俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第53話 オカマ襲来

 ティアナは俺と身体が入れ替わっている弊害によって、本来ならば俺が受けるはずだった堀井の特別補習を匠と揃って受ける羽目になってしまった。

 俺は最初、学年トップのティアナならどれだけ枚数が多かろうとも直ぐにでも終わらせてくれると信じていた。いくら身体が入れ替わろうが、学力は元の人格に依存するからだ。

 しかし、現実は違った。

 待てど暮らせど、一向に終わる気配がなかった。

 結局、全てが終わり、俺たち三人が新聞部部室内で昼食にありつけたのは午後3時半を過ぎた辺り。これじゃランチタイムではなくおやつタイムだぜ。

 何故、あそこまで手間取ったのかをティアナに聞いてみるとこう返ってきた。

 

(なんというかね、ソワソワして落ち着かなかったというか……集中出来なかったというか……。でも、華先生が様子を見に来てくれてからはそんな気がなくなったの)

 

 これはあれだ。原因は近くにツインテールがない事にある。そうに違いない。

 わからない奴向けに詳しく言うとティアナはツインテールが近くにないと集中力が大きく下がっちまうって事だ。

 その理由としては補習中、教室内にいたのはティアナと匠と堀井の三人だけ、ツインテールをしている俺は女子トイレにて女子連中に尋問された後、ツインテールを結ぶ練習をしていた。その後、ティアナがいつものパフォーマンスを発揮できたのはツインテールをしている華先生が来たからだ。

 お勉強が出来ない馬鹿な俺でもわかる簡単な内容なのに理解するのが難しい摩訶不思議な理屈。

 俺がもっと頭良かったら人の集中力とツインテールの関係を論文にでも纏めて学会に提出してやるのによ。

 

 その後、本来なら俺が受けるはずの補習を代わりに受けさせておいて感謝の一つもないのはおかしいので、今日一日中はティアナにツインテールを好きにさせると言ってしまった。

 その結果、今もティアナは俺のツインテールを両方とも握って幸せそうにしていた。

 

「やっぱり、私の身体のツインテールは手触りから何まで格別いいのよね~」

 

 そんな幸せそうなティアナをシャキッとした態度へ戻すブザー音が部室内に突如として鳴り響いた。

 そうエレメリアンの出現だ。

 俺は華先生を加えた3人で飛び出していった。

 

「出やがったかエレメリアン!!」

 

「行くわよ和輝!!」

 

「今日は私も一緒に!!」

 

 

 

 

 数分後、俺を先頭にティアナと華先生がビル街を駆け現場まで急ぐ。

 いつもならバイクで向かうっていうのに、やっぱり身体が入れ替わった弊害は大きい。こんな暑い中、走ってむかうことになるなんて戦う前に余計な体力を消費する事になっちってやがる。

 

「和輝!! そこの角を曲がって!! その先にある路地の奥にエレメリアンがいるわ!!」

 

「しゃあッ!! 待ってろよこの野郎!!」

 

 ターゲットが近いとわかった俺の足はフルスロットル。

 みるみるうちにティアナと華先生を置き去りしていく。

 そんな俺がティアナの指示通りに角を曲がって路地に侵入しようとした時だった。

 曲がった先、俺の目の前には銀髪とサングラスが特徴の若い男が歩いてきており、勢い余って衝突してしまう。

 

「ッ!?」

 

「なッ!?」

 

 体と体がドンとぶつかり合う。

 不意に起きた事であるのと、俺の身体が男ではなく女なのもあってか、ぶつかられても微動だにしていない男の方とは違って俺の体は弾かれてしまい体勢が崩れその拍子で尻もちをつきそうになる。

 その時だった。

 

「危ない!!」

 

 男はそう言うと、瞬きすら許さない一瞬の動きで俺の背中に回ると体勢を崩し尻もちをつきそうなっていた俺を両手で支えてくれた。

 

「あ、ありがと……(って何いってんだ俺はー!!)」

 

「いえいえ、私の方こそ前方への注意を不足していたようなので、礼など結構ですよ」

 

 咄嗟に出てしまった感謝の言葉に身悶えする中、銀髪の男は礼など結構と自分の非を詫び始める。

 何つーか、昔のギャルゲーの一場面を想起させる瞬間だ。

 俺が攻略対象のヒロイン側なのは納得いかねぇが、ここまでの一連の動きは男の俺でも惚れ惚れするくらいカッコいい。常日頃からイメージトレーニングしていないと到底できそうにない行動だ。

