俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
本当、不思議な男だったな。
ティアナにエレメリアン出現の連絡を貰いビル街をバイクで駆ける俺の脳裏には、先程本屋で出会い親しくなった男の顔が思い浮かんでいた。
最初こそ何とも言えない嫌悪感こそあったものの、いつの間にかかなり打ち解けてしまったあの男。
つくづく名前を聞き忘れてしまったのが悔やまれる。
あの男とはもっと仲良くなれる。そんな気がしてならない。
一応念の為に言うが別に腐った女共が興奮するような変な感情をもったわけではない。
匠に並ぶ友人としての関係を築けるのではと思っただけだ。
あの男とはもっと色んな事について語り合う事が出来るだろう。
細かい話題を挙げるならそう、ツインテールやツンデレといった女の子の属性についてだ。あんな娘のあの部分のあの辺りが好きだだとか、あの娘のあの部分がエロいだとかの話題だ。
前者の話題は兎も角、後者の話題はティアナのような女の子相手では話辛いが、男同士ともなれば話しやすく馬鹿笑いできる。
口には出さないが俺はずっと昔から自分自身の好きについてをより濃く語り合える同性の相手を求めている。
匠やおやっさんには感謝しているし今も昔も大事な友人として認知しているが、やっぱり人間である以上、より強く求めてしまうもんなんだよ。
そんな事を考えていると前方に青信号を待つティアナが見えた。
俺はバイクを歩道側に寄せてティアナを乗せるべく停車。
「ねぇ、何かいいことでもあったの?」
出会うなり言われた言葉はそれだった。
別に顔がニヤケていたとかじゃ断じてない。雰囲気から察したのだろう。でなければ恥ずかしいったらありゃしねぇ。
「別に」
「そう。じゃあ行きましょ。相手はこの先のトンネルを抜けたバス停近くからよ」
「おう」
ターゲットのエレメリアンがいる場所まで後もう少し。
どんな変態エレメリアンだろうがささっとブッ倒してやるの意気込みでアクセルを入れる。そんな時、後ろに跨るティアナから声がかけられた。
「ねぇ、和輝……」
「あん? なんだよ」
「……。ううん、何でもない」
「そうかよ」
ティアナは俺に何かを伝えようとしている。
そんな気がした。
◇
ビル建ち並ぶ繁華街、その中でも一際目立つ大きな観覧車が目印となっているここら一帯は今時の若者たちにとって絶好のデートスポットである。
映画館にゲームセンター、アイスクリーム専門店にクレープのワゴンとそれら全てに桃色の雰囲気を纏わせる若者たちのカップルが照り付ける夏の暑さに負けずに溢れ返っていた。
「はい、あーん」
「あーん」
クレープ屋のワゴンから少し離れた街路樹並ぶバス乗り場のベンチにて勝負服と思われる自慢のワンピースを着た10代後半の女性が彼氏と思われる男性の口に先程購入したバナナ味のクレープを運ぶ。
何と微笑ましく、それでいて見ているこっちの方が恥ずかしく感じてしまう光景であろうか。今時、屋外でここまでオープンに仲の良さを見せつけるバカップルもそうはいないだろう。
「うっま~!!」
「もう、口にいっぱいついてるよ。ほら」
女性がクリームでまみれた男性の口周りを指で拭うこの光景。
多くの通行人及び他カップルが目を背けてしまいそうな中、その様子を興奮しながら見つめる一つの影があった。
「ぐふふふ、いいぞ~。そのまま勢いあまってキスだ。キス!!」
頭に生えた耳と言い顔つきと言いその上半身は猫を想起させ、下半身は凛々しさ際立つ馬の足が二本。
上半身は猫がモデルなのにちっとも可愛らしさを感じないのはエレメリアンであるが故か、それとも本当のモデルは猫ではなく悪魔であるが故かは定かではない。
その他に特徴というべき特徴は体毛が真っ黒で染まっていて黒猫特有の不吉さを拭いきれていないって所だろうか。
「ね、ねぇ……。あれってもしかして……!!」
