俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
――幽霊。
それは死者の魂が何らかの理由で現世にとどまり続け成仏出来なくなり、霊という形となって現れる事を指すらしい。
何となく予想していたとはいえ、俺自身はオカルトなんて全く興味がなくそれこそ幽霊なんてこれぽっちも信じちゃいない派の人間であったが為、まさかまさか本当に本物の幽霊がティアナの身体を借りる形で現れるだなんて思ってもみなかった。
「ゆゆゆ……幽霊!?」
オカルト嫌いの華先生は幽霊と聞いて即座に後退り始め、涙目になりながらよくわかってもない念仏を唱えだす。
なんまいだ~なんまいだ~とかのアレである。
「お願いします。命だけはお助けください〜」
「別にあれだよ!? 恨み殺すとかそんな気はさらさらないからね!?」
「という事は気分次第で私たちの事を……!!」
「だから違うって!!」
マジモードに突入してしまった華先生の誤解を解こうとする麗だが、涙をながしながら怯え切っている華先生にはまるで効果がない。
傍から見ると教え子に怯えながら懇願する教師と言った訳の分からない物になっている。
正直、このままこの馬鹿馬鹿しいやり取りを眺めていてもいいが、このままでは何も話が進まないので華先生には黙っていてもらう事にしよう。
「すまねぇが華先生は黙っててくれ。これ以上騒ぐならあんたの家におやっさんのオカルトグッズ全部送りますよ」
「わ、わかりました……」
でもだってと反論しそうになる華先生であったが、俺の脅しを聞いた途端しゅんと黙り込んだ。
これでようやく話を進められるぜ。
まぁ、それにしても本当に華先生はオカルトに弱いんだな。
「んで、麗。お前の目的は何だ? 何が目的でティアナの身体に憑りついた?」
声色を低くし脅すように尋ねる。
別にこれといった敵意はないんだが、ティアナの身体が乗っ取られている関係上、自然にこうなってしまう。
「え~と……楽しそうだったから……かな?」
「それだけか? それ以外にもあんだろ」
「そ、それは……」
答えている時、麗の目が泳いでいた事を見逃す俺ではない。
麗はまだ何か別の目的を隠していやがるぜ。
俺は再度、脅すように尋ねた。
「最初は本当にただいつも通りの遊び半分だったの。でもこの身体で和輝くんと一緒にいる度にこの身体ならあたしも成仏できるかな……って思っちゃって……」
「本当か? 嘘じゃねぇよな?」
「ほんとほんと!! 閻魔様に誓うくらい本当!!」
首を縦にふる麗を見る限り、嘘を言っているように見えなかった。
これはどうやら本当らしい。
となるとコイツは今、成仏する為にティアナの身体に入って遊んでいるって事か。
話を聞いておいて何だが、はてさてどうしたものか。
このままティアナの身体から直ぐに出ていけと言うのは簡単だが、それはそれで後味が悪い。だからといってこのままずっとティアナの身体にいられると今度またグシオンギルディが出てきた時に俺が戦う事が出来ない。グシオンギルディは強敵だ。俺じゃないと対抗が出来ねぇ。
「なぁ、お前はどうすれば成仏できるんだ?」
悩み抜いた俺はおもむろにそう尋ねてみた。
すると麗は笑顔になりこう言った。
「沢山遊べば成仏できると思う!!」
そうか……ならこれしかないようだな。
何となくわかっていたとはいえ麗をどうすればいいかは決まった。
