俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
今日の診察を終え、病室のベットに戻ってきた頃にデジタル時計は3時15分を示していた。
外はまだまだ明るく太陽が照っており、窓の外から見える近場の公園には夏真っ盛りということもあり、おやつの時間を忘れたガキどもが汗だくではしゃぎ回っていた。
「明日には退院か……」
医者によるともう俺の体は大丈夫とのことだ。予定通り、明日には退院することになっている。
ベットから体を起こして少しばかりの運動でストレッチし確かめる。確かに2日前、目覚めた直後にはまだ全身に走っていた痛みは綺麗さっぱり無くなっている。別段、後遺症も全くないわけだし、これならば退院しても何ら問題はない。
退院すればあの太陽の下を自由に走り回れるというのに、俺の心は晴れないでいた。
(退院したくない。ずっとここにいたい)
そんな気持ちが心を過る。
この気持ちは別に休みが終わるのが嫌で学校に行きたくないといったしょうもないサボり癖が原因なんかじゃない。
原因はグラシャラボラスギルディ及び
退院し日常生活を送り始めれば、グラシャラボラスギルディとまた対峙するかもしれない。いや、それだけじゃない。これから出てくるエレメリアン全てが
何でもいい。誰でもいい。こんな俺を守ってほしい。
そう思うとこんな所にでも居続けたくなっちまう。
「みっともねぇな……俺、こんなにも臆病だったのかよ」
自虐的に今の自分を辛く評価する俺はベットで大きく横になる。
戦える力を持っているのに恐怖心故に戦えない。使命感と責任感が重くのしかかる。
このままじゃどうにかなりそうだったので、何でもいいから気を紛らわせるものがないかと探す。そんな俺の目に丁度いい物が飛び込んできた。
「まぁ、気分転換にはなるか……」
青葉さんと匠が残したノートパソコンとエロゲーのケース。
既にエロゲーのディスクはパソコンに入ったままなので、そのまま電源ボタンを入れてパソコン及びゲームを起動。
何となく一から始めるのも面倒なのでタイトル画面からロードするを選択、コンプリートしてあるであろういくつものセーブデータから適当に一つ選び、ロードしてゲームを開始した。
『俺はもう逃げない!! 童貞を捨てた俺にもう怖い物なんかない!!』
『ならば見せてみろ!! 魔法使いになるのを諦め、非童貞を選んだ貴様の力を!!』
周りに聞こえてしまうと不味いのでイヤホンをつけてプレイしているのだが、何というかコメントに困る内容だ。
匠の言う通り、確かに熱いシーンもあるのだが、それら全てを台なしにするかのように頭悪い台詞が飛びかい続けやがるんだ。正直、バカゲーか燃えゲーか判断しかねる。
まぁでも、何だかんだ言ってはいるが、いいゲームなんだろうなとは思う。
次にどうなるのか気になって目が離せなくなっており、いつの間にか気がついたらもう5時手前の時刻になっていた。夏だと言うこともあってか、まだ外は比較的明るい。
「ん? 誰か来てたのか……?」
キリが良かったのでパソコンを閉じた俺はふと部屋の入口付近の台に目をやると、いつの間にか紙袋がポツンと置かれていることに気が付いた。ベットから降りて確かめてみると明日の着替えが一式、紙袋の中で包まれていた。
ベットに戻った俺はふと考える。
誰かが届けてくれたのだろうか? だとしたら多分、おやっさんかばあちゃんのどちらかだろう。ティアナではないと思う……
だって昨日、あんな事言っちまったわけだし、こんなみっともない俺なんかの為に来ないよな……
暗い気持ちが心に差し込むそんな時、部屋のドアが叩かれる。
着替えを持ってきてくれた二人の内のどちらかだろうと思い、どうぞと一つ声をかける。
すると扉は開き、予想だにしていなかった人物が現れた。
「はぁ……、和輝……!!」
「お、お前、どうしたんだよ……!?」
こんな時間にやって来るなんてばあちゃんかおやっさんのいずれかだと思っていたが、まさかティアナとはな。
驚きと同時に言葉では言い表せない嬉しさのような何かが沸き起こる。
