俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回、他作品ネタ多めです。


第67話 友達

「何処へ行ったというのだ……」

 

 アルティデビル基地に帰還するや否や、自室にも戻らずにベリアルギルディを探し続けていたバアルギルディであったが余りにもその姿を捉えることが出来ず思わず声を漏らす。

 研究職という立場上、部屋に籠りがちなベリアルギルディが自室含めて何処にもいない。それはバアルギルディにとって予想だにしていない事であった。

 

「あれ? バアルギルディじゃねぇか」

「何だ、生きてやがったのか」

「おいおいそんな訳……ってマジじゃん」

「何でもテイルバイオレットに愛想つかされてブン殴られたって話だぜ」

「ダッサ、俺なら恥ずかしくて表歩けねぇわ」

 

 すれ違うエレメリアンたちは口々に先日の結婚式での醜態を口にするもバアルギルディの耳に届かずにいる位にはベリアルギルディ探しに集中していた。

 

「何処だ!! 何処へ行ったというんだ!! まさか逃げたとでもいうのか……?」

 

 そんな馬鹿な、傲慢なプライドの塊のようなベリアルギルディが逃げる?

 そんな筈は決してないと今までの付き合いからわかっている筈のバアルギルディでさえ不安を覚える程に何処にもいない。

 

(このままベリアルギルディを放置すれば何が起きるかわからん。私は助かったから良かったものの、このままじゃ……)

 

 バアルギルディは思った。

 このままベリアルギルディの研究と言う名の人体実験を好き勝手させていたらいずれこのアルティデビルという組織は崩壊してしまうだろう。それだけは避けなければ……アルティデビルは第二のアルティメギルとなる必要があるのだから。

 

「おぉバアルギルディ殿、本当に生きて帰ってきたのですな。ご無事で何よりですじゃ」

 

「アガレスギルディ……!!」

 

 焦るバアルギルディの下へ盟友であるアガレスギルディが帰還の噂を聞きつけ駆け寄って来た。

 

「何がどうなっておりますのじゃ。バアルギルディ殿とテイルバイオレット殿との間であの日何が起きてしまったのですじゃ?」

 

「そんな事よりもだ。ベリアルギルディを見なかったか?」

 

「ベリアルギルディ殿……?」

 

 アガレスギルディからすれば先日の結婚式で何があったのかを聞きたくて聞きたくて仕方がない。だがしかし、今のバアルギルディからすればそんな事は至極どうでもいいことであり、今は一刻も早くベリアルギルディを見つけなければならない。

 頭に?を浮かばせるアガレスギルディに対してバアルギルディは要件を含めて手短に訳を話した。

 するとアガレスギルディはもしかしたらと一つの考えを口にする。

 

「夏コミに参加するべく出て行ったというのは考えられませぬか?」

 

「いや……流石にそれは……」

 

 あのベリアルギルディが夏コミに参加?

 今週が締め切りまでのラストウィークだということもありそれに間に合わす為に姿を隠して描いているというのならある意味筋は通る。だがベリアルギルディの性格上コミケに参加するなどとはそんなの天地がひっくり返っても有り得ない。

 アガレスギルディの考えを一蹴したバアルギルディは気を取り直し、ベリアルギルディ捜索を一から始めるべく踵を返した。

 

 

 

 

 8月4日。俺とティアナは昨日と同じく新聞部……ではなく別の場所に向かっていた。

 その場所というのは学校からバイクで約40分くらいの住宅街。

 近場にあったバイク用の駐車場にバイクを停めた後、俺とティアナはエレメリアン探知用のレーダーを見ながら動き出す。

 

「本当にこんな場所にエレメリアンがいるのかしら?」

 

「さぁな? でも、あの悠香さんが仕入れてきた情報だぜ。煙のない所に火は立たぬって言うだろ?」

 

「逆よ逆。それを言うなら火のない所に煙は立たぬ」

 

「マジかよはっず……」

 