「よし、なら今日は目一杯遊んで最高の一日にしようじゃねぇか。そうすれば成仏できんだろ?」
「うん!!」
元気よく答える麗だが、俺にはまだ何か裏があるかのように見えてしまう。
だが、ティアナの身体でありながら本人とはまるで違う子供っぽい雰囲気に俺は魅せられてしまう。
中身は違うがこんな雰囲気のティアナも最高だぜ。
「さてと、そうと決まれば華先生?」
「え? 何か私に用?」
もう何もないと思っていたのか、突然話しかけられた華先生は困惑するしかない。
俺はそんな華先生に財布を広げてみせた。
「デート代、出してくれねぇかな? その、これも全部エレメリアン撃破に繋がると思って……」
言葉を失う華先生。だがこればかりは仕方ない。
かくして俺は華先生から渡された金を手に、麗と共に町へ繰り出すのであった。
◇
華先生と別れた俺たちが向かったのは都内随一のアミューズメント施設。
この施設ではボウリングにカラオケ、アーケードゲームやクレーンゲームと若者の遊び場としての設備は充実しており、デートスポットとしてこれ程メジャーな物はない。
麗自身も楽しめるのなら何でもいいと言っていたから丁度いいだろう。
「とりあえず先ずはボウリングからだが、ボウリングって知っているか?」
「ううん、全然」
「ですよね……」
麗自身は大昔の戦国時代辺りに亡くなっている為、基本的に今の時代の文化というものがほとんどわかっていない。
一応、
「じゃあ俺のやり方でも真似しろ。そっちの方が手っ取り早い」
ボウリング場に入場した俺たちは指定のレーンがある場所に向かう。
俺は麗をソファに座らせた後、手頃なサイズのボールを手に取ってレーン上に正三角形の形で並べられたピンを狙いすます。
「おらよっと!!」
放たれたボールは真っすぐ見事な直線を描きながらピンへ迫り、そしてカコーンと気持ちいい音が響き渡る。
ストライクだ。
「いよっしゃあッ!!!!」
久々のボウリング且つちゃんとした見本にしなきゃならねぇと思ったりもして不安があったが、何とかストライクをもぎ取ることが出来たぜ。
一発目としてはこれ程気持ちのいい物はない。
俺の裂帛の叫びがボウリング場に響き渡った。
「どうだ見たか!! 俺のスーパープレイ!!」
「すごーい!!」
笑顔で拍手してくれる麗。
これには俺もにっこり笑顔を隠しきれずレーンから戻った。
「さて、じゃあ次は麗の番だぜ。ルールは何となくわかっただろ?」
「うん。ボールを使ってあのピンって奴を倒せばいいんだよね?」
「そゆことそゆこと。じゃあ頑張れ」
ボールを手に取りレーンに上がる麗。
すぅと深呼吸した後、俺と同じようなフォームでボールをピンに向かって放つ。
揺れるツインテールが実に綺麗だ。
「おりゃーー!!」
ボウリング初心者にありがちな力を全開にして投げるというやり方で投げた麗。
結果、投げられたボールはぐんぐんと加速し一瞬で見えなくなった。
「あ、そう言えば麗の身体ってティアナの……」
そう思った時にはもう遅い。
加速し過ぎたボールはレーンを抉り、大砲から打ち出された砲弾の如くピンに直撃、バコーンとおおよそボウリングでは聞きようがない音と共にピンは粉々に砕け散った。
「やったやった!! 全部倒した!!」
「そ、そうだな……」
当人ははしゃいで笑顔だが、ボウリング場のスタッフと俺は顔が真っ青だ。
いくら憑りついている身体の力が有り余るとは言え、ここまでの惨状を引き起こすとは思ってもみなかったぜ。
