俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
ビルとビルに囲まれた都内某所にあるネイルサロン。
ここはテレビや映画に出てくるような有名女優たちがお忍びで足を運ぶほどの有名店。その予約は実に半年以上も先が埋まっているとの噂が庶民の間で流れるほどだ。
一流のネイリストたちが今日もお客様に一流のサービスをすべく動き回るそんな店内。
突如、そんな店の雰囲気には到底似つかわしくない悲鳴が鳴り響く。
「きゃあああああ!!」
何? 何が起きたっていうの?
その悲鳴を聞いた客や店員が一斉に店の入り口の方向へ顔を向ける。
するとそこには身長約2メートル、ライオンの鬣を生やした黒いロバの頭を持つ獣人。正に異形といって差支えの無い化け物が立っていた。
「「「きゃあああああ!! 怪物よー!!」」」
伝染する悲鳴。
我先にと逃げ出そうとする人も現れる中、異形の怪物、エレメリアンは丁度ネイルアートを施してもらった直後の女性客を見つけロックオンするとその女性客の腕を掴んで施されたネイルをまじまじと眺める。
「ひぃっ!!」
「よくデコレーションされた美しい爪だ……我がコレクションに加えるに相応しい……」
そう呟いたエレメリアンは懐から徐にある物を取り出す。
それはどんな人でも一度は目にした事があるであろう無骨な道具ペンチである。
「な、なにするんですか……!!」
「安心しろ。今の我は貴様の爪を欲しているだけだ。危害は加えん」
エレメリアンの目的は単純にして明快、この女性の爪をペンチを使って引っ剥がしてコレクションする事である。
周りでその様子を見ていた人々は何だそんな事かと胸を撫で下ろすが、今まさに爪を剥がされようとしている側であるこの女性客の立場からすればそんな事ではのレベルでは済まされない。
折角、念願だったこのネイルサロンに足を運べて、やっとこさ一流のネイルアートを施してもらったというのに、それをこんな早くに奪われるだなんて冗談じゃないのだ。
「やめてください……!!」
抵抗を試みる女性客だったが、エレメリアン相手には全くの無力だ。
ペンチは刻一刻とその綺麗にデコレーションされた爪へと向かっていく。
それはまるで処刑台へと足を運ぶ受刑者のようだ。
「フハハハハハ!! 安心しろ、貴様の爪は未来永劫、我がコレクションとして大事にしてやるぞ」
意地悪く笑い声を上げるエレメリアンがその剛腕を活かして強引に爪を剥がそうとする。
もうここまでか。
この女性客の爪は無残にも剥がされてしまうのか。
そう誰もが諦めたその時だった!!
「そこまでにしやがれ!! この馬面野郎がぁッ!!」
「何ッ!? この声は!?」
異形の怪物であるエレメリアンを恐れぬ勇ましき
エレメリアンは声の聞こえた方向へと振り向く。
するとそこには青紫のツインテールをなびかせる佇む戦士。
テイルバイオレットの登場だ。
「貴様はテイルバイオレット……!!」
エレメリアンは臨戦態勢に入るべく女性客を解放し離れるが、そのチャンスを見逃すテイルバイオレットではない。
「今だッ!!」
それを待ってましたとばかりにテイルバイオレットは急接近。
エレメリアンの顎目掛けて見事すぎるアッパーカットを見舞う。
「ぐぼぉっ!!」
「ブッ飛べ!!」
エレメリアンは天井を弾丸のように突き破りそのままビルの屋上へ向かって勢い殺さずドンドン突き進んで行く。
「お前ら早く逃げろ!! 後は俺がブッ飛ばしてやる!!」
