俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回の後半、今までで一番ふざけた気がします。


第39話 テスト前日

 現在、昼も過ぎた午後の4時。私は今、和輝と匠の二人のテスト勉強を手伝っている。

 堀井先生が仰るには和輝と匠の二人は、今までの成績と今までの出席日数など考えるとこのままの調子で1学期期末テストを迎えると確実に留年が決定するみたい。

 中間テストの時の結果や悠香さんがばらした去年の成績から和輝と匠、二人ともが勉強が苦手で成績が悪いことなんて知ってはいたけど、まさか進級してからまだ間もない1学期の時点で留年が懸念されてそれを忠告されるなんて前代未聞もいい所よ。でも、今までのテストに関しては和輝個人の怠慢が原因だとしても、今学期から度々発生している授業の無断欠席や途中退出はエレメリアンが原因だけどね。

 

「和輝は今度はこれ、匠はそれが難しいならこっちの方から片付ける。わかった?」

 

「たっく……あいよ」

 

「ほいきた。まかせんしゃい」

 

 どうして私が手伝うことになったのかと言うと勿論、断る理由がないのもあるけど、和輝に関してはエレメリアン関係は何だか私と出会ったことも間接的に影響を与えているんじゃと思って申し訳なくなっちゃうのもある。

 後、自慢するわけじゃないけど、私は転入してから早速学年トップに立つくらいには勉強が得意なのよね。多分、記憶を失う前から真面目だったのかな? それともとびきり頭のいい人が私の勉強を見てくれていたからかもね。

 まぁ、兎に角、私は普通よりも頭はいい部類だし、他人に勉強を教えるのなんてお茶の子さいさい。それにいくら和輝たちが頭が悪くても仮にも高校生なんだから大丈夫だろうと思っていた……いたんだけど……

 

「おい、ティアナ。こっちもさっきみたいに頼むぜ」

 

「今度はどのあたりがわからないの?」

 

「全部。俺、この授業も基本的に寝てっからさ。何もわかんねぇよ」

 

「なぁティアナちゃん。このWHO(うぉー)?って何?」

 

 はぁ……。思わずため息が出そうになる。

 この二人の勉強が出来ないレベルは私の想像を遥かに下回っていた。知ってはいたけど和輝は午前中の授業は基本寝ているから一から教えないといけないし、匠に関してはそんな話ではなく中学生からやり直した方がいいじゃないと思っちゃうくらいには何もわかっていない。

 

「どんな読み方したらそうなるのよ。それはWHO(ダブリューエイチオー)って読むの」

 

「だぶりゅーえいちおー? なんそれ? 特殊部隊の略称か?」

 

「World Health Organization、世界保健機関のこと!! というかここに書いてるじゃないの!!」

 

 怒っちゃ駄目なんだろうけど、余りのレベルの低さに怒りが沸いてくる。こんなにも人に物を教えることが難しいくて根気がいるなんて思ってもみなかった。

 お茶の子さいさいと息巻いていた過去の私を叱ってやりたい気分よ。

 

「なるほどなー。世界保健機関かー。また一つ頭がよくなっちまったぜ。このままじゃ赤点回避は確実かもな」

 

「その程度で何言ってんだか……。寝言は寝て言えっての。そんなんじゃお前は赤点間違いなしだな」

 

「んだとー? じゃあお前はわかったのかよ!!」

 

「小学生どころか幼稚園児クラスのガキでも知ってるだろ。つまりお前は幼稚園児以下って訳だ」

 

 いや、流石に小学生や幼稚園児じゃわからないでしょ……と心の中でツッコミを入れる。

 今みたいに匠が頓珍漢なことを言っては和輝はそれに対してやらなくていいちょっかいをかけては匠が食って掛かるこのやり取りをこの数時間で何度見たかわからない。唯一わかるのは和輝も匠も機嫌がドンドン悪くなっていることだけ。多分、和輝もテスト勉強のストレスが溜まってるからだとは思うけど、正直一番ストレス感じてるのは私よ。

 

「誰が幼稚園児だ!! いうすんぶんかい?すらも全くわからなかったお前には言われたくねーぜ!!」

 