 何気ない一言によって俺の国語力の無さが露わになった所ではあるがここで何故こうなったのかを説明しよう。

 今から一時間くらい前、俺とティアナは昨日と同じように新聞部に足を運んでいた。そのまま特にやることもなく昨日と同じように時間が流れていくのだろうと思っていた矢先、取材から帰って来た悠香さんが今現在俺たちがいる場所でエレメリアンらしき影を目撃したとの噂を拾ってきたんだ。

 当然、俺もティアナもそう聞いておいて黙っている訳もなく今こうして調査しに足を運んでいるって訳だ。

 ちなみに匠の奴も行きたいと言ったが悠香さんに「あなたは今からあたしと一緒に資料の整理」と言われて拘束されてしまった。ドンマイ匠。

 

「この辺りで怪物を見かけませんでしたか?」

 

「もし見かけていたのなら俺らに教えてくれ」

 

 そう言いながら周囲を探し回る俺とティアナ。

 途中、何度か主婦のおばさんたちに「面白いカップルね~」と冷やかされたが気にしない。俺とティアナはエレメリアンから皆を守る為に動いている訳だし、それに俺たちは本当にカップルなんだからな。

 そう言い聞かせながら調査を続ける事約一時間。

 俺たちはエレメリアンのエの字すら見つけることが出来ず困り果てていた。

 もしかして本当にただの噂さったのかも……

 うっすらとそう思いながらも俺とティアナは近場のコンビニのイートインコーナーで一息つくことにした。

 汗だくの体に冷房が効いた店内はまるで天国、それにこの喉を潤すアイスコーヒーのほろ苦さ。生き返るってもんだぜ

 

「ねぇ和輝? この後はどの辺り調べてみる?」

 

「そうだな……」

 

 人という生き物は一度休んでしまうと中々動き出すことが出来ないとはよく言うが、今まさに俺がそうなりかけていた。

 正直、これ以上炎天下の中で動き回りたくない。このまま冷房が効いた涼しい場所でゴロゴロしておきたい。

 エレメリアンから属性力を守るっていう大層な使命感は暑さにやられ完全に消えかかっていたそんな中、俺はこの辺りについてある事を思い出した。

 

「なぁティアナ……」

 

「何? 和輝」

 

「俺さ、ちょっと行ってみたい場所思いだしたんだ」

 

「行ってみたい場所?」

 

「いいから来いって。もしかしたらエレメリアンについて情報があるかもしれねぇからよぉ」

 

 そう言うなりティアナを引っ張ってコンビニから出た俺は記憶を頼りに住宅街を歩き回る。

 確かこの角を曲がって……

 一年前の自分自身の行動を必死に思い出しながら歩く事数十分。

 俺たちは住宅街の外れにある豪邸と呼ぶにふさわしい大きな一軒家の前にやってきた。

 

「何? ここ? ここが行きたい場所なの?」

 

「まぁ黙ってみてな」

 

 何が何だかわかっていないティアナと確かな自信に溢れる俺。

 俺は目の前の一軒家のインターホンを鳴らし家の中にいるであろうある人物にコンタクトを仕掛ける。

 

『はい、どなた様ですか?』

 

「忘れたのかよ。俺だ。涼原和輝だ」

 

 俺の名前を聞いてインターホン越しのその人物もようやく思い出したらしくちょっと待っててねの一言を残してインターホンが切れた。

 すると今度は何時ぞやの悠香さん家ばりのドタバタ音が中から聞こえてくる。

 そういや今は8月の頭だったし、アイツも忙しくて散らかっているのだろう。

 そう結論づける俺に対してティアナが声をかけてくる。

 

「ねぇ? 今の人誰?」

 

「今のはな――」

 

「久しぶり!! 元気だった!?」

 

 丁度いいタイミングでドアが開かれ、中からいかにもオタクといった感じの眼鏡姿が特徴の同い年の男が右腕に包帯を巻いた状態で勢いよく飛び出してきた。

 包帯なんかして骨折でもしたのか? 

