと戦うって。この世界を守るために……!!」

 

「何を言っているのだ……ドラコギルディ……!?」

 

 レオギルディは理解できなかった。何故、ドラコギルディがアルティメギルを裏切るのかが。

 

「行くよ!! 華!!」

 

「うん!! 行こうティル!!」

 

 シャイニーブルームとドラコギルディはコンマ一秒たりともズレないくらい正確に同じスピードでレオギルディに急接近し拳を突き出す。うろたえていたレオギルディは反応が遅れてしまい直撃、後退る。

 

「ぐっ!!」

 

「まだだ!!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

 シャイニーブルームとドラコギルディの拳や脚がレオギルディの体に吸い込まれていく。その戦い方は今まで人々の前で見せていた華麗な魔法少女像とは異なる物であった。

 

「この戦い方……!! それにこの想い……!! まさかドラコギルディ……お前……!?」

 

 反撃をせず、攻撃を喰らい続けるレオギルディは悟った。ドラコギルディが何故、同族と戦う決意をしてまでアルティメギルを裏切ったのかを。

 

「そのシャイニーブルーム()が好きだというのか……!?」

 

 レオギルディの声はシャイニーブルームとドラコギルディの耳には届かなかった。

 十分にダメージを与えたと確信したシャイニーブルームとドラコギルディは距離をとり、必殺の構えを取る。

 

「「ブルームツインバーストォォォ!!」」

 

 シャイニーブルームの必殺の矢がドラコギルディの口から吐く火球と混ざり合い、巨大な一つの矢となりレオギルディに放たれた。

 

「そうか……!! お前がそこまで想っているのならば……勝負だシャイニーブルーム、ドラコギルディ!! この俺の想いとお前たちの想い、どちらが上なのか!!」

 

 レオギルディは両手を突き出し受け止める体勢を取る。二人の力が混ざり合った光の矢とレオギルディがぶつかった。

 

「うぐぅ……!! なんだこの力は……!! このままでは……!!」

 

「「いっけぇぇーー!!」」

 

 二人の想いが重なった時、レオギルディはついに膝をつき、大爆発が巻き起こった。

 

 

 

 

「勝ったの……?」

 

「そう……みたいだね……」

 

 爆心地からはメラメラと炎が燃え上がっている。シャイニーブルームとドラコギルディは力尽きたようにペタンと腰を下ろした。もう体はほとんど動かない。全力をぶつけ切った証拠だ。

 

「やったね……これでこの世界は――」

 

 ドラコギルディが安堵の声を上げる。その時だった。絶望が爆炎の中から姿を現す。

 

「やられはせん。絶対に……やられはせんのだ!!」

 

 レオギルディは再び現れた。その姿は全身傷だらけであり、純白のたてがみも黒ずんでいるほどであったが、まだ戦うには支障はなさそうだ。

 シャイニーブルームとドラコギルディは絶望を感じる。

 

「うそ……」

 

「そんな……僕が力を合わせても勝てないの……?」

 

「笑止。この俺がその程度ではやられはせん」

 

 レオギルディの太い腕が二人を薙ぎ払うべく振るわれる。持てる力を全力で使い、何とか回避したシャイニーブルームとドラコギルディは再び立ち上がる。

 

「華、大丈夫だ!! レオギルディはかなりのダメージを受けている。もう一度さっきの一撃をぶつけられれば……」

 

「そ、そうだね!! もう一度、もう一度!!」

 

 体に鞭を打ち、レオギルディに向かっていくシャイニーブルームとドラコギルディ。ごく一般的な魔法少女アニメならここでも逆転することが出来ただろう。だが、現実は非情だった。

 

「同じ手は効かん!!」

 

 既に全力を使い果たしていた二人の攻撃はレオギルディに対して全く有効打を当てることが出来なかった。ここから始まったのは一方的な蹂躙。シャイニーブルーム側に勝ち目など万に一つ、存在などしていなかった。

 

「もう終わりだ。わかったかドラコギルディ。所詮、いくら力をあわせてもアルティメギルに勝つことなど出来ないのだ」

 

『うぅぅ……』

 

 勝てなかった理由は至極当然のことだった。シャイニーブルームの力はアルティメギル側から用意されていた物、つまりどう頑張っても限界値が決められており、勝つことなど出来ない。いくら将来性があるドラコギルディが力を合わせても、所詮ドラコギルディはまだ師匠であるレオギルディには遠く及ばない。

