俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「ッ……!? ここは……?」
目覚めた俺が最初に目にしたのは菫の花を想わせる薄紫色一色に染められた天井及び壁紙。
何があったのか覚えていないが、どうやら俺はベットに寝かされていたようなので上半身を起こして周囲を確認。家具らしき物は本棚くらいだし、どんな本が置いてあるのかはここからでは余り見えないが、壁紙の一部にアクセントとして菫の花が描かれている所を見るにどうやらここは女の子向けの部屋なのだろう多分。
そのまま辺りをより調べようと全身を起こした時だった。
髪が勢いで揺れる感覚と服とは違う何か別の物に包まれている肌の感覚、そして男の時では有り得ない別の感覚に俺は気が付いた。
これはもしかしなくてももしかするんじゃ……
「やっぱり。どうしてテイルバイオレットになってんだ……? ッ……!?」
そんな疑問を口にした時、急な頭痛が俺を襲う。
そして俺は何故、ティアナもいない中でテイルバイオレットになっているのかと何故この部屋で木を失っていたのかを思い出した。
「そうだ……!! 俺はバアルギルディに負けて……それで……!!」
頭の中で記憶を整理していく。
確かティアナとひと悶着あった後、俺はバアルギルディに襲われた。
その時の俺はバアルギルディが襲ってきた理由をテイルバイオレットの正体が俺である事の当てつけと推理したが実際はそうじゃなく、バアルギルディの目的は俺を
そして現在、俺はまんまとバアルギルディに連れ去らわれここに閉じ込められたって訳か。
「クッソ……!! なんて様だ……!!」
連れ去っている時、確かバアルギルディの野郎は俺の事をお姫様抱っこしていやがった筈。
負けた事もあるにはあるがそれ以上に恥ずかしさとみっともなさに怒りがグツグツとマグマのようにこみ上がって来る。俺は怒りそのままに壁を強く叩いてみるも壁はビクともしなかった。
いくらこのテイルギアが偽物だからって随分と硬い壁だな。もしかしてここってアルティデビルの基地だったりするのか? だとしたら絶望的過ぎる。
その後、落ち着きを取り戻した俺は念のため、部屋の唯一の出入り口の扉が開いているかどうかを確認してみるも、やはりというか鍵がかかっている。
鍵といいこの部屋の頑強さといい力づくでこの部屋から脱走は出来そうにない。
ならば何かないのかとこの部屋をよりくまなく調べて見るべく立ち上がり探索開始。
と言ってもあるのはよくわからない本が詰められた本棚くらいだ。
「何々……? って俺の本しかねぇじゃねぇかッ!!」
どれを見てもテイルバイオレットに関する本ばかり。
しかもその殆どが18禁の同人誌であり、気が滅入りそうになる。
「もしかして……バアルギルディが俺を連れて来た理由って……」
ヤバい。18禁物の同人誌をみた影響もあってかバアルギルディが俺に対してアレな事をする為に連れて来たのではないかと思い込んでは急に寒気がしてきた。
俺をわざわざ女の姿に変えた上で連れて来た理由にも納得がいくのが余計に俺を震え上がらせる。
その直後だった。
部屋のドアがガチャリと開き、外からバアルギルディが入ってきた。
「目覚めたようだが、具合の方はどうなっているんだい?」
「ち、近づくんじゃねぇ!! この変態野郎!!」
本を投げ捨てた俺は処女を守るべく本能のままに股間部を手で隠して必死に部屋の端まで退避する。にしてもまるでこれじゃ本当に乱暴されるエロ同人誌のヒロインだなおい。
「何を言っているんだい? テイルバイオレット」
「俺に乱暴するつもりだろ!! その本みたいに!!」
「本?」
バアルギルディは俺が投げつけた同人誌を拾い上げると手をポンと叩いて理解する。
曰くどうやらここは次元と次元の狭間に浮かぶアルティデビルの基地であり、この部屋は基地内で急遽用意した俺用の特別室。そしてここにある本棚は俺が一人で暇にならないように自分の持っているお気に入りのテイルバイオレット本ばかりで構成されているらしく、ただ単純に置く本のチェックが甘かったらしい。
まぁ、それにしてはエロ本率高かったけどな。
「乱暴なんて決してしない事を誓おう。何故なら君は私の花嫁となるのだからな」
「そうか、それなら良かった……って今なんつった?」
聞き間違いだよな? 今確かバアルギルディは花嫁がどうとかほざいた気がするんだが……
そんな俺の不安げな顔を見たバアルギルディは実にいい笑顔で再び答え始める。
「君は私の花嫁になる。そう言ったんだよ」
「そうかやっぱり聞き間違いじゃなかった……ってええええええええええええええええええええええええええええ!?」
つまりあれか? バアルギルディは俺と結婚すべく俺の事をさらってきたって言うのか? ご丁寧に女の状態にまでして? 嘘だろおい!!
