俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「お、おはよう……」
どうすればティアナにツインテールを結ぶコツとやらを聞くことが出来るかを考えながら返す朝の挨拶は何処かぎこちない物だった。
初日から今に至るまで今度こそは自分一人でやってやると息巻いていたが故に今更頭を下げ直すのがみっともなく感じてくる。
いつもティアナに結んでもらう時、結びたくてしょうがないから結ばせてやっていると思う事で納得するようにしていたんだが、これは違う。今回は俺が頭を下げる番なんだ。じゃなきゃ前に進めない。
でも、体は中々思うように言ってはくれず、ただ黙り込んでしまう。
「どうしたの? 何か変よ」
「ッ……!! 何でもねぇよ……!!」
ティアナはそんな俺の気持ちを察することが出来ずにいつも通りといった雰囲気でリボンを手に取ろうとする。
「ほら貸して、結んであげるから……」
いつもなら嬉々として結ぼうとするティアナの手は何処か躊躇いがあるように見えた
ツインテールを結ぶ事自体を自制しようかと迷っているようにも見える。
もしかしたらティアナはティアナで何か悩んでいるのかもしれない。そう思うとようやく俺の覚悟は決まった。
俺はティアナの手を優しくはね除ける。
「すまねぇ、今回こそは俺の手で結びたいんだ。でさ……何つーか、その……コツとかあるならよ、教えてくれねぇか」
頭を下げるとまではいかないけど、俺なりに妥協した頼み方だ。
ティアナはそんな俺に面食らったのか、「わかった」と一言だけ返して黙ってくれる。
この沈黙を俺はとりあえず今の出来を見せてみろと解釈したので、俺はティアナに見守られながらツインテールを結び始める。
数分の悪戦苦闘の後、相も変わらぬ酷い出来のツインテールとはいえない何かが出来上がった。
「はぁ……やっぱし駄目か」
「うーん……」
顎に手を当て何故俺が結べてないのかを考えるティアナ。
数秒の沈黙の果てにティアナは閃いた。
「ねぇ、もしかして和輝って、私のモノマネをしようとし過ぎているんじゃない?」
「は? どういうことだ?」
「つまりね、和輝の中で結びたいツインテールと元々私が結んでいたツインテールは違うって事」
要するに俺はティアナのツインテールを再現しようと固執し過ぎているってことなのか?
言われてみれば確かに俺はティアナが結んでいたツインテールを再現しようと躍起になっていた気がする。
「そうね、一度鏡も何も見ずに結んでみたら? その時、頭に思い描くのは和輝自身が最も好きな形のツインテールにすること。わかった?」
「お、おう」
俺は鏡を見ない所か、目を閉じて髪を結び始める。
この一週間、何度も結ぼうとしてきた手は何不自由なく動いてくれるので、鏡を見なくて何も問題ない。違うのは頭の中に思い描く理想のツインテールがティアナの物とは少しばかり異なる事だけだ。
鏡を見ていた頃とは違う明らかにするすると動く手に多少の驚きを抱きながら結び終えた俺はゆっくりと目を開けてその出来栄えを確かめる。これで結べていなかったと思うと少し怖いがここが正念場だ。
「……って、出来てんじゃねぇか」
「ちょっと荒っぽいけど、いいんじゃない? 私が結んだものよりも和輝らしくて似合っているわよ。何だか私の身体じゃないみたい」
完成したツインテールはティアナの結ぶ物と比べると結び目の位置や全体的な形がやや異なっていた。ティアナの言う通り所々が荒いのだが、その点含めて俺らしさが感じられるので何だか嬉しさがこみ上げてくる。
これが俺のツインテール。何というかテイルバイオレットに変身した時のツインテールにそっくりそのままって感じだ。
「こんな簡単な事だったとはな……」