 

「……」

 

「な、なんだよ……ジロジロ見てよ……」

 

「美しい……」

 

「はい?」

 

 男はサングラスをしているので目の動きは正確にはわからない。 

 だと言うのに俺は男の視線が俺に夢中だと直ぐにわかってしまった。

 一瞬でもカッコいいと思ってしまった気持ちを後悔したくなる。こいつはもしかして変態野郎なんじゃねぇかってな。

 

「おっと、これはすまない。君のツインテールがとても魅力的だったものでつい……」

 

「お、おう……」

 

 なるほどな、こいつはこんななりしてティアナの同類って訳か。

 自分の身体でもないのに何だとは思うが、こんな美少女を前にしてその感想が真っ先に出てくる辺り、こいつのツインテール属性もかなり高いと見た。

 もしかしたらこいつもテイルギアを起動できてるんじゃないだろうかとそう思ってしまう。

 

「てかあんた……」

 

「ん?」

 

「何処かで会わなかったか?」

 

「ふぅむ……すまないが覚えがないな。私はまだボケとは程遠い故、君のような魅力的なツインテールをした少女を忘れるはずなどないのだが……」

 

 銀髪にサングラスをした身長180の高身長イケメンなんてそう簡単にあえるはずがないし、もし会っていたらもっと違った反応をしただろう。

 でも俺には目の前のこいつが初めて出会ったようには見えなかった。

 それもチラッと姿を見たとかのレベルじゃなく、かなり長い付き合いな気が……

 

 何だろう、徐々に気まずい空気が流れはじめている気がする。

 そんな時だった。後ろから声が聞こえて来た。

 

「あんた何してるの……」

 

「涼原君?」

 

 振り向くとそこにはこの状況を理解できないで呆然としているティアナと華先生の姿がそこにはあった。

 他人に見られたと理解した途端、恥ずかしさが心の底から這いあがって来る。

 俺は男を振り払い駆け出した。

 

「な、何でもねぇよ!! さ、さっさと行くぞ!!」

 

「ちょっと待ってよ!!」

 

「私の生徒が迷惑かけてすみませんでした!! 急いでいるので失礼します!!」

 

 今起きた出来事を忘れるべく俺は全速力でエレメリアンがいる場所まで走った。

 

 

 

 

 

 

「あれほどのツインテールをしていながらあの程度の属性力……あの少女、まさか……」

 

 和輝たちが去った後、銀髪サングラスの男はそう呟いた。

 

 

 

 

 俺たち三人が辿り着いた場所、そこはビル街の路地に建てられた一軒のバーだった。

 のだが……

 

「ここ……いるのか……」

 

「そうみたいよ……」

 

「これはまた……」

 

 バーと言ってもただのバーではない。

 俺たちの目の前にあるバーは男の姿に乙女の心を持った人たちが働いているバー、つまりオカマバーってやつだ。

 オカマに偏見が無いと言えば嘘になる。

 目の前からエレメリアン反応が出ているというのに俺はこの特殊な建物の中に踏み込めずにいた。

 

「「「モケェーーー!!」」」

 

「「「キャアァァァッ!!」」」「「「イヤァァーーン!!」」」

 

 中から聞こえてきたのは戦闘員(アルティロイド)の掛け声と助けを求めるオカマ達の野太い声。

 心なしか戦闘員の声もいつもより数倍野太く聞こえてきた気がする。

 早く助けねぇとといった感情よりもうへぇとげんなりする感情がこみ上がって来た。

 

「ど、どうする?」

 

「ど、どうするって……いくしかないでしょ……」

 

「そういうお前も足が止まってるぜ」

 

 俺もティアナも後一歩を踏み出せずにいるのが現状だ。

 ここに働いているオカマ及び全国のオカマに失礼極まりない行為だが、生理的に苦手な物がうようよいる場所に突入するのはエレメリアンに立ち向かうのとはまた別の勇気がいるんだよ。

 一応、華先生の名誉の為に言わせてもらうが、華先生はオカマにビビってる訳じゃない。突入出来ない俺たち二人に合わせてくれているだけだ。

 より正確に言えば、華先生は今回が初の同時出撃なので、一緒に登場したいんだと。

 

「大丈夫よ二人とも。嫌ならさっさと倒せばいいだし。何ならここで変身してから行きましょ」

 

「そ、それよ先生!! 行くわよ和輝!!」

 

「ティアナてめぇ!! 俺だけに行かせて離れる気満々じゃねぇーか!! ってしれっとテイルドライバー出してんじゃねぇよ!!」

 

