俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第47話 赤い勇気 レッドブレイバー

「「「きゃああああ!!」」」

 

「落ち着いて、落ち着いて避難してください!!」

 

「「「うあああああ!!」」」

 

 避難誘導に当たる病院職員の声が人々の悲鳴でかき消され、人の渦に飲み込まれていく。

 朝始まったばかりの開院したばかりのこの時間、突如として現れたエレメリアンの襲撃により、院内に入院している患者や朝一番から通院しに訪れた人々は皆、パニックに陥り、我先にと避難を開始する。

 パニックの発端であるエレメリアン、グラシャラボラスギルディは傷跡属性(スカー)を愛するエレメリアンだ。彼は元々は大人しく引っ込み思案な性格であったが、天才科学者を自称するベリアルギルディのもたらした悪魔の道具(アイテム)魔神の吐息(デモン・ブレス)によって理性を失っており、元々の性格ではありえない破壊活動を行っている。

 

「キズオオ!! キズオオオ!!」

 

 理性を失っていながらも彼は、この病院に傷を持っているであろう怪我人が多くいることを感じ取り、ターゲットに定めたのだ。

 彼の頭の中には最早、ベリアルギルディの言葉など残っていない。

 あるのは愛する傷跡属性(スカー)を求めているだけの獣のような欲求だけだ。

 

「重症者を早く!! 急げ!!」

 

「はい!!」

 

 自力では動けない患者は医師や看護師によってストレッチャーや車椅子に乗せてもらい、それ以外の自力で動ける患者は点滴装置を杖代わりにするなどしながら必死に避難する。

 だが、避難というのはそう簡単なものではない。

 

「あっ!!」

 

 避難しようとした子供が一人、押し流される人の波の中で誰かとぶつかり転んでしまい、人の波から押し出され取り残されてしまう。

 ぶつかってしまった人に悪意などない。ただ、早くこの場から逃げたかっただけなのである。

 

「うぅ……いたいよぉ……こわいよぉ……ママぁ……」

 

 転んだ子供は瞳に涙を浮かべて母を叫ぶ。

 だが、現実は非情である。不慮の事故が原因とは言え転んでしまった子供一人に構う余裕のある者は存在していなかった。医師や看護師などの病院職員はより重量の患者で手が一杯だったのだ。

 

「うぅぅ……」

 

 結局、誰にも構われず、一人ぼっちに取り残された子供は通路の隅ですすり泣いた。

 

「おい、そこのガキンチョ。何びぃびぃ泣いてんだ。ほらさっさと立って早く逃げろ」

 

「ちょっと和輝!! もう少し優しく言いなさいよ。可愛そうじゃない!! この子泣いているのよ!!」

 

「だーっ!! もう、うっせぇな!! 俺はガキが苦手なんだよ」

 

 通路の隅ですすり泣く子供に救いの手がやってきた。

 避難する方向とは真逆の方向へ足を急ぐ一組の男女、和輝とティアナの二人が声をかけた。

 ティアナは姿勢を低くし、優しく声をかける。

 

「僕、大丈夫よ。外にいる怪物はテイルバイオレットがやっつけてくれる。だから泣くのを止めて早く逃げて。ね?」

 

「ほ、ほんと? テイルバイオレット来てくれるの?」

 

「うん。きっと来てくれる。テイルバイオレットはみんなのヒーローなんだから!!」

 

 ティアナの説得に子供の涙は止まったが、まだ子供はへたりこんだままだ。

 その様子を見た和輝はぶっきらぼうながらも子供の頭に手を置き、告げる。

 

「おい坊主、いいか? お前がこんな所で泣いててどうすんだよ。男のお前がしっかりしねぇと大好きなママは誰が守んだよ。そうだろ?」

 

 子供は和輝の言葉に力強くうんと頷くと涙を振り払い、立ち上がり、元向かっていた避難の方向へ駆け出した。

 ある程度進んだ後で子供は振り返る。

 