やや乱暴ではあるがこれがテイルバイオレットなりの避難指示だ。
一部始終を見ていた人々はその言葉を聞いて一斉に逃げ出し始める。
先程まで襲われていた女性客は店員の一人にちゃんと救助され、去り際にテイルバイオレットに感謝の言葉を述べる。
「ありがとうございます!!」
その言葉にテイルバイオレットは無言でサムズアップを送る。
そして皆が避難し終えた事を確認し終えるとブッ飛ばしたエレメリアンを追うべく外に飛び出し、屋上目掛けて高く跳躍した。
「噂通り、随分と乱暴な奴だなテイルバイオレット……」
ビルの屋上では先程ブッ飛ばしたエレメリアンが傷一つ見せないピンピンとした姿で待ち構えていた。
テイルバイオレットはそれを見ていつも通りの軽口を叩く。
「生憎、てめぇらのような変態にはこれくらいが丁度いいのさ」
「ほう、言ってくれる……」
フォースリヴォンを叩き、ウインドセイバーを取り出したテイルバイオレットと指をパキパキ鳴らし始めるエレメリアン。
見ている方が息を呑むこの独特の間合い。
いつどっちが仕掛けてもおかしくない。
「所でてめぇの名前と属性はなんて言うんだ? ブッ倒す前に聞いてやるよ」
「ならばお言葉に甘えて答えてやろう。我が名はウァレフォルギルディ。属性は
様子を伺うがてらどんな属性の持ち主かを聞き出すテイルバイオレットとそれに対して堂々と答えたウァレフォルギルディ。
そして次の瞬間、ウァレフォルギルディは指を水平に伸ばしてはテイルバイオレットの方へ向け、その指先の爪をバルカンを斉射するかの如く勢いよく発射し始めた。
「先手必勝!! 喰らえ我が必殺の奥義!!
「ちょ、おま!! そんなのありかよ!!」
爪が着弾した箇所に火花が飛び散り爆発が起きる。
当たり前だが、これはただの爪ではない。一発一発が必殺の威力を持つ小型の爆弾なのだ。
素早い身のこなしで避け、時にはウインドセイバーで撃ち落とし迎撃するテイルバイオレットだったが、二射、三射と爪バルカンは休む事なく執拗に襲いかかってくる。
撃つ度に即座に生え変わりリロードされていくウァレフォルギルディの爪を見たテイルバイオレットは思わず舌打ちを飛ばした。
「クッソ……このままじゃ近づけねぇぜ……」
隙を見て何とかビル屋上にあった給水タンクの裏に隠れるテイルバイオレットだったが、ウァレフォルギルディは今か今かとじりじり爪バルカンを斉射しながら近づいてきている。
このままではテイルバイオレットの身が危ない。
そう思われたその時だった。
「グランアロー!!」
「何ッ!? 今度は何だ!?」
爪バルカンを絶え間なく斉射するウァレフォルギルディの背中に緑の光の矢が突き刺さる。
何事かと振り返って隣のビルの屋上を見てみると、そこには緑のツインテールをなびかせるもう一人の戦士、テイルブルームの姿があった。
「母なる大自然の力を持つ緑のツインテール戦士、テイルブルーム!! 只今参上よ!!」
「テイルブルームめ……邪魔しおって……」
堂々と名乗りを上げるテイルブルームに呆気にとられるウァレフォルギルディ。
その隙だらけの様子を給水タンクの裏から伺っていたテイルバイオレットの耳に声が聞こえてくる。
『どうやら間に合ったみたいね』
「みてぇだな。助かったぜティアナ」
その声の主人、ティアナ。
彼女はテイルバイオレットに力を与える謎多き記憶喪失のツインテール少女であり、テイルバイオレットの変身者、涼原和輝の愛しの女性である。
『じゃあとっととやっつけるわよ!! 和輝!!』