だが、それを上から塗りつぶすかのように昨日の出来事が脳裏に蘇る。何も悪くないはずのティアナを追い出してしまった自分自身の醜態を。
「私ね。答えを見つけたの……ずっと探していた答えが……」
「答え……」
うんと頷いたティアナはベットの上、俺の隣へ腰かける。
カーテンとカーテンの隙間から差し込む夕日がティアナのツインテールをより鮮やかに彩っている。とても綺麗で目を奪われた。
「ねぇ和輝……覚えてる? いつだったか、私が転入してきた日の事」
「んだよ。そんなの忘れるわけないだろ。初授業で大学クラスの意地悪小テストを全問正解するわ、体育の時間では勢いあまって金属バットをへし折るわ。無茶苦茶にもほどがあるぜ」
ツインテールの転入生が来るって匠の奴が言うから誰かと思えばティアナで少しがっくしきちまった事だけは口が裂けても本人に言うことは出来ない。
「あれは……!! 久々の学校生活でちょっと張り切り過ぎたの……!!」
「わーってるよ。たっく……その後も苦労したぜ。スーパー転入生のお前とかかわりがあるってだけで俺も匠も沢山の野郎から追いかけ問い詰めらちまったんだからな」
「はは……。それはごめんね」
苦笑いを浮かべるティアナ。
俺は別にそこまで気にしていないので話を戻す。
「確かよ、あの日だったよな? 悠香さんたちと出会ったのってよ」
「そう。そして私が――」
そこまで言われてハッとする。
あの時、確かティアナと悠香さんは些細なことからちょっとした口論に発展したんだっけか。機嫌を悪くしたティアナは新聞部から出て行っちまい、それで……確か俺が……
そこまで思い出しかけている中、ティアナはあの時の話を終え、話題の最初に戻し始める。
「あの時もそうだけど私ね、和輝が苦しんでいる時、何も出来ない自分が悔しくて辛かった。正直、今もこうやって和輝が苦しんでいるのなら変わってあげたいってずっと思ってる」
以前もそうだったが、やはりティアナも辛いんだと言葉の重みからひしひしと感じられる。
結局は安全圏で守られるだけの立場でしかないことが責任感を刺激するんだ。
「前までの和輝ってボロボロになって、傷ついて、苦しんだりしているのに私には大丈夫そうに振舞うんだもん。実力不足を感じて体を鍛えようとした時だって何も言ってくれなかったしね」
グレモリーギルディの事件を思い出して、少し苦い顔になってしまう。
あの時の俺は要らぬ配慮からティアナと喧嘩しちまったんだっけか。
「グラシャラボラスギルディに負けたあの日からずっと、和輝は恐怖で苦しんでいた。正直、その事をちゃんと私に言ってくれたのは少し嬉しかった。でも、私は何をしてあげればいいのかわからなかった」
「でも今はその答えを見つけたの」
そう言い終わったティアナは静かに俺の背後に回ると背中側から俺の事を抱きしめてくれた。
いつもなら恥ずかしくてすぐに振りほどくであろう行動だったのだが、今の俺にとってはとても暖かく心地よかった。
「私、和輝が辛いのならどんなことがあってもずっと傍にいる。どれだけ和輝が自分の事を役立たずとか言っても私は和輝を信じて傍にいる。そう決めたの……!!」
「こんな俺を……みっともないこの俺なんかを……」
「和輝言ったよね。俺たちは二人で一つのツインテールって。だからもっと私を頼っていいんだよ? 私にできる事なら何でもするから」
二人で一つか……。そういや悠香さんたちと出会った日にそんなこと言っちまったな。
あの時もそうだったが、格好つけすぎたなと少し後悔する。自分で言った言葉なのにこっ恥ずかしくて仕方ねぇ。黒歴史ノートがバレた時ってこんな感じなのかとも錯覚する。
でも、不思議だ。これはこれで良かったとも実感できる。何となく恐怖が薄らいだような気もする。
「だから今日はね。ずっと一緒にいてあげる。もし夢でうなされるのなら隣で寝てあげるから……」
「……。はぁ!?」
い、今なんつった!? こ、このツインテール馬鹿は今日一緒に寝るっつたのか!?
それってつまり夜這いって奴なのかと困惑するが、純粋なティアナの事だし、そんなことじゃなくてただ俺の傍にいてあげたいっていう優しさからなんだと納得する。
がしかし、それは流石に不味い……!! 色々と不味いぜそいつはよ!!
