俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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書きたいシーンが多すぎる件について


第49話 受難の始まり

 まだ、夢でも見ている気分だった。

 これがもし、現実じゃなくて悪い夢だったのならどれだけ嬉しかっただろうか。

 だが、現実に広がる光景は非情だ。

 ガラス棚に映る俺の姿を何度目を凝らして見ても、映っている姿は俺が今まで過ごしてきた馴染み深い物じゃない。

 思わず目が奪われる見事な赤紫のツインテール、一つ一つのパーツが完璧に調和し合ったまごうことなき美少女といった顔、身の丈からすれば少々というかかなり物足りない貧相な胸。

 そう、俺の体はティアナになっていた。

 

「嘘だろ……」

 

 俺はエレメリアンと戦う為にテイルバイオレットへ変身することが出来る。つまり、男から女へ性転換することは慣れている。あそこがない事や胸がある(といっても体が体なのでほぼないけど)事などの違和感には事態を理解すると同時に直ぐになれることが出来た。

 だが、これはただの性転換ではない。

 何故なら俺の目の前には俺の姿をしたティアナがいる。ここから導き出される答えは一つ。つまり、俺たちは人格と体を入れ替わったんだ。

 

「どうなってるのよ……これ……」

 

「お前……」

 

 性転換する現象に慣れていないティアナはしきりに俺の体を制服の上からペタペタと手で触って色々と確かめている。

 無意識の内にティアナはズボンの上からアソコに手を当ててしまっていた。

 

「おいティアナ、アソコには手を出すなよ。いいな」

 

「あそこ……? ッ!! 和輝の変態!!」

 

 ティアナ自身の下ネタ知識の不足からか、最初こそ反応が鈍かったものの、俺の視線を追ったことでアソコという単語が何を指しているのかに気づくと途端に顔を真っ赤にして怒鳴り始めやがった。

 こちとら色々我慢してるっていうのに怒られるのは理不尽だろ。

 

「あのなぁ……ってそうだ。おいティアナ!! これってどうなってるんだよ!? テイルギアの不具合か何かかよ? おい!!」

 

「そ、そうよ!! ちょっと和輝、テイルブレスを早く!!」

 

「お、おう」

 

 普段慣れ親しんだ俺の体が見た目に似合わない女の子言葉で喋る様にはどうしても違和感しか感じない。恐らくティアナも同じ気持ちだろう。

 俺は一抹の希望を抱きながら腕につけられたテイルブレスを外してティアナに渡す。

 ティアナはテイルブレスをまじまじと眺め始めた。

 

 数分の沈黙の後、ティアナは項垂れるように表情を暗くした。

 俺はその様子に絶望を感じながらも、藁にも縋る気持ちで問い詰める。

 

「どうだ? 俺たち元に戻れそうか? てか戻れねぇとどうすんだよ、おい」

 

「……ごめん。駄目みたい。テイルブレスには何も異常がない……」

 

 ティアナ曰く、特に変わった点は存在していないいつも通りのテイルブレスらしい。その証拠にティアナが変身しようとしてもいつも通り何も反応せず、その代わりとなるテイルドライバーの出し入れは問題なくできている。

 俺は目の前が真っ暗になる錯覚に陥った。

 

(これからどうすればいいんだ? 俺はこれからティアナとして生きて行けばいいのか?)

 

 これからの一生をティアナとして過ごすなんて考えただけでも頭が痛くなる。

 男としてどうなんだとか以前にばあちゃんにどう説明すりゃあいいんだよ。唯一、血を分けた孫である俺の見た目や中身が別人になっちゃいましたなんて到底受け入れられるとは……いや、意外とすんなり受け入れるかも。だってばあちゃんだし。

 ってそんなことよりもティアナの方がヤベェじゃねぇか!! 今は忘れているけど、元の世界には本当の両親だっているわけだろ。もし今後再開した時に実の娘の中身や見た目がどこの馬の骨かわからない俺になっていたりなんて、それこそどう説明すりゃあいいんだよ。

 

(私はもうツインテールを結ぶことが出来ないの? ツインテールがないなんて私……)

 