「か、怪物だぁっ!!」
流石のバカップルも明らかに異質な
慌てて逃げ出そうとする二人を見たことで不味いと感じたベレトギルディは慌てて弁明に動く。
「まっ、待て!! 私は怪しい者じゃない。ただ、君たちのイチャイチャっぷりを大人しく見ていただけだ!!」
怪しい者ではないだなんてどの口が言っているんだと男女は思いながら全速力で逃げ去ってしまった。
ベレトギルディは猫と馬が合わさった奇怪なエレメリアンであるために至極当然の反応である。
ベレトギルディはしょんぼりとした仕草で俯いた。
「何故だ……。何故逃げるのだ……。私は何もしていないのだぞ……。まさかあれか、急に恥ずかしくなってしまったとでも言うのか!?」
何かしたから逃げたわけじゃないし、ましてや恥ずかしくなったわけでもない。
その事に気づかないベレトギルディは涙をこぼす。
「折角、忌まわしきグレモリーギルディが消え意気揚々やってきたと言うのに何故こうなんだ。ああ……神様仏様、私奴の姿を誰にも気づかれないような植物にでも変えてください……」
「そうかよ。だったらとっとと帰んな!!」
「何者!? って、うぎゃあ!!」
突如聞こえて来た声に振り向くとそこには青紫のツインテールをたなびかせる戦士、テイルバイオレットの姿がそこにはあった。
テイルバイオレットは反応しきれていないベレトギルディの顔を文字通り一蹴したのだ。
「何故、テイルバイオレットがここに……!!」
「私もいるわよ!!」
「今度は誰……って、うぼぁっ!!」
泣き面に蜂とばかりに今度はテイルブルームの振るうグランアローのクリアグリーンの刃がベレトギルディを逆袈裟に斬り裂き、ベレトギルディは痛みでゴロゴロと転がる。
不意打ちから始まったとは言え、もう既に勝負は見えたようなものである。
「何だよ、随分と呆気ねぇな」
「油断しちゃ駄目よ。フィジカルが弱い分どんな特殊能力を持っているかわからないんだから」
余りのあっけなさに拍子抜けするテイルバイオレットに忠告を入れるテイルブルーム。それを受けたテイルバイオレットは確かになと気合を入れ直すべく両頬を叩く。
そうこうしているうちにベレトギルディが起き上がる。
どんな特殊能力で攻撃してくるのかを身構える二人に待っていたのは予想の斜め上を行く言葉だった。
「貴様ら!! 二人かがりで挑むだなんて。恋も勝負も何事も一対一だろう!!」
ハーレム許さぬベレトギルディにとって一対一ではないなど言語道断。
一方、テイルバイオレットは何を言ってくるかと身構えていたがまさか二人がかりで挑んだ事に対する抗議とはなと以前のボティスギルティとのギャップ差にズッコケそうになっていた。
「あのなぁ。俺らはな……」
いくら卑怯でも勝負は勝負。それも属性力をかけた争いだ。
卑怯もラッキョウもあるものか。それに二人がかりで挑んで駄目なら古今東西のヒーロー、ヒロインたちはどうなるんだ。
ツッコミを入れようとするテイルバイオレットだったが、テイルブルームが制止する。
「確かにそうですね。一人の敵を二人がかりで襲い掛かるのは悪しき者のすることでした。すいませんでした」
「って先生!? 何やってんだよ!!」
『相手はエレメリアンですよ!?』
そこそこに情け容赦のないテイルバイオレットと違ってテイルブルームは真面目な性格であるが故に非を直ぐに認めては謝ってしまう。
そんな奇天烈な行動にテイルバイオレット及び物陰から見つめるティアナの二人は頭を痛ませる。
「だって……実際、ちょっと卑怯だし……」
「ほう、恋も知らぬ癖して意外と話がわかる奴だなテイルブルーム。さては貴様も3Pなんぞ認めない派か?」
「3Pが何なのかは知らないけど、恋を知らないは余計よ!! 私だって恋の一つや二つ!!」
