俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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前回までずっとシリアス強めだったので、今回の和輝パートは日常成分強めです。


第38話 最大の敵

 冷房が効いている筈なのに汗が止まらない。ダラダラと滝のように流れてくる。

 

「おい、どうすんだよこれ。このままじゃマジでヤバいぜ、俺たち」

 

「んなこと何度も何度も言わなくてもわーってるっつーの……!!」

 

 7月に入った。もう外は真夏のように暑くて、汗をびっしょりかく休日出勤のサラリーマンと遊び盛りの元気一杯のガキどもなどで溢れかえっていやがる。

 まぁ、そんな真夏の日曜の景色なんてこの際どうだっていい。俺と匠は今、過去最大の強敵を目の前にしているんだ。正直、今まで戦ってきたどんな戦いよりも今目の前にしているコイツの方がヤバい。いっそのこと全て忘れてしまえればどれだけ楽だったろうか。現実逃避したくなる程度にはこの状況が辛い。

 

「匠、今何時だよ。何分経ったんだよ」

 

「12時43分。まだ10分も経ってないぜ」

 

「クッソ……」

 

 早く時が過ぎてほしいと願う気持ちともう時間がないぞと焦る気持ちが交錯して辛い。今ほど、能力バトル物でド定番の時間停止能力が欲しいと思ったことはないぜ。この際、時間停止じゃなくても何でもいいから早くこの空間から解放されて、バイクにでも駆ってあの青空に飛び出してみてぇよ。

 窓の外、ベランダの向こう側に広がる青々とした無限の空に思いを馳せるも何も状況は好転しない。寧ろ時間が刻一刻と過ぎて余計に辛く苦しい思いをする羽目になっちまう。匠に続く形で部屋の時計を見ても、短針も長針もどちらもほとんど進んでない。

 

「前に見たアレ、中々イケたよな~」

 

 この野郎……!! 匠の奴、ついに現実逃避をおっ始めやがった。

 まだ、開始して1時間、いや30分すらも経っていねぇっつーのに、この馬鹿は……!! クッソつまんねぇこと言ってんじゃねぇよ。張っ倒してやろうか。ええ?

 さっきまで軽い現実逃避をしていた俺が言うのも正直な所、結構どうかと思うがな。

 

「実は今日、持ってきちまったんだよなー。なー和輝、今からでももう一度やろうぜ~。パソコンならマスターにでも頼んだら貸してくれるだろうしよ~」

 

「馬鹿!! コレどうすんだよ!! この量を頭に叩き込むのに何時間かかると思ってんだ!!」

 

「どうせ、俺たちには無理だって……それならいっそ、今を有意義に生きる方が大事じゃねーか? ほらよく言うだろ? 命短し遊べよ男児って」

 

 何かを悟り、完全に諦めモードに突入した匠に激を飛ばすが、やはりというか全く効果がなく意味不明なオリジナルことわざまで飛び出してくる始末。命短し恋せよ乙女だろうが……!! こんな俺でも知ってるぜ……!!

 先月はコイツの激のおかげでティアナと仲直りが出来たのに、今じゃ立場が逆転している。

 あれちょっと待て。この馬鹿、今持ってきちまったとかほざいてなかったか?

 

 俺の嫌な予感は見事に的中。(この馬鹿)は自前の手提げ袋の中から一本のゲームが収められたケースを取り出した。

 

「やっぱり……!! お前、そんなもん持ってくんじゃねぇ!! てかティアナにでも見つかっちまったらどうすんだよ!!」

 

 ケースに描かれているのはピンクの背景に思わず目を背けたくなる裸同然の肌色目立つ女キャラたち……いや、健全な男子なら釘付けになるのが正しいか。認めたくないけど俺もそうだし……

 まぁつまり、(この馬鹿)が持ってきたゲームってのは大人のオタクが夜中におかずとして楽しんだりすることも多いアダルトなゲーム、つまりエロゲーだ。

 本来は未成年な匠が入手できるはずもないのだが、匠の野郎は青葉さんを経由することで手に入れやがった。あの人も俺たちと同じでまだ未成年のはずだけど、悠香さん曰く小学生時代からの筋金入りのエロゲーマイスターな時点で今更か。