 ほら見ろ。ティアナだってこれからの事を思って深刻そうに項垂れてんじゃん。

 きっと俺みたいにこれからどうやって生きればいいかとか親にどう説明すりゃあいいのだろうかとか考えて絶望してんだろうな。流石にこんな状況にもなってツインテールが結べなくなったこと考えるくらいの脳内ツインテールまみれではないと信じたい。

 

「もう……騒がしいんだから……。何があったの……」

 

 共に絶望感に打ちひしがれているそんな時、騒ぎに気づいた青葉さんが奥から出てきた。

 さらに青葉さんが気づいた同タイミングで部室のドアが勢いよく開かれる。

 

「青ちゃんたっだいま~!! ……って和くんにティアちゃんもいるんだ」

 

「二人とも遅くなってごめんなさいね」

 

 取材帰りの悠香さんと会議終わりの華先生がそれぞれ帰ってきた。

 まるで狙っていたのかと思いたくなるタイミングではあるが、口調からして俺とティアナがいることに驚いているようなので狙ってやってはいないのだろう。

 俺はこれからの事に絶望していたこともあり、助けが来てくれた安堵も合わさって思わず涙を浮かべながら悠香さんに飛びついた。

 

「ティアちゃん!? どしたの!?」

 

「助けてくれ悠香さん。俺たちじゃもうどうしようもなくて」

 

「はい? 俺?」

 

 流石悠香さんだ。一人称の違いに誰よりも先に気づいてくれたぜ。

 

「というか和くんもどうしたの? ティアちゃんの髪握っちゃって」

 

 その言葉にハッとして隣のティアナを見てみると、さも当然かのようにツインテールを握りしめていやがった。

 ちょっと前から髪を誰かが握りしめている感覚があったのに、気づかない俺も俺だが、それ以上に何やってんだよお前は。やっぱし、さっきもどうせツインテールが結べない事に絶望してただろ。

 

「あ、ごめん和輝。ついうっかり……」

 

「うっかりって……まぁ、別にいいけどよ」

 

 うっかりツインテールを握ってしまうなんて頭の痛い発言にガッツリとツッコんでやりたい所だが今は我慢しよう。

 今はとりあえず事情を説明し、助けを乞うことが重要だ。

 

「神外さん、何かあったの?」

 

「先生、僕にもさっぱり……」

 

 この一連のやり取りを見ていた華先生は青葉さんに何があったのかを尋ねているが、当然まだ何も言ってないので青葉さんも?を浮かべている。

 改めて俺たちはこの奇妙な現象を伝えるべく声を出す。

 

「「実は俺(私)たち……入れ替わったみたいで……」」

 

「「「は?」」」

 

 

 

 

 私と和輝は二人並んでソファに座り、テーブルを挟んで向こう側には悠香さんと青葉さん、そして華先生が椅子を並べて座っていた。

 何て言うか、まるで尋問でも受けているような空気が漂う部室の中で、私は和輝と一緒に事のいきさつを三人に伝えた。

 

「なるほどね。二人の喧嘩中に突然、テイルブレスが光って、目を覚ました時には涼原くんと橘さんの人格が入れ替わっちゃった……というわけなのね」

 

「「はい……」」

 

 事の発端となったのは、私と和輝の口論に他ならないと推理しているんだけど、それがどうして人格の入れ替わりなんてわけのわからない現象を引き起こしたのかがわからない。

 もしこれが、神様が和輝にツインテールをもっと知るために偶然引き起こした試練だったとしたのなら、関係ない私まで巻き込まれているのが理解できない。もしそうなら、和輝をテイルバイオレットに変身している時と同じように女の子にしちゃえばいいんだもの。

 少し和輝には酷いかもしれないけど、そう考えてしまうくらいには今の現状には不満しかない。

 ツインテールが結べないせいで、下半身に変な違和感感じるようになっちゃたしもう最悪よ。

 

「おいティアナ。そろそろツインテールを握るのはやめてくれよ。流石に鬱陶しくて仕方ねぇぜ」

 

「あ、ごめん」

 

 さっきからずっと握っていたツインテールから手を離す。

 名残惜しいけど、いつまでも握っているのは迷惑だからしょうがないと言い聞かせて心を落ち着かせる。

 でもちょっとまって? 今は和輝の体だけど元は私の体よね。じゃあツインテールも私の物だから別にいいじゃない。

 