以前、グレモリーギルディとの一件以来露呈した恋愛に疎い事、それを指摘され馬鹿にされることに未だ根に持つテイルブルームからすれば今のベレトギルディの言葉は聞き捨てならないものであった。
呆れるテイルバイオレット及びティアナの二人。
「わかったわ!! ならあなたは私が相手してあげる!! 手を出しちゃ駄目よバイオレット!!」
「へいへい、どーぞどーぞご勝手に」
「そうか。なら
「ッ!?」
戦闘開始となりかけていた中、突如として上空から聞こえてくる乱入者の声。
真っ先に反応したテイルバイオレットの前に白い翼を翻す
「てめぇは……バアルギルディ!!」
「フッ、今日こそ君をデレさせて見せよう。いいなベレトギルディ!! 手を出すなよ!!」
バアルギルディは既に臨戦態勢に入っており、周囲の空気がピリピリと張り詰める。
そのオーラに一瞬持っていかれそうになるテイルバイオレットだが、今度こそ負けるまいと気を引き締めて踏ん張る。
「承知している。それにもとより私は君の恋路を応援する身だ。存分にアタックし、私に君たちのイチャラブを見せてくれ。ただ、私のラブセンサーはバイオレットに意中の相手がいると出ている。気をつけろ」
「その事についてもこちらこそ承知しているつもりだ。その意中の相手を私に変えてみせよう」
「くらぁー!! 勝手に話進めんなボケェ!! だーれがこんな奴とイチャイチャするかっての!!」
ハーレムはダメで寝取りはいいのか。
気色の悪い妄想を展開された事に怒りを露わにするテイルバイオレット。
ただこの時、ベレトギルディの最期に放った一言がティアナの心を揺さぶらせていた。
『和輝に意中の人……。』
「相変わらずのツンだな。ここからデレが待っていると思うと興奮してしまうよ」
「うっせぇ!! 今日こそてめぇをブッ倒してやんよ!!」
「バイオレット、そっちは任せるわよ」
「おうよ、先生の方こそ気つけろよな」
かくしてテイルバイオレットVSバアルギルディ、テイルブルームVSベレトギルディの幕が上がるのであった。
◇
先程までの場所とは打って変わって人の気配がまるでしない寂れた公園にやってきた俺はバアルギルディと向かい合い様子を伺っていた。
いくらブレイブチェインをものにしたからといって油断は禁物だ。
だと言うのにさっきからティアナの様子がおかしい。
小声でブツブツと何か言っている様子であり、バアルギルディに対して意識がまるでいっていない。
確かに戦うのは俺の役目ではあるが、ブツブツと独り言を言い続けるのはやめて欲しいもんだぜ全く。
「ティアナ、集中しろ。奴に勝つにはブレイブチェインが必須だしな」
『そ、そうね。ごめん和輝』
一先ずティアナは本調子に戻ってくれたようなので俺は心行くままにバアルギルディと向かい合う。
「ようやくこの日がやってきたのだな……長いようで短かったようにも感じられる。だが確かにやってきたのだ」
「ほざけ。今日でてめぇの面を拝むのも最後だぜ覚悟しろ」
ティアナの事はほっておくと決めた俺はフォースリヴォンに手を当ててウインドセイバーを取り出すと同時に地面を思いっきり蹴って一気に距離を詰める。
そして、一斬また一斬と畳みかけるようにウインドセイバーを振るうが、バアルギルディは涼しい顔でそれを回避する。
「流石だな、君のツンも以前よりも何倍もグレードアップしている」
「そりゃあ……どうも!!」
「何!? ウインドセイバーを!?」
「うらぁッ!!」
注意がウインドセイバーに向いているのを察した俺はウインドセイバーを宙に投げ捨て奴の意識がそっちに流れたのを確認。
即座にショルダータックルを敢行しバアルギルディ相手にファーストアタックをもぎ取った。
「くッ……!!」
「そしてこいつもッ!!」
投げておいたウインドセイバーを華麗にキャッチすることに成功した俺はそのままの勢いで斬りかかると、バアルギルディの体から火花が飛び散った。
「やるな……!! だがまだまだ足らんぞ!!」