 そう言いたいのは山々だが、まず俺はティアナにコイツが何者かを紹介する事にする。

 

「紹介するぜ。コイツは俺の中学の時の友達」

 

「初めまして自分、滝龍一(たき りゅういち)と言います。よろしく」

 

 約一年ぶりとなる友人との再会に俺は胸を躍らせた。

 

 

 

 

 ――自分は俗に言う陰キャオタクと呼ばれる人間だ。

 世間一般がスポーツやドラマで盛り上がる中、一人で寝ずに深夜アニメを鑑賞し、休みの日は外ではしゃぐ事無く家の中で絵を描いたりゲームを黙々とやり込む。外出はコミケなどの特大イベントがあればの例外中の例外。

 それらを小学生の頃からずっとしている筋金入りの自分に同年代の友達なんて出来る訳がない。いつも教室の隅っこに追いやられ他のクラスメイトから嘲笑される毎日。

 唯一とも言える楽しみはネットの中で繋がる自分よりも年上のオタクたちと交流している時くらいだけ。自分は絵が上手かった事もあってネット上ではちょっとした有名人であり楽しかった。

 そんな事もあってか小学生時代、自分は学校という物が大っ嫌いだった。

 それは中学に上がっても変わらないのだろうと半ば諦めていた。

 だけど自分は中学一年の夏のある日、彼らと出会った。

 

 

 その日、いつもと何ら変わらない毎日に少しうんざりとしていた自分は早く家に帰って好きな絵師さんたちと交流したいと思っていた。

 こんな場所に自分の居場所はない。

 その一心で帰路についていたんだけど、少し焦り過ぎて周りが見えなくなっていた。

 

「おい、何ぶつかってくれてんだよ。ああん?」

 

 丁度角を曲がったその時、隣町の不良グループのメンバー一人とぶつかってしまった。

 自分の家が学区内における端の方にあるのが運のつきだった。

 

「す、すいません……!!」

 

 慌てて謝る自分だったけど相手は隣町でも札付きの不良グループ。

 そんな相手に底辺オタクの謝罪なんて聞く耳も持ってくれる筈もなく、そのまま自分は人目のつかないような路地裏に連れ込まれてしまった。

 その後は何が起きたかなんて誰でもわかるだろう。

 自分一人に対して集団で殴る蹴るの暴力。底辺オタクの自分が対抗する術なんてまるでなく、サンドバックのようにボコられていく。

 そしてひとしきり殴り終えた彼らは今度は自分の鞄の中から金目の物を漁りだす。と言っても財布は何処かに落としたのか無くなっており、出てくるのは教科書やノートばっかりだ。次第にイライラを募らせる彼らは何となくノートをめくった。

 

「おいおい、こいつノートに落書きなんかしてますぜ」

「ホントだ。しかも女ばっかり描いてやがる。気持ちわりぃ~」

「ねぇ僕? ノートにこんな落書きしちゃ駄目って先生に習わなかったのかな~

のかな~?」

 

 ぎゃはぎゃはと下品な笑いを響かせる不良たちは絵が描かれているノートを破ったり絵の上から落書きをし始める。

 絵は自分にとって全てと言ってもいい。それを汚されるだなんて流石に黙ってられなかった。

 自分はそれだけはさせないさせてやるものかの精神で傷だらけの体に鞭を打って立ち上がりせめてもの抵抗を試みる。

 だけど一度ボコられている自分に何か勝ち目なんてない。

 

「や、やめろぉ!! やめてくれぇ!!」

 

「うるっせぇんだよ!! この根暗オタク君!! いいかこれは罰だ。俺たちに歯向かったっていうなぁ!!」

 

 鳩尾に蹴りを入れられ崩れ落ちる自分。

 崩れ落ちる中で自分の目には一人の不良が今日ネットのみんなに見せる筈だった渾身の力作に手をかけている所が映った。

 

(どうして……どうしてこんな事が出来るんだよ……自分が一体何をしたっていうんだよ……)

 

 全てを諦め絶望に沈みそうになるその瞬間だった。

 

「てめぇら!! そんな所で何してんだぁ? ええ!?」

 

 路地の入口から聞こえてきた声。

 自分を含め不良たちは一斉にその方向へ首を向ける。

 そこには自分と同い年くらいの二人の中学生男子が立っており、自分はその二人に見覚えがあった。

 

(同じクラスの涼原君と川本君?)