「よし来た!! 任せとけ!!」
ティアナの持つ膨大なツインテール属性のエネルギーがテイルブレスからテイルドライバーを通じて送り込まれていき、それを余すことなく受け取ったテイルバイオレットが給水タンクの裏から飛び出した。
「隙ありだ!! この野郎!!」
「なッ!? しまった!?」
「
受け取ったエネルギーを完全開放したテイルバイオレットはそのエネルギーを足に集め天高く跳躍。
空中にて必殺の体勢に入る。
それをみたウァレフォルギルディは迎撃すべく爪バルカンを斉射するが、テイルバイオレットの周りには既に彼女を守る風の防壁が出来ており、ウァレフォルギルディの放った爪が通じるような状況ではなかった。
「うぉりゃぁぁぁぁぁッ!!」
裂帛の叫びと共にウァレフォルギルディ目掛けて放たれるのは必殺の蹴撃、ストームストライク。
幾多のエレメリアンを葬ってきたテイルバイオレットの代表的な必殺技だ。
ウァレフォルギルディはその自慢の爪を鉤爪のように長く伸ばすと、それらを盾のように前に突き出し、弾き返さんとする。
がしかし――
「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
「終わりだぁぁぁぁッ!!」
徐々に押し込まれひび割れていくウァレフォルギルディの爪。
そして次の瞬間、必殺のストームストライクがウァレフォルギルディの爪どころか体全体を貫き、その体に放電が走る。
「せ、せめて……ひっかき攻撃でやられたかったー!!」
エレメリアン特有の間抜けすぎる断末魔と共に爆発するウァレフォルギルディとその爆炎をバックに残心を決めるテイルバイオレット。
これにてテイルバイオレットVSウァレフォルギルディは幕を閉じたのだ。
「さて、帰るとするか」
変身を解き背を伸ばす和輝と華、そしてやってくるティアナ。
この後はいつも通り、戦闘後のごたごたに乗じてその場から退散し、今日の戦いを振り返りながら他愛もない話を続けていく。
そんないつも通りの毎日。
だがしかし、この時、彼らはまだ知らなかった。
テイルバイオレットにとって史上最大となる戦いが迫っているという事に……
◇
「また……なのね……」
薄暗く何もない空間にて私はただ立っていた。
もう何度目なのかわからないこの感覚はそう、間違いない。
これは夢、私が失った過去の記憶を思い出す為の夢。
でも、どうしてだろう?
いつもとは何かが違う気がする。
夢なのは間違いない。
でも……何か……いつもとは違う……
「まだなの……」
夢の中で記憶を思い出す時のパターンは大まかに分けて二つ存在する。
一つは今の私が昔の幼かった時の私の身体に意識だけ入ってその忘れてしまった記憶の出来事を追体験するといった物。そしてもう一つは、私自身が幽霊のような存在になった状態で昔の私が体験した記憶の出来事を第三者視点で見るといった物。
今回はおそらく後者のパターンのようね。
そう思いながら、私はあてもなくただ夢の中の空間をさまよい続ける。
いつも通りであるなら、今みたいにある程度進めば景色が明るくなって幼い私が見えてくるものなんだけど、現状は全くもってその気配がない。
「全く……一体、今度は何だって言うのよ」
「早く……助けに……」
突如として聞こえてくる今にも消え入りそうなくらいのか細い声。
「誰!?」
一瞬、幼い私が誰かに助けを求めている記憶なのかと思ったけど、声の感じが明らかに私の物じゃなかった。
となると今の声は一体誰の?
