俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回で第一部終了なので話が少し長いです。



第65話 今、結ばれる二人

「何だと!? 何故テイルバイオレットが!?」

 

 バアルギルディの声が辺りに響く。

 いやー危なかったぜ。もう少し遅れていたらティアナがどうなっていたかわからなかった。

 バアルギルディの放った巨大な光弾は何とか変身が間に合った俺の斬撃で真っ二つに割れ大爆発を起こし、間一髪、ティアナを救うことが出来た。

 俺はバアルギルディと向きながらも安堵の胸を撫で下ろす。

 

「か、和輝……」

 

「んだよ。そんな驚いたような顔して」

 

 振り向くとそこには俺の登場に呆然としながら尻もちをつくティアナの姿。

 一日そこらと俺とティアナが離れていた期間はかなり短く久しぶりという程でもないが、随分久々に会ったように感じる。

 何というかやっぱりすげぇ可愛い。

 

「和輝ーー!!」

 

「ば、馬鹿……!! こ、こ、こんな時にお前……!! っておい……!!」

 

 瞳に涙を滲ませている様子から何か嫌な予感を感じ取った俺だったが、流石にいきなり抱きついてくるとは予測できなかった。

 思いっきり抱きしめられ恥ずかしさと嬉しさで一杯になりそうになるが、僅かに聞こえてくるテイルギアが軋む音を聞いて踏みとどまる。

 全くどんな馬鹿力だよ……

 もしティアナが変身できればエレメリアンなんざ鯖折りで木っ端微塵だな。

 

「てかギブギブギブ!! いい加減はよ放せ!! お前みたいなまな板に抱きつかれても痛いだけだっつーの!!」

 

 このままじゃ戦いにならないからとはいえついティアナの貧乳(タブー)をネタにしてしまった。

 案の定、ティアナはさっきまで流していた嬉し涙をスッと引っ込め青筋を立てはじめる。

 

「何ですって……!! それはどういう意味よ!!」

 

「そのまんまの意味じゃボケ!! この怪力ツインテール!! てかお前この状況わかってんのか!? バアルギルディの野郎が目の前にいんだぞおい!!」

 

「だからってそんな言い方ないでしょ!!」

 

「うるせぇ!! こうでも言わなきゃお前は――」

 

『もう~何喧嘩してるのよ二人とも~』

 

「悠香さん!?」

 

 喧嘩の最中、そのはずみでティアナがうっかり落としたイヤホンから突如聞こえてくる声。

 それは悠香さんの物であり、俺は悠香さんたちが何らかの方法でこの状況を見ていることを察した。

 

『やっほ~和くん。どう調子は?』

 

「絶好調って感じですかね。誰かさんのおかげで」

 

 それは一体どう言う意味よとまたもや怒り出すティアナ。

 俺はその言葉を左に聞き流す。

 

『全く……何してんだか……』

 

「悠香さん、最初に仕掛けたのは俺ですけどね。こんな状況になったのはそもそもコイツが……」

 

「何よその態度は!! というか助けに来てあげたって言うのに感謝の一つもないって言うの!!」

 

 その言葉は俺の心に針のように深く深く突き刺さる。

 振り返ってみれば確かに俺は悪態突いてばっかりだ。ティアナが来なかったら今頃、バアルギルディの野郎と口づけ交わしていたかもしれねぇのによ。

 急に後ろめたい気分に駆られた俺はティアナに感謝の気持ちを伝えようと勇気を振り絞る。

 

「それは……その…………あ、ありがとう……」

 

「もう……。どういたしまして」

 

 ついぶっきらぼうで言ってしまう自分自身に喝を入れたくなるが、ティアナの天使のような笑顔を見て俺はつい言葉を失った。

 やっぱりティアナ(コイツ)だけは絶対に守り切ってみせる。

 俺はそう誓った。

 

「貴様……!! 私の前でテイルバイオレットとイチャイチャするとは……!! それは私の物のはずだ!!」

 

 思わず背筋をビクリと震えてしまいそうになるくらい威圧感のある怒りの叫び声が木霊する。

 振り向くとそこには眉間にしわを寄せビキビキと青筋まで立てていやがるバアルギルディの姿。

 どうやら俺とティアナの喧嘩を見て随分とご立腹のようだ。

 まぁ、これがイチャイチャしてるかどうかはさておき、ツンデレ属性の奴からすれば我慢ならない光景であったことは事実だ。

 

 でもどうしてだろう?