「根本的な結び方自体は間違っていなかったしね。まぁ真似しようと思うのは動機としては何も間違っていないけど、それに固執しすぎゃ何も出来ないって事よ」
達成感の余り完成したツインテールを眺める事に俺は夢中になってしまう。
俺の手で結んだこともあってか、このツインテールは是が非でも守り切ると一層ツインテールに対する想いが高まって来る。今ならバアルギルディと戦った時のような失態は起こさないとハッキリ言える。
今なら入れ替わって良かったなとも思えてくる。
「……」
「どうしたティアナ? 別に触っても構わねぇんだぜ。ほれほれどうした? ん?」
今までのティアナなら俺に許可を取るまでもなくツインテールを触りに来ていた筈なのに、ティアナは触ろうとしているのを躊躇するように両腕を抑えていた。
ぶりっ子のようにツインテールの穂先を摘まんで揺らしてみるが、ティアナは「大丈夫……」と遠慮したように触ろうとして来ない。
ティアナが何かを恐れているように見えた。
そのまま洗面所から出て行こうとするティアナを俺は呼び止めるべく声をかける。
「何、遠慮してんだよ。我慢は体に毒だぜ」
「いいの……ちょっとだけの辛抱だから……」
「ちょっともクソもあるかっつーの。触りたいんだろ? ツインテール」
俯きながら小さく頷くティアナ。
俺の身体でなければ可愛いと思える仕草なのだが、今は置いておくことにする。
「でも駄目……このままじゃ私、どうにかなっちゃうかもしれないから……」
「どうにかって何だよ。おらよ、言ってみろ」
張り詰めた空気で満たされる洗面所では、いってきますと叫ぶ悠香さんの明るい声は殆ど聞こえてこないくらい真剣だ。
ティアナは今にも消え入りそうな小さな声で感情を吐露し始める。
「和輝と入れ替わってからの毎日、私、日に日にツインテールを求めるようになっているの……」
「ああ、そうだな」
「そんな自分が怖くなって、それで……」
ティアナの言う通り、ここ最近は入れ替わった当初よりもツインテールに障ろうとする機会が増え始めていた。昨日、ショッピングモールで服を選んでいる時も片手はずっとツインテールを放していなかったし、水着を選んでいる際に一人にした時なんかは俺がいない間に見ず知らずの少女のツインテールに今にも飛びつこうとしていた。
未遂で終わったから良かったものの、頼むからその身体で見知らぬ誰かのツインテール目掛けて飛びつかないでくれとは思っていたが、ティアナ自身もそうなっていくのが怖かったと思っていたとはな。
「このままツインテールを求めすぎたら、ツインテールにでもなっちゃうんじゃないかって……」
「おう、そうか……って、はぁ? 今、お前なんつった?」
「だから、ツインテールになっちゃうかもしれないって……」
俺は一瞬、何を言っているんだと耳を疑ったが、ティアナ自身は至って真面目だった。
シリアスなムードが容易く崩れ去っていくのが、肌で感じることが出来る。
ツインテールになるってどういう事だよ。多分、意味合いとしては自分が自分でなくなるって意味だとは思うけど、こんな表現をするなんていくらなんでも脳内ツインテールすぎるぜ。
「馬鹿通り越して病気でもしてんじゃねぇのお前……。んなことあるかっつーの」
「ちょっと、和――」
少し呆れながらティアナの頭を小突いてみると、ティアナはそれに対して抗議しようとしてくる。
俺は今にも開こうとする口の前に指をあてて黙らせ、言い放つ。
「考えすぎだ。それにな、第一そんな事は俺が許さねぇしさせやしねぇ。もし、お前がツインテール求めて暴走するようだったら俺が全力で止めてやんよ。だからよ、何も心配しなくていい。お前はお前なんだからな」
「和輝……」
つい勢いに任せて言いたいこと言ってしまったが、よくよく振り返ってみるとクッソ恥ずかしい事を言っている事に気が付いた。