俺は麗に今度からは少し加減するようにと釘をさすと同時にボウリング場のスタッフにレーンとピンの修理費代を余分に支払うのであった。
その後、ボウリングで思う存分遊んだ俺たちは同施設内のゲームセンターにて、クレーンゲームでは目当てであるテイルバイオレットぬいぐるみと言った景品を取るべく四苦八苦したり、レーシングゲームでは操作のおぼつかない麗相手に大人げなく火花を散らしてみたりした。
そして締めのカラオケでは現代の歌を知らないがために全く歌えない麗の代わりに俺のワンマンライブを開催したりと、施設内で出来る遊びを全力で満喫したのであった。
◇
楽しい時間が過ぎるのは早い。
今は日もすっかり落ちて暗くなった午後8時過ぎ。
夜ご飯を食べ終えた俺は麗を連れ、以前グレモリーギルディとの決戦場となった事がある春日川大橋周辺の水辺公園に訪れていた。この時間なら人もあまりいないし、川沿いから見える夜景もそこそこ綺麗だから丁度いい。
「どうだ。今日は楽しかったか?」
テイルバイオレットのぬいぐるみを抱きしめる麗と共にベンチに座り、夜景を眺めている最中、俺は麗にそう尋ねた。
すると麗はにっこりとした笑顔を浮かべながらうんと首を縦に振る。
「そうか、そりゃあよかった」
「でも……」
「でも? どうしたんだ?」
途端、表情が曇る麗。
理由は何となく察することが出来る俺だが、一応尋ねてみた。
「もうお別れだと思うと寂しくて……」
そう答える麗。
麗は子供っぽい性格ではあるが、大事な事はしっかりとわかっているんだ。
今日のこの日が永遠に続く訳じゃない。いつかは元に戻らないといけない。
だって麗は大昔に既に亡くなった魂なのだからという事に。
「あたしね、こんなに楽しかった一日は長年幽霊やっていて初めてだった。誰かと一緒にご飯を食べて、誰かと一緒に遊び笑って、誰かと一緒におしゃべりする」
「麗……」
誰もいない孤独な山の中、一体いつから麗は幽霊をやっていたのだろう。
そう思ってしまうくらいには麗の言葉はじんと来る。
俺が麗の立場だったら耐えきれる気がしない。
「ねぇ和輝くん?」
「何だ?」
「最後にあたしが絶対に叶えたいお願い、一ついい?」
シリアスな雰囲気の中、そう俺に尋ねてくる麗。
だがその一瞬、麗の表情がニヤリと歪んだのを俺は見逃さない。
「最後にあたしと赤ちゃんを――」
「却下だ」
「ええー!! そんなー!!」
秒速で拒否されたことに対して派手目に嘆く麗であったが、いくら何でもそれだけは許すことはできない。どれだけ孤独で可哀想な幽霊であってもその身体はティアナの物なのだからな。
「あたしこう見てもお侍さんのお相手は何度もしてきたから大丈夫だって!! 絶対に気持ち悪くさせないからいいでしょー?」
「そういう問題じゃねぇんだよ!! このエロ幽霊!!」
別に俺は気持ちよくなれるかどうかが不安で拒否してる訳じゃねぇ。
ティアナの身体に憑りついた状態とは言え、俺はちゃんとティアナとやりたいからお前とは出来ないと言っているんだ。
いくらお前を成仏させる為とはいえ、この童貞をお前にはやる事は出来ない。
「そんなーやっと成仏できるかと思ったのに……」
その言葉を聞いて俺は今日今まで突っかかっていた最後の嘘がわかった。
麗が成仏する為の条件は思いっきり遊ぶことなんかじゃなく、誰かと一緒に一夜を共にして赤ちゃんを身籠りたいという事だと言う事がな。
麗をこのまま
果たしてどうすればいいのか?
