俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「見つけたぜ!! このクソ野郎!!」
ここは、仕事に追われる会社員たちが賑わう都市部の中、多くのビルなどの建造物に囲まれたお嬢様のみが通う都内有数の女子高校。そんな都会の花園に野郎はいやがった。
校門にて生徒を避難させるために誘導している女教員をターゲットに見据えた様子のプルソンギルディを見つけ、変身した俺は飛び掛かる。
「させねぇつってんだろ!! ボケェ!!」
不意打ちに気味に放った飛び蹴りをプルソンギルディは躱すことなど出来ず、頬に命中。踵の鋭利な装甲が野郎の下種な顔を抉り、大きく傷をつけた。
「ッ……!! ようやく現れたかと思えば、不意打ちとはなんと卑怯な……!! 流石はテイルバイオレット……!! 育ちの程度が知れる」
「んだとぉ? 勝手に人の育ちを侮辱してんじゃねぇよ。このライオン擬きのクソッたれ野郎が!!」
颯爽と現れた
歓声に中には、お姉さま~待っていましたわ~!! とか、テイルバイオレットきた!! これで勝つる!! とかの安心し過ぎて逆に心配になっちまうものまで含まれていたけどな……
「ティアナ、避難誘導頼むぜ。周りがこんなじゃ戦い辛ぇたらありゃしねぇ」
『わかってるわよ。和輝こそ無茶しないでよ……奴がいつ巨大化するかわからないんだから』
「心配すんな。巨大化する前に倒してやればいいってな……!!」
ビルが建ち並ぶこんな場所じゃ、野郎がデカくなっちまうと周囲の被害が出ないように戦うのなんて一苦労にも程がある。攻撃を避けるために派手に躱せば、周囲の建物とその中で逃げ遅れた人が危険だしよ。
とりあえず思いついた攻略法は先手必勝、速攻で瞬殺あるのみだ。
「場所かえんぞぉぉぉッ!! おらぁぁッ!!」
先ずは、ギャラリーからできる限り引きはがす。そう考えた俺は足裏のブースター出力を全開にし、突撃。そのままの勢いでプルソンギルディの大きな体を抱きしめるかのように捕まえると一気に加速した。
「気持ち悪いぞ……!! 俺は貴様のような不良娘に抱きしめなどされたくない!! 抱きしめられるのならもっと包容力の高い養護教諭がいい!!」
「俺だって気持ち悪りぃっての!! てか、しれっと好みの先生を言ってんじゃねぇ!! 気持ち悪い!!」
プルソンギルディと共にグラウンドの隅にある体育用倉庫に激突。その衝撃によって倉庫は崩壊し、グラウンドで線を引く時に使う白い粉がまき散らかされて周囲が白く染まった。
俺もプルソンギルディも互いに即座に立ち上がる。
この辺りなら人の気配はないからさっきよりかは幾分戦い安いだろう。あとは一気に撃破あるのみだ。フォースリヴォンに手を当てウインドセイバーを握りしめ斬りかかる。
「ふうん……貴様の狙いなどわかっているぞ。大方、俺の得意技を発動する前に決着をつけようだとかそんな甘い考えだろう」
ウインドセイバーの斬撃を腕で受け止めながらプルソンギルディは不適に笑う。考えが読まれていることがわかり、ウインドセイバーを振るう腕にブレが出てき始めた。
「だが、逃れることなどできん!! 放課後、誰もいない体育館倉庫で行われる生徒と教師、禁断の保健体育マンツーマン特別実習なみに回避不能なのだ!!」
「エロゲーのやりすぎだ!! そんな現実あるわけねぇっての!!」
渾身のツッコミと共に振り下ろしたウインドセイバーの一閃は容易く弾かれ体ごと吹き飛ばされ、そのまま校舎に激突した。
何とか避難は大方完了しているみたいだがよ、この状況はかなりヤバいぜ……!!