 

 涼原と川本と言えば自分の通う中学校において札付きの悪だと恐れられている不良の二人組であり自分と同じ一年A組のクラスメイト。

 そんな底辺オタクの自分とは縁がない二人がどうしてこんな所にいるのか?

 訳が分からなかったがその時の自分にはその二人が救世主のように見えた。

 

「何故てめぇらがここにいやがる!?」

 

 ざわつきだす不良グループ。

 彼らの中には上級生も何人か混じっているというのにこの慌てっぷり。

 それほどまでに涼原と川本の恐ろしさは知れ渡っていたんだ。

 

「んな事、てめぇらに関係あっかよ!! 行くぜ匠!!」

 

「おうよ!! お前ら全員ぶちのめしてやるぜー!!」

 

「や、野郎共!! 相手はたった二人だ!! ビビんじゃねぇ!!」

 

 その後に広がっていた光景は実に胸がすく気持ちいい物だった。

 涼原君と川本君の拳が、脚が、さっきまで自分を虐めていた不良たちをブッ飛ばしていく。ドラマやアニメに負けないその圧倒的な迫力は思わず絵にしたいと思ったほどだ。

 そして数分経った後、不良たちは泣きながら逃走を開始。

 さっきまで好き放題していた奴らがああも無様に逃げ帰る様はとてもスカッとする。

 

「おい、大丈夫かよ」

 

「あ、ど、どうも……」

 

 涼原君に不意に声をかけられ慌てる自分。

 涼原君も川本君も怪我一つしていない。余裕しゃくしゃくと言った感じだ。

 一言礼を聞いた二人はそのままこの場から去ろうとする。

 まるでドラマやアニメのヒーローのような行動に思わず息を呑みそうになるが、慌てて自分は我に帰って何故助けてくれたのかを問う。

 すると返って来た答えは意外な物だった。

 

「おっと忘れてたぜ、ほれ落とし物だ」

 

 渡されたのは何処かで落としたと思っていた財布だった。

 余りにも予想だにしていない光景を目の当たりにした自分の目は点になる。

 

「ちぇッ、思い出しやがって……」

 

「匠、ドンマイだったな。俺が思い出しちまってよぉ~」

 

 どうやら川本君の方は財布を届ける気はなかったらしいけど、これ以上特に何も言ってない所から悪い人じゃないんだと直ぐわかる。

 ゲラゲラと笑いあう二人は実に楽しそうだった。

 

「いいか勘違いすんなよ。次落としたら今度こそ貰っちまうからな」

 

 そう言い残して今度こそ去ろうとする涼原君と川本君。

 その瞬間、自分の体は自分でも驚くほど早く動いていた。

 

「あの……自分と……友達になってください!!」

 

 

 

 

「それからの中学生活はそれはもう楽しかったよ」

 

「三人で色々やったよな~。おい、あれとか覚えてるかよ。修学旅行で匠の奴が隣のクラスの奴に告りに行こうとするのを全力で援護したやつ」

 

「覚えてる覚えてる。見事撃沈したやつでしょ」

 

「匠にはすまねぇがあれは傑作だったよな」

 

「ふ~ん。色々あるのね」

 

 ティアナに俺たちが初めて出会った時の話を聞かせ、その流れで俺と滝は懐かしき中学時代の話に花を咲かせ大いに盛り上がった。少しばかりティアナを置き去りにしているような気がするがこればかりは仕方ない。

 このまま炎天下の中で立ち話も何だからと滝の勧めで家へと上がり込む。

 

「いや、懐っ……」

 

「お邪魔します……ッ!?」

 

 玄関の時点で俺の家やおやっさん家とは比べ物にならない程には豪華な家の内装に思わず懐かしさが蘇り声に出てしまった。

 まぁ、この家の豪華さには流石のティアナも驚いているし問題はない。

 

「なぁ滝。確か親父とお袋さんは海外出張でいないんだっけか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「てことはこんな家なのに一人暮らしなんだ……」

