俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

7 / 164
第7話 とある休日

 日曜日、日本全国大半の学生、社会人達の休息の日。

 小学生はニチアサ(正式名称ニチアサキッズタイム)のテレビ番組を視聴するためにいつもならしない早起きを行い、中高生は部活動で朝練をするために早起きをするか平日ではできない二度寝を楽しんで昼過ぎにようやく起床するかがほとんどだろう。

 部活動に所属していない俺は後者だ。

 いつもの日曜日の過ごし方は午後2時頃まで寝て、起きたらスマホでニュースを確認しながら朝食兼昼食を取り、食べ終わり次第洗面所で身支度を整え、次にバイクの洗浄、そして夕食後は日頃から録画して溜まっているバラエティーや深夜アニメを視聴するのがお約束。

 しかし、今日はいつもと違った。

 

「ねみ~」

 

「ちょっと!! 事故を起こさないでよ!!」

 

 俺は現在、目的地に向かってバイクを走らせていた。ティアナを乗せて……

 

「もう11時よ。もしかしてあなた、この時間もまだ寝ているの?」

 

 当たり前だ。いつもの日曜日ならバリバリの睡眠時間。まだまだ眠り足りない。

 

「そうだよ。悪いかよ」

 

「悪いわよ。学生ならもっと有意義に休日を過ごしなさいよ」

 

「お前はオカンか! 別にいいだろうが!! 過ごし方なんて!!」

 

 他愛もない会話をしていたら目的地のスマホショップに到着した。

 そう今回、日曜の朝っぱらから行う用事は俺たち二人のスマホの新調。

 これからやって来るエレメリアンとの戦いにおいて連絡ツールは欲しい。というか俺はティアナが近くにいないと変身すら出来ないので、いざという時に連絡をとりあえるスマホなどの連絡ツールは必須だ。

 テイルブレスとエレメリアン探知用レーダーの二つしか元いた世界から持ってきていないティアナとアンドラスギルディ戦でスマホを失った俺。

 昨日の夜に再変身可能かを試した後、これからの作戦会議で連絡ツールは持つべきと俺たちは結論付けたのだ。

 

「大体、あんな夜遅くまで付き合わせるお前のせいだからな」

 

「もう一度変身できるかの確認は大事でしょ」

 

 俺たちはスマホショップに入って尚、言い争いを続けていた。

 

「いや、なんであんな夜遅くじゃないといけないんだって言っているんだよ!!」

 

「通行人にでも見られたら正体ばれるでしょ!! そんなこともわからないの!?」

 

 ゲッ!! ティアナの奴、痛いとこついてきやがった。確かに正体がばれるのは不味い。なにせ変身後は女になるんだ。ばれて世界中に公開されれば社会的に死ぬだろう。 

 

「ぐぬぬ……」

 

「和輝、あなたの負けよ」

 

勝ち誇ったティアナの顔が癪に障る。

 

「お客様?」

 

 女性の店員さんが俺たちの前に立っていることに今更気づいた。どうやら困っているようだけど

 

「店内では他のお客様の迷惑になるんで静かにお願いします」

 

「「あ」」

 

 俺たち二人は揃ってやらかしてしまったことに今更気づいた。

 

 

 

 

 アルティデビル、この世界を襲った侵略者エレメリアンの組織。自称アルティメギルを超える集団。アニメや特撮などに登場するような悪の組織其の物。彼らの中にはアルティメギルと違い、属性力を奪う為なら手段選ばない者もいるとのことである。

 そんなアルティデビルの基地の大ホールは今日も大騒ぎであった。

 

「これがこの世界のツインテールの戦士か……血が騒ぐ」

 

「テイルバイオレットか!! いいツインテールだなぁ!!」

 

「僕はテイルレッドたんのほうがよかったなぁ」

 

「クソッ、三つ編みじゃないのかよ……」

 

「この程度か……興味なしだ」

 

「これは美しい……ぜひとも私の作品の一部に……」

 

「てめえなんかに渡すか!! テイルバイオレットはこの俺のもんだ!!」

 

 バアルギルディが持ってきたテイルバイオレットの映像。モニターに映し出されたそれを見た感想は十人十色だった。戦士の血が騒ぐ者、その容姿に見惚れる者、自らの理想と違ったことで落胆する者、そもそも興味を持たぬ者。ただ共通して思ったことは一つ、バアルギルディの勘は正しかったということだ。この場に居る者でバアルギルディを馬鹿にしていた者たちの姿はもういない。