「お前だってわかってねぇだろうが!! 少なくとも俺はてめえよかマシだっつーの!! 」

 

 何て低レベルな喧嘩なんだろう。怒りの余りに眉間に青筋がピクピクと浮かんでくる。和輝も匠も互いに決して馬鹿にできるような立場じゃないのが余計に頭にくる。

 そんな私に気づかない和輝も匠もヒートアップし始め、遂には私にまで火が飛んでくる。

 

「なぁ? ティアナも思うだろ? 匠の方が俺よりも馬鹿だって」

 

「そんなことねーよな? 和輝の方がバカだよなー?」

 

 駄目、もう我慢の限界。私は勉強用のテーブルとして使っているちゃぶ台を力一杯両手で叩きながら怒りを二人にぶちまけた。

 

「どっちもどっち!! つまらないことで喧嘩してる暇があったらさっさとやる!!」

 

 私の腕力は生まれつき常人のそれを遥かに上回っていることもあり、哀れなことにちゃぶ台は無残にべっきりと半分に割れてしまった。

 和輝も匠も互いに喧嘩を止めて、無残な姿になったちゃぶ台を凝視していた。

 

「「あ、はい……」」

 

 まだ一学期末だと言うのに堀井先生がどうしてこんな早くから留年の危機と言っているのかが理解できたわ。

 頭がより一層痛くなる。今まで頭が痛くなる発言をするエレメリアンは何度も見てきたつもりだけど、この状況に勝てる奴なんていやしない。というか頼むから来ないでそんなエレメリアン。

 

 こんなので本当に大丈夫なのか凄く不安な気分になった時だった。

 微弱だがそれでいて確かな感覚が緩やかに私の全身を駆け巡り貫く。この感覚間違いない。私は衝動のままに立ち上がった。

 

「ちょっとまって……!! ツインテールが来る……!!」

 

「はぁ……? こんな時に馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ」

 

 さっきまで匠との喧嘩で馬鹿を晒した和輝には言われたくはない。ツインテールをした人が近くにいれば感覚でわかるのは当たり前のことよ。それにこの感覚は華先生のような馴染のツインテールじゃないからならなおさらわかるわ。

 

「ツインテールって……まさか……!!」

 

 怪訝そうな表情を浮かべる和輝と対照的に匠は何かを確信した様子で凄く怯え始めた。匠は床に落ちている無残なちゃぶ台の残骸を手にし、部屋の隅に移動すると隠れるようにちゃぶ台の残骸の陰にまわり盾にする。

 ツインテールが来るのにこんなにも怖がるなんて何かあるのかしらと頭に?が浮かぶ私と成程なと理解する和輝。そして遂にツインテールの反応は部屋のドアの前にやってきた。

 

「ここにいるのは下でマスターさんから聞いたからわかっているんです!! 早く出てきてください!!」

 

 ノックもなしに力強くドアがバンと開かれる。

 そこには元気で可愛らしい上結びのツインテールをした小学校低学年くらいの小さな身長の女の子が威風堂々と立っていた。身長に関しては私の方が断然上なのに胸の方は明らかに私以上に膨らんでいるのがわかって色々と悔しい。

 

「やっぱり、誰が来たかと思えば美希(みき)ちゃんか」

 

 赤の他人に対して言うそれではなく、まるで昔からそう呼んでいるかのように自然に名前を呼ぶ和輝を見てちょっと危機感が私の中に芽生える。夢宮ヒカリやグレモリーギルディの事件での際に抱いた感情と近い。多分、そんなことはないんだろうけど一応誰なのかははっきりさせる必要がある。

 溢れ出る感情を何とか抑え込んだ状態でひそひそと和輝に聞いてみた。

 

「ちょっと和輝、あの子は一体誰なの?」

 

「そういやティアナは会うのが初めてだったな。あの子の名前は川本美希、匠の妹だよ」

 

「い、妹……?」

 

 そう言えばさっき彼女は近づいてくると知ってからの匠の態度が明らかに怯えていたわね。妹が来るなら怯えて当然よね……ってあれ? 普通そうだっけ? 