 どこか奴の態度に引っかかりを覚える。

 俺の知っている奴の性格からして悔しむ程度なら理解できるんが明らかな殺意を出すほどに怒りを見せているのは何かおかしい気がする。

 てかバアルギルディの野郎、俺が攫われた日もそうだったがさっきからどうにも様子がおかしいぜ。もし俺が目覚めることが出来なかったらティアナを殺していたのは確実で、そんなのバアルギルディの野郎がするとは思えない。あの野郎は敵でありながらもどこか高潔で憎み切れないような奴で、ガキ一人ですら殺すことが出来ない生粋のエレメリアンだって事はこの俺がよーく知っている。

 これ以前にバアルギルディと交流を深めた俺だからこその異常性に気が付いた。

 

「まぁ兎に角、うだうだ考えても仕方ねぇか」

 

 今はとりあえずバアルギルディ(コイツ)は邪魔だ。

 俺にはこの後、ティアナに伝えなくちゃいけない事があるんだ。

 俺は両頬をパチンと叩いて気合を入れた後、バアルギルディと向き直る。

 

「うっし、行くぜティアナ!! 初っ端からブレイブチェインだ!!」

 

「オッケー。あんな奴さっさとブッ飛ばして頂戴」

 

 テイルアーマー、アーマーオン!! の掛け声と共にテイルブレスから放たれた赤い光が俺の体を包み込みテイルバイオレットの姿を一段階上の物へと進化させる。

 燃える炎のような赤くなったツインテールは勇気の証。

 テイルバイオレットブレイブチェインの登場だぜ。

 

「行くぜ。こっからが本当の戦いだ!! 覚悟しやがれ!! バアルギルディ!!」

 

 ブレイブチェインへと強化変身を遂げた俺は二刀のウインドセイバーを構え、対するバアルギルディは白い短剣を作り出して片方の切っ先を俺に向ける。

 春から続いたこの複雑な因縁を断ち切る時が遂にやって来たんだ。

 

「いいだろう。今日ここで決着をつけてくれる。そして勝った暁には君という存在を頂こう!!」

 

「誰がやるもんかっつーの!!」

 

 その言葉を皮切りに赤と白、二つの剣がぶつかり合った。

 

 

 

 

「流石はテイルブルーム……」

 

「手強い……」

 

 一方、こちらは教会の外にある広場。

 元々は結婚式を終えた後の披露宴を行う会場として準備を済ませていた場所だったが、今はもうそうではない。

 ここではテイルブルーム対エレメリアンと戦闘員(アルティロイド)の戦いが開始されていた。

 エレメリアン側は戦闘員含めて総勢約50体以上とテイルブルーム一人に比べてもその戦力差は50倍。

 どう見積もってもテイルブルーム側に勝ち目はないとエレメリアン側はそう判断していた。

 だがどうだ。

 戦闘が開始してしばらく経ったのにも関わらず、テイルブルームにまともなダメージ一つ与えられていない。それどころか既に戦闘員の大半は塵と化し、いくつかのエレメリアンは重傷を負って戦闘不能状態に追い込まれている。

 何故こうなったのか?

 勿論、テイルブルームがそんじょそこらのエレメリアンなど相手にならない位の実力を有しており、唯一苦手としていた集団戦も以前のボティスギルティとの戦いを経た今では何の苦にもならなくなっていることもある。

 が、それ以上にアルティデビル側にある問題点があったのだ。

 

「畜生、こうなったらお前が囮となれ。後は俺が……」

 

「何だと!? 私を囮に!? 冗談ではない!!」

 

「まどろっこしい!! 突撃あるのみよ!!」

 

「バカ!! 早まるな!!」

 

 バアルギルディが懸念していた事が今現実となる。

 そう。アルティデビルのエレメリアンたちは個々の力がアルティメギルの一般エレメリアンよりもなまじ優秀で力があるが故に連携といった集団戦において最も大事な事を知らない。

 今は違ってもいつかは俺こそがナンバーワンになり、俺の属性こそが最高の属性である証明するというその気概が無駄なスタンドプレーを生み悪い方へと作用していたのだ。

 

「ハァッ!!」

 

「む、無念……!!」

 

 無謀にも丸腰で突っ込む一体のエレメリアンがテイルブルームの掌底を貰って爆散していく。

 テイルブルームからすれば連携のれの字もない今のような攻撃など弱いなりにも連携しようとしてくる戦闘員の方が手強く感じてしまう。

 

「皆の者!! 落ち着くのじゃ!!」

 

「うるせぇジジイ!! 黙ってろ!!」

 

 今の現状を不味いと感じたアガレスギルディが指揮を取ろうとするものの、頭に血が上り始めている彼らの耳に老いぼれであるアガレスギルディの声は届かない。

 アルティデビルがバアルギルディのカリスマ一つで成り立っている危うい組織であると再認識させられる。

 