「受けるがいい!! ここからが貴様に送る俺の特別授業だ!!」
プルソンギルディの体から爆発するオーラが放たれ、5メートル、8メートル、10メートル、15メートルとみるみるうちに大きくなっていく。完了したその大きさはざっと見て、前回の約二倍の20メートルクラス越え。4階建ての校舎を完全に見下ろしていやがる。
「クソッたれが……!!」
高さを少しでも合わせるために、俺は屋上に降り立ちウインドセイバーを構えた。
◇
見渡す限り、大自然の森の中を想像させる目に優しい綺麗な緑。足元には霧のような白い煙がかかっており、それは小学生の頃に理科で行ったことがあろうドライアイスの水に入れる実験を思い出させるだろう。
そんな神秘的且つ幻想的な空間の中に華は一人で佇んでいた。
「ここは……どこ?」
華は困惑しながらも周囲を見渡してみるが、何も見つからないし見当たらない。
ここは何処なのか? 他に誰かいないのか? あの時、一体何が起きたのか? 果たしてこれは現実なのか? 頭に浮かぶ疑問は全く尽きない。
どうすればいいのかと悩むそんな中だった。華の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「久しぶりだね……華」
透き通るように純粋で無垢な少年の声。幼き頃を思い出させるこの声……12年前のあの日から聞けていないが忘れる訳がない。華が最も待ち望んでいた亡き相棒の声だった。
「ティル……? ティルなの……?」
声は華の背後から聞こえてきた。華は目に大量の涙を浮かばせながら背後をゆっくりと振り返った。
「随分、大きくなったんだね一瞬、誰かわからなかったよ」
そこには背景が透けて見えるくらい半透明な体をしたドラコギルディが全身から粒子を出しながら立っていた。
華はその様子を見てすぐにこのドラコギルディは幽霊のような精神体であり、ドラコギルディの実体は存在しないことがわかった。
だが、それがどんな状態であれ、亡き相棒の姿を見たことにより感極まった華は、目に浮かべていた涙をボロボロと零れ落としていった。
「ティル……!! 会いたかった……会いたかったよ……!!」
「大人になってもまだ泣き虫なんだね」
普段生徒や同僚の先生、実の親にも見せたことがない程、華は脇目も振らず一心不乱に泣いた。
あの日からずっと気持ちを押し殺し溜め込んでいた気持ちが溢れ出てくる。どんな形であれ、会いたかった。会って話をしたかった。会って謝りたかった。会ってもう一度、笑いたかった。
「ほんと、泣き虫なんだから」
やれやれと穏やかな笑みを浮かべるドラコギルディ。薄っすらではあるが、ドラコギルディの目にも涙が浮かんでいた。
「華……!! 華……!!」
何から話せばいいのか。話したいことが山のように積もっており、何処から手を付けていいのかがわからない。出てくるのは言葉ではなく、涙だけ。この気持ちを抑えることなど出来やしなかった。
そんな華を見ながらドラコギルディは少し俯き、申し訳なさそうに沈んだ表情をしながら口を動かし始めた。
「辛い想いをさせちゃってごめんね……あの日から12年間、今まで華がどんな気持ちで生きていたかなんて考えもつかなかった」
「そんなことない……!! ティルは何も……何も悪くない……!!」
「ううん、あの時の僕は、どうやったらこの世界を守れるかばかりを考えていて、残された華がどんな気持ちになるかなんて微塵も考えていなかった。その結果、華がこんなに辛い想いをするなんて」
華とてドラコギルディがどんな想いで命を犠牲にしたのかなんてわかっていた。だがそれでも、辛く悲しいことには変わらない。全ては自分の責任だと思い込まなければ生きてなどいられなかったのだ。
「みんなのツインテールを守ろうとするあまり、華がツインテールを辞めてしまう原因になっちゃうなんて……僕は華のパートナー失格だね」
「ううん、ティルは今でも華の最高のパートナーだよ」
「ありがとう、華にそう言ってもらえるなんてもう感無量って感じだね」
最愛の華にそう言われたこともあり、ドラコギルディの顔に笑顔が戻ってきた。そして、華も涙をスーツの袖で拭うとずっと言いたかったこと喋りだす。
「華もごめんなさい。ティルが折角、命を捨てる覚悟で守ってくれたのにツインテールを辞めちゃって」
「いいんだ。ツインテールならこれからまた結べばいい。属性力がある限り、華にツインテールを愛する気持ちがある限り何度だって結ぶことが出来るさ」
