俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回はちょっとした振り返り+おまけ回です。


第66話 新たなる戦いの序章

(涼原和輝。全く……つくづくデレを見せぬ男だ。)

 

 あの調子では素直にデレを見せるのはまだまだ当分先だろう。

 基地に戻るべく飛翔するバアルギルディはついさっきまで死闘を繰り広げていた相手を思い出しふと微笑む。

 

(それにしても不思議な気分だ。エレメリアンであるこの私が人間を友とするなんてな……)

 

 エレメリアン。

 それは人類に仇成す精神エネルギー生命体。

 有機物である人間が生きる為に他の動植物などの有機物を摂取するのに対して、エレメリアンは人間たちの精神エネルギーの結晶たる属性力(エレメーラ)を摂取する。

 それ故に本来、人間とエレメリアンは言葉を交わすことは出来ても共存する事など出来やしない。エレメリアンにとって人間は生きる為の餌も同然なのだ。人間とエレメリアンの共存を例えるなら人間が動物や植物と尊重し対等な立場で生きるなんていう有り得ない事なのだから。

 だが、バアルギルディは人間である和輝と友好を結び友とした。

 それは極めて異端な事であった。

 

(複雑な気持ちだ。テイルバイオレットとはいつかは決着をつけねばと思う反面もっと彼女……いや、彼と話してみたいと思う気持ちがせめぎ合う)

 

 揺れるバアルギルディはテイルバイオレットと出会ってからこれまで至る事を思い出す。

 4月にこの世界に初めて降り立った時、そこで出会った青紫のツインテール戦士テイルバイオレットに心奪われ恋をした事。そしてその後、何度も何度も戦い続けた日々。

 若干模造した記憶ではあるが、バアルギルディにとってはかけがえのない思い出だ。

 

「涼原和輝と本屋で出会ったあの日。あれはまさに運命の悪戯と言ってもいいな……」

 

 以前、テイルバイオレットの正体だとは知らずに和輝と仲良くなり喫茶店にて会話に花を咲かせたときの事を鮮明に思い出すバアルギルディ。

 自らの趣味嗜好について語り合うことが出来たその瞬間はバアルギルディにとっては今まで長い時を生きていて最も充実していたと言ってもいい。

 あの時のバアルギルディはアルティデビルのリーダーとしてではなく一人のオタクとして和輝とテイルバイオレット及びツンデレについて話し合えた。

 

「その後の展開には実に驚かされたものだ。まさかテイルバイオレットの正体が涼原和輝。君だったとはな」

 

 先に正体を知っていたが為に力を出し切れていないテイルバイオレットを下したバアルギルディが見たのは横たわる和輝の姿。

 当時のバアルギルディはテイルバイオレットの正体は女性であると認識した上で且つテイルバイオレットに恋をしているという状態であった。故にその時のバアルギルディは酷く動揺し、失恋したというその事実を噛みしめる度に涙を流し嗚咽を漏らした。

 その後、バアルギルディはベリアルギルディにその隙を突かれ暴走するように操られたという事もあってかあまりよく覚えていない。

 バアルギルディは覚えていないが実際はテイルバイオレットを洗脳し、そのまま結婚式を挙げようとするなどした。しかし、テイルバイオレットはティアナたちの手によって奪還され、その後そのショックで大暴れをしてしまい最後には復活したテイルバイオレットと激突した。

 一つの失恋から巻き起こった大事件。

 これも全て恋愛の恐ろしさを知らなかったが故の過ち。

 だがこれがあったからこそ今のバアルギルディはテイルバイオレットが男であるという事実を知っていても涙は流さないし震えもしない。

 むしろその逆で気持ちいいくらいの晴れやかな笑顔を浮かべている。

 それも偏に和輝たちのおかげであったと言える。

 

「失恋に狂う私を救ったのは涼原和輝、君だ。私は君という友に感謝しよう」

 

 心の中で改めて感謝を述べるバアルギルディは上空にてアルティデビル基地への転送ゲートを展開する。

 

「だがやはり、それとこれとは話は別だ。これからも私は君と戦おう」

 