「ねぇ橘さ――じゃなかった涼原さん。テイルブレスが故障しているとかじゃないの? 何らかの不具合が生じてその影響だったりとかじゃ」

 

 未だこの現実に慣れない華先生は名前を間違えながらも至極当然の疑問を口にする。

 だけど、その疑問はもう通った道でしかない。

 

「それについては一応、調べてみたんだけど何もなかったんです。全くといっていいくらいいつも通りで……」

 

「そ、そう……なんだ」

 

「俺たちどうすりゃいいんだよ……」

 

「気持ちはわかるけどそんなに落ち込まないで。ね?」

 

 和輝が深く項垂れている様子を見た華先生は、和輝に駆け寄って必死に励まそうとしているけど、具体的な事が言えず効果がない。

 そんな中、さっきから黙って何かを考えていた様子の悠香さんが遂に口を開いた。

 

「ねぇ、ティアちゃん和くん? 少しでいいからテイルバイオレットに変身してみて頂戴。今後の事を考える上で変身できるかどうか確認する必要があるわ」

 

「今後の事って……悠香さん、あんたは俺たちが一生このままだって言うのかよ!?」

 

「ちょっと和輝……!! 気持ちはわかるけど……!!」

 

 合理的な判断を下す悠香さんに食って掛かる和輝を私は落ち着かせる。

 さっきからそうだけど、自分の姿に別の人格が宿っていて普段とは想像つかない行動をとっているのがとても奇妙な感じがする。

 和輝だって自分の体が女言葉で喋っているのが気持ち悪いに違いないんでしょうね。

 

「ごめんごめん。そういうつもりで言ったんじゃないの。少なくとも原因と対処法がわかるまでまだまだ時間がかかるじゃない? その間にエレメリアンがやってきた時にどうするかなって思ったからよ。華先生一人に任せちゃ申し訳ないしね」

 

「別に私は一人でも大丈夫なのだけど」

 

 さらっと言い切った華先生を悠香さんは万が一を考えたら和くんやティアちゃんが変身できた方がいいと説明し納得させる。

 その様子を見て私はふと思う。何というか華先生と悠香さんってどっちの立場が高いんだろう?

 本来なら先生と生徒の関係だから華先生の方が立場が上のはずなのに、悠香さんの方が判断力とか行動力が諸々高くてどっちが上の立場なのかわからなくなる。

 こういうのカリスマ性の差って言うのかな? 失礼だけど、華先生って結構抜けている所あるし……

 

「んで、つまり俺たちが変身できるか試せばいいってことか?」

 

「そうそう」

 

 和輝は面倒くさがる素ぶりを見せながらもしっかりと立ち上がり、変身の準備に入る。

 テイルブレスで変身できるかどうかは試したけど、テイルドライバーを用いての変身はまだ試していない。

 私はテイルドライバーを和輝の腰に召喚する。といっても私の姿をした和輝にね。やっぱりややこしい。

 

「テイルオン」

 

 テイルドライバーを巻いている私の姿に新鮮さを覚えていたのはたったの一瞬、変身機構起動略語(スタートアップワード)を口にしながら側面のスイッチを押し込むいつもの手順を経て、和輝はテイルバイオレットに変身。

 入れ替わる前と何一つ変わらないテイルバイオレットの姿がそこにはあった。

 

「変身は問題なしみたいだぜ」

 

「そうみたいね」

 

 確認を終えた和輝は変身を解くと再びソファに腰を下ろす。

 こうして改めてテイルバイオレットの姿を見た感想だけど、やっぱり私の姿とはかなり違う。

 身長や体格、髪色は勿論の事、目つきから何まで私よりもやんちゃで男勝りな雰囲気が感じられる。ツインテールに関して言えば、結び目の位置含めて私と異なっていて別の可愛さがある。何というか男勝りな雰囲気の中で女の子らしさが感じられてそのギャップがとても可愛く見えるって感じ。

 何故か元は男のはずなのに胸の大きさが私よりも少し大きいのは納得いかないけど……

 

「おいティアナ、またツインテール握ってるぞ」

 

「え……!?」

 