 そうは言ってもここでジッとしていたら何も変わらない。

 数秒の沈黙の果て、俺は覚悟を決めテイルドライバーを構えると変身の体勢を取る。それに続く形で華先生もスーツのポケットからテイルペンダントを取り出し変身の体勢へ。

 

「ったく、テイルオン!!」「テイル……オン!!」

 

 青紫と緑の光がオカマバーの扉の前で爆裂し、二人のツインテール戦士が顕現する。ご存じ、俺が変身した青紫の戦士テイルバイオレットと華先生が変身した緑の戦士テイルブルームの登場だ。 

 ティアナが少し離れたのを確認した後俺は、エレメリアンに襲われているであろうオカマ達を助ける為、勢いよくドアを蹴破ってオカマバー内部に突入した。

 

「エレメリアン覚悟しやが――」

 

「ねぇねぇ聞いてよぉ~ママ~。実は最近、アタチねぇ~」

 

「あらあら、どうしたの~。ボティスギルディちゃん~」

 

 店内では、分厚い口紅やアイシャドウなどのけばけばしいメイクをした蛇のエレメリアンがカウンターで頬杖を突きながらオカマのママに向かって相談をしており、オカマのママは笑顔で受け答えをしていた。

 俺はその珍妙過ぎる光景を見たことで蹴躓いた。初速の勢いそのままに転がる俺の姿はまるで、ボウリングのレーンで転がるボールその物だ。

 俺はそのままガシャーンと大きな音を立てながらカウンターを破壊してワイン棚に激突する。乱舞するワインはさながらボウリングのピンのようであり、カコーンと気持ちのいい激突音が思わず聞こえてきそうなレベルの見事なストライクであった。

 

『何があったの和輝!? 大丈夫!?』

 

「大丈夫!? バイオレット!!」

 

「ティアナ、先生、だ、大丈夫……」

 

 心配し寄ってきてくれているブルームを振り払い改めて店内を見渡すが、そこら中あちらこちらのテーブルで戦闘員が、このバーの従業員であるオカマ達に相談に乗って貰っているという珍妙な光景が広がっていやがった。

 エレメリアンや戦闘員を見ても動じていないレベルの肝っ玉の座り具合は素直に凄いと認めるが、いくらなんでも緊張感がなさ過ぎる。ノリがいいにも程々にしてくれ。

 

「あらあら、テイルバイオレットちゃんぢゃな~い!! 生で見れるなんてアタチ感激よぉ~!!」

 

 首から上が蛇のエレメリアン、ボティスギルディはそのいかつい見た目からは想像もつかないくらいの甲高い男声で驚いた様子を見せる。

 見るからにけばけばしいメイク、妙にねちっこい喋り方、か弱い女性のようなくねくねした仕草、そこから導かれる答えは一つ、コイツもオカマだ。オカマのエレメリアンだ。

 

「みんな見てぇ~!! テイルバイオレットちゃんよぉ~!!」

 

「ホントだぁ~!! 可愛い~!!」

 

「食べちゃいたいわぁ~」

 

 俺に気づいたのはエレメリアンだけじゃない。周囲のテーブルで戦闘員相手に相談に乗っていたオカマの従業員たちもだ。

 歓声を受ける事は今までも度々あった事なのでそれについてはとやかく言いたくはないが、もうちょっと緊張感を持ってほしい。後、誰だ。食べたいとかほざいた奴は。

 まぁとりあえず、俺の願いは一つ。早く逃げてくれ。邪魔で仕方ねぇからよ。

 

「私もいるんですけ――」

 

「みんな~そろそろ私たちは邪魔になりそうだから、一旦店をでるわよ~。いい? わかった~?」

 

「「「はーーい!!」」」

 

 俺の願いが伝わったのか、オカマのママさんは従業員のオカマたちを連れてそそくさと店から出て行ってしまった。

 出て行く際、ボティスギルディに「またおいで、その時は沢山飲みましょう」と言っていたような気がするが気のせいだと信じたい。こんなふざけた言動だが、ボティスギルディ(コイツ)自身はあんたたちを狙って来ているんだぜ。

 

「てめぇ、こんな所に現れやがって……!! 狙いはここにいる人達か!!」

 

「あらあらご明察ぅ~。そうよ、アタチは同性愛者属性(トランスジェンダー)のボティスギルディよぉ~!!」

 