 シャイニーブルームの変身は解除され、ドラコギルディはティルの姿に戻っていた。

 

「ティル……華……勝てなかったよ……どうすれば……」

 

『くッ……そぉ……』

 

 このままでは華のツインテール属性はおろかこの世界の属性力すべてが奪われてしまう。万が一の可能性にかけるためにも何とかして一時退却しなければならないのだが、逃げられるような状況ではないのが現実だ。

 

「最後に聞こう。ドラコギルディよ、その娘など捨て戻ってはこぬか? お前ほどの素質があればいずれは俺よりももっと上の立場にだって立てるのだぞ。それに……お前が帰ってくれねば……俺は……お前を粛清せねばならぬ……」

 

 裏切り者であるドラコギルディをこの手で殺す。隊長である自分がやらねば他のエレメリアンに示しがつかないのだが、愛するドラコギルディを殺すなどレオギルディはしたくなどなかった。

 この出来事が今よりも数年先ならば、アルティメギル首領直属の戦士、ダークグラスパーが粛清すべく動いており、レオギルディはここまで葛藤することなどなかっただろう。

 

『嫌だ……!! 僕は……華と……華が住むこの世界を……守るんだ!!』

 

「ティル……!!」

 

「ドラコギルディ……お前、そこまで……!?」

 

 ドラコギルディの決意は固かった。今更命など何も惜しくない。守れぬのなら潔く僕も散る覚悟だった。

 それを察したレオギルディは倒れ込む華に目を向けると声をかけた。

 

「お前がそこまで言うならば一つ条件をやろう。その条件を組むのならば俺含めてアルティメギルはこの世界から撤退する」

 

『本当ですか!?』

 

 一筋の希望が見えたこともあり、ティルの口調が昔の物に戻ってしまう。それほどに嬉しかった。しかし、その条件を聞いて再びその顔は曇ってしまう。

 

「シャイニーブルームの属性力を差し出せ。それで手を打とう」

 

 レオギルディとしても苦渋の決断であった。愛するドラコギルディの命と願いを守りつつ、散っていった部下たちにメンツを保つにはこれしかなかった。

 

『そんな……僕は……』

 

「ティル……華はそれでいいよ。華のツインテール属性でこの世界とティルが守れるなら……」

 

『華!? 何を言っているの!? そんなことしたらもう二度とツインテールが結べないんだよ!! いや……それどころかツインテールを見ても何も感じなくなっちゃうんだよ!! それがどれだけ辛いことか』

 

「でも……そうすればみんな助かるんでしょ? だったら華はそれでいいよ」

 

『華……』

 

 ティルは華からツインテール属性を奪うなどしたくはない。だが、それをせねばこの世界が侵略されてしまう。

 

「この世界のツインテール属性の拡散はまだ完璧ではない。今なら俺の手でこの世界の侵略を止めることが可能なのだ。だから早く条件を飲むのだシャイニーブルーム」

 

 その一言を聞いて、ティルは一筋の希望を感じとった。自らの持てる力、記憶を操作する力を全力で発揮し、もしこの世界の人々たちからシャイニーブルームやアルティメギルの記憶を封印し、未来永劫、興味を持たないようにすることが出来るのならアルティメギル側もこの世界を用済みと判断し、侵略を諦めるかもしれない。

 このまま、華のツインテール属性を奪って自分に罪の枷をつけて生きるくらいなら最後にアルティメギルが最も嫌がるであろう反逆をしてやる。ティルはそう思った。

 

『本当に……本当に……いいんだね……?』

 

「うん、だって華はもう大人だもん。ツインテールは卒業しなくちゃ……」

 

 華は涙交じりに強く頷いた。その涙をみてティルは決心を固めた。

 

『……わかったよ華の気持ち。だから後は僕に任せて……ここからが僕の……最後の反逆だから』

 

「ティル? どういうこと? 何するつもりなの!?」

 

『これからみんながシャイニーブルーム()のことを忘れても、僕は絶対に忘れない……絶対に……」

 

 ティルは華にそう言うとドラコギルディの姿になり、レオギルディに向かって歩き出す。

 

「ティル! ティル!!」

 

 制止など聞かず、ドラコギルディは歩みを進める。レオギルディも何かを感じ取った。

 

「何をするつもりだ!! ドラコギルディ!!」

 

「これがこの世界を守るための僕の……答えだ……!!」

 