俺はティアナを振りほどき、声を荒げる。
「ば、馬鹿!! 面会時間過ぎても部屋にいるのがバレたら怒られるだろうが!!」
「大丈夫よ。病院の人には今日一日中付き添いですって言って許可貰ってあるから」
こうもあっさりと言ってのけるティアナには参ってしまう。
これは夢なんじゃないかと俺は頬をつねるが痛さしか感じない。これはまごうことなき現実だ。
そうとわかれば反論あるのみ、恥ずかしいにも程があるので全力で反対する。
「嘘つけ!! 許されるか、んなもん!!」
「本当に許可貰ったんだから。ちなみに病院の人にはね――」
どうやら病院の方々には俺が事故の恐怖でうなされているからメンタルケアも兼ねて特別に付き添うことが許可されたらしい。
恐らくだけど、ティアナのあまりに真剣な眼差しに圧倒されたんだろうな。実際に今の俺もそうだしよ。
いやでも、やっぱりおかしいだろ。もしかして力で黙らせたとかか?
ティアナの腕力って意味不明なくらいヤバい物な為、否定し辛い物があるのがまた何とも言えない。
「だーっもう!! わかったよ!! たっく……」
ティアナの意思は固いし、どうせ拒否しても無駄だなと判断した俺は渋々許可を出した。
◇
既に10時はとっくに消灯時間は過ぎており、きっとどの部屋も暗い闇で包まれているだろう。
相部屋ならその部屋の中から複数の寝息が聞こえてくるのは当然のことなんだが、俺の部屋は個室の為にそんなことはない……はずなのに俺とは別の可愛らしい寝息が聞こえてくる。
「くー……」
結局、ティアナと病室内で一夜を共にすることになったので、今現在、俺はティアナと一緒にベットで横になっている。
二人で抱き合って寝るとか恥ずかしくて出来やしないし、流石にそれを病院のベットでやるなんてモラルがなっていないにも程があるので、俺たち二人は今現在、背中合わせの体勢になっている。
隣のティアナは私服のまま大人しく丸くなってすやすやと眠っているのに対して、俺は恥ずかしさと興奮で目が冴えわたっていた。
眠れそうにもないので、俺は静かに体を少しだけ起こしてみた。
「いつぶりだよ……。ばあちゃん以外の異性と一緒に寝るなんてさ……」
どうして病院においてある一人用のベットで二人一緒に寝れんだよというツッコミはこの際置いておくとして、どうしてティアナはこんな俺なんかの為にこんなにもしてくれるのだろうか?
面と向かってじゃとても言えやしないが、俺はティアナが好きだ。
だが、それは飽くまでも俺個人の感情に過ぎない。ティアナが俺のことをどう思ってくれているのかはわからない。
俺がティアナの立場なら、こんな腑抜け落ちこぼれ男子なんかほっておくっていうのによ。
「もしかして……お前も……?」
つい、もしかして両想い? とばかり錯覚してしまったが、流石にそれは夢見過ぎだろと思いとどまると途端恥ずかしくなってくる。
そんな都合のいい話があってたまるかっつーのと心の中でもう一人の俺が笑っていやがる。
全く、その通りだ。世の中、そんな馬鹿な話があるわけないぜ。意中の女の子と両想いだなんて、それこそ例えるなら親の知り合いに石油王や大統領が混じっているくらいにはありえないことだろうぜ。
じゃあ、こんな俺なんかどうして……? こんなどうしようもない俺なんて……
「……ってこの考え、止めた方がいいな」
いつからだろうか。俺は自分自身に自信が持てなくなっていた。何かある度にどうせ俺なんかと卑屈になっていた。今までエレメリアンに勝ててきたのも運が良かったからと思ってしまっていた。
でも、もうそれはやめよう。卑屈になっていても何も変わらないし、変えれない。
ティアナは俺を信じてるって言ってくれんだ。だったら俺も俺自身を信じる。これから何ができるかわからないけど、やれるだけやってやる。
そう決意した俺の背中に柔らかく温かい感触が伝わってきた。
振り返ってみるとティアナが寝返りをうっていた。どうやら寝返りの反動で手が背中に当たったようだ。
「てか、流石に寝るときぐらいツインテール解けよ……」
穏やかに寝ているティアナの寝顔を見ていると「いつもは解くけど今日だけは和輝の為に特別」と言っているような気がしてくる。
俺はおもむろにティアナのツインテールに触れた。
「すっげぇ……こんなにもさらさらしてるのかよ……」
初めて触れたが、こんなにもさらさらとした触り心地なのかと感心してしまう。
素人並みの感想だが、まるで上等な絹で出来た織物みたいだ。
