俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回は原作にないオリジナル設定が登場しますがご容赦ください。


第70話 無属性(ゼロ)

 アルティデビル基地内に存在するベリアルギルディの研究室。

 コミックマーケット通称コミケから帰還を果たしたベリアルギルディは部屋に着くなりため息をつきながら椅子に深く腰を下ろす。

 

「結局、見つからなかったか……」

 

 ベリアルギルディは和輝たちがいるこの世界に存在している究極のツインテールに匹敵するツインテール属性力の持ち主を探す為にコミケに参加したのである。

 だがしかし、結果は惨敗と言ってもいい。

 エレメリアン特有の超科学を用いて急遽コミケ参加を果たし、尚且つ自分と憧れのエレメリアンを元にした同人誌まで作ったというのにだ。

 ベリアルギルディの苛つきは時間が経つにつれ加速度的に上昇していく。

 

「あのカスエレメリアンが……!! 取るに足らん雑兵度の存在がこのオレ様の野望を妨害するなど……!!」

 

 カスエレメリアンとまで言い放つそれはコミケ会場で偶然出会ったアルティデビル脱走者であるザガンギルディの事だ。

 彼はベリアルギルディの目的の人物についての何か手がかりを持っていた。

 なのにも関わらずプライド高いベリアルギルディは一度歯向かわれたという事が気に入らず、つい魔神の吐息(デモン・ブレス)を投げつけてしまった。冷静になって考えればコミケ会場一帯を人質にとるだったりと他にも外道な戦術はいくらでもあったのにも関わらずだ。

 

「あのカスが……あのカスが悪いのだ!! 天才であるオレは悪くない!! 絶対にだ!!」

 

 その事を棚に上げて、ザガンギルディが悪いとふんぞり返るベリアルギルディ。

 一時の感情を優先した結果がこれなのにも関わらずこの態度をとれるのは流石はベリアルの名を持つエレメリアンなだけはある。アルティデビル一プライド高いエレメリアンは伊達じゃないのだ。

 

「全く……!! 他の奴らは何をグズグズしているんだ!! 実験動物風情がこのオレ様を待たせるなど言語道断なのだよ!!」

 

 イライラがピークに達し、遂にその矛先は基地内にいる他のエレメリアンにまで飛び火する。

 普段、ストレス解消として眺めている人魚のエレメリアンが写った写真も今のベリアルギルディには効果がないだろう。

 そんな風に怒れ続けるそんな時だった。

 部屋の入り口である黒い大きな扉がゴゴゴと重々しい音を鳴らしながら開き、外から一人のエレメリアンがお邪魔する。

 

「やっと帰ってきたのかベリアルギルディ」

 

 声の主は黒ずくめのベリアルギルディとは正反対の白ずくめのエレメリアンであるバアルギルディ。このアルティデビルを作り上げた功労者にしてベリアルギルディの親友の一人である。

 だというのにバアルギルディの放つオーラは、明らかにフレンドリーな友達に話しかけるそれとは異なる怒りを静かに燃やしたものであった。

 

「何のようだバアルギルディ。すまんがオレは今、イライラしていてな。帰ってくれ」

 

「そうか、それはすまなかった。が、そうはいかないな。私は君に問いたださなければならない事が山ほどある」

 

 普段なら日を改めようとするバアルギルディだが今日ばかりは頑として譲らない。

 ベリアルギルディには先日のテイルバイオレット結婚未遂事件の黒幕である容疑がかかっているのもあるが、それ以外にもザガンギルディに対して禁止にしたはずの魔神の吐息(デモン・ブレス)の無断使用、そもそも何故究極のツインテールに匹敵するツインテール属性の持ち主を探しているのかやテイルバイオレットはおろかツインテイルズをも倒すことが出来る謎の兵器とは何なのかなど聞かねばならぬことは多いのだ。

 

「答えろベリアルギルディ!!」

 

 いつにもなく言葉を荒げるバアルギルディの迫力は悪ガキを黙らせる教師の説教なんて比較にすらならない。

 この怒れるバアルギルディを基地内にいる他のエレメリアンが見れば、きっと二度と怒らせないようにしようとするに決まっている。

 

「……」

 

 なのにも関わらず口を閉ざしたままのベリアルギルディ。

 このまま時間が過ぎれば乗り越えられるとでも思っているのだろうか?