 その疑問の答えがわかるのに時間はいらなかった。美希ちゃんは目的の兄が隠れている場所を即座に看破すると怒りの炎をオーラを放ちながら近づいていく。兄と妹というよりも悪戯がバレて隠れる子供とその母親ね。

 

「兄さん!! そんな所に隠れても無駄です!! 白状してください!! さっき堀井先生から聞きました!! 兄さんは留年するかもしれないんですよね!! これは一体全体どういうことですか!!」

 

「そ、それは……」

 

「我が家の収入が厳しいことなんて兄さんも知っていますよね!! お父さんもお母さんも必死に働いて何とか学校に通わせてくれているというのに留年なんてどういうことですか!! お父さんやお母さんに失礼です!!」

 

「まだ留年が決まった訳じゃないし……それに学費だったら俺だってバイトしてるし……」

 

「いいですか兄さん!! 自分も払っているからと言って留年するくらいサボっていいわけじゃありません!! そりゃあ私だって普段からバイトで家計を支えようとしてくれている兄さんには感謝はしてますけど、それとこれは話が別です!! 大体、兄さんは――」

 

「美希~~勘弁してくれよ~~!!」

 

 美希ちゃんは私や和輝の事に気づいている様子ではなく、匠を問い詰め叱りつけることに必死になっている。ズバズバと正論を並び立てて逃げ道を塞ぎ追い詰める姿は正に弁護士や検事のそれね。

 何だか匠が怯えるのもわかる気がする。だって美希ちゃんの放つ迫力はその小さい身長からは想像もつかないくらいには凄まじい物だもの。身長差的にも匠の方が遥かに大きいはずなのに美希ちゃんの方が大きく見えるくらいにはね。

 

「ああ見えて美希ちゃん、中3なんだぜ。びっくりしちまうだろ?」

 

「嘘でしょ……!?」

 

 和輝にそう言われた私は驚きを隠せない。

 だって美希ちゃんの身長は目測で多分、120㎝前半。これは小学生高学年の平均身長以下の数値で小学生低学年に間違えられてもおかしくないはず。これで中学生、それも来年には高校に進学するはずの3年生にはとてもじゃないけど見えやしない。

 改めて二人の様子を伺ってみると、ガミガミと正論をまくし立てて叱っている美希ちゃんと戦意喪失して「はい」の二文字しか言えなくなった状態で正座させられている匠ととても珍妙な光景が広がっていた。

 

「今度からは気を付けてくださいね!! わかったですか兄さん!!」

 

「……へい…………」

 

「返事は「へい」じゃなくて「はい」です!!」

 

「は……はい……」

 

 数十分の後に言いたいことを言い終えた雰囲気の美希ちゃんは匠を解放する。解放された匠は白くなって床に横たわった。

 一体私たちは何を見せられていたんだろう? なんて思っていたら、美希ちゃんは私と和輝の方に向き直るとペコリと頭を下げた。

 

「和輝さんにティアナさん、いつもいつもこんな兄がご迷惑をかけてるのに仲良くしてくれて本当にありがとうございます。今日の所はどうもお騒がせしてすいませんでした」

 

 とてもじゃないけどあのちゃらんぽらんな匠の妹とは思えない礼儀正しい行動に目が点になる。

 見た目は小学生なのにまるで中身は高校生以上。兄と妹で何処をどう間違えればこんなにも差がつくんだろう。美希ちゃんの年齢に対する身長といい、何か突然変異でもおきていないとおかしいくらいよ。

 

「んなことねぇよ。匠にはむしろ世話になりっぱなしだ。てか美希ちゃん、いつからツインテールしてんだよ? 前会った時は違ったじゃねぇの」

 

「テイルバイオレットさんたちの活躍もあるんですけど、最近ヒカリちゃんもこの髪型始めたから、ファンとして真似してみようかなって思ったんです」

 

 見た目に似合わないくらい心は大人びているわねと思っちゃったけど、夢宮ヒカリみたいな人気アイドルが好きだなんてやっぱり年相応の普通の女の子なんだと感じる。

 ぎこちないながらも必死に真似をしようとして結んだ美希ちゃんのツインテールはとても輝いて見える。

 

「あれ? てか美希ちゃんはティアナとは初対面だよな? 何で知ってんだ? 匠に聞いたか?」

 

 言われてみれば確かにそうね。匠には妹や弟がいることは知ってはいたけど、私はそれ以外ほとんど知らなかった。

 どんな名前でどんな人柄なのかさっぱりわからなかったのに向こうは私の姿も名前も知っているのは匠が私の事を教えた可能性が高い。

 

「はい。兄さんが言ってました。最近、和輝さんにティアナさんって言う彼女が出来たって――」

 

 か、か、か、彼女!? わ、わ、私が和輝の!? 