時間も忘れてティアナのツインテールを優しく撫で続けている内に俺はあることに気が付いた。
「やっぱり……俺もツインテールが大好きなんだな。こんなにも柔らかくて温かい、そして何よりこんなにも可愛い髪形のツインテールが大好きなんだってな」
卑屈になっている暇あったらもっと俺自身がツインテールを好きになればいいんじゃねぇかってな。そうすれば俺に眠るツインテール属性だってきっと答えてくれるはずだ。
「ありがとよ、お前のおかげで俺はもう大丈夫だ。もう怯えたりなんてしねぇ、絶対に」
「くぅ……ツインテール……」
眠るティアナに感謝すると、それに対する返事をしたかのようにティアナは寝言を漏らす。
ただツインテールと一言だけだったがインパクトは抜群だ。一体どんな夢、見てんだよとツッコむ前に思わず噴き出してしまう。
「ぷっ……やっぱ、お前には敵わねぇよ。でも、いつか俺も追いつくぜ。お前と一緒、二人で一つ、最高のツインテールになってやる為によ」
もう逃げない。どんな事があっても俺は戦う。ティアナの……このツインテールを守るために。
決意を新たにした俺は恐怖を微塵も感じないであろう晴れやかな笑顔を浮かべたまま横になった。
◇
アルティデビル基地内の住居スペースから大きく離れたこの基地で最も辺境に当たる場所に存在している部屋。
その部屋の用途はこの艦内で何らかの罰を起こした者が決められた日数の間、この部屋に入って反省することが目的。つまり、ここはお仕置き部屋や懲罰室と言った所だろう。
この部屋の中は寝心地の悪い木製の粗末なベットと本棚が一つだけとインテリアはかなり少なく、それ以外の持ち込みは勿論禁止だ。
ちなみに本棚と言っても、並んでいるのは何処から調達してきたのかわからないようなBL本しかないので、暇を持て余す為に読もうにも精神力が大きく削られる仕様だ。この艦には
そんな部屋の入口は鉄格子と分厚い扉が脱走を阻止しており、誰であっても中から突破して脱走することなど出来やしない。
それはこの部屋に収監されているグラシャラボラスギルディも例外ではない。
幾ら彼が
「キズガァ……キズガアァ……」
バアルギルディによって拘束されたグラシャラボラスギルディがこの部屋に入れられてからかなりの時間が経った。
入ったばかりはそれはもう早く脱出せんと大暴れをしたのだが、今はこの様だ。
「ハッハッハ、天才のオレにこの程度のプロテクトなど造作もないのだよ。バアルギルディ」
バアルギルディはグラシャラボラスギルディが元に戻るまでこのままこの部屋に幽閉するつもりであったが、そうは問屋が卸さない。
本来なら外側からでも解除に手間がかかる筈の扉のロックは天才を自称するベリアルギルディによっていとも簡単に解除され扉が開かれた。
「さて、貴様にはまだ利用価値がある。いいか? テイルバイオレットを始末した今、次のターゲットはテイルブルームただ一人だ。さっさと行って俺の野望の糧となれ」
あっけにとられポカンとするグラシャラボラスギルディのベリアルギルディは言い放つ。
あまりに唐突な出来事は失われていた筈の理性を呼び起こした為に随分とシュールな光景だ。
「貴様、何をしている? 早く行けよ。貴様だって見たいんだろう? 愛しい愛しい、体に刻まれた傷跡とやらがな」
「ウ……ウ、ウオオオオオオオ!!」
一瞬だが取り戻した理性はベリアルギルディの言葉によって再び失われ暴れ出す。
グラシャラボラスギルディはベリアルギルディを突き飛ばす形でこの牢獄を脱出し、再び和輝たちがいる日本へ足を向かわせる。
「チッ……!! 恩人であるこのオレを突き飛ばし、あまつさえ尻もちをつかせるとは……!! 今回の実験終了と同時に貴様なんぞ処分してくれる……!!」
グラシャラボラスギルディの後ろ姿は忌々し気に睨むベリアルギルディが見送るのであった。
◇
「ううん……あれ……? ここ……」
朝目覚めたばかりの私はいつもと何処か違う違和感を感じ取る。
シーツから抜け出し、寝ぼけ眼を擦っていくうちに意識がだんだんと覚醒していき、昨日の出来事を鮮明に思い出していく。
「そっか……私、和輝と一緒に寝てたんだ」
好きな人が苦しんでいる時はずっと傍にいてあげればいいと教えられた私は昨日、ダメもとで病院の先生に「今日一日付き添ってもいいですか?」って聞いてみた。すると、「大きく騒がなければ一日くらい良いですよ」と意外とすんなりと了承されたんだった。