俺は真っ赤に染まった顔を逸らした。
「これは……その、あれだ。そ、その身体は俺のだからって意味だからな!! その身体で捕まるなんてされちゃ敵わないって事!! 勘違いしてんじゃねぇぞ!!」
ヤバい、今度は顔だけじゃなくて体まで赤く火照って仕方ねぇ。
恥ずかしいとかのレベルを軽く超えている気がするぜ。
このままじゃどうにかなってしまうと感じた俺は猛ダッシュで洗面所から出て自室に逃げ込んだ。
「教えるつもりだったのに、逆に教えられるなんてね。ありがとう、和輝……」
ティアナは洗面所にて一人呟く。
その時、腕に嵌められたテイルブレスは呼応するかのように赤い光を点滅させていた。
◇
少し飛んでその日の夕刻。
遂に来たエレメリアン出現のブザーを聞いた俺はティアナと共に町外れにある、廃工場にやってきた。人がいなくなってからもう随分と経つこの廃工場は機械などの危険物こそ撤去されてはいるが、それ以外はほぼそのままと言ってもよく、老朽化して今にも崩れそうな鉄骨が剥き出しとなっている。
当たり前だが、そんな場所に人がいるわけがない。いたとしてもそれは特撮ヒーローなどの撮影班か、その聖地巡礼をしに来た物好きな奴ぐらいだろう。ボティスギルディ求めるオカマとは縁がなさ過ぎる。
つまり、ここから導き出される答えは一つ。野郎は戦う為だけに来ているって事だ。
レーダーを頼りに廃工場を進んでいると、今いる場所から少し先にある開けた場所から忘れたくても忘れられない野太さと甲高さを合わせたような特徴的なオカマボイスが聞こえてくる。
「この先よ。じゃあ頑張ってね」
「ああ、任せとけ。テイルオン!!」
テイルバイオレットへの変身を完了させた俺はティアナを物陰に控えさせるとボティスギルディの前に姿を見せる。
「待たせたな。ボティスギルディ」
「あらようやく来てくれたのねぇ。ほんっと待ちくたびれちゃったわよぉ~。暑さのおかげでメイクが台無しなんだからぁ」
流れる汗がボティスギルディの顔に施させているケバいメイクを中途半端に流しており、ぐちゃぐちゃの滅茶苦茶。ただでさえ気持ち悪かった野郎の面が今ではホラーの領域に突入しており、ガキの頃に見ていた絵本に出てくる山姥を思い出させる。
てかエレメリアンでも汗はかくんだな……。
「ちょっと待っててね。今直すからぁ」
「今するのかよ、おい」
「当たり前よぉ。オカマにとって化粧は命よりも大切なんだからぁ。それに戦うっていうのにこんな顔じゃ失礼でしょぉ?」
俺のツッコミをものともせずに高速で化粧直し始めるボティスギルティ。その手捌きは前回見せた神速の領域に達しており、隙と呼べる隙がまるで存在していない。
元通りのケバいメイクはものの数秒で完成し、仕切り直しとなる
「どう? あの日から少しは強くなったかしら? 」
「さぁな? でも、あの時の俺だと見くびっていたら痛い目見るぜ」
「あら、その自信満々な態度、その目つき、どうやらあの時とは違うようねぇ? ゾクゾクしちゃうわぁ~」
ああは言ってみたが、別に俺はあの時からはっきりと強くなった訳じゃない。
だが、あの時と違って今の俺は自分なりのツインテールを結ぶことが出来るようになっている。ティアナのツインテールを守るってのは勿論だが、それ以上に自分自身で結んだツインテールを守らねぇと思うと俄然力が湧いてくる。今まで誰かのツインテールの為にばかり戦っていたが、今は守る対象に俺のツインテールも含んでいるってわけだ。
負けられない……いや、俺は負ける気がしない。
テイルギアは心で戦う武器。前向きなこの気持ちが大切なんだ。
「じゃあまずはこの子たちと戦ってもらうわよぉ」
「え?」
そう言ったボティスギルティがパチンと指を鳴らすと廃工場の奥からぞろぞろと大量の
数にして100体以上は確実と言ったその圧倒的な物量に俺はひるんでしまう。