もしかして本当に誰かが助けを求めているんじゃ。
そう思い焦った私は呼びかける。
「誰なの!? ねぇ、返事して!!」
薄暗い夢の空間の中で私の声が無情にも響き渡り木霊する。
やはり無理なのと諦めかけたその時だった。
「繋がった……!? お兄ちゃん、早く助けに来て……!!」
今度は最初に聞いた時よりもハッキリとそう聞こえた。
やっぱり誰かに助けを求めているんだとわかった私は、この空間内を疾走しながらその声に呼びかけ続けた。
そして、走り続ける事、約数分。
目の前に私と同じくらいの背丈をしたツインテール姿の女の子が現れた。
「夢みたい……まさか別の人とも繋がるだなんて……」
目の前の少女がそう呟く。
私は目の前の少女のツインテールに目を奪われた。
長さこそ肩にも満たないくらいの短さ且つ、手入れがあまり出来ていないのか可哀想に傷んだ髪の毛だけど、何故かそのツインテールからはフワッとした優しい雰囲気が感じられる。
ツインテールしかり、服装の方もまるで、現代の戦時中を思わせるかのようなボロボロでみすぼらしい物なんだけど、彼女のツインテールはそんな辛い雰囲気を見事に調和して吹き飛ばしている。
例えるならそれは戦場に咲く可憐な花といった所ね。
「夢って……これは夢でしょ?」
我に帰った私は目の前の少女にツッコミを入れる。
すると目の前の少女はフフッと笑うと首を横に振った。
「ううん、違うよ。これは夢じゃない。わたしとお姉ちゃんは今、心の中で繋がっているの」
「心の中で……?」
どういう事なの?
まるで意味がわからない。
「そもそもね、わたしはお姉ちゃんとは違う世界にいるの」
「違う世界!?」
違う世界、それってつまり、テイルバイオレットやテイルブルームといった戦士が活躍していない別の平行世界の事を指していることよね。
となるとこの少女は世界と世界の壁を越えて助けを求めているって事!?
何となく何が起きているかがわかって来たけど、未だに私の中ではそんな事有り得ないと決めつけている節がある。
「わたしの名前はリーン。単刀直入に言いますけど、わたしの今いる世界ではツインテールが無くなりつつあります」
「ツインテールが無くなる!? それってどういう事なの!?」
リーンのその言葉に私は即座に反応した。
ツインテールが無くなるだなんてそんな一大事は絶対に見過ごせない。
何とかしてでも助けに行かなくちゃと思ったその時、私は何故、リーンの世界がそうなっている原因を閃いた。
「まさか……エレメリアンの仕業!?」
ゆっくりと黙って首を縦に振るリーン。
私はやっぱりと声を上げた直後、とある点が気になった。
「でも、あれ? あなたたちの世界にもツインテールの戦士がいる筈でしょ?」
エレメリアンはありとあらゆる平行世界に現れる精神生命体。
そしてそれを倒す為のツインテールの戦士は、かつてアルティメギルが行った作戦の影響で大半の平行世界に存在している筈。
それならばリーンの世界にもツインテール戦士がいてもおかしくないんだけど……
「それが……今から半年ほど前、突如としてわたしたちの世界のツインテール戦士がいなくなってしまったの……」
「何ですって!?」
アルティメギル亡き今、アルティデビルのように新しく徒党を組むエレメリアンは珍しくないと思うけど、それでも一度はアルティメギルとの戦いを戦い抜いた歴戦の戦士の筈。
だとするならば生半可なエレメリアンが徒党を組んでも勝ち目はない。
なのにリーンの世界のツインテール戦士は負けた。
これは途轍もない強敵エレメリアンが現れたって事ね。
「お願いです!! わたしたちツインテール解放戦線を助けてください!! ツインテール戦士亡きわたしたちの世界は、邪悪なエレメリアンたちによって支配されツインテールが無くなりかけています!!」
涙を流しながら訴えかけるリーン。
それを見て私は決意する。
必ず、この子たちを救って見せるってね。
「わかったわ。絶対にあなたたちの世界は私とテイルバイオレットが助けてあげる!! だから安心して!!」
「ありがとうございます!!」
感謝し頭を下げるリーン。
そんなリーンに対して私はある疑問を口にする。
「そう言えばあなたさっき、別の人とも繋がったとか言ってなかった?」
そもそもこの子は「誰か助けて……」ではなく「お兄ちゃん、早く助けに来て……」って言っていた。
それってつまり、私と繋がるよりも前にまた別の人と繋がっていたことになるわよね。しかも相手は男……
これってどういう事なのかしら?