あの時は傍にいてあげようと必死になっていたから何も躊躇せずについ勢いで一緒にベットで寝てしまったけど、冷静なってみればなんて事しているんだろうと自分の行動を恥ずかしく思ってしまう。付き添って寝るのだったら和輝一人がベットで寝て、私は隣の椅子に座って寝るものが普通だもの。
一夜明けた今になってようやく興奮し始めて止まらない。
「……ってあれ? 和輝?」
よく見るとベットの上は私一人だ。
備え付けのデジタル時計に記された時刻は8時手前、起床時間としてはいつもよりも遅いけど、朝に弱い和輝がこの時間に起きているとは到底思えなかった。
じゃあ、何処にと頭上に? を浮かべる私に応えるかのように病室のドアがガラリと開く。
「よっ、おはようティアナ」
「和輝、おはよう……って随分早いじゃない。どうしたの?」
「まぁ、そういう時もあるってこった。俺だっていつも寝坊しているようなやつじゃねぇんだぜ」
昨日までのパジャマ姿から打って変わってばっちりとした私服に身を包んだ和輝からは入院以前の雰囲気が強く感じられる。
もう和輝は大丈夫、そう思った時だった。
「ウオオオオオオオ!!」
「「!?」」
けたたましい獣の咆哮が外から聞こえ、人々の悲鳴も遅れて聞こえはじめる。
エレメリアン探知用のレーダーからブザー音がなったこともあり、まさかとは思いつつも和輝と一緒に私は窓の外を伺った。
「あれは……あの時の!?」
「あの野郎……。来やがったのかよ……!?」
外では犬のような姿をしたエレメリアン、グラシャラボラスギルディが
突然の襲来に怯え逃げ惑う人たち。この部屋の外でも事態に気づいた患者さんがパニックになり、看護師さんたちが走り回っているのがわかる。
「キズオォォッ!! モットキズオォォッ!!」
確か、グラシャラボラスギルディの属性は
あの状態をこのまま、放っておいたら傷を求めてどれ程まで尋常な被害を出すか見当がつかない。今すぐにでも止めに行かないと。
でも、いくら和輝が多少は立ち直ってくれたとはいえ、いきなりトラウマの元になったグラシャラボラスギルディだなんて危険だし、無茶が過ぎる。やっぱり、ここは華先生を呼ぶしかない。
そう思いつつも和輝の様子を伺ってみる。
「っ……!!」
やっぱり、私が危惧した通り、和輝の身体はよく見たら細かに震えだしている。間違いなく怯え始めている証拠。
このままじゃ戦えないと判断し、大急ぎで華先生へ連絡を取ろうした時だった。
隣にいたはずの和輝がいなくなっていた。
あれ? と思う前に和輝の声が背後から聞こえてくる。振り返ると和輝が今にもグラシャラボラスギルディに向かって行こうとしていた。
「何やってんだよ、早く行くぞ」
「和輝……!! あなた……怖くないの?」
和輝は無理をしているんじゃないか、それだけが心配だった。
早く行かないといけないのはわかってはいるけどどうしても引き留めてしまう。
和輝は足を止めて、私の方へ振り向いた。
「そりゃあ……正直言ったらやっぱ怖ぇよ。怯えるもんかと息巻いても今だって見ての通り、身体は正直だ。びくびく震えあがって仕方ねぇ。でも……それでも、俺は行かなくちゃ行けねぇんだ。あの野郎を倒さなくちゃならねぇから」
どれだけ元がふざけた存在のエレメリアンだからといって、あいつらは本来なら人がどうこう出来る相手じゃない。いくらテイルギアがあっても戦うには勇気がいる。それがわかっていても難しい。
和輝は恐怖で震える腕を必死に抑えながら、私の目を見てはっきりと答えた。
「それに……俺、気づいたんだ。命をかけても守りたい大切なもんが……。あの野郎含めてエレメリアン全部に怯えていたら、そんな大切なものが全て奪われて無くなっちまう。今はそれの方が怖い。だから……戦う。それのお前から大事な物、貰ったしな」
「大事な物……?」
気になったので聞いてみたが、和輝は途端、自分の発言が恥ずかしく思ったのか、そっぽを向き始める。
勢いでつい余計な事を言ってしまったみたい。
「べ、別になんでもねぇよ……!! 兎に角行くぞ!!」
駆け出す和輝の後ろ姿はとても大きく強く見えた。もう逃げない、もう諦めない、もう自信を失ったりしない、それら全てを感じることが出来た。
私はそんな和輝の後を追いかけた。
(俺は戦う。お前に貰った勇気と言う名のツインテールと共にな……!!)
ティアナの願いを了承してくれた先生はとても強い
次回、和輝とティアナ、二対の想いが新たなる力を呼び起こす!!