 これからもアルティデビルのリーダーとしてテイルバイオレットと戦う事には変わりはない。

 だがそれは敵という関係ではなく好敵手(ライバル)という関係だ。

 その決意を胸に基地へと帰還するバアルギルディ。

 だがバアルギルディにはなさねばならぬ事が一つ残っていた。

 

「だがその前に待っていろベリアルギルディ。君には聞かねばならぬことが山ほどある」

 

 そう、それはバアルギルディの旧友にして今回のテイルバイオレット結婚未遂事件の黒幕と呼べる存在。ベリアルギルディを問い詰める事だ。

 バアルギルディは基地内部にあるベリアルギルディの部屋へ足を進めた。

 

 

 

 

 バアルギルディとの決戦を終え、念願のカップル同士となった俺とティアナ。

 夏休みはあと残り一か月。その間に何とかして関係性を深めていきたいと思う俺ではあったが、いきなり二人きりの夏休みを満喫しようぜなんて台詞は上級者すぎて口が裂けても言えず、結局いつも通りの日常に戻ってしまっていた。

 何というか歯がゆい気持ちだ。このままじゃOKしてくれたティアナに申し訳ない。

 でも、だからといって何をやればいいのかが全然わからない。

 カップル成立したてのこんな時、一体どういう事をすればいいのだろうか?

 このままじゃグレモリーギルディにやられた時みたいな大喧嘩をしてしまうかもしれない。

 誰か教えて欲しい。

 

 そんな不安を抱える俺は今現在、ティアナと共に新聞部の部室へと向かっている。

 特に理由はない。強いて言えば暇をつぶしに行くくらいか。

 そのままハプニングもなく学校へ辿り着いた俺はバイク置き場にバイクを停め、部室のある旧部室棟をティアナと共に目指す。

 その間、何か気の利いた会話の一つや二つ出来ればいいのだが、生憎俺にはそんな才能は欠片もなく。ただただ沈黙の時が流れてしまった。

 

「おっ、今日は夫婦揃って来たみて―だな」

 

 新聞部の扉を開けるなり出迎えてくれたのはソファで寝転がりながらお菓子をむさぼる匠だった。

 夏休みだっていうのに全く何してんだか。

 まぁ、そんな事より……

 

「匠、茶化すんじゃねぇよ。まだ付き始めたばっかりだっつーの!!」

 

「そ、そうよ!! まだこれからなんだから!!」

 

 ティアナ……お前のその言い方だと何だか要らぬ誤解を生みそうでならないんだが。頼むから部室(ここ)以外でそういう発言は止めてくれ。

 そんな俺たちの反応を見て面白そうにゲラゲラと笑い始める匠。

 俺は猛烈に殴りたい衝動に駆られるがここはジッと我慢を選択する。

 

「で、どうしてお前が居んだよ。バイトはどうした? 夏休みはバイト三昧って言ってたろうが」

 

 そんな俺の発言に指をチッチッチと揺らす匠。

 やっぱり後でぶん殴ってやる。

 その決意を胸に匠の言葉に耳を傾ける。

 

「現在バイト中なんだなーこれが」

 

「バイト中? つまり宅配か何かのバイトで今はサボっているってこと? にしては服が私服な気がするけど」

 

 ティアナの言う通り、服装がバイトのそれではなく、いつものみる匠の私服だ。いくら何でも私服で出来るバイトなんてそうそうないだろうし、それに俺たちが来た直後のあのだらけきった態度はとてもじゃないが仕事をしてるようには見えなかったが……。

 

「悠香が雇ったんだよ……バイト代を出す代わりに新聞部の手伝いをするって条件でね……」

 

 ますますわけがわからないと頭を悩ませていた時、部屋奥でパソコンを弄っている青葉さんが答えを言ってくれた。

 

「マジ?」

 

「マジもマジ。悠香先輩が言うには日給2000円。先着一名様限定のバイトだからお前にはもう席はねーけどな」

 

 まさか新聞部のバイトだとは思っても見なかった。

 これには俺もティアナも驚きを隠せない。

 ん? でもよ、今は休憩中か何かなのだろうかも知れねぇが、いくら何でもこんなにくつろいでいていいのだろうか? 