 そんな甘い考えなどと再び声を荒げようとするバアルギルディだったが、ベリアルギルディはふと口元を歪ませた後にわかったわかったと降参の手を上げた。

 

「話してくれる気になったのか?」

 

「ああ。丁度いい頃合いかと思ってな」

 

 それは良かった。やはり持つべきものは親友だなと怒りを鎮めるバアルギルディ。

 対してベリアルギルディは酷く冷静で落ち着いた物だった。

 さっきまで凄まじい怒りを表していた者とは到底思えないだろう。

 バアルギルディはその行動の真意を深くは知らなかった。

 

 

 

 

「さて……ではまずどこから話そうか」

 

 ベリアルギルディは科学者がよく来ているようなイメージを持つ白衣……ではなくそれを真っ黒に染めたような黒衣を上から身に纏い科学者モードに入る。

 そしてベリアルギルディは何から話すのかを決めたのか静かに語りだす。

 

「オレは過去、アルティメギルの科学班に所属していた……」

 

「ああ。それは知っている」

 

「五月蠅い。一々口出しするな。黙って聞け」

 

 いきなり始まった自分語りについツッコミを入れてしまったバアルギルディにベリアルギルディは口を出すなと忠告を入れる。

 ここで変に機嫌を悪くし話すのをやめてしまっては元も子もないので従う事にするバアルギルディ。

 

「今でこそアルティメギルは我が愛しきマイエンジェルと出会った思い出のある場所ではある。だがそれはあくまで結果にすぎんよ。オレがアルティメギルに身を置いたのはある事を調べる為だった」

 

「ある事?」

 

「ああ。それは我々エレメリアンの未来に関わる重要な事だ」

 

 バアルギルディからすればその愛しきマイエンジェルとやらにも興味が湧いたが今はそれ以上にそのある事というのが気になってしまう。

 そんなバアルギルディの反応に待ってましたとばかりに意気揚々と話し出すベリアルギルディ。

 

「ここで少し話を変えるが、お前は属性力が奪われ尽くされた世界が一体どうなってしまったかを知っているか?」

 

「属性力が奪い尽くされた世界?」

 

「ああそうだ。その昔にアルティメギルが初めて侵略した世界の顛末をな」

 

 そう言えばそんな事考えてもなかったと頭を捻らせるバアルギルディ。

 ただ息を吸って吐くかの如くエレメリアンは属性力を人間から奪い生きているのが常識。その果てに何が待っているのか? それは食べ尽くされ空っぽになった食糧庫が今後どう使われるのかと同じように食べてしまった側からすれば関係がない事柄だ。

 何なのかまるで知らなかったバアルギルディは何も答えることが出来なかった。

 

「知らないようだな?」

 

「ああ……」

 

 ふんッと小馬鹿にしたように鼻を鳴らすベリアルギルディ。

 他のエレメリアンならここでキレてしまい答えは聞けないがベリアルギルディを知り尽くしていると自負するバアルギルディはここはジッと我慢し下手にでる。

 

「仕方ない。答えを教えてやるとするか」

 

「頼む」

 

「簡単な話だ。その世界はたった数百年で滅び去り、知的生命体は全ていなくなった。つまりは絶滅したって訳だ」

 

「な、なんと……そんな事が」

 

 ハッと息を呑むバアルギルディ。

 今まで当たり前にやってきた行動の果てに待つのが知的生命体の絶滅だとはまるで思っても見なかったからだ。

 でもだからといって別に後悔はしない。

 エレメリアンからすれば知的生命体の絶滅は飽くまで悲しき結果でしかなく生きる為には仕方のない事なのだからだ。

 

「それで、その話は君がアルティメギルに身を置いたのと何が関係あるんだ? 全く話が見えてこないのだが……」

 

「フッ、やはり凡才であるお前では理解できないか。ならばこれはどうだ? もしその世界の破滅に属性力の消失以外にもう一つ別の理由が隠されているとしたら……」

 

「何だと? それは一体どういう事だ?」

 

 属性力の消失以外のもう一つの理由?