「ぐあぁぁぁッ!!」

 

「うぼぉぁぁッ!!」

 

 テイルブルームの卓越した体術及びグランアローの美しき剣閃によってまた一人、また一人とやられていくエレメリアンたち。

 終いには無茶な連携をしようとして自滅同然の最期を迎える者たちまで現れ始める。

 ボティスギルティ戦以前のテイルブルームなら何とかなった可能性もあったかもしれないが、今の彼女に勝つのはこのままでは不可能に近い。

 そんな中だった。

 バアルギルディとテイルバイオレットへ救援をしてもらうべく教会に戻っていた一体の戦闘員が帰ってくるや否や更なる暗雲が立ち込める。

 

「何じゃと!? バアルギルディ殿とテイルバイオレット殿が戦っている!? そんな馬鹿な!! テイルバイオレット殿は我らの味方になったのではないのか!?」

 

 報告を聞いて狼狽え始めるアガレスギルディ。

 それもその筈だ。

 何故ならアガレスギルディを始めとしたここにいるエレメリアンたちはテイルバイオレットがバアルギルディによって洗脳されていたという事実を知らない。

 よって彼らからすればテイルバイオレットが本心でこちら側に着いたと思っていたのだ。

 

「じゃあこの結婚式は何だったんだよ!! 俺たちは何をさせられているんだよ!!」

 

 そうだそうだと不満の声が上がり始める。

 最早、連携とかそれどころの話ではない。

 こんな茶番に付き合ってられるかと言わんばかりの勢いで次々とこの場から退却し始めるエレメリアンたちをアガレスギルディは止めようがない。

 脱ぎ捨てられるタキシードが辺り一面に散乱していく。

 

「そ、そんな……」

 

 結局、残ったのはフルフルギルディとアガレスギルディのたった二体のエレメリアン。

 殆ど誰もいなくなりぐしゃぐしゃに踏み潰され見るも無残な有様と化した披露宴の飾りが酷い哀愁を漂わせる。これじゃまるでパーティーを企画したのに誰も来ず、その悲しみをぶつけた暴れたみたいである。

 

 もう勝ち目などない。

 そう悟ったアガレスギルディが涙交じりにテイルブルームに突っ込もうとするその時、フルフルギルディが引き留めた。

 

「待ってくださいアガレスギルディ」

 

「フルフルギルディ殿……!!」

 

「この結婚式が失敗したのは全て私の責任でございます。だからこそ、ここは私目にお任せを。あなたは逃げて下さい。あなたにはいずれ来る今日のような日の為にも生きねばなりませぬ」

 

 そう強く言われれば引き下がることが出来ないのは人間もエレメリアンも同じである。

 アガレスギルディは断腸の思いでその要求を呑み、撤退することを決めた。

 

「さぁ来いテイルブルーム!! 貴様のような結婚を知らぬ青臭い輩なんぞに私が結婚の素晴らしさを教えてやろう!!」

 

「すいませんが、私、まだまだ結婚する気なんてありません!!」

 

 二人きりなった広場でそれぞれの想いが木霊する。

 勝者はどちらかなど正直もう見えている。

 だが、フルフルギルディは諦めない。

 フルフルギルディはテイルブルームに結婚の素晴らしさとウエディングドレスの美しさを教える為に突撃。

 そして……

 

「見える……!! 見えるぞ……!! 私の作ったウエディングドレスを着てそれぞれ別の想い人と誓いのキスを交わす、テイルバイオレットとテイルブルームの姿が……!!」

 

 その断末魔と共に真っ二つに切り裂かれ大爆発を起こすフルフルギルディ。

 その爆発はまるで妄想する二人の花嫁姿を、祝福する花火のようであった。

 

 

 

 

 赤と白、ここ日本においてそれは本来、祝い事の席で伝統的に使われてきたおめでたい色の組み合わせ方だ。紅白饅頭に紅白幕、紅白歌合戦、あげればきりがない。

 そんな赤と白の二色だが、今現在、この戦いの場においてはそんなめでたさなど微塵もありはしない。

 どちらがより強いか、どちらがより上なのか、そしてどちらが幸せをつかみ取るのかを巡る男と男の戦い。

 赤いテイルバイオレットと白いバアルギルディ、二人の戦士がぶつかり合う。

 そして今、周囲は戦いの余波において炎が上がり始めており、数時間前までは結婚式の会場に使われていたとは誰も思わない位には燃え広がり始めている。祝儀として贈られたフィギュアやゲーム、同人誌なんてもう真っ黒こげだ。