 どう見てもサボっているようにしか見えない。いくら日給2000円だからと言ってもこれじゃなぁ……

 

「匠君の仕事は掃除に洗濯、あと僕たちのご飯を作る事……特に夏は僕たち部室に泊まり込むことが多くなるからね……」

 

「それをたったの2000円? それって上手い事こき使われているだけなんじゃ……」

 

 ティアナ、それを言うんじゃねぇ。

 本人が幸せならそれでいいんだよ。

 それに匠はおつむはダメでも体力だけは自信のあるフィジカル馬鹿なんだからこの程度じゃこき使われているには入らねぇんだぜ。

 

「まーそゆわけで、これから夏休みの間はここに入り浸ることになったからよろしく」

 

「「はいはい」」

 

 こき使われていることに気が付いていない様子の匠に少し呆れながら俺たちは適当に相槌を打つ。

 正直、俺もティアナも別にここの部員って訳じゃないから匠がここに入り浸るようになったからと言って特に何かが変わるわけじゃない。

 てか元から(コイツ)、暇さえあればここに入り浸っていたような気がするけど今更か。

 

「ねぇ青葉さん、そう言えば悠香さんと華先生は?」

 

 悠香さんはどうせ取材だろと思うが、そういや華先生はどうしたのだろう。

 ティアナのふとした疑問を聞いてその存在を思い出す。

 夏休みのこんな昼間っから先生同士の会議だとは思えないし何か別の用でもあるのかもしれねぇ。

 

「華先生なら山奥に住んでる師匠の家に挨拶しに行ったらしいぜ。何でも華先生、学生時代はその師匠の下で古武術を習っていたみたいだからな——」

 

 

 

 

 俗世間から離れた山奥にあるとある竹林。

 夏だと言うに涼し気な風が吹くこの地に華は訪れていた。

 

「もうすぐかな……」

 

 バスを降りて山を登り地図と方位磁針を片手に竹林の中を歩くこと約数時間、ようやく目的地となる場所、竹林の中にぽっかり穴が空いたような開けた空間に存在している古風な武家屋敷に辿り着いた。

 

「お師匠さま~!! 山村華、ただ今参りました~!!」

 

 仙人の類でも住んでいるのかと錯覚させるその家には当たり前だがインターホンのような文明の利器は存在していない。一言連絡を入れるにも専用の伝書鳩を駆使するしかない程だ。

 門の前で軽く一礼を済ませた後、華はめい一杯の声量を出して自分がこの地に辿り着いた事を報告した。

 程なくして家の入口である引き戸がガラガラと音を立てると、奥から着流し姿の一人の男性が姿を現した。

 

「やーやー、よく来たね華くん。久しぶり元気だったかい?」

 

 その男性は御年65歳の身である老人でありながら、背筋は一ミリの曲線すらないレベルでしゃんとしており、溢れるオーラが古き良き大和男児のそれを思わせ、それに違わぬボディビルダー顔負けのゴツイ鋼の肉体。

 太い眉毛を筆頭としたその整った濃い顔はきっと昔はイケメンではなく男前ともてはやされた事だろう。

 そんな男性、名を大和幻王齋(やまと げんおうさい)。日本に現存する数少ない生きた侍の一人である。

 

「はい。私はとっても元気です。お師匠さまこそ元気そうですね」

 

「はっはっは、それは何よりだ」

 

 濃い見た目とは裏腹にとても温かみのある優しい声色で華を歓迎した大和は久しぶりの再会に喜んでは華の背中をバシバシと叩く。

 

 

 

 

 彼と華が出会ったのは約7年前、今現在和輝たちが通っている双神高等学校に華が入学して数週間くらい経ったある日の事。

 当時の華は数年前のアルティメギル襲来の際に負った心の傷が原因となって和輝たちが初めて出会った時以上に暗く沈んだ性格をしていた。

 

「ねぇ? 華は部活何にするか決めた?」

 

「いや、私は別に……」

 

 放課後の教室室内、友人たちがどの部活動に所属するかで盛り上がり続々と決めていく中、華は部活なんてどうでもいいと思っていた。

 自分のような奴がいても何も変えれないし変わらない。

 親の勧めで高校には入学したけど、中学時代以上に居場所が無い。

 ピリピリとした空気を感じ取った華は逃げるように荷物を纏めて教室から出ると顔を俯かせながら校門を目指す。

 

