俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第58話 男と男の戦い

 君たちはツンデレという物を知っているかな?

 ツンデレ――それを大雑把に言うのならば、ツンツンと攻撃的且つ敵対的な態度とデレデレとした従順且つ好意的な態度を持つ人物及び属性の事だ。

 そして、私の命の根幹をなす大事な物でもある。

 

 偏にツンデレと言ってもその種類は多いが、その中でも大まかに二つに分けられる。

 一つは普段周りに他の者が居るときはツンツンとしているのに、特定の人物と二人きりなった時、または何かの拍子で不意に素が出てしまう所謂自らの気持ちに素直になれないタイプ。

 もう一つは出会った当初こそ警戒心などの要因によってツンツンしていたのが、時間の経過とともに態度が和らぎ、最終的には出会った当初とは打って変わって優しくなるタイプ。

 

 少し小難しかったかもしれないので、好きな男Aと弁当を食べるシチュエーションを例にしてみよう。

 前者の場合、Aに食べてもらう為に朝から健気に弁当を作ってきたというのにいざ渡そうとする時に限って「作り過ぎて余ったから仕方なくあげるんだからね!!」なんて言ってしまう。

 後者の場合、好感度が足りない最初はAと一緒に弁当を食べる気すらなく、一緒に食べようとすると「あなたなんかと誰が食べるもんですか」と罵倒すらもしてくるような子が好感度が高くなると逆に「A君、一緒に食べよう」と二人分の弁当まで作って来るようになる。

 暴力行為(ツン)を例にするなら前者はある程度の好感度があっても照れ隠しの為にしてくるのに対して後者はある程度の好感度があればしてこなくなる。

 それ以外にも……っておおっとこれ以上語るとキリがないのでここで一度ストップだ。

 

 因みに二つのツンデレ、そのどっちがいいなんて決める事など出来ない。

 どちらもが私の愛するツンデレなのであり、どちらが上などといった無粋な真似は言語道断だ。

 前者なら常に味わえるツンとデレのギャップが格別であり、後者ならデレに到達した達成感は表現できない。

 

 まぁ、要するにツンデレとはこの世で最も愛おしい最高の属性なのである。

 

 私はそんなツンデレ属性を持って生まれたエレメリアンだ。

 生まれた時が何時で何処で生まれたかなんてもう覚えてもいないが、唯一覚えているのは生まれたその瞬間からツンデレに対する想いを抱えていた事くらいだ。

 

(女の子にツンツンされたい……そしてそのデレがみたい)

 

 ただその一点のみが私が生まれた時抱いた感情だ。

 そんな私はツンデレを極めるべく様々な事を行った。

 孤高を気取ってアルティメギルといった大組織に所属する事を蹴る事から始まったそれは、ありとあらゆるツンデレヒロインが出てくるゲームの攻略やツンデレ少女に相対した時のイメージトレーニングと、貧弱だった私を鍛えてくれた。

 

 いつの間にかアルティメギル幹部クラスの実力を持った野良エレメリアンと噂されるようになり、それからかなりの年月が経った頃だった。

 最強と謳われるツインテール属性、その中でもさらに別格の存在である究極のツインテールへと至った戦士がアルティメギル首領を打ち倒し、仲間と共にアルティメギルを壊滅させたとの報が私の耳にも入ってきたのだ。

 私は心底驚いた。

 いくらツンデレと相性抜群である最強のツインテール属性といえど、あの規模を有するアルティメギルを滅ぼすだなんてそんな事ある筈がないと思っていたからだ。

 その者たちの名はツインテイルズ。輝くツインテールを翻し鮮やかでヒロイックな装甲を纏って戦う戦士たち。

 私はその者たちに大いに興味が湧いた。

 もしかしたらその者達の中には私の求める至高のツンデレ少女がいるかもしれないからだ。

 そんな想いに耽ている時だった。

 

(君の力が借りたい。君がいれば有象無象多くの同胞を救う事が出来る。オレたちが新しきアルティメギル……いや、アルティメギルをも越える組織を作るんだ)

 

 彼は言った。

 一緒にアルティメギルを超える組織を作ろうと。

 最初こそ私は断ろうとしたが、ふと思った。ここで協力すれば私の求めるツンデレと出会えるのではないかと。

 彼が言うにはツインテイルズ及び全ツインテール戦士の打破の為にある物と究極のツインテールが必要で、私にはテイルレッドとは別の究極のツインテールの奪取をしてほしいとのことだ。