 自然に息をするかのように私はツインテールを握っていた。

 特に意識していなかったこともあって私自身も驚いている。さっきもそうだったけど、まさか男になったことでこんな弊害が出るなんて……。

 今は相手が和輝だからいいけど、これがもし特にかかわりがない赤の他人のツインテールなら大問題よね。ただ注意されて怒られるだけならまだしも、最悪捕まったりすればこの体の持ち主である和輝にも迷惑がかかっちゃう。

 もっと集中して自分を律しないといけないわね。

 

「ねぇ二人ともさ……その……グへへぇ、入れ替わったなら……その……」

 

「青ちゃん、気持ちはわかるけどこれはゲームじゃないの。今はとりあえず落ち着きなさい」

 

 ずっと黙っていた青葉さんがグヘヘヘと気持ちの悪い笑みを浮かべながら近寄ろうとするけど、悠香さんがスッと制止する。

 一体何を聞こうとしたんだろねと和輝に言おうとしたけど、何故か和輝は青ざめていたのでやめておくことにする。これ以上は踏み入ってはいけない気がするし。

 

「とりあえずは涼原君も橘さんも、元に戻るまでは互いのふりをして生活するしかないんじゃないかしら? 難しいかもしれないけど、原因がもしかしたらテイルギアにあるかもしれない以上、私たち以外にこの事を明かすのは得策とは言えないんじゃない?」

 

 元に戻る方法はゆっくりと考えていきましょと補足を入れた上で、とりあえずは入れ替わった事を周囲に悟られずに生活することを提案する華先生。 

 その提案にげんなりした和輝は不満を漏らす。

 

「嘘だろぉ。戻るまでティアナのふりをしないといけないってのかよ」

 

「ふりをするって言っても明日だけだよ……。明日さえしのけば夏休みだしね……」

 

「そっか。そう言えば明日は終業式じゃない」

 

「って、ちょいまち。夏休み中、家ではどうすんだよ。いくら学校じゃないたってよ、毎日毎日ばあちゃんやおやっさんの目を欺くのは無理があるぜ」

 

「それに、もしもの事があった時、和くんとティアちゃんが離れているのは危なくないですか? こうなった以上は近くにいないといけない訳だから一緒に生活するしかないとあたしは思うんですけど」

 

 和輝と悠香さんは互いに思っていたことを一言一句違わずに華先生に言い、華先生は困り顔になる。

 気のせいじゃないかとは思うけど、悠香さんが発言している時、和輝の顔が赤く染まっていたような気がする。

 

「どうしましょ神外さん?」

 

「華先生……ぼくに頼ってどうするの……」

 

 この際、正樹さんにだけでも入れ替わった事を教えた方がいいんじゃないかなと思ってしまう。正樹さんって何でも信じちゃいそうな人だし、私と和輝が二人一緒に階段から転げ落ちてその衝撃でとかベタな理由で入れ替わってしまったとかならいけるかも……

 

「ねぇ和輝、この際正樹さんに言ってみるっていうのは?」

 

「絶対に嫌だ。死んでもおやっさんにだけは言うもんかよ」

 

 案外行けるんじゃないかなと思い和輝に提案してみるも、和輝は断固この提案を拒否してきた。

 余程、譲れない事でもあるのかなと錯覚するくらいの剣幕だったので、私はどうしたものかと苦心してしまう。

 すると悠香さんは待ってましたとばかりにある提案を持ち掛ける。

 

「ねぇ? その事で提案なんだけど。当分の間、そうね……。夏休み期間中あたしん家にこない?」

 

「え? どういうことだ悠香さん? いいのかよそんな事言っちまってよ」

 

「あたしは別に構わないけど? あ、朝昼晩の三食は勿論無料でつけちゃうわよ~」

 

「「いやいや、そうじゃなくて……」」

 

 私も和輝も別にそういう事を聞いている訳じゃない。

 確かに元に戻るまでの間、別の場所で暮らすのは私たちからしたらその提案は嬉しい提案なのだけど、この提案を受けることは悠香さんの家族に迷惑をかけてしまう事に繋がってしまう。

 今まで散々、正樹さんに迷惑をかけておいてあれだけど、それだけはしちゃいけないと思う。

 

「心配しなくてもいいよ……。悠香はほとんど一人暮らしみたいなものだし……」

 

「え? 確か片霧さんってお父さんと二人暮らしじゃなかった?」

 

「おいおい、どっちだよ」

 

 ほとんど一人暮らし? それとも二人暮らし?