「なぁ、どうしてそうしなきゃ成仏できないんだ?」
「えっと……あたし、幽霊として暮らすうちにいずれ誰もがあたしという存在をわすれてしまうんじゃないかって思ったの――」
神妙な顔つきでそうなった経緯を話し出す麗。
それによると麗は最初はただの恨みからなる幽霊だったらしく、髪を奪われたショックで暴走してしまったが、それは恨みを晴らしたのちに同じ村に住んでいる人達によって救われたらしい。その後、恨みによる暴走から救われた麗はそのままその村を守る為に守護霊として成仏せずその村に居ついたそうだ。
だが、村は時が経つにつれ小さくなりなくなってしまい、守護霊としての役割がなくなってしまう。すると麗は自分なんて存在は忘れられていくんじゃないかと思うようになってしまっていたらしい。
「赤ちゃんでも作れればその作った誰かやその赤ちゃんはお前の事を忘れない。そう思った訳か」
「うん」
所詮幽霊なんて存在は科学が発展するにつれ次第に忘れられていくのが定め。
それは何となく大人になるにつれ卒業されていくツインテールと一緒のように感じてしまう。
まぁでも、だからと言って肉体関係作ってまで忘れられないようにするのはどうかと思う。
「なぁ、麗。俺はお前と過ごした今日の事を忘れるつもりはねぇ。定期的に山に墓参りにでも行ってやる。これじゃ駄目なのか?」
ゆっくりと首を振る麗。
麗によると今まで何度か憑依した時も同じような文句を言われ、それを信じた結果忘れられてきたとの事。
そう言われると俺も忘れないなんて保証が出来ないのがもどかしい。
話が平行線を辿り、行き詰まりかけるそんな中、俺はあることが閃いた。
「なぁ? お前ってツインテール好きか?」
「ツインテール?」
「その髪型の事だよ」
そう言って指摘してあげると笑顔でうんと頷く麗。
ツインテールの幽霊ってだけあってやっぱりそうだよな。
それがどうしたのと言いたげな麗に俺はある話をする。
「昼間の怪物の事、覚えているか? エレメリアンって言うんだけどよ」
「う、うん」
「あいつら、ああ見えてツインテールを奪いにやって来るんだぜ」
「ええ!? そうだったの!?」
派手目に驚く麗。
いくら幽霊といってもエレメリアンがツインテールを狙っているだなんて聞いたら驚くの当たり前か。
その後、俺はツインテールを奪うという意味を麗に伝えた。奪われた人が二度とツインテールを結ぶことが出来なくなるという事をだ。
「俺はさ。お前のその身体の持ち主のティアナと一緒にエレメリアンからツインテールを守る為に戦っているんだ」
「ツインテールを……」
「ああ。だから俺はお前の事も、お前のツインテールも忘れない。だって俺、大切な何かが忘れられる悲しみを知っているつもりだからな」
それを聞いた麗は目に涙を浮かばせていた。
俺はぎゅっと麗を抱きしめる。
「だから悪いけどよ、俺にティアナを返してくれ。頼む」
どうすれば麗を成仏できるかわからない。
でも、麗の事を忘れないようにするにはどうすればいいかわかった。
ツインテールを好きでい続ける。それが答えだ。
「あたし……あたし……」
涙交じりに言葉を紡ごうとする麗。
そんな時だった。
「随分といいツインテール少女だと思えば、そこに一緒にいるのは昼間の少年ではないか!!」
威圧感溢れる声と同時に聞こえてくるエレメリアン出現を促すブザー音。
声をした方向に振り向くとそこには、昼間テイルブルームを退けたグシオンギルディが仁王立ちして待ち構えていた。
どうする? この状況?
昼間と違ってテイルブルームは呼んでいないし呼べる状況ではない。
俺は焦った。このままじゃさっきの誓いを撤回しなくちゃならなくなっちまう。それだけは勘弁だぜ。
「ねぇ、和輝くん?」
「な、なんだ麗!?」
「守ってよね。あたしの……あたしたちのツインテールを」
お前まさか……!?
そう思った瞬間、麗は目をつむり倒れ込む。
間一髪、俺は身体を支える事には成功したがその身体からは白い影のような物が出て行くのが見えた。
「あれ? ここ何処? 私、なんでこんな服着てるの?」
わかってはいたが目が覚めたのは麗ではなくティアナの方だった。
つまり麗はエレメリアンと戦う俺の意志をくみ取って憑依を解いた事になる。
それはつまり成仏した訳じゃねぇんじゃねぇのか?