「実は……あなたと繋がる前にもう一人、別の人とも繋がったんです。その人は凄かったですよ。本来、この通信は世界で最も強いツインテール属性の持ち主にしか繋がらないんですけど、その人は男でありながら繋がっちゃったくらいですし」
男でありながらその世界で最強のツインテール属性の持ち主ですって!?
リーンの言葉を聞いて私は酷く驚いた。
「和輝ですらあのレベルだって言うのに……何者なの? その男って……」
「さぁ? わかりません。でも、とてもいい人でした!!」
とてもいい人でした……ってねぇ?
男でありながらそれほどのツインテール属性を持っているだなんて怪しさ極まりないが為に私はどうもその人物を信じ切ることが出来ない。もしかしたらものすんごい変態の可能性だってあるわけだし。
そんな風に不安気になる私に対してリーンはまたも深く頭を下げた。
「じゃあ、最後にもう一度お願いします!! 私の世界のツインテールを助けてください!!」
そう言い残し光の中に溶け込むように消えるリーン。
「ちょ、ちょっと!! まだ聞いてない事が!!」
どうやってリーンたちの世界に行けばいいのか。
一番肝心である部分を聞こうとした次の瞬間、私の意識も光の中に消えていった。
◇
「――という事があったの」
祝日と言う事もあり、昼過ぎに授業が終わったある日放課後、俺がいつも通り暇つぶしも兼ねてティアナを連れて新聞部へと向かっていた際中、ティアナの奴が何やら変な事を言い出しやがった。
何でも昨日の夜、夢の中で俺たちの住む世界とは別の世界の奴と繋がり、そいつからSOSを貰ったとの事だ。
正直、俺としてはそんな馬鹿な事があるかっつーのって感じだぜ。
「へぇ、随分と変な夢だな。疲れているんじゃねぇのか?」
全く持って信じちゃいないがそれを悟られてはティアナの気分を害するだけなので、ある程度は信じている振りをしてみる。
まぁでも、夢である事には変わりねぇしな。
適当に流すとしよう。
「もう、だから夢じゃないってば!!」
するとどうだ。
ティアナの奴、夢というワードが余程気に入らなかったのか即座に噛みついてきやがった。
俺からすれば夢の中で繋がったのならそれはただの変な夢で間違いないんじゃねぇのかよとは思うので少し言い返してみることにする。
「あのなぁ、そんな変な出来事、夢以外でどう説明すんだよ。大体、夢の中で繋がったっていったじゃねぇかよ。それはつまり夢である事に変りねぇだろ」
「それはそうだけど……」
「後もう一つ、世界最強のツインテール属性の持ち主の男がいたっていう点だ。そんなの常識的に考えてありえねぇだろ」
「それもそうだけど……」
ちょっとばかしムキになった俺はティアナ相手にまくし立てる。
正直、最後の世界最強のツインテール属性を持つ男って部分に関しては、同じ男として若干の悔しさがあるから断固として信じたくはない。
「そんな男がいるのなら是非とも会ってみてぇくらいだぜ」
「う、うん……ってそういえば……!!」
気持ちよく言い負かす事が出来たぜと思った矢先、ティアナの奴は何か思い出したようでポケットの中から一枚の紙切れを取り出すと俺に渡してきた。
俺はその紙切れを見て頭に?を浮かべる。
「何だこいつは?」
その紙は普段使っているノートの切れ端。
そこには訳の分からない奇妙な数字が書かれた数式のような物がびっしりと羅列されていた。
「今朝ね、夢から醒めた直後、無意識のうちにこれを書いていたの」
「それがどうしたんだよ。どうせ勉強のし過ぎだろ」
学年ビリを常に争い続ける俺や匠では到底ありえない事だが、学年トップであるティアナならありえない事ではない。
だが、ティアナは首を横に振った。
「違うわ。だってこんな数式存在しないもの」
じゃあ一体何なんだよと俺は問いかける。
まさかとは思うがこの歳になって中二病に目覚めたとかじゃねぇよな?