 私は今までアルティメギルに頼らずに生きる為培ってきたコネクションを利用し、悪魔の名を冠するエレメリアンたちを集めては纏め上げアルティデビルを作り上げた。

 各々違う属性を持った一癖も二癖もある同胞たちを纏めるのは困難を極め、それに勤しむ余りいつの間にか私の目的はアルティメギルなきこの現状で不安に駆られる同胞の為にアルティメギルを超える組織を作り上げる事に変わっていった。

 そんな中だ。

 私はある少女と出会い当初の目的を思い出すと同時にある想いを抱くようになった。

 それは本来、エレメリアンが人に対して得る筈のない想いだった。

 

 

 

 

 ラブコメなどで主人公とヒロインとの馴れ初めが落とし物などを手に取ろうとした時に手が重なってしまったケースなんていうのはこの世にごまんと存在している。

 だけど、それはあくまでもフィクションの世界だ。

 そんな偶然そう簡単にある筈がないのだが、俺は遭遇してしまった。

 惜しむべくは手が重なった原因がテイルバイオレット()が主役となっている同人誌なのと、相手が男であるって事だろう。

 

「あんた、あの時の……」

 

「あの時? はて……覚えがないな」

 

 手が重なった男には見覚えがあった。

 ティアナと入れ替わっていた際のある時にぶつかってしまった銀髪でサングラスをかけた長身の男だ。

 男は覚えていないようだが、俺ははっきり覚えている。

 まぁ、そのせいで余計に変な空気になったまっているわけだが。

 

「……」

 

「……」

 

 時間が経過する度に段々とさっきまでの変な空気が、ピリピリとした空気に変わっていく。

 本屋という静かなこの空間の中で男と俺の視線がぶつかり合う。

 気まずさなどはもうない。

 この視線は同人誌(コイツ)は俺の物だと譲らない断固とした意志だ。

 

「覚えがないならいいけどさ。なぁ、あんた? 早くその手どいてくれねぇか? 男とボディタッチするキモイ趣味はねぇんだよ俺にはよ」

 

「フッ、奇遇だな。今、私も同じことを思っていたところだ。早くこの手をどかしてくれたまえ」

 

 俺も俺だが、相手の男も男だ。

 敵意を隠そうとしない物言いでお前がその手をどけろと言い張ってきやがった。

 因みに俺の手の上に男の手が乗っかっている構図だ。どう見ても俺が先なのは明白だぜ。

 

「悪ぃが最初に触れたのは俺だ。早い者勝ちって言葉知らねぇのか?」

 

「その言葉そっくり返そう。私の方が0.1秒ほど速く目で捉えていた」

 

 小学生かお前は!! と綺麗にツッコみたくなるしょうもない言い分を述べる男。

 だけどここでツッコんでしまうと奴のペースに乗せられるがオチだ。

 俺は至って冷静に言い返す。

 

「でも実際に手で触れたのは俺が一番だ。つまりよ、こいつは俺の物ってわけだ」

 

「そうは言うが君は横から私の手が触れようとしているのに横入りしたのだぞ。人間の法では横入りした者が早い者勝ちを主張するのは間違っていないか?」

 

「何だと? 俺が横入りしたって言いてぇのか? ああん?」

 

「おや? 聞こえなかったのかな? 無論だよ」

 

 冷房で涼しい同人誌コーナーの一角で、絶対にコイツだけには同人誌(コレ)を渡してなるものかと俺と男はお互いにめらめらと炎が燃え上がらせ、周囲の温度を急上昇させる。

 まぁ、本当言うと別に俺自身はこの本にちょっと興味があった程度で別に買いたい訳じゃねぇんだが、ここまでやり合った以上は引くに引けない。

 それに、この男。銀髪サングラスのこの男にだけは負けたくないっていう謎の対抗心が沸々と沸き上がって来るんだ。

 

(なんでかわからねぇが、コイツだけには絶対に渡さねぇ!!)

 

(何故だか知らんがこの者にだけは絶対に渡すものか!!)