 属性力の消失が知的生命体の絶滅を生むと言ったのはベリアルギルディであるのにそれは一体どういうことなのだろうか。

 そもそもそれがベリアルギルディがアルティメギルに身を置いた理由と何が関係しているのかすらバアルギルディは何が何だかまるでわからない。

 

「さて……話は一旦ここまでにしてお前にはこのオレが旅の果てに手に入れたある物について見てもらうとしよう」

 

「ある物? それはもしかして君が言っていたツインテイルズを倒すことが出来る兵器の事か?」

 

「ああそうだ。といっても飽くまで使い方次第ではあるがなぁ」

 

 そう言うなりベリアルギルディは部屋の奥にある本棚の前に立つ。

 その本棚はベリアルギルディが様々な世界を巡る中で見つけて来たBL本で埋め尽くされており、とてもじゃないが手を出そうとは思わないだろう。実際ここ数日間この部屋を捜索したバアルギルディすらも手を出そうとしなかったのだ。ある意味それは最高の防犯グッズと言えよう。

 まさかそんな所にと驚愕するバアルギルディをよそにベリアルギルディが数冊のBL本を抜き取ると、本棚の中に何かが収められたぽっかりとした空間が露わになる。

 ベリアルギルディはそこから手のひらサイズの一つのガラスケースを取り出し持ってきた。

 

「こ、これは……?」

 

 ガラスケース内に収められていた物を例えるならそれは無色透明の属性玉と言った所か。

 不思議な点を挙げるとするならそれは、属性玉でありながら何の属性を表しているのかを示すエンブレムが存在していない事だ。

 エンブレムが無いと言えば魔神の吐息(デモン・ブレス)もそうなのだがあちらとは雰囲気がまるで違っており禍々しいオーラが何も感じない。そう、何も感じないのだ。まるでそこに何もないかの如く。

 

「これはオレ様の仮説だが、これこそが真の意味で知的生命体を絶滅に追い込んだ物だと思っている」

 

「な、何だと!? こんな小さなものがか!? ではこれは一体……」

 

「オレはこう呼んでいる。無属性(ゼロ)の属性玉とな」

 

「ゼ、無属性(ゼロ)だと……!?」

 

 ゼロ。

 それは正でも負でもない何もない事を意味する数字であり、本来ならばプラスの存在である属性力とは正反対である真反対に属する存在のはずである。

 それが属性玉として存在している。

 どういう事だ。まるで意味が分からない。

 属性力及び属性玉の根幹を揺るがすその異なる存在にバアルギルディは驚愕を隠せない。

 

「そうだ。これは無属性(ゼロ)。即ちこの属性玉には我々が属性力と呼び摂取しているエネルギーがまるで存在していない特殊な存在。本来ならば無いはずなのに有る。言わばこれは矛盾の塊其の物だ」

 

「何故、そんな物があるのだ……」

 

「詳しくはオレにもわからない。だが、風の噂を纏めたオレの考察ではこうなっている――」

 

 

 

 

 ベリアルギルディが語り始める風の噂を交えた考察。それはアルティメギルに最初に侵略したとある世界の出来事である。

 

 

 先ず始めに、その世界は和輝たちが住まうような世界とは違い小国程度の人口しかなかった小さな世界であった。

 小さいながらも人々は各々好きな属性を心に秘めながら日々生活する毎日。

 その毎日が幸福だったか否かについては間違いなく幸福と言えるだろう。

 だが、それはある日を境に崩れ去る事になる。

 

『この世界に住まう全ての人類に告ぐ!! 我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!!』

 