「多分、私が思うにこれは異世界の移動の際に必要な位置情報のような何かだと思うの。きっとリーンの意思が私を導いたんだわ」
ほーん。成程な。
つまりここに書かれた数式は異世界の場所を特定する為に必要な物。わかりやすく例えるなら住所みてぇなものか。
まぁ、リーンの意思云々は置いておくとして、そんな物を無意識のうちに書いちまうだなんて、確かにただの夢じゃなさそうだな。
「オーケー。ただの夢じゃねぇってのはわかった。でも、だからといってどうやってそのリーンって奴がいる世界に助けにいくんだよ。異世界の場所とやらがわかってもそこに行くための手段が俺たちにはねぇんだぜ?」
もし、異世界間を行き来できるような物があったのなら今すぐにでもティアナを故郷の世界に帰して親父やお袋と再会させてやりたいぐらいだぜ。
「そうなの。そこが問題なのよ」
自信満々とそう答えたティアナにズッコケそうになる俺。
これじゃさっきまでの会話が何の意味があったのかまるでわからないぜ。
「じゃあどうすんだよ!!」
「だからそれをどうするかを今考えているんじゃないの」
あなたも二人で一つのツインテールなんだったら私と一緒にどうすればいいか考えなさいよと言ってきたティアナに俺は言いたい。
絶対に考えてどうにかなる物じゃねぇだろおい。
◇
「こんちわー」
「お邪魔しまーす」
そうこうしている内に俺たちは新聞部に辿り着いた。
軽い挨拶をした上で中に入ってみるとそこには、せっせと部室内全域を掃除している華先生しか見当たらなかった。
「あれ? 今日は華先生一人ですか?」
常日頃から取材の為、校内を飛び出ている悠香さんがいないのは兎も角、いつも部屋の奥でパソコンと睨めっこしている青葉さんまでいないのは何事だ。
それに今やバイトという名目で新聞部雑用係と化してしまっている匠の奴も姿が見えない。
「片霧さんなら川本君を連れて取材に行っちゃったわ」
「成程な。で青葉さんは?」
「さぁ? トイレじゃないかしら?」
そう言われると何だが少し気まずくなる。
当たり前だよな。青葉さんだってトイレの一つや二つするもんな。
「で? 今日は何の用?」
「いや特に何も。強いて言うならエレメリアンが出たときに先生と一緒に出撃できるようにスタンバイしに来たって感じかな」
華先生にそう言った直後、俺は鞄を床に放り投げソファにダイブ。
まるで自室でくつろいでいるかのようなだらしないその姿には、温厚な華先生と言えど流石に黙ってはくれない。
口うるさいお袋かのように注意すべく口を尖らせる華先生。
そんな華先生にティアナが話しかける。
「ねぇ華先生。少しお聞きしたい事があるんですけど」
「な、なに? 先生がわかることなら何でも教えるわよ」
「実は昨日の夜……」
さっき俺に話した内容を華先生にも話すティアナ。
何が何でもリーンって奴を助けに行きたいティアナからすれば、誰でもいいから少しでも何かいい考えを貰いたいようだ。
俺としては誰に聞いても意味ないだろと殆ど諦めている。
「そうね……異世界を渡る為の道具ね……」
「何かありませんか先生?」
「華先生、無理なら無理って言った方がいいですよ。考えるだけ無駄です」
「和輝は黙ってなさい!!」
「うるせぇな!! だってそうだろうが!!」
ティアナの怒号が飛んでくると同時に始まる痴話喧嘩。
今回ばかりは俺が悪いとも思いながらもこればかりはプライド的に引くに引けない。
「大体、和輝はさっきから……!!」
「大体、ティアナこそな……!!」
ぶつかり合う一組のツインテール。
真面目な華先生はその間も何かいい案がないか考えており、何かを閃いたのか喧嘩を続ける俺たちにある提案をしてきた。
「その……テイルブレスに願ってみたらどうかしら?」