 

「お前もこの子いいなとか言ってたじゃねーか」

 

 匠が指さす場所には赤髪ツインテールの元気そうな男勝りの女の子、空ちゃんが写っている。

 確かにこの空ちゃんは俺の好みの部類ではある。髪型がツインテールってのもあるけどよ、それよりもこの子はティアナに近い雰囲気が感じられるのが原因でもある。まぁ、アイツと違って空ちゃんの胸はそこそこあるけどな。

 

「……って、それとこれとは話が別だ!! 明日、テストなんだぞ!!!」

 

 そう、俺たちが戦っている相手は高校生の大半が嫌う学期末テストのことだ。

 話は先週の月曜日に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、涼原と川本はいるかー!! いるならちょっとこっちこいー!! 話がある」

 

 

「んだよ、堀井じゃねぇか。何の用だよ」

 

「俺ら何かしたっけ? 最近、他校の奴らとも喧嘩してねーし……もしかして華先生がテイルバイオレット(お前)の事をうっかり口滑らせたとかじゃ……」

 

「華先生に限ってそれはねぇだろ……」

 

 6月27日、2016年6月最後の月曜日。昼休み時間中、ティアナがトイレに行ったこともあり、教室の隅で匠と他愛もない談笑を続けていた俺と匠の二人は突如として現れた堀井に呼び出しをくらった。

 ちなみに華先生というのはテイルブルームこと山村華先生のことだ。何でも俺とティアナが喧嘩中に何かあったらしくて本人曰く、真面目過ぎて堅苦しい人だと思われて欲しくないからもっとフレンドリーに下の名前で呼んでくれて構わない、寧ろ下の名前で呼んで欲しいってことからこう呼ぶことになったんだ。

 

「だから堀井先生と呼べと何度言えばわかるんだ……。まぁそんなことはこの際どうでもいい。お前らこの話はここだとちょっと話辛い。指導室に行くぞ」

 

「たっく……しょうがねぇなぁ」

 

「へいへい、わかりましたっと」

 

 堀井の奴に連れられて生徒指導室に行くのも随分と久しぶりだった。

 一年の頃は匠と揃って生徒指導室に何度行ったのかわからないくらいだったのに、二年に上がってからはこの時が始めて、二年に上がって初っ端からティアナと出会ってエレメリアンとの戦いに関わることになったのが原因だろう。俺も匠も少し大人になったのも少なからず、原因の一つだとは思う。

 

(にしてもここで話辛いってことはよー。やっぱしテイルバイオレットだってバレたんじゃねーの?)

 

(あの堀井に限ってそんなことあるわけねぇだろ……多分)

 

 堀井に聞こえぬようにひそひそ声で話し合った。

 正直、この時の俺も匠も心臓がバクバク音を鳴らすくらいにはヤバいんじゃないかと疑っていた。その数分後、別の事の方が遥かにヤバいと知ることになったんだが。

 

 堀井に連れられてやってきた生徒指導室。簡素で殺風景な懐かしき景色、一対一で向かい合った机と椅子が特徴だ。

 俺と匠は共に生徒側の椅子に座り、机を挟んで向かい側、堀井は教師側の椅子に座る。堀井は二枚の用紙を取り出し目の前に広げた。その用紙には見覚えがあった。

 

「涼原と川本、これはお前たちも知っている中間テストの結果と今学期始まってからの出席記録だ」

 

「それが今更どうしたっていうんだよ」

 

 去年の時点でわかっていた事だが、俺と匠の中間テストの結果は散々と言っていいものだった。不登校などでテストを全て受けていない者を除くと匠が最下位、俺がそれに続く形だ。言いわけするつもりはねぇが元々俺は頭は良くない。俺に関してはさらに朝に弱くて午前の授業の大半は居眠りしているのも原因だろうな。