 

「寂しいって言えば噓になるけど、日本に残って良かったと思っているつもりだよ。今はいつも友達がいるしね」

 

 滝の両親は中学2年の時から息子一人を残して海外出張に出かけており、一年の内のたった数日しか帰ってこない。

 本人曰く俺や匠などの友達がいたからこそ日本に残ったんだとか。嬉しい話だぜ全く。

 一方でそれを聞いて少しシンパシーを感じている様子のティアナはただただ頷いていた。

 

「それにしてもさ、滝?」

 

「ん? な、何?」

 

 玄関を上がり、廊下を歩きだす滝を俺はずっと聞きたかった事がある為に呼びとめる。

 すると滝は一瞬ビクッといった素振りを見せた後振り返る。

 僅かだがその表情には何か焦りといった物が感じられた。

 

「いやその腕、どうしたのかなってよ。まさか誰かにやられでもしたのか?」

 

 滝の右腕に巻かれた包帯。それはどう見ても骨折している事を表している。

 もしかしたらそれが滝を虐める馬鹿野郎共のせい、もしくはエレメリアンのせいなのではと思うと気が気でなかった俺はつい中学時代の流れで聞いてしまった。

 滝は一瞬固まった後に笑いながら答えだす。

 

「あ、なんだそんな事か。違うよ涼原君。これはただの事故だよ」

 

「そうか、ならいいんだ。実はこの辺りで怪物が出たっていう噂もあるしもしかしたらなって思っただけさ」

 

 その言葉を聞いてギクリとわかりやすいリアクションを取った滝であったが、本人が言うには何でもないらしい。

 俺としては滝が大丈夫ならそれでいいが少し気にはなる。

 その後、俺とティアナは滝によって馬鹿でかいショーケースに囲まれているのが特徴的な畳十畳ほどの大きな部屋に案内された。

 

「ここは自分自慢のコレクションルーム。他の部屋はみんな散らかっているから今日はここでゆっくりしていってよ」

 

「おう、すまねぇ。サンキューな」

 

「じゃあ自分は少し自室の片付けに行くから」

 

 そう言い残し部屋を後にする滝。自室とは別にコレクションルームがあるのはお金持ちの証拠だ。

 それにしてもこの部屋。相変わらずオタクっ気の強い部屋だな。

 部屋側面のショーケース内に飾られたヒーローの変身グッズ、スーパーロボットの玩具、怪獣系モンスターの人形、美少女アニメのフィギュア。それらを見る度に懐かしさが蘇って来る。匠と一緒に初めてこの部屋に入った時はそれはもう男の子心を爆発させたもんだ。あー懐かしい。

 

「ねぇねぇ和輝、あれ見てよあれ」

 

「なんだ?」

 

 そんな中、ティアナはショーケースの一角にある怪獣の人形に興味を示したようだ。

 俺はショーケースの中を覗き込む。

 その人形を一言で例えるならそれは逆立ちした海老のバケモン。不細工で間抜けそうな顔が何とも言えない愛嬌を感じさせるそれはとてもじゃないが強そうに感じない。

 確かコイツ、おやっさん家のビデオでガキの頃見た気がする。

 

「これがどうしたんだよ?」

 

「いやね、何というか凄く気になって仕方ないというか……見えない力で引っ張られているような気がするの」

 

 まるで綺麗なツインテールをみている時みたいと付け加えるティアナ。

 もしかして何かティアナの記憶に関係あるのではと俺は思い、この怪獣の事を必死に思い出そうとするが名前一つ思い出せない。

 コイツ何だっけな~?

 すげぇ聞き覚えのある名前だった気がするんだが……

 

「それは古代怪獣ツインテールって言うんだよ」

 

「うおっビックリしたぁ!? 滝、お前いつの間に」

 

 突然、背後に現れた滝に声をかけられ驚く俺だったが一方で今までわかりそうでわからなかったコイツの名前がわかって頭の中がスッキリする。

 そういやいたな髪型のツインテールと同じ名前の怪獣。

 コイツをビデオで見たのも随分と昔の事だったのでわからなかったぜ。

 

「へぇ~この子もツインテールって言うんだ……」

 

「何でも一説によると髪型のツインテールの語源になったとか言うらしいよ」

 

「そう思うと何だが可愛く見えてきたんだけど」

 

 ど、どこが?