華もまた憑き物が落ちたかのような眩しい笑顔を浮かべる。何年ぶりだろうか、ここまで心の底から笑顔になれたのは。笑顔のまま、涙がまたポロポロと溢れ出てくる。
「華はツインテールを好きでいていいんだよね……」
「当たり前さ。どんなに年を取って、どんなに変わっちゃったとしても、好きな物や事を好きでいちゃいけないなんてありはしないんだ」
12年間、どれだけこの言葉を待っていたのだろう。今、ようやく華の縛っていた見えない鎖はバラバラに解けていった。
それと同時にドラコギルディの肉体から溢れ出ている粒子も加速度的に増えて行った。華もドラコギルディも互いに察した。もうお別れの時間なのだと。
「もう、お別れなんだね……」
「うん……そうみたいだね」
どんな形であれ、もう一度会うことが出来たこの出来事自体がそもそも奇跡なのだ。ドラコギルディは既に死んだ身、終わりの時がすぐにやって来るなんて華も理解できていた。
華は最後に聞きたかった。これから私はどうすればいい? また、変身することはできるの? それを聞いたドラコギルディは穏やかに微笑み答える。
「華が願えば、属性力は答えてくれるさ。この世界で最も強いツインテール属性を持つ華ならね」
それを言い終えた後のドラコギルディの姿は、首から下は完全に光の粒子となって消滅していた。もう別れの時だ。
「じゃあね、僕はこれからもずーっと華のことを見守っているよ」
「うん。ありがとう……」
ドラコギルディの姿が完全に光の粒子となって消えていくと同時に、再びシャインペンダントが眩き光を発し出す。華は目を閉じ、再び目を開くと目の前にはいつもと何ら変わらない屋上の風景が広がっていた。
華にもう迷いはない。ティルの愛したこの世界を今度こそ自分のツインテールで守ってみせる。だが、決心はついたものの変身ができる完全な確証はないし、そもそもエレメリアンが何処に現れたのかすらわからない。
途方に暮れていた華の想いに答えたのかシャインペンダントはまたも光を放つ。光はドーム状に華の周りを覆い蕾状に変化し、浮かび上がり飛び去った。
◇
「もう終わりなのか? テイルバイオレット。 逃げ回っても何も変わらんぞ。被害が増えるだけだ」
「チッ!! あの野郎……!! 調子乗りやがって……!!」
結局、サイズが違いすぎる俺の攻撃はほとんど効果がなく、碌な戦果もえることが出来ずに屋上は崩壊し地上に引きずり降ろされた。巨大化したプルソンギルディの攻撃は一発一発が災害クラスの威力だ。現状を良く言えば回避に専念、悪く言えばただ逃げ回っているだけだ。
避ける度に野郎の拳が校舎に振り下ろされ、後者はみるみるうちに破壊され崩れ去っていく。
まぁ、別にこの学校の出身でもねぇから思い出もクソもないけどよ。それでも歴史や思い出がたくさんつまった学び舎が崩壊していくのは何かこみ上げてくるものがあるぜ。
「おいティアナ!! 避難はもう終わったのか!?」
『無茶言わないで!! いくら何でもこんな短時間でこの量は無理よ!!』
呑気に応援していた人、そもそも気づいていなかった人、全員がプルソンギルディの巨大化を見たことでこの場の危険度をようやく理解し、我先にと避難を開始し始めたが流石に人が多すぎて避難が間に合わない。
このまま攻撃を避け続けようにも派手に動きすぎると学校だけじゃなく周りの建物にも被害がおよび逃げ切れていない人がかなりヤバい。
『ちょっと待って……あれってもしかして……』
ティアナが何かに気づいた様子だ。走り回りながら耳を傾ける。
『あいつのお腹をよく見て。あれって多分、昨日できた傷じゃない?』
振り下ろされるプルソンギルディの拳は大きく跳躍することで回避。空中で体勢を整えながらティアナの言葉を頼りにプルソンギルディの腹を確認してみるとそこには昨日、シャインペンダントからの光に貫かれた大きな傷があった。
「一か八か、あそこに全力を叩きこむっきゃねぇ……!! ってわけか」
『行くわよ和輝、受け取って!!』
「おう!!」
スタッと地面に着地を決めた俺はティアナから送られてくる属性力をウインドセイバーに乗せつつ
「……ぬうぅ……はぁ!!」
だが、プルソンギルディを切り裂くことはできなかった。プルソンギルディは咄嗟に腕をクロスに構えて防御しやがった。腕にぶつかった一瞬だけ拮抗しあったものの、プルソンギルディの裂帛の雄たけびと共にストームブレイクは霧のように消えてしまった。
「マジかよ……」
「お返しだ!! くらえい!!」