「ありがとう!! お姉ちゃん!! あとお兄ちゃん!!」

 

「俺はおまけかよ!!」

 

 和輝のツッコミに笑顔を浮かべ、子供は避難していった。

 そんな様子を見て、満足そうに頷き合った和輝とティアナは再び、グラシャラボラスギルディの下へ駆け出した。

 大切な物を守る為と名も知らない子供との約束を守る為、二対の想いを力に変えて。

 

 

 

 

 俺はティアナと共に階段を駆け下り、受付と幾つもの椅子が並んでいるがらんどうとなったロビーに出る。そして、ロビーの向こう側、自動ドアの先に広がっている駐車場と併設された外庭で暴れまわる因縁のエレメリアンであるグラシャラボラスギルディの姿を捉えた。

 

「避難はすんでいるみたいね……」

 

「ああ、そうらしいな……」

 

 グラシャラボラスギルディを捉えたことで俺の手や足はまたあの時の恐怖を思い出し、強く震えだす。

 泣いていたガキに向かって説教垂れた後で格好がつかないのはわかっていても、それでもまだ恐怖が完全に無くなったわけじゃねぇ。

 そんな俺の手を隣のティアナが優しく握りしめた。

 

「お、おまっ!?」

 

「大丈夫、このブレスとツインテールを通して私がついてるから。だから、大丈夫だよ和輝」

 

 腕のテイルブレスをみせながら微笑むティアナの笑顔が眩しい。俺の顔が真っ赤に染まっているのが、手に取るようにわかる。

 

「馬っ鹿やろ!! さっさとテイルドライバー出せっつーの!!」

 

 皆、避難したために周囲に誰もいないのはわかっていても何だか恥ずかしい。

 俺はティアナの手を振りほどくとテイルドライバーを催促した。

 

「もう……!! わかってるわよ!! 折角、勇気づけようとしてあげたのに……!! 和輝っていっつもそうなんだから!!」

 

「悪かったな!! こんな俺で!!   まぁ、でも……ありがとよ。おかげでちょっとはマシになった」

 

「もう……どういたしまして」

 

 この程度なんかじゃ喧嘩している内に入らない。俺たち二人の気持ちは一つだ。

 ティアナの腕にあるテイルブレスが光を放ち、俺の腰回りに光が収束、エレメリアンと戦う為の姿へ変身させる神秘のベルト、テイルドライバーが出現した。

 テイルドライバーを通じて感じ取ることが出来るティアナの属性力(エレメーラ)を解放すべく、俺は変身コードを力一杯叫び、ドライバー右側面のスイッチを押し込む。

 

「行くぜ!! テイルオン!!」

 

 青紫の光ががらんどうとなったロビーを照らし、俺の変身は無事完了し、テイルバイオレットが現れる。

 テイルバイオレットとなった俺は自動ドアを通り抜けて外に出ると、暴れているグラシャラボラスギルディ目掛けて跳び蹴りを見舞うべく勢いよく飛び出し、脚部の装甲を完全開放(ブレイクレリーズ)

 テイルギアによって強化された脚力に完全開放(ブレイクレリーズ)された足裏のブースターから得られる強力な推進力がプラスされ、その瞬間最高速度はマッハを超える超スピードとなる。俺が唯一、華先生より勝っていると自負するスピードを限界まで活かした攻撃だ。

 

「どれゃあぁぁぁぁぁッ!!」

 

 以前の戦いから戦闘力の差が大きく開いているのはわかっているが故に、今回は初っ端から手加減抜きの全力を乗せた攻撃を不意打ち気味に放った。

 超スピードの跳び蹴り(ストームストライク)はグラシャラボラスギルディの頭部を打ち砕くにはいかないにしても、少なからずのダメージは見込めると思っていた。

 現に今のグラシャラボラスギルディは俺の登場に気づいておらず、注意は周囲の建物を傷つけることにしかいってはいない。

 だがしかし……

 

「……グ? ウオオオオ!!」

 