俺は空気も読めずに現れたグシオンギルディに怒りの矛先を向ける。
「行くぞティアナ。あの野郎をブッ飛ばす!!」
「え、ええ……!!」
ティアナのテイルブレスから放たれた光がテイルドライバーを形成して俺の腰回りに装着。
俺は
「テイルオン!!」
◇
「な、何だと!? テイルバイオレットが……男!?」
「男で悪ぃか!! ええ!!」
驚愕するグシオンギルディに向かって放った渾身の右ストレートが頬に炸裂。
グシオンギルディは派手な音を立てながら大橋を支える鉄柱に激突した。
「ぬぐぅ……」
殴られた箇所を抑えながら立ち上がるグシオンギルディ。
俺はそんなのに構わずに拳を握りしめて急接近。
ダメージが残りふらついているグシオンギルディの体を容赦なく殴り続ける。
「オラオラァ!!」
「な、なんて猛攻だ……!!」
折角のいい雰囲気を邪魔した罰は重い。
お前さえ出てこなけりゃ麗はちゃんと成仏できたかもしれねぇんだからよ。
その怒りを力に変えて殴り蹴る。
抵抗なんてさせない圧倒的な攻撃がグシオンギルディの体を痛め続ける。
「くッ……!! こうなったら……!!」
焦り始めたグシオンギルディは迎撃とばかりに背中から生えているもう二つの腕を巧みに扱って何とか俺の攻撃を捌き始めた。
流石に合計四つの腕を操る相手を接近戦で相手取るには少々荷が重い。
俺は殴り蹴るのを中断しバックステップで距離を取る。
だが、それを見逃すグシオンギルディでなかった。
「今だ!! 隙ありぃ!!」
「なッ!!」
突き出した両手の親指と人差し指で円を作りそこから発射されるテイルブルームを敗北へ導いたあのリング状の光線が俺に向かって放たれた。
俺は回避を試みるがそれは叶わず、光線は俺の下半身に命中。
俺は奴の思惑通りのミニスカートを履かされてしまった。
「中々似合っているぞテイルバイオレット!!」
「チっ……!!」
いざ自分で喰らってみて見てみると確かにこれは恥ずかしい。
これじゃあ少しでも動いたらスカートの下が見えてしまうだろう。
だが……
「それがどうしたぁぁぁッ!!」
「な、何ィィィィィィ!?」
「ちょっと和輝!! 見えてる見えてる!!」
スカートの下が見られようがそんなもの何も関係ねぇし問題ねぇ。見たいって言うんならよ、好きなだけジロジロ見やがれってんだぜ。
その考えを胸に動く俺に対してパンチラの呪縛は全く効きやしない。
俺はまたしても驚愕するグシオンギルディに対して渾身の飛び蹴りを見舞う。
「き、貴様……!! スカートの裏が見られるのが恥ずかしくないのか……!!」
「恥ずかしいに決まってんだろうが!!」
「なら何故!!」
「そんなのな!!
何がミニスカートだ。
慣れたきたとはいえ、テイルギアを纏う方がよっぽど恥ずかしいってもんだ。
それにな、俺は男だ。元々が女であるテイルブルームと違って俺にはスカートの下を見せないように無意識に動くなんてやり方は知らねぇんだよ。
「そ、そんな馬鹿な!!」
「ウラァァ!!」
何も知らない人が傍から見れば、年頃の女の子が露出度の高い紫の装甲を身に纏い、派手にスカートをパンチラしながら怪物と戦う地獄絵図。誰かに盗撮でもされていたならきっと明日のニュースは『変態怪物VS痴女』となる事は必至だ。
だが今の俺にそんな事はどうでもいい。
恥を捨てた俺の猛攻はグシオンギルディの四つの腕をもってしても抑え込むことは出来なかった。
「うおおおお!! このままでは……!!」
必殺の戦術が通らない事に焦るグシオンギルディ。
俺はこのまま流れにのって勝利だと確信しながら攻撃を続ける。
だが、そこで終わる相手ではなかった。
「クッソ……!! 俺のポリシーに反する事だが止むを得ん!! こうなったら奥の手だ!!」
何……!? まだ何かあるっていうのか!?