 名前がツインテールで髪型の方の語源になったかもしれないというだけで可愛く見えるティアナに俺は意味が分からない。

 それにしてもツインテールに引き寄せられるティアナってこっちのツインテールにも反応するんだな。

 

「ねぇ、それはそうとこれ見てよ。つい最近ようやくゲット出来たんだ」

 

 滝はそう言うなりショーケースを開けて見せつけて来たのは俺自身は見覚えのない美少女フィギュア。

 そのフィギュアはテイルギアを想起させるようなメカニカルな装飾を右腕と右足を覆い、髪の辺りから生えるように金属の羽のようなパーツが取り付けられている。よく見るとポニーテールの部分が銃のグリップを想わせる。

 

「これ何?」

 

「よく聞いてくれました。その名もDX(デラックス)モエモエズキューン。数年前から欲しいと思ってたんだよね~」

 

「「もえもえずきゅーん?」」

 

 喜びに浸る滝に対して俺は何がデラックスなのかが全くわからない。てかなんだその馬鹿らしい名前は。

 すると突然、滝の奴、モエモエズキューンを手でカチャカチャと弄り始めた。

 何が起こるんだと半分ワクワクした気持ちで見つめること数秒。滝の手に握られたモエモエズキューンは原形を止めていないレベルの完成度で美少女フィギュアからカッコいい銃へと姿を変身を遂げていた。

 

「な、何じゃそりゃ……」

 

「どうなってるのよそれ……」

 

 滝はその反応を見てこれまた嬉しそうにモエモエズキューンのボタンを押して甘ったるい如何にもな萌えサウンドを鳴り響かせる。

 

「凄いでしょ? びっくりしたでしょ?」

 

「そりゃあまぁな……」

 

 もう何が何だか。まるでエレメリアンを相手にしている気分だ。

 日本ばかりにエレメリアンが出現する理由がすこしわかった気がする。これがHENTAI国家JAPANの神髄……

 

「ん? ティアナどうしたんだ?」

 

 ふとティアナの様子が気になった。

 ティアナに奴、モエモエズキューンのサウンドを聞いた瞬間まるで凍り付いたかのように止まってしまっていたからだ。

 声をかけられたティアナは我に帰った様子で口を開く。

 

「いや、何でもないの。ちょっと聞き覚えのある声だったから」

 

「聞き覚えのある声?」

 

「いや、多分気のせいな気もするんだけどね……」

 

 まさかこんな状況で何か思い出した事でもあるのか?

 謎は深まるばかりだぜ。

 

「そう言えば今更だけど、和輝と滝君っていつ頃から疎遠になってたの?」

 

 このままだと暗い話になりかねないと判断したのかティアナは咄嗟に話題を変えた。

 

「滝、いつ頃だっけか? 高校は別だけど一年の時はまだ良くつるんでたよな」

 

「確かあれじゃない? 去年の夏コミに自分たち三人で参加してそれから……」

 

「そういやお前、あれからすっかり忙しくなっちまったんだよな」

 

 懐かしいな。確か去年、俺と匠と滝の三人で夏コミに参加したんだっけか。といってもほぼ滝に丸投げして終わった思い出しかなかったけど。

 そこまで思った直後、俺はあることに気が付いた。

 

「そういや、お前今年はどうすんだよ」

 

「勿論でるよ。今年はテイルバイオレットの本を書いているんだ」

 

 そうか。あれ? でもお前、その腕じゃ……

 ここにきて俺の普段使わない脳味噌がフル回転を始める。

 この家に来た時の変に焦っていた滝の反応、その腕でコミケに参加、エレメリアン出現の噂。

 憶測の域は出やしないがもしかしたらという事もある。

 

「滝、すまねぇ!!」

 

「ちょっと涼原君!?」

 