 

 それから俺たち二人のいがみ合いは徐々にヒートアップしていく。

 幸いなのは互いに暴力的手段を取っていない事なのだが、周囲でその様子を見ていた客や定員からしたらいつ暴力沙汰にならないかハラハラドキドキしている所だろう。

 

「ささっとどけ。時間の無駄だ」

 

「ならばそっちこそ早くどきたまえ」

 

 小難しい言い分など当に忘れた俺と男はどけの一旦張りで勝負に出ていた。

 もうどっちが正しいかなんて関係ない。

 男と男、プライドをかけた戦いだ。

 

「どけっ!!」

 

「どきたまえっ!!」

 

 遂に声を張り上げるように至った俺たち二人。

 静かな本屋な事もあってか互いの声がフロア中に響き渡った。

 そんな声に待ったをかける人物がギャラリーの中から現れる。

 

「いい加減にしてください!! これ以上喧嘩するなら出禁にしますよ!!」

 

 エプロン姿で出てきたその人はどうやらこのフロアを統括している店員さんらしい。

 俺も男も流石にやり過ぎたと黙り込む。

 俺からすれば出禁になるのは色々と不味いし、万が一堀井の耳に入るような事があれば何されるかわからない。そうなってはプライドもクソもないしな。

 

「あなた方のような過激なテイルバイオレットファンがいるからテイルバイオレット本人まで乱暴者だと勘違いされんです!! いいですか!!」

 

「「はい……」」

 

 テイルバイオレットの人気は高い。がしかし、時々テレビでは戦い方が女の子にしては乱暴すぎると苦情が出る事もあるのを思い出した。

 その事まで気にしてファンの素行を正そうとする店員さんに向かっての拍手が鳴る。

 知らずではあるがテイルバイオレット本人に向かって説教を行うファンの構図なのは俺からすれば結構シュールだぜ。

 

「夏コミで再販するのが待てないのでしたら、もっと平和的な解決をしてください。そうですね……例えばクイズを出し合うのはどうでしょうか?」

 

「「クイズ……?」」

 

「はい。お二方とも相当テイルバイオレットが好きと見れます。ならテイルバイオレットに関するクイズを出し合い、より詳しかった方がその本を買う権利を得ることが出来るという事です」

 

 俺はこの男と違ってテイルバイオレットが好きな訳じゃねぇんだが、丁度いい。俺がテイルバイオレットのクイズで負ける筈が無いからな。

 俺は自信満々にその話乗ったと宣言する。

 後は男の方だが……

 

「何だそれならもう手に入れたも同じだな。いいだろう受けてたとう」

 

 バ~カ。どれだけ知っていようが、ご本人様に勝てる訳ねぇだろ。

 心の中で勝利宣言をブチかます俺は、ニヤけきったしたり顔のまま店員に連れられ、特別に決戦場として用意してくれるという事務室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 クイズバトルは攻撃側と防御側を交互に繰り返すタイプ。つまり、攻撃側が問題を出して防御側がそれを答えるって仕組みだ。

 先ずは小手調べとばかりにテイルバイオレットの必殺技や武器の名称を答える問題を互いに繰り出したがその程度じゃ俺も男も全く動じはしなかった。

 次の第二ターンではテイルバイオレットの好きな食べ物や嫌いな食べ物を答え合う問題を出したがやはりそんなレベルで倒れる俺たちじゃなかった。

 因みに何故、テイルバイオレット()の好物がバレているのかというと何時ぞやに行った新聞部のテイルバイオレットのインタビュー動画で話していたからだ。あの動画、今じゃ一億以上も再生されているらしくテイルバイオレットの個人情報の大半はファン以外にとっても周知の事実となっている。

 

「テイルバイオレットのスリーサイズを答えろ。ほら早くしな」

 

「フッ、簡単も簡単。初歩の初歩と言っておこう。答えは80、56、80だ」

 

「チっ……正解だ」

 

 勝負に出た第三ターン。

 俺はあのインタビュー動画でも明かさなかったより踏み込んだ情報を武器にクイズを繰り出したのだが、男はいとも簡単に正解しやがった。

 この情報はティアナに内緒で測った俺しか知らないレベルなのになんて奴だ。

 

「私がどれだけテイルバイオレットのこの目で見てきたと思っている。何百、何千回も見ていればスリーサイズを見抜くなど当然の事だ」

 

「キモッ、マジか……」

 

 男は胸を張って堂々と語っているが、発言の内容はとても気持ち悪く、思わずドン引きしてしまう。

 コイツ、もしかしたらかなりヤベェ奴なんじゃないかと不安に駆られてくる。

 