ティアナの持つテイルブレスは今まで色々な奇跡を形にしてきた逸品。時にテイルドライバーを作り出し、時に俺とティアナの人格を入れ替え、時に華先生をツインテール戦士として復活させた。
俺とティアナはその手があったかと喧嘩を止めると二人仲良くテイルブレスを覗き込む。
「お願い私のツインテール!! 私の想いに応えて!!」
祈るティアナ。
するとどうだ。テイルブレスからホログラム状のディスプレイが表示された。
「おいおい、これってもしかして……」
同じくこれはもしやと思った様子のティアナは、さっき俺に見せて来た紙切れを取り出すと、そこに書かれた数式の羅列を素早くディスプレイに打ち込んでいく。
そして全てを打ち込んだ瞬間、ディスプレイが消え、ドクロマークが描かれたボタンが表示された。
「行くわよ」
「お、おう」
「ちょ、ちょっと二人とも……!!」
何かを察して止めようとする華先生だが、覚悟を決めた俺とティアナはそんな事も気にせずに二人一緒にボタンを押した。
すると目の前に、エレメリアンが移動する際に出現させるゲートと同じようなゲートが出現。
途轍もない吸引力で俺とティアナとついでに近くにいた華先生を吸い込み始めた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「きゃああああぁぁぁ!!」」
余りの勢いに踏ん張ることが出来ず、俺とティアナと華先生の三人はゲートの中へ吸い込まれていったのだった。
◇
世界と世界を繋ぐトンネルのような異空間。
極彩色のマーブル模様で彩られたその空間内は、人体に有害な物質で満たされているとされ、並みのテイルギアを装着しただけでは耐え続ける事は難しいと評される程だ。
そんな危険な空間内を航行する一つの移動艇があった。
「待っていてくれ、今助けに行くからな……」
コックピット内にて赤髪の青年がそう呟く。
その直後だった。
ドォン!!!
何か固い壁のような物にでもぶつかったかのような衝撃が移動艇を襲う。
激突の衝撃もあり、本来ならばそんな事とは無縁の筈の移動艇が地震にでもあったのかと錯覚するほどに大きく揺れる。
「なんだ!? 何が起きたんだ!?」
「総二様!! 大変です!! どうやら目の前に強力なバリアが展開されています!! ここから先はスタートゥアールでは進めません!!」
操縦席に座っていた銀髪の巨乳美女が冷静に何が起きたのかを分析しその事を伝え始める。
「じゃあどうするのよ!!」
「そうですわ!! このままではリーンさんたちが……!!」
藍色のツインテールが特徴の貧乳女子と金髪ツインテールが特徴の小さな少女がそれぞれそう口にし始める中、どうすればいいんだと焦りの表情を浮かべる赤髪の青年。
諦めムードが漂う艦内。
だが銀髪の美女は冷静に打開案を導き出した。
「皆さん安心してください。幸いにもバリアには小さいですが穴があります。そこを通れば突入することは可能です」
「でもスタートゥアールじゃ通れないんでしょ?」
「はい。ですので皆さんには、緊急用の脱出ポッドを使って突入してもらうことになります」
ボタンを押すと同時に出現する三つの一人用の脱出ポッド。
赤髪の青年、藍色ツインテールの貧乳女子、金髪ツインテールの少女が、銀髪美女の指示通りにそれぞれ別のポッドに入りスタンバイする。
「念のため、変身した状態でお願いします。私はバリアが消え次第、後から追いかけますので」
「わかった。みんな行くぞ!!」
赤髪の青年の掛け声と共にそれぞれが変身ブレスを構えた。
「「「テイルオン!!」」」
次回からは原作キャラ(といっても三人だけですが……)が登場します。
原作キャラの雰囲気を上手く出せるかはわかりませんが、頑張って書いていきたいと思うので応援ほどよろしくお願いします。