 この時の俺たちはどうせ来週の期末テストはもっと頑張れとかもっと欠席を無くせとか何とか色々ガミガミ言うつもりなんだろうなと錯覚していたが、現実は深刻だった。

 

「このままじゃお前たち二人とも留年だぞ」

 

「「え、マジ……!?」」

 

 この時、留年という余りの衝撃に思わず俺と匠の声は重なった。

 

「当たり前だ。出席日数に単位数とこのままの成績じゃ補修で済む問題じゃないぞ。先生はお前たちに留年なんてしてほしくないから警告しているんだ」

 

 それから昼休み終わるまで続く堀井の熱血指導(笑)はいつもとは別の意味でほとんど上の空だった。

 このままじゃ留年? それは不味い、非常に不味い。いくらばあちゃんの懐が結構あるといっても、だからといって学費だってただじゃねぇし行かせてもらっているのに申し訳がつかねぇ。ましてや貧乏な匠の家なんかもっと深刻だ。そして何よりも高校生で留年なんてクッソダセぇ真似、ティアナの前では絶対にしたくない。

 辛うじて聞こえた堀井の話では、何でも次の期末テストで全教科で赤点を回避すれば何とかなるとのことだった。

 

 

 

 

 

 

 その結果、俺と匠は期末テストを明日に控えた今日の日曜日にティアナの自宅、つまりアラームクロックの上にあるおやっさん宅で勉強会を行うことになった。

 何故、ティアナの家で勉強会をしているのかというと、三人寄れば文殊の知恵という諺があるが、(そもそも二人なのは置いておいて)馬鹿が何人いても結果は同じなのは目に見えてる。だから中間テストで学年トップのティアナの助けを乞おうって算段だ。

 だけど現在はまだお昼。現在のティアナは午前中までのアラームクロックの手伝いを終えて、昼食の時間だ。だからティアナが飯を食い終わるまでは何とか二人で頑張ろうと誓ったのだが……

 

「もういい、俺は学校なんて辞めてバイトで生活してやるんだーーー!!」

 

「馬ッ鹿野郎!! 今のご時世、一生バイトは無茶だっつーの!! ましてや今時中卒なんてな……!!」

 

「向こうには愛する彼女がいるんだよーー!! 愛する力さえあればどうだってなる!!」

 

「たかがゲームの1キャラの為に!! 人生捨てる馬鹿になってんじゃねぇよ!!」

 

「うるさい!! 現実(リアル)に好きな子がいるお前になんかにわかるかーー!!!」

 

「ティアナに聞こえたらどうすんだよ!! 黙れこのボケカス!! てか落ち着け!!」

 

 エロゲーのケースを握りしめながら錯乱し暴れる匠を必死になって抑える俺。

 殴り飛ばすのは簡単だが、今の匠じゃ逆効果だろうなと思うと手が出せない。

 このままじゃ俺も匠のように錯乱しそうだ。早いとこ誰でもいいから誰か来てくれと願っている時だった。

 

「もう、うるさいわね……あなたたちは静かに勉強するってことがどうしてできないのよ!!」

 

 部屋のドアが開き、昼食を終えたティアナが遂にやってきた。

 俺からしたら今のティアナは救いの女神のようにも見える。ぷりぷりと怒った拍子で揺れる赤紫のツインテールが一層のこと綺麗且つ、ティアナ自身の全てが言葉で表せないくらいには可愛いからしょうがない。

 

「ハッ……!! 隙ありぃ!! ブッ飛べぇぇぇ!!」

 

 見惚れてどうすんだよと我に帰り、ティアナの登場で一時的に暴れることを止めた匠を見逃さない。手に握りしめている邪念の塊(エロゲー)をふんだくると窓を開けて、ベランダの向こう側の青空目掛けて力一杯投げ飛ばした。

 

「俺愛しの陽奈ちゃんがーーー!!」

 

「いよっしゃぁぁーーー!!!」

 