 そんな中、もう何度目かわからない数の剣劇を終えて尚、まだまだ余裕ありきといった様子の俺とバアルギルディの剣が再びまじりあっていた。

 

「だらぁッ!!」

 

「フンッ!!」

 

 そのすかした顔面を叩き斬るべく振りかぶったウインドセイバーの二振りはバアルギルディの持つ右手の短剣で両方まとめて容易く受け止められ、今度は俺が守る番へと移る。

 

「覚悟!!」

 

 カウンターで放たれるもう一本の短剣が俺の右わき腹を抉るべく襲い掛かるのが見えた。

 俺は咄嗟に右膝で野郎の左腕を蹴り上げ防御。

 そして今度は俺が仕掛ける番。

 面食らった様子のバアルギルディの体目掛け俺は、全体重を乗せたショルダータックルを繰り出す。

 俺のタックルは野郎の胴体にクリーンヒット。しかし、バアルギルディは瞬時に体勢を整えると仕切り直しとばかりに距離を取って離脱した為に俺の攻めは半端な形で終わり迎える。

 

 クソッ……!!

 今こそこの拮抗した現状を打破する絶好のチャンスだって言うのに……!!

 悔しさを覚えながらもその悔しさを抑え込み何とか冷静さを保つように努める。

 この戦いは実力が拮抗し過ぎているが故、まさに一進一退の攻防から成り立つターン制バトルだ。冷静さを欠いては勝てるような勝負ではない。

 

『落ち着いて。大丈夫よ和輝』

 

「わーってるよ。たくっ、心配し過ぎなんだよ」

 

 まだ火の手が上がっていない隅っこの安全な部分で戦いを見守るティアナの声がテイルブレスを通じて聞こえてくる。

 本当はもっと離れていて欲しい所だが、ブレイブチェインを維持する為にはティアナとある程度近くにいないといけない制約が存在しているが為、そんな事は言いたくても言えない。

 今現在、もしブレイブチェインがないとバアルギルディと互角で戦うなど出来やしないからだ。

 

「流石はテイルバイオレットだな……!! この私の全力についてくるとは……!! だが!!」

 

 三度斬りかかって来るバアルギルディ。

 その剣捌きは燃え上がる炎以上に苛烈な物となっており、野郎の全力を感じさせる。

 俺はその怒涛の攻めを二刀のウインドセイバーで流れるように受け流して防御するも徐々に徐々に奴の攻めに押され始める。

 まさか今まで本気じゃなかったっていうのか!?

 

「これが我がツン!! 私の想いだテイルバイオレット!! 受け取るがいい!!」

 

 振り下ろされる強烈な斬撃を俺は受け止めようとウインドセイバーを二刀X字に合わせて防御。

 しかし、その炸裂する爆弾以上に圧倒的な破壊力が乗った一撃はとてもじゃないが受け止めるきることは出来ず、俺は弾き飛ばされ踵で床を抉る。幸い斬られやしなかったが、その強さには驚きを隠せない。

 

「なんて強さだこの野郎……!! ブレイブチェインでも勝てないのかよ……!!」

 

 参っちまうぜ。さっきは拮抗しているとか何とか思っちまったがそれはとんだ誤算だ。悔しいがブレイブチェインになったところで野郎との戦闘力の差は埋まり切らない程存在してやがる。

 唾でも吐きたくなるこの現状。

 どうする? どうすれば野郎に勝てる? 俺には一体何が足りない?

 答えてくれ俺のツインテール。

 当たり前だが答えはない。

 

「そらそらそらそら!!」

 

「くッ……!!」

 

 当たり前だが、バアルギルディは手を休めはしない。俺がどうすればいいか悩む中でも攻撃は苛烈さをましていく。

 諦めない限り勝利は見えてくるというその一心で俺は何とか防御に徹する。

 そんな中だった。

 

『聞いて和輝』

 

「んだよこんな時に!!」

 

『いいから聞いて!! さっきから見ていて思ったんだけど、バアルギルディの攻撃するその瞬間、攻める事に気が向きすぎていると思うの』

 

 その言葉を聞いて俺は冷静さを取り戻す。

 確かに言われてみればさっきから野郎の攻めは強烈ではあるがどこか大ぶりでいつものバアルギルディらしさに欠けている。てかそう言えばバアルギルディの野郎、なんかおかしかったぜ。

 今の野郎はヒートアップし過ぎている事に気が付いた俺は反撃に転じるべく集中する。

 思い出せ、ボティスギルティ戦を。見えないツインテールを結んだ時の事を!!