「何ッ!?」

 

「ダボクゥゥゥゥ!!」

 

「うああああッ!!」

 

 ストームストライクが命中する一歩手前で、グラシャラボラスギルディは咄嗟に俺の攻撃に勘づき、肥大化したその大きな丸太のような腕をバットのように真横に振るい迎撃。

 あまりにも突然の反応過ぎたことと、既に攻撃態勢に入っている為に制御が効かないことが重なり、俺は防御することなど出来はせず、まるでスラッガーに打ち返されたボールのように来た方向である病院のロビーに向かって吹き飛ばされた。

 自動ドアのガラスを突き破り、さらにロビー内の椅子をなぎ倒しながらそのまま受付カウンターへ直撃。巻き起こる衝撃でロビーの中はもう滅茶苦茶な大惨事だ。

 

「けほっ、和輝、大丈夫!?」

 

「クッソ……痛ってぇなぁ、おい」

 

 巻き上がる粉塵の中から怪我一つないティアナが顔を出して俺の安否を心配そうに尋ねてくる。

 俺は心配させまいと少し強がりながら崩壊した受付カウンターから起き上がる。

 

「ほんとに大丈夫なの?」

 

「ああ、まぁな。まだ大丈夫だぜ」

 

 必死に強がっているが正直な所、やっぱり強い。いや、そんなレベルじゃねぇ。こいつは余りにも強すぎる。再生能力や巨大化能力っていう厄介すぎる特殊能力を除いて、フィジカル面だけで見ればフェネクスギルディやプルソンギルディ以上だ。

 わかってはいたが、今の俺じゃ勝ち目なんて万が一でも存在なんかしてはくれてねぇ。このまま続ければ最悪、今度こそ俺の命は危ないだろうな。また、身体が恐怖で震えそうになる。

 でも、俺はもう誓ったんだ。恐怖に怯えて目の前の戦いから逃げない。守りたいものを守る為に俺は戦うってな。

 

「ウガァァァァァ!!」

 

「ッ!?」

 

「チッ!! 離れてろティアナ!!」

 

 攻撃を仕掛けたこともあって、俺の存在に気づいたグラシャラボラスギルディはようやく見つけた獲物である俺を狙って、元から血走っているその眼をより真っ赤に興奮させてロビーに向かって突進してくる。

 俺はティアナに離れるように促した後、グラシャラボラスギルディを迎え撃つべくフォースリヴォンを叩いてウインドセイバーを手に握りしめる。

 

「逃げて……たまるかよぉっ!!」

 

「キリキズゥゥゥゥゥ!!」

 

 ウインドセイバーの刃とグラシャラボラスギルディの鋭いかぎ爪がぶつかり合い、周囲に激しい火花を巻き散らした。

 

 

 

 

「グルアァァァ!!」

 

「くッ……!! はぁ……!!」

 

 見るも無残に破壊された病院の駐車場跡で、和輝……いや、テイルバイオレットはグラシャラボラスギルディにウインドセイバーを振るい応戦していた。

 応戦しているとは言ったけど、テイルバイオレットは確実に押されている。

 数分前まではまだ綺麗な紫色の閃きを見せていたウインドセイバーも、既に刃こぼれが目立つレベルの悲惨な状態になっている。

 私は果敢に立ち向かうテイルバイオレットの姿を病院の柱に隠れて見ていることしか出来ていなかった。

 

「華先生、早く来て……。でないと和輝が……」

 

 華先生に救援の連絡をスマホで入れたものの、都合が悪いのか一向にやってきてくれる気配がしない。

 どれだけ属性力を送っても、どんなアドバイスをしても勝てるビジョンが一向に見えてこず、どうしようもない焦りだけが私の心をかき乱す。

 

 

「そこだぁっ!! ってなっ!? しまった……!?」

 

「スリキズゥゥゥゥゥ!!」

 