 推しキャラを泣き叫ぶ匠と謎の達成感に打ちひしがれる俺。そして余りにわけわからないこの急展開に目が点になるティアナであった。

 

 

 

 

 アルティデビルの基地の大ホールでは夏の暑さなど本来無縁に等しいはずなのに、男臭い男性型のエレメリアンでごった返しになっていて別の暑苦しさが大ホール内を支配していた。

 エレメリアンという存在にだって女性型つまり女がいない訳ではない。先日、和輝たちが戦ったグレモリーギルディを始め、今は無きアルティメギルには最高クラスのエレメリアンであるゼウスギルディ、またユグドラシルギルディを隊長、いや先生とする女エレメリアンのみの部隊、貴の三葉(ノーブル・クラブ)などを含めて多数の女エレメリアンが所属していた。

 だがしかし、いくら大組織であるアルティメギルですら男エレメリアンと女エレメリアンの比率は男が圧倒的だ。故に規模がアルティメギルよりも明らかに小さいアルティデビルにおいてグレモリーギルディという数少ない女エレメリアンという華を失うことが如何に男臭さを上昇させるものかは想像に難くない。

 

 そんな男臭さ溢れる大ホールの一角、リーダー格のバアルギルディの席では周囲のエレメリアンが引くレベルの奇妙な空気が漂っていた。

 

「ああ、やはり君はなんて美しい……その秘めたる想い、対象が私であればどれだけよかったか……」

 

 手先の器用な仲間のエレメリアンに作ってもらったテイルバイオレットのフィギュアを愛しそうに眺めながら虚空に向かってうわごとを呟くバアルギルディ。

 その様は明らかに異質で浮いていた。

 

「あいつどうしたんだよ……気味悪ぃぜ」

 

「ちょっと前にグレモリーギルディ捜索から帰ってきた時は部屋で凹んでたって聞くぞ。この数日の内に何があったのだ……」

 

「確か3日前だっけかな? テイルバイオレットがオリアスギルディの奴を撃破したとかの報告が来た時から急にああなっちゃったとか……テイルバイオレット大好きもあそこまでいけば病気もんだね」

 

 先週辺りに起きたグレモリーギルディの事件までのバアルギルディはテイルバイオレットを好きだとは公言はしていたが、あんなにも大っぴらにその様子を見せることはなかった。アルティメギル首領のような明確な絶対的ボスが存在しないこのアルティデビルをしっかりと纏めるために、できるリーダー格として気高に振舞っていたというのに、グレモリーギルディの一件以来はこの調子である。

 

「テイルバイオレットじゃなくてテイルレッドたんならわかるんだけどなぁ~」

 

 一斉に頷きあう一同。彼らとてテイルバイオレットは嫌いではないのだが、やはりテイルレッドの人気は世界を超えて広がっているのだ。

 

「テイルレッドたんに一度でもあってみたいもんだなぁ……」

 

「ていうかどうして俺ら、アルティデビルはテイルレッドたんの世界じゃないんだよ。アルティメギルの連中を超えるならテイルレッドたんの世界に向かうべきじゃん」

 

 彼ら含めてこの基地にいるエレメリアンたちは皆、バアルギルディに連れられる形でこの世界にやってきたのだ。当初はテイルレッドに会えない事に文句を言う者をいたが、テイルバイオレットの出現もありいつの間にかそう言った声は聞こえなくなっていった。

 

「そういやどうしてだろうな?」

 

「おい、お前。俺らを代表してちょっと聞いて来いよ」

 

「俺っち、やだよ。気持ち悪いんだもん」

 

 一度気になったことははっきりさせないと気が済まなくなるのはある意味当然の事だ。

 だが、はっきりさせるにはバアルギルディに聞くしかない。それだけは皆、勘弁してほしいと願っている。絶賛、自分の世界に没頭中のバアルギルディに話しかける勇気のある者はいない。

 

「俺様自作、テイルブルームのおっぱいを完全再現したマウスパッドを今なら特別にプレゼントしてやるから早よ行け」

 