 突如、空に映し出される超巨大スクリーン。

 そこに映るのは空想上の物とばかり思われていた特撮の怪人のような異形。

 元々、全並行世界の中でも文明レベルがそこまで高いとはいえないこの世界の人々はただ狼狽えるしかない。

 

『我らは諸君らに危害を加えるつもりはない!! ただ、各々が持つ心の輝きを欲しているだけなのだ!! 抵抗は無駄である!! そして抵抗をしなければ、命は保証する!!』

 

 空に浮かぶスクリーンでの演説が終わったと同時に始まる侵略。

 おびただしい数の怪物たちが突如出現したと同時に呆気にとられる人々の属性力を奪っていく光景はまさに蹂躙と言ってもいい。

 抵抗の為に出撃した軍隊も何もかもが通じる相手ではなく人類はたった数日間で敗れ去り、この世界から属性力の全てが消えさった。

 その後、歴史上では華々しいデビュー戦を終えたアルティメギルは次の世界へと進行し、やがてより効率よくツインテール属性を集めるためにある作戦を展開していく事となる。

 

 

 がしかしこの時、とある噂がアルティメギルに所属する末端の戦士達の間で流れることになる。

 この世界から撤退を決め実行を起こす日、当時の首領の側近であるとあるエレメリアンがいなくなりその存在がなかったことにされたという物だ。

 公式では元から存在していないように歴史の闇に埋もれるという大事件について気になったベリアルギルディ。

 その噂を聞きつけ気になってそれを調べ始め、遂にはアルティメギルにも身を置くようになったベリアルギルディが最終的に立てた仮説はこうだ。

 もし、この世界にイレギュラーとも言える程の科学力を持った存在が存在し、尚且つその人物が特殊な属性力を用いてアルティメギルに最後に一矢に報いその余波がその世界の知的生命体の絶滅を招いていたとしたら。

 

 

 仮説を確かめるべくベリアルギルディがその世界にも降り立ち、その世界の月にて封印されているのを発見した属性玉。

 それこそが――

 

無属性(ゼロ)なのだよ」

 

 

 

 

「そんな危険な物なのか……コイツは」

 

「あくまで仮説にすぎんがな」

 

 無属性(ゼロ)の属性玉の恐るべき仮説を聞かされたバアルギルディ思わずその手をケースから離してしまう。

 本当かどうかはわからないが、ベリアルギルディの話し方及び仮説には一定の信頼がある。

 

「さて、また話を変えるが貴様は知っているか? ツインテイルズ及びテイルバイオレットたちがどうやって無敵の力を手にしているのかの理屈が?」

 

「それは……一体どういう意味だ?」

 

 バアルギルディに対して不意を突くように尋ねるベリアルギルディ。

 バアルギルディはそれが無属性(ゼロ)の属性玉と何が関係あるのかと尋ね返す。

 それを聞いたベリアルギルディはやれやれと呆れた感じで話始めた。

 

「属性力の共鳴だよ。やつらは自身の持つ強力なツインテール属性と変身デバイス内に組み込んだ他の属性力を共鳴させる事で無限にも等しい強大な戦闘力を得ているのだよ」

 

「そうだったのか……!!」

 

 もう何度目の驚愕かわからないバアルギルディ。

 ここに来てからは驚かされてばかりだ。

 だがそれはその後紡がれるベリアルギルディの言葉によって更新されることになる。

 

「ではここで質問だ。もしこの時、究極のツインテールと同じレベルのツインテール属性の持ち主がこの無属性(ゼロ)の属性力と共鳴ではなく反発させたら一体どうなると思う?」

 

 邪悪な笑みを浮かべながらさも平然と言い放ったベリアルギルディ。

 その話を聞いてバアルギルディは思った。

 世界を破滅に追い込んだ可能性すらもある無属性(ゼロ)を共鳴でなく反発させるなど明らかに危険だ。それも最強と謳われる究極のツインテールに対して行うなどどうかしている。

 

「危険だ!! やめるんだベリアルギルディ!!」

 