 グラシャラボラスギルディが攻撃の手を緩めた瞬間をテイルバイオレットは好機とばかりにウインドセイバーを縦に一文字振り下ろすけど、グラシャラボラスギルディはまるで余裕といった様子で横に回り込んで回避した。

 その一瞬にて生まれた隙を逃さないグラシャラボラスギルディは片手でテイルバイオレットの後頭部をがっしりと掴み、そのまま勢いよく地面目掛けて叩きつけ、そのまま地面に押し当てながら引きずり回した。

 

「ぐあああッ!!」

 

 フォトンアブソーバーで守られているからとは言え、すり傷なんてレベル済まされない凄惨な攻撃方法に私はちゃんと見ていられない。

 恐る恐る目を開けて次に見た光景は、抉り散らかされたアスファルト跡に立つグラシャラボラスギルディがテイルバイオレットを病院の壁目掛けてボールのように投げつけた瞬間だった。

 

「和輝ぃ!!」

 

 私の叫び虚しく、テイルバイオレットは頭から病院の壁に激突、勢いそのままに壁を砕いて瓦礫の山へと形を変える。

 

「ヤケドォォォォォ!!」

 

 グラシャラボラスギルディはトドメとばかりに口を開くと、直径約3メートルともあろう巨大な火球をテイルバイオレットが吹き飛んだ瓦礫の山に向かって発射。大爆発を起こした。

 

「ウオオオオ!!」

 

「嘘でしょ……」

 

 勝利の雄たけびを上げるグラシャラボラスギルディとは対照的に私はその様子に言葉を失い呆然となってしまう。

 いくらテイルギアでもここまでの攻撃を喰らえば助からない……。じゃあ、和輝は……

 そう思った矢先、新しい獲物を探す遠くのグラシャラボラスギルディと目が合った。柱の陰から出てしまったのが裏目に出てしまった。

 

「グルアァァ!!」

 

 もう、駄目。いくら私の属性力がどれだけ高くても和輝がやられた以上、変身も出来ない私じゃ何も出来ない。大好きなツインテールを守る以前に私自身の命が危ない。

 絶望感と恐怖が心を支配し、動けなくなる。今更になって和輝がどれだけの恐怖の中で戦っていたのかがわかる。今まで基本的にどれだけ強くても言動はおちゃらけた物ばかりのエレメリアンからは想像もつかない威圧感から生まれる恐怖は想像以上だった。

 

「カミキズゥゥゥ!!」

 

 私を嚙みちぎろうとしているのか、グラシャラボラスギルディはギザギザの犬歯が並ぶ口内を露わにしながら体全体をこちら側に向けてゆっくりと動き出す。

 逃げようにも恐怖故に体が思うように動かず、その場にへたりこんでしまう。

 この世界での出来事全てが走馬灯のように頭を過る。

 全てを諦めかけたそんな時だった。

 

「待ちやがれ……!! まだ……やられちゃいねぇぜ……!!」

 

 黒煙立ちこむ瓦礫の山から声がしたと思い、私もグラシャラボラスギルディもその方向に目を向けると、そこにはボロボロになったテイルバイオレットがウインドセイバーを杖代わりにして立っていた。

 

「和輝……!!」

 

 テイルギアの力によってツインテールこそは守られているもののテイルバイオレットの全身は再び目を覆いたくなるくらい悲惨な物だった。テイルギア自体はいつ砕け散ってもおかしくないレベルでボロボロ、顔や二の腕などの元々露出していた部分は痛々しい傷が幾つも出来ている。

 グラシャラボラスギルディの攻撃がフォトンアブソーバーの防御を容易く貫通していることを証明していた。

 

「ウオオオオ!!」

 

「まだまだぁっ!!」

 

 三度、ぶつかり合うテイルバイオレットとグラシャラボラスギルディ。

 だけど、積み重なったダメージからかさっき以上に勝負になっていない。一方的に殴られ蹴られ投げられ、攻撃を喰らう度に少しずつテイルギアが砕け飛び散っていく。

 