呆然する俺をプルソンギルディは踏み潰すべく足を上げ振りおろす。それに気が付いた頃には、目の前には野郎の汚らしい足裏が迫っていた。
『和輝!!』
「やべぇ……間に合わねぇ……!?」
すぐに気持ちを切り替えていれば回避は間に合ったかもしれない。だが遅かった。
踏み潰されることを悟った俺はここに来るまでティアナとのやり取りを思い出す。ティアナはどんな残酷な真実を告げられたとしても、そのことを前向きに捉えて気持ちを切り替えることが出来る。だが、俺はそうじゃなかった。
戦うのが俺じゃなくティアナだったら……こんな俺じゃやっぱりダメなのかよ……
「和輝ーー!!」
ティアナの声がテイルギアを通してじゃなく、直接聞こえてくる。だけどもう駄目だ。このまま踏み潰されちまうのがオチなんだよ。
諦めて目を閉じようとした時だった。空からもの凄いスピードで緑色の光を纏い隕石のような何かが飛んでくるのが見えた。それは勢いを全く緩めることはなく、振り下ろされるプルソンギルディの足に激突し、俺の窮地を救った。
「な、なんだ!? これは……!?」
体勢を大きく崩されたプルソンギルディは驚きの声と共に半壊している校舎に倒れ込んだ。目の前にその何かが落ちてくる。それは光でできた球? というよりも蕾のようにも見える。大きさは直径約2メートル弱で俺の背丈よりもやや大きく、常に緑に光っている。
困惑するティアナが駆け寄ってくる。ティアナも俺も目の前に落ちてきたこの緑色に光る物体が何なのかが気になる。
一方、プルソンギルディは倒れた拍子で巨大化は解除されてしまったらしく、瓦礫の中からは通常のサイズで起き上がってくる。
「何者だ!! この俺に歯向かう愚か者は何処のどいつだ!!」
プルソンギルディの叫び声に呼応するかのように謎の物体は蕾が花開くように頂点からゆっくりと展開されていく。中に人影があるのがわかる。一体、誰がいるんだと固唾を呑んで見守った。
「ここは……」
「「先生!?」」
完全に展開しきった謎の物体は消滅し、中からはここが何処かがわかっていない素振りをみせる山村先生の姿が現れた。
「涼原君に橘さん? 涼原君がテイルバイオレットになっているということは……やっぱり」
先生は瞬時に状況を理解し、プルソンギルディの方向に体をむける。
黒いスーツに流れるロングの黒髪。目に涙はなく、キリリとした表情でプルソンギルディを見つめている。その姿はとても凛々しく、さっきまでの悲しみに暮れていた姿がまるで想像できない。
「貴様……あの時の教師か……!? 何故、ここにいる!? どうやってここにやってきた!?」
先生の登場に酷く狼狽するプルソンギルディ。さっきまでの威勢の良さは消え失せていた。
「ティルが連れてきてくれたの。あなたたちから属性力を守るために」
そう言い終わると先生はポケットから部屋ゴムを取り出すと髪を結び始める。一つ二つと一瞬の内に房が作られ結ばれ、見事なツインテールが完成した。
「綺麗なツインテール……。って何!? これ!?」
「どうしたティアナ!? なっテイルブレスが!?」
先生の首に下げられたシャインペンダントが光り輝き、それに共鳴するようにティアナのテイルブレスのツインテール属性のエンブレムが輝きだす。そして、テイルブレスから光が放たれ、シャインペンダントに降り注がれた。
シャインペンダントの形がみるみるうちにメカニカルに変化していく。まるで女児向けの変身アイテムが男児向けの変身アイテムに変わっていくような感じだ。
「これは……」
変化を終えたシャインペンダントの形は元の面影を残してはいるが、テイルブレスやテイルドライバーに似た装飾が特徴なメカニカルな物となっていた。
新しいその姿をあえて名付けるというのならテイルペンダントってところか。
「確か変身の合言葉はテイルオンだったかしら?」
「そうだけどよ……まさか先生、あんた……!!」
わかったと先生は強く頷くとテイルペンダントを握りしめ、立ち上がったプルソンギルディと向かい合う。
「今度こそ……今度こそ守り切ってみせる……!! 私の力で!! 私の想いで!!」
テイルペンダントを天に掲げ、変身の言葉を力の限り叫ぶ。
「テイル……オン!!」
テイルペンダントから放出された緑の光が繭となって先生の体を包み込み、爆裂。変身を終えた先生が優雅に舞い降りた。