「フッ、言うと思ったよ。だが生憎とまるつもりはないな。ところで話は変わるが次はこれも見てくれ。オレが無属性(ゼロ)を見つけた世界で発見した我が愛しきマイエンジェルの残したデータだ」

 

 バアルギルディはおろかベリアルギルディですら降り立つまで知らなかった事だが、無属性(ゼロ)の属性玉が封印されていた世界の地球は惑星丸ごとそのマイエンジェルとやらの基地、通称ビエルプラネットと呼ばれる物と化していた。

 ベリアルギルディが辿り着いた頃には既に廃墟と化していたそんな世界に残されたデータそれは、魔神の吐息(デモン・ブレス)の前身である首領の吐息(ゴッド・ブレス)ともう一つ……

 

「こ、これは……テイルバイオレットたちが身に着けている装甲か……?」

 

「ああ。その名もテイルギア。我が愛しきマイエンジェルが最後に研究した物の一つだ」

 

 バアルギルディの目に映っているデータにはテイルバイオレットたちが戦闘中に身に着けている装甲、即ちテイルギアについての物だった。

 これが出てきたという事はつまり……

 

「まさかこれを組み込むと言うのか? テイルギアに無属性(ゼロ)を」

 

「ようやく正解だ。そしてそのテイルギアを纏う者こそがオレが探し求める究極のツインテールに匹敵する属性力の持ち主ってわけなのだよ」

 

 本来ならばツインテール属性をコアとするテイルギアをツインテール属性の代わりに無属性(ゼロ)を使う。それだけでもかなり危険な筈なのにも関わらず使用者に究極のツインテールを要求するなど……

 危険性など何も考えていない事がわかるその狂気の発想にただただ恐れるしかない。

 一体何がここまでベリアルギルディを突き動かすのか?

 バアルギルディはそれを問う。

 するとベリアルギルディは狂った笑いを浮かべながら答え始めた。

 

「復讐だよ。復讐」

 

「復讐……だと?」

 

「ああそうさ。オレはなぁ。ツインテイルズによって愛しきマイエンジェルを失った時思ったのさ。いずれ貴様らと同じツインテール属性の力を持って復讐をしてやるってな」

 

 それからベリアルギルディは意気揚々と語りだす。

 アルティデビルをバアルギルディをそそのかして作らせた上でこの世界にて究極のツインテールに匹敵する人物を探させるように仕向けさせたのは、全てツインテイルズに対する大いなる復讐計画の一部である事を。

 魔神の吐息(デモン・ブレス)はあくまで他者をコントロールする術を研究していたのに過ぎないのだ。

 

「君ははなから同胞たちの未来を考えるつもりはなかったのか……!! アルティデビルは全て君の実験場にしか過ぎないと言うのか……!!」

 

「ああ、そうさ」

 

 そして全ての復讐を完遂した暁には全エレメリアンの上に立つことで全てを救ってやると言い放つベリアルギルディ。

 傲慢なんて言葉で表すのがおこがましいくらいのその態度にバアルギルディは思わず怒りを滲ませる。

 私はこんな奴を今まで親友だと思っていたのか?

 私たちはこんな奴に利用されていたのか?

 挙げはじめればキリがない。それだけベリアルギルディの今までだましてきた罪は重いのだ。

 

「悪いがここで君の野望は終わりだ。今からアルティデビルを君と手から解放する!!」

 

 臨戦態勢をとったバアルギルディはベリアルギルディを倒すべく動き出す。

 だがベリアルギルディはまるでその行動を見透かしていたかのようにある物を取り出した。

 

「言ったろ、丁度いい頃合いだってな」

 

 ベリアルギルディが取り出したのは黒一色に染まった眼鏡型のデバイス。

 丁度さっき見せてもらったテイルギアのデータ内にあったそのデバイスが一体何をもたらすのかバアルギルディは全くわからないがここで退くつもりはない。

 バアルギルディは白き二本の短剣をベリアルギルディの胴体に向かって振り下ろす。

 がしかし……

 

眼鏡よりの無限混沌(カオシックインフィニット)

 

 眼鏡型のデバイスが光ったと同時に出現した脱出不可能な闇がバアルギルディを呑み込んでいく。

 これは何だ。一体私はどうなるのだ!?