 美希ちゃんの言葉を聞いて動揺が抑えきれない。ツインテールから足のつま先まで全身のありとあらゆる部分が熱くなり真っ赤に染まっていくのがわかる。

 水嶋さんの時もそうだったけど、周囲からはやっぱりそう思われていることが嬉しいような恥ずかしいとような複雑な二つの気持ちになって私を支配する。

 

「ち、ち、違ぇっつーの……!! 俺がティアナと付き合っているなんてそんな訳ねぇだろ……!! 誰がこんな奴と……!!」

 

「ちょっと和輝!! その言い方はないでしょ!!」

 

 現実に引き戻された気分。確かに和輝と付き合ってないのは事実だけどこんな奴って何よ!! 和輝にだけは言われたくない。

 強い口調で言い返すと和輝はたじろぎながらも何かを言おうとした時、美希ちゃんが私たちの間に割り込んできた。

 

「喧嘩するのはやめてください……!! ごめんなさい、勘違いした私が悪いんです」

 

 年下、それも胸を除けば小学生サイズの女の子にこうも言われると怒る気も失せちゃう。不思議な感じ。

 恋って難しいとしみじみ思う。今さっきみたいにムカつくことも沢山あるのにそれでも好きなのは変わりないんだもん。

 

「てかよ、てめぇこの野郎!! おめぇが一番悪いんだろうが!! 美希ちゃんに変なこと吹き込みやがって!! おい!! 何か言えよごらぁっ!!」

 

 和輝は横たわる匠の首元を両手で強引に掴み持ち上げて揺さぶるけど、美希ちゃんのお説教で力尽きた匠には何の反応がなく何も返ってこない。苛立ちを隠せない和輝は右の拳をギュッと握りしめて匠の頬目掛けて繰り出した。

 鈍い音と共に床に倒れ込む匠。正直生きてるか不安になるけども、多分大丈夫だろうと謎の安心感もある不思議な感じ。ちなみに実の兄が殴られたというのに、悲しいかな美希ちゃんは全くと言っていいほどにノーリアクションだった。

 

「兄は昔からこうなので大丈夫です」

 

 さっきとは打って変わって美希ちゃんは冷淡に告げた。

 

 

 

 

 日も落ちた辺りで門限に五月蠅い美希ちゃんが匠を連れて帰り、その後はティアナにマンツーマンで勉強を見てもらっていた。二人きりなら効率も良くなるし大丈夫だろと思っていたが結局な所いまいち自身がつかない。いくら頭がいいティアナに見てもらっていたとしてもやっぱり、期末テストの範囲は広すぎるつーか難すぎるつーか、兎に角全然自信がつかない。こんなことなら普段から寝るんじゃなくて真面目に授業を受ければよかったぜ……なんて後悔してももう遅く、テスト開始までの時間は刻一刻と近づいてきていた。しまいにはテスト勉強を付き合ってくれたティアナに悪いの承知でバレないカンニングの方法でも考えだした矢先にエレメリアンは現れた。

 蒸し暑い夜空の下、自慢のバイクにティアナを乗せて俺はエレメリアンが現れた場所まで疾走する。

 

「もう少し。次の角曲がって左」

 

「あいよ」

 

 エレメリアンの出現ポイントをレーダーで見たティアナが場所を伝えてくれるから俺はそれに従ってアクセルを全開。お巡りに切符を切られないギリギリの速度を保つ。

 ティアナの指示通りに角を回った先の行き止まり、清楚な服装に身を包んだ高校生くらいの女の子を隅に追い詰めている様子のエレメリアンが見えた。

 遠目からでもわかるくらいに大きな単眼で構成されるエレメリアンの頭部と目玉からでているひも状の神経が絡みつく無駄に引き締まった胴体。

 