もしコーヒーか何かを口に含んでいた場合、さぞ綺麗な霧を口から吐いていただろうレベルの驚きが俺を襲った。
「じょ、冗談じゃねぇ!! 誰がてめぇなんかと!!」
バアルギルディの野郎、テイルバイオレットの正体が男である俺だと知ってから何をどうトチ狂えば俺と結婚しようって気になるんだよ!! てかそういやこの野郎、何か様子が変だったよな……
当たり前だが、俺は全力で拒否する。
結婚なんてまだする気もないしそもそも俺は男だ。花嫁なんかに死んでもなるものか。てかエレメリアンと結婚だなんて絶対に嫌だし出来る筈が無い以前にそんな事出来るものなのか?
「いいツンだが私は本気だ。本気で君を愛しているんだ」
「やかましい!! この変態野郎!! てかさっさと俺を元に戻せ!! 俺は男だ!!」
処女を守るとかの話以前じゃなくなってしまったこともあってか、俺は全力でバアルギルディを拒絶し罵詈雑言を喚き散らかす。
すると最初こそいいツンだとか何とかほざきやがっていたバアルギルディも俺が男だという言葉を聞く度に様子が徐々に変になっていく。
もしかしてバアルギルディの野郎。俺というテイルバイオレットの正体を忘れようとしているのか?
「な、何を言っているんだ? 君は女の子……」
「な訳ねぇだろ!! 俺は男だ!! 男だっつーの!!」
もしかしたらと思った俺はダメ押しとばかりに繰り返してみる。
しかしこれがいけなかった。
「そ、そんな筈ない!!
明らかに取り乱し始めるバアルギルディの姿に俺は恐怖を覚える。
これはむやみに刺激してはいけないのではないかと思ったがもう遅かった。
「やはり君はまだ真の君になれていないようだな。ならば仕方ない」
そう言うが早く、バアルギルディは俺に手をかざし音波状の光線を俺に浴びせ始める。
避ける事が出来ない俺はその光を浴びては凄まじい眠気に襲われる。
まさかこれには催眠効果でもあるのではと思った頃にはもう体の自由は殆ど効かなくなっていた。
「ま、ける……もん……かぁ……!!」
これに負ければ俺が俺でなくなる。
そうなれば俺はきっとバアルギルディとの結婚を承諾してしまうだろう。
そんな事は絶対させやしねぇ。俺にはティアナっていう想い人が……
(和輝なんて……!! 大っ嫌い!!)