 

「そこだ!!!」

 

「なッ!!」

 

 バアルギルディが力任せに剣を振り下ろしたその瞬間、俺は受け止めたウインドセイバーを滑らせるように走らせ、野郎の胴体を大きく開くかのようにかっさばく。

 そして返す刀で野郎の両腕を狙って短剣を弾き落とす。

 野郎はあっけにとられており守るすべを失ったも同然。後は全力で叩き斬るというその一心でウインドセイバーの斬撃を叩きこんだ。

 

「な、なんという……事だ……!! この私が……!!」

 

 傷口が燃え上がり始め火だるまと化すバアルギルディ。

 勝った。

 そう確信した俺はティアナにめい一杯の属性力を送るように声をかけた時だった。

 ステンドグラスのあった丁度テイルブルームが乱入してきた場所から何かが飛んできては燃え上がるバアルギルディに入り込むかのように吸い込まれていった。

 一瞬ではあったが俺にその何かが黒い石の姿をした恐るべき道具、魔神の吐息(デモン・ブレス)に見えた。

 

「うおおおおおおオオオオオオオ!!!!」

 

 高貴さを表す白きボディは醜悪な蠅を思わせる禍々しい物へ。

 炎が弾け飛ぶや否や、爆風と共に変化を開始するバアルギルディの肉体。

 さっきまで燃え上がっていた周囲の炎が一気に鎮火。

 そして程なくして変化が完了。

 俺の目の前に現れたそれは体長約5メートルクラスのバアルギルディだった者。

 醜い蠅をそのまま擬人化したかのような圧倒的醜悪さに俺は思わず足をすくめる。

 バアルギルディだった者は静かに声を上げる。

 

「何だ? この圧倒的な湧き上がる力は……? 漲る、漲るぞ……!!」

 

 バアルギルディ……いや、この姿をバアルギルディとはもう呼べないだろう。

 名づけるとするならそう、蠅の王と呼ばれし悪魔、ベルゼブブ。

 奴の名前はベルゼブブギルディだ。

 ベルゼブブギルディは複眼の下にあるブラックホールのようなどす黒い口を開き俺の方に向けた。

 

「ハァッ!!!!」

 

「なッ!?」

 

 瞬間、俺の体に襲い掛かるのは強烈な衝撃波。

 その威力はまさに圧倒的。

 フォトンアブソーバーを容易く貫通し、俺の全身にある骨という骨が悲鳴を上げるかのように軋む。

 以前喰らったグラシャラボラスギルディの物の何十倍もの威力に俺は悲鳴を上げるしか出来なかった。

 

「わかる……!! わかるぞ!! 今の私ならツンデレの全てすらも容易に理解できる。フフフ、ハハハハハ!! これが魔神の吐息(デモン・ブレス)の力か!!」

 

 勝ち誇ったかのように狂った高笑いを上げるベルゼブブギルディ。

 なるほどな、やっぱり今のは魔神の吐息(デモン・ブレス)ってわけか。てか最初から何かおかしいと思ったけどもしかしてこの野郎、さては既に魔神の吐息(デモン・ブレス)を使っていやがったな。いや、コイツの性格と今起きた事からしてもしかしたら使わされたって言うのが正しいかもしれない。ならこいつも被害者みたいなもんじゃねぇか。

 クッソたれ、ならば……!! この一発で目を覚まさせてやる!!

 俺はティアナに必殺技の呼びかけを行い、完全開放(ブレイクレリーズ)

 さっき以上の力で燃え上がるウインドセイバーを振るう。

 

「喰らいやがれーーー!!!」

 

 飛んでいくのは炎と風の二色の斬撃波。

 それが空中で混ざり合い、特大の火炎を作り出し、ベルゼブブギルディに迫る。

 これが今の全力、ブレイジングブレイカー。これならどんな屈強なエレメリアンでも当たればひとたまりもないだろう。

 がしかし、ベルゼブブギルディはそんな攻撃を全く気にもとめた様子もなく、ただ大口を開けてブレイジングブレイカーを飲み込んだ。

 

「なるほど、これは素晴らしいツンだ」

 

「噓だろ……!!」

 

『効いてないの……!?』

 

「ではお返しといこう。我が力を受けるがいい!!」

 

 必殺技をも喰らいつくすその姿はまさに暴食の悪魔ベルゼブブ。

 ベルゼブブギルディの口からさっき俺たちが放ったブレイジングブレイカーと同等以上の威力を持つ強烈な破壊光線が放たれる。

 地獄の業火を思わせる圧倒的な熱量を含んだそれはその威力はさっきの衝撃波の比ではなく、今までどんな事があっても無傷を貫いてきたテイルアーマーまでもがひび割れて砕け散る。

 

「どうだ? ツンデレの真理《ベルゼビュート》の領域に達した我が力は? ツンデレを理解しきった私ならいかなるツンでも受け切ってみせるのだよ」

 

 くそ……こんなやつ一体、どうすれば勝てるんだ?