 今更になって狼狽え始めるバアルギルディだがもう遅かった。

 

「な、なんなんだベリアルギルディ!?」

 

「だから言ったろ。オレにはマイエンジェルが残してくれたテイルギアの全データがあるのだと。これはテイルブラックのギアを再現した技さ」

 

「テイルブラックの技だと!? そ、そんな……馬鹿な!?」

 

「お前の役目は終わったんだよ。さっさと属性力の深淵に堕ちるがいい」

 

 必死にもがき脱出を試みるバアルギルディ。

 しかし、テイルブラックの必殺技である眼鏡よりの無限混沌(カオシックインフィニット)はかのフェニックスギルディでさえも一度は吞み込まれてしまった代物。フェニックスギルディと違い真の最終闘体に達することが出来ていないバアルギルディには脱出の術はない。

 

「うおおぉぉ……」

 

 数分の抵抗虚しくバアルギルディは属性力の闇の中に消えて行ってしまった。

 

「さてと、こうなってしまったからには面倒だが動かなくちゃあならないな」

 

 

 

 

 数日後、世間一般では夏休み最後の一週間に差し掛かった最初の日のアルティデビル基地の大ホール。

 ここでは今日も今日とてクジ引きにより出撃するエレメリアンの選定を行った後、各々気の合う奴と他愛もない世間話及び自らの属性力に関する話を口にしあう。

 

「俺としてはテイルバイオレットはこうあるべきだと思うんだよ」

 

「いいや、テイルバイオレットはこうあるべきだ」

 

 時には自前で描いた絵を見せながら熱く語り合うその姿はまさにエレメリアンと言ってもいい。

 そんないつもの日々が特に何事もなく過ぎていく。

 そのはずだった。

 

「大変じゃ大変じゃ!! バアルギルディ殿が!!」

 

 バアルギルディを慕っているアガレスギルディがホール内に入って来るなり、大声で騒ぎ立て始めた。どうやらバアルギルディに何かあったらしい。

 当初こそは特に気にも留めずに話に熱中する他のエレメリアンたちであったが、いつまでも騒ぐのやめようとしないアガレスギルディに次第に怒りを募らせていき、遂に何人かのエレメリアンが怒鳴り立てた。

 うるせぇな!! 一体何が大変なんだよ!!

 するとアガレスギルディはこう答える。

 

「いないのじゃ!! バアルギルディ殿が何処にも!!」

 

 世界の終わりかとも思われる程に慌てるアガレスギルディ。

 だが、大ホール内にいる大半のエレメリアンの反応はだからどうしたんだと言った物であった。 

 

「どーせ、アイツの事だからどっかにフラッと出かけてんじゃねぇのかよ」

 

「もしかしたらテイルバイオレットに振られたショックで武者修行に言ったのかも」

 

「何にせよ、直ぐにまた帰って来るだろ」

 

「そうだぜ。そんな事で一々騒ぐんじゃねぇよアガレスギルディ!!」

 

 バアルギルディはアルティデビルのリーダー格であるエレメリアンであるが故に他の一般エレメリアンと違って基地外への自由な外出を許されている。

 その為、バアルギルディがいないからと言って悲観する奴は誰もいないのだ。

 だが、その後のアガレスギルディの話を聞いてみると、どうやらバアルギルディは毎日基地での皆の様子を連絡ツールを通じて聞いてくるらしいがそれもないらしい。

 もしかしたら何かあったのか?