 カウンター席を離れ、テーブルの上に上ったボティスギルディは高らかに自らの属性を宣言する。

 

「それにしても随分と寂しくなっちゃったじゃない~!! これじゃギャラリーがアルティロイドちゃんしかいないじゃないのぉ~」

 

 くねくねしながら何を言っていやがるこのホモ野郎。

 俺は隣で「どうせ私なんて、もう時代遅れなのよね」としょんぼりといじけているテイルブルームを無視してウインドセイバーを握りしめ構える。

 

「ありがたいと思いな。てめぇの無様なやられようを晒さなくて済むんだからよぉ!!」

 

「あらバイオレットちゃん、随分と生意気な口聞いてくれるじゃないのぉ。いいわ!! 整列さない!! アタチの愛するアルティロイドちゃんたち!!」

 

「「「モケ――!!」」」

 

 周囲のテーブルで座っていた戦闘員たちはボティスギルディの声を受けると一斉に声を上げて整列する。さながら軍隊のような統率なれた動きだ。

 よく見ると戦闘員たちもボティスギルディに負けないくらいのけばけばしいメイクをしてやがった。さらにスカートまではいているソレは完全に乙女の姿。なのに声は通常よりも一層野太い声なのが気持ち悪い。

 

「やっておしまい!!」

 

「「「モケ―!!!」」」

 

「おい先生!! いつまでしょぼくれてんだよ!! 来たぞほら!!」

 

「はッ……!! そ、そうね……」

 

 一斉に飛び掛かって来る白づくめの戦闘員の大群。

 あまり広いとは言えない店内で俺たち二人はウインドセイバーとグランアローを手に持って応戦していく。

 時にはバーカウンターを飛び越えたり、テーブルを盾にしたりと雰囲気はまるで一昔前のスパイ映画を彷彿させる。中二病患者の誰もが憧れるようなシチュエーションではあるが、襲い掛かって来るのが皆、オカマの出で立ちをしているのが現実の落差を感じさせる。

 

「であらッ!!」

 

「はぁッ!!」

 

 最初こそ順調に戦闘員をなぎ倒していく俺たち二人、だがしかし、徐々に徐々にではあるが、その勢いは失っていく。

 体力が消耗していっているていうのもあるが、それ以前に戦闘員が中々消滅しないのが原因であった。何度ブッ飛ばして、何度叩き斬っても消滅せずに諦めずに立ち上がり再び襲い掛かって来る。心なしか普段よりも力が強くて不意にもらう攻撃がダメージを蓄積させる。

 まるで戦闘員ではなくエレメリアンと戦っているかのようだ。

 

「クッソ……!! てか何だこいつら!! 妙に強ぇ!!」

 

「モケ―!!」「モケ―!!」

 

「ッ……!! アルティロイドにここまで手こずるなんて……!!」

 

「オーホッホッホッホ!! 当たり前よぉ~!! 何故ならその子たちはアタチ直々に育てたオカマの魂を持つアルティロイド!! 肉体的な男の強さと精神的な女の強さを混ざり合わせたハイブリッドちゃんなんだからぁ~!!」

 

 戦闘する俺たちとは離れたステージの奥で何処からか用意したソファに寝転がるボティスギルディが苦戦する俺たちに向かってご丁寧に強さの秘訣を説明する。

 それによるとどうやらこの戦闘員はボティスギルディが直接鍛えてきた奴ららしい。オカマだから強いとかいう戯言は抜きにしても、このタフさは厄介極まりない。戦闘員の色がもし、アルティメギル産の黒い個体ならば、ゴキブリを想起して卒倒しそうなタフさだ。

 てか、戦闘員でこの強さならボティスギルディ本体の強さはどのレベルなのか想像つかねぇな。

 

「これじゃキリがないわ……!! バイオレット!!」

 

「んだよ先生!! 今、俺手が離せないんだが!?」

 

 正面から飛び掛かる戦闘員を蹴り飛ばし、背後から襲い掛かる奴はウインドセイバーで斬り払う。だが、戦闘員は消滅せずに果敢に立ち向かってくる。

 必殺技を放てば目の前の奴らは倒せるがそれじゃ後が続かないので安易に必殺技は使えない。

 そんな状況に苦労する俺の耳にテイルブルームが思いついた案が聞こえて来た。

 

「こんな時、魔法少女たちは力を合わせた合体技で立ち向かうって、昔ティルが言ってたわ!! 覚悟はいい? やるわよ!! 合体技!!」

 