「俺はなぁ……!! てめぇをぶっ倒すまで倒れねぇ……!!」

 

 でも、テイルバイオレットは諦めずに立ち向かっていく。

 

「あいつが俺の傍にいてくれる、あいつのツインテールが俺に勇気をくれる……!! 俺だって……!! ツインテールが好きなんだ!! それをこんな……信念も……理性も……何もないクソ野郎に……奪われて……!! 奪われてたまるかぁっ!!」

 

 命をかけても守りたい髪型、属性。それがツインテール。それが私と和輝を繋ぐ最も大事な物。

 そう、そうよ。和輝が必死に戦っているのに私がこんな暗くなっててどうするの!! どんな時でも傍にいてあげると誓ったんだから……!!

 

 そう思った時にはもう私の体は動き始めていた。

 

「お願い、私のツインテール!! 和輝にありったけの力を!!」

 

 今、私が出来る事。それは私の中にあるツインテールへの想いを和輝に送る事。

 テイルブレスを握りしめて強く祈ったその時、奇跡は起きた。

 

「な、なに……!? 何なのこの赤い光は!?」

 

 テイルブレスから赤い光が溢れ出た。

 その光はテイルドライバーを形作る紫の光とはまるで違う。大切な誰かを思い起こす不思議な温かさを感じさせる赤い光。

 驚愕していると赤い光はテイルバイオレットへ向かって飛んでいき、全身にシャワーのように降り注ぎ始める。

 

「何だよ、この光……!?」

 

 テイルバイオレットも驚愕を隠せない中、降り注がれる赤い光は繭のように集まりだすと、テイルバイオレットを包み込んだ。

 その様子を黙ってみる筈もないグラシャラボラスギルディは爪を振りかざすが、赤い繭に弾かれ吹き飛ばされる。

 そして、何かが完了されたのか、赤い繭は突如弾け、テイルバイオレットの姿が露わになる。

 

「赤い……テイルバイオレット……?」

 

 赤い繭の中から現れたテイルバイオレットの姿を一言で表すのならそれは赤いテイルバイオレット。

 青紫だったはずのツインテールは穂先にいくにつれて徐々に赤くなっていて、両腕には赤いガントレットが、胸回りなどを中心に上半身には普段纏っている青紫の装甲を上から被さるように赤い胸部装甲が追加されている。

 元々のカラーである青紫もしっかり残ってはいるものの、髪色の一部が変わった事と上半身のほとんどが赤い装甲に覆われたこともあってか、印象は大きく異なって赤く見える。

 

「ん? 赤い? ……っ!? なな……なんじゃこりゃあ!!」

 

 赤くなったことに驚愕するテイルバイオレットの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

「おいティアナ!? どうなってんだよ!! これ!!」

 

『知らないわよ!! ただちょっと……ツインテールに願い事したら……』

 

「はぁ……!?」

 

 グラシャラボラスギルディとの交戦中、突如として俺の体は赤い光に包まれた。余りに急な出来事故に目をつぶり、目を開けた頃には俺の姿は変化していた。

 髪の穂先が赤くなり、普段の装甲の上に追加された赤い装甲の数々。

 

 これは一体何なんだ? 一体、俺たちのテイルギアに何が起きたっていうんだよ!? 

 予想だにしていない変化に困惑が隠せない。

 

『ちょっと和輝!! 後ろ!!』

 

「ああ? 後ろ?」

 

「グオオオッ!!」

 

 振り返るとそこには憤怒の形相を浮かべるグラシャラボラスギルディが拳を突き出していた。

 このままじゃ不味い。やられちまう。

 今までの経験から防ぎきる事は出来ないと理解しつつも俺は咄嗟に腕をクロスしてグラシャラボラスギルディの拳を受け止めるべく構える。

 力の差から弾き飛ばされる。そう頭では想像していたが、結果は違った。

 

「グ?」

 

「こいつは……!!」

 

 その光景は俺自身も信じられなかった。

 吹き飛ばされていただろう俺の体は微動だにしていない。ていうかさっきまでなら防ぎきれずに感じていた筈の痛みまでも微塵もない。

 こいつはもしやと確信を強めていくうちに力は湧き上がって来る。今までとは違う圧倒的な力が。

 そしてもう一つ、俺の心にある変化が訪れる。

 

(ツインテールを……!! もっと……!! もっと……!!)