 これが野郎と俺の実力差なのかと改めて思い知らされ絶望の淵に追い込まれながらも何とか耐え抜いた俺ではあったが、余りの威力に膝をつく。

 

「どうやら私の勝ちだな。では、次に……」

 

 ベルゼブブギルディはティアナがいる方向へ首の向きを変える。

 ヤバい。そう判断した俺はその瞬間、体に鞭を打って動き出す。

 

「邪魔者を消すとしよう……!!」

 

 やはりベルゼブブギルディの狙いはティアナ一人。

 ベルゼブブギルディはティアナ目掛けさっきと同じ破壊光線を放つ。

 その威力がもしさっき俺が喰らった物と同等だとするなら生身のティアナが喰らったら命なんて無事ですまない。

 真っ先に動いていた俺はティアナの盾となるように迫りくる光線に立ち向かった。

 

 

 

 

「和輝!!」

 

 私の目の前に立ち、ベルゼブブギルディの攻撃を受け止めるテイルバイオレット。

 テイルアーマーはおろかテイルギア其の物まで半壊し、その姿は目を覆いたくなるほどにボロボロになっている。今すぐにでも力尽きて倒れてしまってもおかしくない。

 だけどテイルバイオレット、いや和輝は私を守る為に命を張っている。

 

「止めて和輝!! これ以上はあなたが!!」

 

「バッカ野郎!! んな事出来っかよ!! まだ俺はお前に返事してねぇだろうが!!」

 

「そんなの……!!」

 

「いいか!! 俺はな!! お前の事が……ティアナの事が……!! 大好きなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 馬鹿。

 こんな時に何言ってるのよ。

 でも、ありがとう。

 私も大好きだよ……

 

「お願い私のツインテール!! 和輝を……!! 私の大好きな和輝を……助けてあげて!!」

 

 和輝が頑張っているんだ。私だってやれる事が……!!

 そんな私の声が響いたその時、テイルブレスから青い光が解き放たれたのが見えた。

 そしてその光はテイルバイオレットを包み込み、ボロボロだったテイルギアを修復し変化させていく。

 これはまさか……!! ブレイブチェインの時と同じ……!!

 そう理解したと同時に力が湧いてくる。

 今できる私の全てを和輝に託すんだ。

 

「いっけぇぇぇぇぇッ!!」

 

「うおおおらぁぁぁッ!!!!」

 

 テイルバイオレットは溢れ出る力を振り絞り、光線をかき消し立ち上がる。

 そしてその瞬間、テイルバイオレットの身に起きた変化に気が付いた。

 

「青いテイルバイオレット……」

 

 ブレイブチェイン時の赤い追加装甲とは打って変わってクールなイメージを持たせる青を基調とした追加装甲(テイルアーマー)を纏ったテイルバイオレット。

 さらに特徴的なのはさっきまで赤かったツインテールも青に変わっている事もそうだけど、ブレイブチェイン時にはなかった脚部にも装甲があるって事。逆にブレイブチェイン時はあった胸部を守る装甲がない。

 まるで攻撃と機動力に全振りしているみたい。

 それが私の第一印象だった。

 

 

 

 

 新しく変化したこの姿。

 ちと胸部装甲が物足りないというかほとんど存在していないというあたりだけ不満ではあるが、溢れ出る力はブレイブチェインの時と同等かそれ以上。

 やれる。

 この姿なら戦える。

 その決意と共にベルゼブブギルディと向かい合う。

 

「何だと……!? 青いテイルバイオレットだと……!?」

 

「そうだこれが俺の新しい力。名付けてエモーショナルチェイン。てめぇをブッ飛ばす力だ!!」

 

 エモーショナルチェイン。

 それは俺の頭の仲に浮かんできた名前。

 意味合い的にブレイブチェインが俺とティアナの勇気に反応したとするなら、エモーショナルチェインは俺とティアナの想いに反応したのだろう。

 土壇場で告白するなんてすっげー恥ずかったけど、それがこの力の覚醒に繋がっているのならまぁ、良しとしよう。

 

「にしても何だ? この破壊衝動は……? エレメリアンをボコりたい気分で一杯だぜ」

 

 思わず声に出してしまう程に今の俺はベルゼブブギルディを見て殴りたい衝動に駆られていた。

 ブレイブチェインの時はツインテール愛が高くなるのが特徴だったけど、もしかしてこの形態はこれがその特徴だったりするのか?