そういやコイツらの存在を完全に忘れてたぜ。
『どうするのよ!? これ!? 500体はいるわよ!!』
「んなもん知るか!? おいてめぇ!! 一人に対してこの数きたねぇぞ!!」
「あらぁ? 見くびっていたら痛い目みるんじゃなかったのかしらぁ? アタチ、別に一人で戦うなんて言ってないわよぉ~」
戦う為だけにわざわざこんな場所にやって来るんだから、ボティスギルティってかなり正々堂々としたエレメリアンだと錯覚していたが、全然違った。実力で既に勝った相手に対してこの物量を先にぶつけるなんて卑怯極まりないと言わざる得ない。
オカマの風上にもおけねぇ野郎だ。
しかもこの戦闘員、前戦った時は先生と二人がかりで10体前後を相手するので精一杯だったレベルで手強いのがわかっている。一体辺りが通常の戦闘員の約10倍は確実だろう。
さっきまでの威勢が空の彼方へ消えていきそうになった時、天高くから声が聞こえてくる。
「そこまでよ!! あなたたちは私が相手するわ!!」
「あ、アータは!?」
「先生!!」『華先生!!』
廃工場にそびえ立つ高さ50メートルはいくであろう煙突の頂上に命綱も何もなしで堂々と立っていたのは修行に出ていて連絡が取れない筈の華先生……いや、テイルブルームだった。
どうしてそんな場所にいるんだとか、今までどこに行っていたのかだとかはこの際置いておくとして、とりあえずは来てくれた事に感謝する。
一人であの数の戦闘員を相手すると言ってのけたんだ、何か勝算があるはずだ。
煙突の上からスタッと降りて来たテイルブルームは戦闘員の群れに突っ込んでいき、俺はボティスギルディと対峙する。
「その面、今度こそ歪ませてやんよ!! カマ野郎!!」
「ムキ―!! 言ってくれるじゃないの!! いいわぁ!! 今回は情けなしよぉ!!」
「望むところだぁッ!!」
かくして決戦の火蓋は切って落とされた。
俺はウインドセイバーを手に取り、ボティスギルディに向かっていった。
「さぁ、見せてもらうぞ。君の正体を……!!」
ティアナが隠れている場所とはまた別の物陰には人間態のバアルギルディがサングラス越しに目を光らせていた。
◇
和輝がボティスギルティと火花を散らし、華先生が戦闘員たちをまとめて相手取っている時、私は見つからないように物陰から隠れてその様子を見ていた。
「はぁっ!!」
「モケーー!!」
ボロボロに朽ち果てたトタンで出来た屋根と屋根の隙間から僅かな光が差し込む薄暗い空間の中、華先生ことテイルブルームはその緑色のツインテールを優雅に舞い上がらせながら戦闘員たちと戦っていた。
ボティスギルティが鍛え上げた戦闘員は皆、逞しい男のような肉体をしておきながら、か弱い女のようなスカートを履いて顔にはメイクまでしたふざけた姿をしている。だけどふざけているのは見た目だけ、その強さは通常の戦闘員の約10倍以上で一体分のエレメリアンにも匹敵する。それでいて数も多いのだから一週間前の初戦闘の時は和輝も大いに苦戦させられた相手だ。
だというのに今のテイルブルームは全く苦戦しているようには見えなかった。
バッタバッタとなぎ倒され、埃と共に宙に舞う戦闘員の中で大立ち回りを続けるその様は正に一騎当千。
一週間前とは大きく進化したその一挙手一投足に私は目を奪われる。
ただ倒すのではなく、自身のツインテールがより映えるように計算されているかのようにも見える。
この一週間で一体どのような修行をしていたのだろうかが気になって仕方ない。
「この数日間、私は大自然の中でツインテールを維持しながら昼夜問わず襲い掛かって来る虫や動物と戦ってきた!! それと比べればこんな数なんて何も恐れる事はない!!」
「いやいや、何してんのよ!?」