「山村さんって何か暗いよね……」

「そうそう、何か訳ありって感じ」

「中学でもあんなのだったんでしょ? ありゃ筋金入りの根暗ちゃんね」

 

 入学してからずっと、人とすれ違う度に聞こえてくる声、声、声。

 そのどれもが華の心に負った傷を抉る。

 耐え切れなくなった華の足は自然と屋上を目指していた。

 

「こんな私なんて……」

 

 屋上に辿り着いた華は鞄を入口に置くなり安全対策のフェンスをよじ登ろうとして手をかける。

 そんな時だった。

 

「おい、そこの君」

 

「は、はい!!」

 

 後ろから突然聞こえて来た声に驚いた華は振り返る。

 がしかし、そこには誰もおらず、空きっぱなしとなった入口のドアが揺れているだけである。

 あれ? と首を傾げる華。

 すると再び声が聞こえてくる。

 

「ここだよ。ここ」

 

 よく聞くとその声は入口のやや上から発せられている事がわかる。

 華はその声の主を探す為に視線を上にずらす。

 すると貯水タンクの上で座禅を組む和服姿の男と目が合った。

 

「初めましてだね。私は大和。大和幻王齋、この学校で国語を教えているしがない教師だよ。君は確か一年の……」

 

「……山村華です」

 

「そうか山村華、華くんか」

 

 一言一句噛みしめるように華の名前を復唱し、覚えようとする大和。

 そんな大和の姿を見た華は、何故そんな場所にいるのかという質問を忘れてしまう位その強靭なオーラに圧倒されていた。

 

「所で君は何をしようとしてたのかい?」

 

 そう尋ねられた華は黙り込むしかない。ここから飛び降りようだなんて口が裂けても言えるわけがないのだ。

 数十秒経っても黙り込む華を見た大和はその見た目からは想像もつかないような大らかな笑みを浮かべ口を開く。

 

「私はね、夕日を見に来たんだ。辛いとき悲しいときはいっつも貯水タンク(ここ)の上からみる夕日に励まされる。みんなにはこの上は危ないから乗るなとよく言われるんだがね」

 

 そう言うなりはっはっはと豪快にわらう大和。

 それをみた華は大和の言葉で気になる点を指摘する。

 

「先生も何か辛いことや苦しいことがあったんですか?」

 

「生きる事とは苦難の道。私だって辛い時だってある。だけどその度に私は好きな物を見る事で癒されるようにしている。君だってあるだろ? 好きな物や事が」

 

 そう言われた華が思い浮かべたのは髪型のツインテールであった。

 だがそれは華にとって心の傷の一つでもある。

 華はほろりと涙を流した。

 

「私にはそんな資格ありません……」

 

「そうか……」

 

 その日の大和はそれ以上何も言わなかった。

 華はそんな大和に対して何かを口にするわけでもなく、扉にもたれ掛かって一緒に沈みゆく夕日を眺めていた。

 そしてそれからの事だった。

 華は毎日屋上に足を運び夕日を眺め、大和はそれにこたえるかのように屋上で待っていた。

 そんな出会いから数週間が経ったある日。

 華は偶然、大和が武術部なる部活動(といっても部員数0の廃部寸前の部活)の顧問をしている事を知り、昔の事を全て忘れる為に入部し古武術に打ち込んでいくようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在、華は茶の間にて大和と学生時代の事を思い出しながら会話に花を咲かせていた。

 

「君のような骨がある生徒は最初で最後だったよ。本当に懐かしいねぇ~」

 

「ありがとうございます。でも私、お師匠さまに謝らなければいけない事がありまして……」

 

 神妙な顔つきのまま、華はどういった目的をもって武術部に入ったのか明かす。勿論だがアルティメギルや自身が昔魔法少女であった事はぼかしてだ。

 華は怒られる事を覚悟しながら大和の顔つきを伺う。

 だが、それを聞いた大和の顔は実に穏やかなものだった。

 

「大丈夫だよ華くん。そんな事は既に知っているよ」

 

「え?」

 

 大和は華が武術部に入部したいと言った日からその魂胆を見抜いていたのだ。

 驚く華に大和は優しく声をかける。

 