後もう少しの所で耐えられると思った時だった。俺はさっきティアナとのやり取りの顛末を思い出した。
(そうだ。俺は……)
ティアナは勇気を出して真剣に話してくれたっていうのに、俺は恥ずかしさの余り最初から冗談だといって拒絶しそのまま喧嘩にまで発展させちまった。その結果、ティアナは涙を流し俺の下を去っていっちまった。
俺ってクズだ。最低の男だ。ティアナに会う資格なんてない。
心の中でもう一人の俺がそう呟き、俺の意識は絶望に染まっていく。
ついに俺はもうこのまま楽になるのもいいかもしれないとも思い始め、意識から手を離しそうになりそして……
「ティ……ぁ……」
絶望しきった俺の意識は闇の中に溶けるように沈んで行った。
◇
明くる日のアルティデビル基地の大ホール。
ここでは今日も今日とて出撃するエレメリアンを選抜するくじを行い、数多くのエレメリアンが悔しさを覚えそして選ばれし一体のエレメリアンが喜びながら大ホールを後にするいつもの風景がある。
だが今日は違った。
くじを引いては発表を今か今かと待ち侘びるエレメリアンたちをアガレスギルディが待ったをかける。何でもバアルギルディが皆に大事な事を話さないといけないとの事だ。
当然、一部のエレメリアンは疑問を抱く。
「なんだぁ話って?」
「さぁ?」
「まさかテイルバイオレットに関する新たな発見をしたとかじゃ……」
「有り得るな。まぁそれならそれで俺たちは構わないけどな」
そうやっていつになくざわざわと盛り上がるエレメリアンたち。
そしてその盛り上がりが最高潮に達しようとしたその時、大ホールの扉が開きバアルギルディが入ってきた。
バアルギルディは大ホールのど真ん中に立つとその余りに真剣な表情を見た周囲の席についていた各エレメリアンたちは自然に体を正してしまう。
「皆、今日は私の為に集まってもらってすまない。だが今日皆に集まってもらったのには理由がある。重大な発表があるのだ」
力強く答えるバアルギルディ。
重大発表があると聞いて再びざわつき始めるエレメリアンたち。
この雰囲気からして明らかにそれはテイルバイオレットの新しい情報を得たとかの類ではないのは確かだ。
「つまらない事だったら承知しないからな」
一際ガラの悪いエレメリアンが遠くの席からやじを飛ばし、それに便乗したいくつかのエレメリアンがそーだそーだと声を上げる。
もっともバアルギルディは意にも返さずに話を続ける。
「皆は知っているだろう。私がテイルバイオレットを愛してやまないということを!! 私がテイルバイオレットに恋をしているということを!!」
だから何だそんな事は知っているとやじを再び飛ばそうとした時、バアルギルディは声を張り上げる。
「この世界に来てテイルバイオレットを想い始めて苦節4ヶ月。私の想いはついに届いた!! 紹介しよう我が愛しき戦士!!」
まるで花形女優がショーに上がるかのようにスモークが大ホール入口にて上がり、外からある一人の人影が姿を現し中に入って来る。
その人物は青紫色の髪をツインテールに束ね、標準よりも少しスレンダーな体系にメカニカルな装甲を身に纏うややつり目の可愛らしい女の子。
バアルギルディ以外のエレメリアンは皆その姿に息を呑んだ。
「テイルバイオレットを!!」
テイルバイオレット。それもまごうことなき正真正銘本物のテイルバイオレットだ。見間違えでは断じてない。それを全エレメリアンは感じ取った。
そしてある者たちは喜びの余り歓声を上げ、ある者たちはこれは夢だと思っては頬をつねり、またある者たちはテイルバイオレットが攻めてきたのかと警戒心を露わにする。
そんな中、テイルバイオレットはバアルギルディに対して怒りを向けていた。
「バ、バカ……!! こんな派手な仕掛けしてんじゃねぇよ……!! は、恥ずかしいじゃねぇか……」
「す、すまない。やはりこういう時は派手に紹介すべきだと思ったのだが……」
「うるさいうるさい!! このバカ!!」
一応、怒ってはいるが明らかにバアルギルディに対して敵意を持っていないテイルバイオレット。
顔を真っ赤にしながらポカポカと叩くバアルギルディとテイルバイオレットの様はまるで恋人同士の他愛もない喧嘩……否、夫婦漫才だ。
それを見たエレメリアンたちはまたしてもこれが現実なのかわからなくなる。