「テイルバイオレットのスリーサイズなら有志の手で計測されて今じゃ常識ですものね~」

 

「嘘だろ!?」

 

 テイルバイオレット超全集を手に参加してくれているさっきの店員さんがさらっと答えてやがった。

 クイズに出しておいてなんだがこれは由々しき事態だ。

 今の日本の情報社会で名前などの個人情報が流出する事ですら憚られるって言うのにスリーサイズまでバレているとなると流石にヤバい。日本は変態国家とよく外国人から褒め称えられるが、こればかりは褒められねぇよ。テイルバイオレットの正体が俺じゃなかったらもう表歩けねぇぞ。

 

「では次は私だ。テイルバイオレットの身長と体重を答えよ」

 

「身長は160。体重は48」

 

「少し簡単すぎたな。正解だ」

 

 身長も体重も公表していないのにさらりと問題に組み込んでくる辺りがもう末期だなと感じさせる。

 身長は兎も角、体重に関しては俺が男で良かったとしみじみ思うぜ全く。

 

「そうですね。それも今じゃ有志の手によって――」

 

「てめぇはもう黙ってろ。これ以上、人に絶望したくねぇんだ」

 

 今まで目を向けていたようで向けきれていなかった腫物を見せられているようで頭が痛くなる。

 まさかテイルバイオレットの超全集をズタズタにしたいとは思ってもみなかった。

 

「クッソ……。これ以上やっても埒が明かねぇし、俺の頭の方が先に参っちまうぜ」

 

 心の声が漏れる程疲弊した俺は、もうここからは手加減無しの速攻で片を付ける事にすると気合を入れ直す。

 次のターンからは俺しか知らねぇ問題を出してやるぜ。

 

「行くぞこの野郎!!」

 

「来い!! 少年よ!!」

 

 その後の問題はさっきまでの比較的簡単な問題とは打って変わってハイレベルな問題へと姿を変えた。例えばテイルバイオレットの今まで倒してきたエレメリアン全員の名前だったり、テイルバイオレットの必殺技で最も使用頻度が高かったのはどれかといったファンでも頭を悩ます問題は当然として、テイルバイオレットのツインテールについての問題といったほとんどテイルバイオレット関係ない問題といったルール違反すれすれな物が出るし、終いにはテイルバイオレットは処女か否かや、テイルバイオレットがアソコに毛は生えているかといった恥もへったくれもないアレな問題も飛び出す始末。

 審判だったはずの店員さんは、余りにハイレベルな俺たちの争いに審判の仕事を放棄してメモ帳片手に観戦に回っていた。

 

「てめぇ中々やるな……!!」

 

「フッ、君こそな……!!」

 

 50ターン目となったこの対決。

 俺も男も元々何のために戦っていたのかを忘れるくらいにはこの戦いに熱中していた。

 対等なレベルでの戦いほど面白い物はない。今まで好きな事を語ろうにもティアナは詳しすぎるし匠は知らなすぎるで対等に勝たれる相手はいなかった。

 何時までもこうやって馬鹿騒ぎをしていたいと思えるくらいには俺はこの一時を楽しんでいた。

 だが、物事に永遠など存在しない。

 終わりはやって来た。

 

「テイルバイオレットの新しき形態、赤い姿の名称を答えろ!!」

 

「ッ!? そ、それは……」

 

 言ってしまった後からハッと気づいたんだが、この問題は少しばかり卑怯な問題だなと思い後悔する。

 何故ならこの問題の答えであるブレイブチェインはまだ一般的にはお披露目していない形態だからだ。一応、噂程度で知っている奴は多いし、多分この男もその類だとは思うが、流石に名称まではわかりっこないんだ。

 

「わ、私の完敗だ……」

 

 敗北を悟り酷く項垂れる男を見るとなちょっとばかし後悔の念に駆られてしまうがしょうがない勝負は勝負、勝つ者いれば負ける者ありだ。

 だと言うのにどうもスッキリしない。

 もっとコイツと話してみたかったと思ってしまう俺がいるような気分だ。

 貴重な情報を教えてくれてありがとうございましたと感謝してくれる店員さんから賞品である同人誌を受け取ると、浮かない足取りそのままにレジへ向かい会計を済ます。

 そんな煮え切らない気持ちのまま本屋から出た時だった。

 後ろからさっきの男の声が聞こえて来た。

 

「少し話さないか? テイルバイオレットについて君の知っている事を教えて欲しい」

 