 だとしたら気を付けないといけないな。

 うっかり暴走しちまったら目も当てられねぇ。

 

「さて……それはさておき、次で終わりだこの野郎。特大の一発で終わらせてやらぁ。行くぜティアナ!!」

 

「うん!!」

 

 二刀のウインドセイバーを召喚した俺はおもむろにその柄と柄の先端を合体させて一つの武器へ。

 それは刀が二本くっついた大ぶりの薙刀。

 名づけるならウインドセイバーナギナタモードだ。

 俺はナギナタモードのウインドセイバーにティアナから送られてくるツインテール属性のエネルギーを送って完全開放(ブレイクレリーズ)

 涼し気な水と風が周囲に巻き起こる。

 

「来るがいい!! どんなツンでも受け止めてやろう!!」

 

「なら遠慮なくいかせてもらうぜ!!」

 

 大口を開けて受け止める体勢に入ったベルゼブブギルディ目掛けて俺はウインドセイバーを振るってブレイブチェインの時以上に強力な槍状の光弾、必殺のエグゼキュートブレイカーを放つ。

 

「ううううう!! なんて強烈なツンだ……!! ツンデレの真理(ベルゼビュート)に辿り着いた私ですらこれほどに……!?」

 

「当たり前だ!! いいか!! 俺はな!! ティアナの事が最初はすげー嫌いだった!! 貧乳だし五月蠅いし面倒くさいし、でもな!! いつの間にか段々と好きになって、でもそれを認めるのが何か悔しくて恥ずかしくて……!! そんな筋金入りのツンデレなんだよ!! 」

 

 飲み込もうとするベルゼブブギルディに向かって俺は心に溜め込んでいた全てを声に出してぶつける。

 するとそれに反応するかのようにさらに力が湧いてくる。

 今もなおエグゼキュートブレイカーを飲み込もうと苦しむベルゼブブギルディ目掛けて俺は飛び、拳を握りしめる。

 

「そんな俺のツン!! てめぇなんかに受け止めきれるもんかよぉぉぉぉ!!」

 

「ウオオオオオオオォォォォォォ……」

 

 全力の右ストレートがベルゼブブギルディの頬にクリーンヒット。

 その直後、ベルゼブブギルディの口内からエネルギーが少しずつ溢れ出始め、ついに決着の時が来た。

 耐え切れず溢れ出るエネルギーが呼び水となりベルゼブブギルディの膨れ上がった頬が青く光りはじめ、そして水風船が破裂するかの如くベルゼブブギルディの口内が大爆発。

 力尽きたベルゼブブギルディは元のバアルギルディの姿になり倒れるのであった。

 

 

 

 

 激戦を経たことで随分と荒れ果ててしまったチャペル内。

 ベルゼブブギルディが倒れバアルギルディの姿に戻るのを確認した俺はホッと一息つきながら変身を解除。随分と久しぶりになる男の姿に安心を覚えた。

 そんな俺にティアナが駆け寄って来る。

 

「ねぇ? やったの……?」

 

「いや、まだ野郎は生きてるよ」

 

「ちょ、ちょっと!! じゃあもう一回変身を……!!」

 

「いんや、その必要はねぇよ」

 

 もう奴に戦意はないし、起き上がったとして直ぐには襲い掛かってくることはないという一つの確証が俺にはあった。

 その理由としてバアルギルディは魔神の吐息(デモン・ブレス)を使わされていたかもしれないって言うのもあるんだが、それ以上に何となくコイツはそんな奴じゃないと信じている部分が大きい。コイツはエレメリアンだけど、どこか正々堂々とした良いやつだって俺は知っているんだ。

 

「こ……ここは? 一体何があったのだ?」

 

 そうこうしている内にバアルギルディは意識を取り戻した。

 どうやら何が起きていたのかがわかっていない

 

「起きたかよバアルギルディ」

 

「き、君は涼原和輝!? どうして君が!?」

 

「和輝でいいよ。てか何も覚えていないようだな」

 

 その後、バアルギルディが語ったのは、テイルバイオレットの正体が俺であると知ったあの日に基地で何者かに魔神の吐息(デモン・ブレス)を使わされたって事だった。

 よって今日の結婚式の事も何一つ覚えちゃいないらしい。

 全くはた迷惑な話だが、無事で良かったぜ。

 

「すまなかった。こんなにも君たちに迷惑をかけるだなんて……」

 

「別に気にしちゃいねぇよ。なぁティアナ?」

 

「私はそんな事ないけどね」

 

 あ、そうすか。

 それは俺からもすまなかったと謝らせてもらうぜ。

 

「それはそうと、何故私を助けたんだ? 私と君は敵同士、今さっきもトドメを刺すには丁度良かったはずだ」

 