テイルバイオレットと言えば、風の噂で耳にするどこぞの蛮族よりかはマシなもののちょっとガラの悪い所がある男勝りな少女だったはずであり、どう間違ってもこんなにも露骨にバアルギルディと仲良く夫婦漫才をかますような事はなかったはず。なのにどうだ。今目の前ではテイルバイオレットとバアルギルディが仲良く戯れているではないか。
「ついに……ついにテイルバイオレットの心を掴んだのですね、バアルギルディ殿。このアガレスギルディ、感動で前が見えませぬのじゃ」
テイルバイオレットとバアルギルディの和解を経た夫婦漫才を見たアガレスギルディは年のせいなのかボロボロと大粒の涙を流した。
「さてと、見ての通り重大発表と言うのは私とテイルバイオレットが結婚するという事だ。一応、わかっているとは思うがテイルバイオレットはこれからこの基地で暮らすのだが、彼女の属性力を奪う事だけは絶対にしないようにしてほしい」
「け、結婚だなんて……は、恥ずかしいじゃねぇか……!!」
付き合っているというだけでも驚きだというのにもう結婚するくらいまでに至っているのかとまたしてもどよめきが走り、そして段々と歓声が上がり始める。
精神生命体であるエレメリアンと人間であるテイルバイオレットが結婚できるかどうかなど気にする者はここにはいない。愛の前に種族など関係ないのだ。
まぁそれよりもグレモリーギルディいなくなって以来女っ気がすっかり足りていなかったこの基地に女の子がやって来るその現実が嬉しかったのもある。
「つきましては結婚式についてだが、これはこの基地ではなくちゃんとした教会であげようと思う。場所と日程についてだが――」
「なぁなぁ!! これからバイオレットちゃんって呼んでいいか?」「俺も俺も!!」「なぁ後でこの服着てくれないか?」「馬鹿者!! バイオレットちゃんにエロいだけのチャイナドレスなど着させん!!」「お、おれっち、ナベリウスギルディ。よ、よろしく」
どっとテイルバイオレットに押し掛けるエレメリアンたちの耳にはバアルギルディの式場案内は碌に聞こえていない。皆口々にテイルバイオレットに話しかけた。
「はぁ!? 何言ってんだお前ら!! 近づくんじゃねぇ!!」
だが悲しきかな。この時、話しかけにいったエレメリアンたちは皆揃ってテイルバイオレットに拒絶された。
根が陽キャオタク故に距離の掴み方を間違えたのだ。
そんな怒りだすテイルバイオレットに向かってバアルギルディは優しく声をかける。
「悪気はないんだ。皆とも仲良くしてやってくれ」
「お、お前が言うなら……」
そっぽを向きながらも顔を赤面させるテイルバイオレット。
それを見て意外とチョロいなと大半のエレメリアンは思うのであった。
「まさかテイルバイオレットを手駒にするとはな。これは中々面白いことになっているじゃあないか」
盛り上がる大ホールの隅で腕を組みながらその様子を見つめるベリアルギルディは面白そうに呟いた。
◇
「和輝……」
私の声は誰にも聞かれることもなく部屋の中で消えていく。
昨日、和輝と別れた日の夜からずっとこの感じ。
お風呂にも入ってなければご飯も食べていないし、一睡もしていない。そのせいかツインテールも心無しかしなしなと元気を失っているように見える。
「昼ごはん、置いておくからね」
部屋の外で正樹さんの声が聞こえた。どうやら私の為に昼ご飯をトレイに乗せて持ってきてくれたみたい。
でも、今の私には食欲は全くと言っていい程存在していない。
その後、正樹さんが私が一切手を付けなかった朝ご飯を乗せたトレイを運ぶ音が聞こえた。
私は無残にひしゃげた枕をもう一度抱きしめた。
「どうすれば良かったのよ……どうすれば上手くいったのよ……誰か教えてよ……!!」
あの時、どんな選択肢を取ればこんな事にならなかったんだろう。あの時、どうすれば冷静に和輝と話すことが出来たのだろう。あの時、どうすれば……
考えれば考えるだけ後悔の念が駆られてしまう。
誰でもいいから教えて欲しい。いや、誰でも良くはない。今はお母さんに会ってみたい。
昨日みた夢のような形でもいいからそう思った。
「そうだ……!! 昨日確か……!!」
昨日、夢の中でお母さんと対面した直後、夢から醒めた時、見間違えじゃなければ確かテイルブレスが光っていたような気がする。それに今更だけど、あの夢のリアリティは夢で片付けていい物じゃない。
あの時の夢がもしかしてテイルブレスに秘められたお母さんの想いが反応したのだとするならば、もしかしたら……!!