そう思った瞬間、俺は下半身にちょっとした違和感を覚えた。
さっきまですーすーと風が脚に当たる感触があったのが無くなって、熱がこもり始めたんだ。
何事かと思い下半身に目をやると、さっきまで履かされていたミニスカートの丈がぐんぐん伸び始めており、いつの間にか俺が履かされているスカートがミニスカートからロングスカートに変化していた。
「これがどうしたって……ッ!?」
ミニスカートからロングスカートに変化しようが何も問題ない。
そう思っていたがそれは甘かった。
先程同様に素早く動かそうとした俺の脚を伸びきったスカートが邪魔をした。
俺はハッと気が付いた。裾が地面につくほどに伸びたロングスカートが運動性を奪うのには十分すぎたんだと言う事に。
「クッソ……!! 舐めた真似しやがって……!!」
戦闘中だというのに俺はスカートに引っかかって派手にすっ転んでしまった。
「実に無様だな!! テイルバイオレット!!」
俺の醜態を見て嘲笑うグシオンギルディ。
怒りを滲ませ立ち上がろうとするがロングスカートはそれすらも邪魔をして上手く立ち上がることが出来ない。
もしこの場にテイルブルームがいてくれたのなら動き方のコツを教えてくれそうな物なのだがそれは叶わない。
「どうせ悲鳴を上げないのだろう? ならいまさら貴様のスカートをめくっても何の価値もないな」
そう言い放ったグシオンギルディは俺の属性力を奪うべくあの銀色の輪っかを空中に出現させる。
逃げ出そうにも履かされたこのロングスカートが邪魔をして動けない。
「頂くぞ。貴様のツインテール!!」
「くッ……!!」
「和輝!!」
こんな無様なやられ方で俺はツインテールを失うのかよ……
このままじゃ麗との誓いすらも守れないじゃねぇか。
そう思った瞬間、俺の耳に声が聞こえて来た。
(守るって言ったんでしょ!! じゃあしっかり守りなさいよ!!)
この声は……麗なのか?
俺は声の出所が何処かを確かめるべく辺りを見渡す。
すると白い影のような物がグシオンギルディの身体に入っていくのが見えた。
「これで最後だ……ッ!? う、動けん!? な、何故だ!?」
今にも俺に向かって銀の輪っかを放とうとしていたグシオンギルディであったが、白い影のような物が入った途端、金縛りを受けたかのように動けなくなった。
これはもしかしなくても麗が俺を助けてくれたと言う事だ。
そう気づいた俺は諦めかけていた心を奮い立たせて立ち上がる。
ロングスカートがなんだ。こんなもの破けばいい話じゃねぇか。
「行くぞティアナ!! エモーショナルチェインだ!!」
「何かは知らないけどオッケー!!」
ティアナのテイルブレスから放たれた青い光。
それは俺の体を愛情の水となって包み込み、
俺は召喚した二刀のウインドセイバーを連結させウインドセイバーをナギナタモードへ変化させ構える。
「
ティアナの属性力を受け取り、それらをエネルギーへと変換することで涼し気な水と風が周囲に巻き起こり、嵐を起こす。
「ま、待て!! は、話し合おう!!」
動けないながらも何とか命乞いをするグシオンギルディだが、今の俺に通じる筈が無い。何故なら今の俺はティアナのツインテールだけじゃなく、麗のツインテールも背負っているんだからな。
俺は未だ動けないでいるグシオンギルディ目掛けて必殺の光弾、エグゼキュートブレイカーを放った。
「ぐおおおおお……!! だ、男子たちよ……!! 絶やすでないぞ……!! スカートめくりの文化を……!!」
貫かれ苦しむグシオンギルディはそう言い残すと同時に大爆散。
夜の水辺公園を明るい光が包み込む。
「勝ったぜ……麗」
勝利の余韻に浸る俺。
そんな中、俺の耳にまた声が聞こえてくる。
(ありがとう和輝くん。ツインテールを守ってくれて。後、あたしの事、忘れないでね……)
誰が忘れるかよ。墓参りだってちゃんと行ってやる。
夜空の中白い影のような物が天に向かって飛んでいく。
もしかして成仏できたのか?