「それは欲しいけど……でもやだよ~」

 

「仕方ないな、ならば我が行こうか。私は貧乳派だからマウスパッドなどいらぬがな」

 

「いやいや、君が行くのならばここは僕が行こう。あ、僕はマウスパッドなんて間に合っているからいらないよ」

 

「え……、じゃ、じゃあやっぱり俺っちが……俺っちも勿論……」

 

「「「どうぞどうぞ!!」」」

 

「えええええっ!?」

 

 ライオンに烏と様々な動物を模した悪魔をモチーフとするエレメリアンたち。厳つい見た目に似合わぬ馬鹿馬鹿しいコントのようなやり取りの末に一人のエレメリアン、三つ首の番犬ケルベロスを思わせるナベリウスギルディが、電源の入ったままの通信機片手に嫌々ながらバアルギルディに近づいていく。

 ナベリウスギルディを陥れた他の者たちは大ホールの隅に移動して、持たせた通信機から話が聞こえてくるのを待つ。

 

『あのさ、バアルギルディ……』

 

『なんだ……!! ナベリウスギルディ……!!』

 

 通信機越しでも伝わってくるバアルギルディのオーラ。お楽しみの時間を邪魔されてご立腹なのが伝わってくる。今まで感じた事のないバアルギルディの迫力に萎縮する面々。この騒ぎには関与していない大ホールにいた他のエレメリアンたちは大半がそそくさと大ホールを後にする。

 

『実はちょっと気になったことがあって……』

 

『気になること……? それは何だね?』

 

『実は……』

 

 固唾を呑んでその様子を見守る他のエレメリアンたち。バアルギルディからでているオーラは変わりなく迫力に満ち溢れている。

 引き締まった蛙のような顔を持つバアルギルディに睨まれ萎縮するナベリウスギルディの姿はまるで蛇に睨まれる蛙ならぬ蛙に睨まれた犬。

 ナベリウスギルディは恐る恐る口を開こうとするが中々口がいうことを聞いてくれない。

 少しの沈黙の果て、ナベリウスギルディは口を開く。

 

『実は……どうして俺っちたちはこの世界に来たのかなって? アルティメギルを超えるためならアルティメギルを倒したツインテイルズがいる世界に行った方がって……』

 

 勇気を振り絞り、声を出すことに成功したナベリウスギルディに皆、賞賛の気持ちを忘れない。今のナベリウスギルディならきっと暴走状態のテイルブルーを目の前にしても果敢に戦えるだろう。

 バアルギルディは少しばかり悩むそぶりを見せたのち、静かに話始める。

 

『……これは以前にも皆に言ったが、この世界には究極のツインテールに匹敵しうるツインテール属性を持った者が存在している。それを奪取し、アルティメギルの残党に我々の力を示すのも目的だが、それとは別にもう一つの目的がある』

 

『もう一つの目的……?』

 

 ナベリウスギルディを送り出したエレメリアンたちは皆、コメントを入れるのを忘れてしまい真剣に耳を澄ました。

 

『ああ。君は知らなかったかもしれないが、元々アルティデビルは私ではなく私の古くからの付き合いの友人が設立をしようと言い出したものでね』

 

『友人って……アガレスギルディの爺さんのこと?』

 

 ナベリウスギルディは周囲を見渡し、アガレスギルディを探すが見つからない。

 それもそのはず、ナベリウスギルディは知る由もないがアガレスギルディは今日、部屋に籠りテレビでババアコンテストなる大会の中継を見る為に大ホールには顔を出していない。

 

『アガレスギルディではない。アガレスギルディはアルティデビルを作るにあたって最初に声をかけた友人であることに間違いはないがね』

 

『じゃ、じゃあその友人ってのは……』

 

『彼の名はベリアルギルディ。彼は少々、上から目線で偉そうな所があるが彼は頭もよく腕も立つ。そういえば、アルティメギルの科学班にパイプを持っていたとも語っていたな。現在はある物を探すために今は別行動をとっている」

 

『ある物?』

 