 

 

 

「へ~あんたそんなにテイルバイオレットの事が好きなのか」

 

「勿論だとも、私は彼女を深く愛してると言ってもいい……いや、テイルバイオレットの存在そのものが私の全てと言っても過言ではない。ま、君には劣るがね」

 

「よせよ恥ずかしい」

 

 今現在、午後一時を回った時間。

 俺はさっきの男と一緒に本屋に隣接している喫茶店で談笑にふけっていた。

 つい数分前の険悪な雰囲気は何処へやら、俺は男とすっかり意気投合してしまっていた。

 

「なぁそれで、そのブレイブチェインとやらについて詳しく教えてくれないか?」

 

「わかったわかった。落ち着けよ」

 

 男に急かされる中、俺はアイスコーヒーをグッと飲み干す。

 アラームクロックでおやっさんが出すものよりかは多少落ちるがいい味だ。

 俺はブレイブチェインについて一般人に教えてもいい範囲で知っている事をペラペラと喋っていく。

 

「ブレイブチェインはテイルバイオレットの強化形態だ。通常時とは違って二刀流でウインドセイバーを扱う事が可能になり、炎を身に纏うんだ」

 

「ほう……それでそれで」

 

「必殺技は……」

 

 それから暫く俺の話を男は食い入るように聞いてくれていた。

 何というかここまで熱心なファンがいたのかと嬉しい気持ちになる。

 最初こそはスリーサイズを目で見てわかったとかの気持ち悪い発言も多かったのでドン引きしていたが、それ以外は態度も礼儀正しくて物腰も柔らかい、何よりもテイルバイオレットに懸ける情熱は今までクラスで見た事ある奴らを遥かにしのいでおり好感をもてる。

 後、不思議な感覚ではあるがこの男とはもっと前から会っていたような気がするのもポイントだ。

 

「……てな訳でこれが俺が知っているブレイブチェインの全て」

 

「ありがとう少年。君のおかげでまた一つ彼女を知ることが出来た」

 

「いいって事よ。なぁあんた? 俺からも一ついいか?」

 

「何だ? 君の頼みなら何でも聞こう」

 

「そうかい。なら聞くけどよ。どうしてそんなにテイルバイオレットが好きなんだ? どういう所が好きなんだ?」

 

 この質問にこれといった他意はない。文字通りの意味だ。

 俺はテイルバイオレット本人であるが故にテイルバイオレット自体にはこれといった魅力を感じないからどういった部分が好きなのかを知りたかった。

 多少、褒めたたえて欲しかったって言うのは内緒だ。

 

「そうだな。やはり彼女の持つツンデレの部分だな」

 

「ツンデレ?」

 

「ああ。今はまだツンしか見せてはくれていないが、私にはわかる。彼女は私の求める至高のツンデレだ。いつの日か彼女のデレをこの目でみるのが私の夢なのだよ」

 

 ツンデレ……。

 そう言われても出てくるのは憎き白いアイツことバアルギルディの面しか出てこない。アイツともそろそろ決着をつけないといけねぇな。

 てかそれにしても俺ってツンデレに見えるのか?

 

「なぁ、頼みがあんだけどよ。俺にツンデレってのが何か教えてくれねぇか? 俺さ、あんましツンデレってのがよくわかってなくてよ」

 

 ツンデレってのをよく知る事が出来ればバアルギルディとの戦いでも優位に立つことが出来るかもしれない。そう思っての頼みだ。

 勿論、今の俺にはブレイブチェインがあるし、負ける筈なんてないと思ってはいるが、それでも不安要素は少しでも排除しておきたい。

 敵を知り己をしれば百戦危うからずって言うだろ。それと同じだ。

 

「いいだろう。我がツンデレの全てを君に教えよう」

 

 男は今日一番の満面の笑みのまま首を縦に振ってくれた。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 お昼のピークを過ぎた事で一息つけるようになったアラームクロック内にて私が吐いたのはホッとしたため息ではなく、憂鬱な気分溢れるため息だった。

 理由なんてわかっている。

 昨日の夜、水嶋さんとの電話の内容が原因でこうなってしまったのくらい。

 

「和輝、遅いなぁ……」

 