バアルギルディもただやられているだけではない。
反撃の手刀を振り下ろしてくる。
俺はウインドセイバーを横にすることで受け止めるが、ボティスギルティ以上の凄まじい力のかかり具合に足がコンクリートタイルの地面にめり込み大きく抉る。
「こんにゃろがぁ……!!」
「フン、お返しだ!!」
渾身の力を振り絞る事で何とかバアルギルディの手刀を弾き返す事には成功したが、バアルギルディは反動を利用する形で俺の腹部目掛けて回し蹴りを繰り出し、俺は勢いよくブッ飛ばされ飛んだ先にあったベンチを粉々に破壊した。
「流石だよテイルバイオレット。前よりも一段と強くなった上、ツインテールの扱いも上達したようだな」
ツインテールを汚さないように飛び散る木くずはサッと振り払う様子を見てバアルギルディは一言言ってきやがったが良い気が全くしない。
そんな事よりも勝負の仕切り直しだと起き上がる俺だったがバアルギルディは待てと言わんばかりに手を前に突きだした。
「少しいいかな? 実は君に渡したい物が幾つかあるのだが……」
「はぁ? 何言ってんだお前」
「君が飛び掛かってきたから渡すタイミングを見失っていたのだよ。あ、勿論だがその事で怒っている訳ではないぞ」
あ、そうですか。
呆然とする俺の前にバアルギルディは何処からか取り出した紙袋と一通の手紙をそっと置いてきた。
俺は余りの空気の変わりようにズッコケながらも手紙と袋の中身の方に興味がいってしまい思わず中身を確認してしまった。
「何々? 愛しのテイルバイオレットへ……ってこれ……!!」
『ラブレターじゃない!!』
ティアナが俺の言葉を代弁してくれた。
因みに内容はというとドテンプレの面白みがない物だったと言っておく。
「その……もう一つの袋には私の想いが詰まった君へのプレゼントが入っている。受け取ってくれ……」
プレゼントと言われてワクワクしない奴はいないだろう。俺は少しばかりワクワクしながら紙袋の中身を確認する。すると中からは同人誌を含む大量の本が出てきた。しかもどれもが
予想外過ぎる内容に眩暈と吐き気がしてきたぜ。
「どうだ? これでわかってくれたか? 私の君への情熱が」
「より気持ち悪く感じるだけじゃボケェ!!」
もしこれが俺の好感度を下げようとしているなら作戦は大いに大成功といった所だろう。
所々にここ好きとマーキングされている本に描かれた俺を見て誰が喜ぶんだよおいと小一時間説教してやりたい気分に駆られて声を張り上げるが、バアルギルディは渡した優越感に浸っているようでありまるで効果ない。
久しぶりにエレメリアン特有の変態ぶりに気が滅入った時だった。
俺は大量にある本の中にあったまだ未読であると思われる一冊の同人誌に目がいった。
「これって……」
「おお、その本に目が留まるとはお目が高い。その本は先程、親しくなった少年から特別に譲っていただいた物だ。感謝するのだなあの時の少年に」
「何……だと!?」
衝撃のカミングアウトに驚きを隠せない俺の手からは大量の本が地面に落ちていく。
もしかしてさっき俺が親しくなった男の正体って……まさか……。
「さて、そろそろ再開しようか。今度こそ私に見せてくれよ、新しく手に入れたブレイブチェインの力とやらを」
戦闘再開と言わんばかりに空へ舞い上がり手をかざすバアルギルディ。
手のひらには強大なエネルギーが集まっているのがわかる。
だが、俺にはそんな事よりも赤い力の正式名称であるブレイブチェインというワードを知っている事の方が重大だった。
「ッ!? 何故てめぇがその名を知っていやがる!!」
ブレイブチェインはまだ人前では披露していないからどのメディアでもその存在は把握できていないし、名称に至ってはティアナが勝手に名付けた物なので知っている奴はごくわずかに限られる。それこそ俺やティアナ、華先生に悠香さん青葉さん匠とそして残りはさっき親しくなった……ってまさか!?