「確かに理由はどうあれ何かを忘れる為だけに武術は教わるものじゃない。それが例えどんなに辛い事だとしてもだ。でも、君は忘れなかった。それは辛いことの中にあった幸せだった事もちゃんと覚えていたからだ何だよ」

 

 そう、華は忘れたくても忘れられなかったのだ。

 それほどにティルと共にアルティメギルに立ち向かった毎日はかけがえのない物であったからだ。 

 許された安堵からか、それとも幼き日々を思い出したからなのか。

 華はボロボロと涙を流した。

 

「お師匠さま……。私、私……!!」

 

「はっはっは、本当に君は泣き虫だな」

 

 感極まり抱きつく華を優しく抱きしめる大和。

 そこには華が憧れ目標とした教師の姿があった。

 

「それにしても随分と似合っている髪型だね。ツインテール? だったかな?」

 

「はい!! 褒めていただいてありがとうございます!!」

 

 今日一番の喜びを華は表すのであった。

 

 

 

 

 詳細を知っている青葉さんに華先生の過去を聞いた俺とティアナはあっけにとられていた。

 何というか今のテイルブルームの戦い方が魔法少女時代と全然違っている理由がわかった気がする。

 

「ふーん。華先生にそんな事があったのね……」

 

「まぁ、人にはそれぞれの歴史があるっていうしな」

 

 と言っても俺にはまだこれといった歴史はない。これから作っていくものだ。

 でもだからといってこれからティアナと一緒にそんな歴史を作っていけるのだろうか?

 ちょっと不安だ。

 

「なぁ和輝? ちょっといいか?」

 

「ああ? 別に構わねぇがどうした?」

 

 話がひと段落しソファでゴロゴロする俺を匠が呼び止める。

 どうやらティアナに内緒で俺に話があるらしい。

 何だか少しばかり嫌な予感がするがまぁいいだろう。

 ティアナには少し匠と男だけの話をすると言っておいた。

 

「で、話ってなんだよ?」

 

 何でも余程内密な話らしく部室棟の屋上までやってきた俺と匠。

 匠の真剣な表情が俺を緊張させる。

 

「なぁ? お前らって付き合い始めたんだよな?」

 

「ま、まぁな。てか……どうせお前も見てたんだろ?」

 

 バアルギルディとの決戦があったあの時、俺の様子はティアナが隠し持っていたカメラを通して悠香さんと青葉さんに見られていたらしい。その事に気が付いた俺は顔から火が出る程に恥ずかしかった。

 まぁ、当の悠香さんたちは空気を読まずに乱入しようとした華先生を抑えることで必死だったらしく、俺たちが付き合い始めたって事くらいしか知らないらしいけど。

 

「最後のキスまでしっかりと見せてもらったぜー。いやー見ているこっちまで恥ずかしかったぜー」

 

「こっから突き落とすぞおい」

 

 少しトーンを低めに怒る俺を見ても全く動じていない匠。

 それくらい真面目な話をこれからするのだろう。

 

「で? 結局、何なんだよ」

 

「実はな……お前に聞きたいことがあるんだ」

 

「だからもったいぶらずに言いやがれっての」

 

「その……ティアちゃんとあんな事やそんな事をしたかしてないか……」

 

「は?」

 

 真夏だというのに空気が凍り付いた気がした。

 このバカ……真面目な話だと思っていたがもしかして……

 

「だから!! ティアちゃんとエッチな事をしたかしてないかって聞いてんだよ!!」

 

「そんな事だと思ったわ!! このドアホがぁ!!」

 

 堪忍袋の緒が切れた俺は匠を屋上から落とさんとする勢いで殴り飛ばす。

 運がいいのか、匠は屋上のフェンスにぶつかり落ちる事はなかった。

 

「だって気になるじゃん!! 女の子のまん――」

 

「それ以上言うんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺の第六感がそれ以上は絶対に言ってはいけないと警告を促したので匠を黙らせるべくもう一発ぶん殴る。

 理不尽かもしれないがこればかりは仕方ない。

 いくら俺たちが思春期真っ盛りな男子高校生だからと言っても言っていいことと悪いことがある。

 あと一歩遅かったらきっとピー音が炸裂するところだっただろう。

 