 俺は部屋を飛び出すと、滝の制止を振り切って記憶を頼りに滝の自室まで走った。

 そして辿り着いた滝の自室。

 そこには予想していた通りの光景が広がっていた。

 

「やっぱりな……」

 

 部屋の中ではミノタウロスを想起させる牛の特徴を持ったエレメリアンが滝の代わりに必死にペンを走らせている姿があった。

 

 

 

 

「これは一体どういう事だ? 滝?」

 

 自室の外で俺と向かい合うよう立つ滝。

 幸い、先程のエレメリアン、ザガンギルディは暴れる様子はないに等しい大人しい奴だったために、少し危険だが今はティアナに見張らせている。

 ちなみに俺たちはテイルバイオレットの知り合いだからと言って滝とザガンギルディには信じ込まさせた。自暴自棄になって危ない真似するようならいつだってテイルバイオレットを呼んでブッ飛ばしてもらうの脅しつきには流石に従わざる得ないってわけだ。

 

「お願いだ!! ザガン君を見逃してやってくれ!! 彼はとてもいい奴なんだ!!」

 

 開口一番にそう頼み込んできた滝とザガンギルディであったが、俺からすれば「はいそうですか。じゃあ今回は見逃してやる」と片付けられる問題ではない。

 確かにザガンギルディはとてもじゃないが暴れる様子はないし、雰囲気からしてもいい奴な気がしてならない。

 でももしかしたら滝を利用する為に演技の可能性もある。

 油断はできない。

 

「落ち着け、先ず奴とはいつ会ったんだ?」

 

「ザガン君と出会ったのは今から約数日前、自分が事故で骨折してどうしようかと途方に暮れているときだった――」

 

 滝曰くその日は雨だった。

 その時の滝は夏コミの締め切り前に骨折してしまった事もあってかとてもじゃないが落ち着いていられる精神状態ではなかったらしい。そんな中で偶然出会ったのが丁度その時にアルティデビルを脱走して途方に暮れていたザガンギルディ。出会った瞬間、滝はそんな居場所のないザガンギルディにある種のシンパシーを感じ何となく家に招いたとの事。

 少し触れ合い互いの事情を知った滝とザガンギルディ。

 ザガンギルディは絵が得意だったらしく、滝の描き終えていない同人誌の残りを手伝う事を条件に家に住まう事になったとらしい。

 

「――最初こそ交換条件の為だったけど、ザガン君って本当に優しい奴って知って今に至るんだ。今じゃザガン君は自分の新しい友達なんだよ」

 

 エレメリアンと友達。

 そう聞くと俺はバアルギルディの事を思い出す。

 アイツとの関係があるのに滝とザガンギルディを引き離していいものなのか?

 俺は迷いを払うべくザガンギルディに問いただすことにした。

 

「おい、ザガンギルディ」

 

 部屋に入り様子を確認。

 ティアナは無事でザガンギルディは熱心にペンを走らせていやがった。

 

「な、何だ? 拙者になにか用か?」

 

「お前は何が目的だ」

 

 ド直球な質問を受けたザガンギルディは臆することなく言葉を紡ぐ。

 

「アルティデビルを抜けた拙者に目的などない。強いて言えばもっと笑顔をみたい」

 

「笑顔?」

 

「ああ。拙者の属性は笑顔属性(スマイル)。これからは属性力を奪うのではなくもっと笑顔を作っていきたい。それが今の目的だ」

 

 はきはきとした口調で喋るそれからは嘘偽りの一つも感じない。

 アルティデビルを抜けた理由やら何やら色々と聞きたいことがまだ山積みではあるがとりあえずは信じてみようと思えた。

 

「わかった。今回は見逃してやるよ」

 

「和輝!? いいの!?」

 

「ただし条件付きだがな」

 

「「「条件?」」」

 

 驚くティアナを俺は制止し、滝とザガンギルディに条件を提示する。

 

「俺たち二人もコミケに参加させろ」




一度は入れたかったネタを入れてみましたけどどうでしょうか?
次回はオタクをテーマにした作品あるあるのコミケイベントを予定してます。
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