 

 この溢れる力の影響か? それともこの装甲の影響なのか? どちらにせよツインテールに対する想いが炎のように燃え上がってくる。

 ツインテールを見ているだけでは最早、物足りない。ツインテールに触ってみたい。ツインテールを結んであげたい。

 さっきまでは僅かながらもグラシャラボラスギルディに対する恐怖心があったが、燃え上がる感情はそれすらも遥かに凌駕し、俺を昂らせる。

 

「ティアナ、もう俺はこんなに奴らに恐れなんてしねぇ!! 大好きなツインテールを守るために俺は……戦う!!」

 

 溢れ出る力を使いグラシャラボラスギルディの拳を弾く。そして、呆気にとられるグラシャラボラスギルディの胴体目掛けて中段蹴りを見舞い、仰け反らせる。

 

「グウォ……!!」

 

「でありゃぁっ!!」

 

 裂帛の気合と共に放った拳がグラシャラボラスギルディの顎にクリーンヒット。

 グラシャラボラスギルディを大きく吹き飛ばした。

 

『凄い……あんなにもあっさり』

 

 ティアナの驚く声がテイルギアを通して聞こえてくる中、俺はフォースリヴォンに触れてウインドセイバーを再び精製するように念じた。

 すると俺の両手に一本ずつ、計二本のウインドセイバーが現れた。

 

「何だよ。二刀流でもやれってのか?」

 

 どうしてウインドセイバーが二本も出てきたのかはわからないが、出てきたからには上等だぜ。やってやるよ。

実の所、二刀流なんてやったことはないし、実際の二刀流はアニメや漫画のようには上手くはいかないとはどっかで聞いたことがあるが、何故だか不思議と出来る気しかしない。

 起き上がり襲い掛かるグラシャラボラスギルディに俺は二本のウインドセイバーを振るって対応していく。

 

「だぁっ!! ざぁっ!!」

 

 一太刀増えただけでも手数は何倍にも増える。流れるような剣捌きでグラシャラボラスギルディを斬り刻む。

 みるみるうちにグラシャラボラスギルディの体はウインドセイバーによる斬撃で無数の傷跡が作られていく。ついには背中に生える黒い翼を二つとも斬り落とすことに成功した。

 

「グアアアア……!!」

 

 余りの痛みにか叫び狂うグラシャラボラスギルディは俺から距離を取る。

 そして、周囲に火球を乱射し始めやがった。

 

「ウオオオオ!! キリキズ!! サシキズ!! カスリキズ!!」

 

「野郎……!! やけになったか!!」

 

 グラシャラボラスギルディは魔神の吐息(デモン・ブレス)によって既に暴走状態。獣のような本能そのままに動いている。ならば、いつ何をしてもおかしくはない。例えば、変化した俺に勝ち目がないと悟って周囲を滅茶苦茶にするなんてよ。

 こうなったら早くトドメを刺す。その一転で駆け出すも、少し焦ってしまったのが危険を招いた。

 

「ダボク!! ヤケド!!」

 

 別に俺自身、今の状態でならあんな火球程度ではビクともしない。

 だが、俺以外の生身の人間では話は別。特にこの現場で最も近くで戦いを見ているティアナがヤバい。

 

「しまった……!! ティアナ!!」

 

 無茶苦茶に乱射する火球の着弾地点は全く持って予想がつかない。

 その中の数発がティアナが隠れている場所に向かって飛んでいくのがチラリと見えた。

 

『えっ……!?』

 

「クソっ……!! 間に合わねぇ……!!」

 

 本来ならばテイルギアによって爆発的に強化された脚力があるので間に合うことなど容易いのだが、今回は少し焦っていたばかりに反応が遅れてしまった。

 いくら元々速さに優れると言っても、このままじゃ間に合わない。ウインドセイバーを投擲したとしても火球の数が多すぎてこのままじゃティアナが……!!