成仏出来たか出来ていないかどうかははっきりとはわからねぇが俺はその白い影を見送りながら決して忘れない事を心に誓うのだった。
「ねぇ? 私に話さないといけない事が沢山あるんじゃないの?」
「ええと……な、何の事だ?」
「とぼけないでよ!!」
変身を解除し帰ろうとバイクの準備をする俺は早速冷や汗をかくことになった。
果たしてどこまで話せばいいのやら。
色々とややこしくて面倒だ。
「麗って誰!! それにいつの間に町に帰っているのよ!! ツインテールの幽霊は!?
ティアナの声が闇夜に響き渡った。
◇
ティアナにれまでの経緯を何とか話し終えた俺はバイクを駆ってそれぞれの家を目指していた。
「へー私が寝てる間にそんな事があったんだ」
「大変だったんだぜ。てか寝てたのか……」
どうやらティアナの奴は憑依されている間は寝ていたらしい。
全く、呑気なもんだぜ。俺はこんなに色々と頑張っていたっていうのによ。
「そうだ。ねぇ和輝?」
「今度は何だよ。言っておくがちゃんと全部話したからな」
口ではこう言っているが、実は
その為、何でもないように装っているつもりだが、内心は指摘されないかビクビクだぜ。
「そうじゃなくてね。実は私、また夢を見たの」
「夢ってあれか? もしかしてお前の記憶の事か!?」
「うん」
驚いたぜ。まさか麗に憑依されている間に失われていた記憶を夢に見ていたとはな。
指摘されなかった事にホッとしつつも俺はその思い出した記憶について興味を示す。
一体、ティアナはどんな事を思い出したのだろうか。
「夢の中の私は幼かったわ」
「となるとまたガキの頃の記憶か」
「うん。でね、その日はもう夜遅くて幼い私は寝ていたの。でも偶然、目が覚めちゃって。部屋を出た幼い私は偶然リビングに灯りが点いているのに気が付いたから向かったの」
寝付けないで部屋の外に出たら丁度リビングに灯りがともっていたから向かう。
幼い俺も体験したよくある事だ。
まぁ、問題はそこからだぜ。
「向かってみたらリビングにはお父さんがいたわ」
ティアナの親父と言えば確か……赤毛の優しそうな人だった気がする。
以前、ティアナと身体が入れ替わった時にティアナの記憶の世界を見たが、あまりはっきりとどんな顔だったかは覚えていない。
「そしてもう一人、お父さんと別の誰か……確かあれは男の人だったはず。で、その人がお父さんと一緒に私にも気づかず仲良く喋っていたの」
ティアナの親父さんと仲良く話していた。
つまりそれはティアナの親父さんの友人か何かだろう。
でも、一体誰だろう? 確か俺が見た記憶の世界ではティアナの親父さん以外の男はいなかったはずだ。
まぁ、あの記憶の世界がティアナの記憶の全てじゃねぇからあまりツッコむ所ではないがな。
「で、他には? 今の所、特に変わった所はないみてぇだけどよ」
「そう思うわよね」
「うん? となると何か変だったのか?」
ティアナの言い方から察するに何か変な事があったと言う事だ。
俺はそれを問いただした。
「それがね。会話の内容が少し変だったの。何かその男の人がお父さんに向かって娘の調子はどうかとかツインテールは上手く結べるようになったのかとかをしきりに聞いていて」
「何だよ。普通じゃねぇか」
「じゃあ普通、娘のツインテール属性はどうとかって聞く?」
「え!? んな事まで聞いていたのか!?」
ツインテール属性を知っているだと!?
それはつまりエレメリアンなどに関わりがあるって事じゃねぇか。
「そいつは一体何者なんだ?」
「多分、お父さんの友達。それも話しかた的に古い付き合いなのは確かね」
もしかして、その人がテイルギアを開発した張本人だったりするんじゃ。
憶測の域を出ないがそう考えれば辻褄は合う。
その後、俺たちはその人物が何者かについて話し合ったが、結局、俺たちはその男が一体何者なのかについてはそれ以上わからなかった。
実はティアナの正体にはもう一つ重大な秘密があります。
第二部ではそれらについてを解き明かす内容になっていく予定です。