そう思ったら私の身体は動き出していた。
テイルブレスに願えばもしかしたらお母さんに会えるかもしれないその一心で。
「お願い。もう一度でいいから。お母さん合わせて」
たった一つそれだけでいい。
今はお母さんと会って話がしたい。
そうすれば和輝へのこの気持ちをどう処理すればいいかわかるかもしれないもの。
「ッ……!!」
そんな私の祈りにテイルブレスは答えてくれた。
ツインテール属性のマークが描かれたエンブレムが光り輝き、私を夢の中に連れていく。夢の世界……否、私の実家。アドレシェンツァに。
「来ることが出来たの?」
その疑問は直ぐに払しょくされる事となった。
霧のような靄が晴れ、私の目の前に広がる光景は朧気ではあるけど懐かしき実家の喫茶店の様子そのまま。
足りない物と言えば、常連の変なお客さんくらいだ。
私はその中で唯一存在しているエプロン姿をした一人の女性の後ろ姿を見るに急いで飛びついた。
「もぉ~またなの? 今度は一体何があったのよ?」
やっぱりこれは夢であって夢じゃないんだ。
そう確信しちゃう程に自然な応対。
今回は二回目と言う事もあってかお母さんの反応は違う物だった。
「私……わたしね……!!」
幻想とは言えも再びお母さんに会えた。
その喜びからか涙が止まらなくなり、私はめい一杯泣いた。
「全く……何? 今度はどうしたの?」
少しキツめの言い方ではあるけど、お母さんは優しかった。
それと同時に思い出してくる。小さい頃何度も何度もお母さんに叱られてはお父さんと一緒に謝った懐かしくもあり恥ずかしくもある思い出の数々が。
私はひとしきり泣いた後、心の内をさらけ出すように事の原因を話した。
和輝に告白するつもりが、結局喧嘩になってしまい、それでそのまま喧嘩別れしちゃったという事をだ。
お母さんは私のツインテールを撫でながらうんうんと黙って聞いてくれた。
「そっか、そんな事があったのね」
「ねぇお母さん……私、どうすればいいの……? どうすれば良かったの?」
「うーん。難しいわね……冷静になって話しておけばといえばそうなんだけど……」
「やっぱりそうだよね……。ねぇ? 私ってもう嫌われちゃったのかな?」
困り顔になるお母さん。
自分から言っておきながら何だか申し訳なくなってしまう。
そんな困り顔のお母さんはカウンター席に座るなり私に向かってこう言ってきた。
「でも、お母さんはあんたの気持ちもその男の子の気持ちも両方ともちょっとだけわかっちゃうな」
「え?」
「多分ね、その子はあんたがその子を好きなのと同じであんたの事が好きなのよ。でも、いざ対面すると恥ずかしがって素直になれなくなる。さらに言えば、その子はねもし想いを伝えて失敗してしまった時の事を恐れている。絶対そうよ」
「ど、どうしてそんな事わかるの!?」
和輝が私の事が好き? 理由としては確かに和輝の性格からしてあり得そうだけど……。
それにお母さんの言い方じゃまるで自分がそうだったかのような言い方みたいでどこか引っかかる。流石に和輝程じゃないとは思うけどお母さんも和輝と似たような性格だったのかも。
少し驚きながらも、もしかしてと思い尋ねてみた。
「前にも言ったでしょ。お母さんはお父さんの事が小さい頃からずっと好きだったって」
「うん」
「でもね、お母さんは親友の助けがないと告白できなかった。ううん、する勇気が出なかった。もし、フラれでもしたら今後どうすればいいんだろうかって不安だった。それこそあんたが告白し損ねたその男の子みたいに」
お母さんがそうだったのならそれじゃやっぱり和輝もそうなのかな。
もしそうだったらするのなら何だか嬉しい気分になって来る。
改めてお母さんと話せてよかったと実感した。