「貴様……俺には汚れているのが見えるぞ。そのような格好をしていても俺の目は誤魔化せん……」

 

「ひっ……!! 来ないで……!!」

 

 大きな目玉に直接体が生えた見た目の奇怪な姿のエレメリアンは低い唸り声を上げながら追い詰めた女の子に今か今かと迫っていやがる。女の子の方は恐怖の余りにへたり込んでいて、助けを求める為の声を上げることができちゃいない。

 バイクを止め降りた俺とティアナはヘルメットを脱ぎ捨てて駆け出す。俺の隣でティアナのテイルブレスが輝きを放ち、俺の腰にテイルドライバーを出現させる。

 

「テイルオン!! 何してんだぁ!! てめぇ!!」

 

 走りながら変身を完了させた俺はテスト勉強で溜まっていたストレスを拳に込めて叩き込むべく走る速度を上げる。声に気づいた目玉のエレメリアンは何事だと振り向くがもう遅い。俺の拳はそのデッカイ目ん玉の真ん前に迫っており対応を許さない。行き止まりを作っているブロック塀を崩すように勢いよく目玉のエレメリアンをブッ飛ばした。

 

「その子は頼んだぜ」

 

「任せて。和輝こそ頼んだわよ」

 

 被害にあっていた女の子は気絶していたのでティアナに安全な場所まで運んでもらう。幸いなことに属性力は奪われてはいないみたいだし、大丈夫だろう。

 ティアナが女の子を担ぎ上げ離れていった直後、瓦礫の山となったブロック塀の残骸を掻き分けながら目玉のエレメリアンが起き上がる。

 改めてその全体像を見るが、今まで出会ったエレメリアンの中でも1、2を争えるくらいに気持ち悪い見た目をしてやがる。こんな気持ち悪い見た目だ。何か特殊な能力でも持っているに違いないと間合いを取りながら様子を伺う。だが、目玉のエレメリアンは特に何かをするわけでもなくその大きな目ん玉で俺の事をまじまじと見続ける。

 

「何見てんだ、てめぇ?」

 

「ほう……よもや、貴様のような乱暴な者がそうだったとは……人は見かけによらんようだな」

 

 目玉のみで構成されているというのにこのエレメリアンの表情が手に取るようにわかるこの野郎は今、笑っていやがる。何が面白いんだこの野郎……!!

 

「そのような装甲に守られていても俺の目は全てを透視する……貴様のまだ処女であることなど丸わかりだ」

 

 

「は……?」

 

 今、この野郎なんつった? 聞き間違いじゃなかったらこいつは今、処女がどうとか言ってやがったよな? いやいや、そんなことないはず。処女かどうかを確かめる為だけに透視の能力を使う馬鹿がどこにいんだよ。

 

「俺の名はヴィネギルディ。処女属性(バージン)を追い求める者なり……」

 

「聞き間違いじゃねぇのかよ!!」

 

 馬鹿は目の前にいましたとさって……!! んな馬鹿な!!

 本能が股間周りを隠せと危険信号を送る。俺はそれに従い咄嗟に手で覆いかくしながら距離を取る。童貞卒業の前に処女卒業は流石に笑えない。そんなことは断じてやるものかよ……!!

 

「何度言えばわかる……。俺の目は全てを見通す故に貴様の膜はまだ傷一つないことなどお見通しだ。それに恥じらうことはないぞ。処女というのは寧ろ誇るべきだ。処女……それは誰にも汚されていない純白の証。この世で最も美しい」

 

「最低な奴だな!! てめぇ!!」

 

 見た目もキモイが中身はもっとキモかった。今まで出会ったエレメリアンの中で間違いなくトップの気持ち悪さだ。最近、まだ真面目な部類の敵が多かったからか、久しぶりのこの感覚に慣れない。気をしっかりと保つためにも別の事を考えて紛らわすしかない。

 戦闘の真っ只中だというのに俺は頭に明日のテストのことを思い浮かべる。どうやったらバレないカンニングができる? 覗き込むのは簡単だが危険すぎるし、カンニングペーパーは今から作るんじゃ間に合うか微妙なラインだ。テレパシーや透視みたいな超能力が使えたらなぁ……。ん? 透視? 