 それぞれ思い思いの感想を口にしていたのだが次第にヒートアップ、自分の属性に絡めたシチュエーションを語りだし始めた。

 

「こういう女の子にはチャイナドレスが一番似合う。それが世界の理」

 

「いいや、違うね。ゴスロリこそが志向だ」

 

「三つ編みにしないかなぁ」

 

「しつこいぞ、三つ編みが邪道であることにいつになったら気づくのだ?」

 

「清楚な雰囲気だからこそ、痴女に堕とすのが興奮するというものだ!!」

 

「黙れ!! 痴女好きの変態め!! テイルバイオレットは俺が守る!!」

 

 終いには敵であるはずの存在を守るなんて言うエレメリアンまで現れる始末だ。

 

「それにしてもバアルギルディ殿。何故、テイルバイオレットから属性力を奪わなかったのじゃ? あなたほどの戦士ならあの程度の戦士から属性力を奪うなんて造作もないじゃろ」

 

 アガレスギルディがふと疑問に思ったことを口に出す。他のエレメリアンもそれに続く。

 

「そうだぜバアルギルディの旦那。アガレスギルディのジジイの言う通りだ。あんたくらいの実力ならいちころだぜ」

 

 沈黙のまま悩んでいたバアルギルディは静かに口を開き喋りだした。

 

「一目惚れだ」

 

「「「「「一目惚れ?」」」」」

 

「そうだ……私、バアルギルディはテイルバイオレットに心奪われたのだ。一目でわかった。彼女こそが!! 私の探していた好敵手であり最愛の女性だということに!!」

 

 まさか……仮にも敵であるツインテールの戦士に恋をしてしまうなんて。それだけでなくそのまま手加減し戦い逃げ帰ってきたなんて。話を聞いた多くのエレメリアンは同じ感想だった。

 

「言っておくが彼女の強さは本物だ。それにこれは私の勘だが……彼女は我々が追っているツインテール属性の持ち主か、もしくはそれに近い人物かもしれん」

 

「なるほどじゃ。で、これからどうするつもりなんじゃ?」

 

「私は少し様子を見ておくつもりだ。彼女がより強くなり私の本気についてこれるほどに成長した時、私は彼女の属性力を奪いにいくことを誓おう」

 

 バアルギルディは悩みながらも最後は力強く宣言した。

 

「ですがよろしいですか? もし我々の誰かが先に奪ってしまっても……」

 

「私の勘だが……彼女は私以外に負けないだろう。特に今のまま油断している状態ではな……」

 

「てめえ!! 俺じゃテイルバイオレットに勝てないってのかぁ!!」

 

 グリフォンの翼と蛇の尾をもった黒い狼のような姿をしたエレメリアン、マルコシアスギルディがバアルギルディの発言に嚙みついた。

 マルコシアスギルディはアルティデビル随一の気性の荒さを持つことで有名なエレメリアンだ。そんな彼がバアルギルディの発言に噛みつかないわけがなかった。

 

「……マルコシアスギルディ。フッ、なら行くがいい。戦えばわかるだろう彼女の強さを」

 

「バアルギルディ!! 俺がテイルバイオレットを倒し属性力を奪う所を指をくわえてジッと見ているんだな!!」

 

 マルコシアスギルディは怒り狂いながら大ホールを出て行った。

 

「アガレスギルディ、恋とは難しいな。」

 

「バアルギルディ殿、参考になるかはわかりませんが、この私の失恋経験を語りましょうか?」

 

「遠慮しよう」

 

 即答だった。

 

 

 

 

「恥ずかしかったわ……」

 

「全くだ……」

 

 お互いに早くこの場から去りたくて、早々と用事を済ませスマホショップから出た。

 現在俺はバイクを押しながらティアナと歩いていた。

 

「和輝のせいよ……」

 

「ふざけんな、ティアナのせいだろ!!」

 

「なによ!! 和輝でしょ!!」

 

「んだと!? 絶対、ティアナだ!!」

 

 何度このやり取りをしただろうか。ティアナと出会ってまだ一週間も経っていないのに。

 ティアナに言われれば何度でもムキになって言い返してしまう。自分自身に原因があることもわかっているのに……

 

「もうやめましょ。きりがないわ。それよりも昼ご飯をどこで食べるか決めましょうよ」

 

「それもそうだな」

 

 今も言い出したのはお前だろ!! と言いたかったがグッとこらえる。実際、今日はいつもと比べ朝が早かったこともあり腹が減っている。

 

「アラームクロックも今日はランチをやってないしなぁ」

 