点と点が繋がり線になっていく。
渡された中にあった同人誌といい発言といい、それら全てを照らし合わせると十中八九間違いない。
さっき本屋で出会った男の正体はそう、バアルギルディだ。
「ハハハ、これもそう。さっき出会った少年が教えてくれたのだよ。君は全く、熱心なファンに囲まれているな流石だよ」
言われてみれば声がまるで同じじゃねぇかよ。
霧が晴れるかの如く次々と明らかになっていく真実に動揺を隠せない。
『和輝……? どうしたのよ大丈夫?』
「お、おう。俺は大丈夫だ。それよかよ、ブレイブチェインで一気に行くぞ!!」
うだうだ考えていても仕方ない。
奴はエレメリアンでアルティデビルの親玉、俺の敵なんだと心に言い聞かせる。
そんな時、ふとある人物の言葉が俺の頭の中に蘇って来る。
(そういえば言ってなかったな。俺様はエレメリアンでもあるんだぜ)
もしかしたらあの野郎とも……
だがその淡い期待は、ティアナの言葉にかき消される。
『テイルアーマー、アーマーオン!!』
事前に決めていたであろう謎の掛け声。ちなみにテイルアーマーってのはあの赤い追加装甲のことを指す。
俺の周りに解き放たれた赤い光が瞬時に集まり確かな形へと固まっていく。そして赤いそれらは俺の腕や胸と体の各所に装着されていき俺の体を赤く染める。仕上げとばかりに髪の色も赤いグラデーションがかかった時、俺の変身は完了した。
燃える勇気の赤、ブレイブチェインだ。
「待ちわびたぞテイルバイオレット!!」
「……ッ!! クソッたれがぁッ!!」
赤と紫、二つの力がウインドセイバーに宿り飛び掛かるバアルギルディに振り下ろされる。
だがしかし、俺の心は強く大きく揺れていた。
◇
赤い炎が紫の風と共に吹き荒れ燃え上がる。
この力こそがテイルバイオレットの新しき力。二刀流となり手数が大幅に増したウインドセイバーの軌跡がバアルギルディに襲い掛かる。
ブレイブチェインになってからもう何度目の激突かわからぬ程に互いの力をぶつかり合う様は正に死闘。これこそバアルギルディが求めていた全力の戦いであろう。
しかし、バアルギルディのは表情は晴れやかとは言い難い物であった。
(何故だ。私はこの力と戦う事を求めていたはず。なのに何故だ。何故こうも心が躍らない。何が一体不満だと言うのだ!!)
曇った表情のままバアルギルディは手にしている大剣を振り下ろし、テイルバイオレットはウインドセイバーをクロスさせて受け止める。
その瞬間、バアルギルディは待っていたとばかりに力を少し入れ直す。
するとテイルバイオレットはその力を全く受け止める事が出来ずに攻撃をもろに受けてしまった。
「くッ……!!」
「……違う」
バアルギルディは押している状況にも関わらず顔に悔しさを滲ませる。
さっきの鍔迫り合い、絵面だけ見ればバアルギルディが競り勝ったようにも見えるが、バアルギルディからすれば今のは少し強めに力を入れただけに過ぎず、まるで手ごたえがなかった。これがもしバアルギルディの力がテイルバイオレットを圧倒的に上回っているのであれば仕方ないのだが、今のテイルバイオレットは進化した形態ブレイブチェインだ。こうなる筈が無い。
その事をわかっているが故にバアルギルディは今のテイルバイオレットの不甲斐なさに悔しさと悲しさを覚えているのだ。
「そんな物か!! テイルバイオレット!! 君のツンはそんな物ではないはずだぞ!!」
「うっせぇ……なぁッ!!」
怒りをぶつけるかの如く振るうバアルギルディの怒涛の攻撃をテイルバイオレットは防戦一方といった具合でウインドセイバーを振るい捌いていく。
だが、加速するバアルギルディの攻めをいくらブレイブチェインであれど捌ききる事など出来やしない。
バアルギルディの蹴りがテイルバイオレットの鳩尾に炸裂し吹き飛ばされる。
吹き飛んだテイルバイオレットはウインドセイバーを杖代わりにして立ち上がった。
「はぁはぁ……」
『和輝、あなたこそどうしたのよ!? 何かおかしいわよ!?』
あまりにもあんまりな戦いを展開するテイルバイオレットに向かってティアナの心配する声がテイルブレスを通じて伝えられる。
その声はバアルギルディには決して聞こえぬ声ではあるが、バアルギルディも同じことを思っていた。
双方に同じ心配をされるテイルバイオレットは怒りの声を上げる。
「うっせぇよ。どいつもこいつも俺が真面目にやってないだぁ? うっせぇんだよ!! こちとらなぁ!!」
テイルバイオレット自身も自分が全力で戦えていない事などわかっていた。
その理由がバアルギルディと変身前に交流をしてしまっていたからだという事にも。
「でぃあああ!!」
「ぬぅぅッ!!」