 

「どうした……? 何をしているテイルバイオレット」

 

「おいてめえ、確か何でも見通せるんだよな?」

 

「当たり前だ。俺に見通せぬ物などない。傷をつけずに処女かどうかを確かめる為に修行を積んだこの目に嘘はないのだ」

 

 そんなことの為に修行してんじゃねぇよ……!! ってツッコミはこの際置いておく。ティアナがいない今がチャンスなんだ。

 俺は警戒心を解くとゆっくりとヴィネギルディに近づいていく。

 

「なぁ、俺と取引しねぇか? 俺さ、明日からテストで困ってんだよ。今日、見逃してやるかわりにその眼使って俺のこと助けろ」

 

「はぁ!? 何言っているんだ貴様は!? 俺にカンニングの手伝いをしろと言うのか!?」

 

「バカッ!! 声が大きいんだよ。ティアナに聞こえたらどうすんだ。いいか? やり方は簡単だ。その眼を使って窓の外からティアナの答案を盗み見して俺に伝える。それだけだ」

 

 肝心の伝える手段にはワイヤレスのイヤホンでも使えば多分大丈夫だろ。イヤホンなんてしていたらバレるだろなんて野暮なツッコミはなしだ。そのあたりは何とかするしかない。

 うろたえるだけで返事をよこさないヴィネギルディにイライラし始めた時、背後からティアナの声が聞こえてきた。

 

「ちょっと和輝ーー!! 何してるのよ早く倒しちゃいなさいーー!!」

 

 ヤバッ……!! 戦わずにヴィネギルディとこんなことしてるとバレたら何て言われるかわからねぇ……!! 

 ティアナの声的にまだバレてない。今ならまだ間に合う。

 

「やっぱなしだ!! てめえみたいなド変態はとっととくたばれ!!」

 

「ええー!? 貴様から言っておいてそれは酷い!!」

 

 ヴィネギルディは抗議の声を上げるがそんなもの俺には知った事じゃねぇ。はなからテストが終わり次第抹殺する予定だったんだし何も問題ない。

 右の脛に蹴りを入れ、痛みからかヴィネギルディは右足を上げる。ヴィネギルディは今、左脚一本で体を支えていやがる状態だ。俺は左の足元を払い、ヴィネギルディをうつ伏せに転倒させる。今度はうつ伏せのヴィネギルディを片足で踏みつけながら地面に押さえつけ、ウインドセイバーを出現し手に握る。

 

「き、貴様……!! 何をするつもりだ……!!」

 

「処女処女うっせぇてめぇにお似合いの最期をくれてやんだよ!!」

 

「ま、まさか……!!」

 

 俺の次の行動を悟ったヴィネギルディは必死になって尻を手で隠そうとするがもう遅い。完全開放(ブレイクレリーズ)し嵐のエネルギーを纏ったウインドセイバーを尻目掛けて突き刺した。

 

「俺の処女がーーー!!」

 

 あほらしい断末魔と共に爆散するヴィネギルディ。ちょっとやり過ぎたかなと一瞬思ったが、人の大事な所を透視する不届き者には丁度いい末路だと思うようにした。

 まぁ、そんなことよりも……

 

「はぁ……明日のテストどうすんだよ……」

 

 今日一番のため息をついた。




見返すと今回、匠の妹初登場なのにヴィネギルディに全部もっていかれた感が凄い。


キャラクター紹介11

 川本美希(かわもとみき)
 性別:女
 年齢:15歳
 誕生日:5月10日
 身長:124cm
 体重:29kg
 B76・W52・H71

 匠の妹で川本家の長女。現在中学三年生。
 小学生低学年と見間違うくらいの低身長と礼儀正しくですます口調が特徴。また、夜遅くまで仕事のため家事ができない両親に代わって川本家の家事全般をこなすなど、匠と違ってとてもしっかりしている。
 お人形遊びが趣味だったり、憧れのアイドル夢宮ヒカリの真似をしてツインテールを結びはじめるなど少し幼い部分もある。
 年齢故に実の兄である匠には冷たい態度が目立つ。
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