「そうか!! その手があったか……って、合体技って何? 俺知らねぇんだけど!?」

 

『そう言えばその手があったわね。わかったわ華先生!! やるわよ和輝!!』

 

「お前まで何言ってんだ!?」

 

 妙にノリノリなティアナから送られてくる属性力が俺の全身を駆け巡り、ウインドセイバーへ集まっていく。俺は困惑しながらもテイルブルームと肩を合わせる。

 そして、テイルブルームがグランアローに属性力を集中させ構えるので、それに合わせて俺も構える。

 

「行くわよバイオレット」

 

「たっく、しょうがねぇな!! こうなったらやってやるぜ!! 技名はガイアストームインパクトでいいか?」

 

「何でもオッケーよ!!」

 

 実際、このまま戦ってもジリ貧なのは確定なので案外、名案かもしれない。後、俺が考えた技名は咄嗟に出た物なのでツッコむのだけはやめて欲しい。即興で息を合わせるには必殺技を一緒になって言うのは結構、理にかなってるし仕方ないんだ。

 俺たち二人は渾身の力を籠めて完全開放を行う。

 

「「完全開放(ブレイクレリーズ)!!」」

 

「ハッ……!! 不味いわ、アルティロイドちゃんたち!! 早く逃げて……!!」

 

 危険を察したボティスギルディが戦闘員に退避を促すが、もう遅い。

 完全開放した事で、風が巻き起こり嵐となり、地が揺れ地震を引き起こす。そのエネルギーはウインドセイバーとグランアロー、それぞれ二つの武器に宿り、紫と緑の二色の光を纏わせる。

 

「「ガイアストームインパクト!!」」

 

 コンマ数秒の誤差もなく振るわれるウインドセイバーとグランアローから発射される斬撃波は空中で合わさり球状の衝撃の塊となって戦闘員を飲み込み爆裂する。

 自由なる風の力と命生み出す大地の力、二つの力が合わさり、その威力は正に天地創造の一撃。その余波は戦っているオカマバーごと全てを破壊して倒壊させる。もし避難が済んでいなかったら少々ゾッとする威力に目が点になる。

 少々、オーバーキルすぎる気がしないでもないが、無事、戦闘員は全滅した。

 

 合体技(ガイアストームインパクト)によって戦場となっていた路地裏の一角に位置するオカマバーはみるも無残な荒れ果てた瓦礫の山に変わってしまった。

 破壊したのはエレメリアンではなく俺とテイルブルームの合体技(ガイアストームインパクト)の余波なので、責任は俺たちにあるかもしれねぇが、そこの所は多めに見て欲しい。だって強かったんだもん。

 

「なぁ、ティアナ。これってエレメリアンのせいにしてもいいかな? エレメリアンの攻撃で破壊されちまったって事に……」

 

『和輝、あなたねぇ……』

 

「大丈夫よバイオレット。さっきの方々には後でちゃんと事情を説明すればわかってくれるわ」

 

「そういう事じゃないと思うんですけどね……」

 

 ヒーローとは思えない外道発言にティアナが呆れているのがよくわかる。

 そんな中、瓦礫の中から起き上がったボティスギルディはいなくなってしまった戦闘員たちを想って涙を浮かべ始める。

 

「アタチの可愛い可愛いアルティロイドちゃんたちが……」

 

「次はあなたの番です!! ボティスギルディ!!」

 

「ああそうだ。次はてめぇの番だぜこのホモ野郎!!」

 

 ボティスギルディが泣いているその様子を見たことで、まだボティスギルディが残っている事を思い出したテイルブルームは気を引き締め直してボティスギルディに言い放つ。

 俺もそれに続いて意気揚々と言い放った。

 しかし、その言葉を聞いたボティスギルディに変化が訪れる。

 

「あ"あ"ん"? 今なんつった?」

 

 プツリと何処かで糸が切れるような音が聞こえたかと思うと、目の前にいたボティスギルディの様子がみるみるうちに変化していく。

 首から下の細みでしなやかな肉体がボディビルダー顔負けのマッチョな肉体へと変化し、けばけばしいメイクは悪鬼のような形相を思わせるメイクへいつの間にか変貌していた。

 これはもしかしなくても怒ったのか? 

 

『いけない!! 奴の属性力が急激に高まっているわ!! この気迫、グラシャラボラスギルディ以上よ!!』

 

「嘘だろ!? あいつ、魔神の吐息(デモン・ブレス)使ってねぇぞ!!」

 

 ボティスギルディの変貌を目の当たりにして焦るティアナの声が聞こえてくる。

 危機を察した俺とテイルブルームはウインドセイバーとグランアローを構え直した。

 それにしても何が癇に障ったのだろうか? やはり愛していた戦闘員がやられたからだろうか?