運命のいたずらに怒りを覚えながらテイルバイオレットはバアルギルディに斬りかかる。
腐ってもブレイブチェインであることには変わりない為、バアルギルディも全力で防御に入るしかない。しかし、やはりというかその力は想像をも遥かに下回る。この程度ではボティスギルティやグラシャラボラスギルディといった強敵を撃破するに至らないだろう。
「こんな程度では!!」
バアルギルディは一瞬の鍔迫り合いの後弾き返した。
心なしかブレイブチェインを維持する為の赤い装甲がぼやけたような気もする。
バアルギルディは体勢の崩れたテイルバイオレットに対してカウンター気味に拳を見舞った。
「うわぁぁぁッ!!」
やはり見間違いなどではなかった。
殴り飛ばされ大量の火花散らしながら空中に舞うテイルバイオレットの体を覆う赤い装甲はその役目を終えるかのように霧散し、地面につく頃には元の青紫一色の姿へと回帰していた。
この状況、誰の目から見てもバアルギルディの勝ちである。
だがやはり、バアルギルディの顔は浮かない物で変わらない。
「何故だ。一体何が君を縛り付ける!! 私は何時になれば君と全力で戦い、そして君のデレを見る事が出来るのだ!! 答えろテイルバイオレット!!」
怒りの余り自らの気持ちをぶつけるバアルギルディだが、テイルバイオレットは変身を維持する事で必死であり答える余裕などない。
そんな様子に失望したバアルギルディはいつも通り飛び去るのではなく属性力を奪う為のあの金属の輪を召喚した。それほどにバアルギルディの失望は計り知れない物であった。
「もういい。悲しいが君の属性力を頂くとしよう。さらばだテイルバイオレット」
ゆっくり、またゆっくりと倒れるテイルバイオレットに向かって近づいていくバアルギルディ。
頼りのテイルブルームが助けに来る様子は一向に見えない。このままではテイルバイオレットは二度とツインテールを結ぶことが出来なくなり戦う事が出来なくなるだろう。
「待ちなさい!! バアルギルディ!! 和輝は……和輝のツインテールはやらせないんだから!!」
今まさにテイルバイオレットの属性力が奪われそうになる瞬間、今までずっと隠れていたティアナは物陰から出るや否や待ったを掛けた。
それに気づいたテイルバイオレットは早く逃げろとか細い声を出す。
当然だ。ティアナはこの世界で誰よりも強い属性力を持ちながら戦う事が出来ない。
言ってしまえばティアナの行動は何も好転しない所か寧ろより事態が悪化する行動だ。だが、ティアナはテイルバイオレットこと和輝が属性力を奪われそうになる中、黙って見ているだなんて出来る筈がなかった。
「何……!?」
バアルギルディに気づかれティアナが狙われるのは時間の問題だと思われたが、バアルギルディはティアナの姿を見るなり言葉を失っていた。
「テイルバイオレットが二人……だと?」
和輝及びティアナは知らぬ話だが、バアルギルディはテイルバイオレットの正体を和輝ではなくティアナだと勘違いをしていた。
それ故にティアナとテイルバイオレットが二人同時に存在している今の状態が理解できない。
何度も何度もティアナと倒れるテイルバイオレットの二人へ視線を交互させる。
「妹か何かだと言うのか!? いや、違う。あの少女は紛れもなく私が撮影したテイルバイオレットの変身者だ。ならこのテイルバイオレットは? このテイルバイオレットも紛れもない本物だ」
そんな困惑するバアルギルディにさらに驚愕の真実が襲い掛かる。
ついに力尽き、テイルバイオレットから和輝へと元の姿へ戻る瞬間を見てしまった。
「ななな、なんだと!? テイルバイオレットがあ、あの時の少年!?」
これは何だ。
夢か? それとも新手のドッキリか? 楽しみにしていたゲームが鬱ゲーだった時以上にたちが悪い。
バアルギルディは酷く混乱した。
愛しのテイルバイオレットが男であるなどそんな事有り得ない。ましてやあの時の少年などとは。
「嘘だ……!! 嘘だ……!! そんな……そんな筈は……!!」
うわ言のようにそう繰り返すバアルギルディは白い翼を大急ぎで広げると現実に目を背けるが如く逃げるように飛び去ってしまった。
「なるほど。見に来てみれば中々に面白い状況になっているじゃあないか」
観覧車の頂上にて和輝たちの様子を観戦していた黒ずくめのエレメリアン、ベリアルギルディは面白そうに表情を歪ませる。
「あの様子じゃあもしかしたらもうバアルギルディは用済みかもしれんな」
とびきり邪悪な笑顔を浮かべるベリアルギルディはバアルギルディの後を追うかのようにその場を飛び去っていった。
正体バレの展開っていいですよね。
原作でのティラノさんへのバレ方はクッソ笑った記憶。