華先生が行っていた修行と言うのは、ツインテールをしたままサバイバルを行うという色々とぶっ飛んだ物だった。
何というか和輝に教えたツインテールの手入れとかの重要性をロケットに乗せて天高く飛ばすかの如く、常識から逸脱している。熟練のツインテール戦士である華先生だからこそ成し遂げた事ではあるとは思うけど、流石にそれは無茶苦茶だと言わざるが得ないとも思う。しかも華先生の言い方からして何も持って行かずにサバイバルしていたみたいだから、真面目すぎるとかじゃなくてただの馬鹿よ。
「でも……案外ありなのかな? 要するに常時ツインテールに気を配りながら生活するってことよね」
時間が経つ度に意外といいトレーニングなんじゃないのかと思えてくる。
やり方が無茶苦茶とはいえ、やりたい事は別に間違っていない。どんな環境下でもツインテールを維持する事はこの世に生きとし生ける全てのツインテールをした者の願いだもの。それに大昔に生きていた原始人の方々だってツインテールをする時は同じ環境だったはず……
「そんな考えに気が付かないなんて私もまだまだ未熟って事ね」
『気づかなくていいわ!! このアホ!!』
遠くの方でボティスギルティと剣と拳を交えている筈の和輝からテイルブレスを通して素早くツッコまれたので、そっちの方向に目をやるとボティスギルティに苦戦するテイルバイオレットが見えた。
余りにも違う勝負の雲行きに思わず身が引き締まり、気持ちが切り替わる。
『あらあらぁ? 随分と余裕ねぇ!!』
『くッ!!』
本気を出したボティスギルティは華先生が相手取っている戦闘員とは比べなれないくらいには強いエレメリアン。幸い、今のボティスギルティは以前二人を圧倒した本気モードではないけど、明らかにテイルバイオレットを押していた。
曰く、オカマとは男の強さと女の優しさを合わせた最強の性別。
それが本当かどうかなんてこの際置いておくとしても、事実強いことには変わりない。
しなやか且つ力強い強烈な拳や蹴りの体術がテイルバイオレットの強固な装甲を次々と打ち砕いていっていた。
『気迫と威勢は十分。でも……それだけじゃ勝てないのが勝負ってものよぉ』
『一々うっせぇんだよ!! 黙ってろ!!』
『ほんと、女の子とは思えない乱暴さねぇ~!! とりあえずこれでもくらいなさい!!』
怒涛の連撃の前に吹き飛ばされ積み上げられた鉄屑の山に叩きつけられるテイルバイオレット。
やっぱりこのままじゃ勝てっこない。そう判断した私はテイルブルームの方に目をやるが、テイルブルームは100体以上の戦闘員の相手で手一杯といった様子だった。どれだけ強くなってもあれ程の数を倒しきるにはまだまだ時間が足りない。
『だから……うっせぇつってんだろ……!!』
『まだ立つのぉ? 勝てない癖にぃ~』
痛みや衝撃はとっくにフォトンアブソーバーを貫通して伝わっている筈なのに、直ぐに立ち上がっては自らを鼓舞するかのように声を上げるテイルバイオレット。全身のあちこちがボロボロだけど、唯一ツインテールのみ戦闘開始前と何一つ変わらない輝きを保っていた。ツインテールだけを見ればまるで戦いなんてありはしなかったかのようだ。
数日前とは明らかに進化している事がわかる。
その時、私はテイルブレスが赤い光を点滅させているのに気が付いた。
「これって……あの赤い力?」
これはもしかして、和輝自身がツインテールに対する扱い方をマスターした事に反応しているんじゃないかと思えてくる。だって今の和輝は私に頼らず自力でツインテールを結べるようにもなっているし、今さっき見たようにツインテールを傷つけずに戦うことが難なく出来ているしね。
入れ替わった現象自体が和輝にこの力を扱う為の試練だったのならある程度頷ける。
「これがあれば和輝は……」
変身していない私でもわかる圧倒的なまでの属性力がその光に先には存在している。