 

「オレの事をホモ野郎だと……!! オレはオカマだ!! ホモじゃねぇ!!」

 

「ってそこかよ!?」

 

 一人称がアタチからオレへと切り替わるくらいの怒りの源はまさかのホモ呼ばわりされたことだった。

 思わずツッコんでしまう馬鹿馬鹿しい理由だが、奴の怒りはマジもマジ、大マジなのが不味い。

 

「ならてめぇらにたっぷりと見せてやるぜ!! オレの求める究極の属性!! 男と女、二つの性を超越せしオカマの神髄をな!!」

 

 そう叫ぶとボティスギルディの姿が突如として見えなくなる。

 透明になる能力でも持っていたのかと警戒する俺に不可視の拳が襲い掛かった。

 

「ぐはぁ!!」

 

「バイオレット!!」

 

「こいつ……!! 先生、気をつけろ!! こいつは透明化なんてちゃちなもん使ってねぇ!! 速いんだ、見えなくなるくらい!!」

 

 初撃を受けて瞬時に理解すると同時に再び苛烈な拳と脚の乱舞が俺を襲い掛かる。

 不可視の攻撃を防御しきることなど出来やしないので俺はなされるがままだった。

 

「今、助けます!! って……きゃあっ!!」

 

「先生!! って……ぐはぁ!!」

 

 俺を助ける為に割って入ろうとすれば、ボティスギルディの標的は瞬時に切り替わる。今度はテイルブルームの装甲が目にも止まらぬ速さの拳に破壊され吹き飛ばされ、俺が助けに入ろうとすれば今度は俺がと、完全に俺たちは弄ばれていた。

 

「これでトドメだ!! 喰らえ!! オレ必殺のぉ!! オカマパンチィィィッ!!」

 

 必殺技に余計な英単語は不要とばかりに発せられた漢らしいド直球すぎるネーミングの必殺パンチが俺を襲う。

 声を聞いたことで辛うじて何処から来るかはわかったが、その余りの速さに対応できない。万事休すかと思われたその時、俺とボティスギルディの間にテイルブルームが割り込んできた。

 教え子に手出しさせない。教員としての最期の誇りが感じられた。

 テイルブルームは俺と違ってガードをした体勢だったのだが、到底防ぎきれるものではなく、テイルブルームと俺はブッ飛ばされ近くの建設中のビルに叩きつけられた。

 

「きゃぁぁっ!!」

 

「がぁぁっ!!」

 

『先生!! 和輝!!』

 

 建築途中の壁を突き破り、骨組みの鉄骨全てを無茶苦茶にするその威力に驚愕する。防いだとは言え、直撃したテイルブルームが気絶するレベルだ。

 俺は何とか意識こそ保っているものの、もう戦う力は残っておらず、変身が解除されティアナの身体をボティスギルディの目の前に晒すこととなった。

 

「ふースッキリしたわぁ。にしてもアータ、属性力の割には中々のツインテールしてるわねぇ。奪い取るのが惜しいくらいよぉ」

 

 もう怒りは収まったのか、さっきまでのマッシブなボディではなくなっているボティスギルディ。

 だが、怒りが収まったと言えど安心など出来やしない。寧ろ変身が解けたこのままじゃこの身体に危険がともなっちまうのは確実だ。

 

「にしてもアータ変ねぇ? 見た目は女の子なのに、まるで心は男その物」

 

 ついついギクリとしてしまう。

 遠くにいるティアナの方向へ顔が向くのだけは精一杯阻止する。

 

「隠しても駄目よぉ。アタチにはわかるんだからぁ、何故ならオカマだものぉ。もしかしてあなたも同類?」

 

「違うわ!! てめぇなんかと一緒にすんじゃねぇ!!」

 

「あらさっきはあんなにボコボコにされたのによくもそんな口が叩けるものねぇ。でもその態度、気に入ったわぁ。今日の所は見逃してあげる。でも、次会った時は容赦しないわよぉ」

 

 そう言い放つとボティスギルディは姿を消した。

 そして、駆け寄って来るティアナ。

 俺はあいつに勝つためにはグラシャラボラスギルディを倒した赤い力ではないと駄目だと実感しながら気を失うのであった。




オカマキャラは大体が強敵なイメージ。
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