「うるせー!! 俺だって彼女がいればな!! お前なんかにこんな事聞くかっつーの!!」

 

「んなこと言ってるからだろこのド変態がぁ!!」

 

「ぎぃやぁぁぁぁっ!!」

 

 その日、学校に来ていたある生徒が屋上から紐なしバンジーを敢行する一人の男子生徒を目撃したのはまた別の話。

 

 

 

 

 無限に広がる平行世界。

 ここは和輝たちテイルバイオレットが活躍している世界ではない。ここは数ある平行世界の一つにあたるとある世界。

 この世界でも和輝たちの世界と同様に属性力をエレメリアンから守るツインテールの戦士が存在している。

 が、それはもう過去の物になりつつあった。

 

「じゃあ、いただくぜ……お前のツインテール」

 

 その言葉を最後にこの世界の守護者たるツインテール戦士の髪があっけなく解け、戦士の証たるそのツインテールが今散った。

 奪った張本人はその血のような赤いツインテールを翻した後、何処からともなく取り出したタブレット端末を操作しその画面を直視する。

 

「さてと……どうやらあっちの方じゃ勇気(ブレイブ)に続き、愛情(エモーショナル)も覚醒したみてぇだなぁ……」

 

 今言葉を発した者はこの世界のツインテール戦士ではなくその逆。ツインテールの戦士の前に突如として現れ強襲し、その圧倒的な力を持って瞬く間に倒してはツインテール属性を奪い取った邪悪な狩人。

 その狩人はつい数秒前までこの世界の守護者であったツインテールの戦士であった者が属性力を奪われ倒れている前でタブレット端末を流暢な手で操作する。

 その姿はツインテール戦士と戦っている際に狂ったように高笑いを決めていた時とはまるで違う理知的な雰囲気を纏っており酷く恐ろしさを感じさせる。

 

「まぁ、だからといって焦る必要はねぇか……計画に支障はねぇ。むしろ狩りがいが上がったってもんだぜ」

 

 計画。それが何を意味し、どんな目的なのかは定かではないが、決してそれがいい事ではないということだけは誰にだってわかる。

 狩人は口元をニヤつかせ邪悪な笑みを浮かべる。

 

「さぁて、次の世界はどうかなぁ? いると俺は嬉しいけどなぁ? ええ?」

 

 この世界にはもう用がないと言いたげなその狩人はタブレット端末を操作し、世界と世界を超える為の通り道である次元の穴を出現させる。

 

「待ってろ……今度こそ絶対奪ってやる……!! 究極のツインテールゥ!!」

 

 狂気じみた満面の笑みを浮かべた狩人は邪悪な高笑いを上げながら次元の穴に突入してまた別の世界へと旅立っていった。

 

 そしてその次の日。

 自宅のベットで昨日までツインテールの戦士だった少女が起き上がる。

 昨日、ツインテール属性こそ奪われたが命には別条はない。

 奪われた事自体は嘆くことではあるが、今は命が無事である事を深く安堵しよう。

 パジャマ姿のままよろめきながら歩き出す少女。

 そんな彼女の脳裏に昨日嫌と言うほど味わった恐怖が鮮明に蘇る。

 

 血のような赤いツインテールと同じように赤く染まった特撮ヒーローめいたメカニカルな装甲。戦いとツインテールに飢えているとしか言えないその狂暴な戦い方とは到底結びつかない可憐で幼き容姿。それが身の丈以上の大きな剣を乱暴に振るって何度も何度も苛烈な攻撃を仕掛けてくる。

 まるで歯が立たなかった。

 天と地ほどの圧倒的な力の差を感じた。

 思い返すだけでも震えが止まらない。

 過去にアルティメギルと戦った時以上の恐怖を少女は感じた。

 

「あれがテイル……レッド……」

 

 最後に少女はそう呟いた。




これを読んでくださった皆さんは原作21巻、読まれましたか?
とても面白かったですね。
まぁ、それは置いておいて本作のプロットについてはほとんど変更なしでいけそうです。
今後の展開次第では双愛がちょこっとだけ登場するかもしれませんが。
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