『そのある物はかの強大だったアルティメギル首領すらも破壊することができず、最終的には封印するしか対処出来なかった人間が作りし未知の兵器らしい。彼が言うにはそれを起動させるには強力なツインテール属性が必要だという。その兵器を手に入れ動かすためにもこの世界に存在する究極に匹敵しうるツインテール属性を奪取せねばならないのだよ』

 

『そんなヤバい代物が……。ん? でもそれならツインテイルズの世界でもよかったんじゃ?』

 

『ナベリウスギルディ、悔しいが今の私たちではたとえ逆立ちしてもツインテイルズには勝てんよ。だからこの世界で属性力を奪取するのだ』

 

 当初、バアルギルディとベリアルギルディはツインテイルズの世界への侵攻を考えていたが、組織力を含めて何もかもがアルティメギルに劣るアルティデビルでは勝ち目などないのは明白。そんな中で突如としてこの世界で観測された強大なツインテール属性の反応。過去にアルティメギルが訪れた痕跡こそあれど、ツインテイルズの世界ほど侵略が難しい訳ではないと踏んだバアルギルディとベリアルギルディは和輝たちの世界に現れたのだ。

 その結果、バアルギルディはテイルバイオレットという理想の相手を見つけることになったのは運命の悪戯を感じさせずにはいられない。

 

『我々の真の目的であるアルティメギル首領ですらなし得なかった所業をした上で彼女たちに勝ち、真の意味でアルティメギルを超えることのためにはベリアルギルディが言うある物が必要だということだ』

 

 言い終えるとバアルギルディはテイルバイオレットのフィギュアを優しく握りしめながら大ホールを後にした。バアルギルディは去り際にナベリウスギルディに向かって出かけるかもしれないと言い残して。

 ナベリウスギルディは仲間の下に戻ると皆、既に大騒ぎであった。

 

「なんだろうな? そのある物って」

 

「アルティメギル首領が封印せざるを得なかった兵器だとか……興味深いね」

 

「それさえあえば俺だって……!!」

 

 大ホールに残っていたこの騒ぎに関わっていなかった他のエレメリアンたちも騒ぎに参加して、盛り上がりは最高潮も迎える。

 ある物とは一体なんなのか? それに必要なツインテール属性を最初に手に入れるのは一体誰か? 

 胸の内にそれぞれの思惑を秘めながら会話は続いていった。

 

 

 

 

 和輝たちの世界でもツインテイルズの世界でもないとある世界。そこは既に過去、アルティメギルの侵略を受け滅んだとされている。

 エレメリアンたちが世界間を移動する際に使用する移動艦を二回り位スケールダウンさせたサイズの小さめの移動艦がその世界には滞在していた。

 

「間違いない。ようやくたどり着けた。この世界にこそ、このオレが求める物がある」

 

 コクピットにてニヤついた不気味な笑みを浮かべるのは、動きやすいシックなデザインの戦闘服を着こみヤギの角を頭に携えた正統派な西洋の悪魔を模した姿が特徴な見るからに邪悪なエレメリアン、名をベリアルギルディ。

 バアルギルディに取り入ることでアルティデビルを立ち上げさせた張本人のエレメリアン。

 

「フフフフ、ハーハッハッハッハ!! もうすぐだ。もうすぐで願いが叶うぞ」

 

 抑えらず高笑いをあげるベリアルギルディ。

 ベリアルギルディは一枚の写真が入った写真立てを手に取り、眺める。そこに収められた写真にはベリアルギルディともう一人、別の女性型エレメリアンが仲良さそうに肩を組みながら写っていた。

 

「オレ愛しのマイエンジェル。君の成し遂げれなかった大いなる野望は、天才である君に相応しい真の天才たるこのベリアルギルディが叶えてやろう」

 

 そこから再びあげるベリアルギルディの高笑いは空間という闇に溶け込むように消えて行った。




ベリアルギルディの愛しの彼女とは一体誰のことでしょうね?
次回以降もお楽しみください。
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