 口ではぶっきらぼうに振舞うエレメリアンたちであったが、徐々に心の中ではバアルギルディの事が心配になって不安になって来る。ここにいるエレメリアンは皆、バアルギルディがスカウトした者達であるが故に大半がツンデレ的に要素を持っている為、これはある意味当然の事なのだ。

 

「おいおいおいおい、随分と辛気臭い雰囲気してるじゃあないか」

 

 暗雲が立ち込め始めるそんな中だった。

 大ホールの入口である扉が開き、外からベリアルギルディが中に入って来る。

 そしてベリアルギルディは皆に話があると言って大ホール中央にある本来はバアルギルディが座るべき特等席に座るとそのまま話始める。

 

「さてと……突然だが聞いてくれ諸君!! 我が友人にして我らアルティデビルのリーダー、バアルギルディが先日、テイルバイオレットに討たれた!!」

 

 瞬間、大ホール内に激震が走る。

 あのバアルギルディがテイルバイオレットに討たれた!? 

 そんな!? いつの間に!? 

 結婚式からも帰還したあのバアルギルディがか!?

 まるで理解が追いつかずパニックになり始める大ホール内。それだけバアルギルディの存在は大きかった。

 

「じゃあこれからどうすんだよ!?」

 

 遂には悲観に暮れて嘆く者まで現れる始末。

 だがその言葉に待ってましたと言わんばかりのエレメリアンが一人いた。

 

「だが諸君!! 安心してくれ!! これからのこのアルティデビルは真の天才たるこのベリアルギルディが引っ張っていこうと思う!!」

 

 当然と言えば当然。新たなリーダーに立候補したのはベリアルギルディだ。

 いつもの調子ならどさくさに紛れて何を言っているんだと反論する者もいただろうが、あまりのパニック故に全然出てこない。普段は虎視眈々とリーダーの座を狙っている者も皆、本心ではバアルギルディを認めていたからに他ならない。

 するとその様子を見たベリアルギルディは好機とばかりに一気にまくしたてる。

 

「いいか!! バアルギルディは我らエレメリアンの未来の為に勇敢に戦いそして散った!! ならば我らはどうする? このまま何もしないでいいのか? いや違う!! 我らアルティデビルには全エレメリアンの希望の光、新たなアルティメギルとなる必要があるのだぞ!!」

 

 その圧巻の演説はバアルギルディという存在を失った心の穴にすっぽりと収まっていく。

 その言葉の裏も知らずにここにいるエレメリアンたちは皆、ベリアルギルディの言葉に耳を傾け始める。

 

「亡きバアルギルディの為!! これからのエレメリアンの未来の為!! 我がベリアルギルディはこの世界で究極のツインテールに匹敵する強大なツインテール属性の持ち主を必ず手中に収める!! その為にもオレには諸君らの存在が必要なのだ!! だからこれからはこのオレについていってくれ!!」

 

 最後に大きく頭を下げたベリアルギルディ。

 中にはあのプライド高いベリアルギルディが頭を下げるだと? と勘ぐる者もいたにはいたのだが、大半のエレメリアンは賛同して拍手を送る。

 拍手を受けるベリアルギルディの表情が邪悪に歪んだのは誰も知らない。




無属性(ゼロ)については当初はもっとふざけた属性にしようかなとも思っていたんですけど、中二臭さ全開のこっちの方が作風的にはいいかなと思ってこうなりました。
以下により詳しい設定の解説を載せますが飽くまで全てベリアルギルディの仮説の域を出ないという事には注意です。


無属性(ゼロ)

 属性力の無くなった世界で人工的に誕生した矛盾の塊にして全属性力の反対に位置する属性力。
 アルティメギルに最初に侵略されたとある世界を真に滅亡に追い込んだ存在且つ、これを最強のツインテール属性と共鳴ではなく反発させることでツインテイルズをも凌駕する力が手に入れられるとベリアルギルディは考えている。
 月に封印したのは恐らくこれを使用した科学者もしくは最後に戦った当時のアルティメギル首領の側近である様子。
 アルティメギル首領がその存在を知っていたのかそれとも知らなかったのかは全て歴史の闇に埋もれていて今はもう誰も知らない。



ではまた来年もよろしくお願いいたします。
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