 青葉さんと華先生の言葉が食い違っている事もあり、どういうことなのかさっぱりわからない私と和輝は首を傾げる。

 

「華先生の言う通り、一応はそうなってるけど、あたしのパパは仕事の関係でよく家を空けちゃうのよ。だからほとんど一人暮らしって訳」

 

「なるほどな……ってマジかよ」

 

「それって寂しくない? 大丈夫なの片霧さん?」

 

「華先生、あたしもう高3なんですけど……」

 

 悠香さんのお父さんはフリーのジャーナリストで世界中を飛び回っているとのこと。もうまる二年は帰ってきていないと言い切る悠香さん。

 和輝と華先生と違って私は、親が年中留守にしている事に何故だかあまり驚かなかった。

 

「まぁとにかく、昨日メールで確認した時ね、今すごく大きいネタを追いかけているのに必死みたいなのよ。何とかして、あたしや青ちゃんの卒業式には帰ってくるとは言ってるから、少なくともあと半年間あたしは一人暮らしってわけだから別に夏休みの間位なら家に来てもいいわよ」

 

 夏休みは明日から約一ヶ月間。

 希望的観測ではあるけど、そのくらいの期間があれば元に戻る為の方法が何かわかるかもしれない。しかも、それだけ時間があれば和輝にツインテールを維持し続ける苦労を教える事できるし、まさに願ったり叶ったりじゃない。

 迷惑がかからないのなら私が断る理由はない。

 

「どうする和輝? 私はこの提案を飲みたいと思うんだけど」

 

「そうだな。悠香さんがいいって言ってんだし、俺も賛成だ」

 

「じゃあ決まりみたいね」

 

 悠香さんがパチンと手を叩き、ようやくこの会議は終結に至った。

 完全な解決とは程遠いけど、当面の問題は何とか解決しそうだとわかり安堵する。

 

 ――!?

 

 安堵するも束の間、私は下半身に走った電流のような衝撃に気が付いた。

 少し前から今に至るまで変な違和感があったけど、それは全部ツインテールが無くなって事だと思って我慢していたけど、この感覚は違うことにようやく気が付いた。

 

「ね、ねぇ和輝?」

 

「どうしたんだよ……ってまさかお前!?」

 

「トイレ……行きたい……」 

 

 思い切ってカミングアウト。

 男の体って女の体と違って我慢が効く為にヤバいと感じたときには本当にヤバいのがわかる。

 というか尿意をツインテール不足の異常と間違えるなんて一生の不覚よ。これじゃもうツインテールに合わせる髪がない。

 

「だぁっもうしょうがねぇな!! 早く行くぞ!!」

 

「トイレなら角曲がって直ぐに多目的用のがあったはず」

 

「サンキュー先生!!」

 

 華先生の言葉に従い、私は和輝に連れられる形でそそくさと部室からトイレまで急いだ。

 

 

 

 

 

「クソぉ……!! そっちか……!!」

 

「大丈夫よ青ちゃん。チャンスはまだまだあるわ。その為に家に呼んだのだから」

 

 部屋を出る時、青葉さんと悠香さんの不穏な会話が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 テイルバイオレットとの戦いを終えアルティデビル基地に帰ってきたバアルギルディは変身者である和輝たちが現在大変な目に遭っているなど露も知らず、先日までグラシャラボラスギルディが収監されていたお仕置き部屋もとい懲罰室に訪れていた。

 テイルバイオレットの事は一先ず置いておく事にしたバアルギルディはある気になることを調べにやってきていたのだ。

 

「……」

 

 目の前にあるのは無残に壊された鉄格子の扉。

 天才を称するベリアルギルディが作りし英知の結晶がこの有様だ。余程、強力な攻撃を貰ったのだろうと推測できる。

 第一発見者のエレメリアンによると恐らくこの扉をグラシャラボラスギルディは内部から破壊したとのことだ。

 

魔神の吐息(デモン・ブレス)がもたらす力はこれほどまでだったとでもいうのか?」

 

 バアルギルディは認めたくはないが、この惨状を見る限りではそう思うしかないだろう。

 この扉のロックを解除するパスワードは私しか知らない筈なのだ。誰であってもロックを外から解除することなど出来やしないだろうと結論付けていたが故の考えだ。

 進展がないと悟ったバアルギルディは部屋を後にする。

 

「だがしかし、やはり気になって仕方ない。一体何があったというのだ」

 

 廊下を歩くバアルギルディは再び考える。

 あれは本当にグラシャラボラスギルディが引き起こしたものなのか?