 無情にも俺の前でティアナが火球の爆炎に身を包まれそうになったその時、緑の閃きがティアナを襲う火球を全て撃ち落とし、消滅させた。

 

「遅れてごめんなさい。涼原君、橘さん」

 

「「華先生!!」」

 

 病院の屋上にて緑のツインテールをグランアロー片手になびかせていたのは、俺の頼りになる仲間であり先生でもある戦士、テイルブルームこと山村華先生。

 どうして屋上にいるかはこの際置いておくとして、取り合えず援護射撃助かったぜ。

 

「もう大丈夫よ涼原君!! 私が来たからには橘さんに指一本手出しさないわ!! だから思う存分やっちゃいなさい!!」

 

「合点承知だ!! 行くぜティアナ!!」

 

「了解!! 全力で行くわよ!!」

 

 俺の全身にティアナのツインテール属性が駆け巡ると同時に赤い装甲の一部が展開して炎が吹き出てくる。ブースター全開に駆ける俺の姿は風と炎、二つの力を纏っている。

 

「ウオオオオ!! キリキズ!! ヤケド!!」

 

 無茶苦茶に飛んでくる火球は全て一つ残らずテイルブルームの放つ矢によって撃ち落とされていく。

 加速する俺たちの勢いを阻むものなど何一つ存在していない。

 

「「完全開放(ブレイクレリーズ)!!」」

 

 高まる俺とティアナ、二人の想いはテイルギアを通して重なり合い、より一層、強く熱く燃え上がる。

 紫のテイルギアが生み出す風と赤い追加装甲によって生み出される炎が混ざりあい、炎の竜巻を俺を中心に作り上げる。

 俺はそれを両方のウインドセイバーに集めてグラシャラボラスギルディに叩き込み、解き放つ!!

 

「だらぁぁぁっ!!」

 

 炎と風、二つの力を纏った必殺の斬撃、ブレイジングスライサー。

 風の力によってより激しく燃え上がる炎刃がグラシャラボラスギルディの体をX字に斬り裂き、グラシャラボラスギルディは爆炎に包み込まれ燃え上がる。

 グラシャラボラスギルディの悲痛な叫びが炎の中から聞こえてきた。

 

「ウ、ググ……ウオオオォォォ……」

 

「じゃあな、あばよ……」

 

 振り返ってみれば、この野郎は魔神の吐息(デモン・ブレス)とかいう道具によってこうなっちまったんだよな。 魔神の吐息(デモン・ブレス)を使う前はもっとオドオドした気の小さそうな奴だったし、こんな風になるなんて思ってなかったのかもしれねぇ。

 夏の日差しにも負けずに熱く燃え上がる炎を見て、俺は何とも言えない気分になるが、一先ず脅威を乗り越えたことに安堵した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 和輝たちが新しい力を使ってグラシャラボラスギルディを倒す様子を遠くから見ているものがいた。

 白い服に身を包んだ仮面をつけた悪魔のエレメリアン、バアルギルディだ。

 

「あの赤い力、もしやテイルレッドの力……?」

 

 グラシャラボラスギルディが脱走したとの報告を受けて急いでやってきたの彼が見たのはボロボロになりながらも交戦するテイルバイオレットの姿だった。

 暴れるグラシャラボラスギルディを止めるという互いの目的は一致しているから手を貸しても問題はない。しかし、バアルギルディの優れた勘はこの戦いでテイルバイオレットが新しい力を手に入れる事を予知したために、心を鬼にして戦いを見守っていたのだ。

 

「フッ、まぁなんにせよ嬉しいぞテイルバイオレット。その力があれば私も君と全力で戦うことが出来る。私たちの決戦は近いな」

 