鮮やかな緑に染まった髪は花を模したフォースリヴォンが結び、ツインテールを形作っている。上半身は大人向けのドレスと機械が融合したかのような緑のテイルギアを身に纏い、腰から下は動きやすいように大きく切れ込みがある深緑のロングスカート。装甲と装甲の隙間やスカートの切れ込みからはクリアグリーンのインナースーツがチラリと見える。勿論、大きな胸は健在だ。谷間がしっかり見える。
変身を終えた先生はゆっくりとプルソンギルディに近づいていく。
「やはりただ者ではなかったか……。もう一度、聞こう。貴様、何者だ……!!」
「この姿じゃシャイニーブルームでもないし……うーん? なんだろう?」
先生は顎に手を当て今の自分の名称を考え始める。戦闘開始かと思えばなんじゃこれ、何つーか一気に気が抜けちまう。
答えがでたのか先生は手をポンと叩くと堂々と名乗りを上げる。
「今の私はテイルブルームよ!!」
「しかと聞いた!!」
格好よく名乗り終えた先生……じゃなかったテイルブルームにプルソンギルディは攻撃を開始する。巨大化していない通常サイズの一撃でもその丸太のような腕で殴られればひとたまりもない。このままでは危ないというのにテイルブルームは全く微動だにしない。
「反応すらできぬか。哀れだなテイルブルーム!!」
意気揚々と放つプルソンギルディの拳は完全に捉えたと思われたが、攻撃が当たる間際の一瞬でテイルブルームは体を必要最低限だけ動かし回避した。まさに紙一重。テイルギアで強化された視力でなければ何が起きたのかわからないほど速かった。
今の回避をマグレだと思い込むプルソンギルディは何度も何度も単調な攻撃を繰り返すが、テイルブルームに傷一つつけることはなく空を切る。
「何故だ!! 何故当たらん!!」
柔よく剛を制すを体現するかのように攻撃を鮮やかにいなしていくテイルブルーム。揺れるツインテールと合わせてまるで花のようだ。
そして、綺麗な花には棘があるという言葉通り、テイルブルームは攻撃の回避と同時に手刀をプルソンギルディに叩き込んでいく。
「はぁ!!」
掌底がプルソンギルディの腹にクリーンヒット。大きく弾き飛び、二人の距離が空く。
「中々の威力だ。さては貴様……体育教師だな?」
「いいえ、違います」
「そうか。それは残念だ。貴様の担当科目がもし保健体育であるなら、俺の夢である教師とのマンツーマン実習が叶えれることができたというものの」
戦闘中だというのに何言ってんだ!? この野郎!? ……って思ったけどよ。冷静に考えてみればこいつはエレメリアンだし、当たり前か。さっきまでシリアス展開が続いていたから忘れていたぜ。
「ごめんなさいね。私は数学なの」
いや、ツッコまないのかよ。普通、ツッコミを入れるところでしょうよ。
「ねぇ和輝、体育の実習はわかるけど。保険の実習って何?」
ティアナ……ツッコミ入れるとこそこじゃないから。
前にもあったけどティアナって俺のことを変態呼ばわりする癖に下ネタ関係に疎いというか鈍いというか。余程、興味がなく生きていたのか、それとも、親がそういうものに触れないように頑張ったのか。まぁ、前者な気がするけど。
「数学教師なら眼鏡はして欲しいものだな」
「生憎、私は視力2.0なので」
なんか色々とずれている気がする。まぁ、いつもこんなだと言われればこんなだけどよ。
「さて、お喋りはここまでだ。そろそろ決着と行かせてもらおうか!!」
そんな事を考えている間、プルソンギルディは巨大化の構えに入っていた。再びプルソンギルディの体から爆発するオーラが放たれグングンと大きくなり、20メートルを優に超すレベルに到達する。
不味い。いくら回避が得意なテイルブルームでも流石に巨大化されてしまうと勝てるかどうかわからない。
「先生!! 頭のリボンに触れてください!! 武器が作れます!!」
ティアナが即座にアドバイス。それを聞いたテイルブルームはフォースリヴォンに触れ武器を生成。そして手に現れた武器は弓、弦は存在しておらず弧の部分にはクリアグリーンの刃が見える不思議な弓。
「
「必殺技ってことね。わかったわ、橘さん」
テイルブルームは目標を射るべくその弓を構える。すると光の弦が出現し、それをゆっくりと引き狙いを定める。
「なるほど、弓矢で俺を打ち抜くというわけか……!! ならばかかってこい!! 全力で受け止めてくれる!!」
プルソンギルディの言葉に耳を傾けている様子が微塵も感じられないテイルブルームは目を閉じ、ゆっくり大きく弦を引きしぼる。
(この感じ、レオギルディに負けたあの時を思い出す。でも、今の私はあの時とは違う……!!)