 自分から話しかけられないようにしていた癖にどの口が言っているんだろうとはふと思う。

 でも和輝が私の事をどう思ってくれているのかが気になると同時に怖さが溢れてきて喋りかけたり喋り返したりするが出来なかった。

 入れ替わっている時だってずっと傍にいたのに、結局は何も変わらないいつもの和輝のままだったし、もしこの気持ちがただの片想いで終わったらその時はどうすればいいんだろう。誰かに恋をすること自体が始めての私は失恋してしまう恐怖に苛まれていた。

 

「ごめんな、俺さ、乙女心わかんねぇからあんまし相談に乗れなくて」

 

 流れる汗をタオルで拭いながら正樹さんが話しかけてくる。

 正樹さんは私が落ち込んでいるのを見て何も出来ないのが悔しそうだった。

 

「ううん、私こそ何も言わなかったし……ごめんなさい」

 

「あやまらなくてもいいんだよ。にしてもこういう時、本当の親ならなんて言ってくれるんだろうな」

 

 厨房へ去る際、正樹さんはそう言った。

 叶わないのはわかっているけど、今猛烈にお母さんとあって話をしたい。

 お母さんはお父さんと恋をして結婚したから私が生まれたけど、その恋路は順風満帆と言える物だったのか? それとも私のような悩みを抱えていたのか?

 聞いてみたいと願う私の想いは淡く消えていく。

 

「お母さん……。……!?」

 

 ちょっとしたホームシックにかかりかけたその瞬間、私の意識を現実へと引き戻すブザー音がエプロンのポケットから聞こえてくる。

 この反応はエレメリアンの出現ね。

 悩みは一先ず置いておくとして早く和輝と合流しなきゃ。

 私は正樹さんに少し出かけてくると言った後に外へ飛び出しスマホで和輝と華先生に連絡を入れた。

 

 

 

 

「へ~ツンデレってのも結構奥が深ぇんだな」

 

「そうだとも、偏にツンデレと言っても色々とあるのだよ。私はそのどれもを愛している」

 

 ツンデレに関する特別授業を始めてもう1時間も経っていたが、それを気づかせないくらいには濃密且つ引き込まれるものだった。

 ツンデレの起源から現在に至るまでのツンデレの扱い。特に引き込まれたのはツインテールとの相性の良さについてだった。

 ツンデレに関して色々と聞いていたがここまで奥が深い物だとは思ってもみなかったぜと素直に驚くしかない。

 

「君と話しているとつい時間を忘れてしまう。こんな感覚初めてだよ」

 

「俺もこんなに意気投合したのは久しぶりだよ」

 

 男の年齢は恐らく成人を超えているであろう筈なのにここまで馬があうとは。

 おかわりのアイスコーヒーを飲みながら話の続きを聞こうとした時、スマホが着信音を鳴らした。

 

『和輝!! エレメリアンが出たわよ!!』

 

「何だって!? すぐ行く!! 場所は!!」

 

 ティアナからの連絡はエレメリアンが出現したとの事だった。

 こうなっては楽しく談笑を続けるわけにもいかないので男には謝りを入れて早く向かわなければ。

 

「ごめん。ちょっと野暮用が出来ちまったから俺いくわ」

 

「そうか。なら早く行くがいい少年。私も丁度用事が出来た所だ」

 

 なら丁度いいな。

 そう感じた俺は事が事なので急いで駆け出そうとする。

 席を立って喫茶店の出口に向かう最中、俺はある事を思い出した。

 

「そういやよ名前言ってなかったな。俺は涼原和輝だ。後、さっきの本お前にやるよ」

 

 これを見越して買っていた本と俺のお代は席に置いてきた。

 面と向かって渡すよりこっちの方がちょっとカッコイイ気がしたからな。

 

「いいのか!?」

 

「別に構わねぇよ。好きに使いな。じゃあな!!」

 

 そう言い残すと俺はティアナが指定した場所までバイクを飛ばすのであった。

 あ、そういや男の名前聞いてなかったな……。

 

 

 

 

 

 

 

「不思議だな。あの少年とは初めて会った気がしない」

 

 そういい残した男は立ち上がりお会計を済ませ外に出るとその姿を異形の怪物、バアルギルディ本来の姿に変化させる。

 

「さぁ待っていろテイルバイオレット。今度こそ君をデレさせその属性力を貰い受ける時だ」

 

 バアルギルディはその大きな白い翼を羽ばたかせ空へ舞い上がった。




互いの正体を知らずに交流する展開、結構好きだったりします。
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