『アラームクロック』に定休日らしい定休日は存在していない。しかし、日曜日はランチタイム前の11時で閉店なので実質的な定休日だ。

 

「私はカレーが食べたいわ……和輝は?」

 

「俺は別になんでもいいからカレーで構わないけど……なんでカレーなんだ?」

 

「わからないけど無性に食べたくなったのよ」

 

「ふーん」

 

 喋っていると俺もカレーが無性に食べたくなってきた。どこでもいい早くカレーが食べたい。

 

「あそことかどう? なかなか美味しそうよ」

 

 目に入ったのは大手カレーライス専門のチェーン店だった。いつも、匠と共に行くような店ではない。新鮮な気分だった。

 店内に入ったが大手らしく綺麗で整った造りだ。個人店であるアラームクロックとは全然違う。店内にこもっているカレー特有の独特なスパイスの香りが鼻を刺激し、空いていた腹をより空かせてくる。

 

「いらっしゃいませ~二名様ですね。こちらをどうぞ」

 

 美人な店員さんに案内され俺たちは店の奥のテーブル席に腰掛ける。

 俺は王道のポークカレーを大盛で、ティアナはカツカレーを俺よりも多い超大盛で頼んだ。

 ティアナ側に運ばれてきたカレーの量をみてゾッとする。

 

「お前、そんなに食うのかよ……」

 

「いっぱい食べて悪いかしら?」

 

「いや、そんなに食べる割には胸が小さすぎないかな……ってな」

 

 和輝、殴られたいの?」

 

 少々冗談が過ぎたようだ。睨み付けるティアナの目が怖い。そんなに気にしてるかよ……

 

「冗談は置いておいて早く食べようぜ。冷めたら不味いしさ……」

 

「……そうね……」

 

 微妙な空気の中、俺たちはカレーを食べ始めたのだった。

 

 

 

 

「いや~美味かった。たまにはああいう店も悪くないな」

 

 満腹になったことで幸せな空気が店を出た俺たち二人を覆う。食べる前の微妙な空気は何処にも存在していなかった。

 

「そういやティアナ?」

 

 ふと気づいたことをティアナに質問することにした。

 なによ、と思っている様子のティアナを見ながら続ける。

 

「いや、今更だけどカレーって食い物知っていたんだなぁってさ」

 

「なによ、そんなこと当たり前じゃない」

 

 即答だった。

 

「そんなこととはなんだ。これは結構大事なことなんだよ」

 

「大事なこと?」

 

 ティアナの頭に?が浮かんでいるのがわかる。

 

「異世界出身って言っておいてなんでお前はカレーがわかるんだよ?ってことだ。それともカレーってのが元居た世界にもあったって言うのかよ」

 

「あったわよ。だって異世界って言ってもこの世界とそう変わらないもの。私、異世界の日本出身だし」

 

 物凄くあっさりと衝撃的な事実を聞かされた。衝撃的すぎて反応が遅れる。

 

「……いや異世界ってもっとこう……中世ヨーロッパとかそんななものだと思っていたんだが……ってか日本!? 日本があるのか!? 異世界にも!?」

 

 いつになく取り乱してしまった。それほどまでに衝撃的なカミングアウトだった。

 

「漫画やアニメの見すぎよ。それに……」

 

「それに?」

 

「カレーレベルの日本語すら知らないならどうやって生活するのよ。今まで散々日本語で喋ってきたでしょ」

 

 言われてみればそれもそうだ。日本語で喋ることに今まで何も違和感を抱いてなかった。ティアナが日本語を喋れなかったら俺たちはここにいない。それどころかエレメリアンの脅威にも気付かなかっただろう。

 

「私のいた日本はここよりも発達していた……ような気がする」

 

「テイルギアなんて作っちまう人がいるんだから、ここより発達しているのは当たり前じゃねぇの?」

 

「いや、そうじゃないのよ……もっとこう……」

 

 ティアナは顎に手を当てて考えるポーズをしながら記憶を思い出そうとしていた。

 なんなんだろうか、ティアナの頭に引っかかっているものは……

 

 

 

「おーい、和輝ーーー」

 

 ティアナに釣られ考え込みながら歩く俺の耳に、聞き覚えのある声が近くから聞こえてきた。

 学校に行けば必ず聞くことになる小学生時代から慣れ親しんだ幼馴染の声。

 もしかして……

 

「こんな日にこんな場所で珍しいじゃん。何してんだよ?」

 

 我が幼馴染、川本匠がそこにいた。

 カラオケ店の受付でよくみる制服、脇に置いてある段ボール箱、そこに収められている大量ポケットティッシュ、間違いない。匠は今カラオケのバイトでテッシュ配りをしている。