この光をテイルバイオレットに届ける事が出来たならもしかしたら、グラシャラボラスギルディを倒したあの姿に変身させる事が出来るのかもしれない。
そうすべくテイルブレスに手を当てた時に私の頭にふと過る事があった。
(何つーかよ。あの姿になった時、怖いとか恐ろしいとかの感情がぶっ飛ぶくらいにツインテールへの想いが止まらなくなっちまうんだよ)
グラシャラボラスギルディを倒したあの時、確か和輝は恐怖といった感情全てが塗りつぶされるようにツインテールへの感情が高まってきたと言った。
それってもしかしてこの力を使えば和輝がツインテールになっちゃうかもしれないって事なんじゃ……
そう思うと不安で手が出せなくなる。
なまじ自分がそうなるのでは思ってしまったから余計にだった。
『そろそろあっちの方も気になるしぃ、この勝負を終わらせましょっか!!』
属性力を奪うリングを手にしたボティスギルディがテイルバイオレット目掛けて跳躍する。
万事休すかと思われたがテイルバイオレットは咄嗟に体を捻って回避し、カウンターの蹴りを炸裂させる。
『させるかよ……!! このツインテールに触れていいのはてめぇのような奴じゃねぇんだ……!! ティアナが安心できるようにも俺は絶対渡さねぇ……!!』
その言葉とそのツインテールが私に勇気をくれる。
和輝に限って不安になる事が起きるなんて有り得ない。もしそうなったとしてもその時は私が止めればいい。
そう気づいた時、赤い光はより一層強く輝きだした。
『生意気ィィィ!! アータみたいな子は大っ嫌いよぉ!!』
逆上し拳を振りあげるボティスギルティ。
私は今できる最高の援護をすべくテイルブレスに手をかざし解き放つ。
「受け取って!! この力!!」
赤い光はテイルバイオレット目掛けて飛んでいった。
◇
ティアナの声が聞こえたかと思うと、突如として赤い閃光がボティスギルディを弾き飛ばし、俺を包み込むように集まって来る。
この暖かさにこの溢れ出る力。間違いない、グラシャラボラスギルディを倒した時と同じ光だ。
俺は願う。あの時のような力をくれ。奴らから
「俺に応えろ!! 俺のツインテール!!」
俺の叫びに呼応するかのように光は繭のように俺を包み込み、その中でボロボロだった装甲を復元しては、赤いガントレットなどの新しき赤い装甲が上半身を中心に形となって追加されていき、締めにツインテールの穂先が青紫から赤へと徐々に変化して俺の変身は完了する。
赤いテイルバイオレット。
グラシャラボラスギルディを倒したあの姿が再びこの世に顕現する。
「おいティアナ、わかったみてぇだな。この力の出し方に」
『ううん、これは私のおかげじゃなくて和輝のおかげ。和輝のツインテールが私に勇気をくれたから生まれた新たな力』
ティアナはそう言ってくれているが、正直あまりピンと来ない。
何かやったか?
ボティスギルティ相手にするので精一杯だったので、全くわからねぇ。
『ねぇねぇ名付けるならテイルバイオレットブレイブチェインって所かしら? 何時までも赤い力って呼ぶのもどうかと思うし』
「んなの何でもいい。お前が勝手に決めてくれ」
てか、こんな状況で名前ってお前……。
この力をものにしたからっと言って、いくら何でも浮かれすぎじゃないかとティアナを叱りたくなる。
確かにこれでボティスギルティ相手に後れを取る事はないだろうけどよ。調子に乗って油断すると以前のみたいにティアナを危険に晒すことがあるかもしれねぇしな。
俺は状況を理解できておらず混乱するボティスギルティと向きなおった。
「何よぉッ!! 何があったのよぉッ!!」
「さぁな、俺にもよくわかんねぇよ。でも、ここからが本当の戦いって奴だ。覚悟しろ!!」
想定より長くなったので決着は次回に持ち越しになります。