「そ、それはだな……」

 

 やっべ。そう聞かれるとやっぱし何か恥ずかしい。

 俺はその事を悟られぬようにそっぽを向いた。

 

「お前とはちゃんと決着つけたいと思ったからだよ。お前は俺の宿命の好敵手(ライバル)。何だろ?」

 

「フッ……そうか。そういう事か」

 

「て、てめぇ!! 今笑ったな!! こんなこっ恥ずかしいこと言わせたのによぉ!!」

 

 私は何も言ってないだろうと笑いながら言い張るバアルギルディの胸倉を怒りのままに掴む。

 何だかこうしてみると敵というより友達のような感じがしてならない。

 そんな俺たちを見てティアナは呆れているようだった。

 その後、ようやく立ち上がったバアルギルディ。

 お別れの時だ。

 

「では今日の所はさよならだ。また今度、決着をつけようテイルバイオレット……いや、和輝」

 

「まぁ今度も俺が勝つけどな」

 

 それはどうかなと笑うバアルギルディ。

 そのまま背中に生えた白い翼を羽ばたかせようとした時、バアルギルディは何か言い残したようで俺に耳打ちで喋りに来た。

 

(ツンだけではなく時にはデレも見せてやれよ。ツンデレとはツンとデレのバランスが大切だからな)

 

 うるせぇ。わーってるよそんな事。

 口酸っぱく言ってくれるバアルギルディを軽く小突く。

 そんな俺の態度に去り際のバアルギルディは笑っていた。

 やっぱり何だか憎めない奴だぜ全く。

 

「さてと……なぁティアナ?」

 

「なに?」

 

 バアルギルディもいなくなり二人きりとなった半分廃墟と化したチャペル内。

 ムードもクソもへったくれもないそんな中で俺は勇気を振り絞る。

 

「お、俺と……つつつつつつつつ、付き合ってください!!」

 

 言った。 

 言ってしまった。

 遂に言ってしまったその言葉に実感が湧くと同時に胸が顔が熱く火照って来る。

 でも、何だか不思議な感じだ。とても晴れやかで気持ちがいい。

 

「……」

 

「……」

 

 そして訪れる数秒の沈黙。

 俺の心臓(ハート)がバクバクと音を立てる中、ティアナは口を開く。

 

「はい。こんな私でよければ」

 

 その一言を聞いた俺は声にならない叫びをあげる。

 もう何ていったらいいかわからない。

 ただこの瞬間を噛みしめたかった。

 

「ねぇ和輝? その……付き合うんだし……キス……しない?」

 

「キキキキキキキキキキキキキキキスゥ!?」

 

 壊れた時計のような反応をする俺に対してティアナは至って真剣……いや、真剣におかしかった。

 

ツインテール(ここ)にほら。いいでしょ?」

 

「ってそこかい!!」

 

 キスって普通、口と口でやるもんだよな。 

 なのにこのバカ、ツインテールに口づけしてほしいと言い出しやがった。

 呆れるよりも先にツッコミが飛んだ。

 

「いいでしょ~? いつかやって欲しかったの~」

 

「たっく、しょうがねぇなぁ……」

 

 呆れながら俺は優しくティアナのツインテールに口づけを行う。

 さっきまでは五月蠅くお願いしていたティアナも口づけの瞬間だけは静かに受け入れてくれていた。

 全く、赤く頬を染めやがって……このツインテール馬鹿……

 

「これでいいんだろ?」

 

「うん。じゃあお返し!!」

 

「へ?」

 

 その瞬間、俺の口はティアナの口と重なった。




ようやくここまでこれました。いや~長かった。
とまぁ、それは置いておいて原作の方が何やら凄いことになってますね。
原作の内容によっては次回以降の展開が少しかわるかもしれないですけど、頑張って完結させていきたいと思います。

次回更新は原作21巻を読み終わってからなので12月の頭もしくは11月の末を予定しています。
読んでくれている皆さんも原作を読んでお待ちください。

キャラクター紹介14

 テイルバイオレット(エモーショナルチェイン)
 身長:160cm
 体重:48g
 B80・W56・H80
 武器:風の刀ウインドセイバー(ナギナタモード)
 必殺技:エグゼキュートブレイカー、他

 ティアナのテイルブレスに眠るある人物のデータが、和輝とティアナの想いに反応して作り出された追加装甲、テイルアーマーB(ブルー)によって強化した姿。
 風と水、二つの力を操ることが出来、ブレイブチェインと比べて攻撃力が高い。
 力の元になったデータの影響か、この形態中はエレメリアンに対する殺意が高まり続ける為、長時間の変身は暴走のリスクがある。
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