 ゆっくりと宙に浮かぶドラコギルディ、残る命を全てかけ、全力を出す。

 

「じゃあね、華はこの隙に逃げるんだ……」

 

「ティルーーーーーー!!」

 

「ドラコギルディィィ!!」

 

 華とレオギルディの叫びも虚しく、ドラコギルディは今まで見せたこともないほど強く発光。世界中を緑の光が包み込んだ。

 

「ティル……ティル……?」

 

 光が止んだ時、ティルの姿は何処にもいなかった。

 呆然とするレオギルディに戦闘員(アルティロイド)が通信機を持って現れた。

 

『これは一体、どういうことですか!? 世界中の人々が一斉にシャイニーブルームに対する興味を失っていっています!! これではまるで記憶が失われていくかのようです!!』

 

 通信機越しに慌てふためくファルコンギルディの声が聞こえてくる。レオギルディも今起きているこの未知なる現象に気づき始めた。

 

「奇跡を起こしたとでもいうのか……!?」

 

 いくらドラコギルディが素質を持ったエレメリアンだからといって、世界中に影響を及ぼす力を発揮できる筈がない。正に奇跡としか言いようがない現象が起きていた。

 

「お前……!! そこまでこの世界を……その娘を守りたかったのか……」

 

 泣きながらティルを探す華に向かってレオギルディは歩き出す。

 

「娘よ……ドラコギルディは死んだ。もういないのだ」

 

 それ聞いても未だに現実が受け入れられない華。

 本来ならツインテール属性を奪う絶交のチャンスなのだが、レオギルディは奪おうとはしなかった。

 

(あいつが命を懸けて守ろうとしたそのツインテール。俺には奪うことなど出来ぬ)

 

 それは戦士としての誇りか、はたまたドラコギルディへの愛か。レオギルディは奪えなかった。

 

「娘よ。いくら人々から記憶が無くなっても一度芽生えた属性力はそう簡単には無くならぬ。だが、これ以上、この世界でツインテール属性を拡散し辛くなったのは事実だ」

 

 そう言うとレオギルディはマントを翻し、華に背を向けた。

 

「我々はこの世界を去る。もう二度と襲うことなどないだろう」

 

 レオギルディは華の目の前から一瞬にして姿を消したのだった。

 

 

 

 

 華はこの出来事が悪い夢だと思った。だが、町に入るとシャイニーブルームに湧いていた今まで見えていた人たちが消えている。誰もシャイニーブルームやアルティメギルを覚えていない。その現実を直視し涙が溢れてくる。もうティルはこの世にいない。

 

「華があの時、すぐに決断しないから……ティルは……」

 

 失意に溢れた表情のまま、華は自宅の洗面所にて自らのツインテールを切り落とす。ツインテールを辞める後悔よりもティルという唯一無二の存在を失った後悔の方が大きかった。

 

「もう華がツインテールをしていい資格なんてないよ……」

 

 残されたシャインペンダントの色は濁るようにくすんでいた。

 

 

 

 

 この世界からの撤退を決めたレオギルディの部隊がいるアルティメギル秘密基地。

 レオギルディの部屋にてファルコンギルディが問い詰めていた。

 

「何故ですか!! 隊長!! 記憶が無くなっても一度芽生えた属性力はそう簡単には無くならないのはご存知でしょう!! なのに何故撤退なのですか!?」

 

「もうこの世界に侵略価値がない……ただそれだけだ」

 

「それでは散っていった部下たちが報われません!!」

 

 ファルコンギルディの反論は当然のことであった。だが、この部隊の全権を握っているのはレオギルディだ。ファルコンギルディの考えは通らない。

 

「けじめはつけるさ……今から首領様にあってこの世界の出来事を報告にいってくる」

 

「隊長……!! あなたまさか……」

 

 ファルコンギルディは感じ取った。レオギルディは命を捨てる気なのだと。

 

「最後に科学班に伝えておけ、今回の実験は成功ではあるが、今後俺のような奴を出したくなければ、仲間の一人をスパイにするのはやめるのだとな」

 

 言い終わるとレオギルディは死地へ赴くかの如くゆっくりと部屋から出て行くのであった。

 それ以降、レオギルディの姿を見た者は誰一人としていない。




ご都合主義すぎる気もしますが、いかかでしょうか?
正直、書いていて今回が一番、色々な意味でつらかったです。
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