それにしてもやはりというかお母さんの表情はどこか辛そうだった。
お母さんの言う親友ってのが誰か未だに思い出せないけど、きっとその人と何かあったのかもしれない。
もしかしてその親友もお父さんの事が好きだったのかも……
「ねぇ? お母さんはお父さんと喧嘩したりした事ってあるの?」
「そりゃ少しくらいならあるわよ。と言っても今思えば全然大したことない軽いもものだった上、殆どあたしのヤキモチが原因だったけどね」
やっぱりあったんだと少し安堵する私にお母さんはどんな些細な事でも喧嘩しない恋人はいないと言ってくれた。夫婦になって同じ屋根の下で暮らすとなると時折、不満が出るなんて当たり前のことらしいし、それでも好きでいられるから夫婦でいられる。即ちそれこそが愛なんだってね。
和輝と喧嘩すること自体は何もおかしな事じゃない。寧ろそうやって本音を出し合えるなんて仲がいい証拠じゃないともお母さんは言ってくれた。
「喧嘩するほど仲が良い。ある意味羨ましいわ。お母さんがあんたぐらいの歳の時、お父さんとはあまりそういった喧嘩してなかったから。寧ろ喧嘩ならアイツとばっかりだったし……」
学生時代もっと喧嘩してお互いを分かり合える事ができていたらお父さんとももっと早くに両想いになっていれたのかもねと笑うお母さんを見た事で私は少し自信が湧いてきた。
私と和輝は何も間違った事はしていないんだってね。
「まぁでも、あんたはそうやって想いを伝えにいこうとしている点であたしよりかは勇気あるわね。やっぱりそのあたりはお父さんの血かしらね」
それはどうなのかな?
正直言ってお父さんがどんな人だったかが今一思い出せていない為、何とも言えない。
ただお父さんは私以上にツインテールを愛していて尚且つとても優しかったような気がする。
「ねぇ、結局の所あんたはどうしたいわけ? このまま喧嘩したままでいいの?」
「ううん。そんなの絶対に嫌」
私は自信をもって力強くそう答えた。
その答えを聞いたお母さんはとても満足そうだった。
「なら早く行きなさい。こんな所でいつまでもグズグズしてたら取返しがつかなくなるわよ」
「うん!! ありがとうお母さん!!」
そう感謝の言葉を言って駆け出そうとした私をお母さんは呼び止める。
「ちょっと待ちなさい。最後に一つ。あんたはお父さんやお母さんのツインテールを受け継いだ娘なんだからもっと自分に自信を持つこと。いいわね?」
「うん!!」
「だったら泣かない!! それにツインテール、解けかけてるわよ!!」
え!? と思いガラスに映った自分自身をみると確かにツインテールが解けかけていた。ツインテールの乱れは心の乱れ。現実に戻ったら真っ先に直さなくちゃと決意する。
それにもう私はもう泣かない。もし次泣くとしたら和輝への告白を成功させたときの嬉し涙だ。
そう新たに決心すると同時に景色は光に飲み込まれ、いつの間にか私は元の部屋に戻ってきていた。
テイルブレスに一言ありがとうと伝えた後、私は解けかけていたツインテールを結び直す。
「これでよし!!」
ツインテールをキチンと結び終え、両頬を叩き気合を入れた私は勢いよく部屋の外に飛び出る。
するとその時、視界の端に置かれているトレイに乗せられたオムライスを見て空腹だったお腹がぐ~と鳴り響いた。
「先ずは腹ごしらえしてからでもいいよね」
スプーンを手に取った私は大急ぎでオムライスをかきこみ始めるのだった。
ティアナの母については原作と比べて大分月日が経った設定なので原作よりも大人らしさをイメージしています。
後、私事ですが、かつて戦っていた人が大人になって今戦っている若者を言葉で導く展開、大好きだったりします。