 満足そうに笑みを浮かべるバアルギルディはグラシャラボラスギルディが倒される所を見届けると颯爽と去っていた。

 彼はテイルバイオレットにばかり目がいっていた為にティアナの存在に気づいていなかった。

 

 

 

 

 その日の夜、グラシャラボラスギルディという驚異を退けた俺はティアナをバイクに乗せると、あの日の続きを果たすべく夜空の下を駆ける。

 

「ねぇ? 結局、何処向かってるの」

 

「うるっせぇな……。黙ってついてくりゃいいんだよ」

 

 峠を越えて、目的地である高台へ。

 到着した俺たちを出迎えてくれた景色は噂通りの絶景。

 都会では決して味わえないであろう満点の星空が広がっていた。

 

「へぇ、随分とすげぇじゃん」

 

「すっごい綺麗……!!」

 

 若者に人気のデートスポットとネットではそう書かれていたので、他にも誰かいると思ったんだが、周りには俺たち以外に誰もいない。この高台にいるのは俺とティアナの二人だけだった。

 神様が気を効かせてくれたのか、それともただ運がいいだけなのか、どっちかはわからねぇが、この二人きりの空間を大切にしていきたい。

 

(そうだ……。こんな状況なんだしよ……。いっそのこと告ってみるのも手なんじゃ……!!)

 

 キラキラした目で星空を見上げるティアナを見てふと思いつく。

 

(いやいや、やっぱりそれはまだ……心の準備ってものがよ……)

 

 匠がこの場にいれば、ヘタレだの何だのからかわれるんだろうなと思ってしまう。

 エレメリアンに立ち向かう勇気は取り戻したが、女の子に告白する勇気はまた別の話だ。

 どう話しかければいいのかわからず、右往左往しているとティアナを方から声をかけてきた。

 

「ねぇねぇあれ見て!! ほらあれ!!」

 

「お、おう。何々?」

 

 ティアナが指さしたのは星が煌めく夜空の一角。

 星が綺麗なこと以外は別段何かがあるわけでもなさそうなので、何故俺を呼んだのかわからず首を傾げてしまう。

 そんな俺に嬉しそうにティアナは喋りだす。

 

「あの星と星を繋ぐとほら、まるでツインテールみたいじゃない?」

 

「だはぁっ」

 

 確かにティアナの言う通り、ツインテールの星座にも見えるけどよ。何つーかムードがぶち壊されたような気がしてズッコケてしまった。

 どんなツインテール脳してたらそんな発想が浮かぶんだよ。全く……!!

 

「ちょっと和輝、何ころんでるのよ」

 

「うるっせぇな!! このツインテール馬鹿!!」

 

「どうしたのよ? 急に褒めちゃって。気持ち悪いわよ」

 

「褒めてねぇっつーの!!」

 

 何だか、頭が痛くなる。今日、変身したあの赤い姿でないとこの頭痛は無くなりそうにない気がして止まない。

 てか、あの赤い力は何だったんだよ。結局あの後すぐに消えちまったしよ。

 

 あの赤い力の正体、その答えは星空に願っても叶いそうになかった。




ようやくテイルバイオレットに強化フォームをだせました。
といっても今回は奇跡のような物なので、完全なものじゃないですけどね。




キャラクター紹介13

 テイルバイオレット(ブレイブチェイン)
 身長:160cm
 体重:48g
 B80・W56・H80
 武器:風の刀ウインドセイバー(二本)
 必殺技:ブレイジングスライサー、他

 ティアナのテイルブレスに眠るある人物のデータが、和輝とティアナの想いに反応して作り出された追加装甲、テイルアーマーR(レッド)によって強化した姿。
 風と炎、二つの力を操ることが出来る。
 力の元になったデータの影響か、この形態中はツインテールへの想いが高まり続ける為、和輝の思考が少しばかり変化する。
 完璧に使いこなすにはある条件が必要。
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