 エレメリアンを強化、暴走させる魔神の吐息(デモン・ブレス)の力が予想を遥かに上回っていたと言えばそれまでだが、何処か引っかかる。この基地の中で誰か手引きした者がいるのではないか? バアルギルディの勘はそう告げていた。

 

「まさかとは思うが……。ベリアルギルディ、君なのか?」

 

 普段は自身の勘に絶対の自信を持っている筈のバアルギルディにしては随分と消極的な態度を取っている。

 それほどまでにバアルギルディはベリアルギルディを信じていた。もう二度と魔神の吐息(デモン・ブレス)を使用しないと言ったベリアルギルディを信じたかったのだ。

 

「そんなはずは……」

 

 

「なぁ? 知ってるか? テイルレッドたんの噂」

 

「ああ。知ってる知ってる」

 

 ここはエレメリアンの巣窟であるアルティデビル基地。廊下を歩けば当然、他のエレメリアンとすれ違う事だってある。

 考えが行き詰まり、困り果てたバアルギルディの耳にエレメリアンたちの噂話が飛び込んできた。

 普段なら聞き耳など立てずに通り過ぎるのだが、この時はつい聞き耳を立ててしまった。

 

「テイルレッドたんの正体が男だってやつだろ?」

 

「何だよ、知ってたのかよ。つまらねぇな」

 

「因みに俺はどっちでもいい派だ。レッドたんが可愛ければ正体が男だろうがどうでもいい」

 

 どうやら噂の内容はテイルレッドの正体が男だという事らしい。

 究極のツインテールを持つ女神と称させれるテイルレッドの正体が男だなんて、とても衝撃的な物だが、この噂はエレメリアンたちにとってはかなりメジャーな物だ。信じているか信じていないかは兎も角、最早知らぬ者はいない。

 当然、この噂を知らぬバアルギルディではない。

 興味を失い、そのまま通り過ぎようとした時だった。

 

「じゃあよ、テイルバイオレットの正体も男だと言ったらどうする?」

 

 それはテイルバイオレットに恋しているバアルギルディにとって寝耳に水の話であった。

 グラシャラボラスギルディの件を頭の片隅に追いやったバアルギルディは衝動的に噂話をしているエレメリアンに飛びつくと首根っこを掴み問いただす。

 

「何だと!? 本当かそれは!?」

 

「バ、バアルギルディ!? 一体どうしたんだよ!?」

 

「答えろ!! テイルバイオレットの正体が男だと? それは本当か!?」

 

「し、知らねぇよ。ただ、そんな噂が……」

 

 テイルバイオレットの正体が男かもしれない。

 確かにテイルバイオレットは男勝りな一面がかなり強い。もしかしたら本当に……

 そう思うと居ても立っても居られなくなったバアルギルディは掴んでいたエレメリアンを解放するなり、急いで駆け出した。

 

「君の正体が男だと? そんな……そんな!!」

 

 初恋の相手が実は男だったのかもしれない。そう思った時に冷静になれる物が果たしてどれほどいるのだろうか?

 もし、バアルギルディが男の娘属性(ガールズボーイ)のエレメリアンでなら寧ろ歓喜していたかもしれないが、そうではないのだ。

 恋愛初挑戦のバアルギルディ自身はこの衝動を抑え込むことなど出来やしなかった。




次回は和輝パート中心で書きたいと思ってます。
やっぱりTSって男から女になる方が王道だと思うのでがっつり書きたいです。

後、次回もしくはそのさらに次回くらいにでも、ティアナの過去を描写しようと考えています。
私のTS属性が暴走せずにプロット通り進めばの話ですけど。
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