「
テイルブルームの周りの大地が震え、地中から溢れだす力が矢を一つ二つと作り出していく。
「ブルームツインシュート!!」
必殺の矢は二つとも轟音と共に解き放たれた。そのまま二つの矢は風を切り、空にツインテールの軌跡を描きながら飛んでいく。プルソンギルディは腕をクロスに構え受け止めるが、二つの矢は全く勢いを衰えることなく腕を貫き、そのままプルソンギルディの腹の傷に風穴を開けた。
「み、見事だ……テイルブルーム」
貫かれたプルソンギルディは元のサイズに戻るべくドンドン小さくなっていく。そして、完全に元のサイズに戻ると同時に全身から火花を散らし大爆発。プルソンギルディは木端微塵に吹き飛んだ。
爆発をバックに佇むテイルブルームの姿、揺れるツインテールの輝きを見たことで俺は幼き頃の思い出がフラッシュバックする。4歳の頃、街中でアルティメギルが人々を襲っている場面に出くわした俺は、助けに現れたシャイニーブルームのツインテールに魅せられたんだ。
そうだったのか……俺がツインテール属性を持つきっかけになったのは先生だったのかよ……
◇
翌日、世間はテイルブルームについての話題で持ち切りであった。
勿論、双神高等学校、2年2組の教室も同じだ。クラスメイトの大半がスマホやタブレットを見ながらぺちゃくちゃと談笑している。
「ねぇねぇ、テイルブルームってやっぱりテイルバイオレットと何か関係があるのかな?」
「そりゃああるでしょ。あたしは年の離れた姉妹だと思うけどな~」
「いやいや、親子って線もあるでしょ」
「「それだ!!」
な~にがそれだだ。全然違ぇっての。
頓珍漢な戯言を言い出すクラスメイトを見て、つい思ってしまう。口に出さなかっただけましだろう。
「え!? マジで!? 山村先生が?」
「しーッ!! 声が大きい!!」
後ろでティアナが匠にテイルブルームの正体を教えていた。正直、ティアナが一番五月蠅いけどな。
ひと眠りでもしようかと思った矢先、休み時間終了のチャイムが鳴り響き、教室のドアが勢いよく開けられ山村先生が姿を現した。
テイルブルームの話題を楽しんでいたクラスメイトは俺らを覗いて皆、先生の髪型を見て驚いているようだ。何故なら先生の髪型がツインテールになっていたからだ。
「先生、もしかしてテイルバイオレットやテイルブルームの真似ですか? すっごく似合ってますね!!」
先生の顔が嬉しそうに緩む。
「そう言ってくれてありがと」
その笑顔とツインテールは誰よりも輝いていて見えた。
ようやく追加戦士を登場させることが出来ました。色は俺ツイ二次、お約束の緑色です。
ブラックと必殺技が弓矢でかぶってるとか言わない。一応、あっちのメイン武器は鎌なので……
キャラクター紹介10
テイルブルーム
武器:大地の弓 グランアロー
必殺技:ブルームツインシュート、他
山村華がテイルペンダントで変身した姿。
和輝とは違い、ツインテール属性が非常に高いため、一人で変身することが可能。また、パワーはバイオレットよりも上回っているが、機動力はやや劣る。足りない機動力を補うため、派手に動かずに必要最低限の動きで回避、防御からのカウンター戦術が基本。
ティルの教えがあるため、和輝とは違ってちゃんと名乗りも入れるし、必殺技名も言うのが特徴。
エレメリアン探知を自力で行えないのが玉に瑕。