 

「スマホの買い替えの帰りだよ。お前こそサボってないで働け」

 

「うるせー。それより知っているか? 昨日の事件」

 

 昨日の事件と言えばエレメリアンが白昼堂々と襲撃をかけてきたことしか知らないが……他になにかあったのか? 今朝は早かったがニュースは見ていない。

 

「知らないみたいだな。いいか?耳の穴かっぽじってよく聞けよ。昨日自然公園にでたんだよ怪物とお前の夢にでてきたツインテールをしたスーパーヒロインが」

 

 それ俺です。変身して女になった俺なんですよ。

 

「実際に見た訳ではないけど話を聞く限りそれは格好よくて可愛かったらしいぜ。親父が言うには12年前にも、怪物とスーパーヒロインが現実に現れていたようなって話なんだよ。そこから考えると昨日のことは本当にあったんだろうよ」

 

「へーそーなのかー」

 

 本当のことは言えないので適当に驚いている風にみえるようにした。

 

「ちょっと和輝、誰なの。紹介して頂戴」

 

 ティアナのことをすっかり忘れていた。ついついいつも通り匠とのお喋りに熱をだしてしまった。

 

「あ、すまんすまん。こいつは――」

 

「こんの裏切者ぉぉぉぉぉ」

 

 突然、匠が叫び出したので俺とティアナはビクッとする。

 一体全体なんなんだよ……

 

「俺たち、童貞卒業は一緒だって誓ったよな!! 俺の知らない間にこんな可愛い子をゲットしやがって貴様ぁぁぁ」

 

 匠の奴、俺の首根っこを掴んで激しく振ってきやがった。

 苦しいし気持ち悪い。胃の中のカレーが逆流してきそうだった。

 

「何、勘違いしているのよあなた。私は和輝なんかと付き合っていないわよ」

 

 ティアナは平然とした様子で俺と付き合っていることを否定した。

 事実だけどここまで平然に言われると男心に傷がつく。

 

「本当か? 本当なんだな?」

 

 やっと解放してくれた……激しく振ってくれたおかげで少し痛い。

 

「当たり前だ。誰がティアナなんかと付き合うんだよ。こっちから願い下げだぜ」

 

 言ってしまった。でも今回、先に男心を傷つけたのはティアナのほうだ。俺に非はない……筈だ。

 

「はぁ!? それは私の台詞よ!! あなたみたいな変態、誰が好きになるもんですか」

 

「んだと!? お前なんてツインテールしか取り柄のない貧乳だろうが!!」

 

「なによ!!」

 

「なんだと!!」

 

 頭はわかっていても体は言うことを効かないとはこのことか……

 本日、何回目かもわからない喧嘩が勃発した。

 

「お前ら、やっぱし付き合ってんだろ!! 夫婦漫才なんかしやがって!!」

 

「「誰が夫婦だ(よ)!!」

 

 冷静に喋ることができる人物はこの場のどこにもいなかった。皆、通行人を無視し大声で叫びあっていた。傍から見れば微笑ましくもあるほど青春な状況であるが、当の本人である俺たちは誰一人そんなこと考えていない。

 

「「!」」

 

 その時、昨日と同じブザー音がティアナの服のポケットから周囲に響き渡った。

 つい今さっきまでつまらない喧嘩していたとは思えない顔つきに俺とティアナは切り替える。

 

「すぐ近くよ和輝!!」

 

「ああ!! 行くぞ!!」

 

「おい!! なんだよ!! おいってば!!」

 

 1人状況を吞み込めていない匠を置いて俺たちは現場に向かって走り出した。




キャラクター紹介2

 川本匠(かわもとたくみ)
 性別:男
 年齢:16歳
 誕生日:3月13日
 身長:167cm
 体重:55㎏

 和輝の小学校時代からの幼馴染でドルオタ。
 家が貧乏なのでバイトをすることが特別に許可されている。
 和輝と同じで年齢=彼女いない歴であり、人一倍童貞卒業に憧れている。

 橘正樹(たちばなまさき)
 性別:男
 年齢:46歳
 誕生日:7月18日
 身長:179㎝
 体重:96kg

 和輝の親代わり。和輝からはおやっさんと呼ばれている。
 喫茶店『アラームクロック』を営んでおり、ティアナを住み込みの従業員という名目で居候させている。
 料理がとても上手で評判がいい。
 アニメ、特撮好きのオタク。
 和輝にバイクを教え込んだのも彼である。
 
 

 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。